説明

半導体装置

【課題】体格及びコストの増大が抑制された半導体装置を提供する。
【解決手段】直流電源とグランドとの間に直列接続された2つの単位回路と、単位回路を制御する制御部と、を備え、2つの単位回路の中点に誘導性負荷が接続された半導体装置であって、2つの単位回路それぞれは、第1スイッチ素子と、第1スイッチ素子と逆並列接続された還流ダイオードと、還流ダイオードと第1スイッチ素子それぞれと並列接続されたバイパス部と、を有し、バイパス部は、直列接続された第2スイッチ素子及び抵抗を有し、制御部は、2つの単位回路の第1スイッチ素子をOFF状態にするデッド期間を挟んで、2つの第1スイッチ素子を交互にON状態とし、デッド期間において、一方の第1スイッチ素子がOFF状態からON状態に移行するまで、一方の第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子をON状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源とグランドとの間に直列接続された2つの単位回路と、2つの単位回路を制御する制御部と、を備え、2つの単位回路の中点に誘導性負荷の一端が接続された半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば非特許文献1に示されるように、直流電源とグランドとの間に2つのMOSFETが直列接続され、その中点に誘導性負荷が接続されたインバータが提案されている。MOSFETは、寄生ダイオードを有するので、上記したインバータは、直流電源とグランドとの間に2つのスイッチ素子が直列接続され、各スイッチ素子に寄生ダイオードが逆並列に接続された構成となっている。このインバータは、2つのスイッチ素子がOFF状態となるデッド期間を挟んで、2つのスイッチ素子(MOSFET)を交互にON状態とする動作を行う。
【0003】
ところで、上記したデッド期間において、誘導性負荷に電流が流れ、一方のスイッチ素子と逆並列に接続された寄生ダイオードに電流が流れている場合、この電流の流れている寄生ダイオードにキャリアが蓄積される。この状態から、他方のスイッチ素子がON状態に移行すると、寄生ダイオードにリカバリ電流が流れ、寄生ダイオードの両端電圧にリンギングが発生する。リンギングは、寄生ダイオードの静電容量とインバータの寄生誘導性負荷とに起因するLC共振であるが、その大きさは、寄生ダイオードに蓄積されたキャリアに依存する。
【0004】
上記したリンギングの発生を抑制するために、非特許文献1に示されるインバータでは、MOSFETにリカバリアシスト回路が並列接続されている。リカバリアシスト回路は、直列接続されたリカバリアシスト用スイッチ回路とリカバリアシスト用補助電源とを有する。デッド期間において、リカバリアシスト用スイッチ回路をON状態とすることで、リカバリ用補助電源の電圧が、寄生ダイオードに逆方向に印加される。これによって、キャリアの蓄積が抑制され、リンギングが抑制される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】東芝レビューVol.61,No.11(2006),p.32−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、非特許文献1に示されるインバータでは、MOSFETにリカバリアシスト用回路が並列接続されており、リカバリアシスト用回路は、リカバリアシスト用補助電源を有する。このように、直流電源とは別に電源を用いているので、インバータの体格やコストの増大が懸念される。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、体格及びコストの増大が抑制された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、直流電源とグランドとの間に直列接続された2つの単位回路と、2つの単位回路を制御する制御部と、を備え、2つの単位回路の中点に誘導性負荷の一端が接続された半導体装置であって、2つの単位回路それぞれは、直流電源とグランドとの間に直列接続された第1スイッチ素子と、該第1スイッチ素子と逆並列接続された還流ダイオードと、を有し、2つの単位回路の内の少なくとも一方は、還流ダイオード及び第1スイッチ素子それぞれと並列接続されたバイパス部を有し、バイパス部は、直列接続された第2スイッチ素子及び抵抗を有し、制御部は、2つの単位回路の第1スイッチ素子を所定期間OFF状態にするデッド期間を挟んで、2つの第1スイッチ素子を交互にON状態とし、デッド期間において、一方の第1スイッチ素子がOFF状態からON状態に移行するまで、一方の第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子をON状態にすることを特徴とする。
【0009】
例えば、直流電源側に位置する第1スイッチ素子にバイパス部が並列接続されたとする(以下、ハイサイドバイパス部と示す)。そして、デッド期間において、誘導性負荷に中点から遠ざかる向きの電流が流れ、グランド側に位置する第1スイッチ素子と逆並列接続された還流ダイオード(以下、ローサイド還流ダイオードと示す)に中点へ向う電流が流れているとする。この場合、誘導性負荷を流れている電流(以下、負荷電流と示す)とローサイド還流ダイオードを流れている電流(以下、還流電流と示す)とが等しいことになる。この状態で、ハイサイドバイパス部の第2スイッチ素子をON状態にすると、ハイサイドバイパス部に中点へ向う電流が流れる。この場合、負荷電流が、還流電流とハイサイドバイパス部を流れている電流(以下、バイパス電流と示す)との和に等しいことになる。負荷電流はほとんど変動しないので、上記したハイサイドバイパス部の駆動の結果、還流電流がバイパス電流分だけ減少することとなる。これによれば、還流ダイオードへのキャリアの蓄積が抑制され、還流ダイオードの静電容量と半導体装置の寄生誘導性負荷とに起因するリンギング(LC共振)が抑制される。
【0010】
以上、示したように、請求項1に記載の発明では、第2スイッチ素子と抵抗から成るバイパス部が第1スイッチ素子及び還流ダイオードに並列接続された構成とすることで、リンギングを抑制している。したがって、リンギングを抑制するために、直流電源とは別に、補助電源と補助スイッチから成る補助回路が第1スイッチ素子及び還流ダイオードに並列接続された構成と比べて、半導体装置の体格及びコストの増大が抑制される。
