説明

取付金具とダストカバーとの組付体及びその製造方法

【課題】上金具と下金具とを接合して成る取付金具に対してダストカバーをブロー成形し且つ取付金具に一体に組み付けるに際して、ダストカバーの構成材料が取付金具の接合部の間隙に侵入する問題を解決することのできる取付金具とダストカバーとの組付体を提供する。
【解決手段】クッションゴムの下部を弾性的に嵌め込んで保持するカップ状の上金具36と、バウンドストッパ47の上部を嵌込状態に保持する逆カップ状の下金具38とを接合して成るピストンロッドの取付固定のための取付金具16と、ブロー成形品としてのダストカバー86との組付体87において、ダストカバー86の嵌合組付部88のうち、少なくとも下底部40と上底部44との接合部の外周側に位置する部分を他部に対して部分的に厚肉をなす厚肉部96としておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドを車両のボデーに弾性連結する弾性連結装置の取付金具とダストカバーとの組付体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においてはサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドと車両のボデーとを、クッションゴムを介して取付金具により弾性的に連結し、ピストンロッドとボデーとの間でそのクッションゴムの弾性作用により振動吸収することが行われている。
下記特許文献1には、そのピストンロッドとボデーとをクッションゴムを介して弾性的に連結する弾性連結装置の一例が開示されている。
【0003】
図11はその具体例を示している。
同図において200はショックアブソーバで、202はシリンダ、204はそのシリンダ202から突き出したピストンロッドである。
ピストンロッド204は、取付金具206にて車両のボデー208に対しアッパーサポート210を介して弾性的に取付固定されている。
詳しくは、取付金具206における取付板部212と板状の締付金具214とにより、アッパーサポート210の下クッションゴム216,上クッションゴム218を挟み込み、それらをボデー208に対し弾性圧接させる状態にピストンロッド204がボデー208に弾性連結されている。
ピストンロッド204は、径方向外向きに突出した環状の鍔部220及び先端部の雄ねじ部222を有していて、そこに締付ナット224が螺合され、それら鍔部220と締付ナット224とで取付板部212と締付金具214とを上下方向に挟み込んでいる。
【0004】
取付金具206は、中心部にピストンロッド204の挿通孔226を有する取付板部212と、その外周部から立ち上がる筒状の周壁部228とを有しており、そこに下クッションゴム216の下部が嵌め込まれ、保持されている。
取付金具206はまた、取付板部212とその外周部から立ち下がる筒状の周壁部232とを有しており、そこに筒状をなすバウンドストッパ236の上部が嵌め込まれ、保持されている。
【0005】
バウンドストッパ236は、バウンド時にシリンダ202に当接してピストンロッド204の過度の収縮運動を弾性的に規制するもので、内側にピストンロッド204の挿通空間238を有している。
【0006】
244はピストンロッド204を外側から覆うダストカバー(ここでは比較的硬質の樹脂製)で、上端部に嵌合組付部246を有しており、この嵌合組付部246が取付金具206の外周面に一体接合状態に嵌合組付けされている。
図中248は、それら取付金具206とダストカバー244との組付体を表している。
この図11に示す組付体248にあっては、取付金具206が1枚の金属板を曲げ成形して構成してあるが、かかる取付金具を下底部及びその外周端部から立ち上がる筒状の周壁部を有する上金具と、上底部及びその外周端部から立ち下がる筒状の周壁部を有する下金具とを、それら下底部と上底部とで互いに溶接接合して構成することも行われている。
【0007】
図12はその具体例を示している。
図において230はカップ状をなす上金具で、250はその下底部、252は下底部250の外周端部から立ち上がる筒状の周壁部である。
234は逆カップ状をなす下金具で、254は上底部、256はその外周端部から立ち下がる筒状の周壁部である。
これら上金具230と下金具234とは、下底部250と上底部254とがスポット溶接により互いに溶接接合されて取付金具206を構成している。
【0008】
この例において、ダストカバー244は樹脂のブロー成形品から成っており(この点は図11に示すものも同様)、その成形及び取付金具206との組付けは次のようにしてなされる。
