説明

半導体装置

【課題】高耐圧で大きな電流駆動能力をもつLOCOSオフセット型MOS型電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】LOCOSオフセット型MOS型電界効果トランジスタのドレイン側のオフセット領域に、LOCOS酸化膜を伴うN型第1低濃度ドレインオフセット領域5と、LOCOS酸化膜を伴わないN型第2低濃度ドレインオフセット領域6を設け、共にゲート電極で覆うように設けたので、N型第1低濃度ドレインオフセット領域5でオフセット領域にかかる電界を緩和し高耐圧を得て、N型第2低濃度ドレインオフセット領域6でオフセット領域のキャリアを増加させ大きな電流駆動能力を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。より詳細には、高耐圧で電流駆動能力の高いLOCOSオフセット型電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として高耐圧構造のNチャネルLOCOSオフセット型MOS型電界効果トランジスタを図2に示す。NチャネルLOCOSオフセット型MOS型電界効果トランジスタ101は、P型シリコン基板16、P型ウェル領域17、N型低濃度ソースLOCOSオフセット領域18、N型低濃度ドレインLOCOSオフセット領域19、N型高濃度ソース領域20、N型高濃度ドレイン領域21、チャネル形成領域22、ゲート酸化膜23、ゲート電極24、LOCOS酸化膜25、保護酸化膜26、ソース電極27、ドレイン電極28などから構成される。図に示すように、MOS型電界効果トランジスタ101の特徴は、高耐圧化するために、チャネル領域22とN型高濃度ドレイン領域21の間にN型低濃度ドレインLOCOSオフセット領域19を設けることと、素子間にできる寄生フィールドトランジスタのチャンネル形成を防ぐためにLOCOS酸化膜25を5000Å〜10000Åと厚い酸化膜にしていることである。一般的にチャネル長の長いMOS型電界効果トランジスタのドレイン耐圧は、チャネル形成領域とドレイン領域の境界にできる空乏層に最も電界のかかる部分、すなわちゲート電位の影響を最も受ける表面部分がアバランシェ降伏を起こす電圧で決まる。MOS型電界効果トランジスタ101のドレイン耐圧が高い理由は、チャネル形成領域22とN型低濃度ドレインLOCOSオフセット領域19の境界の表面付近にLOCOS酸化膜25のバーズビークが位置しており、ゲート電位の影響が緩和されることによって、アバランシェ降伏が生じ難くなるからである。
【0003】
さらに高耐圧化するために、N型低濃度ドレインLOCOSオフセット領域19の不純物濃度を下げて、前記空乏層幅を大きくしようとした場合、N型低濃度ドレインLOCOSオフセット領域19の抵抗が大きくなり、トランジスタをオンにして大きなドレイン電流を流そうとすると、N型低濃度ドレインLOCOSオフセット領域19においてジュール熱が発生し素子が壊れてしまう。高耐圧化と電流駆動能力の間には、トレードオフの関係が有った。
【0004】
上述のような問題を鑑みて、特許文献1に示すような方法が考えられた。特許文献1は、LOCOS酸化膜の膜厚を以下の2つの条件を満足する膜厚に最適化するという方法である。第1の条件は、上述のアバランシェ降伏へのゲート電位の影響を抑制できる膜厚条件。第2の条件は、ゲート電位によって低濃度ドレインLOCOSオフセット領域の表面を蓄積状態にできる膜厚条件である。LOCOS酸化膜の膜厚を最適な膜厚にすることにより、高耐圧で電流駆動能力の大きい素子をつくることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−26766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来例を用いて、高耐圧で電流駆動能力の大きい素子をつくろうとする場合、元々前記2つの条件がトレードオフの関係にあるため、2つの条件を同時に最適にさせる膜厚を選ぶことは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高耐圧のLOCOSオフセット型MOS型電界効果トランジスタを作製する場合において、ドレイン側のオフセット領域にLOCOS酸化膜を伴う第1低濃度ドレインオフセット領域と、LOCOS酸化膜を伴わない第2低濃度ドレインオフセット領域を設け、共にゲート電極で覆うように設けた。具体的には以下のような手段を用いる。
