説明

可変容量形ポンプと、該可変容量形ポンプを用いた潤滑システム及びオイルジェット

【課題】オイルの吐出初期におけるエネルギー消費を抑制することのできる可変容量形ポンプを提供する。
【解決手段】吸入ポート7から複数のポンプ室13に導入されたオイルをポンプ室の容積変化を得て吐出ポート8から吐出するポンプ構成体を備え、制御油室16内に供給された吐出圧が第1吐出圧Pfになるとカムリングを一方向へ所定量だけ揺動させ、第1吐出圧よりも高圧の第2吐出圧Psとなるとカムリングをさらに一方向に移動させることによってポンプ吐出圧を可変にする。第1吐出圧を、オイルジェット30のバルブスプリング50を圧縮変形させてボール弁体46を開弁させる圧力よりも低い圧力に設定して、吐出圧が低い時のエネルギー消費を抑制した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の内燃機関に用いられる可変容量形ポンプと、該可変容量形ポンプを用いた潤滑システム及びオイルジェットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可変容量形ポンプとしては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この従来の可変容量形ポンプは、カムリングに常時付勢力を作用させる第1のスプリングと、前記カムリングが所定以上移動したときに前記第1スプリングの付勢力と反対方向へ付勢力を付与する第2のスプリングとを備え、該両スプリングの相対的な付勢力によって前記カムリングの偏心状態を2段階に変化させて、吐出流量特性を2段階に変化させるようになっている。
【0004】
また、この可変容量形ポンプは、前記第1スプリングの付勢力に抗して前記カムリングが移動する前の第1の吐出圧によってバルブタイミング制御装置のロック状態を解除するようになっている。
【特許文献1】特開2009−97424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の可変容量形ポンプを、内燃機関のピストンを冷却するためのオイルジェットにオイル供給するものにも適用した場合に、可変容量形ポンプの前記第1吐出圧の段階、つまり前記カムリングが移動する前のオイルをオイルジェットに供給してしまうと、前記カムリングを移動させるための吐出圧が得られるまでに不要なエネルギーを消費してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、オイルの吐出初期におけるエネルギー消費を抑制することのできる可変容量形ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の可変容量形ポンプは、内燃機関によって回転駆動されることによって、吸入部から複数の作動室に流入したオイルを、前記作動室の容積変化を得て吐出部から吐出するポンプ構成体と、一方向へ移動することにより前記吐出部から吐出されるオイルの流量を減少させる可動部材と、前記オイルの吐出圧が第1吐出圧になると前記可動部材を一方向へ所定量だけ移動させ、前記第1吐出圧よりも高圧の第2吐出圧となると前記可動部材をさらに一方向に移動させる制御手段と、を備え、前記第1吐出圧は、前記オイルジェットがオイルを噴射し始める圧力よりも低い圧力に設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オイルの吐出初期におけるエネルギー消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態における可変容量形ポンプの分解斜視図である。
【図2】本実施形態における可変容量形ポンプのカバー部材を取り外した正面図である。
【図3】図2のA−A断面である。
【図4】本実施形態に供されるポンプハウジングを示す正面図である。
【図5】本実施形態の作用説明図である。
【図6】本実施形態の作用説明図である。
【図7】本実施形態における第1、第2コイルばねのばね変位とばねセット荷重との関係を示す特性図である。
【図8】従来における吐出油圧と機関回転数との関係を示す特性図である。
【図9】本実施形態に供されるオイルジェットが適用された内燃機関の縦断面図である。
【図10】同オイルジェットの斜視図である。
【図11】Aはオイルジェットの閉弁状態を示す縦断面図、Bは同オイルジェットの開弁状態を示す縦断面図である。
【図12】本実施形態に供されるバルブタイミング制御装置を断面して示す全体図である。
【図13】同バルブタイミング制御装置におけるベーン部材の最遅角側への回転位置を示す断面図である。
【図14】同バルブタイミング制御装置におけるベーン部材の最進角側への回転位置を示す断面図である。
【図15】同バルブタイミング制御装置におけるロック機構を示す断面図である。
【図16】機関停止時における各機構の作用を示し、Aはベーン部材が最遅角側に回転制御された状態を示す作用説明図、Bはロックピストンがロック穴に係合した状態を示す作用説明図、Cはスプール弁体が左側位置に保持された状態を示す作用説明図である。
【図17】イグニッションキーがオンされた際における各機構の作用を示し、Aはベーン部材が最遅角側に回転制御された状態を示す作用説明図、Bはロックピストンがロック穴から抜け出した状態を示す作用説明図、Cはスプール弁体が左側位置に保持された状態を示す作用説明図である。
【図18】機関が中回転域に移行した際における各機構の作用を示し、Aはベーン部材が進角側に回転制御された状態を示す作用説明図、Bはロックピストンがロック穴から抜け出した状態を示す作用説明図、Cはスプール弁体が右側位置に保持された状態を示す作用説明図である。
【図19】機関のアイドリング運転時における各機構の作用を示し、Aはベーン部材が遅角側に回転制御された状態を示す作用説明図、Bはロックピストンがロック穴から抜け出している状態を示す作用説明図、Cはスプール弁体が左側位置に保持された状態を示す作用説明図である。
【図20】第2実施形態の可変容量形ポンプのカバー部材を取り外した状態を示す正面図である。
【図21】第3実施形態に係る可変容量形ポンプの構成を示す分解斜視図である。
【図22】同可変容量形ポンプにつきカバー部材を外した状態を示す正面図であって、カムリングの偏心量が最大の状態を表したものである。
【図23】同可変容量形ポンプにつきカバー部材を外した状態を示す正面図であって、カムリングの偏心量が最小の状態を表したものである。
【図24】同可変容量形ポンプの縦断面図である。
【図25】本実施形態に供されるハウジングの内部を示す正面図である。
【図26】本実施形態に供されるソレノイドバルブの非通電時の状態を示す縦断面図である。
【図27】本実施形態に供されるソレノイドバルブの通電時の状態を示す縦断面図である。
【図28】本実施形態に係る可変容量形ポンプの油圧回路図である。
【図29】本実施形態に係る可変容量形ポンプについての機関の回転数と油圧との関係を示すグラフである。
【図30】変形されたソレノイドバルブの非通電時の状態を示す縦断面図である。
【図31】同変形例に係るソレノイドバルブの通電時の状態を示す縦断面図である。
【図32】本発明の第4実施形態に係る可変容量形ポンプの構成を示す分解斜視図である。
【図33】同実施形態における可変容量形ポンプのカバー部材を外した状態を示す正面図であって、カムリングの偏心量が最大の状態を表したものである。
【図34】同実施形態に係る可変容量形ポンプのカバー部材を外した状態を示す正面図であって、カムリングの偏心量が最小の状態を表したものである。
【図35】同実施形態のカバー部材の正面図である。
【図36】同実施形態に係るカバー部材の背面図である。
【図37】本発明の第5実施形態に係る可変容量形ポンプに供される油圧方向切換弁の非作動状態を示す縦断面図である。
【図38】同実施形態に係る油圧方向切換弁の作動状態を示す縦断面図である。
【図39】同実施形態に係る可変容量形ポンプの油圧回路図である。
【図40】同実施形態に係る可変容量形ポンプにおける機関の回転数と油圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る可変容量形ポンプの実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0011】
この各実施形態の可変容量形ポンプ01は、自動車用内燃機関の各摺動部に潤滑油を供給すると共に、オイルジェットを介してピストンに潤滑油を供給し、さらには、バルブタイミング制御装置及び該バルブタイミング制御装置のロック機構にも供給するようになっている。
【0012】
〔第1実施形態〕
可変容量形ポンプ01は、図1〜図3に示すように、内燃機関のシリンダブロックの前端部に設けられ、一端開口がカバー部材2によって閉塞された有底円筒状のポンプハウジング1と、該ポンプハウジング1の内部中心部を貫通して、機関のクランク軸によって回転駆動される駆動軸3と、前記ポンプハウジング1の内部に回転自在に収容され、中心部が前記駆動軸3に結合されたロータ4と、該ロータ4の外周側に揺動自在に配置された可動部材であるカムリング5と、前記ロータ4の内周部側の両側面に摺動自在に配置された小径な一対のベーンリング6、6と、を備えている。
【0013】
前記ポンプハウジング1は、アルミ合金材によって一体に形成され、図4にも示すように、凹状の底面1aはカムリング5の軸方向の一側面が摺動することから、平面度や表面粗さなどの精度が高く加工され、摺動範囲が機械加工によって形成されている。
【0014】
また、ポンプハウジング1の内周面の所定位置には、前記カムリング5の枢支点となるピボットピン9の一端部が挿入される孔と断面半円形状のピボット溝1cが形成されていると共に、ピボットピン9の軸心とポンプハウジング1の中心(駆動軸3の軸心)を結んだ直線M(以下「カムリング基準線」という。)より上方位置の図2中、左側の内周に、円弧凹状に形成されたシール面1sが形成されている。
【0015】
前記シール面1sは、後述する制御油室16の図中上端側の一端を、前記カムリング5に設けられた後述のシール部材14が摺接しつつ共同してシールするようになっている。このシール面1sは、図4に示すように、所定の半径によって形成される円弧面状に形成されている。
【0016】
また、ポンプハウジング1の底面1aには、図4に示すように、駆動軸3の左側に吸入ポート7が形成されていると共に、駆動軸3の右半分に吐出ポート8がそれぞれほぼ対向して形成されている。
【0017】
前記吸入ポート7は、図4に示すように、図外のオイルパン内のオイルを吸入する吸入口7aに連通している一方、吐出ポート8は、吐出口8aから図外のオイルメインギャラリーを介して機関の各摺動部および可変動弁装置である例えばバルブタイミング制御装置に連通している。
【0018】
前記吸入ポート7は、円弧状の内側ポート部7bとほぼ矩形状の外側ポート部7cとから構成されている一方、吐出ポート8は、円弧状の内側ポート部8bと前記吐出孔8aに直接連通する外側ポート部8cとから構成されている。
【0019】
さらに、前記底面1aのほぼ中央に形成された駆動軸3の軸受孔1fには、前記吐出ポート8から吐出されたオイルが小幅なほぼL字形に形成された給油溝10の先端凹溝10aを介して供給されるようになっていると共に、前記給油溝10の開口から前記ロータ4の両側面や後述するベーン11の側面にオイルが供給されて潤滑性が確保されるようになっている。
【0020】
前記カバー部材2は、図1、図3に示すように、肉厚プレート状に形成されて、ほぼ平坦状に形成された内側面2aに前記ポンプハウジング1の底面1aと同じく吸入ポート7や吐出ポート8とそれぞれ連通する吸入ポート7’や吐出ポート8’が形成されていると共に、内側面2aの端部に前記ピボットピン9の他端部が挿通されるピン穴2bが貫通形成されている。また、カバー部材2のほぼ中央位置には、前記駆動軸3が回転自在に挿通支持される軸受孔2cが貫通形成されている。
【0021】