【0011】
請求項2に記載のように、2つの単位回路それぞれは、バイパス部を有する構成が好ましい。これによれば、2つの単位回路それぞれの還流ダイオードでのリンギングの発生が抑制される。
【0012】
請求項3に記載のように、第1スイッチ及び第2スイッチ素子は、第1電圧レベルの信号が入力されるとON状態となり、第1電圧レベルとは異なる第2電圧レベルの信号が入力されるとOFF状態となる性質を有し、制御部は、電圧レベルが第1電圧レベルと第2電圧レベルとに周期的に変化する制御信号を生成する制御信号生成部と、制御信号の一部を遅延させる遅延回路と、入力される信号の電圧レベルによって出力する信号の電圧レベルを変化させる論理ゲートと、を有し、制御信号生成部は、第1制御信号と、デッド期間以外、第1制御信号とは電圧レベルが反対となる第2制御信号と、該第2制御信号の立ち下がりエッジから第1制御信号の立ち上がりエッジまでのデッド期間の間第1電圧レベルとなる第3制御信号と、第1制御信号の立ち下がりエッジから第2制御信号の立ち上がりエッジまでのデッド期間の間第1電圧レベルとなる第4制御信号と、を生成し、遅延回路は、第3制御信号をデッド期間よりも短い時間遅延する第1遅延回路と、第4制御信号をデッド期間よりも短い時間遅延する第2遅延回路と、を有し、論理ゲートは、第1制御信号と第2制御信号とが入力されるNORゲートと、該NORゲートの出力信号と第1遅延回路を介した第3制御信号とが入力される第1ANDゲートと、NORゲートの出力信号と第2遅延回路を介した第4制御信号とが入力される第2ANDゲートと、を有し、第1制御信号が、一方の第1スイッチ素子に入力され、第2制御信号が、他方の第1スイッチ素子に入力され、第1ANDゲートの出力信号が、一方の第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子に入力され、第2ANDゲートの出力信号が、他方の第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子に入力される構成が好適である。
【0013】
これによれば、第2制御信号の立ち下がりエッジから第1制御信号の立ち上がりエッジまでのデッド期間にて、第1ANDゲートから第1電圧レベルの出力信号が出力される。したがって、「デッド期間において、一方の第1スイッチ素子がOFF状態からON状態に移行するまで、一方の第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子をON状態にする」ことが実現される。
【0014】
また、第1制御信号の立ち下がりエッジから第2制御信号の立ち上がりエッジまでのデッド期間にて、第2ANDゲートから第1電圧レベルの出力信号が出力される。したがって、「デッド期間において、他方の第1スイッチ素子がOFF状態からON状態に移行するまで、他方の第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子をON状態にする」ことが実現される。
【0015】
請求項4に記載のように、バイパス部は、第1スイッチ素子の両端の間に直列接続された第2スイッチ素子及び抵抗を複数有し、直列接続された複数の第2スイッチ素子及び抵抗は、第1スイッチ素子の両端の間で並列接続された構成が好ましい。これによれば、複数の第2スイッチ素子の内、ON状態とする第2スイッチ素子を選択することで、第1スイッチ素子の両端に接続されたバイパス部の抵抗値を調整することができる。これにより、バイパス電流が調整され、還流電流の減少量が調整される。
【0016】
請求項5に記載のように、制御部は、誘導性負荷を流れる電流の電流量に基づいて、複数の第2スイッチ素子の少なくとも1つをON状態にする構成が良い。これによれば、負荷電流の大小に応じて、バイパス電流が調整され、還流電流の減少量が調整される。したがって、負荷電流の大小に応じて、リンギングを抑制することができる。
【0017】
請求項5に記載の具体的な構成として、請求項6に記載のように、制御部は、第1ANDゲートと対応する一方の第2スイッチ素子との間に各々設けられ、第1ANDゲートと一方の第2バイパス部との間に並列接続された複数の第3スイッチ素子と、第2ANDゲートと対応する他方の第2スイッチ素子との間に各々設けられ、第2ANDゲートと他方の第2バイパス部との間に並列接続された複数の第4スイッチ素子と、第3スイッチ素子及び第4スイッチ素子に駆動信号を出力するアドレスデコーダと、誘導性負荷を流れる電流を、その電流量に応じた電圧値に変換する電圧変換部と、該電圧変換部によって変換された電圧と閾値とを比較する複数のコンパレータと、を有し、複数のコンパレータは、それぞれ異なる閾値を有し、アドレスデコーダは、複数のコンパレータの出力信号に基づいて、駆動信号を出力する第3スイッチ素子及び第4スイッチ素子を選択する構成を採用することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明の作用効果は、請求項1に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【0019】
請求項8,9に記載の発明の作用効果は、請求項4,5に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係るインバータの概略構成を示す回路図である。
【図2】図1に示す制御部の概略構成を示す回路図である。
【図3】制御部の信号を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】ローサイド還流ダイオードのリンギングを説明するためのタイミングチャートである。
【図5】図4に示すタイミングにおいて、インバータを流れる電流を説明するための回路図であり、(a)は第1期間、(b)は第2期間、(c)は第3期間を示している。
【図6】ハイサイド還流ダイオードのリンギングを説明するためのタイミングチャートである。
【図7】図6に示すタイミングにおいて、インバータを流れる電流を説明するための回路図であり、(a)は第4期間、(b)は第5期間、(c)は第6期間を示している。
【図8】第2実施形態に係るインバータの概略構成を示す回路図である。
【図9】図8に示す制御部の特徴点を示す回路図である。
【図10】インバータの変形例を示す回路図である。
【図11】インバータの変形例を示す回路図である。
【図12】インバータの変形例を示す回路図である。
