説明

半導体集積回路

【課題】 高い周波数範囲と低い周波数範囲との広い範囲においてそれぞれ良好な特性を得ることの可能なPLL回路を提供する。
【解決手段】 制御電圧Vcに応じた周波数で発振動作する電圧制御発振器31を有し、発振信号を分周した比較信号φcompと基準クロックφinとの位相比較を行って、該位相比較の結果を制御電圧Vcにフィードバックさせることで基準クロックφinと発振信号φoutとを同期させるPLL回路において、電圧制御発振器31に、制御電圧Vcを制御電流Icに変換する電圧電流変換回路311と、制御電圧にほとんど依存しない補助電流Isを制御電流Icに付加する補助電流付加回路314と、制御電流Icの大きさに応じた周波数で発振動作する周波数可変発振器162と、制御電圧Vcの値に基づき補助電流付加回路314の動作状態のオン・オフを切り換える制御手段32とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、PLL(Phase Locked Loop)回路に適用して有用な技術に関し、例えば複数の動作モードを有するマイクロコンピュータやDSP(Digital Signal Processor)のクロック発生回路に利用して特に有用な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明者は、特願2001−19595においてPLL回路の改良発明について提案している。同出願の図18に示されるように、従来の一般的なPLL回路の中には、制御電圧を電流に変換するV−I変換回路(電圧電流変換回路)80とインバータリング発振器など電流制御により周波数を変化させる周波数可変発振器20とを組み合わせたものを電圧制御発振器(VOC)として用いるものがある。同出願において詳述されているように、上記のような電圧制御発振器においては、制御電圧が低くなると変換された制御電流がほぼゼロになってしまい発振器の動作が停止してしまったり発振動作が不安定になるという性質がある。そのため、電源投入時など制御電圧が低いときにPLL回路から発生されるクロック信号が不安定になるという問題がある。
【0003】また、V−I変換回路の素子定数を適宜設定することで、上記出願図面の図23に示すように、電圧−電流特性を調整することが出来るが、その調整の自由度は電圧−電流特性の傾きを変える程度であった。そのため、高い周波数領域でPLL回路を使用するには、電圧−電流特性の傾きを急激にして特性曲線の直線となる部分が電流値の大きい範囲に来るように設定しなければならなかった。そして、このような設定では、電圧変化量に対する電流変化量が増大してしまうので、電圧制御発振器の制御感度が必要以上に高くなり、ノイズ特性が劣化してしまうという問題があった。
【0004】そこで、本発明者は、上記出願において、V−I変換回路で変換される制御電流に制御電圧にほとんど依存しない補助電流を付加するという改良発明を提案した。これにより、制御電圧が低いときでも安定的なクロック出力が可能であるとともに、高い周波数領域においても電圧制御発振器の制御感度があまり高くならず、ノイズ特性に悪影響を及ぼさないですむという利点が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ワンチップ・マイクロコンピュータやDSPが搭載される電子機器においては、近年、通常時の動作周波数はますます高くなる傾向にあるが、省電力モードなど異なる動作モードにおいて動作周波数を下げて使用する場合がある。それゆえ、動作周波数が高い電子機器であっても低い周波数のクロック信号の用途も依然としてある。しかしながら、上記特願2001−19595の改良発明では、高い周波数範囲で最適化してPLL回路を構成した場合、低い周波数範囲においては良好な特性を得ることが難しいという課題があった。