そして、このカバー部材2は、図1に示す複数の位置決めピンIPを介してポンプハウジング1に円周方向の位置決めされつつ複数のボルトBによってポンプハウジング1に取り付けられている。
【0022】
前記駆動軸3は、クランク軸から伝達された回転力によってロータ4を図2中、時計方向に回転するようになっており、該駆動軸3を中心とした図中左側の半分が吸入領域となり、右側の半分が吐出領域となる。
【0023】
前記ロータ4は、図1及び図2示すように、内部中心側から外方へ放射状に形成された7つのスロット4a内にそれぞれ7枚のベーン11が進退自在に摺動保持されていると共に、前記各スロット4aの基端部に前記吐出ポート8に吐出された吐出油圧を導入する断面ほぼ円形状の背圧室12がそれぞれ形成されている。また、ロータ4の軸方向両端部には、前記両ベーンリング6,6を内周側で偏心回転自在に保持する円環状の凹溝4b、4bが形成されている
前記各ベーン11は、図2に示すように、内側の各基端縁が前記一対のベーンリング6、6の外周面に摺接している共に、各先端縁が前記カムリング5の内周面5aに摺接自在になっている。
【0024】
また、各ベーン11間とカムリング5の内周面5a及びロータ4の外周面、ポンプハウジング1の底面1a、カバー部材2の内側面2aとの間に複数の作動室である扇状のポンプ室13が液密的に隔成されている。前記各ベーンリング6は、前記各ベーン11を放射外方へ押し出すようになっている。
【0025】
前記カムリング5は、加工容易な焼結金属によってほぼ円筒状に一体に形成され、図2中、外周面の前記カムリング基準線X上の右外側位置にピボット凸部5bが形成されており、このピボット凸部5bの中央外側面には、前記ピボット溝1cと共同してピボットピン9を嵌挿させて偏心揺動支点とする断面半円状の枢支溝5kが軸方向に沿って形成されている。
【0026】
また、カムリング5は、前記カムリング基準線Xより上方向の位置、つまり図2中の左上方位置に、ほぼ逆U字形状のボス部5cが一体に形成され、このボス部5cの外面に前記シール面1sと対峙する円弧凸状の円弧面5dが形成されていると共に、この円弧面5dに横断面矩形状の保持溝5eが形成されている。この保持溝5e内には、前記制御油室16の一端側をシールする前記シール部材14が嵌着固定されている。また、カムリング5の前記ピボット凸部5bの枢支溝5kとピボットピン9とによって、前記制御油室16の他端側をシールするようになっている。なお、前記円弧面5dは、その曲率半径が前記シール面1sと一定の微小隙間を形成する程度でほぼ同等に設定されている。
【0027】
前記シール部材14は、例えば低摩耗性の合成樹脂材によってカムリング5の軸方向に沿って細長く形成されていると共に、前記保持溝5eの底部側に固定されたゴム製の弾性部材15の弾性力によってシール面1sに押し付けられるようになっている。これにより、後述する制御油室16の常時良好な液密性を確保するようになっている。
【0028】
また、前記カムリング5は、図1及び図2に示すように、吸入ポート7側の軸方向両端面に、吸入領域でオイルを各ポンプ室13に流入させる一対の吸入側切欠溝18a、18bが形成されている共に、吐出ポート8側の軸方向両端面に、該吐出領域で各ポンプ室13内のオイルを吐出ポート8に流入させる吐出側切欠溝18c、18dが周方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0029】
前記制御油室16は、前記カムリング5の外周面と前記ピボット凸部5bとシール部材14との間にほぼ円弧状に隔成されていると共に、吐出ポート8から導入された吐出油圧がカムリング外周面の受圧面5fに作用してカムリング5を、ピボットピン9を支点として図2の反時計方向へ揺動させることによってロ一タ4に対する偏心量を減少させる方向へ移動させるようになっている。
【0030】
また、前記カムリング5は、筒状本体の外周面の前記ピボット凸部5bと反対側の位置に径方向外側に突出した延出部であるアーム17が一体に設けられている。このアーム17は、図1及び図2に示すように、前記カムリング5の筒状本体の外周面から径方向に延設された矩形板状のアーム本体17aと、該アーム本体17aの先端部側の上面に一体に形成された凸部17bと、を有している。
【0031】
前記アーム本体17aは、前記凸部17bと反対側の下面に円弧曲面状の突起17cが一体に設けられている一方、前記凸部17bは、アーム本体17aに対してほぼ直角方向に延設されていると共に、その上面17dが曲率半径の小さな曲面状に形成されている。
【0032】
また、前記ポンプハウジング1の前記ピボット溝1cと反対側の位置、つまり前記アーム17の上下位置には、図2中、下側の第1ばね収容室19と上側の第2ばね収容室21が同軸上に形成されている。
【0033】
第1ばね収容室19は、ポンプハウジング1の軸方向に沿って延びたほぼ平面矩形状に形成され、一方、第2ばね収容室21は、その長さが第1ばね収容室19よりも短く設定されていると共に、第1ばね収容室19と同じくポンプハウジング1の軸方向に沿って延びたほぼ平面矩形状に形成されている。
【0034】
また、第2ばね収容室21は、図5にも示すように、その下端開口部21aの巾方向から対向して内端縁に互いに内方へ延出した細長い矩形板状の一対の係止部23、23が一体に設けられている。この両係止部23、23間の開口部21aを介して前記アーム17の凸部17bが前記ばね収容室21内に対して進入あるいは後退可能に形成されている。前記両係止部23、23は、後述する第2コイルばね22の最大伸張変形を規制するようになっている。
【0035】
前記第1ばね収容室19の内部には、前記アーム17を介して前記カムリング5を図1中の時計方向へ付勢する、つまりロータ4の回転中心と前記カムリング5の内周面の中心との偏心量が大きくなる方向へ前記カムリング5を付勢する第1コイルばね20が収容配置されている。
【0036】
前記第1コイルばね20は、所定のばね荷重W3が付与されていて、下端縁が第1ばね収容室19の底面19aに弾接していると共に、上端縁が前記アーム本体17aの下面に有する円弧状突起17cに常時当接しつつ前記カムリング5における前記ロータ4の回転中心と前記カムリング5の内周面の中心との偏心量が大きくなる方向へ付勢している。つまり、カムリング5を、図2中の時計方向へ付勢している。
【0037】
前記第2ばね収容室21には、前記アーム17を介して前記カムリング5を、図2中の反時計方向へ付勢する第2コイルばね22が収容配置されている。
【0038】
この第2コイルばね22は、上端縁がばね収容室21の上壁面21bに弾接していると共に、下端縁は図2に示すカムリング5の時計方向へ最大偏心移動位置から前記両係止部23、23に係止するまでの間に前記アーム17の凸部17bに弾接してカムリング5に図2中の反時計方向へ付勢力を付与するようになっている。
【0039】
すなわち、第2コイルばね22にも、第1コイルばね20と対向する所定のばねセット荷重が付与されているが、このばねセット荷重は前記第1コイルばね20に与えられているばねセット荷重W3よりも小さく設定されており、第1コイルばね20と第2コイルばね22の各々のセット荷重の差の荷重W1によってカムリング5は初期位置(最大偏心位置)にセットされる。
【0040】
具体的には、前記第1コイルばね20と第2コイルばね22によって、ばね荷重W1が付与された状態で常にアーム17を介してカムリング5を上方へ偏心させる方向、つまりポンプ室13の容積が大きくなる方向に付勢している。前記ばね荷重W1は、油圧がバルブタイミング制御装置の必要油圧P1以上のときにカムリング5が動き出す荷重である。
【0041】
一方、第2コイルばね22は、前記カムリング5における、前記ロータ4の回転中心と前記カムリング5の内周面の中心との偏心量が所定以上となっているときは、前記アーム17に当接しているが、図5に示すように、前記ロータ4の回転中心と前記カムリング5の内周面5aの中心との偏心量が所定未満(小さく)となっているときは、前記各係止部23、23により圧縮された状態を保ったまま係止されて前記アーム17とほぼ非接触となる。また、第2コイルばね22が各係止部23、23に係止してアーム17へのばね荷重が零になるカムリング5の揺動量における前記第1コイルばね20のばね荷重W2とは、油圧がピストンオイルジェットなどの必要油圧P2か、もしくはクランク軸の最高回転時に必要油圧P3のときにカムリング5が動き出す荷重である。
【0042】
また、前記カムリング5は、図2に示すように、前記第1コイルばね20のばね力で時計方向へ回動すると、前記アーム本体17aの筒状本体との付け根部上面17dが一方の係止部23の下面に当接してそれ以上の時計方向に回動が規制されるようになっている。つまり、第1コイルばね20のばね力により初期セット位置(最大偏心位置)で揺動位置を規制されるようになっている。
【0043】
以下、本実施形態における可変容量形ポンプ01の基本的な作動について説明する。これに先だって、通常の可変容量形ポンプによる制御油圧と機関摺動部やバルブタイミング制御装置及びピストンの冷却に必要なオイルジェットの必要油圧との関係を図8に基づいて説明する。
【0044】
内燃機関で必要な油圧は、燃費の向上や排気エミッション対策として後述するバルブタイミング制御装置を用いた場合には、この装置の作動源として前記可変容量形ポンプの油圧が用いられることから、かかる装置の作動応答性を向上させるために機関低回転の時点から作動油圧は図8の破線bに示す高い油圧P1が要求される。
【0045】
また、後述するオイルジェット30などを用いた場合は機関中回転の時点で高い油圧P2が要求され、最高回転での必要油圧は主としてクランク軸の軸受部の潤滑に必要な油圧P3で決定される。したがって、内燃機関全体に必要な油圧は破線b、cを結んだ破線全体の特性になる。
【0046】
ここで、内燃機関の中回転域要求油圧P2と高回転域の要求油圧P3は概ねP2<P3の関係であり、要求油圧P2とP3は近いことが多い。したがって図8の(エ)の域である中回転域から高回転域の間の油圧は回転が上昇しても油圧が上昇しないようにすることが望ましい。
【0047】
本実施形態では、図8の実線で示すように、まず、内燃機関の始動時からアイドリングを含む低回転域までは、ポンプ吐出圧はP1に達していないため、カムリング5のアーム17が第1コイルばね20と第2コイルばね22のばね荷重の差でカムリング5のアーム本体17aがハウジング1の一方の係止部23に当接して作動停止状態になっている(図2参照)。
【0048】
このとき、カムリング5の偏心量が最も大きくポンプ容量が最大となり、機関回転数の上昇に伴って吐出油圧が急激に立ち上がり、図8の実線上の(ア)に示す特性となる。
【0049】
続いて、さらなる機関回転数の上昇に伴いポンプ吐出油圧がさらに上昇しで図8に示すPfに達すると、制御油室16内の導入油圧が高くなって、カムリング5は、アーム17に作用する第1コイルばね20を庄縮変形させはじめて、ピボットピン9を支点として反時計方向へ偏心揺動する。前記Pfはカムリング5を作動させるカム作動圧である第1の吐出圧であり、バルブタイミング制御装置の要求油圧P1より十分に高く設定されている。
【0050】
これによって、ポンプ容量が減少するため、吐出油圧の上昇特性も図8の(イ)の領域に示すように小さくなる。そして、図5に示すように、第2コイルばね22が前記係止部23、23により圧縮された状態を保ったまま係止され、アーム凸部17bの上面17dへ第2コイルばね22の荷重が加わらない状態までカムリング5が反時計方向へ揺動する。
【0051】
この図5に示す状態では、この時点から第2コイルばね22の荷重がカムリング5に作用しなくなることから、吐出油圧がP2(制御油室16内の油圧P2)に達し第2コイルばね22のばね荷重W2に打ち勝つまでカムリング5は揺動できず保持された状態になる。したがって、機関の回転上昇とともに吐出油圧は、図8の(ウ)に示す立ち上がり特性となるが、カムリング5の偏心量が小さくなってポンプ容量が減少していることから、図8の前記(ア)に示すような急激な立ち上がり特性にはならない。
