可変分光素子、分光装置および内視鏡システム
【課題】透過帯域の波長に対する透過帯域幅の変化を抑制する。
【解決手段】間隔をあけて対向する複数のコート層2a,2bを備え、該コート層2a,2b間の光路長を調整することにより該コート層2a,2bを通過する光の透過帯域を変化させる可変分光素子1であって、透過帯域を変化させる分光波長帯域内において、任意の2つの透過帯域間の中心波長の変化の割合よりも、これら透過帯域間の透過帯域幅の変化の割合が小さくなるように前記コート層2a,2bが構成されている可変分光素子1を提供する。
【解決手段】間隔をあけて対向する複数のコート層2a,2bを備え、該コート層2a,2b間の光路長を調整することにより該コート層2a,2bを通過する光の透過帯域を変化させる可変分光素子1であって、透過帯域を変化させる分光波長帯域内において、任意の2つの透過帯域間の中心波長の変化の割合よりも、これら透過帯域間の透過帯域幅の変化の割合が小さくなるように前記コート層2a,2bが構成されている可変分光素子1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変分光素子、分光装置および内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の基板の面間隔を変化させることにより光の透過帯域を可変としたエタロン分光素子を備えた撮像装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この撮像装置は、エタロン分光素子により撮影対象から放射される光の透過帯域を変化させ、撮影対象の分光情報を取得するものである。そして、コート層を施した2枚の基板の面間隔を変化させることにより異なる2つの透過特性を実現し、それぞれの画像の強度分布の差分を演算することにより、スペクトル分析を行っている。
【特許文献1】特許第2771785号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1に開示されている撮像装置においては、エタロン分光素子の透過帯域幅について考慮されていない。例えば、波長に対する透過特性が均一なコート層を施すと、基板の面間隔を変化させることにより変化する透過帯域の幅は、当該透過帯域の波長にほぼ正比例して増加するという特性を有する。
【0004】
このため、異なる透過帯域において取得された画像は、個々の画像が有する分光情報の帯域幅が異なることになる。すなわち、短波長側では波長幅が狭い画像が得られ、長波長側では波長幅の広い画像(波長分解能が低い画像)が得られる。また、撮影対象が分光的に一定の強度を有する場合であっても、分光素子の透過帯域幅が異なるために、長波長側の画像が短波長側の画像よりも明るくなるという問題がある。したがって、透過帯域の異なる複数の画像間の定量的な比較や演算を容易に行うことができないという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、透過帯域の波長に対する透過帯域幅の変化を抑制することができる可変分光素子および分光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、間隔をあけて対向する複数のコート層を備え、該コート層間の光路長を調整することにより該コート層を通過する光の透過帯域を変化させる可変分光素子であって、透過帯域を変化させる分光波長帯域内において、任意の2つの透過帯域間の中心波長の変化の割合よりも、これら透過帯域間の透過帯域幅の変化の割合が小さくなるように前記コート層が構成されている可変分光素子を提供する。
【0007】
上記発明においては、前記分光波長帯域内において、透過帯域の幅が波長によらず一定であることが好ましい。
また、上記発明においては、前記透過帯域の幅が半値全幅であることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記コート層の特性が均一であることが好ましい。
【0008】
また、上記発明においては、前記コート層の反射率が、波長の増加に従って単調増加することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記コート層が、間隔をあけて配置される2つの光学部材の対向面にそれぞれ設けられていることとしてもよい。
【0009】
また、上記発明においては、前記対向面間の光路長が、該対向面に沿う方向に変化することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記対向面の内の少なくとも一方が、1段以上の階段状に形成されていることとしてもよい。
【0010】
また、上記発明においては、前記対向面間の間隔が、該対向面に沿う方向に漸次変化することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記コート層の波長に対する反射率特性が、以下の関係式で表されることが好ましい。
【数2】
上記発明においては、前記コート層が誘電体材料からなることとしてもよい。
【0011】
また、本発明は、上記いずれかの可変分光素子を備える分光装置を提供する。
上記発明においては、前記可変分光素子を通過した光を撮影する2次元の撮像素子を備えることとしてもよい。
【0012】
また、上記発明においては、撮影対象が生体であることとしてもよく、撮影対象が体腔内の一部であることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記可変分光素子のコート層間の間隔が、前記分光波長帯域において透過帯域が1つだけ存在する間隔であることとしてもよい。
また、本発明は、上記いずれかの可変分光素子を備える分光内視鏡システムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透過帯域の波長に対する透過帯域幅の変化を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態に係る可変分光素子1およびこれを備えた内視鏡システム(分光装置)10について、図1〜図5を参照して説明する。
本実施形態に係る可変分光素子1は、図1に示されるように、平行間隔を空けて配置され対向面の光学有効径の範囲に反射膜(コート層)2a,2bが設けられた2枚の平板状の光学部材3a,3bと、該光学部材3a,3bの間隔を変化させるアクチュエータ4とを備えるエタロン型の光学フィルタである。
【0015】
アクチュエータ4は、例えば、圧電素子からなる円筒状の部材であって、駆動信号に応じてその長さ寸法を伸縮させるようになっている。
この可変分光素子1は、アクチュエータ4の作動により光学部材3a,3bの間隔寸法を変化させることで、その透過する光の波長帯域を変化させることができるようになっている。
【0016】
光学部材3a,3b間の間隔寸法は極めて微小な値、例えば、ミクロンオーダーかそれ以下になるように設定されている。
また、光学有効径の外側には輪帯形状の容量センサ電極5a,5bが配置されている。
【0017】
前記反射膜2a,2bは、例えば、誘電体多層膜により構成されている。
また、容量センサ電極5a,5bは金属膜により構成されている。容量センサ電極5a,5bからの信号をフィードバックして駆動手段への駆動信号を制御することにより、透過特性の調節精度を向上することができるようになっている。
【0018】
さらに具体的には、本実施形態に係る可変分光素子1は、図2に示されるような反射率特性を有している。この反射率特性は、以下の関係式(1)を満足している。
【数3】
【0019】
ここで、上記式(1)の導出について説明する。
反射膜2a,2bの1面の反射率R(λ)、光の入射角θ、反射膜2a,2b間の媒質の屈折率n、反射膜2a,2bの間隔dとすると、透過率Tは、次式(2)で表される。
【0020】
【数4】
【0021】
ここで、半値全幅FWHMは、次式(3)により表される。
【数5】
【0022】
ここで、光路長をnd=mλ/2(m:1以上の整数)の関係で変化させると、波長λにおいて垂直入射で透過率が最大値となる。この関係を式(3)に代入し、反射率R(λ)について得られた2次方程式の解を求めることにより、式(1)を得ることができる。
そして、上記式(1)において、半値全幅FWHMを定数とすることにより、図2の反射率特性を得ることができる。
【0023】
