説明

半導体集積回路、及び半導体集積回路の製造方法

【課題】回路面積の小さく、配線長の短い、小型の半導体集積回路を提供する。
【解決手段】多層構造で構成される半導体集積回路であって、第1半導体層と、第1半導体層に形成された第1半導体層トランジスタと、第1半導体層上に堆積され、金属配線が形成された配線層と、配線層上に堆積された第2半導体層と、第2半導体層に形成された第2半導体層トランジスタとを備える。なお、第1半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性と、第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等であり、第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路、及び半導体集積回路の製造方法に関する。特に本発明は、多層構造で構成される半導体集積回路、及び当該半導体集積回路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術に係る半導体集積回路におけるMOS型電界効果トランジスタ(以下、「MOSFET」という。)の断面図を示す。図2は、従来技術に係る半導体集積回路におけるMOSFETの平面図を示す。図1及び図2において、Sはソース電極、Dはドレイン電極、Gはゲート電極を示す。なお、図1及び図2において、ゲート電極に接続される配線は、簡略化のため図示していない。
【0003】
図1及び図2では、4つのMOSFET100、102、104、及び106がリング状に接続された回路を表している。図1及び図2に示す半導体集積回路においては、複数のMOSFET100、102、104、及び106が基板108に平面的に形成され、複数のMOSFET100、102、104、及び106が配線層110及び112に形成された配線114、116、118、及び120によって相互に接続されている。
【0004】
図3は、従来技術に係るプログラマブル回路の概念図を示す。プログラマブル回路は、
複数の半導体集積回路A、B、C、及びD、並びにプログラマブルスイッチマトリックス(以下、「PSM」という。)を備える。複数の半導体集積回路A、B、C、及びDは、それぞれ特定の機能を実現し、PSMは、プログラマブル回路を所望の構成に切り換えるべく、複数の半導体集積回路A、B、C、及びDにそれぞれ接続された信号線の間をスイッチングする。
【0005】
図4、図5、及び図6は、従来技術に係るPSMの回路構成を示す。PSMは、例えば、4本の信号線に対して6個のスイッチ130、132、134、136、138、及び140を備え、4本の信号線の間を相互にスイッチングする。図5左に示すように、半導体集積回路Aに接続された信号線と半導体集積回路Cに接続された信号線との間のスイッチ140と、半導体集積回路Bに接続された信号線と半導体集積回路Dに接続された信号線との間のスイッチ138とがオンになっている場合には、プログラマブル回路は、図5右に示すような形態の回路として動作する。また、図6左に示すように、半導体集積回路Aに接続された信号線と半導体集積回路Bに接続された信号線との間のスイッチ130と、半導体集積回路Cに接続された信号線と半導体集積回路Dに接続された信号線との間のスイッチ134とがオンになっている場合には、プログラマブル回路は、図6右に示すような形態の回路として動作する。
【0006】
【特許文献1】特開平5−53689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7は、従来技術による8入出力のPSMの平面図を示す。8入出力のPSMは、8本の信号線に対して28個のスイッチとしてのMOSFETを備え、8本の信号線の間を相互にスイッチングする。そのため、図1及び図2に示したような従来技術による半導体集積回路においてはMOSFETが平面的に配置されるので、多数のMOSFETを用いて複雑な回路を実装する場合に、回路面積が非常に大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決することができる半導体集積回路、及び半導体集積回路の製造方法を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態によると、多層構造で構成される半導体集積回路であって、第1半導体層と、第1半導体層に形成された第1半導体層トランジスタと、第1半導体層上に堆積され、金属配線が形成された配線層と、配線層上に堆積された第2半導体層と、第2半導体層に形成された第2半導体層トランジスタとを備える。
【0010】
第1半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性と、第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等であってもよい。
【0011】
第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されてもよい。
【0012】
第1半導体層トランジスタは、第2半導体層トランジスタより動作速度が速くてもよい。
【0013】
第1半導体層トランジスタと第2半導体層トランジスタとは、第1半導体層から第2半導体層への方向において少なくとも一部分が重なっていてもよい。
【0014】
当該半導体集積回路は、複数の信号線の間をそれぞれスイッチングするスイッチマトリックスであり、第1半導体層トランジスタ及び第2半導体層トランジスタは、複数の信号線の間のいずれかをスイッチングしてもよい。
【0015】
第1半導体層トランジスタは、アナログ信号を伝送し、第2半導体層トランジスタは、デジタル信号を伝送してもよい。
【0016】
第2半導体層上に堆積された第3半導体層と、第3半導体層に形成された第3半導体層トランジスタとをさらに備え、第3半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性と、第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等であってもよい。
