説明

半導体装置

【課題】 銅と銅以外の異種材料を使用した配線とプラグ等の配線導電体間において、銅の拡散を効果的に防止することにより、信頼性を向上した半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 半導体基板上の第一の層間絶縁層100内に形成されたタングステンプラグ101aと、タングステンプラグ101a上に形成された導電性かつ薄膜のコバルト含有キャップ膜103と、第一の層間絶縁層100の上層層間絶縁層である第二の層間絶縁層104内において、タングステンプラグ101a上にキャップ膜103を介して形成された銅配線105aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特に配線及びプラグ等の配線導電体を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の微細配線構造の半導体装置においては、高速化、微細化等の種々の要求に応じるため、配線及びプラグ等にはそれぞれ異なる導電材料が主成分として使用されることがある。
【0003】
しかし、このような半導体装置において、配線材料に低抵抗の銅が使用された場合、配線中の銅が、プラグ等に使用される銅以外の異種材料、例えばタングステンへ容易に拡散することにより、信頼性が劣化する恐れがある。
【0004】
これに対し、銅配線とプラグ間に、TaN膜、Ta膜等の銅拡散バリア膜を形成して、銅配線からプラグへの銅拡散を防止する従来技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、この従来技術に係る拡散バリア膜では、微細化が進み、更なる薄膜化が要求された場合、膜の連続性が保てなくなり、銅の拡散防止を十分に防止することができず、半導体装置の信頼性を低下させる恐れがある。
【特許文献1】特開2004−207281号(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、銅と銅以外の異種材料を主成分としてそれぞれ使用した配線とプラグ等の配線導電体間において、銅の拡散を効果的に防止することにより、信頼性を向上した半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の半導体装置は、第一の配線導電体と、前記第一の配線導電体上に形成された導電性のコバルト含有キャップ膜と、前記第一の配線導電体上に前記キャップ膜を介して形成された第二の配線導電体を備え、前記第一及び前記第二の配線導電体の一方のみが、銅を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、銅と銅以外の異種材料を主成分としてそれぞれ使用した配線とプラグ等の配線導電体間において、銅の拡散を効果的に防止することにより、信頼性を向上した半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例に係る半導体装置は、シリコン基板等の半導体基板上にシリコン酸化膜等により構成される層間絶縁層が積層されており、各層間絶縁層内には、プラグ又は配線等の配線導電体が所定の設計に基づき形成され、上、下層の配線がそれぞれプラグにより電気的に接続される多層配線構造を有している。
【0011】
本実施例では、半導体装置の低抵抗化を図るため、配線材料には電気抵抗率の低い銅又は銅合金を使用する。一方、プラグ材料には銅と異なる導電材料、本実施例ではアルミニウム等に比較してステップカバレッジ特性が優れ、アスペクト比の高い微細ホール等への埋め込み特性の良好なタングステンを主成分として使用する。このように、本実施例に係る半導体装置では、銅と銅以外の異種材料を主成分として使用した銅配線とタングステンプラグを有するが、プラグには、銅が不純物として微量添加されていてもよい。
【0012】
まず、図1を参照して、本発明の実施例1に係る半導体装置の構成を説明する。図1は、本実施例に係る半導体装置の要部の構成を示す断面図である。
【0013】
図1(a)に示すように、本実施例に係る半導体装置では、所定の層間絶縁層100(第一の層間絶縁層100)に、所定の設計位置に配置されたタングステンプラグ101a(第一の配線導電体101)が上下に貫通するように形成されている。本実施例では、プラグ径を30nm程度〜100nm程度とし、プラグ径とプラグの深さの比で表されるアスペクト比(プラグの深さ/プラグ径)を5程度としている。