このように構成された本実施形態に係る可変分光素子1によれば、光学部材3a,3bの間隔寸法を変化させて、光の透過帯域を変化させても、その波長にかかわらず半値全幅FWHMが一定となるので、長波長側での波長分解能の低下を抑制することができるとともに、波長による透過光量の変化を防止することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る可変分光素子1を用いた内視鏡システム10について、図3〜図5を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10は、図3に示されるように、生体の体腔内に挿入される挿入部11と、該挿入部11内に配置される撮像ユニット(撮像手段)12と、照明光を発する光源ユニット13と、前記撮像ユニット12および光源ユニット13を制御する制御ユニット14と、撮像ユニット12により取得された画像を表示する表示ユニット15とを備えている。
【0025】
前記挿入部11は、生体の体腔に挿入できる極めて細い外形寸法を有し、その内部に、前記撮像ユニット12および前記光源ユニット13からの光を先端11aまで伝播するライトガイド16とを備えている。
前記光源ユニット13は、体腔内の観察対象を照明し、観察対象において反射して戻る反射光を取得するための照明光を発する照明光用光源17と、該照明光用光源17を制御する光源制御回路18とを備えている。
【0026】
前記照明光用光源17は、例えば、図示しないキセノンランプおよびバンドパスフィルタを組み合わせたもので、バンドパスフィルタの50%透過域は、430〜700nmである。すなわち、照明光用光源17は、波長帯域430〜700nmの照明光を発生するようになっている。
【0027】
前記撮像ユニット12は、図4に示されるように、観察対象Aから入射される光を集光するための、3枚のレンズ19a,19b,19cからなる撮像光学系19と、制御ユニット14の作動により分光特性を変化させられる本実施形態に係る可変分光素子1と、撮像光学系19により集光された光を撮影して電気信号に変換する撮像素子20とを備えている。
【0028】
本実施形態において、可変分光素子1の可変波長帯域は、図5に示されるように、制御ユニット14からの制御信号に応じて3つの状態に変化させられるようになっている。
第1の状態は、可視光の青の領域である波長430〜460nmの帯域の光を透過させるようになっている。以下、透過帯域幅はピーク強度の半値全幅FWHMで定義している。
第2の状態は、可視光の緑の領域である波長530〜560nmの帯域の光を透過させるようになっている。
第3の状態は、可視光の赤の領域である波長630〜660nmの帯域の光を透過させるようになっている。
【0029】
前記制御ユニット14は、図3に示されるように、撮像素子20を駆動制御する撮像素子制御回路21と、可変分光素子1を駆動制御する可変分光素子制御回路22と、撮像素子20により取得された画像情報を記憶するフレームメモリ23と、該フレームメモリ23に記憶された画像情報を処理して表示ユニット15に出力する画像処理回路24とを備えている。
【0030】
可変分光素子制御回路22が、可変分光素子1を第1の状態にしたときには、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第1のフレームメモリ23aに出力させるようになっている。また、可変分光素子制御回路22が、可変分光素子1を第2の状態にしたときには、撮像素子駆動回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第2のフレームメモリ23bに出力するようになっている。さらに、可変分光素子制御回路22が、可変分光素子1を第3の状態にしたときには、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第3のフレームメモリ23cに出力させるようになっている。
【0031】
また、画像処理回路24は、例えば、青の帯域の画像情報を第1のフレームメモリ23aから受け取って表示ユニット15の第1のチャネルに出力し、緑の帯域の画像情報を第2のフレームメモリ23bから受け取って表示ユニット15の第2のチャネルに出力し、赤の帯域の画像情報を第3のフレームメモリ23cから受け取って表示ユニット15の第3のチャネルに出力するようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システム10の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10を用いて、生体の体腔内の撮影対象Aを撮像するには、挿入部11を体腔内に挿入し、その先端11aを体腔内の撮影対象Aに対向させる。この状態で、光源ユニット13および制御ユニット14を作動させ、光源制御回路18の作動により、照明光用光源17を作動させて照明光を発生させる。
【0033】
光源ユニット13において発生した照明光は、ライトガイド16を介して挿入部11の先端11aまで伝播され、挿入部11の先端11aから撮影対象Aに向けて照射される。
照明光は撮影対象Aの表面において反射され、反射光が撮像光学系19により集光されて可変分光素子1を透過して撮像素子20に結像され、反射光画像情報が取得される。
【0034】
青の帯域の反射光画像を取得するには、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1を第1の状態に切り替えることで、撮像素子20に到達する反射光の帯域を波長430〜460nmに制限することができる。そして、取得された青の帯域の反射光画像情報は、第1のフレームメモリ23aに記憶され、表示ユニット15の第1のチャネルに出力されることになる。
【0035】
緑の帯域の反射光画像を取得するには、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1を第2の状態に切り替えることで、撮像素子20に到達する反射光の帯域を波長530〜560nmに制限することができる。そして、取得された緑の帯域の反射光画像情報は、第2のフレームメモリ23bに記憶され、表示ユニット15の第2のチャネルに出力されることになる。
【0036】
赤の帯域の反射光画像を取得するには、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1を第3の状態に切り替えることで、撮像素子20に到達する反射光の帯域を波長630〜660nmに制限することができる。そして、取得された緑の帯域の反射光画像情報は、第3のフレームメモリ23cに記憶され、表示ユニット15の第3のチャネルに出力されることになる。
【0037】
このように、本実施形態に係る内視鏡システム10によれば、観察対象Aからの反射光を異なる波長帯域毎に分光して表示することができる。
生体に対しては様々な波長による画像情報を取得することが有用であるが、本実施形態に係る内視鏡システム10によれば、広い波長帯域にわたって可変分光素子1の透過帯域幅を一定にすることができる。したがって、長波長側の波長帯域の反射光画像情報の波長分解能が他の波長帯域の反射光画像情報と比較して低下したり、長波長側の波長帯域の反射光画像の強度が他の波長帯域の反射光画像情報と比較して大きくなってしまったりする不都合の発生を防止することができる。
その結果、複数の波長帯域の反射光画像情報を用いた重畳表示や、画像間演算においても、複雑な補正処理を行うことなく簡単に行うことができるという利点がある。
【0038】
なお、本実施形態に係る可変分光素子1および内視鏡システム10においては、以下の変形、変更が可能である。
まず、本実施形態に係る可変分光素子1においては、分光波長帯域の全域において、図2に示される反射率特性を有する場合について説明したが、これに代えて、図6に示されるように、分光情報を取得する波長帯域Xのみにおいて、上記式(1)の反射率特性を有することとしてもよい。このようにすることで、反射膜2a,2bの設計および製造に関する制約条件を軽減することができ、設計および製造を容易にすることができるという利点がある。
【0039】
また、これに代えて、図7に示されるように、式(1)の反射率特性に近似する1次関数からなる反射率特性を有する反射膜2a,2bを採用してもよい。この場合の1次関数としては、0より大きい正の比例係数を有し、波長に応じて単調増加するものが採用される。このようにすることで、透過帯域の波長に依存した透過帯域幅の変化を抑制することができる。
また、本実施形態においては、透過帯域幅を表す量として半値全幅FWHMを用いたが、それ以外の量を指標とすることとしてもよい。
【0040】
また、本実施形態に係る可変分光素子1においては、2枚の光学部材3a,3bの間隔寸法を圧電素子からなるアクチュエータ4により変化させるものを例示したが、これに代えて、他のアクチュエータにより間隔寸法を変化させるものでもよい。また、光学部材3a,3b間の隙間に充填される媒質(例えば、液体や気体)の屈折率を変化させることにより、間隔を維持したまま光路長を変化させることとしてもよい。
【0041】