【0052】
さらに機関回転数が上昇して吐出油圧がPs(P2)以上になると、カムリング5は、図6に示すように、アーム17を介して第1コイルばね20のばね荷重W2のばね力に抗して該第1コイルばね20を圧縮変形させながら揺動する。かかるカムリング5の揺動に伴ってポンプ容量がさらに減少して吐出油圧の上昇は小さくなり、図8の(エ)に示す特性の状態を維持したまま最高回転数に達する。
【0053】
したがって、かかるポンプ高回転時における吐出油圧(実線)を要求油圧(破線)に十分に近付けることができることから、動力損失を効果的に抑制することができる。
【0054】
図7は各コイルばね20、22の変位、あるいはカムリング5の揺動角とばね荷重W1、W2との関係を示している。すなわち、内燃機関の始動から低回転までの初期状態では、第1コイルばね20のセット荷重W1のばね力が付与されているため、ばね荷重W1を越えるまでは変位できない。このばね荷重W1を越えると、第1コイルばね20は圧縮変位しその荷重を増させ、一方で第2コイルばね22は自由長へ近づきその荷重を減少させ、この結果、ばね荷重が増加する。この傾きがばね定数となる。
【0055】
前記カムリング5の図5に示す位置では、第1コイルばね20のばね荷重W2となり、不連続的に大きくなるが、吐出油圧がばね荷重W2を越えると、第1コイルばね20は圧縮変位すると共に荷重が増加するが、作用するコイルばね力が1本になるので、ばね定数が減少して傾きが変化している。
【0056】
以上のように、機関回転数が上昇して吐出油圧がP1に達したところでカムリング5が移動を開始しはじめて吐出油圧の上昇を抑制するが、カムリング5が図5に示す反時計方向へ所定の移動量に達したところで第2コイルばね22のばね力がなくなってばね定数が小さくなり、また、第1コイルばね20のばね荷重W2が非連続に大きくなることから、吐出油圧がP2に上昇した後に再びカムリング5の揺動が開始することになる(図6参照)。つまり、第1、第2コイルばね20、22の相対的なばね荷重が作用して、ばね特性が非線形状態になることから、カムリング5が特異な揺動変化となる。
【0057】
このように、両コイルばね20、22のばね力の非線形特性によって吐出油圧の特性が図8の(ア)〜(エ)に示すような特性となり、前記制御油圧(実線)を必要油圧(破線)に十分に近づけることが可能になる。この結果、不必要な油圧上昇による動力損失を十分に低減することができる。
【0058】
次に、本実施形態に供される前記オイルジェット30について説明する。
【0059】
すなわち、前記オイルジェット30は、図9に示すように、内燃機関31に設けられており、前記内燃機関31は、シリンダブロック32のクランクケースで隔成されたクランク室33の内部にクランクシャフト34が図外の軸受けによって回転自在に支持されている。また、クランクケースの上部に形成された円筒状のシリンダ壁37の内部には、前記クランクシャフト35とコンロッド35を介して連結されたピストン36が摺動自在に設けられている。
【0060】
前記シリンダ壁37の壁内には、冷却水が循環するウォータジャケット37aが形成されていると共に、前記クランクケースとシリンダ壁37との間の隔壁38の内部には、前記可変容量形ポンプ01から吐出されたオイル(潤滑油)を各機関の各摺動部などに供給するメインオイルギャラリー39が形成されている。
【0061】
前記隔壁38の下部内には、図11A、Bに示すように、前記メインオイルギャラリー39と連通する連通路38aが上下方向に沿って形成されていると共に、該連通路38aの下部には内周面に雌ねじ部38bが形成された取付孔が形成されている。
【0062】
そして、前記隔壁38の下部には、前記シリンダ壁37の内周面とピストン36との間などに冷却用及び潤滑用のオイルを噴射するオイルジェット30が取り付けられている。
【0063】
このオイルジェット30は、図10及び図11A,Bに示すように、アルミニウム合金材によって形成された円筒状の保持部材40と、該保持部材40の内部に有する挿通孔40aに下方から挿通された円筒形状のバルブボディ41と、前記保持部材40の外側部に一体に設けられた位置決め用の突起部42と、保持部材40の前記突起部42と反対側の外側部に設けられたノズル43と、から主として構成されている。
【0064】
前記保持部材40は、前記挿通孔40aとバルブボディ41の外周面との間に円環状の通路部44を形成していると共に、前記外側部に前記ノズル43の基端部43aが嵌合固定される嵌合溝40bが形成されている。
【0065】
前記バルブボディ41は、焼結合金などの鉄系金属によって形成され、上端部の外周面に前記雌ねじ部38bに螺合する雄ねじ部41aが形成されていると共に、上端部の内部軸方向に前記連通路38aに連通するオイル供給部であるオイル供給孔45が形成されている。また、該オイル供給孔45の下部にはボール弁体46を移動可能に保持するオイル導入孔47が連続して形成されている。前記オイル供給孔とオイル導入孔47との間の段差部には、ボール弁体46が着座する円環状の着座面45aが形成されている。
【0066】
また、バルブボディ41の下端部周壁には、前記オイル導入孔47と通路部44と連通する径方向孔48が直径方向に沿って複数形成されていると共に、下部外周にはフランジ部41bが一体に設けられている。このフランジ部41bは、バルブボディ41を前記雄ねじ部41aと雌ねじ孔38bを介して隔壁38にねじ込み固定した際に、保持部材40と共に前記ノズル43の基端部43aを隔壁38に一緒に押圧固定するようになっている。
【0067】
前記突起部42は、前記バルブボディ41を介して保持部材40を隔壁38に固定する際に、隔壁38に穿設された位置決め穴38cに嵌入して保持部材40の位置決めと回り止めを行うようになっている。
【0068】
前記ノズル43は、保持部材40側の基端部43aから傾斜状に立ち上がって先端部43bが前記シリンダ壁37内部の下部に位置し、内部軸方向には、一端部が前記通路部44に開口した細長い油孔43cが形成されていると共に、この先端に形成されたノズル部43dが前記ピストン36の下部に指向している。
【0069】
そして、前記ボール弁体46は、オイル導入孔47の下端部に圧入されたプラグ状のリテーナ49に弾持された付勢部材であるコイル状のバルブスプリング50の付勢力(ばね力)によって前記着座面45aに着座する方向、つまり、オイル供給孔45の下端開口を閉塞する方向に付勢されている。
【0070】
前記バルブスプリング50は、そのばね荷重、つまりボール弁体46の開弁圧が前記可変容量形ポンプ01の前記第1吐出圧Pfよりも十分に高く、かつカムリング5の作動油圧である第2吐出圧Psよりも僅かに低い、前述の圧力P2(図8参照)となるように設定されている。
【0071】
以下、前記オイルジェット30の作動を説明する。まず、機関の始動に伴って前記可変容量形ポンプ01の駆動軸3が回転作動してメインオイルギャラリー39にオイルが圧送されて、機関の各摺動部を潤滑するが、始動初期の段階では、ポンプ吐出圧が、前述の図8に示すように第1吐出圧Pfになっていることから、前記ボール弁体46は、図11Aに示すように、バルブスプリング50のばね力によって着座面45aに着座して閉弁状態を維持する。
【0072】
その後、ポンプ吐出圧が上昇してオイル供給孔45内の油圧がP2以上なってバルブスプリング50のばね荷重に打ち勝つと、図11Bに示すように、バルブスプリング50が圧縮変形してボール弁体46を開弁する。これによって、オイル供給孔45とオイル導入孔47を連通させ、メインオイルギャラリー39から連通路38を介してオイル供給孔45に供給されたオイルが、オイル導入孔47から径方向孔48を通って通路部44に流入する。さらにここから、図9に示すように、ノズル43の油孔43cを通り、ノズル部43dからピストン36の下方から内部に噴射される。
【0073】
このように、前記可変容量形ポンプ01から吐出されたオイルは、その吐出圧が第1吐出圧Pf以上になり、かつ第2吐出圧Psより僅かに低いP2まで達しなければオイルジェット30からピストン36に噴射されない。このため、可変容量形ポンプ01によるポンプ吐出初期のエネルギー損失を効果的に抑制することが可能になる。
【0074】
また、前述のように、前記第1吐出圧Pfは、オイルジェット30のボール弁体46の開弁圧よりも低く設定されていることから、車両の通常走行で使用する機関回転領域(常用域)でオイルジェット30からのオイルの噴射がないため、ポンプの過度なオイル吐出量が抑えられつつ機関の摺動部へのオイル供給量が多くなる。この結果、ポンプや内燃機関のフリクションを低減できると共に、燃費の向上が図れる。
【0075】
また、内燃機関31の冷機時には、オイルジェット30が低温なオイルをピストン36に噴射するのを抑制できるので、暖機性能が向上すると共に、排気エミッションを低減できる。
【0076】
なお、前記オイルジェット30の構造としては、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、保持部材40とノズル43を一体に形成したものや、バルブボディ141にノズル43をロー付けによって固着したもの、さらには、弁体としてボール以外にプランジャとしたものであってもよい。
【0077】
次に、前記バルブタイミング制御装置について説明する。
【0078】
このバルブタイミング制御装置は、吸気側に適用されたもので、図12〜図15に示すように、機関の図外のクランクシャフトによりタイミングチェーンを介して回転駆動される駆動回転体であるタイミングスプロケット51と、該タイミングスプロケット51に対して相対回転可能に設けられたカムシャフト52と、該カムシャフト52の端部に固定されてタイミングスプロケット51内に回転自在に収容された従動回転体であるベーン部材53と、該ベーン部材53を油圧によって正逆回転させる油圧給排機構54とを備えている。
【0079】
前記タイミングスプロケット51は、外周にタイミングチェーンが噛合する歯部55aが一体に設けられて、前記ベーン部材53を回転自在に収容したハウジング55と、該ハウジング55の前端開口を閉塞するフロントカバー56と、ハウジング55の後端開口を閉塞するリアカバー57とから構成され、これらハウジング55及びフロントカバー56,リアカバー57は、4本の小径ボルト58によってカムシャフト軸方向から一体的に共締め固定されている。
【0080】
前記ハウジング55は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面の周方向の約90°位置に4つのシューである隔壁部60が内方に向かって突設されている。この各隔壁部60は、横断面ほぼ台形状を呈し、それぞれハウジング55の軸方向に沿って設けられて、その軸方向の両端縁がハウジング55の両端縁と同一面になっていると共に、ほぼ中央位置に前記各ボルト58が挿通する4つのボルト挿通孔61が軸方向へ貫通形成されている。さらに、各隔壁部60は、内端面が前記ベーン部材53の後述するベーンロータ64の外形に沿って円弧状に形成されていると共に、内端面の高位部位置に軸方向に沿って切欠形成された保持溝内に、コ字形のシール部材62と該シール部材62を内方へ押圧する図外の板ばねが嵌合保持されている。
【0081】
前記フロントカバー55は、中央に比較的大径なボルト挿通孔56aが穿設されていると共に、外周部に前記ハウジング55の各ボルト挿通孔61に挿通する4つのボルト孔が穿設されている。
【0082】
前記リアカバー57は、ほぼ中央に前記カムシャフト52の前端部52aを回転自在に支持する軸受孔57aが形成されていると共に、外周部に前記各ボルト58が螺着する4つの雌ねじ孔が形成されている。
【0083】
前記カムシャフト52は、シリンダヘッドの上端部に図外のカム軸受を介して回転自在に支持され、外周面の所定位置に図外の吸気弁を、バルブリフターを介して開作動させるカムが一体に設けられている。
【0084】