【0006】この発明の目的は、高い周波数範囲と低い周波数範囲の両範囲においてそれぞれ良好な特性を得ることの可能なPLL回路を提供することにある。この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添附図面から明らかになるであろう。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を説明すれば、下記のとおりである。すなわち、PLL回路の電圧制御発振器に備わる制御電圧を制御電流に変換する電圧電流変換回路に、制御電圧にほとんど依存しない補助電流を制御電流に付加する補助電流付加回路を設け、且つ、制御電圧の値に応じてこの補助電流付加回路の動作または動作停止の切り換えを行うように構成したものである。さらに、補助電流付加回路を動作させた後には、制御電圧が下がっても動作を停止させず、PLL回路の出力周波数が階段状に変化するモード遷移を表す制御信号の変化があった場合に補助電流付加回路を動作停止させるように制御する。このような手段によれば、補助電流付加回路が動作することで高い周波数に適した特性が得られ、且つ、補助電流付加回路の動作が解除されることで低い周波数に適した特性が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施例に係るPLL回路を示す構成図である。この実施例のPLL回路は、ワンチップ・マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、並びにDSPなどの半導体集積回路において、外部から供給される基準クロックφinに同期させて内部クロックφoutを発生するのに用いられるものである。
【0009】このPLL回路は、制御電圧Vcに応じて周波数を変化させて発振動作を行う電圧制御発振器31と、該発振器31の出力を分周して比較信号φcompを生成する分周器18と、該比較信号φcompと基準クロックφinとの位相を比較する位相比較器12と、これらの位相誤差を示す信号から不要な高周波分をカットして制御電圧Vcを生成する低域フィルタ14と、電圧制御発振器31の制御電流Icに補助電流としてのオフセット電流Isを付加する制御を行う制御手段としてのコントロール信号生成回路32とを備えている。
【0010】上記の電圧制御発振器31は、さらに、制御電圧Vcを制御電流Icに変換するV−I変換回路311と、該制御電流Icの値に応じた周波数で発振動作する周波数可変発振器162とから構成される。周波数可変発振器162は、例えば、複数のCMOSインバータを環状に連接したインバータ型リング発振器などが適用できる。そして、各CMOSインバータの電流源となるMOSFETを上記V−I変換回路311において制御電流Icが流されるMOSFETとカレントミラー接続し、各CMOSインバータの動作電流を可変とすることでその発振周波数が制御される。
【0011】V−I変換回路311は、抵抗R1,R2とゲート・ドレインが結合されたNチャネル形MOSFET(以下、NMOSと呼ぶ)Q31とを直列接続し基準電圧Vr1と動作電流Ibとを生成する基準生成回路312と、制御電圧Vcと基準電圧Vr1との差をとって制御電流Icに変換する差動型回路313と、この制御電流Icにオフセット電流Isを付加するオフセット電流付加回路(補助電流付加手段)314と、制御電流Icを周波数可変発振器162のグランドGND側の電流源に伝えるための電流回路315とから構成される。
【0012】上記の差動型回路313は、動作電流を供給する定電流MOS Q37と、制御電圧Vcと基準電圧Vr1とを各々のゲートに受け且つソース端子が共通に定電流MOS Q37に接続された一対のNチャネル形入力MOS Q35,Q36と、これら入力MOS Q35,Q36のドレイン端子と電源電圧(第1電源電圧)Vccとの間にそれぞれ接続された一対のPチャネル形の負荷MOS Q32,Q33とから構成される。そして、制御電圧VcによりNMOS Q35のオン抵抗が変化されて、負荷MOS Q32から入力MOS Q35に流れる電流が変化するように構成されている。また、この電流の変化に合わせてもう一方の入力MOS Q36と負荷MOS33に流れる電流が変化して、動作電流Ibが一定に保たれるようになっている。さらに、負荷MOS Q32のゲート・ドレインが結合されてそのドレイン電流が飽和電流とされることで、この負荷MOS Q32のドレイン電流がカレントミラー接続されたPMOS(カレントミラー回路)に転写されるようになっている。