【0017】
第3半導体層トランジスタのゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されてもよい。
【0018】
第2半導体層トランジスタと第3半導体トランジスタとは、同一のフォトマスクを用いて同一のプロセスにより形成されてもよい。
【0019】
本発明の第2の形態によると、多層構造で構成される半導体集積回路の製造方法であって、第1半導体層に第1半導体層トランジスタを形成する段階と、第1半導体層上に第2半導体層を堆積する段階と、第2半導体層に第2半導体層トランジスタを形成する段階とを備え、第2半導体層トランジスタを形成する段階は、第2半導体層に第2ソース電極及び第2ドレイン電極を形成する段階と、第2半導体層にラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成する段階と、第2半導体層に第1ゲート電極を形成する段階とを有する。
【0020】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回路面積の小さく、配線長の短い、小型の半導体集積回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図8は、本発明の第1実施形態に係る半導体集積回路200の構成の一例を示す。半導体集積回路200は、複数の入力信号線202、複数の出力信号線204、及び多層MOSFET206を備える。多層MOSFET206は、多層構造で構成され、それぞれの層に設けられたMOSFETで複数の入力信号線202及び複数の出力信号線204の間を相互にスイッチングすることによって、所定の機能又はプログラマブルな機能を実現する。MOSFETを積層して1つのチップに集積化させることによって、半導体集積回路200の回路面積を小さくすることができるので、チップ面積及び配線量を小さくすることができる。
【0024】
図9は、本発明の第2実施形態に係る半導体集積回路300の構成の一例を示す。半導体集積回路300は、複数の入出力信号線302、及び多層MOSFET306を備える。多層MOSFET306は、多層構造で構成され、それぞれの層に設けられたMOSFETで複数の入出力信号線302の間を相互にスイッチングすることによって、所定の機能又はプログラマブルな機能を実現する。即ち、1本の信号線を入力信号線及び出力信号線として機能させてもよい。
【0025】
図10は、第2実施形態に係る多層MOSFET306の一部の構成の一例を断面図で示す。なお、第1実施形態に係る多層MOSFET206の構成は、第2実施形態に係る多層MOSFET306の構成と同一である。
【0026】
多層MOSFET306は、単結晶のシリコンで形成された第1半導体層400と、第1半導体層400に形成された複数のMOSFET404及び406と、第1半導体層400の上層である多結晶のシリコンで形成された第2半導体層408と、第2半導体層408に形成された複数のMOSFET410及び412と、第2半導体層408の上層である配線層414とを備える。MOSFET404及び406は、本発明の第1半導体層トランジスタの一例であり、MOSFET410及び412は、本発明の第2半導体層トランジスタの一例である。
【0027】
第1半導体層400に形成されたMOSFET404及び406、並び第2半導体層408に形成されたMOSFET410及び412が有するソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極は、配線層414に形成された配線416を介して、相互に又は外部に接続される。第1半導体層400に形成されたMOSFET404及び406に接続された配線416は、第2半導体層408に貫通して形成されたビアホールを経由して配線層414に接続される。また、MOSFET404又は406とMOSFET410及び412とは、第1半導体層400から第2半導体層408への方向において少なくとも一部分が重なっていることが好ましい。これにより、多層MOSFET306の回路面積を小さくすることができる。
【0028】
次に、多層MOSFET306の製造方法について説明する。まず、第1半導体層400を形成し、MOSFET404及び406を第1半導体層400に形成する。第1半導体層400にMOSFET404及び406を形成する場合、第1半導体層400に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成して第1ゲート電極を形成する。次に、第1半導体層400上に第2半導体層408を堆積させ、MOSFET410及び412を第2半導体層408に形成する。第2半導体層408にMOSFET410及び412を形成する場合、第2半導体層408に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成してゲート電極を形成する。次に、配線416を含む配線層414を形成する。
【0029】
以上のように、第1半導体層400のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層408のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、高性能な多層MOSFET306を製造することができる。即ち、第2半導体層408のゲート絶縁膜を高温プロセス(800度)である熱酸化によって生成する場合には、第1半導体層400に形成された配線、例えば融点が660度であるアルミニウムで形成された配線が融けてしまうので、多層MOSFET306を形成することができない。なお、第1半導体層400に融点が高いポリシリコン等で配線を形成することも考えられるが、配線の抵抗が高くなってしまうので、多層MOSFET306の性能を低下させてしまう。そこで、第2半導体層408のゲート絶縁膜を低電子温度プラズマ(400度)等のラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、第1半導体層400の配線をアルミニウム等の抵抗が低い金属により形成することができ、高性能な多層MOSFET306を製造することができる。