前記ベーン部材53は、焼結合金材で一体に形成され、中央にカムボルト63によってカムシャフト52の前端部に固定された円環状のベーンロータ64と、該ベーンロータ64の外周面の周方向の90°位置に一体に設けられた4枚のベーン65とを備えている。ベーンロータ64は、中央の軸方向孔64aに前記カムボルト63が挿通されていると共に、カムシャフト52の前端部52aが挿通嵌合する嵌合溝64bが形成されており、前記カムボルト63によってカムシャフト52の前端部52aに軸方向から固定されている。
【0085】
前記4つのベーン65は、その1つがほぼ円周方向の幅が大きなほぼ台形状に形成され、他の3つがそれぞれ細長い長方体形状を呈して、円周方向の所定の角度位置に設けられており、これによってベーン部材53全体の重量バランスが取られている。また、各ベーン65は、各隔壁部60間に配置されていると共に、それぞれの外周面の中央に図外の保持溝が切欠形成され、この各保持溝内に、前記ハウジング55の内周面に摺接するコ字形のシール部材66と該シール部材66をハウジング55の内周面方向に押圧する板ばね66aがそれぞれ嵌着保持されている。
【0086】
また、この各ベーン65の両側と各隔壁部60の両側面との間に、それぞれ4つの進角室67と遅角室68がそれぞれ隔成されている。
【0087】
前記油圧給排機構54は、図12に示すように、前記各進角室67に対して潤滑油である作動油圧を給排する第1油通路69と、前記各遅角室68に対して作動油圧を給排する第2油通路70との2系統の油通路を有し、この両油通路69,70には、機関潤滑油供給用のメインオイルギャラリーである供給通路71とドレン通路72とが、流路切換弁73を介して接続されている。前記供給通路71には、オイルパン74内の油を圧送する一方向の可変容量形ポンプ01が設けられている。また、前記ドレン通路72の下流端はオイルパン74に連通している。
【0088】
前記第1油通路69は、図12及び図13にも示すように、前記流路切換弁73と各進角室67との間に形成されており、シリンダヘッド内からカム軸受内及びカムシャフト52の内部軸方向に形成された第1通路部69aと、カムシャフト52の前端側のグルーブ溝からベーンロータ64の内部にほぼ放射状に分岐形成されて第1通路部69aと各進角室67とを連通する4本の分岐通路69bとから構成されている。
【0089】
一方、第2油通路70は、前記流路切換弁73と各遅角室68との間に形成されており、シリンダヘッド内からカム軸受及びカムシャフト52の内部軸方向に形成された第2通路部70aと、カムシャフト前端部52aの径方向孔からベーンロータ64の内部に放射状に分岐形成されて、前記第2通路部70aと各遅角室68とを連通する4本の第2分岐通路70bとから構成されている。
【0090】
なお、前記ベーン部材53やハウジング55及び進角室67、遅角室68、油圧給排機構54などによって位相変更機構が構成されている。
【0091】
前記流路切換弁73は、図12に示すように、4ポート2位置型のソレノイド弁であって、シリンダヘッドの内部に形成されたバルブ穴76内に固定された有底円筒状のバルブボディ77と、該バルブボディ77の一端部に一体的に固定されたソレノイド78と、バルブボディ77の内部に摺動自在に設けられたスプール弁体79とを備えている。
【0092】
前記バルブボディ77は、軸方向のほぼ中央位置に、供給通路71とバルブボディ77の内部とを連通する供給ポート80が形成されていると共に、該供給ポート80の軸方向両側に、前記第1油通路69と第2油通路70の各端部とバルブボディ77内を連通する第1、第2ポート81,82が径方向に沿って形成されている。また、前記第1、第2ポート81,82の各外側には、バルブボディ77の内部とドレン通路72とを連通する第1、第2ドレンポート83,84がそれぞれ穿設されている。
【0093】
前記ソレノイド78は、ソレノイドケーシング78aの内部に設けられた電磁コイル78bと、該電磁コイル78bへの通電によって励磁される固定コア78cと、該固定コア78cの励磁によって摺動して前記スプール弁体79を押圧移動させる可動プランジャ78dとから主として構成されている。前記電磁コイル78bは、図外のハーネスを介して電子コントローラ86に接続されている。
【0094】
前記スプール弁体79は、軸方向の摺動位置に応じて前記供給ポート80を開閉するほぼ中央の第1ランド部79aと、該第1ランド部79aの軸方向の両側に設けられて、前記各第1、第2ポート81、82及び各ドレンポート83,84を相対的に開閉する第2,第3ランド部79b、79cとを備えている。また、このスプール弁体79は、バルブボディ77の他端側に設けられたスプリングリテーナ77aと前記第3ランド部79cの外端面との間に弾装されたリターンスプリング85のばね力によって、最大左方向、つまり、供給ポート80と第2ポート82とを連通し、第1ポート81とドレンポート83とを連通する位置に付勢されている一方、前記電子コントローラ86からの制御電流によって、リターンスプリング85のばね力に抗して最大右方向あるいは所定の中間位置に移動制御されるようになっている。
【0095】
前記電子コントローラ86は、機関回転数を検出する図外のクランク角センサや吸入空気量を検出するエアフローメータからの信号及びスロットルバルブ開度センサ、機関の水温を検出する水温センサなどの各種センサ類によって現在の運転状態を検出している。
【0096】
また、この電子コントローラ86は、前記機関運転状態に応じて前記流路切換弁73の電磁コイル78aにパルス制御電流を通電あるいは通電を遮断して流路の切り換え制御を行うようになっている。
【0097】
さらに、前記最大幅のベーン65とハウジング55との間には、該ハウジング55に対してベーン部材53の回転を拘束し、あるいは拘束を解除するロック機構87が設けられている。
【0098】
このロック機構87は、図12及び図15に示すように、前記幅長さの大きな1つのベーン65とリアカバー58との間に設けられ、前記ベーン65の内部のカムシャフト52軸方向に沿って形成された摺動用穴88と、該摺動用穴88の内部に摺動自在に設けられた有蓋円筒状のロックピストン89と、前記リアカバー58に形成された固定孔内に固定された横断面カップ状の係合穴構成部90に設けられて、前記ロックピストン89のテーパ状先端部89aが係脱する当接部であるロック穴90aと、前記摺動用穴88の底面側に固定されたスプリングリテーナ91に保持されて、ロックピストン89をロック穴90a方向へ付勢する第3付勢部材であるコイルスプリング92とから構成されている。
【0099】
前記ロックピストン89は、後端側外周に受圧用の大径フランジ89bが一体に形成されていると共に、前記ベーン部材53が最遅角側に回転した位置で先端部89aが前記コイルスプリング92のばね力によってロック穴90aに係合してタイミングスプロケット51とカムシャフト52との相対回転をロックするようになっている。
【0100】
また、前記ロックピストン89は、図15に示すように、前記ベーン部材53に形成された第1油孔93aを介して前記進角室67から前記ロック穴90a内に供給された油圧か、あるいは同じくベーン部材53に形成された第2油孔93bを介して前記遅角室68から前記大径フランジ部89aと摺動用穴88の段差部との間の受圧室89c内に供給されたいずれかの油圧によって前記コイルスプリング92のばね力に抗して後退移動してロック穴90aとの係合が解除されるようになっている。
【0101】
前記コイルスプリング92は、ロック状態維持機構として機能し、機関始動時に前記各遅角室68内に滞留した空気が前記可変容量形ポンプ01から圧送された作動油圧によって圧縮された該圧力によっては大きく圧縮変形しない程度のばね力に設定されていると共に、吐出された前記作動油圧が図8の(ア)に示す初期に立ち上がり油圧Pxに達した時点で圧縮変形するように設定されている。
【0102】
以下、前記バルブタイミング制御装置の作用を図16〜図19に基づいて説明する。まず、機関停止時には、前記可変容量形ポンプ01の作動が停止されることによって進角室67と遅角室68への作動油圧の供給が停止されると共に、機関停止直後に予めカムシャフト52に発生した交番トルクによってベーン部材53が、図13及び図16Aに示すように、カムシャフト52の回転方向(矢印方向)とは反対側に回転して最遅角側に位置している。
【0103】
また、この時点で、前記ロック機構87のロックピストン89は、図16Bに示すように、コイルスプリング92のばね力によって先端部89aがロック穴90a内に係合してベーン部材53の自由な回転を規制する。
【0104】
さらに、電子コントローラ86から流路切換弁73への通電も遮断されることから、スプール弁体79は、リターンスプリング85のばね力によって、図16Cに示すように、最大左方向位置に付勢されている。
【0105】
次に、イグニッションキーをオン操作して機関を始動させた場合、このクランキング開始から数秒間は、電動コントローラ86からの制御電流が前記電磁コイル78bに出力されない。したがって、スプール弁体79は、図17Cに示すように、リターンスプリング85のばね力によって最大左方向に付勢された状態になっている。このため、供給ポート80と第2ポート82が連通されつつ第2ランド部69bが第2ドレンポート84を閉止する。同時に第1、第3ランド部69a、69cが第1ポート71と第1ドレンポート73を連通させる。
【0106】
したがって、可変容量形ポンプ01から吐出された作動油圧(吐出圧)は、同図の矢印に示すように、供給通路61から供給ポート80を介してバルブボディ67内に流入し、そのまま第2ポート82から第2油通路60内に流入して、ここから各第2分岐通路60bを通って各遅角室68に供給される。
【0107】
このため、ベーン部材53は、図17Aに示すように、前記各遅角室68内に供給された低い作動油圧によって最遅角側に位置した状態が維持される。これによって、機関始動性が向上する。
【0108】
このとき、各遅角室68内に滞留した空気は、前記低油圧によって押圧されて該低油圧と一緒にベーン部材53を最遅角側へ押しつける働きをする。
【0109】
一方、ロックピストン89は、図17Bに示すように、前記各遅角室68の内圧が上昇するにともなって、この油圧が第2油孔93bから受圧室79cに供給されて大径フランジ79bの受圧面に作用してコイルスプリング92のばね力に抗してよってロック穴90aから後退移動して抜け出す。これによって、ベーン部材53は、ロック状態が解除されて自由な回転が許容されるが、各遅角室68内の油圧が高いことから、前記機関停止時の最大遅角位置を維持する。
【0110】
このロックピストン89の先端部89aがロック穴90aから抜け出すタイミングとしては、前記可変容量形ポンプ01の吐出油圧特性が第1吐出圧Pfより低い図8の(ア)の領域での第1コイルばね70を押し下げる前の急激な立ち上がり時点の吐出圧Pxになり、時間的にはイグニッションキーをオンして約2〜3秒経過後となる。
【0111】
その後、クランキングが開始された後の例えば機関中回転域になると、電子コントローラ86から流路切換弁73の電磁コイル73bに通電されて、固定コア78cを励磁する。そうすると、スプール弁体79が、図17Cに示す位置から可動プランジャ78dを介して右方向へ移動して、図18Cに示す位置に最大右方向に位置に移動する。そうすると、スプール弁体79は、第1ポート81と第1ドレンポート83との連通を遮断すると共に、供給ポート80と第1ポート81を連通する。同時に、第2ポート82と第2ドレンポート84を連通する。
【0112】
このため、可変容量形ポンプ01の吐出油圧は、図18Cに示すように、供給通路71から供給ポート80及びバルブボディ77内に流入してさらに第1ポート81から第1油通路69の第1通路部69a内に流入し、ここから各分岐通路69bを通って各進角室67に供給されて内部が高圧になる一方、各遅角室68内の作動油は第2油通路60などを介して第2ドレンポート84からオイルパン74内に戻されて低圧になる。
【0113】
