説明

半導体製造装置、半導体装置の製造方法、及びこれらに使用するシール部材

【課題】排気配管及び反応装置内に反応生成物が析出しにくい半導体製造装置を提供すること。
【解決手段】減圧雰囲気中で半導体基板の処理を行う反応装置70と、前記反応装置内のガスを排気する真空ポンプ80と、前記反応装置70と真空ポンプ80とを接続する排気管部とを有する半導体製造装置10において、前記配管部を外部から加熱する被覆加熱手段13と、シール部材15を内部から加熱するシール部材加熱手段と、排気配管11及びシール部材15の温度を検出する温度センサ14,16を設ける。温度コントローラ17及び18により、排気配管11とシール部材15の内面を反応生成物よりも高い温度であって、かつ等しい温度とする。これにより排気管内の温度が均一となり、反応生成物の析出を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置及び半導体装置の製造方法に関し、特に反応ガスの析出による障害が発生しにくい半導体製造装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、真空領域で各種化学的又は物理的反応により成膜・エッチングする工程が一般的に利用されている。半導体装置の微細化に伴い、このような真空下で処理を行う工程が増加するものと見込まれ、真空領域で反応を行う半導体製造装置及びその維持管理費の低コスト化が望まれる。
【0003】
このような、真空下で反応を行う半導体製造装置(例えば、CVD装置等)には、半導体基板に成膜又はエッチングを行う反応装置と、反応装置の真空度を維持するための真空ポンプが設けられており、この反応装置に原料ガスを供給するボンベと反応装置の間並びに反応装置と真空ポンプとの間は配管によって接続されている。この配管は通常、フランジ部で連結された複数の排気配管によって構成され、連結部分の真空シール性を確保するため、対向するフランジ間に樹脂製のシール部材が配置されている。反応装置で行われる成膜又はエッチング工程では反応ガスとしてさまざまな気体が発生する。そして反応装置内で発生した反応ガスは、配管を通って真空ポンプから排出される。
【0004】
ところが、排気側の配管や反応装置の内部の温度が反応ガスの昇華点以下となると、気体状の反応ガスが固体化し、配管や反応装置の内壁に析出物として堆積する。さらに、反応装置で生成した反応ガスが原料ガス供給側の配管に逆拡散して、配管内壁に析出物を生ずる場合がある。条件によっては析出物が急激に成長し、配管の閉塞をおこす恐れがある。また、内壁から剥離した析出物が真空配管周りのバルブや真空ポンプの可動部等に噛み込んで装置の動作不良を起こす場合がある。特に、反応装置内や反応装置付近の配管内に析出物が堆積した場合には、析出物の微粉末が飛散して半導体ウエハ上に付着する場合があり、半導体装置の歩留まりに悪影響を及ぼす恐れがある。このような障害を防止すべく、析出物の除去のため頻繁に装置を停止して清掃を行うなどの付帯作業が必要であり、多額の維持管理費がかかってしまう。
【0005】
このため、析出物の生成を防止すべく、配管をジャケットヒータで覆い、配管の内周面(反応ガスと接触する面)を反応ガスの昇華点以上の温度に加温することが行われていた。しかしながら、ジャケットヒータで加熱しても配管のフランジ部分(連結部分)の樹脂製のシール部材付近で析出物が堆積してしまう場合があった。これは、シール部材が樹脂であるため熱伝導性が悪く、配管の周りを覆ったジャケットヒータによる加熱では十分に加熱できず、シール部材内周面の温度が反応ガスの昇華点よりも低くなる場合があるからである。
【0006】
このような析出物の発生を防止すべく、ジャケットヒータの温度をより高い温度とし、樹脂製のシール部材の内周面の温度を反応ガスの昇華点以上とすることが行われている。また、ジャケットヒータとは別に樹脂製シール部材の外周側にフィットするようにテープヒータを設け、テープヒータからの加熱によりシール部材の内周面の温度を上げる技術がある(例えば特許文献1)。また、反応ガスで配管に紛体が堆積するのを防止すべく、配管接続部に配置されるOリングの内部に電熱ヒータを埋め込む技術がある(例えば特許文献3)。
【0007】
その他、特許文献2には反応装置のシール部材として、フッ素を含有する樹脂を用いることが開示されている。
【0008】
本発明に関連すると思われる文献には以下のものがある。
【特許文献1】特開平9−293708号公報
【特許文献2】特開2004−342981号公報