詳しくは、押出装置から押し出したダストカバー244の筒状の樹脂のパリソンの端部を、軸直角方向に開閉するブロー成形型を型開きした状態において、そこにセットした取付金具206に外挿し、その後ブロー成形型を型締めして、その型締め時にブロー成形型の端部成形部にて取付金具206に外挿したパリソンの端部を軸直角方向内方に押圧して内周及び外周ともに全体的に縮径変形させ、もって取付金具206における上金具230及び下金具234の各周壁部252,256の外周面に沿った成形形状を有する嵌合組付部246を、全周に亘り取付金具206の周壁部252,256の外周面に密着させる状態に取付金具206に一体接合状態に成形する。
更にパリソンの内部に圧縮気体を吹き込んで、パリソンの上記端部を除く部分をブロー成形型の内周成形面に押圧してブロー成形することにより、ダストカバー244を製造し且つ同時にこれを取付金具206に組付状態とする。
【0009】
尚このようにカップ状をなす上金具と逆カップ状をなす下金具とを接合して取付金具を構成し、またダストカバーをブロー成形にて成形すると同時に取付金具に一体に組み付けるようになした点は下記特許文献2に開示がなされている。
【0010】
ここでブロー成形型の端部成形部にて成形されるダストカバー244の嵌合組付部246は、従来、図12に示しているように上金具230の下底部250と下金具234の上底部254との接合部の外周側に位置する部分を含む全体が一様な肉厚で構成されていた。
【0011】
ところでこのブロー成形品から成るダストカバー244と取付金具206との組付体248の場合、押出装置から押し出したパリソンの端部を、ブロー成形型の端部成形部にて軸直角方向内方に押圧し、内周及び外周ともに全体的に縮径変形させたときに同端部が体積変化を生じて、その縮径により余剰の肉(材料)が生じ、そして発生した余剰の材料が上金具230と下金具234との接合部の間、詳しくは下底部250と上底部254との接合部の微小な間隙に侵入してしまう問題のあることが判明した。
而してそのように発生した余剰の材料が下底部250と上底部254との間の微小な間隙に侵入すると、場合によってその侵入した材料が中心部の挿通孔226に達してしまう恐れがある。
【0012】
特に下底部250と上底部254とから成る取付板部212の挿通孔226周りの外周側の位置に水抜孔が設けてあると、その水抜孔が、間隙に侵入した余剰の材料にて塞がれてしまう恐れが生ずる。
この水抜孔は、カップ状をなす上金具230と、そこに嵌め込まれ、保持されている下クッションゴム216(図11参照)との間の間隙を通じて上金具230内部に水や泥等が侵入してそこに溜まってしまうと、取付金具206やピストンロッド204(図11参照)に錆が発生する問題を生ずることから、これを防止すべく上金具230内に侵入した水や泥等を排出するために設けられるもので、このような水抜孔を設けたものについては本出願人等が先の特許願(特願2005−68539:未公開)にて提案している。
【0013】
【特許文献1】特開2004−100878号公報
【特許文献2】特開2002−130359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上のような事情を背景とし、上金具と下金具とを接合して成る取付金具に対して、ダストカバーをブロー成形時に一体に組み付けるに際して、ダストカバーを構成する材料が上金具と下金具との接合部の間隙に侵入してしまう問題を良好に解決することのできる、取付金具とダストカバーとの組付体及びその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
而して請求項1の組付体は、(イ)車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドと車両のボデーとの間に介在して該ピストンロッドとボデーとの間で振動吸収するクッションゴムと、(ロ)バウンド時の該ピストンロッドの過度の収縮運動を弾性的に規制するバウンドストッパと、(ハ)下底部及び該下底部の外周端部より立ち上がった筒状の周壁部を有し、前記クッションゴムの下部を弾性的に嵌め込んで保持するカップ状の上金具と、上底部及び該上底部の外周端部より立ち下がった筒状の周壁部を有し、前記バウンドストッパの上部を嵌込状態に保持する逆カップ状の下金具とを、前記下底部と上底部とで互いに接合して成り、それら下底部と上底部とで、中心部に前記ピストンロッドの挿通孔を有する取付板部を構成する、前記ピストンロッドを前記クッションゴムを介して前記ボデーに取付固定するための取付金具と、(ニ)前記ピストンロッドを外周側から覆うブロー成形品としての筒状のダストカバーと、を有するショックアブソーバの弾性連結装置における