また、内視鏡システム10としては、軟性鏡、硬性鏡のいずれに適用することとしてもよい。また、内視鏡ではなく、生体内部観察用の対物レンズ等に適用することとしてもよい。本実施形態によれば、波長帯によらず、透過帯域幅を一定にすることを、例えば、複数の光学フィルタの光路への挿脱という方法を用いる必要もなく、1個の可変分光素子で実現できるので、径方向の寸法に制約のある内視鏡などの生体内部観察系に特に好適である。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システム10′について図8〜図13を参照して以下に説明する。
なお、本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る内視鏡システム10と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る内視鏡システム10′においては、光源ユニット13′が、照明光用光源17の他に励起光用光源25を備えている。
照明光用光源17は、図示しないキセノンランプおよびバンドパスフィルタを組み合わせたもので、バンドパスフィルタの50%透過域は、430〜460nmである。
また、励起光用光源25は、例えば、ピーク波長660±5nmの励起光を出射する半導体レーザである。この波長の励起光は、Cy5.5、Cy7(Amersham社製)やALEXAFLUOR700(Molecular Probes社製)等の蛍光薬剤を励起することができる。
【0044】
本実施形態の説明においては、このうち、Cy5.5(ピーク波長694nm、蛍光波長領域670〜710nm)と、Cy7(ピーク波長767nm、蛍光波長領域760〜800nm)の2種類の蛍光薬剤を用いる。
前記光源制御回路18は、後述するタイミングチャートに従う所定のタイミングで、照明光用光源17と励起光用光源25とを交互に点灯および消灯させるようになっている。
【0045】
前記撮像ユニット12′は、図9に示されるように、観察対象Aから入射されてくる励起光を遮断する励起光カットフィルタ26をさらに備えている。
励起光カットフィルタ26は、例えば、波長帯域420〜640nmで透過率80%以上、波長帯域650〜670nmでOD値4以上(=透過率1×10−4以下)、波長帯域690〜750nmで透過率80%以上の透過率特性を有している。
【0046】
可変分光素子1は、図10および図12に示されるように、固定透過帯域および可変透過帯域を有している。固定透過帯域は、可変分光素子1の状態によらず、常に光を透過する帯域であり、例えば、波長420〜540nmの範囲に配置され、平均透過率60%以上に設計されている。また、可変透過帯域は、可変分光素子1の状態に応じて透過率特性を変化させる帯域である。このような可変分光素子1を構成するために、反射膜2a,2bは、図11に示すように、固定透過帯域において反射率が40%以下に設定され、可変透過帯域において第1の実施形態において説明した式(1)に従う反射率特性を有している。
【0047】
本実施形態において、可変分光素子1は、蛍光薬剤が励起光により励起されることによって発生する蛍光(薬剤蛍光)の波長を含む波長帯域(例えば、680〜710nmおよび760〜790nm)に可変透過帯域を備えている。そして、可変分光素子1は、制御ユニット14からの制御信号に応じて、可変透過帯域を波長帯域680〜710nmに設定する第1の状態と可変透過帯域を波長帯域760〜790nmに設定する第2の状態の2つの状態に制御されるようになっている。
【0048】
撮像素子制御回路21および可変分光素子制御回路22は前記光源制御回路18に接続され、光源制御回路18による照明光用光源17および励起光用光源25の切替に同期して可変分光素子1および撮像素子20を駆動制御するようになっている。
具体的には、図13のタイミングチャートに示されるように、光源制御回路18の作動により、励起光用光源25から励起光が発せられるときには、可変分光素子制御回路22が可変分光素子1を第1の状態として、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第1のフレームメモリ23aに出力させるようになっている。
【0049】
また、励起光用光源25からの励起光が発せられてから所定時間経過後には、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1が第2の状態とされ、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第2のフレームメモリ23bに出力させるようになっている。
さらに、光源制御回路18の作動により、照明光用光源17から照明光が発せられるときには、可変分光素子制御回路22が可変分光素子1を第2の状態に維持して、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第3のフレームメモリ23cに出力させるようになっている。
【0050】
また、前記画像処理回路24は、例えば、励起光の照射により得られるCy5.5の蛍光画像情報を第1のフレームメモリ23aから受け取って表示ユニット15の第1のチャネルに出力し、Cy7の蛍光画像情報を第2のフレームメモリ23bから受け取って表示ユニット15の第2のチャネルに出力し、照明光の照射により得られる反射光画像情報を第3のフレームメモリ23cから受け取って表示ユニット15の第3のチャネルに出力するようになっている。
【0051】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システム10′の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10′を用いて、生体の体腔内の撮影対象Aを撮像するには、蛍光薬剤を体内に注入するとともに、挿入部11を体腔内に挿入し、その先端11aを体腔内の撮影対象Aに対向させる。この状態で、光源ユニット13′および制御ユニット14を作動させ、光源制御回路18の作動により、照明光用光源17および励起光用光源25を交互に作動させて照明光および励起光をそれぞれ発生させる。
【0052】
光源ユニット13′において発生した励起光および照明光は、それぞれライトガイド16を介して挿入部11の先端11aまで伝播され、挿入部11の先端11aから撮影対象Aに向けて照射される。
励起光が撮影対象Aに照射された場合には、撮影対象Aに浸透している蛍光薬剤が励起されて蛍光が発せられる。撮影対象Aから発せられた蛍光は、励起光カットフィルタ26を透過し、撮像ユニット12′の撮像光学系19のレンズ19a,19bにより集光されて可変分光素子1に入射される。
【0053】
可変分光素子1は、可変分光素子制御回路22の作動により励起光用光源25の作動に同期して第1の状態に切り替えられているので、Cy5.5の蛍光に対する透過率が増大させられており、入射された蛍光を透過させることができる。この場合に、撮影対象Aに照射された励起光の一部が、撮影対象Aにおいて反射され、蛍光とともに撮像ユニット12′に入射されるが、撮像ユニット12′には励起光カットフィルタ26が設けられているので、励起光は遮断され、撮像素子20に入射されることが阻止される。
【0054】
そして、可変分光素子1を透過した蛍光はレンズ19cにより集光されて撮像素子20に入射され、蛍光画像情報が取得される。取得された蛍光画像情報は、第1のフレームメモリ23aに記憶され、画像処理回路24によって、表示ユニット15の第1のチャネルに出力されて表示ユニット15により表示される。
【0055】
次に、可変分光素子1は、可変分光素子制御回路22の作動により励起光用光源25の作動から所定時間経過後に第2の状態に切り替えられるので、Cy7の蛍光に対する透過率が増大させられ、入射された蛍光を透過させることができる。そして、可変分光素子1を透過した蛍光は撮像素子20に入射され、蛍光画像情報が取得される。取得された蛍光画像情報は、第2のフレームメモリ23bに記憶され、画像処理回路24によって、表示ユニット15の第2のチャネルに出力されて表示ユニット15により表示される。
【0056】
一方、照明光が撮影対象Aに照射された場合には、撮影対象Aの表面において照明光が反射され、励起光カットフィルタ26および撮像光学系19のレンズ19a,19bを透過し、可変分光素子1に入射される。照明光の反射光の波長帯域は、可変分光素子1の固定透過帯域に位置しているので、可変分光素子1に入射された反射光は全て可変分光素子1を透過させられる。
【0057】
そして、可変分光素子1を透過した反射光は、レンズ19cにより集光されて撮像素子20に入射され、反射光画像情報が取得される。取得された反射光画像情報は、第3のフレームメモリ23cに記憶され、画像処理回路24によって、表示ユニット15の第3のチャネルに出力されて表示ユニット15により表示される。