【特許文献3】特開2004−324723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明者は、試行錯誤に基づき、配管(又は反応装置)の外側に設けられたジャケットヒータの温度を上げることでOリング内周側の温度をより高い温度とした場合であっても、配管(又は反応装置)の内周面に温度勾配が存在する場合には析出物が堆積しやすい傾向があり、析出物による問題を防止するには配管(又は反応装置)内の温度勾配を極力少なくすることが望ましいことを見出した。
【0010】
しかしながら、上述のようにジャケットヒータの温度を上げることでOリング内部の温度を上げる場合には、Oリングの熱伝導性が悪いため、周囲の金属製配管部分の方が高い温度となり温度勾配が生じ、この部分を起点に析出物が堆積する場合があった。また、特許文献1に開示されたように、Oリングの外周にフィットするテープヒータを設けた場合であっても、フランジ部分の金属部材の方がより熱伝導性が良いため、Oリング周辺のフランジ部分がOリング内周側より高温に加熱されてしまい、配管内に温度勾配が発生してしまう。また、特許文献3のようにOリング内に電熱ヒータを設けるだけでは、配管内の温度分布を均一とすることができず、配管内に温度勾配が生じてしまう。
【0011】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、配管及び反応装置内に反応ガスが析出しにくい半導体製造装置、半導体装置の製造方法、及びこれらに使用するシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、半導体基板に対して処理を行う反応装置と、前記反応装置に接続された配管部と、前記反応装置内又は前記配管部内の気密性を保つシール部材と、前記シール部材を内部から加熱するシール部材加熱手段と、前記シール部材の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出値に基づいて、前記シール部材加熱手段の発熱量を調整し、前記シール部材の温度を前記反応装置内の反応ガスの昇華点以上に保つ温度制御手段と、を備えたことを特徴とする半導体製造装置が提供される。
【0013】
上記観点によれば、シール部材に加熱手段と温度検出が設けられているためシール部材の内周面を反応ガスの昇華温度以上に確実に加熱することができ、反応ガスがシール部材付近を起点に析出することを防止することができる。
【0014】
さらに、温度センサ及び温度制御手段によってシール部材の温度を測定して温度制御を行うことにより、シール部材の内周面の温度と、配管部の配管内周面の温度分布を均一に保つように制御することができる。この構成により、配管部での反応ガス成分の析出の可能性を従来よりも低減することができる。
【0015】
この半導体製造装置に用いられるシール部材は、配管同士の接続部分に配置することもできる。これにより、配管部を複数の配管を連結して構成する場合であっても、気密性を保つことができるとともに、シール部材付近を起点に反応ガスの析出を防止することができる。
【0016】
上記観点の半導体製造装置が備える反応装置又は排気管内の気密を保つシール部材については、加熱した熱媒体を流す管状部材が内部に設けられたシール部材を用いることができる。このように、加熱した熱媒体を流すことにより管状部材を内部から加熱することができ、シール部材内周面を反応ガスの昇華点以上の温度とすることができる。さらに、熱媒体の温度調節によりシール部材の温度を制御することができ、多数のシール部材が必要な大規模な半導体製造装置に使用すれば、温度制御手段の構成を比較的簡単な構成とすることができる。
【0017】
本発明の別の観点によれば、半導体基板に対して処理を行う反応装置内又は気密性を保つシール部材の温度を検出しながら、前記反応装置内の反応ガスの昇華点以上の温度に前記シール部材を加熱した状態で、前記配管部を通じて前記反応装置に前記反応ガスを供給、又は前記配管部を通じて前記反応装置から前記反応ガスを排気することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0018】
上記の観点によれば、シール部材の温度を検出しながらシール部材の加熱を行うためシール部材の温度をより確実に反応ガスの昇華点温度に保つことができ、半導体装置の製造において配管内に析出物が堆積することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
以下図1〜図3を参照しつつ第1実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明第1実施形態に係わる半導体製造装置10の排気側部分の構造を示す断面図である。図2は、本発明第1実施形態に係わる半導体製造装置10において、配管11のフランジ11a付近を拡大した断面図である。図3(a)は、本発明第1実施形態の半導体製造装置に用いるシール部材15の外観を示す図であり、図3(b)は図3(a)の破線部を拡大した図である。図9は、本発明の実施形態及び比較例に係わる半導体製造装置の配管部の温度分布を示すグラフである。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係わる半導体製造装置10の排気側部分は、反応装置70、反応装置70から伸びる配管部、及び反応装置70の真空を維持するための真空ポンプ80を有する。