【0030】
第1半導体層400のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層408のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成しても、MOSFET404及び406のゲート絶縁膜の絶縁性は、MOSFET410及び412のゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等に形成される。
【0031】
一方、第1半導体層400のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層408のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、MOSFET404及び406のゲート絶縁膜は、MOSFET410及び412のゲート絶縁膜より絶縁性が高く、つまり、MOSFET404又は406のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性は、MOSFET410又は412のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性より高くなる場合には、MOSFET404及び406とMOSFET410及び412との電気的特性を統一するため、MOSFET404及び406を、MOSFET410及び412より小さくしてもよい。また、この場合、MOSFET404及び406のゲート電圧は、MOSFET410及び412のゲート電圧より小さく、MOSFET404及び406は、MOSFET410及び412より動作速度が速い。
【0032】
そこで、MOSFET404及び406又はMOSFET410及び412が伝送する信号を次にように決定することによって、MOSFET404及び406又はMOSFET410及び412を性能に応じて動作させ、多層MOSFET306全体として高性能に動作させてもよい。例えば、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET404及び406は、所定周波数より高い周波数の高周波信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET410及び412は、所定周波数より低い周波数の低周波信号を伝送する。他の例においては、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET404及び406は、アナログ信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET410及び412は、デジタル信号を伝送する。このように、熱酸化及びラジカル酸化又はラジカル窒化のいずれによってゲート絶縁膜が形成されたか否かによるMOSFETの性能に応じて異なる種類の信号を入出力させることによって、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたことによるMOSFETの性能の低下に起因する多層MOSFET306の性能の低下を防ぐことができる。
【0033】
図11は、第2実施形態に係る多層MOSFET306の一部の構成の一例を断面図で示す。なお、第1実施形態に係る多層MOSFET206の構成は、第2実施形態に係る多層MOSFET306の構成と同一である。
【0034】
多層MOSFET306は、単結晶のシリコンで形成された第1半導体層500と、第1半導体層500に形成された複数のMOSFET504及び506と、第1半導体層500の上層である多結晶のシリコンで形成された第2半導体層508と、第2半導体層508に形成された複数のMOSFET510及び512と、第2半導体層508の上層である多結晶のシリコンで形成された第3半導体層522と、第3半導体層522に形成された複数のMOSFET524及び526と、第1半導体層500と第2半導体層508との間に設けられた配線層514と、第2半導体層508と第3半導体層522との間に設けられ配線層518と、第3半導体層522の上層である配線層528とを備える。MOSFET504及び506は、本発明の第1半導体層トランジスタの一例であり、MOSFET510及び512は、本発明の第2半導体層トランジスタの一例であり、MOSFET524及び526は、本発明の第3半導体層トランジスタの一例である。
【0035】
配線層514には、第1半導体層500に形成されたMOSFET504及び506をMOSFET510、512、524、若しくは528又は外部と接続する金属配線516が形成されている。配線層518には、第2半導体層508に形成されたMOSFET510及び512をMOSFET504、506、524、若しくは526又は外部と接続する金属配線520が形成されている。配線層528には、第3半導体層522に形成されたMOSFET524及び526をMOSFET504、506、510、若しくは512又は外部と接続する配線530が形成されている。MOSFET504又は506とMOSFET510及び512とは、第1半導体層500から第2半導体層508への方向において少なくとも一部分が重なっていることが好ましく、MOSFET504又は506とMOSFET524及び526とは、第2半導体層508から第3半導体層522への方向において少なくとも一部分が重なっていることが好ましい。また、MOSFET504又は506とMOSFET524及び526とは、第2半導体層508又は第3半導体層における同一の位置に形成されてもよい。これにより、多層MOSFET306の回路面積を小さくすることができる。