前記取付金具とダストカバーとの組付体であって、前記ダストカバーの上端部は、前記取付金具における前記上金具及び下金具の各周壁部の外周面に沿った成形形状を有し、該外周面に対して全周に亘って一体に接合される嵌合組付部とされており、且つ該ダストカバーは該嵌合組付部のうち、少なくとも前記下底部と上底部との接合部の外周側に位置する部分が、他部に対して部分的に厚肉をなす厚肉部として構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2のものは、請求項1において、前記取付金具は、前記取付板部の前記挿通孔の外周側の位置に、該取付板部を上下に貫通する水抜孔を有するものであることを特徴とする。
【0017】
次に請求項3の組付体の製造方法は、請求項1,2の何れかの取付金具とダストカバーの組付体の製造方法であって、軸直角方向に開閉するブロー成形型を型開きした状態で該ブロー成形型に前記取付金具をセットするとともに、押出装置から押し出した前記ダストカバーの筒状のパリソンの端部を該取付金具に対して軸方向に外挿した状態となし、しかる後前記ブロー成形型を型締めして該型締め時に該ブロー成形型の端部成形部により、前記取付金具に外挿された前記パリソンの端部を軸直角方向内方に押圧して内周及び外周ともに全体的に縮径変形させて、全周に亘り前記取付金具の前記周壁部の外周面に密着させる状態に前記嵌合組付部を該周壁部の外周面に一体接合状態に成形し、更に前記パリソンの内部に圧縮気体を吹き込んで前記パリソンの端部を除く部分を前記ブロー成形型の内周成形面に押圧してブロー成形することにより前記ダストカバーを成形して前記組付体を製造するに際し、前記端部成形部における内周成形面の形状を、少なくとも前記接合部の外周側の位置において前記周壁部の外周面との間に部分的に大きな軸直角方向の拡大隙間を形成する形状となし、該端部成形部にて前記パリソンの端部を押圧して全体的に縮径変形させる際に発生した余剰の材料を該拡大隙間に流入させ吸収することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0018】
上記のように請求項1のものは、ダストカバーにおける嵌合組付部のうち、少なくとも取付金具における上金具の下底部と下金具の上底部との接合部の外周側に位置する部分を、他部に対して部分的に厚肉をなす厚肉部として構成したもので、本発明によれば、押出装置から均等な肉厚で筒状に押し出したパリソンの端部をブロー成形型にて押圧し、嵌合組付部を成形及び取付金具に接合するに際して、発生した余剰の材料を部分的な厚肉部で吸収し、かかる余剰の材料が接合部の微小な間隙に侵入してしまう問題を解決することができる。
【0019】
本発明は、特に取付金具が上底部及び下底部から成る取付板部を上下に貫通する水抜孔を有するものである場合に適用して効果が大である(請求項2)。
即ちこのような水抜孔を有する取付金具とダストカバーとの組付体に対して本発明を適用することにより、接合部の微小な間隙にダストカバーを構成する材料が侵入して水抜孔を塞いでしまう問題を解決することができる。
【0020】
請求項3は上記組付体の製造方法に関するもので、この製造方法ではブロー成形型における端部成形部の内周成形面の形状を、少なくとも接合部の外周側の位置において取付金具の周壁部の外周面との間に部分的に大きな軸直角方向の拡大隙間を形成する形状となし、端部成形部にてパリソンの端部を押圧して全体的に縮径変形させる際に発生した余剰の材料をその拡大隙間に流入させて吸収し、同時に上記の部分的な厚肉部を成形する。
即ちこの請求項3の製造方法では、ブロー成形型の端部成形部の内周成形面に軸直角方向外方への逃がしを設け、これにより上記部分的な厚肉部を成形してそこで余剰の材料を吸収し、かかる余剰の材料が接合部の間隙に侵入するのを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において10はショックアブソーバで、12はシリンダ、14はシリンダ12から突き出したピストンロッドである。
ピストンロッド14は、取付金具16にて車両のボデー18に対しアッパーサポート20を介して弾性的に取付固定されている。
詳しくは、取付金具16における取付板部22と板状の締付金具24とによりアッパーサポート20の下クッションゴム26,上クッションゴム28を挟み込み、それらをボデー18に対し弾性圧接させる状態にピストンロッド14がボデー18に弾性連結されている。
ピストンロッド14は、径方向外向きに突出した環状の鍔部30及び先端部の雄ねじ部32を有していて、そこに締付ナット34が螺合され、それら鍔部30と締付ナット34とで取付板部22と締付金具24とを上下方向に挟み込んでいる。
