説明

半導体集積回路装置

【課題】製造プロセスなどに依存することなく、安定した高精度なサンプリングクロックを生成する。
【解決手段】遅延段検出回路14は、位相検出部13の位相検出結果から、デジタル可変遅延ライン12の出力信号が基本クロックCLKrefから1周期遅延するバッファの遅延段数を検出する。遅延段数選定部21は、遅延段検出回路14が検出した最新の検出結果と過去の任意の回数分の検出結果との差を算出し、設定された遅延段数以下の際に最新の検出結果を出力する。位相/遅延段数変換部15は、入力された位相遅延の設定信号と使用検出遅延段数保持部22の遅延段数のデータとから、位相遅延に必要なバッファの遅延段数を算出し、遅延設定データとして算出し、デジタル可変遅延ライン111 〜11n は、遅延設定データに基づいて遅延したサンプリング信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置において用いられるサンプリングクロックの生成技術に関し、特に、デジタルカメラなどに用いられるサンプリング信号の生成に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、デジタルカメラなどにおけるサンプリングクロックの調整用として、DLL(Delay Locked Loop)回路が用いられている。このDLL回路は、クロックの遅延時間を外部クロックの1周期分遅らせるように働くフィードバックループである。
【0003】
DLL回路のクロック遅延は、たとえば、遅延回路、位相比較器、および電圧制御部などから構成されている。このようなDLL回路において、入力となる基本クロックは遅延回路に入力され、制御電圧端子に与えられた制御電圧により、該基本クロックがある時間だけ遅延した遅延クロックとして出力される。
【0004】
たとえば、制御電圧が上がると遅延時間は短くなり、制御電圧が下がると遅延時間が長くなる。そこで、フィードバックループにより制御電圧を制御し、ちょうど外部クロックの1周期分遅らせたところでフィードバックループが収束するよう設計される。
【0005】
遅延時間を直接測定する手段はないため、1周期分遅れの検出を基本クロックおよび遅延クロックのライジングエッジ同士を位相比較器により位相比較することにより行う。すなわち、基本クロックに対してロックしたい遅延時間より遅延クロックが遅い場合にはUPパルスを、その逆の場合にはDOWNパルスを電圧制御部に与える。電圧制御部は、位相比較器の出力であるUPパルス、およびDOWNパルスに応じてアナログ電圧の制御電圧を作り出す。
【0006】
そして、インバータ列で実現された遅延回路の各段の出力をそれぞれ取り出せるように構成することにより、微調整された高精度なクロック信号の生成が可能となり、該クロック信号をCCDなどの撮像素子、CDS(相関二重サンプリング)、PGA(プログラマブルゲインアンプ)、A/D変換器などのサンプリングクロックとして入力することにより、より高精細な画像情報の処理が可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のようなDLL回路によるサンプリングクロックの生成技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0008】
すなわち、DLL回路は、プロセス依存度が大きいため、半導体集積回路装置の設計ルールなどのプロセスルールが変わると、フィードバックループの特性などが大きく変わってしまうことになり、高精度なサンプリングクロックを生成することができず、画像処理などに悪影響が生じてしまう恐れがある。
【0009】
また、プロセスルールが変わった際に、該プロセスルールに合わせたDLL回路の再設計を行うことも考えられるが、この再設計に伴い、設計コストや期間などが新たに必要となってしまうという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、製造プロセスなどに依存することなく、安定した高精度なサンプリングクロックを生成することのできる技術を提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明による半導体集積回路装置は、直列接続された複数の遅延素子と、任意の遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、遅延設定データに基づいて基本クロックを任意に遅延させ、サンプリング信号として出力する1以上の遅延回路と、直列接続された複数の遅延素子と、任意の遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、検出用遅延設定データに基づいて、基本クロックを任意に遅延させ、検出用サンプリング信号として出力する検出用遅延回路と、基本クロックと検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号との位相差を検出し、その検出結果を出力する位相検出部と、位相検出開始信号が入力された際に、位相検出部の検出結果から、検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号が基本クロックよりも1周期分遅延する遅延素子の接続段数を検出する遅延段数検出回路と、該遅延段数検出回路が検出した遅延段数と外部入力される位相遅延の設定信号とから、位相遅延の設定信号で設定された位相遅延に必要な遅延素子の遅延段数を算出し、遅延回路に遅延設定データとして出力する遅延制御部とを有したクロック発生部を備えたものである。