【0014】
プラグ101aの側面には、膜厚3nm〜10nm程度のTiN、Ti、TaN、Ta等を構成材料とする薄膜の酸化防止膜102が形成されており、この酸化防止膜102によりタングステンプラグ101a表面への酸化ガスの曝露又は水分の浸入等を防ぐことができる。なお、酸化防止膜102は、タングステンプラグ101aからプラグ101aと隣接する層間絶縁層100へのタングステンの拡散を抑制する効果も有している。
【0015】
プラグ101a上には、主にプラグ101a上面からプラグ101a内部への不純物成分の拡散を防止するため、キャップ膜103が形成されている。キャップ膜103は、無電解めっき法により形成されるコバルトを構成成分とする膜厚5nm程度の薄膜の高融点金属であり、例えば、コバルトにタングステン等の金属成分を添加したコバルト化合物、すなわちCoWB、CoWP、CoWBP、CoBP、CoB、CoP等の薄膜である。
【0016】
第一の層間絶縁層100上には、上層の層間絶縁層104(第二の層間絶縁層104)が形成され、第二の層間絶縁層104内には銅配線105a(第二の配線導電体105)が形成されている。銅配線105aは、キャップ膜103を介してプラグ101a上に形成されており、プラグ101aを介して下層の配線(図示を省略)と電気的に接続されている。
【0017】
本実施例に係る半導体装置における無電解めっき法により形成されたコバルト含有キャップ膜103は、詳細な成膜方法は後述するが、スパッタ法(PVD法:Physical Vapor Deposition)等により形成されるTiN、Ti、TaN、Ta等を構成材料とする一般的な拡散バリア膜に比較して、膜質を連続的に均一に成膜することができるとともに、膜厚を10nm程度以下に薄く成膜することが可能である。このように、配線105aとプラグ101a間に形成されたキャップ膜103の膜厚を薄くし、さらに膜質を均一化することで、配線105aとプラグ101a間での電気抵抗を低減するとともに、配線105aからプラグ101aへの銅拡散を防止することができる。
【0018】
また本実施例におけるキャップ膜103は、CVD法(Chemical Vapor Deposition)やALD法(Atomic Layer Deposition)を使用して成膜されるTiN、Ti、TaN、Ta等の薄膜の拡散バリア膜と比較しても、銅配線105aとの密着性に優れているため、銅配線105aからプラグ101a内への銅の拡散を効果的に防止することができる。
【0019】
さらに本実施例では、銅配線105aと銅配線105aの側面及び底面において隣接する第一、第二の層間絶縁層100、104との界面に、MnSiO膜106が自己整合的に形成されている。MnSiO膜106は、銅配線105aから第一、第二の層間絶縁層100、104への銅の拡散を防止する膜厚2nm〜4nm程度の薄膜の拡散バリア膜106であり、一般的に銅配線の拡散バリア膜として使用されるTiN、Ti、TaN、Ta等の拡散バリア膜に比較して、銅との密着性が高く、また膜質が均一で安定しているため、銅の拡散防止効果に優れ、さらには配線表面への酸化ガスの曝露又は水分の侵入を効果的に回避できる。
【0020】
次に、図2を参照して、以上のような本実施例に係る半導体装置の層間絶縁層内に形成されるプラグ及び配線の製造方法を説明する。図2は、本実施例に係る半導体装置の要部の製造方法を示す工程断面図である。
【0021】
まず、図2(a)に示したように、単結晶シリコン等の半導体基板(図示を省略)にCVD法等によりシリコン酸化膜等の層間絶縁層を積層した後、フォトリソグラフィにより、所定の層間絶縁層100(第一の層間絶縁層100)上に、レジスト膜(図示を省略)を形成して、レジスト膜にプラグ形成用の開口部を形成する。さらに、RIE(Reactive Ion Etching)により、レジスト膜をマスクにして第一の層間絶縁層100をエッチング除去し、第一の層間絶縁層100にプラグを形成するためのホール107を形成する。ホールは、ホール径を例えば50nm〜120nm程度とし、アスペクト比(ホールの深さ/ホール径)を、例えば5程度としている。なおここでは、図示を省略するが、ホール107は下層の配線上の所定の設計位置に形成される。