【0022】
取付金具16は、図4にも示しているように上向きにカップ状をなす上金具36と、下向きに逆カップ状をなす下金具38とを互いに溶接接合して構成してある。
上金具36は、円形の下底部40とその外周端部から立ち上がる円筒形状の周壁部42とを有しており、そこにアッパーサポート20における下クッションゴム26の下部が嵌め込まれ、保持されている。
一方下金具38は、円形の上底部44とその外周端部から立ち下がる円筒形状の周壁部46とを有しており、そこにバウンドストッパ47の上部が嵌め込まれ、保持されている。
【0023】
この取付金具16は、上金具36の下底部40と下金具38の上底部44とが周方向の複数箇所でスポット溶接されて接合され、それら下底部40と上底部44とによって上記の取付板部22が構成されている。
この取付板部22の中心部には挿通孔54が形成されており、そこにピストンロッド14が挿通されている。
【0024】
また図4(A)に示しているように周壁部42,46に近い外周側の位置において、取付板部22にはこれを上下方向に貫通する水抜孔56が周方向に複数個、ここでは120°ごとに3個設けられている。
これら水抜孔56は、上金具36内部に侵入した水や泥等を下方に排出すべく設けられている。
ここで各水抜孔56はピストンロッド14の軸心、即ち挿通孔54の中心から等距離の位置、即ち同一円周上に設けられている。
【0025】
取付金具16は、図4(B)に示しているように下金具38における立下り形状の周壁部46が、上下の中間部でく字状に屈曲した断面形状をなしており、またその下端部には径方向外方に突出した環状の掛止部48が設けられている。
一方上金具36における立上り形状の周壁部42は、下金具38における周壁部46の上端よりも全体的に小径をなしていて、周壁部46の上端との間に段差部50を形成している。
この上金具36における周壁部42は、同径で上向きに直状に立ち上がるストレート形状をなしている。
そしてその上端部に、径方向外方に環状に突出したフランジ部52が設けられている。
【0026】
上記バウンドストッパ47は、バウンド時にショックアブソーバ10のシリンダ12に当接してピストンロッド14の過度の収縮運動を弾性的に規制するもので、図5にも示しているように概略円筒形状をなしており、その下端面にはシリンダ12の上面に弾性的に当接する突起58が、周方向に所定間隔で複数箇所に一体成形されている。
また外周面には、周方向に環状に延びる凹溝60が軸方向に所定間隔で複数形成されており、更に中心部にはピストンロッド14を挿通させる挿通空間62が形成されている。
また上部には円形の大径の嵌込部64が設けられており、バウンドストッパ47は、この嵌込部64において取付金具16の下金具38内部に下側から上向きに嵌め込まれ、弾性嵌合状態でそこに保持されている。
【0027】
このバウンドストッパ47の上面には、図3,図5に示しているように取付金具16の上記水抜孔56に対応した位置、即ち水抜孔56の直下の位置に円環状をなす周方向溝66が設けられており、更にこの周方向溝66を横切って径方向に延びる径方向溝68が設けられている。
この径方向溝68は、バウンドストッパ47の上面を内周端から外周端まで延びている。
バウンドストッパ47にはまた、その外周面に、径方向溝68の外周端から下向きに延びる縦溝70が、下金具38における周壁部46の内側に形成されている。
この縦溝70は、大径の嵌込部64の全高に亘って形成されている。
【0028】
これら周方向溝66,径方向溝68及び縦溝70は、取付金具16の水抜孔56から下向きに流れ落ちた水や泥等を外部に排出する排出溝を成している。
尚径方向溝68と縦溝70は、バウンドストッパ47のストッパ作用時にエアを逃がすためのエア抜き溝も兼ねている。
【0029】
上記アッパーサポート20における下クッションゴム26もまた、図3に示しているように概略円筒形状をなしている。
この下クッションゴム26は、下部の小径の嵌込部72と、上部の大径のフランジ部74とを有しており、下部の嵌込部72において取付金具16の上金具36に下向きに嵌め込まれ、そこに弾性的に保持されている。
【0030】
この嵌込部72には、周方向に沿って複数箇所(ここでは4箇所)に径方向外向きに突出する突出部76が設けられている。
下クッションゴム26は、これら突出部76を上金具36の周壁部42内面に弾性圧接させる状態に、上金具36に嵌合状態に保持され、そして上部のフランジ部74を上金具36の上端部のフランジ部52に下向きに当接させる状態に、上金具36に組み付けられ保持されている。
【0031】