【0014】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0015】
本発明による半導体集積回路装置は、直列接続された複数の遅延素子と、任意の遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、遅延設定データに基づいて基本クロックを任意に遅延させ、サンプリング信号として出力する1以上の遅延回路と、基本クロックを遅延させるクロック遅延回路と、直列接続された複数の遅延素子と、任意の遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、検出用遅延設定データに基づいて、クロック遅延回路から出力された基本クロックを任意に遅延させ、検出用サンプリング信号として出力する検出用遅延回路と、基本クロックと検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号との位相差を検出し、その検出結果を出力する位相検出部と、該位相検出部の検出結果から、検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号が基本クロックよりも1周期分遅延する遅延素子の接続段数を検出する遅延段数検出回路と、遅延段数検出回路が検出した遅延段数から検出した遅延段数選定データと外部入力される位相遅延の設定信号とから、位相遅延の設定信号で設定された位相遅延に必要な遅延素子の遅延段数を算出し、遅延回路に遅延設定データとして出力する遅延制御部とを有したクロック発生部を備えたものである。
【0016】
また、本発明による半導体集積回路装置は、第1のサンプリングクロックに同期して、撮像素子から出力される信号レベルと基準電位である黒レベルとを交互にサンプリングし、その差電圧を取り出す差電圧検出部と、第2のサンプリングクロックに同期して、差電圧検出部から出力された差電圧を増幅する差電圧増幅部と、第3のサンプリングクロックに同期して、差電圧増幅部が増幅した差電圧をデジタル値に変換するA/D変換器とを備え、クロック発生部は、少なくとも第1〜第3のサンプリングクロックを生成するものである。
【0017】
さらに、本発明による半導体集積回路装置は、前記遅延制御部が、遅延段数検出回路が検出した最新の遅延段数と過去に検出された任意の回数の遅延段数との差をそれぞれ検出し、それらの差が予め設定された任意の設定段数以下である場合、最新の遅延段数を遅延段数選定データとして出力し、それらの差が予め設定された任意の設定段数よりも多い場合に不正確な検出結果と判断し、1つ前に検出された遅延段数を遅延段数選定データとして出力する遅延段数選定部と、該遅延段数選定部から出力された遅延段数選定データと外部入力される位相遅延の設定信号とから、位相遅延の設定信号で設定された位相遅延に必要な遅延素子の遅延段数を算出し、遅延回路に遅延設定データとして出力する遅延設定部とよりなるものである。
【0018】
さらに、本発明による半導体集積回路装置は、前記遅延制御部が、外部入力されるタイミング入力信号に基づいて遅延段数検出回路に位相検出開始信号を出力する検出開始タイミング決定部を備え、該検出開始タイミング決定部に入力されるタイミング入力信号は、垂直同期信号であり、任意の回数の垂直同期信号が入力される毎に、1回の割合でタイミング入力信号を生成するものである。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
(1)半導体集積回路装置の製造プロセスなどに変更があっても、安定したサンプリングクロックを高精度に生成することができる。
【0021】
(2)また、上記(1)により、半導体集積回路装置の信頼性を向上させることができる。
【0022】
(3)さらに、上記(1)により、半導体集積回路装置の設計コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による画像前処理部の構成を示すブロック図、図2は、図1の画像前処理部に設けられたクロック発生部の構成を示すブロック図、図3は、図2のクロック発生部9の動作の一例を示すフローチャート、図4は、図2のクロック発生部による遅延段数の検出動作を示す説明図である。
【0025】
本実施の形態1において、画像前処理部1は、たとえば、デジタルカメラシステムにおける画像前処理用半導体集積回路装置である。この画像前処理部1は、各画素から取り込んだ信号レベルと基準となる黒レベルとをそれぞれ交互にサンプリングし、それらを比較することにより信号レベルを決定する。