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、スパッタ法により、第一の層間絶縁層100上及びプラグ形成用のホール107の内壁に、例えばTiN、TaN等の酸化防止膜102を形成し、さらに、CVD法、ALD法、又はスパッタ法等を使用してタングステン等の導電性のプラグ材料をプラグ形成用ホール107に埋め込む。続いて、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により、プラグ形成用のホール107外部に形成されたプラグ材料及びバリア膜材料を順に研磨除去して、第一の層間絶縁層100内部にプラグ101a(第一の配線導電体101)及び酸化防止膜102を形成する。
【0023】
次に、図2(c)に示すように、無電解めっき法を用いて、プラグ101a上にプラグ101aへの不純物の拡散を防止するためのコバルトを含有したキャップ膜103、例えばCoWP、CoBP等を自己整合的に形成する。ここで、キャップ膜103の具体的な形成方法について、以下に説明する。
【0024】
まず、プラグ101aが露出した第一の層間絶縁層100表面を、タングステンよりもイオン化傾向の小さい金属元素、例えばパラジウムを含んだ塩化パラジウム水溶液に浸漬して、プラグ101a表面のタングステン原子をパラジウム原子に置換させ、タングステンプラグ101a表面のみにパラジウムのめっき層を自己整合的に形成する。このパラジウムのめっき層は触媒活性層として機能するものであり、このようにプラグ101a表面に置換金属のめっき層を形成する処理を、プラグ101a表面の活性化処理とする。
【0025】
さらに、プラグ101a表面に活性化処理を施した後、塩化コバルト水溶液等を含むめっき液を使用した無電解めっき法により、プラグ101a表面の触媒活性層形成部にコバルトを構成成分として含んだキャップ膜103を自己整合的に形成する。
【0026】
なお、このとき、置換される金属を含有しない第一の層間絶縁層100表面には触媒活性層が形成されず、プラグ101a表面のみに触媒活性層が形成されているため、キャップ膜103はプラグ101a上にのみ形成される。通常、スパッタ法又はCVD法等を使用してプラグ上に導電性のキャップ膜を形成する場合には、成膜後に例えばフォトリソグラフィ及びRIEにより、絶縁層上のキャップ膜を除去してプラグ間を絶縁する必要があるが、本実施例に係るキャップ膜103はプラグ101a上にのみ選択的に形成されるため、キャップ膜除去工程を削減することが可能となり製造工程を簡易化することができる。
【0027】
また、キャップ膜103は、他の無電解めっき法によっても形成することができる。すなわち、プラグ101aを形成した後、酸系薬液、例えばクエン酸、塩酸、希硫酸等のタングステン酸化物と反応し、かつタングステンには大きな損傷を加えない薬液を使用して、プラグ101a表面の酸化物を除去すること等によりプラグ101a表面を活性化させた後、窒素フォーミングガス下において、ボロン又はリンを含んだ50℃から150℃程度の硫酸系コバルト(Co)薬液をタングステンプラグ101a表面上に供給する。
【0028】
このとき、例えばボロン(B)を触媒とした場合、ボロン酸化物はタングステン(W)に3価の電子を与えることでB3+になり、プラグ101a表面にはボロンによって与えられた電子により負の電荷が蓄積する。このプラグ101a表面に硫酸系薬液中のCo2+が引き寄せられて蓄積され、コバルト膜103(キャップ膜103)がプラグ101a表面上に成膜される。一方、絶縁層100にはボロンが電子を与えることができないため、絶縁層100上にコバルト膜103が成膜されず、プラグ101a表面上のみに選択的な成膜が可能となる。
【0029】
なお、このようにコバルトを含有した高融点キャップ膜103を成膜した後、常温程度の温度下で酸系薬液(硫酸、フッ酸、リン酸、塩酸等)を用いてその表面を洗浄し、めっき液残渣の除去とコバルト含有キャップ膜103表面の安定化を図る。
【0030】
次に、図2(d)に示すように、CVD法等により第一の層間絶縁層100及びプラグ101a上に、シリコン酸化膜等の層間絶縁層104(第二の層間絶縁層104)を積層した後、ホール107形成工程と同様、フォトリソグラフィ及びRIEにより、第二の層間絶縁層104の所定位置に配線溝108を形成する。ここで、配線溝108は、プラグ101a上のキャップ膜103を露出させるように形成される。