【0008】
第1導電型半導体基板表面に設けられた第1導電型のウェル領域と、前記第1導電型のウェル領域に接して設けられた第2導電型のウェルと、前記第1導電型のウェル領域上に設けられた第2導電型高濃度ソース領域と、前記第2導電型高濃度ソース領域と接し前記第2導電型ウェルからチャネル形成領域分だけ離して設けられた第2導電型低濃度ソースオフセット領域と、前記第2ウェル領域上に設けられた第1導電型高濃度ドレイン領域と、前記第1導電型高濃度ドレイン領域と前記チャネル形成領域側に接して設けられた第1導電型第2低濃度ドレインオフセット領域と、前記第2導電型ウェル領域上に前記チャネル形成領域と前記第1導電型第2低濃度ドレインオフセット領域と接するように設けられた第1導電型第1低濃度ドレインオフセット領域と、前記第2導電型高濃度ソース領域と前記チャネル形成領域と前記第1導電型第2低濃度ドレインオフセット領域と前記第1導電型高濃度ドレイン領域以外の表面部分に設けられたLOCOS酸化膜と、前記チャネル形成領域に接するLOCOS酸化膜上のソース側の一部と前記チャネル形成領域と前記チャネル形成領域に接するLOCOS酸化膜上のドレイン側の全てと前記第1導電型第2低濃度ドレインオフセット領域の上に設けられたゲート酸化膜と、前記ゲート酸化膜上に設けられたゲート電極と、前記第2導電型高濃度ソース領域上に設けられたソース電極と、前記第1導電型高濃度ドレイン領域上に設けられたドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極以外の部分の表面に設けられた保護酸化膜を有する半導体装置とする。
【発明の効果】
【0009】
ドレイン側のオフセット領域にLOCOS酸化膜を伴う第1低濃度ドレインオフセット領域とLOCOS酸化膜を伴わない第2低濃度ドレインオフセット領域を設けることにより、第1低濃度ドレインオフセット領域で低濃度オフセット領域に加わる電界強度を緩和することにより、高耐圧のMOS型電界効果トランジスタを作ることが出来る。更に、LOCOS酸化膜が無い第2低濃度ドレインオフセット領域を設けることにより、第2低濃度ドレインオフセット領域上のゲート電極からの電界が、第2低濃度ドレインオフセット領域を蓄積状態にすることにより、ゲート電圧が大きい状態で第2低濃度ドレインオフセット領域のキャリア濃度を増加させることができ、電流駆動能力も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図。
【図2】従来のMOS型電界効果トランジスタにおける半導体装置の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図である。ここでは例としてNチャネルMOSトランジスタを挙げている。図1の半導体装置100は以下のような構成となっている。例えば、抵抗が20〜30ΩcmのP型シリコン基板1表面に低濃度のP型ウェル領域2を深さ20um、不純物は例えばボロンとして濃度は1×1016cm-3程度に形成し、P型ウェル領域2と接するように設けられた低濃度のN型ウェル領域3を深さ20um、不純物は例えばリンとして濃度は1×1016cm-3程度に形成する。
【0013】
次いで、レジストパターンをマスクとしたイオン注入により、N型低濃度ソースオフセット領域4を深さ1um、不純物は例えばリンとして5×1017cm-3程度に形成し、更にレジストパターンをマスクとしたイオン注入により、N型低濃度ドレインオフセット領域5を深さ1um、不純物は例えばリンとして5×1017cm-3程度に形成し、N型低濃度ソースオフセット領域4とN型低濃度ドレインオフセット領域5の上にLOCOS酸化膜12が成長するように選択酸化により例えば8000Å程度の熱酸化膜を形成する。次いで、レジストパターンをマスクとしたイオン注入により、もうひとつのN型低濃度ドレインオフセット領域6を深さ1um、不純物は例えばリンとして5×1017cm-3程度に形成する。
【0014】
次いで、熱酸化により例えば1000Å程度のゲート酸化膜10をシリコン表面に形成する。次いで、ゲート酸化膜10上にCVD法により例えば厚さ4000Å程度のポリシリコンを形成し、ポリシリコンに不純物として例えばリンを1×1020cm-3程度となるように拡散させ、レジストパターン形成とドライエッチングにより、N型低濃度ソースオフセット領域4上のLOCOS酸化膜12の一部からチャネル形成領域9、N型低濃度ドレインオフセット領域5、N型低濃度ドレインオフセット領域6までを覆うようにゲート電極11を形成する。