【0036】
次に、多層MOSFET306の製造方法について説明する。まず、第1半導体層500を形成し、MOSFET504及び506を第1半導体層500に形成する。第1半導体層500にMOSFET504及び506を形成する場合、第1半導体層500に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成して第1ゲート電極を形成する。次に、配線層514を第1半導体層500上に堆積させ、例えばアルミニウム等の金属を材料とする金属配線516を配線層514に形成する。次に、配線層514上に第2半導体層508を堆積させ、MOSFET510及び512を第2半導体層508に形成する。第2半導体層508にMOSFET510及び512を形成する場合、第2半導体層508に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成してゲート電極を形成する。
【0037】
次に、配線層518を第2半導体層508上に堆積させ、例えばアルミニウム等の金属を材料とする金属配線520を配線層518に形成する。次に、配線層518上に第3半導体層522を堆積させ、MOSFET524及び526を第3半導体層522に形成する。第3半導体層522にMOSFET524及び526を形成する場合、第3半導体層522に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成してゲート電極を形成する。次に、配線530を含む配線層528を形成する。なお、MOSFET510及び512は、同一のフォトマスクを用いて、第2半導体層508又は第3半導体層522における同一の位置に同一の構造で同一のプロセスにより形成される。
【0038】
以上のように、第1半導体層500のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、高性能な多層MOSFET306を製造することができる。即ち、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜を高温プロセス(800度)である熱酸化によって生成する場合には、第1半導体層500及び第2半導体層508に形成された配線、例えば融点が660度であるアルミニウムで形成された配線が融けてしまうので、多層MOSFET306を形成することができない。なお、第1半導体層500及び第2半導体層508に融点が高いポリシリコン等で配線を形成することも考えられるが、配線の抵抗が高くなってしまうので、多層MOSFET306の性能を低下させてしまう。そこで、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜を低電子温度プラズマ(400度)等のラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、第1半導体層500の配線をアルミニウム等の抵抗が低い金属により形成することができ、高性能な多層MOSFET306を製造することができる。
【0039】
また、MOSFET504又は506とMOSFET524及び526とを、第2半導体層508又は第3半導体層における同一の位置に同一のレイアウトパターンで形成することによって、同一のフォトマスクを繰り返し使用することができるので、マスクコストを低減することができる。また、第1半導体層500と第2半導体層508との間に配線層514を設け、また、第2半導体層508と第3半導体層522との間の配線層518を設けることによって、第2半導体層508及び第3半導体層522にビアホールを形成する必要がないので、回路の集積度を向上することができ、回路面積を小さくすることができる。
【0040】
第1半導体層500のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層508のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成しても、MOSFET504及び506のゲート絶縁膜の絶縁性は、MOSFET510、512、524、及び526のゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等に形成される。なお、図14から図17において、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜と比較した、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたゲート絶縁膜の性能について説明する。
【0041】
一方、第1半導体層500のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、MOSFET504及び506のゲート絶縁膜は、MOSFET510、512、524、及び526のゲート絶縁膜より絶縁性が高くなり、MOSFET510及び512のゲート絶縁膜は、MOSFET524及び526のゲート絶縁膜と絶縁性が略同一である場合、つまり、MOSFET504又は506のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性は、MOSFET510、512、524、又は526のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性より高く、MOSFET510又は512のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性は、MOSFET524又は526のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性と略同一である場合には、MOSFET504及び506とMOSFET510、512、524、及び526との電気的特性を統一するため、MOSFET504及び506を、MOSFET510、512、524、及び526より小さく、MOSFET510及び512を、MOSFET524及び526と略同一の大きさにしてもよい。