【図13】インバータの変形例を示す回路図である。
【図14】インバータの変形例を示す回路図である。
【図15】インバータの変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る半導体装置を、直流電圧を交流電圧に変換するインバータに適用した場合の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るインバータの概略構成を示す回路図である。図2は、図1に示す制御部の概略構成を示す回路図である。図3は、制御部の信号を説明するためのタイミングチャートである。図4は、ローサイド還流ダイオードのリンギングを説明するためのタイミングチャートである。図5は、図4に示すタイミングにおいて、インバータを流れる電流を説明するための回路図であり、(a)は第1期間、(b)は第2期間、(c)は第3期間を示している。図6は、ハイサイド還流ダイオードのリンギングを説明するためのタイミングチャートである。図7は、図6に示すタイミングにおいて、インバータを流れる電流を説明するための回路図であり、(a)は第4期間、(b)は第5期間、(c)は第6期間を示している。
【0022】
図1に示すように、インバータ100は、要部として、直流電源とグランドとの間に直列接続された2つの単位回路10,30と、2つの単位回路10,30を制御する制御部50と、を有する。2つの単位回路10,30の中点MPに誘導性負荷70の一端が接続され、インバータ100にて直流電圧から交流電圧に変換された電圧が、誘導性負荷70に出力される構成となっている。直流電圧から交流電圧への変換は、制御部50によって、単位回路10,30の第1スイッチ素子13,33を所定期間OFF状態にするデッド期間DTを挟んで、2つの第1スイッチ素子13,33を交互にON状態に切り換えることで成される。なお、直流電源と単位回路10との間にある誘導性負荷71は、インバータ100の寄生誘導性負荷である。
【0023】
図1に示すように、単位回路10は直流電源側に位置し、単位回路30はグランド側に位置している。したがって、以下においては、単位回路10をハイサイド単位回路10と示し、単位回路30をローサイド単位回路30と示す。
【0024】
ハイサイド単位回路10は、ハイサイドMOSFET11と、ハイサイドバイパス部12と、を有する。ハイサイドMOSFET11は、スイッチとしての機能を果たすハイサイド第1スイッチ素子13と、ハイサイド第1スイッチ素子13と逆並列接続された、ハイサイド還流ダイオード14と、を有する。ハイサイドバイパス部12は、ハイサイドMOSFET11と並列接続されており、ハイサイドMOSFET11の両端の間で直列接続されたハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16を有する。なお、ハイサイド還流ダイオード14は、ハイサイドMOSFET11の寄生ダイオードである。
【0025】
ローサイド単位回路30は、ローサイドMOSFET31と、ローサイドバイパス部32と、を有する。ローサイドMOSFET31は、スイッチとしての機能を果たすローサイド第1スイッチ素子33と、ローサイド第1スイッチ素子33と逆並列接続された、ローサイド還流ダイオード34と、を有する。ローサイドバイパス部32は、ローサイドMOSFET31と並列接続されており、ローサイドMOSFET31の両端の間で直列接続されたローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36を有する。なお、ローサイド還流ダイオード34は、ローサイドMOSFET31の寄生ダイオードである。
【0026】
上記したMOSFET11,31はNチャネル型であり、第1スイッチ素子13,33は、電圧レベルの高いHiレベルの信号(以下、Hi信号と示す)が入力されるとON状態になり、電圧レベルの低いLoレベルの信号(以下、Lo信号と示す)が入力されるとOFF状態になる性質を有する。また、第2スイッチ素子15,35も、Hi信号が入力されるとON状態になり、Lo信号が入力されるとOFF状態になる性質を有する。
【0027】
制御部50は、上記したデッド期間DTを挟んで、第1スイッチ素子13,33を交互にON状態とし、デッド期間DTにおいて、ハイサイド第1スイッチ素子13がOFF状態からON状態に移行するまで、ハイサイド第2スイッチ素子15をON状態にするとともに、デッド期間DTにおいて、ローサイド第1スイッチ素子33がOFF状態からON状態に移行するまで、ローサイド第2スイッチ素子35をON状態にするものである。図2に示すように、制御部50は、電圧レベルがHiレベルとLoレベルとに周期的に変化する制御信号SA〜SDを生成する制御信号生成部51と、制御信号SC,SDを遅延させる遅延回路52と、入力される信号の電圧レベルによって出力する信号の電圧レベルを変化させる論理ゲート53と、を有する。
【0028】
制御信号生成部51は、第1制御信号SAと、デッド期間DT以外、第1制御信号SAとは電圧レベルが反対となる第2制御信号SBと、該第2制御信号SBの立ち下がりエッジから第1制御信号SAの立ち上がりエッジまでの第1デッド期間DT1の間Hiレベルとなる第3制御信号SCと、第1制御信号SAの立ち下がりエッジから第2制御信号SBの立ち上がりエッジまでの第2デッド期間DT2の間Hiレベルとなる第4制御信号SDと、を生成する。第1制御信号SAが、ハイサイド第1スイッチ素子13に入力され、第2制御信号SBが、ローサイド第1スイッチ素子33に入力される。なお、制御信号SA,SBのデューティ比と周波数とは等しく、デッド期間DT1,DT2の時間は等しくなっている。
【0029】
遅延回路52は、デッド期間DTよりも短い時間遅延する遅延回路54,55を有する。第1遅延回路54に第3制御信号SCが入力され、第2遅延回路55に第4制御信号SDが入力される。第1遅延回路54から、第1デッド期間DT1よりも短い時間遅延された第3制御信号SC‘が出力され、第2遅延回路55から、第2デッド期間DT2よりも短い時間遅延された第4制御信号SD‘が出力される。本実施形態では、遅延回路54,55はデッド期間DTの半分の時間遅延させる機能を奏する。
【0030】