【0031】
次に、図2(e)に示すように、第二の層間絶縁層104上及び配線溝108内壁にCuMn合金層109を形成する。ここで、CuMn合金層109は、後述する電解メッキのシード層として機能するものであり、例えばスパッタ法により厚さ5〜20nmに形成する。CuMn合金層109におけるMnの含有量は、0.05〜20at%程度である。続いて、200℃〜400℃、5分〜60分程度の加熱処理を施して、CuMn合金層109のMnをCuMn合金層109と第一及び第二の層間絶縁層100、104の界面に析出させ、銅拡散バリア膜であるMnSiO膜を自己整合的に形成する。すなわち、第一及び第二の層間絶縁層100、104との界面に極めて安定な酸化膜が形成される。
【0032】
なおここで、CuMn合金層109内部のMnは、熱処理により第一及び第二の層間絶縁層100、104との界面近傍へ拡散されるため、CuMn合金層109のうち第一及び第二の層間絶縁層100、104との界面側と反対側の部分は、Mnの含有量の少ないCuMn合金層109又はCu層となる。また、CuMn合金層109のうちキャップ膜103上に位置する部分は、熱処理によりMnが絶縁層100、104近傍へ拡散することで、その全体がCu膜に変化する。
【0033】
ただし、図2(e)においては、配線溝108の第一及び第二の層間絶縁層100、104界面に形成されたMnSiO膜、及びキャップ膜103上のCu膜等の図示を省略し、纏めてCuMn合金層109と図示している。
【0034】
次に、図2(f)に示すように、第二の層間絶縁層104上及び配線溝108内部に、電気めっき等により銅105aを埋め込み形成した後、第二の層間絶縁層104上の銅105a及びCuMn合金層109を研磨除去する。このとき、キャップ膜103上に形成されていたCuMn合金層109は、熱処理によりCu膜に変化しているため、タングステンプラグ101aと埋め込んだ銅配線105aの間にはMnが介在せず、薄膜のキャップ膜103のみが介在することになる。従って、CuMn合金層109の形成によって、プラグ101aと配線105a間における電気抵抗が上昇するという恐れを回避することができる。
【0035】
また一方で、銅配線105aと第一及び第二の層間絶縁層100、104の界面には、銅拡散バリア膜106(MnSiO膜106)が自己整合的に形成されているため、銅配線105aから第一及び第二の層間絶縁層100、104への銅の拡散が防止される。
【0036】
以上の工程により、本実施例に係る半導体装置を製造することができる。本実施例に係る半導体装置では、銅配線105aとプラグ101a間には銅との密着性が高い薄膜のコバルト含有キャップ膜103が自己整合的に形成され、銅配線105aと第一及び第二の層間絶縁層100、104間には薄膜の安定なMnSiO膜106が自己整合的に形成されている。したがって、本実施例に係る半導体装置によれば、銅配線105aとプラグ101a間の抵抗値を低く抑えつつ、銅配線105aからプラグ101a及び配線105aに隣接する第一及び第二の層間絶縁層100、104への銅の拡散を十分に防止することができ、その信頼性を向上することができる。
【0037】
なお本実施例では、図2(e)及び図2(f)に示す工程において、配線溝108内部等に形成したCuMn合金層109を加熱した後、配線溝108に銅105aを埋め込み形成しているが、配線溝108にCuMn合金層109及び銅105aを形成した後、半導体装置に加熱処理を施してもよい。
【0038】
このような製造工程であっても、上述と同様の構成を有する半導体装置を製造することが可能であり、銅との密着性の高い薄膜キャップ膜103を介してタングステンプラグ101aと銅配線105aが電気的に接続されるため、銅配線105aとプラグ101aとの間の抵抗値の上昇を抑制すると同時に、プラグ101a及び配線105aと隣接する第一及び第二の層間絶縁層100、104への銅の拡散を効果的に防止することができる。
【0039】
また本実施例に係る半導体装置では、プラグ材料として埋め込み特性の良好なタングステンを使用しているが、他に銅以外の金属材料、例えばアルミニウム、コバルト等を使用してもよい。プラグ材料としてコバルトを使用する場合は、キャップ膜103の密着性を高めるため、キャップ膜103にタングステン等を添加する。
【0040】