【0023】
反応装置70は、真空領域(圧力1mTorr〜10Torrの減圧雰囲気)で半導体基板に対して成膜やエッチング等の処理を行う装置であり、例えばプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等である。
【0024】
配管部は、図1において、反応装置70と真空ポンプ80とを接続し、連結された配管11によって構成された部分である。配管11の接続部には気密性保持のためシール部材15が配置され、配管11はフランジ部11aでクランプリング12によって連結されている。また、配管部の周囲にはジャケットヒータ13が配置されている。以下、上記構成について更に詳細に説明する。
【0025】
配管11は、金属(例えばステンレス鋼やアルミニウム等)材からなる管状の部材であり、反応装置70の規模及び真空ポンプ80の位置関係に応じて適宜その径及び形状を選択することができる。配管11の端部には、図2に示すようにフランジ11aが形成されており、このフランジ11aにはシール部材15を収容するための溝が形成されている。フランジ11aは、例えばNWフランジ、ISOフランジ、CFフランジ等とすることができる。クランプリング12は、図2に示すように、配管11のフランジ11aに係合して配管11を連結する。
【0026】
ジャケットヒータ13は、図1及び図2に示すように配管11の外面を覆うように配置されている。このジャケットヒータ13には抵抗発熱体が設けられており(図示せず)、配線L2を通じて供給される電力によって発熱し、配管11を外側から加熱する。ジャケットヒータ13には図1に示すように温度センサ14が配置され、この温度センサ14により配管11の内周面の温度を検出できる。尚、温度センサ14を配管11の内周面に設けて直接配管内周面の温度を検出するようにしても良い。温度センサ14には、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ等を用いることができる。温度センサ14の出力は配線L1を通じて温度コントローラ17に送られる。温度コントローラ17(第1の温度制御装置)は、温度センサ14からの出力に基づいてジャケットヒータ13に供給する電流を制御する。
【0027】
シール部材15は、リング状に形成された弾力性を有する樹脂材料からなる。シール部材15は、図3(a)に示すように、その断面が円形状であり、その外周側の一部分には、例えば被覆銅線等からなる配線L4が伸びている。図3(b)に示すように、シール部材15の内部にはコイル状に形成された抵抗発熱体19が設けられ、この抵抗発熱体19を覆うように樹脂部材が形成されている。このようなシール部材15は、例えば、断面が円形の輪状のキャビティが形成された金型にコイル状の抵抗発熱体をおき、その周囲を覆うように、粉末状の樹脂材料を投入した後、金型を加圧・加熱処理することにより形成することができる。尚、シール部材15を構成する樹脂材料には、抵抗発熱体による加熱に耐えるべく耐熱性の材料を使用することが望ましい。例えば、最高温度が150℃までであればフッ素ゴム、250℃までであればパーフロロエラストマー、300℃までであればPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を用いることができる。また、本実施形態のシール部材15は、断面を矩形状としてもよく、ガスケットのように断面を扁平にしてもよい。また、抵抗発熱体19は図3(b)に示したコイル形状に代えて、線状又は平板状の抵抗発熱体としてもよい。
【0028】
シール部材15は、図2に示すように、隣り合う配管11のフランジ部分に形成された溝に挟まれる位置に配置され、クランプリング13の締め付けによって、左右の配管11に挟まれる方向に圧力が加えられ、これにより配管11のフランジ部と密着して配管11の内部の真空を保持する。そして、配線L4を通じて抵抗発熱体19に電流を流すことで、内部から加熱することができる。
【0029】
温度センサ16は、図1及び図2に示すように、シール部材15の付近に配置され、シール部材15の表面付近の温度を検出する。温度センサ16は、温度センサ14と同様の素子を用いることができる。温度センサ16は配線L3によって温度コントローラ18(第2の温度制御装置)と接続されている。温度コントローラ18は、温度センサ16の出力に基づいてシール部材15の表面付近の温度を検出し、配線L4を介してシール部材15の抵抗発熱体19に所定の電流を供給する。これにより、シール部材15の表面付近の温度を配管11の内周面の温度と同一に保つことができる。