【0026】
画像前処理部1は、図1に示すように、撮像素子2、CDS(差電圧検出部)3、PGA(差電圧増幅部)4、A/D変換器5、ロジック回路6、タイミング発生器7、DSP8、ならびにクロック発生部9から構成される。
【0027】
これらCDS3、PGA4、A/D変換器5、ロジック回路6、およびクロック発生部9などは、1チップ化した半導体集積回路装置などによって構成するようにしてもよい。
【0028】
撮像素子2は、たとえばCCDやCMOSセンサなどからなり、レンズによって結像した映像を電圧信号に変換する。この撮像素子2は、基準となる黒レベルと取り込んだ信号レベルとを交互に出力する。
【0029】
撮像素子2には、CDS3が接続されている。CDS3は、相関二重サンプリング回路であり、撮像素子2から出力される黒レベルと信号レベルとをクロック発生部9から出力される第1のサンプリングクロックとなる黒レベルサンプリングクロックSPBLK、同じく第1のサンプリングクロックとなる信号サンプリングクロックSPSIGに同期してサンプリングし、その差信号を出力する。
【0030】
CDS3が検出した差信号は、PGA4で増幅し、A/D変換器5でデジタル値に変換して出力される。このA/D変換器5には、DSP8が接続されている。DSP8は、A/D変換器5から出力されたデジタルデータを処理する。
【0031】
ロジック回路6には、クロック発生部9が接続されている。このロジック回路6からは、位相遅延の設定信号が出力される。また、タイミング発生器7には、クロック発生部9が接続されている。このタイミング発生器7は、外部入力された外部クロックから、クロック発生部9に供給する基本クロックCLKrefを生成して出力する。
【0032】
クロック発生部9は、後述するタイミング入力信号に基づいて、入力された基本クロックから、CDS3に供給する信号サンプリングクロックSPSIG、黒レベルサンプリングクロックSPBLK、および撮像素子2に供給するサンプリング信号、PGA4に供給する第2のサンプリングクロックとなるサンプリング信号、およびA/D変換器5に供給する第3のサンプリングクロックとなるサンプリング信号をそれぞれ生成する。
【0033】
図2は、クロック発生部9の構成例を示すブロック図である。
【0034】
クロック発生部9は、図示するように、制御部10、デジタル可変遅延ライン111 〜11n 、デジタル可変遅延ライン12、位相検出部13、および遅延段数検出回路14から構成されている。
【0035】
遅延制御部となる制御部10は、遅延段数の検出結果からデジタル可変遅延ライン111 〜11n の遅延段数の設定を行う。遅延回路であるデジタル可変遅延ライン111 〜11n は、入力された基本クロックCLKrefを遅延し、CDS3に供給する信号サンプリングクロックSPSIG、黒レベルサンプリングクロックSPBLK、および撮像素子2やA/D変換器5に供給するサンプリング信号として供給される。
【0036】
デジタル可変遅延ライン111 〜11n は、遅延素子となる直列接続された複数のバッファとセレクタからなり、制御部10に設定された遅延設定データに基づいて、任意のバッファの出力部からの遅延クロックを選択し、出力信号として出力する。
【0037】
検出用遅延回路であるデジタル可変遅延ライン12は、遅延段数検出回路14から出力される検出用遅延段数設定信号に応じて、検出用信号となる入力された基本クロックCLKrefを遅延する。このデジタル可変遅延ライン12も、デジタル可変遅延ライン111 〜11n と同様に、直列接続された複数のバッファとセレクタとからなる。
【0038】
位相検出部13は、デジタル可変遅延ライン12から出力される出力信号と基本クロックCLKrefとの位相差を検出し、検出信号として出力する。遅延段数検出回路14は、デジタル可変遅延ライン12から出力される出力信号が検出基準信号となる基本クロックCLKrefよりも1周期分遅延する遅延段数を検出する。
【0039】
また、制御部10は、位相/遅延段数変換部15、遅延設定部16、フィードバックタイミング決定部17、検出開始タイミング決定部18、検出期間終了検出部19、検出遅延段数保持部20、遅延段数選定部21、ならびに使用検出遅延段数保持部22から構成されている。
【0040】
位相/遅延段数変換部15は、ロジック回路6から出力される位相遅延の設定信号と使用検出遅延段数保持部22に格納された遅延段数の検出結果からデジタル可変遅延ライン111 〜11n に設定する遅延設定データを算出する。
【0041】
位相/遅延段数変換部15には、遅延設定部16が接続されている。この遅延設定部16は、たとえば、レジスタからなり、位相/遅延段数変換部15から出力された遅延設定データを格納する。
【0042】
遅延設定部16には、デジタル可変遅延ライン111 〜11n がそれぞれ接続されており、デジタル可変遅延ライン111 〜11n は、遅延設定部16に設定された遅延設定データに応じて遅延を微調整した出力信号を出力する。