この場合に、励起光用光源25がオフにされているので、波長660nmの励起光による蛍光は発生していない。照明光用光源17の波長域は、上記蛍光薬剤に対しては励起効率が極めて低いので、実質的に発生しないと考えてよい。これにより、反射光のみが撮像素子20により撮影されることになる。
【0058】
このように、本実施形態に係る内視鏡システム10′によれば、2つの蛍光画像と反射光画像とを合成した画像を使用者に提供することができる。
また、本実施形態に係る内視鏡システム10′によれば、波長帯域の異なる2つの蛍光を透過する透過帯域幅が同一であるため、2つの蛍光画像を定量的に比較・演算する場合に、容易に実行することができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、蛍光薬剤としてCy5.5およびCy7を例示したが、これに限定されるものではなく、他の蛍光薬剤を使用することもできる。また、複数の蛍光薬剤を1波長の励起光により励起することとしたが、複数の励起光により個別に励起することとしてもよい。また、可視の反射光画像と薬剤蛍光画像との組合せではなく、自家蛍光画像と薬剤蛍光画像の組合せに適用することとしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、空気間隙をあけて対向する2つの光学部材3a,3bの対向面に反射膜2a,2bを設けたが、これに代えて、単一の光学部材の両面に反射膜2a,2bを設けることとしてもよい。これは2つのコート層の間隙に、空気ではなく光学部材を配置したことに相当するが、この場合には光学部材の屈折率を用いて反射膜2a,2bの反射率特性を演算すればよい。また、光学部材3a,3b間の間隙に、空気以外の気体や液体等の媒質を充填する場合、それらの媒質の屈折率を用いて反射膜2a,2bの反射率特性を演算すればよい。
【0061】
また、上記第1,第2の実施形態においては、可変分光素子1として、2つの光学部材3a,3b間の間隔寸法を圧電素子からなるアクチュエータ4により変更する方式のものを例示したが、これに限定されるものではなく、図14に示されるように、間隔をあけて対向する2つの光学部材3a′,3b′の少なくとも一方(例えば、光学部材3a′)が、対向面に沿う方向に1段以上のステップを有する階段状に形成されているものを採用してもよい。対向面には第1の実施形態と同様の反射膜2a,2bが施されている。この可変分光素子1′は、光軸に直交する方向に移動可能に設けられている。
【0062】
したがって、光軸に対して直交する方向に可変分光素子1′を移動させることにより、光の透過する部位における間隔寸法を段階的に変化させることができ、それによって、光の透過帯域を第1の実施形態と同様に変化させることができる。第1の実施形態においては、容量センサ電極5a,5bを設けてフィードバック制御することとしたが、この例では、可変分光素子1′自体の位置検出を図示しない位置検出装置により行ってフィードバック制御することとすればよい。
【0063】
このように構成することにより、対向する反射膜2a,2bの間隔を固定できる。したがって、圧電素子からなるアクチュエータ4の制御により間隔を調節する場合と比較すると、簡易かつ迅速に精度よく透過帯域を切り替えることができる。
【0064】
また、階段状の光学部材3a′を有する可変分光素子1′に代えて、図15に示されるように、反射膜2a,2bが設けられる2つの面が非平行なくさび状の光学部材3″を有する可変分光素子1″を採用することとしてもよい。このようにすることで、階段状の光学部材3a′の場合と同様に、光軸に直交する方向に可変分光素子1″を移動させることにより、連続的に反射膜2a,2b間の間隔寸法を変化させ、透過帯域を連続的に変化させることができる。
【0065】
また、固定された光軸に直交する方向に可変分光素子1′,1″を移動させることに代えて、可変分光素子1′,1″を固定し、図示しない任意の走査手段を用いて、可変分光素子1′,1″への光の入射位置を変化させることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る可変分光素子を示す縦断面図である。
【図2】図1の可変分光素子の反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムの全体構成を示すブロック図である。
【図4】図3の内視鏡システムの撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【図5】図3の内視鏡システムを構成する可変分光素子の透過率特性を示すグラフである。
【図6】図1の可変分光素子の変形例における反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図7】図1の可変分光素子の他の変形例における反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムの全体構成を示すブロック図である。
【図9】図8の内視鏡システムの撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【図10】図8の内視鏡システムを構成する可変分光素子の透過率特性を示すグラフである。
【図11】図10の可変分光素子の反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図12】図8の内視鏡システムを構成する各光学部品の透過率特性、照明光および励起光の波長特性を示す図である。
【図13】図8の内視鏡システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図14】図10の変形例に係る可変分光素子を有する撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【図15】図10の他の変形例に係る可変分光素子を有する撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
A 撮影対象
1,1′,1″ 可変分光素子
2a,2b 反射膜(コート層)
3a,3b;3a′,3b′ 光学部材
10,10′ 内視鏡システム(分光装置)
20 撮像素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変分光素子、分光装置および内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の基板の面間隔を変化させることにより光の透過帯域を可変としたエタロン分光素子を備えた撮像装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この撮像装置は、エタロン分光素子により撮影対象から放射される光の透過帯域を変化させ、撮影対象の分光情報を取得するものである。そして、コート層を施した2枚の基板の面間隔を変化させることにより異なる2つの透過特性を実現し、それぞれの画像の強度分布の差分を演算することにより、スペクトル分析を行っている。
【特許文献1】特許第2771785号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1に開示されている撮像装置においては、エタロン分光素子の透過帯域幅について考慮されていない。例えば、波長に対する透過特性が均一なコート層を施すと、基板の面間隔を変化させることにより変化する透過帯域の幅は、当該透過帯域の波長にほぼ正比例して増加するという特性を有する。
【0004】
このため、異なる透過帯域において取得された画像は、個々の画像が有する分光情報の帯域幅が異なることになる。すなわち、短波長側では波長幅が狭い画像が得られ、長波長側では波長幅の広い画像(波長分解能が低い画像)が得られる。また、撮影対象が分光的に一定の強度を有する場合であっても、分光素子の透過帯域幅が異なるために、長波長側の画像が短波長側の画像よりも明るくなるという問題がある。したがって、透過帯域の異なる複数の画像間の定量的な比較や演算を容易に行うことができないという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、透過帯域の波長に対する透過帯域幅の変化を抑制することができる可変分光素子および分光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、間隔をあけて対向する複数のコート層を備え、該コート層間の光路長を調整することにより該コート層を通過する光の透過帯域を変化させる可変分光素子であって、透過帯域を変化させる分光波長帯域内において、任意の2つの透過帯域間の中心波長の変化の割合よりも、これら透過帯域間の透過帯域幅の変化の割合が小さくなるように前記コート層が構成されている可変分光素子を提供する。
【0007】