【0030】
以下、本実施形態の半導体製造装置10の作用について比較例と対比しつつ説明する。本願発明者は比較例として、シール部材に発熱体を含まないOリングを用いて排気配管及びシール部材の温度分布の測定を行った。尚、比較例の半導体製造装置の構成は、シール部材(Oリング)を除き、本実施形態の半導体製造装置10と同様である。比較例において、排気配管の径は80mm〜100mmであり、接合部にはNWフランジを用いた。
【0031】
比較例において、ジャケットヒータを150℃とすることにより、配管11の内周面の温度は140℃(T2)となった。この場合、比較例のOリングの内周面の温度は120℃〜130℃までしか上がらず、配管内の温度は均一とならなかった(図9の破線)。
【0032】
反応装置70がプラズマCVD装置の場合に、反応ガスが多量に発生し、配管に反応ガスが析出しやすいものとして、SiNプロセスを行う半導体製造装置がある。このSiNプロセスでは、SiH4及びNH3ガスを導入してSiN膜を形成する。その後、反応装置70の内壁等に付着したSiN膜を除去する工程でNF3ガスを導入しSiN膜と反応させる。この反応によって、配管に析出しやすい(NH42SiF6(アンモニウムヘキサフルオロシリケート)が生成する。(NH42SiF6は、反応装置及び配管の圧力10Torrでは、130℃が昇華温度であるため、SiNプロセスに使用する半導体製造装置の場合排気配管内周面の温度を少なくとも反応ガスの昇華温度T1(130℃)以上に保つ必要がある。しかしながら、SiNプロセスを行う半導体製造装置に比較例の配管を場合はシール部材内周面の温度が昇華温度T1以下となるとともに排気管内に温度勾配が生じてしまい、反応ガス成分が析出する可能性が高くなる。
【0033】
一方、本実施形態の半導体製造装置10では、そのシール部材15の内部に抵抗発熱体19が設けられ、さらにシール部材15の近傍に配置された温度センサ14によってシール部材15の内周面の温度を検出することができる。そして、温度コントローラ18は温度センサ14の検出値にもとづいて抵抗発熱体19に供給する電流を制御する。これにより、シール部材15の内周面の温度をより確実に配管11の温度と同一の温度(例えば140℃)T2に保つことができ、配管部の配管内周面の温度はT2で均一となる(図9の実線)。
【0034】
以上のように第1実施形態に係わる半導体製造装置10では配管11を加熱するジャケットヒータ13に加え、シール部材15に、その内部から加熱する抵抗発熱体19が設けられている。これにより、シール部材15の熱伝導率が低い場合であってもこれを確実に加熱することができる。さらに、ジャケットヒータ13及びシール部材15の温度を検出する温度検出器14、16が設けられ、温度コントローラ16、17によって配管11及びシール部材15を同じ温度とすることができるため排気管内に温度分布が生じるのを防止することができる。これにより、従来の半導体製造装置に比べて析出物が堆積しにくくなる。また、本実施形態において、ジャケットヒータ13の電源配線とシール部材15の配線L4とが別個に設けられ、温度コントローラ16及び17によって別個に温度制御が行われている。このような構成とすることにより、シール部材15の交換作業の際にはシール部材の配線L3を温度コントローラ17と接続するだけでよく、消耗品として比較的交換頻度が高いシール部材15の交換作業が容易になる。
【0035】
(第1実施形態の変形例)
以下、図4及び図5を参照しつつ第1実施形態の変形例に係わる半導体製造装置20について説明する。この半導体製造装置20は、シール部材15への電力供給をジャケットヒータ13の電源を通じて行っている点で第1実施形態に係わる半導体装置10と相違する。
【0036】
図4は、本発明第1実施形態の変形例に係わる半導体製造装置の排気側部分の構造を示す断面図である。図5は、本発明第1実施形態の変形例に係わる半導体製造装置において、排気配管のフランジ付近を拡大した断面図である。尚、これらの図において先に説明した図面と同一の部材には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0037】
図4に示すように、変形例の半導体装置20は、第1実施形態と同じ構成の反応装置70、配管11、及び真空ポンプ80を備える。また、配管11同士を接続するクランプリング12、配管11の外面を覆うジャケットヒータ13、配管11のフランジ部分に配置されたシール部材15、シール部材15の内周面の温度を測定する温度センサ16の構成も第1実施形態と同様である。