【0043】
フィードバックタイミング決定部17は、遅延設定部16がデータを取り込む際のタイミング信号を生成して出力し、検出開始タイミング決定部18は、遅延段数検出回路14が遅延段数を検出する際の開始タイミングを示すタイミング信号を生成する。
【0044】
これらフィードバックタイミング決定部17、および検出開始タイミング決定部18は、タイミング入力信号に基づいてタイミング信号を生成する。このタイミング入力信号は、たとえば、信号処理用半導体集積回路装置から出力される垂直同期信号などを用いる。
【0045】
検出期間終了検出部19は、遅延段数検出回路14が遅延段数の検出を終了したことを検出し、取り込みタイミング信号として検出遅延段数保持部20、ならびに遅延段数選定部21に出力する。
【0046】
検出遅延段数保持部20は、たとえば、レジスタからなり、遅延段数検出回路14による遅延段数の検出結果を検出期間終了検出部19から出力された取り込みタイミング信号に同期して格納する。この検出遅延段数保持部20には、遅延段数検出回路14が検出した遅延段数の検出結果が任意の回数分格納される。
【0047】
遅延段数選定部21は、前記した取り込みタイミング信号に同期して、検出遅延段数保持部20に格納された任意の回数分の検出結果を取り込み、遅延段数検出回路14が検出した最新の遅延段数の検出結果が正しいか否かを判定し、検出結果が正しい場合には、その結果を使用検出遅延段数保持部22に出力する。使用検出遅延段数保持部22は、たとえば、レジスタからなり、遅延段数選定部21から出力された検出結果を格納する。
【0048】
次に、本実施の形態によるクロック発生部9の動作について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
まず、検出開始タイミング決定部18にタイミング入力信号が入力されると、該検出開始タイミング決定部18は、位相検出開始信号を遅延段数検出回路14に出力する(ステップS101)。
【0050】
ここで、タイミング入力信号が前述したように垂直同期信号である場合、検出開始タイミング決定部18は、該タイミング入力信号が入力される毎に位相検出開始信号を出力するのではなく、たとえば、数回のタイミング入力信号に1回の割合でタイミング入力信号を出力するものとする。
【0051】
位相検出開始信号が入力されると、遅延段数検出回路14は、ビジー信号を検出期間終了検出部19に出力するとともに、位相検出部13からの位相検出結果を受けて該デジタル可変遅延ライン12から出力される出力信号が検出用基準信号となる基本クロックCLKrefから1周期分遅延するようにデジタル可変遅延ライン12に検出用遅延段数設定信号を出力して調整し、その時のデジタル可変遅延ライン12におけるバッファの遅延段数を検出する(ステップS102)。
【0052】
ここで、ステップS102の処理でのデジタル可変遅延ライン12、位相検出部13、および遅延段数検出回路14によるバッファの遅延段数の検出について、図4を用いて説明する。
【0053】
図4の左側の上方から下方には、基本クロックCLKref、デジタル可変遅延ライン12から出力される遅延段数が0段〜d段までの出力信号の信号タイミングをそれぞれ示しており、中央部には、その時の位相検出部13の位相比較結果を示し、その右側には、遅延段数検出回路14の遅延段数を検出する際の算出式を示している。
【0054】
図示するように、遅延段数検出回路14は、デジタル可変遅延ライン12に対して検出用遅延段数設定信号を出力し、デジタル可変遅延ライン12のバッファ遅延段数を0段から順に1段ずつ増加させていく。
【0055】
そして、位相検出部13の出力信号(位相検出結果)が最初にHi信号からLo信号に変化した時の遅延段数(図4、遅延段数a段)と、その次に位相検出部13の出力信号がHi信号からLo信号に変化した時の遅延段数(図4、遅延段数d段)との遅延段数の差を1周期分の遅延段数の検出結果(図4、d段−a段)として検出遅延段数保持部20に出力する。
【0056】
続いて、図3において、遅延段数の検出が終了すると、遅延段数検出回路14は、検出期間終了検出部19に対するビジー信号の出力を停止する。これにより、検出期間終了検出部19は、検出遅延段数保持部20、および遅延段数選定部21に取り込みタイミング信号をそれぞれ出力し、検出遅延段数保持部20は、遅延段数検出回路14が検出した遅延段数の検出結果を取り込む(ステップS103)。
【0057】
そして、遅延段数選定部21は、遅延段数検出回路14が検出した最新の検出結果と過去に検出された任意の回数分の検出結果とを比較し、最新の検出結果の遅延段数と過去に検出された検出結果の遅延段数との差が予め設定された遅延段数以下にそれぞれなっていれば、最新の検出結果は正確であると判断し、最新の検出結果を使用検出遅延段数保持部22に出力する(ステップS104)。
【0058】