論理ゲート53は、2つの入力信号がLoレベルの場合に、Hi信号を出力するNORゲート56と、2つの入力信号がHiレベルの場合に、Hi信号を出力するANDゲート57,58と、を有する。NORゲート56に、第1制御信号SAと第2制御信号SBとが入力され、第1ANDゲート57に、NORゲート56の出力信号SEと第1遅延回路54を介した第3制御信号SC‘とが入力される。また、第2ANDゲート58に、NORゲート56の出力信号SEと第2遅延回路55を介した第4制御信号SD’とが入力される。第1ANDゲート57の出力信号SFが、ハイサイド第2スイッチ素子15に入力され、第2ANDゲート58の出力信号SGが、ローサイド第2スイッチ素子35に入力される。
【0031】
次に、本実施形態に係るインバータ100の動作を図1〜図3に基づいて説明する。以下においては、説明を簡便とするために、第1デッド期間DT1の始まる時間をt1、中間の時間をt2、終わる時間をt3と示し、第2デッド期間DT2の始まる時間をt4、中間の時間をt5、終わる時間をt6と示す。そして、時間t1〜t2を第1期間、時間t2〜t3を第2期間、時間t3〜t4を第3期間と示し、時間t4〜t5を第4期間、時間t5〜t6を第5期間、時間t6〜t1を第6期間と示す。なお、第1期間、第2期間、第4期間、第5期間それぞれの時間は相等しく、デッド期間DTの半分の時間に相当する。
【0032】
図3に示すように、第1期間の間、制御信号SA,SBはLoレベルとなっている。そのため、第1スイッチ素子13,33はともにOFF状態となり、NORゲート56の出力信号SEはHiレベルとなっている。また、第3制御信号SCはHiレベル、第4制御信号SDはLoレベルとなっているが、制御信号SC,SDはデッド期間以外Loレベルなので、遅延回路54,55の出力信号SC‘,SD’もLoレベルとなっている。以上から、ANDゲート57,58それぞれには、Hi信号とLo信号とが入力されるので、ANDゲート57,58の出力信号SF,SGはLoレベルとなっている。そのため、第2スイッチ素子15,35はともにOFF状態となっている。この期間では、還流ダイオード14,34のいずれか一方に電流が流れ、誘導性負荷70に電流が流れている。以下においては、還流ダイオード14,34に流れる電流を還流電流、誘導性負荷70に流れる電流を負荷電流と示す。
【0033】
第2期間の間、制御信号SA,SBはLoレベルとなっている。そのため、第1スイッチ素子13,33はともにOFF状態となり、NORゲート56の出力信号SEはHiレベルとなっている。また、第3制御信号SCはHiレベル、第4制御信号SDはLoレベルとなっているが、第1期間の間、第3制御信号SCはHiレベル、第4制御信号SDはLoレベルとなっているので、第1遅延回路54の出力信号SC‘がHiレベル、第2遅延回路55の出力信号SD‘がLoレベルとなっている。以上から、第1ANDゲート57には、2つのHi信号が入力されるので、第1ANDゲート57の出力信号SFはHiレベルとなっている。また、第2ANDゲート58には、Hi信号とLo信号とが入力されるので、第2ANDゲート58の出力信号SGはLoレベルとなっている。そのため、ハイサイド第2スイッチ素子15がON状態となり、ローサイド第2スイッチ素子35がOFF状態となっている。この期間では、還流電流と負荷電流の他に、ハイサイドバイパス部12に中点MPに近づく向きの電流が流れる。以下においては、バイパス部12,32に流れる電流をバイパス電流と示す。
【0034】
第3期間の間、第1制御信号SAはHiレベル、第2制御信号SBはLoレベルとなっている。そのため、ハイサイド第1スイッチ素子13はON状態となり、ローサイド第1スイッチ素子33はOFF状態となり、NORゲート56の出力信号SEはLoレベルとなっている。Loレベルの出力信号SEがANDゲート57,58に入力されるが、ANDゲート57,58は2つの入力信号がHiレベルの場合に、Hi信号を出力する性質を有するので、ANDゲート57,58の出力信号SF,SGはLoレベルとなっている。そのため、第2スイッチ素子15,35はともにOFF状態となっている。この期間では、誘導性負荷70に負荷電流が流れ、ハイサイド第1スイッチ素子13に電流が流れる。そして、還流ダイオード14,34のいずれか一方に逆電流が流れて、リンギングが発生する場合がある。このリンギングが発生する場合は、後述する。
【0035】
第4期間の間、制御信号SA,SBはLoレベルとなっている。そのため、第1スイッチ素子13,33はともにOFF状態となり、NORゲート56の出力信号SEはHiレベルとなっている。また、第3制御信号SCはLoレベル、第4制御信号SDはHiレベルとなっているが、制御信号SC,SDはデッド期間以外Loレベルなので、遅延回路54,55の出力信号SC‘,SD’もLoレベルとなっている。以上から、ANDゲート57,58それぞれには、Hi信号とLo信号とが入力されるので、ANDゲート57,58の出力信号SF,SGはLoレベルとなっている。そのため、第2スイッチ素子15,35はともにOFF状態となっている。この期間では、還流ダイオード14,34のいずれか一方に還流電流が流れ、誘導性負荷70に負荷電流が流れる。
【0036】
第5期間の間、制御信号SA,SBはLoレベルとなっている。そのため、第1スイッチ素子13,33はともにOFF状態となり、NORゲート56の出力信号SEはHiレベルとなっている。また、第3制御信号SCはLoレベル、第4制御信号SDはHiレベルとなっているが、第4期間の間、第3制御信号SCはLoレベル、第4制御信号SDはHiレベルとなっているので、第1遅延回路54の出力信号SC‘がLoレベル、第2遅延回路55の出力信号SD‘がHiレベルとなっている。以上から、第1ANDゲート57には、Hi信号とLo信号とが入力されるので、第1ANDゲート57の出力信号SFはLoレベルとなっている。また、第2ANDゲート58には、2つのHi信号が入力されるので、第2ANDゲート58の出力信号SGはHiレベルとなっている。そのため、ハイサイド第2スイッチ素子15がOFF状態となり、ローサイド第2スイッチ素子35がON状態となっている。この期間では、還流電流と負荷電流の他に、ローサイドバイパス部32に中点MPから遠ざかる向きのバイパス電流が流れる。
【0037】
