説明

半導体集積回路

【課題】挿入する遅延回路が不要であるときは切り離す場合を含みホールド時間確保用に挿入する遅延量を最適値に修正する機構を備えた半導体集積回路を得ること。
【解決手段】組み合わせ論理回路2の出力側に配置されるFF4でのホールド時間を修正する制御回路として、設定遅延値、製造後のテストでの測定遅延値や実使用条件で定まる遅延値などを指定する制御信号CTRLを供給するセレクタ5と、組み合わせ論理回路2の入力側に配置されるFF1から前記出力側に配置されるFF4に至る信号経路に挿入され、制御信号CTRLの指示に従って、異なる遅延値を生成し、また前記信号経路から離脱できる構成の低電力最適遅延回路3とを備えている。これによって、挿入するホールド時間確保用の遅延量を最適値に設定し、また低消費電力化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホールド時間確保用遅延回路が挿入される半導体集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI)では、組み合わせ論理回路の入力側と出力側とにフリップフロップがそれぞれ配置されるが、組み合わせ論理回路を経由した両フリップフロップ間の信号経路に、異なる遅延値を持った複数の遅延回路を含むダミーの遅延補償回路を予め埋め込んでおき、レイアウト設計後のタイミング解析において、両フリップフロップ間でのクロック遅延差(クロック・スキュー)と信号遅延量とを求め、両フリップフロップ間のホールド時間にタイミングエラーが生じた場合に、適切な遅延値を持った遅延回路をダミーの遅延補償回路の中から選択して信号経路に挿入できるようにし、出力側に設けてあるフリップフロップのホールド時間を満たすようにしている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−154793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、レイアウト設計後の回路シミュレーションでは、製造ばらつき、温度、電圧などをパラメータとするが、製品仕様を満たすように全項目最悪条件を設定している。したがって、従来では、大半のLSIがホールド時間を満たすための遅延素子を過剰に挿入した状態で製造されている。
【0005】
また、プロセスの微細化、低電圧化に伴い、配線遅延とゲート遅延との最悪条件が異なるので、同一チップ内での製造ばらつきによるゲート遅延に差が生ずる。その結果、さらに厳しい条件での回路シミュレーションを行うことになるので、益々上記の遅延素子が過剰に挿入されたLSIが製造される状況になっている。
【0006】
しかし、このような過剰の遅延素子は、LSIの動作には不要であり、無駄な電力消費を生じていることになる。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、挿入する遅延回路が不要であるときは切り離す場合を含みホールド時間確保用に挿入する遅延量を最適値に修正する機構を備えた半導体集積回路を得ることを目的とする。
【0008】
また、この発明は、ホールド時間確保用に挿入する遅延回路が不要であるときは切り離す機構を備えた半導体集積回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、この発明にかかる半導体集積回路は、組み合わせ論理回路の出力側に配置されるフリップフロップでのホールド時間を修正する制御回路として、設定遅延値、製造後のテストでの測定遅延値や実使用条件で定まる遅延値などを指定する制御信号を供給する供給手段と、前記組み合わせ論理回路の入力側に配置されるフリップフロップから前記出力側に配置されるフリップフロップに至る信号経路に挿入され、前記制御信号の指示に従って、異なる遅延値を生成し、また前記遅延値の生成に関与するトランジスタをオフ動作させるなどして前記信号経路から離脱できる構成を含む遅延値生成手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ホールド時間確保用に挿入する遅延量を、設定値に設定できる他、製造時の状況や実使用時の状況に応じて最適値に修正することができ、また、挿入する遅延回路が不要であるときは切り離すことができる。したがって、ホールド時間確保用遅延回路が挿入される半導体集積回路の低消費電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ホールド時間確保用に挿入する遅延回路が不要である場合はそれを切り離すことができるので、無駄な電力消費の発生を防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明にかかる半導体集積回路装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。図1において、組み合わせ論理回路2の入力側にはフリップフロップ(FF)1が配置され、出力側にはフリップフロップ(FF)4が配置される。FF1とFF2は、共通のクロックCLKを受けてホールド動作を行うようになっている。