また、最新の検出結果と過去に検出された検出結果とが予め設定された遅延段数よりも多い場合には、その最新の検出結果が、たとえば、電源電圧変動などの影響を受けた不正確な検出結果の可能性があるので、過去に検出された検出結果(たとえば、)1回前に検出された遅延段数)を使用検出遅延段数保持部22に出力する。
【0059】
さらに、ここでは、最新の検出結果と過去に検出された検出結果との差が予め設定された遅延段数よりも多いか少ないかで判断しているが、たとえば、遅延段数選定部21は、最新の検出結果と過去に検出された検出結果との平均値を算出し、その算出結果を遅延段数として出力するようにしてもよい。
【0060】
その後、使用検出遅延段数保持部22は、遅延段数選定部21から出力された遅延段数のデータを格納する。そして、位相/遅延段数変換部15は、ロジック回路6から出力された位相遅延の設定信号と使用検出遅延段数保持部22に格納された遅延段数のデータとから、位相遅延の設定信号で設定された位相遅延に必要なバッファの遅延段数を算出して出力し(ステップS105)、遅延設定部16にその算出結果が格納される。
【0061】
その後、フィードバックタイミング決定部17にタイミング入力信号が入力されると、該フィードバックタイミング決定部17は、タイミング信号を遅延設定部16に出力する(ステップS106)。
【0062】
この場合も、検出開始タイミング決定部18と同様に、タイミング入力信号が前述したように垂直同期信号である場合、フィードバックタイミング決定部17は、該タイミング入力信号が入力される毎に位相検出開始信号を出力するのではなく、たとえば、数回のタイミング入力信号に1回の割合でタイミング入力信号を出力するものとする。
【0063】
また、タイミング入力信号として垂直同期信号を用いることにより、画像切り替わりブランキング期間に遅延段数の算出結果が更新されるので、遅延時間変更による画像への影響を大幅に抑えることができる。
【0064】
遅延設定部16は、フィードバックタイミング決定部17から出力されたタイミング信号を受けて、格納されているバッファの遅延段数の算出結果をデジタル可変遅延ライン111 〜11n に出力する(ステップS107)。
【0065】
これにより、各々のデジタル可変遅延ライン111 〜11n のバッファ遅延段数が更新され、最適なタイミングの遅延信号がデジタル可変遅延ライン111 〜11n からそれぞれ出力され、CDS3に供給する信号サンプリングクロックSPSIG、黒レベルサンプリングクロックSPBLK、および撮像素子2やA/D変換器5のサンプリング信号として供給される。
【0066】
それにより、本実施の形態1によれば、各種サンプリング信号を生成するデジタル可変遅延ライン111 〜11n とは別に、遅延段数検出用のデジタル可変遅延ライン12を設けたことにより、遅延段数検出に必要な遅延段数変更の処理を実動作中に行うことができる。
【0067】
また、電源電圧の変動などによる短期的な遅延変動には対応せず、温度や電圧などで少しずつ遅延量が変化していく場合に対して遅延段数を補正することができるので、高精度なサンプリング信号を生成することができる。
【0068】
さらに、プロセス依存度が小さくなるので、画像前処理部1のプロセス変更があった場合でも、クロック発生部9の再設計などが不要となり、低コストで、高精度なサンプリング信号を生成することができる。
【0069】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2によるクロック発生部の構成例を示すブロック図、図6は、図5のクロック発生部によるバッファの遅延段数の検出動作を示す説明図、図7は、本発明者が検討したクロック発生部に遅延回路が設けられていない場合の位相検出の一例を示す説明図、図8は、図5のクロック発生部による位相検出例を示す説明図である。
【0070】
本実施の形態2において、画像前処理部1は、前記実施の形態1(図1)と同様に、撮像素子2、CDS(差電圧検出部)3、PGA(差電圧増幅部)4、A/D変換器5、ロジック回路6、タイミング発生器7、DSP8、ならびにクロック発生部9から構成されている。
【0071】
また、クロック発生部9は、図5に示すように、制御部10、デジタル可変遅延ライン111 〜11n 、デジタル可変遅延ライン12、位相検出部13、および遅延段数検出回路14からなる前記実施の形態1の構成に、新たに遅延回路23が新たに設けられた構成となっている。
【0072】
制御部10は、位相/遅延段数変換部15、遅延設定部16、フィードバックタイミング決定部17、検出開始タイミング決定部18、検出期間終了検出部19、検出遅延段数保持部20、遅延段数選定部21、ならびに使用検出遅延段数保持部22から構成されており、これも前記実施の形態1と同様である。
【0073】
遅延回路23は、基本クロックCLKrefを遅延する。この遅延回路23に遅延された基本クロックCLKrefは、位相検出部13に入力されるように接続されている。遅延回路23は、遅延段数検出回路14を介して出力される遅延段数が0段のときの出力信号よりも基本クロックCLKrefの位相が遅くなるように基本クロックCLKrefを遅延する。