第6期間の間、第1制御信号SAはLoレベル、第2制御信号SBはHiレベルとなっている。そのため、ハイサイド第1スイッチ素子13はOFF状態となり、ローサイド第1スイッチ素子33はON状態となり、NORゲート56の出力信号SEはLoレベルとなっている。Loレベルの出力信号SEがANDゲート57,58に入力されるが、ANDゲート57,58は2つの入力信号がHiレベルの場合に、Hi信号を出力する性質を有するので、ANDゲート57,58の出力信号SF,SGはLoレベルとなっている。そのため、第2スイッチ素子15,35はともにOFF状態となっている。この期間では、誘導性負荷70に負荷電流が流れ、ローサイド第1スイッチ素子33に電流が流れる。そして、還流ダイオード14,34のいずれか一方に逆電流が流れて、リンギングが発生する場合がある。このリンギングが発生する場合は、後述する。
【0038】
次に、リンギングの発生、及び、本実施形態に係るインバータ100の作用効果について、図4〜図7に基づいて説明する。なお、図4及び図6では、インバータ100がバイパス部12,32を有さない場合の両端電圧Vd11,Vd12と還流電流Id11,Id12を一点鎖線で示し、図5及び図7では、インバータ100と誘導性負荷70に流れる電流を破線矢印で示している。
【0039】
図5の(a)に示すように、第1期間において、誘導性負荷70に中点MPから遠ざかる向きの負荷電流が流れ、ローサイド還流ダイオード34に中点MPへ向う還流電流Id12が流れている場合、負荷電流と還流電流Id12とが等しいことになる。
【0040】
第1期間から第2期間に移行して、ハイサイド第2スイッチ素子15がON状態になると、図5の(b)に示すように、ハイサイドバイパス部12に中点MPへ向うバイパス電流が流れる。この場合、負荷電流が、還流電流Id12とバイパス電流との和に等しいことになる。負荷電流はほとんど変動しないので、ハイサイド第2スイッチ素子15の駆動の結果、還流電流Id12がバイパス電流分だけ減少することとなる。これによれば、ローサイド還流ダイオード34へのキャリアの蓄積が抑制される。
【0041】
第2期間から第3期間に移行して、ハイサイド第2スイッチ素子15がOFF状態になると共に、ハイサイド第1スイッチ素子13がON状態になると、図5の(c)に示すように、ローサイド還流ダイオード34に逆電流が流れ、両端電圧Vd12及び還流電流Id12に、ローサイド還流ダイオード34の静電容量と誘導性負荷71とに起因するリンギング(LC共振)が発生する。しかしながら、第2期間において、ローサイド還流ダイオード34へのキャリアの蓄積が抑制されているので、リンギングが抑制される。
【0042】
また、図7の(a)に示すように、第4期間において、誘導性負荷70に中点MPに近づく向きの負荷電流が流れ、ハイサイド還流ダイオード14に中点MPから遠ざかる向きの還流電流Id11が流れている場合、負荷電流と還流電流Id11とが等しいことになる。
【0043】
第4期間から第5期間に移行して、ローサイド第2スイッチ素子35がON状態になると、図7の(b)に示すように、ローサイドバイパス部32に中点MPから遠ざかる向きのバイパス電流が流れる。この場合、負荷電流が、還流電流Id11とバイパス電流との和に等しいことになる。負荷電流はほとんど変動しないので、ローサイド第2スイッチ素子35の駆動の結果、還流電流Id11がバイパス電流分だけ減少することとなる。これによれば、ハイサイド還流ダイオード14へのキャリアの蓄積が抑制される。
【0044】
第5期間から第6期間に移行して、ローサイド第2スイッチ素子35がOFF状態になると共に、ローサイド第1スイッチ素子33がON状態になると、図7の(c)に示すように、ハイサイド還流ダイオード14に逆電流が流れ、両端電圧Vd11及び還流電流Id11に、ハイサイド還流ダイオード14の静電容量と誘導性負荷71とに起因するリンギング(LC共振)が発生する。しかしながら、第5期間において、ハイサイド還流ダイオード14へのキャリアの蓄積が抑制されているので、リンギングが抑制される。
【0045】
以上、示したように、インバータ100では、ハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16とから成るハイサイドバイパス部12が、ハイサイドMOSFET11に並列接続され、ローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36とから成るローサイドバイパス部32が、ローサイドMOSFET31に並列接続された構成とすることで、リンギングを抑制している。したがって、リンギングを抑制するために、直流電源とは別に、補助電源と補助スイッチから成る補助回路が2つのMOSFETそれぞれに並列接続された構成と比べて、インバータ100の体格及びコストの増大が抑制される。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図8及び図9に基づいて説明する。図8は、第2実施形態に係るインバータの概略構成を示す回路図であり、第1実施形態で示した図1に対応している。図9は、図8に示す制御部の特徴点を示す回路図であり、第1実施形態で示した図2に対応している。なお、図9においては、便宜上、制御信号生成部51、遅延回路52、及び、論理ゲート53の一部を省略している。
【0047】
第2実施形態に係るインバータ100は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0048】
第1実施形態では、ハイサイドバイパス部12が、ハイサイドMOSFET11の両端の間に直列接続された1つのハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16を有し、ローサイドバイパス部32が、ローサイドMOSFET31の両端の間に直列接続された1つのローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36を有する例を示した。これに対し、本実施形態では、ハイサイドバイパス部12が、ハイサイドMOSFET11の両端の間に直列接続された3つのハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16を有し、ローサイドバイパス部32が、ローサイドMOSFET31の両端の間に直列接続された3つのローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36を有する点を特徴とする。
【0049】
図8に示すように、3つの直列接続されたハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16がハイサイドMOSFET11の両端の間で並列接続され、3つの直列接続されたローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36がローサイドMOSFET31の両端の間で並列接続されている。本実施形態では、各抵抗16,36の抵抗値が相等しくなっている。