【0038】
本変形例では、シール部材15の抵抗発熱体19から伸びる配線L24、及び温度センサ16から伸びる配線L23において第1実施形態と相違する。すなわち、第1実施形態では、シール部材15の抵抗発熱体19から伸びる配線L4及び温度センサ16から伸びる配線L3は温度コントローラ18に接続され、ジャケットヒータ用の温度コントローラ17とは独立して温度制御を行っていた。これに対し本変形例では、図4及び図5に示すように抵抗発熱体19から伸びる配線L24はジャケットヒータ13に設けられた電源配線(図示せず)と接続されており、温度センサ16から伸びる配線L23は、ジャケットヒータ用温度コントローラ17に接続されている。尚、本変形例においてシール部材15の抵抗発熱体19の抵抗値は、シール部材15の内周面の温度が周囲の配管11の温度と等しくなるように適宜調整されている。
【0039】
本変形例の温度コントローラ17は温度センサ16からの出力に基づいてシール部材16の表面温度を検出し、配線L2を通じてジャケットヒータ13に供給する電流を調整する。またシール部材15はジャケットヒータ13の電源配線と接続されているため、配線L2に供給される電力に応じてシール部材15の表面温度が制御される。
【0040】
以上のように、本変形例では、シール部材15内部に抵抗発熱体19が設けられているため、シール部材15の表面温度は周囲の配管11とほぼ同じ温度とすることができる。これにより、配管11に温度勾配が生じることがなく、反応ガスによる析出物の堆積を防ぐことができる。さらに、コントローラ17のみによってジャケットヒータ13及びシール部材15の温度制御を行っており、第1実施形態の半導体製造装置10よりも構成が簡素となり半導体製造装置20は安価となる。また、温度コントローラが1台ですむため、第1実施形態の半導体製造装置10よりも消費電力が少なくて済む。
【0041】
(第2実施形態)
以下、図6〜図8を参照しつつ第2実施形態に係わる半導体製造装置30について説明する。本実施形態に係わる半導体製造装置30は、シール部材35においてシール部材内部の加熱を熱媒体(加熱した流体)によって行うことを特徴とする。
【0042】
図6は、本発明の第2実施形態に係わる半導体製造装置30の排気側部分の構造を示す断面図である。図7は、本発明第2実施形態に係わる半導体製造装置30において、排気配管のフランジ付近を拡大した断面図である。図8(a)は、本発明第2実施形態に係わる半導体製造装置30に用いるシール部材の外観を示す図であり、図8(b)は、図8(a)の破線部を拡大した図である。尚、これらの図において先に説明した構成と同一の部分については同一の符号を付しその説明は省略する。
【0043】
本実施形態の半導体製造装置30は、図6及び図7に示すように、反応装置70と、真空ポンプ80と、これらの間に配置された配管部を有する。配管部において、配管11、クランプリング12、ジャケットヒータ13、温度センサ14、配線L1及びL2の構成は第1実施形態と同様である。図7に示すように、隣り合う配管11のフランジ部に挟まれる位置にシール部材35が配置され、このシール部材35によって配管11同士の接続部分の気密性が保たれている。
【0044】
以下、図8(a)及び(b)を参照しつつ本実施形態に使用するシール部材35について説明する。シール部材35は表面が樹脂によって覆われたリング状の部材であり、図8(a)及び(b)に示すように、リングの外周側で送り出し側熱媒体配管37a及び戻り側熱媒体配管37bと接続されている。また、図8(b)に示すように、シール部材35の内部には中空部36aが形成されている。この中空部36aは、リング状のシール部材35の周方向に沿って略全周にわたって伸びており、熱媒体配管37a及び37bとの接続部付近で分断されている。
【0045】
中空部36aの周囲には、金属(例えばステンレス鋼など)製の補強材(ライナー)36bが形成されている。ライナー36bによりシール部材35の内部に中空部36aを形成しつつ、その剛性を維持でき、フランジ部分で潰れすぎることを防止して配管接続部における真空シール性を確保することができる。ライナー36bの周囲は、例えばフッ素樹脂、パーフルオロエラストマー、PTFE等の耐熱性を有する樹脂によって覆われている。シール部材35は、例えば、ライナー36bを形成し、熱媒体配管37a及び37bを接続した後、ライナー36bの周囲に樹脂を溶着することにより作ることができる。
【0046】
熱媒体は送り出し側熱媒体配管37aから中空部36aに導入され、中空部36aに沿ってシール部材35内部を周方向に略1周した後、戻り側熱媒体配管37bから排出される。これによりシール部材35は全周にわたって均等に加熱される。熱媒体には、例えばパーフルオロポリエーテル(商品名「ガルデン」(登録商標)として市販されている)等の高沸点の液体を使用することができる。