上記発明においては、前記分光波長帯域内において、透過帯域の幅が波長によらず一定であることが好ましい。
また、上記発明においては、前記透過帯域の幅が半値全幅であることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記コート層の特性が均一であることが好ましい。
【0008】
また、上記発明においては、前記コート層の反射率が、波長の増加に従って単調増加することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記コート層が、間隔をあけて配置される2つの光学部材の対向面にそれぞれ設けられていることとしてもよい。
【0009】
また、上記発明においては、前記対向面間の光路長が、該対向面に沿う方向に変化することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記対向面の内の少なくとも一方が、1段以上の階段状に形成されていることとしてもよい。
【0010】
また、上記発明においては、前記対向面間の間隔が、該対向面に沿う方向に漸次変化することとしてもよい。
また、上記発明においては、前記コート層の波長に対する反射率特性が、以下の関係式で表されることが好ましい。
【数2】
上記発明においては、前記コート層が誘電体材料からなることとしてもよい。
【0011】
また、本発明は、上記いずれかの可変分光素子を備える分光装置を提供する。
上記発明においては、前記可変分光素子を通過した光を撮影する2次元の撮像素子を備えることとしてもよい。
【0012】
また、上記発明においては、撮影対象が生体であることとしてもよく、撮影対象が体腔内の一部であることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記可変分光素子のコート層間の間隔が、前記分光波長帯域において透過帯域が1つだけ存在する間隔であることとしてもよい。
また、本発明は、上記いずれかの可変分光素子を備える分光内視鏡システムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透過帯域の波長に対する透過帯域幅の変化を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態に係る可変分光素子1およびこれを備えた内視鏡システム(分光装置)10について、図1〜図5を参照して説明する。
本実施形態に係る可変分光素子1は、図1に示されるように、平行間隔を空けて配置され対向面の光学有効径の範囲に反射膜(コート層)2a,2bが設けられた2枚の平板状の光学部材3a,3bと、該光学部材3a,3bの間隔を変化させるアクチュエータ4とを備えるエタロン型の光学フィルタである。
【0015】
アクチュエータ4は、例えば、圧電素子からなる円筒状の部材であって、駆動信号に応じてその長さ寸法を伸縮させるようになっている。
この可変分光素子1は、アクチュエータ4の作動により光学部材3a,3bの間隔寸法を変化させることで、その透過する光の波長帯域を変化させることができるようになっている。
【0016】
光学部材3a,3b間の間隔寸法は極めて微小な値、例えば、ミクロンオーダーかそれ以下になるように設定されている。
また、光学有効径の外側には輪帯形状の容量センサ電極5a,5bが配置されている。
【0017】
前記反射膜2a,2bは、例えば、誘電体多層膜により構成されている。
また、容量センサ電極5a,5bは金属膜により構成されている。容量センサ電極5a,5bからの信号をフィードバックして駆動手段への駆動信号を制御することにより、透過特性の調節精度を向上することができるようになっている。
【0018】
さらに具体的には、本実施形態に係る可変分光素子1は、図2に示されるような反射率特性を有している。この反射率特性は、以下の関係式(1)を満足している。
【数3】
【0019】
ここで、上記式(1)の導出について説明する。
反射膜2a,2bの1面の反射率R(λ)、光の入射角θ、反射膜2a,2b間の媒質の屈折率n、反射膜2a,2bの間隔dとすると、透過率Tは、次式(2)で表される。
【0020】
【数4】
【0021】
ここで、半値全幅FWHMは、次式(3)により表される。
【数5】
【0022】
ここで、光路長をnd=mλ/2(m:1以上の整数)の関係で変化させると、波長λにおいて垂直入射で透過率が最大値となる。この関係を式(3)に代入し、反射率R(λ)について得られた2次方程式の解を求めることにより、式(1)を得ることができる。
そして、上記式(1)において、半値全幅FWHMを定数とすることにより、図2の反射率特性を得ることができる。
【0023】
このように構成された本実施形態に係る可変分光素子1によれば、光学部材3a,3bの間隔寸法を変化させて、光の透過帯域を変化させても、その波長にかかわらず半値全幅FWHMが一定となるので、長波長側での波長分解能の低下を抑制することができるとともに、波長による透過光量の変化を防止することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る可変分光素子1を用いた内視鏡システム10について、図3〜図5を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10は、図3に示されるように、生体の体腔内に挿入される挿入部11と、該挿入部11内に配置される撮像ユニット(撮像手段)12と、照明光を発する光源ユニット13と、前記撮像ユニット12および光源ユニット13を制御する制御ユニット14と、撮像ユニット12により取得された画像を表示する表示ユニット15とを備えている。
【0025】
前記挿入部11は、生体の体腔に挿入できる極めて細い外形寸法を有し、その内部に、前記撮像ユニット12および前記光源ユニット13からの光を先端11aまで伝播するライトガイド16とを備えている。
前記光源ユニット13は、体腔内の観察対象を照明し、観察対象において反射して戻る反射光を取得するための照明光を発する照明光用光源17と、該照明光用光源17を制御する光源制御回路18とを備えている。
【0026】
前記照明光用光源17は、例えば、図示しないキセノンランプおよびバンドパスフィルタを組み合わせたもので、バンドパスフィルタの50%透過域は、430〜700nmである。すなわち、照明光用光源17は、波長帯域430〜700nmの照明光を発生するようになっている。
【0027】
前記撮像ユニット12は、図4に示されるように、観察対象Aから入射される光を集光するための、3枚のレンズ19a,19b,19cからなる撮像光学系19と、制御ユニット14の作動により分光特性を変化させられる本実施形態に係る可変分光素子1と、撮像光学系19により集光された光を撮影して電気信号に変換する撮像素子20とを備えている。
【0028】
本実施形態において、可変分光素子1の可変波長帯域は、図5に示されるように、制御ユニット14からの制御信号に応じて3つの状態に変化させられるようになっている。
第1の状態は、可視光の青の領域である波長430〜460nmの帯域の光を透過させるようになっている。以下、透過帯域幅はピーク強度の半値全幅FWHMで定義している。
第2の状態は、可視光の緑の領域である波長530〜560nmの帯域の光を透過させるようになっている。
第3の状態は、可視光の赤の領域である波長630〜660nmの帯域の光を透過させるようになっている。
【0029】
前記制御ユニット14は、図3に示されるように、撮像素子20を駆動制御する撮像素子制御回路21と、可変分光素子1を駆動制御する可変分光素子制御回路22と、撮像素子20により取得された画像情報を記憶するフレームメモリ23と、該フレームメモリ23に記憶された画像情報を処理して表示ユニット15に出力する画像処理回路24とを備えている。
【0030】
可変分光素子制御回路22が、可変分光素子1を第1の状態にしたときには、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第1のフレームメモリ23aに出力させるようになっている。また、可変分光素子制御回路22が、可変分光素子1を第2の状態にしたときには、撮像素子駆動回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第2のフレームメモリ23bに出力するようになっている。さらに、可変分光素子制御回路22が、可変分光素子1を第3の状態にしたときには、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第3のフレームメモリ23cに出力させるようになっている。
【0031】