【0014】
そして、この実施の形態1による低電力最適遅延回路3が、FF1から組み合わせ論理回路2を経由してFF4に至る信号経路に、図1に示す例では、組み合わせ論理回路2とFF4との間に挿入配置されている。
【0015】
この低電力最適遅延回路3は、例えば図2に示すように構成されるが、セレクタ5からのコントロール信号CTRLの値に応じて遅延値を変更することができ、かつ遅延値を小さくするときは信号経路から離脱して低消費電力を実現する回路である。
【0016】
セレクタ5の切替入力端には、メモリ/レジスタ6の出力と外部端子7とが接続され、外部から与えられるセレクト信号によって、いずれか一方を選択してコントロール信号CTRLとするようになっている。メモリ/レジスタ6は、EPROMなどのメモリとレジスタ回路のいずれか一方で構成される。
【0017】
図2は、図1に示す低電力最適遅延回路3の構成例を示す回路図である。図1に示す低電力最適遅延回路3は、例えば図2に示すように、NMOSトランジスタ8と容量素子9の直列回路を、信号の入力端INと出力端OUTとを繋ぐ信号ラインと接地(GND)との間に配置した簡単な構成によっても実現することができる。
【0018】
NMOSトランジスタ8のソース電極は信号ラインに接続され、ドレイン電極は容量素子9を介して接地(GND)に接続され、ゲート電極に上記したコントロール信号CTRLが印加される構成である。
【0019】
この構成によれば、コントロール信号CTRLによってNMOSトランジスタ8のゲート電圧を制御してドレイン容量を変える、つまり遅延量を変更することができる。また、NMOSトランジスタ8をオフ動作させることで、当該低電力最適遅延回路3を信号ラインから切り離し、低消費電力化を図ることができる。
【0020】
次に、図3を参照して、低電力最適遅延回路3の制御方法について説明する。図3は、不要な電力消費を抑える動作を説明するフローチャートである。低電力最適遅延回路3が持つ遅延値は、EDA(Electronic Design Automation)シミュレーションによって、FF4でのホールド時間を満たすように設定され、対応するコントロール信号CTRLの値が設定されている。
【0021】
このような状態において、図3において、製造後のテスト時に、プロセス仕上がりの測定を行ってデバイスの仕上がりテストを行い、実際のホールド時間を満たす遅延値を測定する(ステップST1)。すなわち、プロセス仕上がりの測定では、ウェハ毎、チップ毎のバッファチェーン、リングオシレータ等の回路の遅延値を測定する。そして、この測定値がEDAシミュレーション値(設定値)と同じか否かを調べる(ステップST2)。
【0022】
測定値が設定値と同じであれば(ステップST2:Yes)、低電力最適遅延回路3には、メモリ/レジスタ6に設定されている、あるいは、外部端子7から入力される設定された遅延値を持つようするコントロール信号CTRLが入力される。
【0023】
一方、測定値が設定値と同じでない場合(ステップST2:No)は、種々の状況が考えられるが、例えば、実際に測定したところ、設定値よりも小さくてよいことが判明する場合がある。また、設計時に想定していた使用条件(電源電圧、温度)が例えば低電圧、高温で使用する条件に変更される場合が生ずる。低電圧、高温で使用する場合には、デバイスの遅延時間は増大するので、ホールド時間を満たすために挿入した遅延回路の一部または全部が不要になる場合がある。
【0024】
そこで、そのような状況に備えるために、不要なホールド時間確保挿入遅延量を測定結果からの換算によって算出し(ステップST3)、低電力最適遅延回路3にその算出した遅延量を持たせるようにするコントロール信号CTRLの値を、メモリ/レジスタ6に設定にしておいて読み出せるようにしておく、あるいは、外部端子7から入力できるようにしておく(ステップST4)。
【0025】
これによって、実際に必要な遅延量が設定値よりも小さくてよい場合には、低電力最適遅延回路3に、図2に示す例で言えば、NMOSトランジスタ8のゲート電圧を所定値に下げるコントロール信号CTRLを与えることで、付加容量を減らし、つまり遅延量を設定値よりも小さい値に変更し、不要な電力消費を抑えることができる。
【0026】
また、デバイスを低電圧、高温で使用することになった場合には、低電力最適遅延回路3に、図2に示す例で言えば、NMOSトランジスタ8をオフ動作させるコントロール信号CTRLを与えることで、低電力最適遅延回路3を切り離し、不要な電力消費を抑えることができる。
【0027】
このように、実施の形態1によれば、組み合わせ論理回路の入力側と出力側とにそれぞれ設けられるフリップフロップ間の信号経路に挿入するホールド時間確保用の遅延回路を異なる遅延時間を生成でき、また信号経路から離脱できるように構成し、それを製造後のテストで得られた測定値や実際の使用条件に応じて制御できるようにしたので、最適な遅延量を挿入することができ、不要な電力消費を抑えることができる。