【0047】
図6に戻り、シール部材35に熱媒体を供給する装置について説明する。戻り側熱媒体配管37bは熱媒体加熱装置31に接続されている。温度センサ38は戻り側熱媒体配管37bに配置されており、この配管内を流れる熱媒体の温度を検出し、検出値は配線L3を通じて温度コントローラ39に出力される。温度コントローラ39は、温度センサ38からの出力に基づいて、熱媒体加熱装置31に供給する電力を制御する。熱媒体加熱装置31は、温度コントローラ39の出力に基づいて熱媒体を加熱することができる。温度センサ38、熱媒体加熱装置31、温度コントローラ39によって熱媒体は少なくとも反応ガスの昇華点以上であって、シール部材内周面の温度が配管11の内周面の温度と同じ温度となる温度に保たれる。循環ポンプ32は熱媒体加熱装置31によって加熱された熱媒体を送り出し側熱媒体配管37aを通じてシール部材35に送出する。
【0048】
以上のように、本実施形態の半導体製造装置30では、配管11の周囲にジャケットヒータ13が設けられているため、配管11の内周面温度を反応ガスの昇華温度以上に加熱できるとともに、シール部材35の内部に熱媒体を流すライナー35bが設けられているため、シール部材35の内周面の温度を配管11と同じ温度とすることができる。これにより、配管部とりわけ配管接続部での温度勾配を少なくすることができ、従来と比較して配管接続部での析出物が堆積しにくくなる。また、複数のシール部材35の温度制御を一組の温度センサ38、熱媒体加熱装置31、及び温度コントローラ39で集中的に行うことができる。これにより、大規模な排気配管を有し多数のシール部材35が必要な場合には装置構成が簡単になる。
【0049】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、上述の各実施形態では半導体製造装置の排気側の配管部を例に、配管内周面の温度分布を均一とする構成について説明したが、本発明はこれに限られず、以下の諸形態とすることも含まれる。
【0050】
すなわち、反応装置70に原料ガスを導入するための原料供給側の配管についても、上述の第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成を適用することができる。原料供給側の配管についてシール部材加熱手段を備えたシール部材を設けることにより、反応装置70から逆方向に拡散してきた反応ガスの析出を防止することができ、半導体製造装置の動作障害の防止、保守作業頻度の低減による維持管理費の抑制、半導体装置の歩留まり低下防止等の効果が得られる。
【0051】
また、CVD装置やエッチング装置などの真空下で半導体基板の処理を行う装置において、その真空を維持するためのシール部材についても、抵抗発熱体を内蔵したシール部材を用いることができる。この場合、シール部材に供給する電力を制御するための温度コントローラと、シール部材の表面温度を測定する温度センサを設け、温度センサからの温度を温度コントローラにフィードバックして、シール部材の温度を周辺の反応装置の内壁の温度と同一の温度に保つ。これにより反応装置内の温度を均一とすることができ、反応装置内で反応ガスの析出を防止することができるため、半導体基板上に析出物に起因するパーティクル(微粒子)が付着するのを防止できる。尚、反応装置のシール部材には抵抗発熱体以外にも、第2実施形体のように熱媒体を流すものとしても良い。
【0052】
また、本発明に使用する発熱体を内蔵したシール部材を使用することにより、シール部材の真空シール性を向上することができる。すなわち、シール部材に要求される最高温度、耐久性などの観点から種々の樹脂材料からなるシール部材を用いる必要があるが、樹脂材料によってはガラス転移点が高い材料があり、このような材料は室温で硬度が高い。一般に、シール部材による真空シール性を確保するためにはシール部材を圧縮して変形させることによりフランジ部分に密着させる必要がある。しかし、硬度の高い材料からなるシール部材は変形しにくいため、クランプリングを高いトルクで締め付けても十分な真空シール性を確保することが困難である。
【0053】