また、画像処理回路24は、例えば、青の帯域の画像情報を第1のフレームメモリ23aから受け取って表示ユニット15の第1のチャネルに出力し、緑の帯域の画像情報を第2のフレームメモリ23bから受け取って表示ユニット15の第2のチャネルに出力し、赤の帯域の画像情報を第3のフレームメモリ23cから受け取って表示ユニット15の第3のチャネルに出力するようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システム10の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10を用いて、生体の体腔内の撮影対象Aを撮像するには、挿入部11を体腔内に挿入し、その先端11aを体腔内の撮影対象Aに対向させる。この状態で、光源ユニット13および制御ユニット14を作動させ、光源制御回路18の作動により、照明光用光源17を作動させて照明光を発生させる。
【0033】
光源ユニット13において発生した照明光は、ライトガイド16を介して挿入部11の先端11aまで伝播され、挿入部11の先端11aから撮影対象Aに向けて照射される。
照明光は撮影対象Aの表面において反射され、反射光が撮像光学系19により集光されて可変分光素子1を透過して撮像素子20に結像され、反射光画像情報が取得される。
【0034】
青の帯域の反射光画像を取得するには、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1を第1の状態に切り替えることで、撮像素子20に到達する反射光の帯域を波長430〜460nmに制限することができる。そして、取得された青の帯域の反射光画像情報は、第1のフレームメモリ23aに記憶され、表示ユニット15の第1のチャネルに出力されることになる。
【0035】
緑の帯域の反射光画像を取得するには、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1を第2の状態に切り替えることで、撮像素子20に到達する反射光の帯域を波長530〜560nmに制限することができる。そして、取得された緑の帯域の反射光画像情報は、第2のフレームメモリ23bに記憶され、表示ユニット15の第2のチャネルに出力されることになる。
【0036】
赤の帯域の反射光画像を取得するには、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1を第3の状態に切り替えることで、撮像素子20に到達する反射光の帯域を波長630〜660nmに制限することができる。そして、取得された緑の帯域の反射光画像情報は、第3のフレームメモリ23cに記憶され、表示ユニット15の第3のチャネルに出力されることになる。
【0037】
このように、本実施形態に係る内視鏡システム10によれば、観察対象Aからの反射光を異なる波長帯域毎に分光して表示することができる。
生体に対しては様々な波長による画像情報を取得することが有用であるが、本実施形態に係る内視鏡システム10によれば、広い波長帯域にわたって可変分光素子1の透過帯域幅を一定にすることができる。したがって、長波長側の波長帯域の反射光画像情報の波長分解能が他の波長帯域の反射光画像情報と比較して低下したり、長波長側の波長帯域の反射光画像の強度が他の波長帯域の反射光画像情報と比較して大きくなってしまったりする不都合の発生を防止することができる。
その結果、複数の波長帯域の反射光画像情報を用いた重畳表示や、画像間演算においても、複雑な補正処理を行うことなく簡単に行うことができるという利点がある。
【0038】
なお、本実施形態に係る可変分光素子1および内視鏡システム10においては、以下の変形、変更が可能である。
まず、本実施形態に係る可変分光素子1においては、分光波長帯域の全域において、図2に示される反射率特性を有する場合について説明したが、これに代えて、図6に示されるように、分光情報を取得する波長帯域Xのみにおいて、上記式(1)の反射率特性を有することとしてもよい。このようにすることで、反射膜2a,2bの設計および製造に関する制約条件を軽減することができ、設計および製造を容易にすることができるという利点がある。
【0039】
また、これに代えて、図7に示されるように、式(1)の反射率特性に近似する1次関数からなる反射率特性を有する反射膜2a,2bを採用してもよい。この場合の1次関数としては、0より大きい正の比例係数を有し、波長に応じて単調増加するものが採用される。このようにすることで、透過帯域の波長に依存した透過帯域幅の変化を抑制することができる。
また、本実施形態においては、透過帯域幅を表す量として半値全幅FWHMを用いたが、それ以外の量を指標とすることとしてもよい。
【0040】
また、本実施形態に係る可変分光素子1においては、2枚の光学部材3a,3bの間隔寸法を圧電素子からなるアクチュエータ4により変化させるものを例示したが、これに代えて、他のアクチュエータにより間隔寸法を変化させるものでもよい。また、光学部材3a,3b間の隙間に充填される媒質(例えば、液体や気体)の屈折率を変化させることにより、間隔を維持したまま光路長を変化させることとしてもよい。
【0041】
また、内視鏡システム10としては、軟性鏡、硬性鏡のいずれに適用することとしてもよい。また、内視鏡ではなく、生体内部観察用の対物レンズ等に適用することとしてもよい。本実施形態によれば、波長帯によらず、透過帯域幅を一定にすることを、例えば、複数の光学フィルタの光路への挿脱という方法を用いる必要もなく、1個の可変分光素子で実現できるので、径方向の寸法に制約のある内視鏡などの生体内部観察系に特に好適である。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システム10′について図8〜図13を参照して以下に説明する。
なお、本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る内視鏡システム10と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る内視鏡システム10′においては、光源ユニット13′が、照明光用光源17の他に励起光用光源25を備えている。
照明光用光源17は、図示しないキセノンランプおよびバンドパスフィルタを組み合わせたもので、バンドパスフィルタの50%透過域は、430〜460nmである。
また、励起光用光源25は、例えば、ピーク波長660±5nmの励起光を出射する半導体レーザである。この波長の励起光は、Cy5.5、Cy7(Amersham社製)やALEXAFLUOR700(Molecular Probes社製)等の蛍光薬剤を励起することができる。
【0044】
本実施形態の説明においては、このうち、Cy5.5(ピーク波長694nm、蛍光波長領域670〜710nm)と、Cy7(ピーク波長767nm、蛍光波長領域760〜800nm)の2種類の蛍光薬剤を用いる。
前記光源制御回路18は、後述するタイミングチャートに従う所定のタイミングで、照明光用光源17と励起光用光源25とを交互に点灯および消灯させるようになっている。
【0045】
前記撮像ユニット12′は、図9に示されるように、観察対象Aから入射されてくる励起光を遮断する励起光カットフィルタ26をさらに備えている。
励起光カットフィルタ26は、例えば、波長帯域420〜640nmで透過率80%以上、波長帯域650〜670nmでOD値4以上(=透過率1×10−4以下)、波長帯域690〜750nmで透過率80%以上の透過率特性を有している。
【0046】
可変分光素子1は、図10および図12に示されるように、固定透過帯域および可変透過帯域を有している。固定透過帯域は、可変分光素子1の状態によらず、常に光を透過する帯域であり、例えば、波長420〜540nmの範囲に配置され、平均透過率60%以上に設計されている。また、可変透過帯域は、可変分光素子1の状態に応じて透過率特性を変化させる帯域である。このような可変分光素子1を構成するために、反射膜2a,2bは、図11に示すように、固定透過帯域において反射率が40%以下に設定され、可変透過帯域において第1の実施形態において説明した式(1)に従う反射率特性を有している。
【0047】
本実施形態において、可変分光素子1は、蛍光薬剤が励起光により励起されることによって発生する蛍光(薬剤蛍光)の波長を含む波長帯域(例えば、680〜710nmおよび760〜790nm)に可変透過帯域を備えている。そして、可変分光素子1は、制御ユニット14からの制御信号に応じて、可変透過帯域を波長帯域680〜710nmに設定する第1の状態と可変透過帯域を波長帯域760〜790nmに設定する第2の状態の2つの状態に制御されるようになっている。
【0048】
撮像素子制御回路21および可変分光素子制御回路22は前記光源制御回路18に接続され、光源制御回路18による照明光用光源17および励起光用光源25の切替に同期して可変分光素子1および撮像素子20を駆動制御するようになっている。