【0028】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。なお、図4では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0029】
図4に示すように、この実施の形態2による半導体集積回路では、図1(実施の形態1)に示した構成において、低電力最適遅延回路3に代えて分離可能低電力最適遅延回路10が設けられている。
【0030】
図5は、分離可能低電力最適遅延回路10の構成例を示す回路図である。図5に示すように、分離可能低電力最適遅延回路10は、コントロール信号CTRLによって制御される2つのセレクタ11,12と、セレクタ11,12間に配置されるホールド時間確保用の遅延回路13とで構成されている。
【0031】
セレクタ11では、データ入力端子Aが図4で示す組み合わせ論理回路2からの信号の入力端INであり、データ入力端子Bが接地(GND)に接続され、セレクタ端子Sにコントロール信号CTRLが入力され、出力端子Oが遅延回路13の入力端に接続されている。なお、データ入力端子Bは電源に接続するようにしてもよい。
【0032】
また、セレクタ12では、データ入力端子Bが図4で示す組み合わせ論理回路2からの信号の入力端INであり、データ入力端子Aに遅延回路13の出力端が接続され、セレクタ端子Sにコントロール信号CTRLが入力され、出力端子が図4で示すFF4への信号出力端OUTになっている。
【0033】
コントロール信号CTRLは2値のレベル信号である。コントロール信号CTRLが、例えばHレベルであるときは、セレクタ11,12は共にデータ入力端子Aを選択し、Lレベルであるときは、セレクタ11,12は共にデータ入力端子Bを選択するようになっている。
【0034】
遅延回路13は、FF4でのホールド時間を満たす最悪のケースでのEDAシミュレーションによって決定された遅延量を実現するのに必要な所定数のバッファ(遅延素子)の直列回路で構成される。図4では2つバッファの直列回路としている。
【0035】
以上の構成において、FF4でのホールド時間を満たす遅延補償が必要であると判断される場合は、コントロール信号CTRLはHレベルになる。これによって、セレクタ11,12では、データ入力端子Aを選択するので、セレクタ11のデータ入力端子Aに入力する組み合わせ論理回路2からの信号は、遅延回路13を経由してセレクタ12のデータ入力端子Aに到達し、FF4のデータ入力端に入る。遅延回路13での遅延操作によってFF4でのホールド時間が満たされる。
【0036】
一方、デバイスの製造仕上がりや、使用条件(電源電圧、温度)の変更など、実デバイスの状況や使用条件によって、遅延回路13での遅延操作が不要と判断される場合は、コントロール信号CTRLはLレベルになる。これによって、セレクタ11,12では、データ入力端子Bを選択するので、セレクタ11ではデータ入力端子Bから遅延回路13の入力端に接地電位または電源電位が供給される。そして、セレクタ12では、データ入力端子Aに入力する組み合わせ論理回路2からの信号を選択してFF4のデータ入力端に伝達する。
【0037】
すなわち、遅延回路13での遅延操作が不要と判断される場合は、組み合わせ論理回路2の出力は、遅延回路13を経由せず直接FF4のデータ入力端に入るので、FF4でのホールド時間が満たされる。この場合、遅延回路13では、入力端が接地電位または電源電位に固定されるので、不要な電力消費は生じない。
【0038】
このように、実施の形態2によれば、設定された遅延値を生成する遅延回路と、その遅延回路を組み合わせ論理回路の入力側と出力側とにそれぞれ設けられるフリップフロップ間の信号経路に挿入し、またそれを挿入しないでバイパスするときは遅延回路の入力側を固定電位に設定する挿入制御回路を設け、その挿入制御回路を製造後のテストで得られた測定値や実際の使用条件に応じて制御できるようにしたので、EDAシミュレーションによって設定された遅延量を挿入することができ、また製造時の状況や実使用の状況によっては不要な電力消費を抑えることができる。
【0039】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。なお、図6では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、この実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0040】
図6に示すように、この実施の形態3による半導体集積回路では、図1(実施の形態1)に示した構成において、低電力最適遅延回路3に代えて分離可能低電力最適遅延回路15が設けられている。
【0041】