そこで、室温で硬度の高い樹脂材料を、第1実施形態のシール部材15又は第2実施形態のシール部材35のように形成する。すなわち、シール部材15のように形成する場合には、シール部材の内部に抵抗発熱体が埋め込まれ(図3(b))、シール部材35のように形成する場合には加熱流体を流す配管がシール部材の内部に埋め込まれる(図8(b))。そして、配管11の接続時に、そのシール部材に電流(又は加熱流体)を流して、シール部材を構成する樹脂の温度が軟化する温度(例えばガラス転移点以上の温度)まで加熱する。このようにして、加熱されたシール部材を排気配管のフランジ部に配置し、クランプリングを締める。このとき、シール部材の樹脂材料は室温よりも高い温度に保たれているため軟化しており、クランプリングによる締め付け圧によって容易に変形し、十分な真空シール性を確保することができる。このように、加熱部材を内蔵したシール部材を、配管接続時に加熱しておくことにより、室温で硬度が高い樹脂材料からなるシール部材であっても容易に真空シール性を確保することができ、より多様な材料をシール部材に利用することができる。
【0054】
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0055】
(付記1) 半導体基板に対して処理を行う反応装置と、前記反応装置に接続された配管部と、前記反応装置内又は前記配管部内の気密性を保つシール部材と、前記シール部材を内部から加熱するシール部材加熱手段と、前記シール部材の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出値に基づいて、前記シール部材加熱手段の発熱量を調整し、前記シール部材の温度を前記反応装置内の反応ガスの昇華点以上に保つ温度制御手段と、を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【0056】
(付記2) 前記温度制御手段は、前記シール部材加熱手段の発熱量を調整することにより、前記シール部材と前記配管部とを同一温度、又は前記シール部材と前記反応装置とを同一温度にすることを特徴とする付記1に記載の半導体製造装置。
【0057】
(付記3) 前記シール部材は、前記配管部を構成する配管同士の接続部に設けられたことを特徴とする付記1又は2に記載の半導体製造装置。
【0058】
(付記4) 前記配管部を覆う被覆加熱手段を更に備えたことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【0059】
(付記5) 前記温度検出手段は前記配管部の温度も検出し、前記温度制御手段は、前記被覆加熱手段の発熱量も調整し、前記シール部材の温度と前記配管部の温度とを同一温度にすることを特徴とする付記4に記載の半導体製造装置。
【0060】
(付記6) 前記温度制御手段は、被覆加熱手段の発熱量を制御する第1の温度制御装置と、シール部材加熱手段の発熱量を制御する第2の温度制御装置とを有し、前記第1の温度制御装置と第2の温度制御装置はそれぞれ別個に温度制御を行うことを特徴とする付記5に記載の半導体製造装置。
【0061】
(付記7) 前記温度制御手段は、前記被覆加熱手段及び前記シール部材加熱手段の発熱量を共通に制御することを特徴とする付記5又は6に記載の半導体製造装置。(図4)
(付記8) 前記シール部材加熱手段は、抵抗発熱体であることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【0062】
(付記9) 前記シール部材加熱手段は、加熱した熱媒体を流す管状部材であることを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【0063】
(付記10) 前記シール部材は弾力性を有するリング状の樹脂部材と、前記樹脂部材の内部に周方向に沿って埋め込まれた抵抗発熱体とを有することを特徴とする付記8に記載の半導体製造装置。
【0064】
(付記11) 前記シール部材は弾力性を有するリング状の樹脂部材と、前記樹脂部材の内部に周方向に沿って埋め込まれた管状部材とを有することを特徴とする付記9に記載の半導体製造装置。
【0065】
(付記12) 半導体製造装置が備える反応装置内又は配管部内の気密を保つシール部材であって、加熱した熱媒体を流す管状部材が内部に設けられたシール部材。
【0066】
(付記13) 半導体基板に対して処理を行う反応装置内又は配管内部の気密性を保つシール部材の温度を検出しながら、前記反応装置内の反応ガスの昇華点以上の温度に前記シール部材を加熱した状態で、前記配管部を通じて前記反応装置に前記反応ガスを供給、又は前記配管部を通じて前記反応装置から前記反応ガスを排気することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0067】
(付記14) 前記シール部材の加熱により、該シール部材と前記配管部とを同一温度、又は前記シール部材と前記反応装置とを同一温度にすることを特徴とする付記13に記載の半導体装置の製造方法。
【0068】