尚この下クッションゴム26には、図1に示すように中心部にピストンロッド14の挿通孔78が形成されており、またその上面にはボデー18の下面に弾性当接する環状の当接部80が、上向きに突出状に形成されている。
【0032】
本実施形態において、ピストンロッド14には取付金具16の取付板部22の直上位置に雄ねじ部が設けられていて、そこに締結ナット82がねじ込まれ、かかる締結ナット82と上記の鍔部30とで、取付板部22を上下両側から挟み込んでおり、かかる締結ナット82の締込みによって、ピストンロッド14に対し取付金具16が強固に一体的に結合(剛結合)されている。
下クッションゴム26にはこの締結ナット82を収容する凹所84が形成されている。
【0033】
図1において、86は樹脂のブロー成形品から成るダストカバーで上端部が嵌合組付部88として成形されており、この嵌合組付部88において取付金具16に組み付けられている。図において、87はその組付体を表している。
この嵌合組付部88は、上端にフランジ部89を有しており、このフランジ部89が取付金具16における上金具36のフランジ部52の下面に接合されている。
【0034】
図12に示す従来のダストカバー244では、嵌合組付部246の肉厚が全体に一様な肉厚とされていたが、ここでは嵌合組付部88が不均等な肉厚で形成されている。
詳しくは、図2(B)に示すように嵌合組付部88は、上金具36の下底部40と下金具38の上底部44との接合面よりも下側の位置の頂部90を境として、それより下側部分が肉厚が一様且つ薄肉をなす薄肉部92として構成されている。
【0035】
また頂部90から上側の部分の外周面は、上向きに小径となるテーパ面94とされていて、頂部90からフランジ部89の付根の上端95に到る部分が、部分的な厚肉部96として構成されている。
ここで厚肉部96の肉厚は、下底部40と上底部44との接合面の位置(上下方向位置)で最大となり、この接合面の位置から上端95に向って上方に進むにつれて肉厚が漸次減少し、そして上端95の位置においてその肉厚が薄肉部92の肉厚と略同等の肉厚ないしこれよりも若干厚肉となっている。
また接合面の位置から頂部90に向って同じく肉厚が漸次減少し、頂部90において薄肉部92の肉厚と同等の肉厚となっている。
ここで上金具36,下金具38の各周壁部42,46の付根のコーナー部101はR形状(湾曲形状)をなしている。
【0036】
尚、図2(A)に示しているように取付金具16から垂下するダストカバー86の円筒形状のカバー本体部97は、上記薄肉部92よりも厚肉をなしている。
またこのカバー本体部97の上端部には、環状且つ帯状に径方向外方に突出した環状突出部98が設けられている。
この環状突出部98は内側に環状凹所100を形成しており、その上端の段付部102に対し、上記取付金具16における下金具38の掛止部48が上向きに掛止している。
【0037】
この実施形態においては、取付金具16がピストンロッド14に対して、鍔部30と締結ナット82とにより強固に締結され一体化されている結果、図6に示しているようにピストンロッド14が傾動したとき、取付金具16及びこれに組付保持されたダストカバー86も一体に傾動する。
従ってピストンロッド14の傾動によってダストカバー86の下端部がショックアブソーバ10のシリンダ12に当るのが防止される。
【0038】
一方でピストンロッド14とともに取付金具16が傾動する結果、アッパーサポート20における下クッションゴム26の外周部が取付金具16から浮き上がってそこから取付金具16の内部詳しくは上向きのカップ状をなす上金具36の内部に水や泥等が侵入する恐れが生ずる。
しかるに本実施形態では、取付金具16の取付板部22の外周近傍位置に水抜孔56が形成されており、更にはまた下側のバウンドストッパ47の上面にも、周方向溝66と径方向溝68とが形成されているため、上金具36の内部に侵入した水や泥等は水抜孔56を通じて下方に抜き出され、更にバウンドストッパ47の排水溝、即ち周方向溝66と径方向溝68とによって、更には縦溝70によって良好に外部に排出される。
【0039】
図7〜図9は、上記取付金具16とダストカバー86との組付体87の製造方法を表している。
図7において、104は樹脂のパリソン106を押し出す押出装置で、108は軸直角方向に開閉する半割構造のブロー成形型である。図中108Aはブロー成形型108における各分割型を表している。
110はこのブロー成形型108に形成されたブロー成形用の内周成形面で、この内周成形面110は、ダストカバー86における図1中下端部の拡開部112を成形するための拡径形状の成形面110Aを有している。
【0040】