【0074】
位相検出部13は、デジタル可変遅延ライン12から出力される出力信号と遅延回路23に遅延された基本クロックCLKrefとの位相差を検出し、検出信号として出力する。クロック発生部9において、その他の接続構成は、実施の形態1と同様となっている。
【0075】
図6は、デジタル可変遅延ライン12、遅延回路23、位相検出部13、および遅延段数検出回路14によるバッファの遅延段数の検出動作を示す説明図である。
【0076】
図6の左側の上方から下方には、遅延回路23に遅延された基本クロックCLKref、デジタル可変遅延ライン12から出力される遅延段数が0段〜d段までの出力信号の信号タイミングをそれぞれ示しており、中央部には、その時の位相検出部13の位相比較結果を示し、その右側には、遅延段数検出回路14の遅延段数を検出する際の算出式を示している。
【0077】
この場合、遅延段数検出回路14は、デジタル可変遅延ライン12に対して検出用遅延段数設定信号を出力し、デジタル可変遅延ライン12のバッファ遅延段数を0段から順に1段ずつ増加させていく。
【0078】
そして、位相検出部13の出力信号(位相検出結果)が最初にHi信号からLo信号に変化した時の遅延段数(図6、遅延段数a段)と、その次に位相検出部13の出力信号がHi信号からLo信号に変化した時の遅延段数(図6、遅延段数d段)との遅延段数の差を1周期分の遅延段数の検出結果(図4、d段−a段)として検出遅延段数保持部20に出力する。
【0079】
遅延回路23が設けられていない場合、位相検出部13に入力される基本クロックCLKrefとデジタル可変遅延ライン12から出力される信号とはほぼ同じである。このように、位相検出部13に入力される基本クロックCLKrefとデジタル可変遅延ライン12から出力される信号とはほぼ同じであればよいが、たとえば、図7に示すように、配線長の違いなどによる信号遅延が生じ、基本クロックCLKrefよりもデジタル可変遅延ライン12から出力され信号が遅延した場合には、その状態から、位相検出部13の出力がHi信号からLo信号に遷移するまでに(遅延段数a段)、より多くのバッファ遅延段数が必要となってしまう。
【0080】
そこで、遅延回路23を設けて、基本クロックCLKrefがデジタル可変遅延ライン12から出力され信号よりも確実に遅延するように調整することにより、図8に示すように、遅延段数a段となるまでのバッファ遅延段数を少なくすることができる。
【0081】
それにより、本実施の形態2では、配線遅延などによる信号遅延が生じても、位相検出の時間をより短縮化することができる。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、デジタルカメラなどに用いられる高精度なサンプリングクロックの生成技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1による画像前処理部の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の画像前処理部に設けられたクロック発生部の構成を示すブロック図である。
【図3】図2のクロック発生部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図2のクロック発生部による遅延段数の検出動作を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2によるクロック発生部の構成例を示すブロック図である。
【図6】図5のクロック発生部によるバッファの遅延段数の検出動作を示す説明図である。
【図7】本発明者が検討したクロック発生部に遅延回路が設けられていない場合の位相検出の一例を示す説明図である。
【図8】図5のクロック発生部による位相検出例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 画像前処理部
2 撮像素子
3 CDS
4 PGA
5 A/D変換器
6 ロジック回路
7 タイミング発生器
8 DSP
9 クロック発生部
10 制御部
111 〜11n デジタル可変遅延ライン
12 デジタル可変遅延ライン
13 位相検出部
14 遅延段数検出回路
15 位相/遅延段数変換部
16 遅延設定部
17 フィードバックタイミング決定部
18 検出開始タイミング決定部
19 検出期間終了検出部
20 検出遅延段数保持部
21 遅延段数選定部
22 使用検出遅延段数保持部
23 遅延回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の遅延素子と、任意の前記遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、遅延設定データに基づいて基本クロックを任意に遅延させ、サンプリング信号として出力する1以上の遅延回路と、