また、銅配線105aと第一及び第二の層間絶縁層100、104の界面に形成する拡散バリア膜106にはMnとSiとOの化合物膜を使用したが、他の金属元素とSiとOの化合物膜、Mn又は他の金属元素とOとの化合物膜を用いることもできる。すなわち、例えばNb、Zr、Cr、V、Y、Tc、Re等の酸化物を形成しやすく、シリコン酸化膜等の層間絶縁層とのぬれ性に富み、絶縁層界面に安定して存在するとともに、銅中に固溶するよりも析出あるいは化合物を形成しやすい金属元素とSiとOの化合物等を拡散バリア膜として使用することができる。
【0041】
また本実施例に係る半導体装置では、プラグ101a上にキャップ膜103を形成し、さらにキャップ膜103上に配線を形成しているが、図1(b)に示すように、銅配線101b(第一の配線導電体101)上に上述と同様のコバルト含有キャップ膜103を無電解めっき法により形成して、さらにキャップ膜103上にタングステンプラグ105b(第二の配線導電体105)を埋め込み形成する場合においても、銅配線101bからタングステンプラグ105bへの銅の拡散をキャップ膜103によって効果的に防止することができる。なお、このような構造であれば、キャップ膜103は、銅配線101b上面の全面に自己整合的に形成されるので、銅配線101bからその上部に位置する層間絶縁層104(第二の層間絶縁層104)への銅拡散も同時に防止することができる。
【実施例2】
【0042】
本発明の実施例2に係る半導体装置の構成について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係る半導体装置の要部を示す断面図である。
【0043】
本実施例に係る半導体装置は、プラグ表面部に凹部を有する点及びその凹部の内壁(側部及び底部)表面に窒素含有金属シリサイド膜が形成されている点で上記実施例1に係る半導体装置と異なる。従って以下、本実施例に係る半導体装置の説明においては、実施例1に係る半導体装置の構成及び製造方法と同様の部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
本実施例に係る半導体装置は、実施例1に係る半導体装置と同様、半導体基板上に積層された層間絶縁層内にそれぞれタングステンプラグ及び銅配線が形成された多層配線構造を有している。
【0045】
図3に示すように、タングステンプラグ101a上には、実施例1に示したコバルトを含有したキャップ膜103が無電解めっき法により形成され、さらにキャップ膜103上には銅配線105aが形成されている。タングステンプラグ101aと所定の層間絶縁層100(第一の層間絶縁層100)の間にはTiN、TaN等の酸化防止膜102が形成され、銅配線105aと層間絶縁層104(第二の層間絶縁層104)の間にはMnSiO膜等の安定な拡散バリア膜106が形成されている。
【0046】
また本実施例では、プラグ径を30nm〜100nm程度とし、アスペクト比を5程度以上とする。このように、半導体装置に形成されるプラグの径が微細になりアスペクト比が増大する場合、図3に示したように、埋め込みプラグ101aの表面にボイドやシーム(凹部110)が発生することがある。
【0047】
このプラグ101a表面の微細な隙間である凹部110は、後に説明する無電解めっき法によるプラグ101a上へのキャップ膜103の形成工程において、キャップ膜103により完全に覆うことが困難であるため、プラグ101a上へのCuMn合金層109の形成又は銅配線105aの埋め込み形成の際に、ボイドやシーム等の凹部110内部までCuMn合金層109又は銅配線105aが埋め込まれることがある。このような場合、プラグ101a表面の凹部110内部に入り込んだCuMn合金層109又は銅配線105aからプラグ101a内部へ銅が拡散する恐れがある。
【0048】
これに対し、本実施例に係る半導体装置では、プラグ101a表面の凹部110からプラグ101a内部への銅の拡散を防止するため、プラグ101a表面の金属成分であるタングステンを構成材料とする窒素含有タングステンシリサイド膜111(窒素含有金属シリサイド膜111)が、プラグ101aの凹部110の内壁表面に形成されている。
【0049】