図7は、図6に示す分離可能低電力最適遅延回路15の構成例を示す回路図である。図7に示すように、分離可能低電力最適遅延回路15は、図5に示す分離可能低電力最適遅延回路10において、コントロール信号CTRLによって制御される2つのセレクタ11,12間に、遅延回路13に代えて、所定の遅延値を生成でき、かつ動作停止が行える例えば2つのバッファ(NMOSトランジスタ16a,PMOSトランジスタ17a,NMOSトランジスタ18a)(NMOSトランジスタ16b,PMOSトランジスタ17b,NMOSトランジスタ18b)が設けられている。
【0042】
一方のバッファ(NMOSトランジスタ16a,PMOSトランジスタ17a,NMOSトランジスタ18a)では、電源と接地(GND)との間に、NMOSトランジスタ16aとPMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18aとがこの順序で直列に配置され、電源側のNMOSトランジスタ16aのゲート電極にはコントロール信号CTRLが印加され、PMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18aの各ゲート電極にはセレクタ11の出力信号が印加される。そして、PMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18aの各ドレイン電極は出力端子としてPMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18aの各ゲート電極に接続されている。
【0043】
また、他方のバッファ(NMOSトランジスタ16b,PMOSトランジスタ17b,NMOSトランジスタ18b)では、電源と接地(GND)との間に、NMOSトランジスタ16bとPMOSトランジスタ17bとNMOSトランジスタ18bとがこの順序で直列に配置され、電源側のNMOSトランジスタ16bのゲート電極にはコントロール信号CTRLが印加され、PMOSトランジスタ17bとNMOSトランジスタ18bの各ドレイン電極は出力端子としてセレクタ12のデータ入力端子Aに接続されている。
【0044】
要するに、図5に示す分離可能低電力最適遅延回路10における遅延回路13を構成する2つのバッファは、電源と接地(GND)との間に直列に配置したPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとで構成されるが、この実施の形態3では、PMOSトランジスタのソース電極と電源との間にNMOSトランジスタを挿入し、それをコントロール信号CTRLでオン・オフ制御するようにしたのである。
【0045】
すなわち、以上の構成において、FF4でのホールド時間を満たす遅延補償が必要であると判断される場合は、実施の形態2と同様にコントロール信号CTRLはHレベルになる。これによって、NMOSトランジスタ16a,16bが共にオン動作を行うので、バッファ(PMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18a)(PMOSトランジスタ17bとNMOSトランジスタ18b)では電源が供給され、所定の遅延量を与えるバッファ動作が行われる。この場合の遅延量は最悪ケースを想定した所定値である。
【0046】
一方、デバイスの製造仕上がりや、使用条件(電源電圧、温度)の変更など、実デバイスの状況や使用条件によって、バッファ(PMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18a)(PMOSトランジスタ17bとNMOSトランジスタ18b)での遅延操作が不要と判断される場合は、実施の形態2と同様にコントロール信号CTRLはLレベルになる。これによって、NMOSトランジスタ16a,16bが共にオフ動作を行うので、バッファ(PMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18a)(PMOSトランジスタ17bとNMOSトランジスタ18b)は電源の供給が絶たれ停止状態になる。このときには、バッファ(PMOSトランジスタ17aとNMOSトランジスタ18a)(PMOSトランジスタ17bとNMOSトランジスタ18b)でのリーク電流はほぼゼロとなる。
【0047】
つまり、実施の形態3によれば、ホールド時間を満たす遅延操作が必要である場合は、実施の形態2と同様に、EDAシミュレーションによって設定された遅延量を挿入することができ、ホールド時間を満たす遅延操作が不要の場合には、実施の形態2の効果に加えて、動作時電力とともに待機時電力も削減することができる。
【0048】
なお、実施の形態3では、電源と接地(GND)との間に直列に配置したPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとで構成されるバッファの電源側にNMOSトランジスタを挿入したが、コントロール信号CTRLは極性を反転することができるので、PMOSトランジスタを挿入してもよい。また、接地(GND)側にPMOSトランジスタまたはNMOSトランジスタを挿入することでもよい。
【0049】
実施の形態4.