【0013】オフセット電流付加回路314は、上記差動型回路313の負荷MOS Q32のドレインとグランド(第2電源電圧)GNDとの間に接続されたNチャネル形のオフセット電流MOS Q38と、負荷MOS Q32とオフセット電流MOS Q38との間に接続されたスイッチMOS Q39とから構成される。そして、スイッチMOS Q39がオンされることで、負荷MOS Q32を通るパスにオフセット電流Isが流れる。オフセット電流MOS Q38は基準生成回路312のNMOS Q31とカレントミラー接続されているので、そのミラー比でほぼ一定の電流が流れるようになっている。NMOS Q31のゲート電圧が第3基準電圧である。
【0014】図2は上記V−I変換回路311の変換特性を示すグラフ、図3は上記電圧制御発振回路31のV−F特性を示すグラフである。上記V−I変換回路311および電圧制御発振器31は、図2と図3に示されるような特性を有する。すなわち、上記V−I変換回路311は、制御電圧が一定の大きさになった領域で電圧−電流がほぼ比例に変化し、それより低い領域や高い領域において電流が飽和するという特性となる。さらに、オフセット電流付加回路314のオン・オフにより、特性曲線の形状や大きさは同じでオフセット電流Isの分だけ電流の軸方向にシフトした2つの特性曲線C,Dが得られる。オフセット電流付加回路314がオフとされる特性曲線Cにおいて制御電圧Vcがゼロに近い領域では制御電流Icはゼロだったのが、オフセット電流付加回路314がオンとされる特性曲線Dにおいては制御電圧Vcがゼロに近い領域でも制御電流Icはオフセット電流Is分の電流値となる。
【0015】電圧制御発振回路31のV−F特性は、制御電流Icと発振周波数とがほぼ比例するので、図2のV−I特性と同様のものとなる。制御電圧Vcと発振周波数とがほぼ比例する範囲が、オフセット電流付加回路314がオフのときには低い周波数範囲に、オフセット電流付加回路314がオンのときには高い周波数範囲に設定される。また、オフセット電流付加回路314がオンのときとオフのときとで制御感度(発振周波数の制御電圧Vcに対する変化率:図3中の点線A,Bの傾き)に変化はない。また、オフセット電流付加回路314の動作が切り換えられる電圧点(比較電位Vref)における発振周波数は、オフセット電流付加回路314がオフのときには低い周波数f1、オフセット電流付加回路314がオンのときには高い周波数f2となる。
【0016】図4には、上記コントロール信号生成回路32の動作の一例を説明するタイムチャートを示す。コントロール信号生成回路32は、図1に示すように、比較電位Vrefと制御電圧Vcとを比較するコンパレータ321と、コンパレータ321の結果信号と制御信号としてのリセット信号/RESとに基づきコントロール信号COM1を生成する制御回路322とから構成される。コントロール信号COM1はオフセット電流付加回路314のスイッチMOS Q39のゲートに入力される。ここで、リセット信号/RESは、例えば、図1のPLL回路が搭載された半導体集積回路において、通常モードから省電力モードなどへ遷移する場合に有効レベルにアサートされる信号(図1の場合は、ロウレベルで有効レベル)である。そして、省電力モードの期間中ずっとアサートにされ、再び通常モードに戻るときに無効レベルにネゲートにされる。省電力モードでは、通常モードより入力信号φinの周波数が階段状に低くされ、それによりPLL回路の出力クロックφoutの周波数も階段状に低くされる。
【0017】図4に示すように、コントロール信号生成回路32では、制御電圧Vcが比較電位Vrefを超えてコンパレータ321の出力がハイレベルになると、コントロール信号COM1がアサートになってオフセット電流供給回路314をオンにする。一方、制御回路322においてコントロール信号COM1を有効レベルからから無効レベルにする制御は、制御電圧Vcとリセット信号/RESの両方に基づいて行われる。すなわち、制御電圧Vcが比較電位Vref以下になっている状態でリセット信号/RESがロウレベルとなるエッジがきたときに、コントロール信号COM1が無効レベルに変化される。
【0018】この実施例に係るPLL回路は上記のように構成され、そのオフセット電流付加回路314やコントロール信号生成回路32等により、次のように動作して基準クロックφinのロックを行うようになっている。