この窒素含有タングステンシリサイド膜111は、プラグ101a表面のタングステン成分をシリサイド化して窒化処理を施した薄膜であり、プラグ101aの凹部110の内壁表面を、シリコンを含む反応性ガス、例えばシランガスに曝露し、さらに凹部110の内壁表面に窒素を含む反応性ガス、例えばアンモニアガスを用いてプラズマ処理を施して形成される薄膜である。窒素含有タングステンシリサイド膜111は、ボイドやシーム内部の非常に狭い隙間にも均一に成膜することが容易であり、また良好な膜質を有する薄膜である。
【0050】
従って、キャップ膜103によって覆われない凹部110表面に窒素含有タングステンシリサイド膜111を形成することで、凹部110を含むプラグ101a表面全体をキャップ膜103及び窒素含有タングステンシリサイド膜111により確実に覆うことが可能となり、銅配線105aからプラグ101a内部への銅の拡散を効果的に防止することができる。
【0051】
次に、図4を参照して、以上のような本実施例に係る半導体装置の層間絶縁層内に形成されるプラグ及び配線等の製造方法を説明する。図4は、本実施例に係る半導体装置の要部の製造方法を示す工程断面図である。
【0052】
まず、図4(a)に示すように、フォトリソグラフィ及びRIEにより、所定の層間絶縁層100(第一の層間絶縁層100)にプラグ101a形成用のホール107を形成する。ホール107のサイズは、ホール径50nm〜150nm程度とし、アスペクト比を5程度以上とする。
【0053】
次に、図4(b)に示すように、スパッタ法によりTiN膜等の酸化防止膜102を第一の層間絶縁層100上及びホール107内部に形成した後、電気めっき法によりプラグ材料としてタングステンを第一の層間絶縁層100上及びホール107内部に埋め込み形成する。
【0054】
このとき、プラグ101a材料をアスペクト比の高い微細ホール107へ確実に埋め込むことは非常に困難であり、タングステンの表面の一部においてボイド又はシーム等の凹部110が形成される。なお、凹部110の一部は、その底部がホール107内部まで届くように形成されている。
【0055】
次に、この凹部110の内壁表面を含むプラグ101a表面に、バリア膜として窒素含有タングステンシリサイド膜111を形成する。具体的には、凹部110が形成された後、まず、半導体装置を200℃から400℃程度の一定の高温雰囲気に保った低圧チャンバー内に保持し、露出したタングステン表面にシランガスを曝露してタングステンシリサイド膜を形成する。さらに、一定の低圧状態を維持したまま、アンモニアガスを供給し、高周波電界を加えることによりアンモニアプラズマ処理を施し、凹部110の内壁を含むタングステン表面のタングステンシリサイド膜を窒化させることで自己整合的に薄膜の窒素含有タングステンシリサイド膜111を形成する。
【0056】
次に、図4(c)に示すように、CMPにより、第一の層間絶縁層100上の窒素含有タングステンシリサイド膜111、タングステン、酸化防止膜102を順に研磨除去し、第一の層間絶縁層100を露出させる。
【0057】
次に、図4(d)に示すように、実施例1の図2(c)に示す工程と同様の方法により、無電解めっき法を用いて、プラグ101a上にプラグ101aへの不純物の拡散を防止するためのコバルトを含有したキャップ膜103、例えばCoWP、CoBP等を自己整合的に形成する。なおこのとき、キャップ膜103は、ボイドやシーム等の凹部110内壁及び上部には完全に形成されない。
【0058】
次に、図4(e)に示すように、CVD法等により、第一の層間絶縁層100上及びキャップ膜103上に層間絶縁層104(第二の層間絶縁層104)を形成した後、フォトリソグラフィ及びRIEにより、第二の層間絶縁層104の一部を加工し、配線溝108を形成する。
【0059】
さらに、配線溝108内部及び第二の層間絶縁層104上に膜厚5〜100nm程度のCuMn合金層109を形成する。続いて、加熱処理を施して、CuMn合金層109のMnを第一及び第二の層間絶縁層100、104の界面に析出させ、その界面にMnSiO膜(図4(e)においては図示を省略)を自己整合的に形成する。また、実施例1と同様、キャップ膜103上に位置するCuMn合金層109は、熱処理によりMnが絶縁層近傍へ拡散することで、Cu膜(図示を省略)に変化する。
【0060】
なおこのとき、CuMn合金層109がプラグ101a表面の凹部110の一部に入り込む場合があるが、凹部110の内壁表面には窒素含有タングステンシリサイド膜111が形成されているため、凹部110に入り込んだCuMn合金層109の銅が、プラグ101aの凹部110表面からプラグ101a内部へ拡散することはない。