具体的には、図13のタイミングチャートに示されるように、光源制御回路18の作動により、励起光用光源25から励起光が発せられるときには、可変分光素子制御回路22が可変分光素子1を第1の状態として、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第1のフレームメモリ23aに出力させるようになっている。
【0049】
また、励起光用光源25からの励起光が発せられてから所定時間経過後には、可変分光素子制御回路22の作動により、可変分光素子1が第2の状態とされ、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第2のフレームメモリ23bに出力させるようになっている。
さらに、光源制御回路18の作動により、照明光用光源17から照明光が発せられるときには、可変分光素子制御回路22が可変分光素子1を第2の状態に維持して、撮像素子制御回路21が撮像素子20から出力される画像情報を第3のフレームメモリ23cに出力させるようになっている。
【0050】
また、前記画像処理回路24は、例えば、励起光の照射により得られるCy5.5の蛍光画像情報を第1のフレームメモリ23aから受け取って表示ユニット15の第1のチャネルに出力し、Cy7の蛍光画像情報を第2のフレームメモリ23bから受け取って表示ユニット15の第2のチャネルに出力し、照明光の照射により得られる反射光画像情報を第3のフレームメモリ23cから受け取って表示ユニット15の第3のチャネルに出力するようになっている。
【0051】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システム10′の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム10′を用いて、生体の体腔内の撮影対象Aを撮像するには、蛍光薬剤を体内に注入するとともに、挿入部11を体腔内に挿入し、その先端11aを体腔内の撮影対象Aに対向させる。この状態で、光源ユニット13′および制御ユニット14を作動させ、光源制御回路18の作動により、照明光用光源17および励起光用光源25を交互に作動させて照明光および励起光をそれぞれ発生させる。
【0052】
光源ユニット13′において発生した励起光および照明光は、それぞれライトガイド16を介して挿入部11の先端11aまで伝播され、挿入部11の先端11aから撮影対象Aに向けて照射される。
励起光が撮影対象Aに照射された場合には、撮影対象Aに浸透している蛍光薬剤が励起されて蛍光が発せられる。撮影対象Aから発せられた蛍光は、励起光カットフィルタ26を透過し、撮像ユニット12′の撮像光学系19のレンズ19a,19bにより集光されて可変分光素子1に入射される。
【0053】
可変分光素子1は、可変分光素子制御回路22の作動により励起光用光源25の作動に同期して第1の状態に切り替えられているので、Cy5.5の蛍光に対する透過率が増大させられており、入射された蛍光を透過させることができる。この場合に、撮影対象Aに照射された励起光の一部が、撮影対象Aにおいて反射され、蛍光とともに撮像ユニット12′に入射されるが、撮像ユニット12′には励起光カットフィルタ26が設けられているので、励起光は遮断され、撮像素子20に入射されることが阻止される。
【0054】
そして、可変分光素子1を透過した蛍光はレンズ19cにより集光されて撮像素子20に入射され、蛍光画像情報が取得される。取得された蛍光画像情報は、第1のフレームメモリ23aに記憶され、画像処理回路24によって、表示ユニット15の第1のチャネルに出力されて表示ユニット15により表示される。
【0055】
次に、可変分光素子1は、可変分光素子制御回路22の作動により励起光用光源25の作動から所定時間経過後に第2の状態に切り替えられるので、Cy7の蛍光に対する透過率が増大させられ、入射された蛍光を透過させることができる。そして、可変分光素子1を透過した蛍光は撮像素子20に入射され、蛍光画像情報が取得される。取得された蛍光画像情報は、第2のフレームメモリ23bに記憶され、画像処理回路24によって、表示ユニット15の第2のチャネルに出力されて表示ユニット15により表示される。
【0056】
一方、照明光が撮影対象Aに照射された場合には、撮影対象Aの表面において照明光が反射され、励起光カットフィルタ26および撮像光学系19のレンズ19a,19bを透過し、可変分光素子1に入射される。照明光の反射光の波長帯域は、可変分光素子1の固定透過帯域に位置しているので、可変分光素子1に入射された反射光は全て可変分光素子1を透過させられる。
【0057】
そして、可変分光素子1を透過した反射光は、レンズ19cにより集光されて撮像素子20に入射され、反射光画像情報が取得される。取得された反射光画像情報は、第3のフレームメモリ23cに記憶され、画像処理回路24によって、表示ユニット15の第3のチャネルに出力されて表示ユニット15により表示される。
この場合に、励起光用光源25がオフにされているので、波長660nmの励起光による蛍光は発生していない。照明光用光源17の波長域は、上記蛍光薬剤に対しては励起効率が極めて低いので、実質的に発生しないと考えてよい。これにより、反射光のみが撮像素子20により撮影されることになる。
【0058】
このように、本実施形態に係る内視鏡システム10′によれば、2つの蛍光画像と反射光画像とを合成した画像を使用者に提供することができる。
また、本実施形態に係る内視鏡システム10′によれば、波長帯域の異なる2つの蛍光を透過する透過帯域幅が同一であるため、2つの蛍光画像を定量的に比較・演算する場合に、容易に実行することができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、蛍光薬剤としてCy5.5およびCy7を例示したが、これに限定されるものではなく、他の蛍光薬剤を使用することもできる。また、複数の蛍光薬剤を1波長の励起光により励起することとしたが、複数の励起光により個別に励起することとしてもよい。また、可視の反射光画像と薬剤蛍光画像との組合せではなく、自家蛍光画像と薬剤蛍光画像の組合せに適用することとしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、空気間隙をあけて対向する2つの光学部材3a,3bの対向面に反射膜2a,2bを設けたが、これに代えて、単一の光学部材の両面に反射膜2a,2bを設けることとしてもよい。これは2つのコート層の間隙に、空気ではなく光学部材を配置したことに相当するが、この場合には光学部材の屈折率を用いて反射膜2a,2bの反射率特性を演算すればよい。また、光学部材3a,3b間の間隙に、空気以外の気体や液体等の媒質を充填する場合、それらの媒質の屈折率を用いて反射膜2a,2bの反射率特性を演算すればよい。
【0061】
また、上記第1,第2の実施形態においては、可変分光素子1として、2つの光学部材3a,3b間の間隔寸法を圧電素子からなるアクチュエータ4により変更する方式のものを例示したが、これに限定されるものではなく、図14に示されるように、間隔をあけて対向する2つの光学部材3a′,3b′の少なくとも一方(例えば、光学部材3a′)が、対向面に沿う方向に1段以上のステップを有する階段状に形成されているものを採用してもよい。対向面には第1の実施形態と同様の反射膜2a,2bが施されている。この可変分光素子1′は、光軸に直交する方向に移動可能に設けられている。
【0062】
したがって、光軸に対して直交する方向に可変分光素子1′を移動させることにより、光の透過する部位における間隔寸法を段階的に変化させることができ、それによって、光の透過帯域を第1の実施形態と同様に変化させることができる。第1の実施形態においては、容量センサ電極5a,5bを設けてフィードバック制御することとしたが、この例では、可変分光素子1′自体の位置検出を図示しない位置検出装置により行ってフィードバック制御することとすればよい。
【0063】
このように構成することにより、対向する反射膜2a,2bの間隔を固定できる。したがって、圧電素子からなるアクチュエータ4の制御により間隔を調節する場合と比較すると、簡易かつ迅速に精度よく透過帯域を切り替えることができる。
【0064】
また、階段状の光学部材3a′を有する可変分光素子1′に代えて、図15に示されるように、反射膜2a,2bが設けられる2つの面が非平行なくさび状の光学部材3″を有する可変分光素子1″を採用することとしてもよい。このようにすることで、階段状の光学部材3a′の場合と同様に、光軸に直交する方向に可変分光素子1″を移動させることにより、連続的に反射膜2a,2b間の間隔寸法を変化させ、透過帯域を連続的に変化させることができる。
【0065】