【0019】図5〜図7は、さまざまな周波数の基準クロックに対するPLL回路の引込動作の例を示す図である。同図中、上段(a)のグラフは制御電圧Vcの経時変化、下段(b)のグラフは出力クロックφoutの径時変化を示すものである。まず、図5は基準クロックφinが低い周波数の場合の例である。この場合においては、電圧制御発振器31の発振周波数はオフセット電流付加回路314をオンさせる周波数f1まで高くならないので、電圧制御発振器31は図4の特性曲線Eの特性で動作することとなる。すなわち、PLL回路の引込動作で制御電圧Vcおよび発振周波数が除々に上昇しやがて安定し、制御電圧Vcが比較電位Vref以下でロックする。
【0020】図6は、基準クロックφinが中程度の周波数でロック後の出力クロックφoutが周波数f1とf2の間になる場合である。この場合においては、制御電圧Vcが除々に上昇し比較電位Vrefに達したときに、オフセット電流付加回路314がオン動作して、電圧制御発振器31の特性が図4の特性曲線Eから特性曲線Fに変化する。その結果、発振周波数がf1からf2に上昇してロック周波数より高くなる。したがって、その後、制御電圧Vcは下がって比較電位Vref以下となるが、リセット信号/RESがアサートでないのでオフセット電流付加回路314はオフされず電圧制御発振器31の特性は図4の特性曲線Fのままとされる。そして、このまま制御電圧Vcが安定してロックとなる。
【0021】図7は、基準クロックφinがさらに高い周波数の場合である。この場合においては、制御電圧Vcが除々に上昇し比較電位Vrefに達したときに、オフセット電流付加回路314がオン動作して、発振周波数がf1からf2に上昇する。そして、その後も制御電圧Vcは除々に上昇して、やがて安定してロックとなる。
【0022】以上のように、この実施例に係るPLL回路によれば、電圧制御発振器31の2つの特性が基準クロックφinが低い場合と高い場合とで切り換えられて作用されるので、例えば通常モードと省電力モードなどの動作モードの切り換えに伴って、出力クロックφoutの周波数も高いものと低いものとが求められる場合に、その両方に適した特性を備えることが可能である。すなわち、広い周波数帯域で良好な動作を得ることが出来る。また、高い周波数に合わせた特性も、制御電流Icにオフセット電流Isを付加することで設定されているので、電圧制御発振器31の制御感度が必要以上に高くなってしまうことがなくノイズ性能も良好なものとなる。
【0023】図8には、本発明の第2実施例に係るPLL回路の構成図を示す。この第2実施例に係るPLL回路は、そのV−I変換回路731に2系統のオフセット電流付加回路314,714を設け、これら2系統のオフセット電流付加回路314,714の動作制御が、制御電圧Vcが異なる比較電位Vref1,Vref2を超えたときに行われるように構成されたものである。したがって、この実施例のコントロール信号生成回路70には、制御電圧Vcを2系統の比較電位Vref1,Vref2とそれぞれ比較する2個のコンパレータ321,321とを備えている。さらに、制御回路701は2個のコンパレータ321,321の両出力とリセット信号/RESを受けて、これらの信号に基づき各オフセット電流付加回路314,714のオン・オフを切り換えるコントロール信号COM1,COM2を生成するように構成されている。
【0024】詳細には、コントロール信号COM1,COM2がそれぞれロウレベルからハイレベルへ遷移する制御は、コンパレータ321,321の比較信号のみに基づいて行われる一方、逆に遷移する制御はコンパレータ321,321の比較信号とリセット信号/RESに基づいて行われる。すなわち、コントロール信号COM1,COM2が初期値(ローレベル)の状態で、制御電圧Vcが比較電位Vref1(<Vref2)を超えたときにコントロール信号COM1がハイレベルに、さらに比較電位Vref2を超えたときにコントロール信号COM2がハイレベルにされる。
【0025】逆に、コントロール信号COM1,COM2がハイレベルの状態では、制御電圧Vcが比較電位Vref1,Vref2の中間(Vref1<Vc<Vref2)のときにリセット信号/RESの立下りがあったときに、コントロール信号COM1はハイレベルのままでコントロール信号COM2がローレベルにされる。また、制御電圧Vcが比較電位Vref1より低いときにリセット信号/RESの立下りがあったときに、コントロール信号COM1,COM2がローレベルにされる。