(付記15) 前記シール部材の内部に管状部材を設け、該管状部材に加熱した熱媒体を流すことにより前記シール部材を加熱することを特徴とする付記13又は14に記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明第1実施形態に係わる半導体製造装置の排気側部分の構造を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明第1実施形態に係わる半導体製造装置において、配管のフランジ付近を拡大した断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明第1実施形態の半導体製造装置に用いるOリングの外観を示す図であり、図3(b)は図3(a)の破線部を拡大した図である。
【図4】図4は、本発明第1実施形態の変形例に係わる半導体製造装置の排気側部分の構造を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明第1実施形態の変形例に係わる半導体製造装置において、配管のフランジ付近を拡大した断面図である。
【図6】図6は、本発明第2実施形態に係わる半導体製造装置の排気側部分の構造を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明第2実施形態に係わる半導体製造装置において、配管のフランジ付近を拡大した断面図である。
【図8】図8(a)は、本発明第2実施形態に係わる半導体製造装置に用いるOリングの外観を示す図であり、図8(b)は、図8(a)の破線部を拡大した図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態及び比較例に係わる半導体製造装置の配管部の温度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
10、20、30…真空排気装置、70…反応装置、80…真空ポンプ、11…排気配管、12…クランプリング、13…ジャケットヒータ、14、16、38、…温度センサ、15、35、…シール部材、17、18、39…温度コントローラ、19…抵抗発熱体、31…熱媒体加熱装置、32…循環ポンプ、36a…中空部、36b…ライナー、37a…戻り側熱媒体配管、37b…送り出し側熱媒体配管、L1〜L4、L23、L24…配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に対して処理を行う反応装置と、
前記反応装置に接続された配管部と、
前記反応装置内又は前記配管部内の気密性を保つシール部材と、
前記シール部材を内部から加熱するシール部材加熱手段と、
前記シール部材の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出値に基づいて、前記シール部材加熱手段の発熱量を調整し、前記シール部材の温度を前記反応装置内の反応ガスの昇華点以上に保つ温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記温度制御手段は、前記シール部材加熱手段の発熱量を調整することにより、前記シール部材と前記配管部とを同一温度、又は前記シール部材と前記反応装置とを同一温度にすることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記シール部材は、前記配管部を構成する配管同士の接続部に設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記配管部を覆う被覆加熱手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記温度検出手段は前記配管部の温度も検出し、前記温度制御手段は、前記被覆加熱手段の発熱量も調整し、前記シール部材の温度と前記配管部の温度とを同一温度にすることを特徴とする請求項4に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
半導体製造装置が備える反応装置内又は配管部内の気密を保つシール部材であって、加熱した熱媒体を流す管状部材が内部に設けられたシール部材。
【請求項7】
半導体基板に対して処理を行う反応装置内又は配管内部の気密性を保つシール部材の温度を検出しながら、前記反応装置内の反応ガスの昇華点以上の温度に前記シール部材を加熱した状態で、前記配管部を通じて前記反応装置に前記反応ガスを供給、又は前記配管部を通じて前記反応装置から前記反応ガスを排気することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−311346(P2008−311346A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156280(P2007−156280)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】