図8は、この発明の実施の形態4による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。この実施の形態4では、実施の形態2または3をスキャン経路でのホールド時間確保に適用した場合の構成例が示されている。
【0050】
すなわち、図8において、スキャン経路の入力側に配置されるスキャンFF20と、スキャン経路の入力側に配置されるスキャンFF21は、入力端子として、それぞれ、データ信号Dの入力端子と、スキャンデータ信号SIの入力端子と、スキャンモード信号SMの入力端子とを備えている。
【0051】
スキャンモード信号がHレベルであるときは、スキャンモードの指示を示す。この場合には、スキャンFF20,21は、スキャンデータ信号SIを選択する。スキャンモード信号がLレベルであるときは、通常動作モードの指示を示す。この場合には、スキャンFF20,21は、データ信号Dを選択するようになっている。
【0052】
スキャンFF20,21は、同じクロック信号CLKで動作する。スキャンFF20では、外部から、データ信号Dとスキャンデータ信号SIとスキャンモード信号SMとが入力され、出力信号Q1は、組み合わせ論理回路O1と分離可能低電力最適遅延回路22とに入力される。組み合わせ論理回路O1の出力信号は外部に送出される。分離可能低電力最適遅延回路22は、実施の形態2で示した分離可能低電力最適遅延回路10と実施の形態2で示した分離可能低電力最適遅延回路15のいずれか一方である。
【0053】
スキャンFF21では、外部の組み合わせ論理回路I2の出力信号がデータ信号Dとして入力され、分離可能低電力最適遅延回路22の出力信号がスキャンデータ信号SIとして入力され、コントロール信号CTRLがスキャンモード信号SMとして入力される。出力信号Q2は、外部に送出される。なお、外部の組み合わせ論理回路I2の入力信号は、スキャンFF20の出力信号Q1であると考えてもよい。
【0054】
以上の構成において、コントロール信号CTRLがHレベルであるときは、スキャンFF21では、Hレベルのスキャンモード信号が入力したことになるので、スキャンFF21では、分離可能低電力最適遅延回路22の出力信号がスキャンデータ信号SIとして入力される。
【0055】
この場合、分離可能低電力最適遅延回路22では、実施の形態2,3にて説明したようにコントロール信号CTRLがHレベルであるときは、所定の遅延操作が行われる。したがって、スキャンモード時である場合には、スキャンFF21でのホールド時間を確保することができる。
【0056】
一方、コントロール信号CTRLがLレベルであるときは、スキャンFF21では、Lレベルのスキャンモード信号が入力したことになるので、スキャンFF21では、外部の組み合わせ論理回路I2の出力信号がデータ信号Dとして入力される。
【0057】
この場合、分離可能低電力最適遅延回路22では、実施の形態2,3にて説明したようにコントロール信号CTRLがLレベルであるときは、スキャン経路から切り離す操作が行われる。したがって、通常動作モード時である場合には、不要な電力消費を削減することができる。
【0058】
このように、実施の形態4によれば、実施の形態2または3に示した分離可能低電力最適遅延回路をスキャン経路内に配置し、スキャン経路の出力側に配置されるスキャンFFへのスキャンデータ信号として分離可能低電力最適遅延回路の出力信号を用い、スキャンモード信号として実施の形態2または3に示したコントロール信号を用いるだけで、スキャンモード時での出力側スキャンFFのホールド時間確保と通常動作時の低消費電力化とを実現することができ、設計の容易化を図ることができる。
【0059】
なお、実施の形態4では、マルチプレクススキャン設計方式への適用例を示したが、その他のスキャン設計方式にも同様に適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、この発明にかかる半導体集積回路は、ホールド時間確保用に挿入する遅延回路が不要である場合はそれを切り離して無駄な電力消費が生ずるのを防止するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態1による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す低電力最適遅延回路の構成例を示す回路図である。
【図3】不要な電力消費を抑える動作を説明するフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す分離可能低電力最適遅延回路の構成例を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態3による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す分離可能低電力最適遅延回路の構成例を示す回路図である。
【図8】この発明の実施の形態4による半導体集積回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
1,4 フリップフロップ(FF)
2 組み合わせ論理回路
3 低電力最適遅延回路
5 セレクタ
6 メモリ/レジスタ
7 外部端子
8 NMOSトランジスタ
9 容量素子
10,15,22 分離可能低電力最適遅延回路
11,12 セレクタ
13 遅延回路
16a,16b NMOSトランジスタ
17a,17b PMOSトランジスタ
18a,18b NMOSトランジスタ
20,21 スキャンフリップフロップ(スキャンFF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わせ論理回路の出力側に配置されるフリップフロップでのホールド時間を修正する制御回路として、
設定遅延値、製造後のテストでの測定遅延値や実使用条件で定まる遅延値などを指定する制御信号を供給する供給手段と、