したがって、ロックピストン89は、受圧室89bの油圧は低下するものの、図18Bに示すように、今度は、前記各進角室67の油圧の上昇に伴い第1油孔93aからロック穴90a内に供給された高油圧によってコイルスプリング92のばね力に抗してロック穴90aから抜け出した状態が維持される。これによって、ベーン部材53は、前記各進角室67の高油圧によって、図13に示す位置から図18Aに示すように図中右方向へ回転して、つまりカムシャフト52の回転方向と同方向に回転して、クランクシャフトとカムシャフト52の相対回転位相を進角側へ速やかに変更する。
【0114】
これにより、吸気弁と排気弁とのバルブオーバーラップが僅かに大きくなって、内部EGRの効果によって、後述するように、排気ガス中のHCの排出量を低減することができる。
【0115】
さらに、機関が例えば高回転域に移行すると、電子コントローラ86から電磁コイル73bへの通電が維持されて、各進角室67に油圧が継続的に供給される。このため、ベーン部材53は、同方向へさらに回転して図14に示すように、最大回転位置に保持され、クランクシャフトとカムシャフト52の相対回転位相を最進角側に変更させる。これにより、バルブオーバーラップが大きくなって機関の出力が向上する。
【0116】
また、機関運転が例えばアイドリング運転に移行した場合は、前記電子コントローラ86から電磁コイル78bへの制御電流が遮断される。したがって、スプール弁体79は、図19Cに示すように、リターンスプリング85のばね力によって最大左方向に移動することから、供給ポート80と第2ポート82が連通されつつ第2ランド部69bが第2ドレンポート84を閉止する。同時に第1、第3ランド部79a、79cが第1ポート81と第1ドレンポート83を連通させる。
【0117】
したがって、可変容量形ポンプ01から吐出された作動油圧は、同図の矢印に示すように、供給通路71から供給ポート80を介してバルブボディ77内に流入し、そのまま第2ポート82から第2油通路70内に流入して、ここから各第2分岐通路70bを通って各遅角室68に供給される。一方、各進角室67の油圧が第1油通路69から第1ポート81を通って第1ドレンポート83、ドレン通路72を通ってオイルパン74内に排出されて低圧となる。
【0118】
このとき、ロックピストン39は、図19Bに示すように、遅角室68内の高油圧を導入された受圧室89cの油圧によってロック穴90aからの抜け出し状態が維持されて、ベーン部材53の自由な回動が許容していることから、かかるベーン部材53は、図19Aに示すように、前記各遅角室68内に供給された高油圧によって最遅角側に回動する。これによって、燃焼が良好になって機関のアイドル回転の安定性が向上する。
【0119】
以上のように、本実施形態では、前記可変容量形ポンプ01の第1、第2コイルばね20、22を用いた特異な構造によって、機関始動時のバルブタイミング制御装置の作動応答性を向上させることができる。
【0120】
すなわち、可変容量形ポンプ01は、前記吐出ポート8を介して吐出口から吐出される潤滑油を機関摺動部への供給の他に、バルブタイミング制御装置の作動源として利用するが、前述のように、図8に記載した初期の吐出油圧(アの領域)の立ち上がりが良好になることから、機関始動直後の例えば、タイミングスプロケット55とカムシャフト52との相対回転位相の遅角側への作動応答性を向上させることができる。
〔第2実施形態〕
図20は第2実施形態を示し、ポンプ構成体などの基本構造は第1実施形態と同様であるが、前記カムリング5を偏心量が大きくなるように押圧する制御油室16を、前記ピボットピン9を中心に図中上下2つ設けたものである。
【0121】
すなわち、第1実施形態における制御油室を第1制御油室16aとし、ポンプハウジング1のピボットピン9側の下部内に、ほぼL字形状の凹溝24が形成されて、この凹溝24によって第2制御油室16bが構成されている。また、前記凹溝24の下部には、第2シール面24aが形成されており、この第2シール面24aは、前記ピボットピン9の軸心を中心とした半径の円弧面状に形成されている。
【0122】
一方、カムリング5の前記凹溝24内に臨む部位には、ほぼ三角形状の凸部25が一体に設けられていると共に、該凸部25の前記第2シール面24aと対向する部位に前記ピボットピン9の軸心を中心とした半径の第2円弧面25aが形成されている。この第2円弧面25aの先端側には、横断面矩形状の保持溝が形成され、この保持溝の内部に、前記シール面24aに摺接するシール部材26と該シール部材26をシール面24a方向に押圧する断面矩形状の弾性部材27が収容配置されている。
【0123】
前記シール面24aは、ロータ4の中心に対するカムリング5の偏心量が図2に示す最大偏心位置から図14に示す最小偏心量まで揺動しても前記シール部材26が摺接可能な円弧長さに設定されている。
【0124】
また、前記第2制御油室16bは、ポンプハウジング1の底面1aに形成された連通溝1gを介して吐出ポート8に連通し、したがって、カムリング5の第2制御油室16bに臨む外周の第2受圧面5gには第1制御油室16aの吐出圧を受ける第1受圧面5fと同じ吐出圧が作用する。
【0125】
また、前記第2円弧面25aの曲率半径は、第1シール部材14側の第1円弧面5dの曲率半径よりも小さく設定されている。したがって、第2受圧面5gの方が第1受圧面fよりも表面積が小さいため、両方の受圧面5f、5gに第1、第2制御油室16a、16b内の吐出圧がそれぞれ作用した際には、カムリング5に対して第1実施形態と同様に図中反時計方向の揺動トルクが発生する。しかし、前記第2受圧面5gのみに作用する第2制御油室16bからの油圧トルクは、時計方向となることから一部が相殺されることになる。このため、カムリング5の揺動トルクは、吐出圧が同じ場合は、第1実施形態の場合よりも小さくなる。
【0126】
このため、前記両コイルばね20、22のばね力を小さく設定することができることから、各コイルばね20,22のコイル径を小さくすることができる。この結果、ベーンポンプ全体の小型化が図れる。
〔第3実施形態〕
図21〜図29は、可変容量形ポンプ01の第3実施形態を示しており、第1、第2実施形態の可変容量形ポンプ01とは構造が一部相違するが、共通の箇所もあるので、この共通箇所は詳細な説明を省略する。
【0127】
すなわち、この可変容量形ポンプ01は、ポンプ収容室113を有する断面コ字形状のポンプハウジング111と、該ポンプハウジング111の一端開口を閉塞するカバー部材112と、ポンプ収容室113のほぼ中心部を貫通して機関のクランク軸によって回転駆動される駆動軸114と、ポンプ収容室113内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸114に結合されたロータ115と、該ロータ115の外周部に放射状に切欠形成された7つのスロット115aから進退自在に設けられた7枚のベーン116と、ポンプハウジング111の内部にロータ115の回転中心に対して偏心可能(揺動可能)に配置されたカムリング117と、ポンプハウジング111内に収容され、ロータ115の回転中心に対するカムリング117の偏心量が増大する方向へ当該カムリング117を常時付勢する付勢部材である単一のコイルばね118と、ロータ115の内周側の両側部に摺動自在に配置されたベーンリング119,119と、を備えている。前記駆動軸114,ロータ115、ベーン116、カムリング117がポンプ構成体になっている。
【0128】
前記ポンプハウジング111は、図24及び図25にも示すように、ポンプ収容室113の底面113aのほぼ中央位置には、駆動軸114の一端部を回転自在に支持する軸受孔111aが貫通形成されている。また、ポンプハウジング111の内側面となるポンプ収容室113の内周壁の所定位置には、図25に示すように、カムリング117を揺動自在に支持する断面ほぼ半円状の支持溝111bが切欠形成されている。
【0129】
さらに、ポンプ収容室113の内周壁には、軸受孔111aの中心と支持溝111bの中心とを結ぶカムリング基準線Mを挟んで両側に、カムリング117の外周部に配設される後記のシール部材130,130がそれぞれ摺接する第1、第2シール摺接面111c,111dが形成されている。これら各シール摺接面111c,111dは、支持溝111bの中心からそれぞれ所定の半径R1,R2により構成される円弧面状になっていると共に、カムリング117の偏心揺動範囲において前記各シール部材130,130が常時摺接可能な周方向長さに設定されている。これによって、カムリング117が偏心揺動する際に、前記各シール摺接面111c,111dに沿って摺動案内されることとなって、当該カムリング117の円滑な作動(偏心揺動)が得られるようになっている。
【0130】
また、前記ポンプ収容室113の底面13aには、図22及び図25に示すように、軸受孔111aの外周域に、ポンプ作用に伴ってポンプ室120の内部容積が増大する領域(吸入領域)に開口するようにほぼ円弧凹状の吸入部である吸入ポート121が、ポンプ作用に伴ってポンプ室120の内部容積が減少する領域(吐出領域)に開口するようにほぼ円弧凹状の吐出部である吐出ポート122が、それぞれ軸受孔111aを挟んでほぼ対向するように切欠形成されている。
【0131】
前記吸入ポート121は、当該吸入ポート121のほぼ中央位置から後記のスプリング収容室128側に延設された導入通路124に接続され、該導入通路124の途中には、ポンプハウジング111の底壁を貫通して外部へと開口する吸入孔121aが貫通形成されている。これにより、図28に示すように、機関のオイルパン152に貯留された潤滑油が、前記ポンプ構成体のポンプ作用に伴って発生する負圧に基づき吸入孔121a及び吸入ポート121を介して前記吸入領域の各ポンプ室120に吸入されるようになっている。
【0132】
なお、前記吸入孔121aは、前記導入通路124と共にポンプ吸入側におけるカムリング117の外周域に臨むように構成されており、該カムリング117のポンプ吸入側の外周域に吸入圧を導くようになっている。これによって、前記吸入領域の各ポンプ室120に隣接するポンプ吸入側におけるカムリング117の外周域が吸入圧又は大気圧となることから、吸入領域の各ポンプ室120から当該ポンプ吸入側におけるカムリング117の外周域への潤滑油の漏出の抑制に供される。ここで、前記ポンプ吸入側とは、図22中における後記のカムリング偏心方向線Nよりも左側の領域を意味している。
【0133】
前記吐出ポート122は、当該吐出ポート122の始端部からカムリング117の外周側に画成される後述する第1制御油室131に臨むようにして延設された導入通路125に接続され、該導入通路125の終端部には、ポンプハウジング111の底壁を貫通して外部へ開口する吐出孔122aが貫通形成されている。
【0134】
そして、この吐出孔122aは、前記メインオイルギャラリー39を介して機関内の各摺動部や前記バルブタイミング制御装置、さらにはオイルジェット30に連通している。
【0135】
かかる構成から、前記ポンプ構成体のポンプ作用により加圧されて前記吐出領域の各ポンプ室120から吐出された潤滑油が、吐出ポート122及び吐出孔122aを介して機関内の各摺動部及びバルブタイミング制御装置に供給されるようになっている。
【0136】
なお、前記吐出孔122aは、前記導入通路125と共にポンプ吐出側におけるカムリング117の外周域に臨むように構成されており、該カムリング117のポンプ吐出側の外周域に吐出圧を導くようになっている。ここで、前記ポンプ吐出側とは、図22中における後述するカムリング偏心方向線Nよりも右側の領域を意味している。
【0137】
さらに、前記吐出ポート122の始端部の近傍には、当該吐出ポート122と軸受孔111aとを連通する連通溝123が切欠形成されていて、該連通溝123を介して軸受孔111aに潤滑油を供給すると共にロータ115やベーン116の側部にも潤滑油を供給して、各摺動部位の潤滑性を確保するようになっている。
【0138】
なお、この連通溝123は、前記各ベーン116の出没方向と合致しないように形成されており、これらベーン116が出没する際の当該連通溝123への脱落が抑制されている。