直列接続された複数の遅延素子と、任意の前記遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、検出用遅延設定データに基づいて、前記基本クロックを任意に遅延させ、検出用サンプリング信号として出力する検出用遅延回路と、
前記基本クロックと前記検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号との位相差を検出し、その検出結果を出力する位相検出部と、
位相検出開始信号が入力された際に、前記位相検出部の検出結果から、前記検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号が前記基本クロックよりも1周期分遅延する前記遅延素子の接続段数を検出する遅延段数検出回路と、
前記遅延段数検出回路が検出した遅延段数と外部入力される位相遅延の設定信号とから、位相遅延の設定信号で設定された位相遅延に必要な遅延素子の遅延段数を算出し、前記遅延回路に遅延設定データとして出力する遅延制御部とを有したクロック発生部を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
直列接続された複数の遅延素子と、任意の前記遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、遅延設定データに基づいて基本クロックを任意に遅延させ、サンプリング信号として出力する1以上の遅延回路と、
前記基本クロックを遅延させるクロック遅延回路と、
直列接続された複数の遅延素子と、任意の前記遅延素子の接続点から信号を選択するセレクタとを備え、検出用遅延設定データに基づいて、前記クロック遅延回路から出力された基本クロックを任意に遅延させ、検出用サンプリング信号として出力する検出用遅延回路と、
前記基本クロックと前記検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号との位相差を検出し、その検出結果を出力する位相検出部と、
前記位相検出部の検出結果から、前記検出用遅延回路から出力された検出用サンプリング信号が前記基本クロックよりも1周期分遅延する前記遅延素子の接続段数を検出する遅延段数検出回路と、
前記遅延段数検出回路が検出した遅延段数から検出した遅延段数選定データと外部入力される位相遅延の設定信号とから、位相遅延の設定信号で設定された位相遅延に必要な遅延素子の遅延段数を算出し、前記遅延回路に遅延設定データとして出力する遅延制御部とを有したクロック発生部を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体集積回路装置において、
第1のサンプリングクロックに同期して、撮像素子から出力される信号レベルと基準電位である黒レベルとを交互にサンプリングし、その差電圧を取り出す差電圧検出部と、
第2のサンプリングクロックに同期して、前記差電圧検出部から出力された差電圧を増幅する差電圧増幅部と、
第3のサンプリングクロックに同期して、前記差電圧増幅部が増幅した差電圧をデジタル値に変換するA/D変換器とを備え、
前記クロック発生部は、
少なくとも前記第1〜第3のサンプリングクロックを生成することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記遅延制御部は、
前記遅延段数検出回路が検出した最新の遅延段数と過去に検出された任意の回数の遅延段数との差をそれぞれ検出し、それらの差が予め設定された任意の設定段数以下である場合、最新の遅延段数を遅延段数選定データとして出力し、それらの差が予め設定された任意の設定段数よりも多い場合に不正確な検出結果と判断し、1つ前に検出された遅延段数を遅延段数選定データとして出力する遅延段数選定部と、
前記遅延段数選定部から出力された遅延段数選定データと外部入力される位相遅延の設定信号とから、位相遅延の設定信号で設定された位相遅延に必要な遅延素子の遅延段数を算出し、前記遅延回路に遅延設定データとして出力する遅延設定部とよりなることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体集積回路装置において、
前記遅延制御部は、
外部入力されるタイミング入力信号に基づいて前記遅延段数検出回路に位相検出開始信号を出力する検出開始タイミング決定部を備え、
前記検出開始タイミング決定部に入力されるタイミング入力信号は、垂直同期信号であり、任意の回数の垂直同期信号が入力される毎に、1回の割合で前記タイミング入力信号を生成することを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−277912(P2008−277912A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116068(P2007−116068)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】