また、固定された光軸に直交する方向に可変分光素子1′,1″を移動させることに代えて、可変分光素子1′,1″を固定し、図示しない任意の走査手段を用いて、可変分光素子1′,1″への光の入射位置を変化させることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る可変分光素子を示す縦断面図である。
【図2】図1の可変分光素子の反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムの全体構成を示すブロック図である。
【図4】図3の内視鏡システムの撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【図5】図3の内視鏡システムを構成する可変分光素子の透過率特性を示すグラフである。
【図6】図1の可変分光素子の変形例における反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図7】図1の可変分光素子の他の変形例における反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムの全体構成を示すブロック図である。
【図9】図8の内視鏡システムの撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【図10】図8の内視鏡システムを構成する可変分光素子の透過率特性を示すグラフである。
【図11】図10の可変分光素子の反射膜の反射率特性を示すグラフである。
【図12】図8の内視鏡システムを構成する各光学部品の透過率特性、照明光および励起光の波長特性を示す図である。
【図13】図8の内視鏡システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【図14】図10の変形例に係る可変分光素子を有する撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【図15】図10の他の変形例に係る可変分光素子を有する撮像ユニット内部の構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
A 撮影対象
1,1′,1″ 可変分光素子
2a,2b 反射膜(コート層)
3a,3b;3a′,3b′ 光学部材
10,10′ 内視鏡システム(分光装置)
20 撮像素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて対向する複数のコート層を備え、該コート層間の光路長を調整することにより該コート層を通過する光の透過帯域を変化させる可変分光素子であって、
透過帯域を変化させる分光波長帯域内において、任意の2つの透過帯域間の中心波長の変化の割合よりも、これら透過帯域間の透過帯域幅の変化の割合が小さくなるように前記コート層が構成されている可変分光素子。
【請求項2】
前記分光波長帯域内において、透過帯域の幅が波長によらず一定である請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項3】
前記透過帯域の幅が半値全幅である請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項4】
前記コート層の特性が均一である請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項5】
前記コート層の反射率が、波長の増加に従って単調増加する請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項6】
前記コート層が、間隔をあけて配置される2つの光学部材の対向面にそれぞれ設けられている請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項7】
前記コート層が、1つの光学部材の対向面にそれぞれ設けられている請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項8】
前記対向面間の光路長が、該対向面に沿う方向に変化する請求項6または請求項7に記載の可変分光素子。
【請求項9】
前記対向面の内の少なくとも一方が、1段以上の階段状に形成されている請求項8に記載の可変分光素子。
【請求項10】
前記対向面間の間隔が、該対向面に沿う方向に漸次変化する請求項8に記載の可変分光素子。
【請求項11】
前記コート層の波長に対する反射率特性が、以下の関係式で表される請求項1から請求項10のいずれかに記載の可変分光素子。
【数1】
【請求項12】
前記コート層が誘電体材料からなる請求項11に記載の可変分光素子。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の可変分光素子を備える分光装置。
【請求項14】
前記可変分光素子を通過した光を撮影する2次元の撮像素子を備える請求項13に記載の分光装置。
【請求項15】
撮影対象が生体である請求項14に記載の分光装置。
【請求項16】
撮影対象が体腔内の一部である請求項15に記載の分光装置。
【請求項17】
前記可変分光素子のコート層間の間隔が、前記分光波長帯域において透過帯域が1つだけ存在する間隔である請求項13に記載の分光装置。
【請求項18】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の可変分光素子を備える分光内視鏡システム。
【請求項1】
間隔をあけて対向する複数のコート層を備え、該コート層間の光路長を調整することにより該コート層を通過する光の透過帯域を変化させる可変分光素子であって、
透過帯域を変化させる分光波長帯域内において、任意の2つの透過帯域間の中心波長の変化の割合よりも、これら透過帯域間の透過帯域幅の変化の割合が小さくなるように前記コート層が構成されている可変分光素子。
【請求項2】
前記分光波長帯域内において、透過帯域の幅が波長によらず一定である請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項3】
前記透過帯域の幅が半値全幅である請求項2に記載の可変分光素子。
【請求項4】
前記コート層の特性が均一である請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項5】
前記コート層の反射率が、波長の増加に従って単調増加する請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項6】
前記コート層が、間隔をあけて配置される2つの光学部材の対向面にそれぞれ設けられている請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項7】
前記コート層が、1つの光学部材の対向面にそれぞれ設けられている請求項1に記載の可変分光素子。
【請求項8】
前記対向面間の光路長が、該対向面に沿う方向に変化する請求項6または請求項7に記載の可変分光素子。
【請求項9】
前記対向面の内の少なくとも一方が、1段以上の階段状に形成されている請求項8に記載の可変分光素子。
【請求項10】
前記対向面間の間隔が、該対向面に沿う方向に漸次変化する請求項8に記載の可変分光素子。
【請求項11】
前記コート層の波長に対する反射率特性が、以下の関係式で表される請求項1から請求項10のいずれかに記載の可変分光素子。
【数1】
【請求項12】
前記コート層が誘電体材料からなる請求項11に記載の可変分光素子。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の可変分光素子を備える分光装置。
【請求項14】
前記可変分光素子を通過した光を撮影する2次元の撮像素子を備える請求項13に記載の分光装置。
【請求項15】
撮影対象が生体である請求項14に記載の分光装置。
【請求項16】
撮影対象が体腔内の一部である請求項15に記載の分光装置。
【請求項17】
前記可変分光素子のコート層間の間隔が、前記分光波長帯域において透過帯域が1つだけ存在する間隔である請求項13に記載の分光装置。
【請求項18】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の可変分光素子を備える分光内視鏡システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−316486(P2007−316486A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148041(P2006−148041)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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