【0042】
また、この場合、MOSFET504及び506のゲート電圧は、MOSFET510、512、524、及び526のゲート電圧より小さく、MOSFET510及び512のゲート電圧は、MOSFET524及び526のゲート電圧と略同一となる。また、MOSFET504及び506は、MOSFET510、512、524、及び526より動作速度が速く、MOSFET510及び512は、MOSFET524及び526と略同一の動作速度である。
【0043】
そこで、MOSFET504及び506又はMOSFET510、512、524、及び526が伝送する信号を次にように決定することによって、MOSFET504及び506又はMOSFET510、512、524、及び526を性能に応じて動作させ、多層MOSFET306全体として高性能に動作させてもよい。例えば、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET504及び506は、所定周波数より高い周波数の高周波信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET510、512、524、及び526は、所定周波数より低い周波数の低周波信号を伝送する。他の例においては、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET504及び506は、アナログ信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET510、512、524、及び526は、デジタル信号を伝送する。このように、熱酸化及びラジカル酸化又はラジカル窒化のいずれによってゲート絶縁膜が形成されたか否かによるMOSFETの性能に応じて異なる種類の信号を入出力させることによって、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたことによるMOSFETの性能の低下に起因する多層MOSFET306の性能の低下を防ぐことができる。
【0044】
図12及び図13は、第2実施形態に係る多層MOSFET306の構成の一例を平面図で示す。図12は、第1半導体層500及び配線層514の平面図であり、図13は、第2半導体層508及び配線層518の平面図である。
【0045】
図12に示すように、第1半導体層500には、MOSFET701〜718が形成されており、図13に示すように、第2半導体層508には、MOSFET719〜728が形成されている。多層MOSFET306は、複数の信号線601〜608の間をそれぞれスイッチングする8入出力のPSMであり、配線層514及び配線層518に形成された配線、並びにスルーホール801〜807によって、MOSFET701〜728は相互に接続され、MOSFET701〜728は、複数の信号線601〜608の間のいずれかをそれぞれスイッチングする。
【0046】
具体的には、MOSFET701は信号線601と信号線605との間を、MOSFET702は信号線602と信号線605との間を、MOSFET703は信号線603と信号線605との間を、MOSFET704は信号線604と信号線605との間を、MOSFET705は信号線601と信号線606との間を、MOSFET706は信号線602と信号線606との間を、MOSFET707は信号線603と信号線606との間を、MOSFET708は信号線604と信号線606との間を、MOSFET709は信号線601と信号線607との間を、MOSFET710は信号線602と信号線607との間を、MOSFET711は信号線603と信号線607との間を、MOSFET712は信号線604と信号線607との間を、MOSFET713は信号線602と信号線604との間を、MOSFET714は信号線601と信号線603との間を、MOSFET715は信号線602と信号線603との間を、MOSFET716は信号線601と信号線602との間を、MOSFET717は信号線603と信号線604との間を、MOSFET718信号線601と信号線604との間をそれぞれスイッチングする。
【0047】
また、MOSFET719は信号線605と信号線608との間を、MOSFET720は信号線605と信号線606との間を、MOSFET721は信号線607と信号線608との間を、MOSFET722は信号線606と信号線607との間を、MOSFET723は信号線605と信号線607との間を、MOSFET724信号線606と信号線608との間を、MOSFET725は信号線601と信号線608との間を、MOSFET726は信号線602と信号線608との間を、MOSFET727は信号線603と信号線608との間を、MOSFET728は信号線604と信号線608との間をそれぞれスイッチングする。
【0048】
以上のように、MOSFET701〜728を第1半導体層500及び第2半導体層508に分割し積層して多層MOSFET306を構成することによって、図7に示した従来技術による8入出力のPSMと比較すると明らかなように、多層MOSFET306の回路面積を小さくすることができる。そのため、チップ面積を小さくすることができるので配線長を短くすることができ、その結果、配線遅延時間が小さくなり、回路を高速で動作させることができる。
【0049】
また、図10及び図11において説明したように、第1半導体層500に形成されるMOSFET701〜718のゲート絶縁膜は、熱酸化により形成され、第2半導体層508に形成されるMOSFET719〜728のゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されることにより、MOSFET719〜728は、MOSFET701〜718より大きくなる場合には、第2半導体層518に形成されるMOSFETの数は、第1半導体層に形成されるMOSFETの数より少ないことが好ましい。これにより、第1半導体層500に形成される回路の回路面積と第2半導体層508に形成される回路の回路面積とを略等しくすることができるので、多層MOSFET306のチップ面積を小さくすることができる。