【0061】
次に、図4(f)に示すように、電気めっき法等により、CuMn合金層109上及び配線溝108内部に、配線材料である銅105aを埋め込み形成し、さらにCMPにより、第二の層間絶縁層104上の銅配線105a及びCuMn合金層109を研磨除去し、第二の層間絶縁層104を露出させる。
【0062】
なお、銅配線105aの埋め込み時においても、銅配線105aがプラグ101a表面の凹部110の一部に入り込む場合があるが、凹部110の内壁表面には窒素含有タングステンシリサイド膜111が形成されているため、凹部110に入り込んだ銅が、プラグ101aの凹部110表面からプラグ101a内部へ拡散することはない。
【0063】
以上の工程により本実施例に係る半導体装置のプラグ及び配線等を形成することができる。本実施例に係る半導体装置によれば、プラグ101a表面にボイドやシーム等の凹部110が形成された場合であっても、銅の拡散バリア膜として、プラグ101a上にはキャップ膜103、プラグ101aの凹部110の内壁表面には窒素含有タングステンシリサイド膜111、銅配線105aと第一、第二の層間絶縁層100、104の界面にはMnSiO膜106が形成されているため、プラグ101a上またはプラグ101a凹部110内部に形成されたCuMn合金層109又は銅配線105aからプラグ101a内部、さらには絶縁層100、104への銅の拡散を十分に防止することができ、信頼性を確保することができる。
【0064】
(実施例2の変形例)
以下に、図5を参照して、実施例2の変形例に係る半導体装置の構成を説明する。図5は、実施例2の変形例に係る半導体装置の要部の構成を示している。
【0065】
実施例2の変形例に係る半導体装置は、実施例2に係る半導体装置とほぼ同様の構成を有しているが、図5に示すように、プラグ101a表面の凹部110の内壁以外に、プラグ101a上部表面にも窒素含有タングステンシリサイド膜111を形成し、さらにその上にキャップ膜103を形成している点で異なっている。
【0066】
以下に、図6を参照して、本変形例の製造方法を説明する。図6は、本変形例に係る半導体装置の要部の製造方法を示す工程断面図である。
【0067】
本変形例の製造方法は実施例2に係る半導体装置の製造方法とほぼ同様であるが、窒素含有タングステンシリサイド膜111の形成工程において主に異なる。
【0068】
すなわち、図6(a)に示すように、半導体基板100に積層した層間絶縁層(第一の層間絶縁層100)にプラグ101a形成用のホール107を形成した後、図6(b)に示すように、スパッタ法等により、TiN等の酸化防止膜102及びプラグ101a材料であるタングステン101aを埋め込む。ここでプラグ101aには、凹部110が形成される。
【0069】
次に、図6(c)に示すように、CMPにより、第一の層間絶縁層100上のタングステン101a及び酸化防止膜102を順に研磨除去して、第一の層間絶縁層100を露出する。さらに、プラグ101a表面にシランガスを曝露してタングステンシリサイド膜を形成した後、アンモニアガスを供給してプラズマ処理を施し、プラグ101a表面に自己整合的に薄膜の窒素含有タングステンシリサイド膜111を形成する。このとき、アンモニアプラズマ処理によりタングステンシリサイド膜中に含有される窒素を一定濃度以下にすることで、プラグ101aの凹部110の内壁及びプラグ101aの上部表面を導電性の窒素含有銅シリサイド膜114で覆うことが可能となる。
【0070】
続いて、図6(d)に示すように、無電解めっき法により、CoWP等のコバルト含有キャップ膜103をプラグ101a表面に形成された窒素含有タングステンシリサイド膜111上に形成する。
【0071】
さらにその後は、図6(e)に示すように、実施例2と同様、上層層間絶縁層104(第二の層間絶縁層104)を積層し、第二の層間絶縁層104に配線溝を形成した後、配線溝の絶縁層104界面にMnSiO膜等の拡散バリア膜106を自己整合的に形成する。さらに、電気めっき法等により配線溝108に銅を埋め込み、CMPにより、第二の層間絶縁層104上の銅及び拡散バリア膜106を研磨除去形成して、プラグ101a上にキャップ膜103を介して銅配線105aを形成する。
【0072】