【0139】
前記カバー部材112は、ほぼ板状を呈し、外側部におけるポンプハウジング111の軸受孔111aに対応する位置が若干厚肉に形成されると共に、当該厚肉部分には、駆動軸14の他端側を回転自在に支持する軸受孔112aが貫通形成されている。このカバー部材112の内側面はほぼ平坦状となっている。そして、このカバー部材112は、複数のボルト126によりポンプハウジング111の開口端面に取り付けられている。
【0140】
前記駆動軸114は、クランク軸から伝達された回転力によってロータ115を図22中における時計方向に回転するように構成されており、当該駆動軸114の中心において前記カムリング基準線Mと直交する直線(以下「カムリング偏心方向線」という。)Nを境界として、図22中の左半分が前記ポンプ吸入側、右半分が前記ポンプ吐出側となっている。
【0141】
前記ロータ115は、図21及び図22に示すように、内部中心側から径方向外側へ放射状に形成された前記複数のスロット115aが切欠形成されていると共に、該各スロット115aの内側基端部には、前記吐出ポート122に吐出された吐出油を導入する断面ほぼ円形状の背圧室115bがそれぞれ形成されている。これにより、前記各ベーン116がロータ115の回転に伴う遠心力と背圧室115bの油圧とによって外方へ押し出されるようになっている。
【0142】
前記各ベーン116は、各先端面がそれぞれカムリング117の内周面に摺接すると共に、各基端部の側面が各ベーンリング119,119の外摺面にそれぞれ摺接するようになっている。これによって、機関回転数が低く、前記遠心力や背圧室115bの油圧が小さいときでも、ロータ115の外周面、隣接するベーン116,116の各内側面及びカムリング117の内周面と、側壁であるポンプハウジング111のポンプ収容室113の底面113a及びカバー部材112の内側面と、が前記各ポンプ室120を液密的に画成している。
【0143】
前記カムリング117は、いわゆる焼結金属によってほぼ円筒状に一体形成され、外周部の所定位置に、ポンプハウジング111の支持溝111bに嵌合して偏心揺動支点を構成するほぼ円弧凸状のピボット部117aが軸方向に沿って突設されていると共に、該ピボット部117aに対しカムリング117の中心を挟んで反対側の位置に、コイルばね118と連係するアーム部117bが軸方向に沿って突設されている。
【0144】
ここで、前記ポンプハウジング111内には、前記支持溝111bと反対側の位置に、所定の幅Lに設定された連通部127を介してポンプ収容室113と連通するようにばね収容室128が設けられており、このばね収容室128内にコイルばね118が収容されている。
【0145】
このコイルばね118は、前記連通部27を通じてばね収容室128内まで延出する前記アーム部117bの先端部の下面とばね収容室128の底面との間に、所定のセット荷重Wをもって弾性保持されている。なお、前記アーム部117bの先端部の下面には、コイルばね118の内周側に係合するほぼ円弧状に形成された支持突起117iが突設されており、該支持突起117iによってコイルばね118の一端が支持されている。
【0146】
前記コイルばね118は、前記セット荷重Wに基づく弾性力をもって、前記アーム部117bを介してカムリング117を、その偏心量が増大する方向(図22中の時計方向)へ常時付勢するようになっている。これにより、図22に示すカムリング117の非作動状態において、当該カムリング117は、前記コイルばね118の付勢力によってアーム部117bの上面がばね収容室128の蓋部に突設されたストッパ部128aに押し付けられた状態となり、その偏心量が最大となる位置に規制されている。
【0147】
そして、このように、ピボット部117aと反対側にアーム部117bを延設して、該アーム部117bの先端部をコイルばね118によって付勢するように構成することで、カムリング117に対し最大限のトルクを発生させることができるため、当該コイルばね118の小型化が図れ、この結果、ポンプ自体のコンパクト化が図れる。
【0148】
また、前記カムリング117の外周部には、前記第1、第2シール摺接面111c,111dと対向するように形成された当該各シール摺接面111c,111dと同心円弧面状の第1、第2シール面117g,117hを有する横断面ほぼ三角形状の一対の第1、第2シール構成部117c,117dが軸方向に沿ってそれぞれ突設されている。また、この各シール構成部117c,117dのシール面117g,117hに、横断面ほぼ矩形状の第1、第2シール保持溝117e,117fが軸方向に沿って切欠形成され、該各シール保持溝117e,117fには、カムリング117の偏心揺動時に各シール摺接面111c,111dに摺接する一対のシール部材130,130がそれぞれ収容保持されている。
【0149】
ここで、前記各シール面117g,117hは、それぞれ前記ピボット部117aの中心からこれに対応する前記各シール摺接面111c,111dを構成する半径R1,R2よりも僅かに小さい所定の半径R3,R4によって構成されており、当該各シール面117g,117hと前記各シール摺接面111c,111dとの間には、それぞれ微小なクリアランスCが形成されるようになっている。
【0150】
前記各シール部材130,130は、例えば低摩擦特性を有するフッ素系樹脂材によりカムリング117の軸方向に沿って直線状に細長く形成され、各シール保持溝117e,117fの底部に配設されたゴム製の弾性部材29,29の弾性力により各シール摺接面111c,111dに押し付けられるようになっている。これにより、後述する各圧力室31,32の良好な液密性が常時確保されるようになっている。
【0151】
そして、カムリング117の非作動状態において、前記ポンプ吐出側となるカムリング偏心方向線Nよりもピボット部117a側におけるカムリング117の外周域には、該カムリング117の外周面とポンプハウジング111の内側面との間に、カムリング117の外周面、ピボット部117a、前記各シール部材130,130及びポンプハウジング111の内側面をもって、ピボット部117aを挟んで両側に、第1制御油室131と第2制御油室132がそれぞれ画成されている。
【0152】
なお、本実施形態では、前記第1、第2制御油室131,132の全体を、カムリング117の外周域において、前記ポンプ吐出側の範囲内に収める構成になっているが、望ましくは、径方向において加圧領域となる前記吐出領域と重合する領域、つまり、カムリング117の周壁を挟んで常時正圧となるポンプ室120と対向する領域内に収める方がよい。
【0153】
前記第1制御油室131には、吐出ポート122に吐出された吐出圧が導入通路125を介して常時導入されるようになっており、この第1制御油室131に面するカムリング117の外周面によって構成されてコイルばね118の付勢力を妨げるように作用する力を受ける第1受圧面133に吐出圧を作用させることによって、カムリング117に対しその偏心量を減少させる方向(図22中の反時計方向)へ揺動力(移動力)を付与するようになっている。
【0154】
すなわち、この第1制御油室131は、前記第1受圧面133を介してカムリング117の中心がロータ115の回転中心と同心に近づく方向へ当該カムリング117を常時付勢することによって、このカムリング117の同心方向の移動量制御に供されている。
【0155】
一方、前記第2制御油室132には、ポンプハウジング111の底壁に貫通形成されて機関運転状態に応じて制御される後述のソレノイドバルブ140を介して吐出孔122aに接続された導入孔135を通じて吐出圧が適宜導入されるようになっている。この第2制御油室132に面するカムリング117の外周面によって構成されてコイルばね118の付勢力を助勢する方向に作用する力を受ける第2受圧面134に吐出圧を作用させることで、カムリング117に対しその偏心量を増大させる方向(図22中の時計方向)へ揺動力を付与するようになっている。
【0156】
ここで、図22に示すように、前記第2受圧面134の受圧面積S2は、前記第1受圧面133の受圧面積S1よりも小さく設定されており、第2制御油室132の内圧に基づく付勢力とコイルばね118の付勢力とによるカムリング117の偏心方向の付勢力と、第1制御油室131による付勢力と、が所定の力関係をもってバランスするように構成されていて、該第2制御油室132による付勢力がコイルばね118の付勢力をアシストするようになっている。
【0157】
すなわち、前記第2制御油室132は、前記ソレノイドバルブ140を介して必要に応じて供給された吐出圧を第2受圧面134に作用させてコイルばね118の付勢力を適宜助勢することで、カムリング117の偏心方向の移動量制御に供されている。
【0158】
また、前記可変容量形ポンプ01には、図28に示すように、車載のECU151からの励磁電流に基づき機関の運転状態に応じて作動するソレノイドバルブ140が該可変容量形ポンプ01とは別体に設けられており、このソレノイドバルブ140を介して吐出孔122aと導入孔135とが接続され、これによってソレノイドバルブ140の開弁時に第1制御油室131と第2制御油室132が連通するようになっている。
【0159】
前記ソレノイドバルブ140は、図26及び図27に示すように、一端側が開口形成されて他端側が閉塞された円筒状のバルブボディ141と、該バルブボディ141内に軸方向へ摺動自在に収容され、両端部にバルブボディ141の内周面に摺接する第1、第2ランド部142a,142bが形成された弁体142と、該弁体142の第2ランド部142bによってバルブボディ141の他端側に画成された背圧室145に収容され、弁体142をバルブボディ141の一端側へ付勢するスプリング143と、バルブボディ141の開口端部に取り付けられ、通電に伴ってロッド144bを進出させてスプリング143の付勢力に抗して弁体142をバルブボディ141の他端側へ軸方向移動させる電磁ユニット144と、から主として構成されている。
【0160】
前記バルブボディ141は、その周壁に、吐出孔22aに接続されるINポート141aと、導入孔135に接続されるOUTポート141bと、吸入ポート121又は外部に接続されるドレンポート141cと、がそれぞれ貫通形成されていると共に、他端部の側壁には、吸入ポート121又は外部に接続されて背圧室145に常時開口する背圧ポート141dが貫通形成されている。
【0161】
前記弁体142は、軸方向の中間部が縮径形成されていて、前記両ランド部142a,142bによってバルブボディ141との間に環状空間146を画成し、この環状空間146を介してOUTポート141bとINポート141a又はドレンポート141cとが連通するようになっている。
【0162】
前記電磁ユニット144は、周知のように構成され、ボビンにコイルが巻回され、これにヨークを外嵌してなるコイルユニット144aと、該コイルユニット144aの内周側に軸方向へ進退可能に設けられた磁性材からなる図外のアーマチュアと、該アーマチュアに結合され、通電状態に応じてアーマチュアに伴い進退移動するロッド144bと、から主として構成されている。
【0163】
ここで、前記ソレノイドバルブ140は、図26に示すように、いわゆるノーマルオープン型に構成され、非通電状態においては、環状空間156を介してINポート141aとOUTポート141bとが連通することとなり、第2制御油室132に吐出圧が導入されることとなる。このとき、ドレンポート141cは、背圧室145に開口した状態となっている。
【0164】
一方、図27に示すように、コイルユニット144aに励磁電流が通電されたときには、ロッド144bの押圧力によりスプリング143の付勢力に抗して弁体142がバルブボディ141の他端側へと押し戻されることとなる。これによって、INポート141aは弁体142の第1ランド部142aによって遮断され、OUTポート141bは環状空間146を介してドレンポート141cと連通することとなって、第2制御油室132は吸入圧又は大気圧に開放されることとなる。