ブロー成形型108はまた、図中下端部にダストカバー86における上記の嵌合組付部88を成形するための端部成形部114を有している。図中116は、その端部成形部114における内周成形面を表している。
図8中部分拡大図に示しているようにこの内周成形面116は、嵌合組付部88における上記厚肉部96の外周面、詳しくはテーパ面94に対応したテーパ面117を有しており、このテーパ面117において取付金具16の周壁部42,46の外周面との間に、厚肉部96の肉厚に対応した軸直角方向の拡大隙間118を形成している。
【0041】
図7において、119は取付金具16をバウンドストッパ47を組み付けた状態で保持する保持部材で、図中上下方向に昇降可能に設けられている。
この保持部材119からは、圧縮エアの吹出管120が図中上向きに突き出している。
尚ブロー成形型108には、図中上端部に型締め時に内部の成形キャビティの図中上端を閉鎖する閉鎖部122が備えられており、下端部には型締め時に同キャビティの図中下端の閉鎖部材を兼ねた保持部材119の外周面との間でパリソン106を押し切る押切部124が設けられている。
【0042】
本例の製造方法では、図7に示しているように上記取付金具16をバウンドストッパ47を組み付けた状態で保持部材119により図中下側位置で保持し、そしてブロー成形型108を型開きした状態で、押出装置104から樹脂のパリソン106を図中下向きに押し出し、型開き状態のブロー成形型108の内部に挿入する。
このとき、パリソン106は当然ながらその肉厚が全体に一様な肉厚をなしている。
【0043】
次に取付金具16をバウンドストッパ47とともに上昇させて、パリソン106の端部を取付金具16に外挿した状態とし、その状態で半割構造のブロー成形型108を、図8に示しているように軸直角方向に型締めする。
このとき、パリソン106はブロー成形型108の閉鎖部122にて軸方向の一端部(図中上端部)が袋状に閉鎖され、また他端部(図中下端部)が、端部成形部114の内周成形面116により軸直角方向内方に押圧されて、内周及び外周ともに全体的に縮径変形させられ、かかる端部成形部114により、取付金具16の周壁部42,46に沿った形状の上記の嵌合組付部88が、それら周壁部42,46の外周面に密着及び一体接合状態に成形される。
続いて吹出管120からパリソン106内部に圧縮エアが吹き出されて、パリソン106がブロー成形型108の内周成形面110に押圧され、ここにダストカバー86がブロー成形されるとともに取付金具16に対し接合状態に一体組付けされる。
【0044】
本実施形態では図9に示しているようにパリソン106の端部をブロー成形型108の型締め時に、端部成形部114の内周成形面116によって軸直角方向内方に押圧し、内周及び外周ともに全体的に縮径変形させて、全周に亘り取付金具16の周壁部42,46の外周面に密着させる状態に嵌合組付部88を成形する際、その縮径変形によって発生した余剰の材料を、内周成形面116と周壁部42,46の外周面との間の拡大隙間118(図8中部分拡大図参照)に流入させて、部分的な厚肉部96を成形するようになしていることから、従来のように発生した余剰の材料が上金具36における下底部40と下金具38における上底部44との間の間隙に入り込んで水抜孔56を閉鎖してしまう恐れがない。
【0045】
因みに図10は従来の製造方法の要部を示したもので、図示のようにこの従来の製造方法では、ブロー成形型108Bにおける端部成形部114Bの内周成形面116Bが、取付金具16における周壁部42,46の外周面との間に軸直角方向の均等な隙間を形成する形状とされている。
従ってこの従来の製造方法に従って嵌合組付部を成形した場合、その嵌合組付部は、図12に示す肉厚が薄肉で均等な嵌合組付部246となる。
【0046】
この場合、発生した余剰の材料が下底部40と上底部44との間隙に入り込んで水抜孔56を閉鎖する恐れが生ずる(図10(III)参照)。
或いはまたこのような水抜孔56を有しない場合においても、入り込んだ余剰の材料が中心部の挿通孔54に達してしまう恐れが生ずる。
しかるに本実施形態によれば、上記拡大隙間118の形成によって、またこれによる厚肉部96の形成によって、余剰の材料をそこに流入させて吸収することができ、上記間隙への余剰の材料の侵入を良好に防止することができる。
【0047】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態,態様で構成,実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の組付体を含む弾性連結装置を示す図である。
【図2】図1における組付体の要部を示す図である。
【図3】図1における下クッションゴム,取付金具及びバウンドストッパを示す図である。