【0026】図9は、第2実施例に係る電圧制御発振器73のV−F特性を示すグラフである。この第2実施例の電圧制御発振器73は、そのV−I変換回路731に2系統のオフセット電流付加回路314,714が設けられているため、そのV−F特性は、図9に示すように3つの特性曲線O,N,Mを有したものとなる。これらの特性曲線O,N,Mは、制御電圧が一定の範囲で電圧−発振周波数がほぼ比例となり、制御電圧がそれより小さい範囲や大きい領域において発振周波数が飽和するというものであり、且つ、オフセット電流Is,Is2の分だけ発振周波数の軸方向へ互いにシフトした曲線となる。3つの特性曲線O,N,Mの制御感度(図7の点線I,J,Kの傾き)に変化はない。
【0027】図10は、この第2実施例に係るPLL回路の引込動作例を説明する図である。この第2実施例のPLL回路では、例えば、出力クロックφoutが周波数f2’からf3の間でロックされる場合には、まず、制御電圧Vcおよび発振周波数が除々に上昇し、制御電圧Vcが比較電位Vref1になったところで制御電流Icにオフセット電流Isが付加されて、発振周波数がf1からf2に急激に上昇する。その後、さらに制御電圧Vcと発振周波数とは除々に上昇して、制御電圧Vcが比較電位Vref2になったところで制御電流Icにオフセット電流Is2が付加される。そして、発振周波数がf2’からf3に急激に上昇する。その後は、発振周波数の方が高くなるので制御電圧Vcは除々に下がってくるが、リセット信号/RESに変化がない限りオフセット電流付加回路314,317はオフされないので、発振周波数も除々に下がって基準クロックφinに応じた周波数でロックされる。
【0028】この第2実施例に係るPLL回路によれば、電圧制御発振器73のV−F特性曲線として3つの周波数領域でそれぞれ最適にされた3つの特性曲線O,N,Mが得られ、これらの各特性が制御電圧Vcに応じて適宜切り換えられるので、複数の動作モードでそれぞれ周波数領域の異なる出力クロックφoutを生成するような場合に、各動作モードに適した特性で出力クロックφoutの生成が可能である。
【0029】以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、周波数可変発振器はインバータ型リング発振器162のほか奇数段の差動増幅回路をリング状に接続し各段の動作電流を可変にした構成など、種々の構成を適用することが出来る。また、V−I変換回路として差動型の回路を例示したが、制御電圧Vcをゲートに受けてオン抵抗を変化するMOSFETとカレントミラー用にゲート・ドレインを結合したMOSFETとを直列に接続した構成など適宜変更が可能である。
【0030】また、オフセット電流(補助電流)は基準電位に基づき発生される電流であれば、制御電圧にほとんど依存せず、電流値もほとんど変わらないので、どのような構成で生成するようにしても良い。また、リセット信号を動作モードを表す信号として説明したが、動作モードに関係なくPLL回路の発振周波数を変える目的でリセット信号を生成し用いても良い。
【0031】以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である複数の動作モードを備えたワンチップ・マイクロコンピュータやDSPに適用した例について説明したがこの発明はそれに限定されるものでなく、高い周波数領域や広い周波数範囲でPLL回路のロック動作が必要な半導体集積回路に広く利用することができる。
【0032】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。すなわち、本発明に従うと、制御電流に補助電流を付加することで発振周波数を高くしているので、PLL回路のロックレンジを高い周波数領域に設定しても、電圧制御発振回路の制御感度が高くなりすぎず、良好なノイズ特性が得られるという効果がある。また、制御電圧の値に応じて補助電流の付加制御の切り換えを行うので、PLL回路のロックレンジを低周波から高周波まで広い周波数範囲に設定できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るPLL回路を示す回路図である。
【図2】第1実施例に係るV−I変換回路の変換特性を示すグラフである。
【図3】第1実施例に係る電圧制御発振器の特性グラフである。
【図4】第1実施例に係るPLL回路の動作例を説明するタイムチャートである。
【図5】同、PLL回路の引込動作の第1例を説明する図である。
【図6】同、PLL回路の引込動作の第2例を説明する図である。