【0050】
図14は、ゲート絶縁膜に印加される電界とリーク電流の電流密度との関係を示す。横軸はゲート絶縁膜に印加される電界(MV/cm)であり、縦軸はリーク電流の電流密度(A/cm)である。そして、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜(熱酸化膜:膜厚20.7nm)、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜(熱酸化膜:膜厚15nm)、ラジカル酸化により形成されたゲート絶縁膜(ラジカル酸化膜:膜厚18.4nm)、ラジカル酸化により形成されたゲート絶縁膜(ラジカル酸化膜:膜厚9.4nm)、及びラジカル窒化により形成されたゲート絶縁膜(ラジカル窒化膜:膜厚9.8nm)についてリーク電流の大きさを比較する。なお、ゲート電極直下におけるキャリアの濃度を規定する不純物の濃度(substrate injection)が10−4cm−2である場合を示す。
【0051】
図14に示すように、ラジカル酸化膜のリーク電流は、熱酸化膜のリーク電流と概ね同等か、又は熱酸化膜のリーク電流より小さい。また、ラジカル窒化膜のリーク電流は、電界が約4(MV/cm)より大きい場合には膜厚が20.7nmの熱酸化膜のリーク電流より小さく、電界が約7(MV/cm)より大きい場合には膜厚が15nmの熱酸化膜のリーク電流より小さい。したがって、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成した場合であっても、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合に比べて、より高性能なMOSFETを形成することができる。
【0052】
図15は、ゲート電圧とゲート絶縁膜の寿命との関係を示す。横軸はゲート電圧であり、縦軸はTDDB(酸化膜経時破壊)評価による半数のゲート絶縁膜が破壊されるまでの時間(寿命)である。そして、熱酸化により形成された熱酸化膜(Dry SiO)、及びラジカル窒化により形成されたラジカル窒化膜(Xe/NH、Ar/NH、Kr/NH)についての寿命を比較する。なお、熱酸化膜及びラジカル窒化膜の膜厚が2.4nmである場合を示す。
【0053】
図15に示すように、ラジカル窒化膜は、熱酸化膜に比べて寿命が約3万倍になる場合がある。また、熱酸化膜(Dry SiO)の寿命と、キセノンプラズマによるラジカル窒化により形成されたラジカル窒化膜(Xe/NH)の寿命とを例えば10年に設定すると、熱酸化膜(Dry SiO)の場合にはゲート電圧として2.1Vを印加することができるのに対し、ラジカル窒化膜(Xe/NH)の場合にはゲート電圧として3.0Vを印加することができる。したがって、ラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成した場合、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合に比べて、より動作速度が高速なMOSFETを形成することができる。
【0054】
図16は、ゲート絶縁膜の耐圧を示す。縦軸はワイブル分布であり、横軸はゲート絶縁膜に印加する電界(Breakdown Field)(MV/cm)である。ここでは、所定の電圧を印加した場合に絶縁破壊が起きる確率が50%であるときのワイブル分布を0とする。3.5nm、5.0nm、及び7.8nmの3種類の膜厚について実験した結果、低電子温度クリプトンプラズマを用いてラジカル酸化により形成されたゲート絶縁膜は、3種類の膜厚のすべてにおいて、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜と概ね同等の耐圧を示している。したがって、低電子温度(400度)でも高品質なゲート絶縁膜を形成することができることが分かる。
【0055】
図17は、ゲート絶縁膜の膜厚と絶縁膜破壊までの電荷Qbdとの関係を示す。ここで、(破壊までの電荷Qbd)=(固定電流)×(破壊までの時間)であり、ゲート絶縁膜の信頼性指標のひとつである。横軸は実効的なゲート絶縁膜の膜厚であり、縦軸は歩留まり63%となる場合の電荷Qbdである。そして、熱酸化により形成された熱酸化膜、及びラジカル酸化により形成されたラジカル酸化膜について比較する。
【0056】
図17に示すように、実効的なゲート絶縁膜の膜厚が小さい場合(Teff<100A)、ラジカル酸化膜は、熱酸化膜に比べてQbd指標での信頼性が約1.5倍になる。これは、ラジカル酸化膜には、熱酸化膜よりも破壊されにくいことを意味する。したがって、ラジカル酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合に比べて、寿命が長いMOSFETを形成することができる。
【0057】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来技術に係るMOSFETの断面図である。
【図2】従来技術に係るMOSFETの平面図である。
【図3】従来技術に係るプログラマブル回路の概念図である。
【図4】従来技術に係るPSMの回路構成である。
【図5】従来技術に係るPSMの回路構成である。
【図6】従来技術に係るPSMの回路構成である。
【図7】従来技術による8入出力のPSMの平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る半導体集積回路200の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る半導体集積回路300の構成を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る多層MOSFET306の断面図である。