【0015】
次いで、レジストパターンをマスクとして不純物は例えばヒ素として1×1020cm-3程度になるように不純物をイオン注入して、N型高濃度ソース領域7およびN型高濃度ドレイン領域8を深さ0.4umで形成する。次いで、保護酸化膜13を厚さ7000Å程度、例えばCVD法により形成する。次いで、N型高濃度ソース領域7上およびN型高濃度ドレイン領域8上の保護酸化膜13を開孔し、アルミニウム合金を堆積した後にパターニングしてN型高濃度ソース領域7上にはソース電極14、N型高濃度ドレイン領域8上にはドレイン電極15が形成される。
【0016】
こうした構成とすることで、ドレイン側のオフセット領域にLOCOS酸化膜を伴う第1低濃度ドレインオフセット領域とLOCOS酸化膜を伴わない第2低濃度ドレインオフセット領域を設けることにより、第1低濃度ドレインオフセット領域で低濃度オフセット領域に加わる電界強度を緩和することとなり、高耐圧のMOS型電界効果トランジスタを作ることが出来る。更に、LOCOS酸化膜が無い第2低濃度ドレインオフセット領域を設けることにより、第2低濃度ドレインオフセット領域上のゲート電極からの電界が、第2低濃度ドレインオフセット領域を蓄積状態にすることにより、ゲート電圧が大きい状態で第2低濃度ドレインオフセット領域のキャリア濃度を増加させることができ、電流駆動能力も高めることができる。
【実施例2】
【0017】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置102の断面図である。図3の半導体装置102は以下のような構成である。例えば、抵抗が20〜30ΩcmのP型シリコン基板29表面に低濃度のP型ウェル領域30を深さ20um、不純物は例えばボロンとして濃度は1×1016cm-3程度に形成し、P型ウェル領域30と接するように設けられた低濃度のN型ウェル領域31を深さ20um、不純物は例えばリンとして1×1017cm-3程度に形成する。次いで、N型ウェル領域31からチャネル形成領域43だけ離したP型ウェル領域30上の領域にレジストパターンをマスクとしたイオン注入により、N型低濃度ソースオフセット領域32を深さ1um、不純物は例えばリンとして5×1017cm-3程度に形成する。
【0018】
次いで、N型低濃度ソースオフセット領域32と第1ドレインオフセット領域33上にLOCOS酸化膜35が成長するように選択酸化により例えば8000Å程度の熱酸化膜を形成する。ここで、第2ドレインオフセット領域34を作る方法として、N型低濃度ソースオフセット領域32と第1ドレインオフセット領域33と第2ドレインオフセット領域34上にLOCOS酸化膜35が成長するように選択酸化により例えば8000Å程度の熱酸化膜を形成し、フォトレジストとウエットエッチングを用いて第2ドレインオフセット領域34上のLOCOS酸化膜を除去した後、次いで、熱酸化により例えば1000Å程度のゲート酸化膜36をシリコン表面に形成するという方法が可能である。
【0019】
次いで、ゲート酸化膜36上にCVD法により例えば厚さ4000Å程度のポリシリコンを形成し、ポリシリコンに不純物として例えばリンを1×1020cm-3程度拡散させ、レジストパターン形成とドライエッチングにより、N型低濃度ソースオフセット領域32上のLOCOS酸化膜35の一部から第2ドレインオフセット領域34までを覆うようにゲート電極37を形成する。次いで、レジストパターンをマスクとして不純物は例えばヒ素として1×1020cm-3程度になるように不純物をイオン注入して、N型高濃度ソース領域38およびN型高濃度ドレイン領域39を深さ0.4umで形成する。
【0020】
次いで、保護酸化膜40を厚さ7000Å程度、例えばCVD法により形成する。次いで、N型高濃度ソース領域38上およびN型高濃度ドレイン領域39上の保護酸化膜40を開孔し、アルミニウム合金を堆積した後にパターニングしてN型高濃度ソース領域38上にはソース電極41、N型高濃度ドレイン領域39上にはドレイン電極42が形成される。
【0021】
実施例2の構成においても実施例1と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