【図7】同、PLL回路の引込動作の第3例を説明する図である。
【図8】本発明の第2実施例に係るPLL回路を示す回路図である。
【図9】第2実施例に係る電圧制御発振器のV−F特性を示すグラフである。
【図10】第2実施例に係るPLL回路の引込動作例を説明する図である。
【符号の説明】
12 位相比較器
14 低域フィルタ
31 電圧制御発振器
32 コントロール信号生成回路
162 周波数可変発振器
311 V−I変換回路
313 差動型回路
314 オフセット電流付加回路
321 コンパレータ
322 制御回路
701 制御回路
714 オフセット電流付加回路
731 V−I変換回路
Vref,Vref1,Vref2 比較電位
/RES リセット信号
Q32,Q33 負荷MOS
Q35,Q36 入力MOS
Q37 定電流MOS
Q38 オフセット電流MOS
Q39 スイッチMOS

【特許請求の範囲】
【請求項1】 制御電圧に応じた周波数で発振動作する電圧制御発振器を有し、該電圧制御発振器の発振信号もしくは発振信号を分周した信号と基準クロックとの位相比較を行って、該位相比較の結果を上記制御電圧にフィードバックさせることで上記基準クロックと上記発振信号とを同期させるPLL回路を備えた半導体集積回路において、上記電圧制御発振器は、上記制御電圧を制御電流に変換する電圧電流変換回路と、所定の電流値を有する補助電流を上記制御電流に付加する補助電流付加手段と、上記制御電流の大きさに応じた周波数で発振動作する周波数可変発振器と、上記制御電圧の値に基づき上記補助電流付加手段の動作状態のオン・オフを切り換える制御手段とを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】 上記補助電流付加手段を複数個有し、上記制御手段は、これら複数の補助電流付加手段の動作状態を上記制御電圧に応じて切り換えるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】 上記制御手段は、上記補助電流付加手段を動作停止から動作状態に切り換える制御を上記制御電圧の値に基づいて行い、上記補助電流付加手段を動作状態から動作停止に切り換える制御を上記制御電圧の値と所定の制御信号とに基づいて行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】 上記制御信号は、上記PLL回路の発振周波数が階段状に変化されるモード遷移を表す信号であることを特徴とする請求項3記載の半導体集積回路。
【請求項5】 上記電圧電流変換回路は、ゲートに基準電圧が印加されて動作電流を流す電流MOSFETと、該電流MOSFETにソースが接続されゲートに上記制御電圧が印加される第1入力MOSFETと、該第1入力MOSFETと共通に上記電流MOSFETにソースが接続されゲートに第2基準電位が印加される第2入力MOSFETと、上記第1入力MOSFETのドレインと第1電源電圧との間に接続されゲートとドレインとが結合された第1負荷MOSFETと、上記第2入力MOSFETのドレインと上記第1電源電圧との間に接続されゲートが上記第1負荷MOSFETのゲートに結合された第2負荷MOSFETとを有し、上記第1負荷MOSFETのドレイン電流がカレントミラー回路を介して制御電流として上記周波数可変発振器に転写されるように構成され、上記補助電流付加回路は、上記第1負荷MOSFETのドレインと第2電源電圧との間に接続され且つゲートに第3基準電圧が印加された付加電流発生MOSFETと、上記第1負荷MOSFETと付加電流発生MOSFETとの間に接続されたスイッチMOSFETとから構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の半導体集積回路。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【公開番号】特開2003−229764(P2003−229764A)
【公開日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−25061(P2002−25061)
【出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233169)株式会社日立超エル・エス・アイ・システムズ (327)
【Fターム(参考)】