【0050】
第2実施形態に係る制御部50は、3つの第2スイッチ素子15,35の少なくとも1つをON状態とすることで、バイパス部12,32を駆動させる。図9に示すように、制御部50は、第1実施形態で示した主要な構成要素51〜53の他に、第3スイッチ素子59と、第4スイッチ素子60と、アドレスデコーダ61と、電圧変換部62と、コンパレータ63と、を有する。第3スイッチ素子59が、第1ANDゲート57と対応するハイサイド第2スイッチ素子15との間に設けられ、3つの第3スイッチ素子59が第1ANDゲート57とハイサイドバイパス部12との間で並列接続されている。第4スイッチ素子60が、第2ANDゲート58と対応するローサイド第2スイッチ素子35との間に設けられ、3つの第4スイッチ素子60が第2ANDゲート58とローサイドバイパス部32との間で並列接続されている。
【0051】
アドレスデコーダ61の出力信号(駆動信号)が、スイッチ素子59,60それぞれに入力され、アドレスデコーダ61に、ANDゲート57,58とコンパレータ63それぞれの出力信号が入力されている。アドレスデコーダ61は、第1ANDゲート57からHi信号が入力された場合に、第3スイッチ素子59に駆動信号を出力し、第2ANDゲート58からHi信号が入力された場合に、第4スイッチ素子60に駆動信号を出力する。また、アドレスデコーダ61は、コンパレータ63の出力信号に基づいて、駆動信号を出力するスイッチ素子59,60を選択する。
【0052】
電圧変換部62は、負荷電流を電圧に変換するものである。電圧変換部62からは、負荷電流の電流量に応じた電圧が出力される。変換される電圧の値は、負荷電流の流動方向に依存せず、その流動量(電流量)のみに依存する。
【0053】
コンパレータ63は、電圧変換部62によって変換された電圧(以下、負荷電圧Vlと示す)と第1閾値電圧Vref1とを比較する第1コンパレータ64と、負荷電圧Vlと第2閾値電圧Vref2とを比較する第2コンパレータ65と、を有する。第1閾値電圧Vref1は、第2閾値電圧Vref2よりも電圧レベルが低く、負荷電圧Vlがコンパレータ64,65の反転入力端子に接続されている。そのため、負荷電圧Vlが第1閾値電圧Vref1よりも低い場合、コンパレータ64,65それぞれからLo信号が出力され、負荷電圧Vlが第1閾値電圧Vref1よりも高く第2閾値電圧Vref2よりも低い場合、第1コンパレータ64からHi信号が出力され、第2コンパレータ65からLo信号が出力される。また、負荷電圧Vlが第2閾値電圧Vref2よりも高い場合、コンパレータ64,65それぞれからHi信号が出力される。
【0054】
アドレスデコーダ61は、コンパレータ64,65それぞれからLo信号が入力された場合、負荷電流の電流量が少ない状態(小電流状態)であると判断し、第1コンパレータ64からHi信号が入力され、第2コンパレータ65からLo信号が入力された場合、負荷電流の電流量が通常の状態(中電流状態)であると判断する。また、アドレスデコーダ61は、コンパレータ64,65それぞれからHi信号が入力された場合、負荷電流の電流量が多い状態(大電流状態)であると判断する。
【0055】
アドレスデコーダ61は、小電流状態において、第1ANDゲート57からHi信号が入力された場合、1つの第3スイッチ素子59に駆動信号を出力して、1つの直列接続されたハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16をハイサイドMOSFET11に接続する。また、アドレスデコーダ61は、小電流状態において、第2ANDゲート58からHi信号が入力された場合、1つの第4スイッチ素子60に駆動信号を出力して、1つの直列接続されたローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36をローサイドMOSFET31に接続する。上記したように、各抵抗16,36の抵抗値が相等しくなっている。そのため、1つのハイサイド抵抗16(ローサイド抵抗36)が直列接続された場合、2つのハイサイド抵抗16(ローサイド抵抗36)が並列接続された場合と比べて、その抵抗値が増大する。これにより、小電流状態において、バイパス部12,32を流れる電流量を少なくすることができる。
【0056】
アドレスデコーダ61は、中電流状態において、第1ANDゲート57からHi信号が入力された場合、2つの第3スイッチ素子59それぞれに駆動信号を出力して、2つの直列接続されたハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16をハイサイドMOSFET11に並列接続する。また、アドレスデコーダ61は、中電流状態において、第2ANDゲート58からHi信号が入力された場合、2つの第4スイッチ素子60それぞれに駆動信号を出力して、2つの直列接続されたローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36をローサイドMOSFET31に並列接続する。2つのハイサイド抵抗16(ローサイド抵抗36)が並列接続された場合、1つのハイサイド抵抗16(ローサイド抵抗36)が直列接続された場合と比べて、その抵抗値が減少する。これにより、中電流状態において、バイパス部12,32を流れる電流量を中程度にすることができる。
【0057】
アドレスデコーダ61は、大電流状態において、第1ANDゲート57からHi信号が入力された場合、3つの第3スイッチ素子59それぞれに駆動信号を出力して、3つの直列接続されたハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16をハイサイドMOSFET11に並列接続する。また、アドレスデコーダ61は、大電流状態において、第2ANDゲート58からHi信号が入力された場合、3つの第4スイッチ素子60それぞれに駆動信号を出力して、3つの直列接続されたローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36をローサイドMOSFET31に並列接続する。3つのハイサイド抵抗16(ローサイド抵抗36)が並列接続された場合、2つのハイサイド抵抗16(ローサイド抵抗36)が直列接続された場合と比べて、その抵抗値が減少する。これにより、大電流状態において、バイパス部12,32を流れる電流量を多くすることができる。