1、16、29 P型シリコン基板
2、17、30 P型ウェル領域
3、31 N型ウェル領域
4、18、32 N型低濃度ソースオフセット領域
5、33 N型第1低濃度ドレインオフセット領域
6、34 N型第2低濃度ドレインオフセット領域
7、20、38 N型高濃度ソース領域
8、21、39 N型高濃度ドレイン領域
9、22 チャネル形成領域
10、23、36 ゲート酸化膜
11、24、37 ゲート電極
12、25、35 LOCOS酸化膜
13、26、40 保護酸化膜
14、27、41 ソース電極
15、28、42 ドレイン電極
19 N型低濃度ドレインLOCOSオフセット領域
100 実施例1に係る半導体装置
101 従来のNチャネルLOCOSオフセット型MOS型電界効果トランジスタ
102 実施例2に係る半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板の表面に設けられた第1導電型のウェル領域と、
前記第1導電型のウェル領域に接して設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記第1導電型のウェル領域上に設けられた第2導電型の高濃度ソース領域と、
前記高濃度ソース領域と接して設けられた第2導電型の低濃度ソースオフセット領域と、
前記第2導電型のウェル領域上に設けられた第2導電型の高濃度ドレイン領域と、
前記第2導電型のウェル領域上に前記低濃度ソースオフセット領域からチャネル形成領域分だけ離して設けられた第2導電型の第1の低濃度ドレインオフセット領域と、
前記高濃度ドレイン領域と前記第1の低濃度ドレインオフセット領域との間に両者に接して設けられた第2導電型の第2の低濃度ドレインオフセット領域と、
前記低濃度ソースオフセット領域と前記第1の低濃度ドレインオフセット領域との前記半導体基板の表面部分に設けられたLOCOS酸化膜と、
前記チャネル形成領域に接する前記LOCOS酸化膜上のソース側の一部と前記チャネル形成領域と前記チャネル形成領域に接するLOCOS酸化膜上のドレイン側の全てと前記第2の低濃度ドレインオフセット領域の上に設けられたゲート酸化膜と、
前記ゲート酸化膜上に設けられたゲート電極と、
前記高濃度ソース領域上に設けられたソース電極と、
前記高濃度ドレイン領域上に設けられたドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極以外の部分の表面に設けられた保護酸化膜と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
第1導電型の半導体基板の表面に設けられた第1導電型のウェル領域と、
前記第1導電型のウェル領域に接して設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記第1導電型のウェル領域上に設けられた第2導電型の高濃度ソース領域と、
前記高濃度ソース領域と接して設けられた第2導電型の低濃度ソースオフセット領域と、
前記第2導電型のウェル領域上に前記第1導電型ウェルから第1のドレインオフセット領域と更に第2のドレインオフセット領域分を隔てて設けられた第1導電型の高濃度ドレイン領域と、
前記低濃度ソースオフセット領域と前記第1のドレインオフセット領域との前記半導体基板の表面部分に設けられたLOCOS酸化膜と、
前記チャネル形成領域に接する前記LOCOS酸化膜上のソース側の一部と前記チャネル形成領域と前記チャネル形成領域に接するLOCOS酸化膜上のドレイン側の全てと第1ドレインオフセット領域の上に設けられたゲート酸化膜と、
前記ゲート酸化膜上に設けられたゲート電極と、
前記高濃度ソース領域上に設けられたソース電極と、
前記高濃度ドレイン領域上に設けられたドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極以外の部分の表面に設けられた保護酸化膜を有する半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−66245(P2011−66245A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216244(P2009−216244)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】