【図11】第2実施形態に係る多層MOSFET306の断面図である。
【図12】第1半導体層500及び配線層514の平面図である。
【図13】第2半導体層508及び配線層518の平面図である。
【図14】ゲート絶縁膜に印加される電界とリーク電流との関係を示す図である。
【図15】ゲート電圧とゲート絶縁膜の寿命との関係を示す図である。
【図16】ゲート絶縁膜の耐圧を示す図である。
【図17】ゲート絶縁膜の膜厚と絶縁膜破壊までの電荷との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
200 半導体集積回路
202 入力信号線
204 出力信号線
206 多層MOSFET
300 半導体集積回路
302 入出力信号線
306 多層MOSFET
400 第1半導体層
404 MOSFET
406 MOSFET
408 第2半導体層
410 MOSFET
412 MOSFET
414 配線層
416 配線
500 第1半導体層
504 MOSFET
506 MOSFET
508 第2半導体層
510 MOSFET
512 MOSFET
514 配線層
516 金属配線
518 配線層
520 金属配線
522 第3半導体層
524 MOSFET
526 MOSFET
528 配線層
530 配線
601〜608 信号線
701〜728 MOSFET
801〜807 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造で構成される半導体集積回路であって、
第1半導体層と、
前記第1半導体層に形成された第1半導体層トランジスタと、
前記第1半導体層上に堆積され、金属配線が形成された配線層と、
前記配線層上に堆積された第2半導体層と、
前記第2半導体層に形成された第2半導体層トランジスタと
を備える半導体集積回路。
【請求項2】
前記第1半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性と、前記第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等である
半導体集積回路。
【請求項3】
前記第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成される
請求項1乃至2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1半導体層トランジスタは、前記第2半導体層トランジスタより動作速度が速い
請求項1乃至2に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1半導体層トランジスタと前記第2半導体層トランジスタとは、前記第1半導体層から前記第2半導体層への方向において少なくとも一部分が重なっている
請求項1乃至2に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
当該半導体集積回路は、複数の信号線の間をそれぞれスイッチングするスイッチマトリックスであり、
前記第1半導体層トランジスタ及び前記第2半導体層トランジスタは、前記複数の信号線の間のいずれかをスイッチングする
請求項1乃至2に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第1半導体層トランジスタは、アナログ信号を伝送し、
前記第2半導体層トランジスタは、デジタル信号を伝送する
請求項1乃至2に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記第2半導体層上に堆積された第3半導体層と、
前記第3半導体層に形成された第3半導体層トランジスタと
をさらに備え、
前記第3半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性と、前記第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等である
請求項1乃至2に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記第3半導体層トランジスタのゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成される
請求項8に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記第2半導体層トランジスタと前記第3半導体トランジスタとは、同一のフォトマスクを用いて同一のプロセスにより形成される
請求項8に記載の半導体集積回路。
【請求項11】
多層構造で構成される半導体集積回路の製造方法であって、
第1半導体層に第1半導体層トランジスタを形成する段階と、
前記第1半導体層上に第2半導体層を堆積する段階と、
前記第2半導体層に第2半導体層トランジスタを形成する段階と
を備え、
前記第2半導体層トランジスタを形成する段階は、
前記第2半導体層に第2ソース電極及び第2ドレイン電極を形成する段階と、
前記第2半導体層にラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成する段階と、
前記第2半導体層に第1ゲート電極を形成する段階と
を有する
半導体集積回路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−32732(P2006−32732A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210699(P2004−210699)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】