【0165】
以上のような構成から、前記可変容量形ポンプ01は、前記第1制御油室131の内圧とコイルばね118の付勢力及びソレノイドバルブ140により制御される第2制御油室132の内圧とのカムリング117に作用する相対的な力関係を制御することで、該カムリング117の偏心量を制御するようになっている。そして、この偏心量を制御して、ポンプ作用時における前記各ポンプ室120の内部容積の変化量を制御することで、当該可変容量形ポンプ01の吐出圧特性を制御するようになっている。
【0166】
以下、本実施形態に係る可変容量形ポンプ01の特徴的な作用、つまりカムリング117の偏心量制御に基づくポンプの吐出圧制御について、図22、図23及び図29に基づいて説明する。
【0167】
まず、前記可変容量形ポンプ01の吐出圧は、前述のように、前記バルブタイミング制御装置を作動させる場合には、その要求油圧は図中のP1となる。つまり、機関始動直後の低い油圧P1でバルブタイミング制御装置が作動するように設定されている。
【0168】
また、内燃機関の高回転でのクランクメタルの要求油圧としては、例えば、低負荷又は低油温時であれば図中のP2が、高負荷又は高油温時であれば図中のP4が、それぞれ要求油圧となる。
【0169】
さらに、機関の高負荷時には、ピストン冷却のために前述したオイルジェット30を使用するが、このオイルジェット30の前記ボール弁体46の開弁圧は、中回転時である所定の回転数nにおいて図中の油圧P3に設定されている。
【0170】
そこで、前記可変容量形ポンプ01は、低負荷又は低油温時に図29中のP1もしくはP2のどちらか一方、又はP1及びP2の両方の要求油圧を満足する第1吐出圧特性である低圧特性Xとなるように設定されていると共に、高負荷又は高油温時に図29中のP3もしくはP4のどちらか一方、又はP3及びP4の両方の要求油圧を満足する第2吐出圧特性である高圧特性Yとなるように設定されている。
【0171】
そして、前記ソレノイドバルブ140のON−OFFを切り換えることにより、カムリング117の作動特性、つまり、カムリング117の作動に必要となる吐出圧である第1、第2作動油圧Px,Pyを変更し、機関の運転状態に応じて前記両油圧特性X,Yのうち最適な油圧特性を選択することで、前記機関の各要求油圧を満足するようになっている。
【0172】
本実施形態では、図29に示すように、前記低圧特性Xについては、バルブタイミング制御装置の要求油圧P1と低負荷又は低油温状態における機関の高回転時の要求油圧P2とを結んだ破線で示す油圧特性に設定されている一方、前記高圧特性Yについては、高負荷又は高油温状態における機関の中回転時の前記オイルジェット30の開弁圧である要求油圧P3と当該状態における機関の高回転時の要求油圧P4とを結んだ実線で示す油圧特性に設定されている。
【0173】
すなわち、前記可変容量形ポンプ01は、コイルばね118のばね荷重Wが前記第1作動油圧Pxに設定されていて、低負荷又は低油温時には、ECU151からソレノイドバルブ140に励磁電流が通電されることでINポート141aが遮断され、第1制御油室131内にのみ吐出圧が導入されることとなる。
【0174】
これによって、第1制御油室131の内圧が第1作動油圧Pxに達するまでカムリング117の偏心量が最大の状態で維持されて(図22参照)、機関の回転数の上昇に伴って吐出圧が急激に立ち上がることとなる。
【0175】
そして、吐出圧の上昇により第1制御油室131の内圧が第1作動油圧Pxに達すると、カムリング117がピボット部117aを支点として前記カムリング偏心方向線Nの下方となる偏心量が減少する方向へと揺動することとなる(図23参照)。これにより、ポンプ作用時の前記各ポンプ室120の容積変化量が小さくなり、その結果、機関の回転数の上昇に伴う吐出圧の上昇が緩やかになることから、図29に示す低圧特性Xが得られることとなる。
【0176】
続いて、前記低負荷又は低油温状態から高負荷又は高油温状態へ移行した場合には、ECU151からのソレノイドバルブ140への励磁電流が遮断されて、INポート141aとOUTポート141bとが連通することとなり、吐出圧が、第1制御油室131のみならず、第2制御油室132にも導入されることとなる。
【0177】
すると、第2制御油室132の第2受圧面134に作用する圧力は、コイルばね118の付勢力を助勢するようにはたらくため、第1制御油室131の内圧が図29中の第1作動油圧Pxに達してもカムリング117は作動せず、第1制御油室131の内圧と第2制御油室132の内圧により第1受圧面133と第2受圧面134に作用する油圧力差がコイルばね118の付勢力に達するまで、カムリング117は、当該カムリング117の偏心量が最大となる状態で保持される(図22参照)。
【0178】
すなわち、当該高負荷又は高油温時には、図29に示すように、吐出圧が、第1制御油室131の内圧と第2制御油室132の内圧により第1受圧面133と第2受圧面134に作用する油圧力差がコイルばね118の付勢力と等しくなるような第2作動油圧Pyに達するまで、カムリング117の偏心量が最大の状態で維持され、機関の回転上昇に伴って吐出圧が大きく立ち上がることとなる。
【0179】
そして、第1制御油室131の内圧が第2作動油圧Pyに達すると、カムリング117が偏心量の減少する方向へ揺動することとなる(図23参照)。これにより、ポンプ作動時の前記各ポンプ室120の容積変化量が小さくなって機関の回転数の上昇に伴う吐出圧の上昇が緩やかになることから、図29に示すような高圧特性Yが得られることとなる。
【0180】
このように、前記可変容量形ポンプ01は、原則として、機関の回転数や負荷、油温等を基準に、ECU151により高圧が必要と判断された場合にポンプ吐出圧特性が高圧特性Yに移行することとなる。
【0181】
そこで、通常は、機関の負荷や油温等が高い場合に前記高圧特性Yに移行することとなるので、前述の説明では、当該高圧特性Yを発揮する場合として機関の負荷や油温が高い状態を例に説明したが、例えば、バルブタイミング制御装置においても前記要求油圧P1よりも高い油圧が必要となる場合があり、かかる場合には、ECU151によりバルブタイミング制御装置の作動信号に合わせてソレノイドバルブ140の切り換えが行われ、機関の負荷や油温等が低い状態であってもポンプ吐出圧特性が前記高圧特性Yに移行することとなる。
【0182】
換言すれば、本実施形態では、前記要求油圧P1をバルブタイミング制御装置の通常の要求油圧に設定したものを示しているが、搭載する車両の仕様等に応じて前記要求油圧P1をバルブタイミング制御装置における最低限の要求油圧として設定することも可能である。
【0183】
また、前記高負荷又は高油温状態から再び前記低負荷又は低油温状態へと移行した場合には、ECU151から励磁電流が再び通電されてソレノイドバルブ140が図7に示すような通電状態となり、第2制御油室132が大気圧又は吸入圧に開放されることとなる。これにより、カムリング117の作動は第1制御油室131の内圧とコイルばね118の付勢力との力関係に依存することとなって、ポンプの吐出圧特性が低圧特性Xへと変更される。この結果、低負荷又は低油温状態へ移行したことで不要となる吐出圧を低減し、機関の動力損失を抑制することができる。
【0184】
このように、前記可変容量形ポンプ01は、機関の回転数や負荷、油温等の各種の運転情報に基づきECU151がソレノイドバルブ140を切り換えることで、カムリング117の作動特性を変更し、当該機関の回転数や負荷、油温等に適した吐出圧特性を選択することができる。これにより、ポンプとしての仕事のムダを省き、機関の動力損失を最小限に抑えることが可能となる。
【0185】
しかも、この可変容量形ポンプ01は、前述のようなカムリング117の作動制御につき、デューティ制御等の複雑な制御を必要とせずソレノイドバルブ140のON−OFFによる単純な制御によって、さらには、該ソレノイドバルブ140におけるポート形状等の精密加工や開弁特性等のチューニングをも必要とせず一般的なソレノイドバルブ140を用いた簡素な構造をもって、容易に実現することができる。このことから、ポンプの製造コストの低廉化も図れる。
【0186】
また、前記可変容量形ポンプ01は、図23中に太実線矢印で示すように、吐出領域に係る前記各ポンプ室120の内圧がカムリング117のピボット部117a側の内周面に作用することになるため、該カムリング117は、前記カムリング基準線Mに沿って図中の右方向、つまり、前記支持溝111b側へ押圧されて、ピボット部117aが当該支持溝111bに押し付けられることとなる。
【0187】
しかしながら、本実施形態の可変容量形ポンプ01は、前記ポンプ吐出側におけるカムリング117の外周域に、つまり、前記吐出領域に係る前記各ポンプ室120に対しカムリング117の周壁を挟んでこれらポンプ室120と対向するように、前記両制御油室131,132が配置されていることから、図23中に太破線矢印で示すように、これら両制御油室131,132の内圧がそれぞれカムリング117を支持溝111bと反対側へ押し返すように作用することとなり、ピボット部117aの支持溝111bへの圧接が軽減される。これによって、カムリング117の偏心揺動時におけるピボット部117bと支持溝111bの摩擦を低減することができる。
【0188】
この結果、当該ピボット部117aや支持溝111bの摩耗、特にカムリング117と比べて硬度の低い材質からなる支持溝111bの摩耗を抑制することが可能となり、ポンプの耐久性の向上に供される。
【0189】
なお、かかる作用により、前記ポンプ吐出側においてカムリング117の内外周側に作用する力はほぼ相殺されるものの、前記支持溝111bと反対側に位置する前記ポンプ吸入側のカムリング117の外周域には導入通路124を介して大気圧又は吸入圧が作用して、該大気圧又は吸入圧によってピボット部117aは少なからず支持溝111b内に押圧されることになるため、該ピボット部117aが支持溝111bの内面から離間してしまうおそれもない。これによって、ピボット部117aが支持溝111bに適度に摺接したカムリング117の適切な作動を得ることができる。
【0190】
さらには、上述のように、前記ポンプ吐出側の領域において、吐出領域に係る前記各ポンプ室120と対向するように前記両圧力室31,32が配置されていることから、かかる領域においてカムリング117の内周側に作用する圧力と外周側に作用する圧力とが全て吐出圧となってほぼ等しくなることから、当該吐出領域におけるカムリング117の内外周の圧力差を最小限に抑えることができる。これによって、前記吐出領域においてカムリング117の両側面とポンプ収容室113の底壁13a及びカバー部材112の内側面との間に介在する微小隙間を介しての潤滑油の漏出(リーク)を最小限に抑えることが可能となる。この結果、可変容量形ポンプ01の仕事のムダが極力低減されて、当該可変容量形ポンプ01の高効率化も図れる。
【0191】
以上のように、本実施形態に係る可変容量形ポンプ01によれば、ピボット部117aを挟んで両側に第1、第2圧力室31,32を配置したことで、第2制御油室132の内圧がコイルばね118の付勢力を助勢するように作用することになるため、該コイルばね118の付勢力を極力小さく設定することが可能となる。
【0192】
具体的には、かかる第2制御油室132の配置により、コイルばね118は、前記低圧特性Xを確保し得る付勢力、つまり、第1作動油圧Pxとつり合うだけの付勢力を有していればよいため、従来よりもばね常数の小さい低荷重のコイルばねを用いることができる。これにより、ポンプハウジング111においてコイルばね118の配置に要するスペースを縮小することができ、当該可変容量形ポンプ01の小型化・軽量化が図れる。この結果、可変容量形ポンプ01の機関への搭載性が向上する。
【0193】
しかも、前記第2受圧面134は、前記第1受圧面133よりも小さい受圧面積に設定されていることから、第2制御油室132によってカムリング117の作動油圧を二段階に設定することが可能になる。これにより、ポンプの吐出圧特性の自由度を向上させることもできる。