【図4】図1の取付金具を示す図である。
【図5】図1のバウンドストッパを示す図である。
【図6】図1の弾性連結装置の一作用状態を表す説明図である。
【図7】図1の組付体の製造方法の要部工程を示す説明図である。
【図8】図7に続く要部工程を示す説明図である。
【図9】同実施形態の製造方法の要部工程の作用説明図である。
【図10】同実施形態の利点を説明するために比較例として示した比較例図である。
【図11】従来の弾性連結装置の一例を示す図である。
【図12】図11における組付体とは別の形態をなす従来の組付体の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ショックアブソーバ
14 ピストンロッド
16 取付金具
18 ボデー
22 取付板部
26 下クッションゴム
28 上クッションゴム
36 上金具
38 下金具
40 下底部
42,46 周壁部
44 上底部
47 バウンドストッパ
54 挿通孔
56 水抜孔
86 ダストカバー
87 組付体
88 嵌合組付部
96 厚肉部
104 押出装置
106 パリソン
108 ブロー成形型
110,116 内周成形面
114 端部成形部
118 拡大隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドと車両のボデーとの間に介在して該ピストンロッドとボデーとの間で振動吸収するクッションゴムと、(ロ)バウンド時の該ピストンロッドの過度の収縮運動を弾性的に規制するバウンドストッパと、(ハ)下底部及び該下底部の外周端部より立ち上がった筒状の周壁部を有し、前記クッションゴムの下部を弾性的に嵌め込んで保持するカップ状の上金具と、上底部及び該上底部の外周端部より立ち下がった筒状の周壁部を有し、前記バウンドストッパの上部を嵌込状態に保持する逆カップ状の下金具とを、前記下底部と上底部とで互いに接合して成り、それら下底部と上底部とで、中心部に前記ピストンロッドの挿通孔を有する取付板部を構成する、前記ピストンロッドを前記クッションゴムを介して前記ボデーに取付固定するための取付金具と、(ニ)前記ピストンロッドを外周側から覆うブロー成形品としての筒状のダストカバーと、を有するショックアブソーバの弾性連結装置における前記取付金具とダストカバーとの組付体であって
前記ダストカバーの上端部は、前記取付金具における前記上金具及び下金具の各周壁部の外周面に沿った成形形状を有し、該外周面に対して全周に亘って一体に接合される嵌合組付部とされており、且つ該ダストカバーは該嵌合組付部のうち、少なくとも前記下底部と上底部との接合部の外周側に位置する部分が、他部に対して部分的に厚肉をなす厚肉部として構成されていることを特徴とする取付金具とダストカバーとの組付体。
【請求項2】
請求項1において、前記取付金具は、前記取付板部の前記挿通孔の外周側の位置に、該取付板部を上下に貫通する水抜孔を有するものであることを特徴とする取付金具とダストカバーとの組付体。
【請求項3】
軸直角方向に開閉するブロー成形型を型開きした状態で該ブロー成形型に前記取付金具をセットするとともに、押出装置から押し出した前記ダストカバーの筒状のパリソンの端部を該取付金具に対して軸方向に外挿した状態となし、しかる後前記ブロー成形型を型締めして該型締め時に該ブロー成形型の端部成形部により、前記取付金具に外挿された前記パリソンの端部を軸直角方向内方に押圧して内周及び外周ともに全体的に縮径変形させて、全周に亘り前記取付金具の前記周壁部の外周面に密着させる状態に前記嵌合組付部を該周壁部の外周面に一体接合状態に成形し、更に前記パリソンの内部に圧縮気体を吹き込んで前記パリソンの端部を除く部分を前記ブロー成形型の内周成形面に押圧してブロー成形することにより前記ダストカバーを成形して前記組付体を製造するに際し、
前記端部成形部における内周成形面の形状を、少なくとも前記接合部の外周側の位置において前記周壁部の外周面との間に部分的に大きな軸直角方向の拡大隙間を形成する形状となし、該端部成形部にて前記パリソンの端部を押圧して全体的に縮径変形させる際に発生した余剰の材料を該拡大隙間に流入させ吸収することを特徴とする請求項1,2の何れかの取付金具とダストカバーとの組付体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−32732(P2007−32732A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217990(P2005−217990)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】