【0058】
以上、示したように、負荷電流の大小に応じて、バイパス電流が調整される。これにより、負荷電流に応じて還流電流の減少量が調整される。この結果、負荷電流の大小に応じて、リンギングが抑制される。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0060】
第1実施形態では、遅延回路54,55はデッド期間DTの半分の時間遅延させる例を示した。しかしながら、遅延回路54,55の遅延させる時間は、上記例に限定されず、デッド期間DTよりも短ければ適宜採用することができる。
【0061】
第2実施形態では、ハイサイドバイパス部12が、ハイサイドMOSFET11の両端の間に直列接続された3つのハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16を有し、ローサイドバイパス部32が、ローサイドMOSFET31の両端の間に直列接続された3つのローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36を有する例を示した。しかしながら、ハイサイドMOSFET11の両端の間に直列接続されたハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16の数、及び、ローサイドMOSFET31の両端の間に直列接続されたローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36の数としては、上記例に限定されない。例えば、2つや4つでも良い。
【0062】
第2実施形態では、アドレスデコーダ61が、第1ANDゲート57からHi信号が入力された場合に、第3スイッチ素子59に駆動信号を出力し、第2ANDゲート58からHi信号が入力された場合に、第4スイッチ素子60に駆動信号を出力する例を示した。しかしながら、そもそも、ANDゲート57,58それぞれからHi信号が出力されていない限り、ANDゲート57,58よりも下流に位置する第2スイッチ素子15,35にHi信号は入力されない。そのため、ANDゲート57,58からHi信号が出力された時に限って、ANDゲート57,58と第2スイッチ素子15,35の間に位置するスイッチ素子59,60に駆動信号を出力しなくとも良い。したがって、アドレスデコーダ61に、ANDゲート57,58の出力信号が入力されなくとも良い。
【0063】
第2実施形態では、各抵抗16,36の抵抗値が相等しい例を示した。しかしながら、各抵抗16,36の抵抗値が異なっていても良い。この場合、アドレスデコーダ61は、小電流状態において、最も高い抵抗値を有する抵抗16,36と直列接続された第2スイッチ素子15,35に対応するスイッチ素子59,60に駆動信号を出力する。また、アドレスデコーダ61は、中電流状態において、中程度の抵抗値を有する抵抗16,36と直列接続された第2スイッチ素子15,35に対応するスイッチ素子59,60に駆動信号を出力する。そして、アドレスデコーダ61は、大電流状態において、最も低い抵抗値を有する抵抗16,36と直列接続された第2スイッチ素子15,35に対応するスイッチ素子59,60に駆動信号を出力する。
【0064】
各実施形態では、ハイサイド単位回路10がハイサイドMOSFET11と、ハイサイドバイパス部12と、を有し、ローサイド単位回路30がローサイドMOSFET31と、ローサイドバイパス部32と、を有する例を示した。しかしながら、ローサイド還流ダイオード34のリカバリ特性が良い場合、図10に示すように、ハイサイド単位回路10が、ハイサイドMOSFET11のみを有する構成を採用することもできる。これとは逆に、ハイサイド還流ダイオード14のリカバリ特性が良い場合、図11に示すように、ローサイド単位回路30が、ローサイドMOSFET31のみを有する構成を採用することもできる。
【0065】
また、他の変形例としては、図12,13に示す変形例が考えられる。図12に示す変形例の場合、ローサイド還流ダイオード34に電流が流れることはないので、ハイサイド単位回路10が、ハイサイドダイオード17のみを有する構成を採用することもできる。これとは逆の構成である、図13に示す変形例の場合、ハイサイド還流ダイオード14に電流が流れることはないので、ローサイド単位回路30が、ローサイドダイオード37のみを有する構成を採用することもできる。
【0066】
なお、図12に示す変形例では、ローサイドバイパス部32が、1つのローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36を有する例を示した。しかしながら、図14に示すように、ローサイドバイパス部32が、ローサイドMOSFET31の両端の間に直列接続された3つのローサイド第2スイッチ素子35とローサイド抵抗36を有してもよい。また、図13に示す変形例では、ハイサイドバイパス部12が、1つのハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16を有する例を示した。しかしながら、図15に示すように、ハイサイドバイパス部12が、ハイサイドMOSFET11の両端の間に直列接続された3つのハイサイド第2スイッチ素子15とハイサイド抵抗16を有してもよい。この場合、制御部50は、第2実施形態と同様にして、負荷電流に基づいて、複数の第2スイッチ素子15,35の少なくとも1つをON状態にする。ちなみに、第2スイッチ15,35及び抵抗16,36の数としては、上記例のように3つに限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10・・・ハイサイド単位回路
11・・・ハイサイドMOSFET
12・・・ハイサイドバイパス部
30・・・ローサイド単位回路
31・・・ローサイドMOSFET
32・・・ローサイドバイパス部
50・・・制御部
51・・・制御信号生成部
52・・・遅延回路
53・・・論理ゲート
70・・・誘導性負荷
100・・・インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源とグランドとの間に直列接続された2つの単位回路と、
2つの前記単位回路を制御する制御部と、を備え、