以上のように製造される本変形例に係る半導体装置によれば、実施例2に係る半導体装置と異なり、キャップ膜103下にも窒素含有タングステンシリサイド膜111があるため、キャップ膜103上に形成された銅配線105aからプラグ101aへの銅拡散を、キャップ膜103及び窒素含有タングステンシリサイド膜111の二重の拡散バリア膜により防止することができるため、拡散防止効果をより高めることができる。
【0073】
なお、実施例2及び本変形例に係る半導体装置においても、実施例1と同様に、プラグ101a材料として埋め込み特性の良好なタングステンを使用しているが、他に例えばアルミニウム、コバルト等を使用してもよい。
【0074】
また、本実施例に係る半導体装置において、銅配線105a上部表面に上述と同様の方法で窒素含有銅シリサイド膜を形成し、さらに窒素含有銅シリサイド膜が形成された配線105a表面上にコバルト含有キャップ膜を形成し、次いでコバルト含有キャップ膜上にプラグを形成することもできる。このような構造であれば、窒素含有銅シリサイド膜及びキャップ膜が銅配線105a上面の全面に自己整合的に形成されるので、銅配線105aからその上層に形成される層間絶縁層への銅拡散を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の要部の構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体装置の要部の製造方法を示す工程断面図。
【図3】本発明の実施例2に係る半導体装置の要部の構成を示す断面図。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体装置の要部の製造方法を示す工程断面図。
【図5】本発明の実施例2の変形例に係る半導体装置の要部の構成を示す断面図。
【図6】本発明の実施例2の変形例に係る半導体装置の要部の製造方法を示す工程断面図。
【符号の説明】
【0076】
100:第一の層間絶縁層
101:第一の配線導電体
101a:プラグ
101b:配線
102:酸化防止膜
103:キャップ膜
104:第二の層間絶縁層
105:第二の配線導電体
105a:配線
105b:プラグ
106:バリア膜
107:ホール
108:配線溝
109:CuMn合金層
110:凹部
111:窒素含有金属シリサイド膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の配線導電体と、
前記第一の配線導電体上に形成された導電性のコバルト含有キャップ膜と、
前記第一の配線導電体上に前記キャップ膜を介して形成された第二の配線導電体と、
を備え、
前記第一及び前記第二の配線導電体の一方のみが、銅を主成分とすることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第一の配線導電体は表面に凹部を有し、少なくとも前記凹部の内壁表面に、前記第一の配線導電体表面の金属(M)を構成成分とする窒素含有金属(M)シリサイド膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第一の配線導電体表面には、前記第一の配線導電体表面の金属(M)を構成成分とする窒素含有金属(M)シリサイド膜が形成され、前記キャップ膜は前記窒素含有金属(M)シリサイド膜が形成された前記第一の配線導電体上部表面上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第一の配線導電体はプラグであり、前記第二の配線導電体は銅配線であることを特徴とする請求項1乃至3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記銅配線は、Mn、Nb、Zr、Cr、V、Y、Tc、Reのうち少なくとも一つの金属元素とOを含む膜を介して層間絶縁層と隣接していることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−60415(P2008−60415A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236810(P2006−236810)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221199)東芝マイクロエレクトロニクス株式会社 (376)
【Fターム(参考)】