前記組み合わせ論理回路の入力側に配置されるフリップフロップから前記出力側に配置されるフリップフロップに至る信号経路に挿入され、前記制御信号の指示に従って、異なる遅延値を生成し、また前記遅延値の生成に関与するトランジスタをオフ動作させるなどして前記信号経路から離脱できる構成を含む遅延値生成手段と、
を備えたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
組み合わせ論理回路の出力側に配置されるフリップフロップでのホールド時間を修正する制御回路として、
設定遅延値を一方の信号レベルで指示し、製造後のテストでの測定遅延値や実使用条件で定まる遅延値を他方の信号レベルで指示する制御信号を供給する供給手段と、
所定の遅延値を持つ遅延手段と、
前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときは前記遅延手段を前記組み合わせ論理回路の入力側に配置されるフリップフロップから前記出力側に配置されるフリップフロップに至る信号経路に挿入し、前記他方の信号レベルであるときは前記遅延手段を挿入せずにバイパスするとともに前記遅延手段の入力値を固定電位に設定する挿入制御手段と、
を備えたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
組み合わせ論理回路の出力側に配置されるフリップフロップでのホールド時間を修正する制御回路として、
設定遅延値を一方の信号レベルで指示し、製造後のテストでの測定遅延値や実使用条件で定まる遅延値を他方の信号レベルで指示する制御信号を供給する供給手段と、
前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときは所定の遅延値を生成する動作を行い、前記他方の信号レベルであるときは前記遅延値を生成する回路に電源を供給するトランジスタをオフ動作させるなどして停止状態への遷移動作を行うことができる構成を含む遅延値生成手段と、
前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときは前記遅延値生成手段を前記組み合わせ論理回路の入力側に配置されるフリップフロップから前記出力側に配置されるフリップフロップに至る信号経路に挿入し、前記他方の信号レベルであるときは前記遅延値生成手段を挿入せずにバイパスする動作を行う挿入制御手段と、
を備えたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
スキャンテスト経路の出力側に配置されるフリップフロップでのホールド時間を修正する制御回路として、
設定遅延値を一方の信号レベルで指示し、製造後のテストでの測定遅延値や実使用条件で定まる遅延値を他方の信号レベルで指示する制御信号を供給する供給手段と、
所定の遅延値を持つ遅延手段と、
前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときは前記遅延手段を前記スキャンテスト経路の入力側に配置されるフリップフロップから前記出力側に配置されるフリップフロップに至る信号経路に挿入し、前記他方の信号レベルであるときは前記遅延手段を挿入せずにバイパスするとともに、前記遅延手段の入力値を固定電位に設定する挿入制御手段とを備え、
前記出力側に配置されるフリップフロップは、前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときはスキャンテストの指示であると判断して前記遅延手段の出力を取り込み、前記他方の信号レベルであるときは通常動作の指示であると判断して前記スキャンテスト経路以外からのデータ信号を取り込むことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項5】
スキャンテスト経路の出力側に配置されるフリップフロップでのホールド時間を修正する制御回路として、
設定遅延値を一方の信号レベルで指示し、製造後のテストでの測定遅延値や実使用条件で定まる遅延値を他方の信号レベルで指示する制御信号を供給する供給手段と、
前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときは所定の遅延値を生成する動作を行い、前記他方の信号レベルであるときは停止状態への遷移動作を行うことができる構成の遅延値生成手段と、
前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときは前記遅延値生成手段を前記スキャンテスト経路の入力側に配置されるフリップフロップから前記出力側に配置されるフリップフロップに至る信号経路に挿入し、前記他方の信号レベルであるときは前記遅延値生成手段を挿入せずにバイパスする動作を行う挿入制御手段とを備え、
前記出力側に配置されるフリップフロップは、前記制御信号が、前記一方の信号レベルであるときはスキャンテストの指示であると判断して前記遅延値生成手段の出力を取り込み、前記他方の信号レベルであるときは通常動作の指示であると判断して前記スキャンテスト経路以外からのデータ信号を取り込むことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項6】
前記供給手段は、前記制御信号を記憶する記憶手段、または、前記制御信号を入力するための外部端子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−332897(P2006−332897A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151386(P2005−151386)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】