2つの単位回路の中点に誘導性負荷の一端が接続された半導体装置であって、
2つの前記単位回路それぞれは、前記直流電源とグランドとの間に直列接続された第1スイッチ素子と、該第1スイッチ素子と逆並列接続された還流ダイオードと、を有し、
2つの前記単位回路の内の少なくとも一方は、前記還流ダイオード及び前記第1スイッチ素子それぞれと並列接続されたバイパス部を有し、
前記バイパス部は、直列接続された第2スイッチ素子及び抵抗を有し、
前記制御部は、2つの前記単位回路の第1スイッチ素子を所定期間OFF状態にするデッド期間を挟んで、2つの前記第1スイッチ素子を交互にON状態とし、前記デッド期間において、一方の前記第1スイッチ素子がOFF状態からON状態に移行するまで、一方の前記第1スイッチ素子と並列接続された前記第2スイッチ素子をON状態にすることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
2つの前記単位回路それぞれは、前記バイパス部を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチ素子は、第1電圧レベルの信号が入力されるとON状態となり、第1電圧レベルとは異なる第2電圧レベルの信号が入力されるとOFF状態となる性質を有し、
前記制御部は、電圧レベルが第1電圧レベルと第2電圧レベルとに周期的に変化する制御信号を生成する制御信号生成部と、前記制御信号の一部を遅延させる遅延回路と、入力される信号の電圧レベルによって出力する信号の電圧レベルを変化させる論理ゲートと、を有し、
前記制御信号生成部は、第1制御信号と、前記デッド期間以外、前記第1制御信号とは電圧レベルが反対となる第2制御信号と、該第2制御信号の立ち下がりエッジから前記第1制御信号の立ち上がりエッジまでのデッド期間の間第1電圧レベルとなる第3制御信号と、前記第1制御信号の立ち下がりエッジから前記第2制御信号の立ち上がりエッジまでのデッド期間の間第1電圧レベルとなる第4制御信号と、を生成し、
前記遅延回路は、前記第3制御信号を前記デッド期間よりも短い時間遅延する第1遅延回路と、前記第4制御信号を前記デッド期間よりも短い時間遅延する第2遅延回路と、を有し、
前記論理ゲートは、前記第1制御信号と前記第2制御信号とが入力されるNORゲートと、該NORゲートの出力信号と前記第1遅延回路を介した第3制御信号とが入力される第1ANDゲートと、前記NORゲートの出力信号と前記第2遅延回路を介した第4制御信号とが入力される第2ANDゲートと、を有し、
前記第1制御信号が、一方の前記第1スイッチ素子に入力され、前記第2制御信号が、他方の前記第1スイッチ素子に入力され、前記第1ANDゲートの出力信号が、一方の前記第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子に入力され、前記第2ANDゲートの出力信号が、他方の前記第1スイッチ素子と並列接続された第2スイッチ素子に入力されることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バイパス部は、前記第1スイッチ素子の両端の間に直列接続された第2スイッチ素子及び抵抗を複数有し、
直列接続された複数の前記第2スイッチ素子及び前記抵抗は、前記第1スイッチ素子の両端の間で並列接続されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記誘導性負荷を流れる電流の電流量に基づいて、複数の前記第2スイッチ素子の少なくとも1つをON状態にすることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1ANDゲートと対応する一方の前記第2スイッチ素子との間に各々設けられ、前記第1ANDゲートと一方の前記第2バイパス部との間に並列接続された複数の第3スイッチ素子と、前記第2ANDゲートと対応する他方の前記第2スイッチ素子との間に各々設けられ、前記第2ANDゲートと他方の前記第2バイパス部との間に並列接続された複数の第4スイッチ素子と、前記第3スイッチ素子及び前記第4スイッチ素子に駆動信号を出力するアドレスデコーダと、前記誘導性負荷を流れる電流を、その電流量に応じた電圧値に変換する電圧変換部と、該電圧変換部によって変換された電圧と閾値とを比較する複数のコンパレータと、を有し、
複数の前記コンパレータは、それぞれ異なる閾値を有し、
前記アドレスデコーダは、複数の前記コンパレータの出力信号に基づいて、前記駆動信号を出力する前記第3スイッチ素子及び前記第4スイッチ素子を選択することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
直流電源とグランドとの間に直列接続された2つの単位回路と、
一方の前記単位回路を制御する制御部と、を備え、
2つの単位回路の中点に誘導性負荷の一端が接続された半導体装置であって、
一方の前記単位回路は、前記直流電源とグランドとの間に直列接続された第1スイッチ素子と、該第1スイッチ素子と逆並列接続された還流ダイオードと、該還流ダイオード及び前記第1スイッチ素子それぞれと並列接続されたバイパス部と、を有し、
前記バイパス部は、直列接続された第2スイッチ素子及び抵抗を有し、
他方の前記単位回路は、前記直流電源とグランドとの間に逆接続されたダイオードを有し、
前記制御部は、前記第1スイッチ素子がOFF状態からON状態に移行するまで、前記第2スイッチ素子をON状態にすることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記バイパス部は、前記第1スイッチ素子の両端の間に直列接続された第2スイッチ素子及び抵抗を複数有し、
直列接続された複数の前記第2スイッチ素子及び前記抵抗は、前記第1スイッチ素子の両端の間で並列接続されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記誘導性負荷を流れる電流の電流量に基づいて、複数の前記第2スイッチ素子の少なくとも1つをON状態にすることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−21670(P2013−21670A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36551(P2012−36551)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】