【0194】
また、バルブタイミング制御装置の作動及びロック機構のロック解除油圧は、低圧特性X中のP1に設定されていることから、前記各実施形態と同じくバルブタイミング制御装置の作動応答性の向上が図れる。
【0195】
さらに、前記第1吐出圧Xが、前記オイルジェット30の開弁圧P3よりも低く設定されていることから、車両の通常走行で使用する機関回転数域でオイルジェット30からオイルが噴射されることがない。
【0196】
このため、前記各実施形態と同じく、可変容量形ポンプ01の吐出量が抑制されて、各部のフリクションが低減され燃費の向上が図れる。
【0197】
さらに、冷機時においては、オイルジェット30が低温のオイルを噴射することがないので、暖機性能が向上する。
【0198】
さらに、パワーステアリング装置用の可変容量形ポンプ等、二つの圧力室の差圧によってカムリングを揺動制御するように構成されたポンプは、従来から種々のもの提供されているが、かかる従来のポンプはいずれもオリフィス等による圧力損失に基づいて差圧を発生させる構造を有しており、この圧力損失がポンプ効率を低下させている。これに対して、本実施形態に係る可変容量形ポンプ01の場合は、第1制御油室131及び第2制御油室132内へ圧力損失を伴わずに吐出圧を導入することとし、該両圧力室31,32の受圧面積差、つまり、第1受圧面133と第2受圧面134の面積差によってカムリング117の作動トルクを発生させる構造となっていることから、前記従来の可変容量形ポンプのようなポンプ効率の低下を生じるおそれがない。これにより、前記従来の可変容量形ポンプと比べて、前記圧力損失が生じない分、ポンプ効率の向上に寄与することができる。
【0199】
さらには、本実施形態に係る可変容量形ポンプ01にあっては、ソレノイドバルブ140が非通電時において前記高圧特性となるように設定されているため、該ソレノイドバルブ140が故障した場合であっても機関使用領域の全域において必要な吐出圧を確保できる、といったフェールセーフとしての機能も備えている。
【0200】
図30及び図31は前記第3実施形態の変形例を示しており、該第3実施形態に係るソレノイドバルブ140を、いわゆるノーマルクローズ型に構成したものである。
【0201】
すなわち、本変形例に係るソレノイドバルブ140は、前記第3実施形態のものとは逆の特性を有するいわゆるノーマルクローズ型に構成されたものであって、図30に示すように、非通電時において、INポート151aが遮断されてOUTポート151bがドレンポート151cと連通し、図31に示すように、通電時において、INポート151aとOUTポート151bとが連通するように構成されている。これによって、可変容量形ポンプ01は、ソレノイドバルブ140の非通電時に低圧特性Xとなり、該ソレノイドバルブ140の通電時に高圧特性Yとなる。
【0202】
かかる構成によれば、機関に要求される可変容量形ポンプ01の吐出圧特性につき、低圧特性Xの頻度と比べて高圧特性Yの頻度が低い場合、ソレノイドバルブ140に対する通電時間を短縮することが可能になるため、該ソレノイドバルブ140の経時劣化の抑制に供される。
〔第4実施形態〕
図32〜図36は、第4実施形態を示しており、前記第3実施形態に係るシール部材130,130の配置を変更すると共に、ソレノイドバルブ140をハウジングに一体に構成したものである。
【0203】
すなわち、本実施形態では、第3実施形態においてカムリング117の前記各シール構成部117c,117dに設けられた各シール保持溝117e,117fが廃止され、代わりに、前記各シール摺接面111c,111dにおいて、前記廃止した各シール保持溝117e,117fと対向する位置に、該各シール保持溝117e,117fと同様のシール保持溝111e,111fが形成されていて、該各シール保持溝111e,111f内に、前記各弾性部材129,129と共に前記各シール部材130,130の収容配置されている。
【0204】
また、本実施形態では、図32、図35及び図36に示すように、ソレノイドバルブ140のバルブボディ141が、カバー部材112の外側面112bに、前記カムリング偏心方向線Nと平行に一体形成されていて、当該ソレノイドバルブ140がハウジングと一体に構成されている。
【0205】
なお、ソレノイドバルブ140の構造については、前記第3実施形態と同様であり、前記カバー部材112に一体に形成されたバルブボディ141内に弁体1421が摺動自在に収容され、当該バルブボディ141の図35中の上端部である一端開口部に電磁ユニット144が取り付けられている。
【0206】
また、かかる構成の変更に伴い、前記カバー部材112の内側面12cには、図36に示すように、吸入ポート121、吐出ポート122、吐出ポート122と軸受孔112aを連通する連通溝123、及び吐出ポート122から延設される導入通路125が、ポンプハウジング111と同様にそれぞれ設けられている。
【0207】
さらに、このカバー部材112には、前記ポンプハウジング111の内部(ポンプ収容室113)とバルブボディ141の内部とを連通するように、導入通路124の所定の位置にINポート141aが、該INポート141aに対して前記カムリング基準線Mを挟んでほぼ対称となる所定位置に導入孔135を兼ねるOUTポート141bが、それぞれ穿設されていると共に、当該カバー部材112に一体形成されたバルブボディ111の周壁及び底壁の各所定位置には、ドレンポート141c及び背圧ポート141dがそれぞれ貫通形成されている。
【0208】
したがって、この実施形態によれば、カムリング117の偏心揺動時において、前記各シール部材130,130が、アルミニウム合金材からなるポンプハウジング111よりも硬度の高い鉄系の焼結材からなるカムリング117の前記各シール面117g,117hと摺接することになるため、当該各シール部材130,130による相手部材の摩耗を抑制することができる。これにより、前記第3実施形態と比べて、可変容量形ポンプ01の耐久性が向上する。
【0209】
さらに、本実施形態では、ソレノイドバルブ140を、カバー部材112、つまり、ハウジングと一体に形成したことから、可変容量形ポンプ01の油圧回路を該可変容量形ポンプ01内で完結させることができる。このため、可変容量形ポンプ01を中心とした油圧供給システムとしての小型化に供される。
〔第5実施形態〕
図37〜図39は、第5実施形態を示しており、前記第4実施形態の構成を基本として、該第4実施形態に係るソレノイドバルブ140に代えて、吐出圧により作動する油圧方向切換弁150をもってポンプの吐出圧特性を変更するように構成したものである。
【0210】
すなわち、本実施形態では、前記ソレノイドバルブ140の代替として、周知のスプール形の油圧方向切換弁150が用いられており、この油圧方向切換弁150は、図37、図38に示すように、一端側が開口形成されて他端側が閉塞された円筒状のバルブボディ151と、該バルブボディ151の一端開口部を閉塞するプラグ152と、バルブボディ151内に軸方向へ摺動自在に収容され、両端部に有する第1、第2ランド部153a,153bによって当該バルブボディ151内に圧力室155及び背圧室156を画成する弁体153と、背圧室156内に収容され、弁体153を圧力室155側へ付勢するスプリング154と、を備え、圧力室154の内圧が前記要求油圧P1より高く前記要求油圧P2よりも低く設定された所定の設定圧Pzを超えると、図38に示すように、弁体153がスプリング154の付勢力に抗して背圧室156側へ移動するように設定されている。
【0211】
前記バルブボディ151は、その周壁における軸方向の所定位置に、吐出孔122aに接続されるINポート151aと、導入孔135に接続されるOUTポート151bと、吸入ポート121又は外部に接続されるドレンポート151cとがそれぞれ貫通形成されていると共に、背圧室155側の側壁に、吸入ポート121又は外部に接続されて背圧室145を吸入圧又は大気圧に常時開放する背圧ポート151dが貫通形成されている。
【0212】
前記プラグ152は、前記バルブボディ151の一端側における開口端部の内周面に設けられた雌ねじ部に螺着されており、軸心に沿って導入ポート152aが貫通形成され、該導入ポート152aを通じて圧力室155内に吐出圧が常時導入されるようになっている。
【0213】
前記弁体153は、軸方向の中間部が縮径形成されていて、前記両ランド部153a,153bによってバルブボディ151との間に環状空間157を画成し、この環状空間157を介してOUTポート151bとINポート151a又はドレンポート151cとが連通するようになっている。
【0214】
すなわち、弁体153が非作動状態にあるときは、第1ランド部153aによりINポート151aが遮断され、OUTポート151bとドレンポート151cとが環状空間157を介して連通することとなる一方、弁体153が作動したときには、第2ランド部153bによりドレンポート151cが遮断され、INポート151aとOUTポート151bとが環状空間157を介して連通することとなる。
【0215】
したがって、本実施形態に係る可変容量形ポンプ01の場合には、機関の回転数が低い状態においては、油圧方向切換弁150のINポート151aが遮断されて第1制御油室131にのみ吐出圧が作用することから、図40に示すように、吐出圧が第1作動油圧Pxに達すると、カムリング117が偏心量減少方向へ揺動することとなって吐出圧の上昇が緩やかになるといった前記低圧特性Xを発揮することとなる(同図中のT1区間)。
【0216】
そして、吐出圧が上昇して圧力室155の内圧が前記設定圧Pzに達すると、該圧力室155の内圧に基づき弁体153がスプリング153の付勢力に抗して背圧室155側へ軸方向移動を開始し、この弁体152の軸方向移動に伴い、ドレンポート151cが第2ランド部153bによって閉塞されると共にINポート151aが環状空間157に漸次開口することとなる。これによって、INポート151aとOUTポート151bとが環状空間157を介して徐々に連通することとなって、第2制御油室132内に吐出圧が漸次導入されるようになる。この結果、第2制御油室132の内圧が上昇し、これに伴いカムリング117が偏心量増大方向へ揺動することから、吐出圧がさらに大きく増大するといった前記高圧特性Yを発揮することとなる(図40中のT2区間)。
【0217】
このように、本実施形態によれば、より低廉な製造コストでもって機関の回転数に合わせた吐出圧特性を備えるオイルポンプを得ることができる。
【0218】
また、バルブタイミング制御装置の作動圧は、前記低圧特性X中のP1に設定され、オイルジェット30の開弁圧は、高圧特性YのP3に設定されており、前記第1作動油圧Pxは前記P3よりも十分に低い油圧に設定されていることから、消費エネルギーの低減化など前記各実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0219】
また、前記各実施形態では、第1制御油室131の内圧に対してコイルばね118の付勢力と第2制御油室132の内圧をバランスさせることによってカムリング117の作動を制御しているが、ポンプの仕様によっては、第1受圧面133の受圧面積を第2受圧面134の受圧面積よりも大きく設定することにより、コイルばね118を廃止し、前記両圧力室31,32の内圧(差圧)のみによってカムリング117の作動を制御するようにしてもよい。
【0220】
さらには、前記各実施形態では、前記第2受圧面134の受圧面積を第1受圧面133の受圧面積よりも小さく設定しているが、内燃機関等の要求によっては前記両受圧面33,34を等しく設定してもよい。
【0221】
また、前記制御油室の機密性を確保するためにシール部材を設置しているが、内燃機関の要求油圧特性が満足できれば、コスト削減のためシール部材を削減することも可能である。
【0222】
前記ばね収容室の配置をさらに変更することも可能であり、また、両コイルばねのセット荷重は、それぞれポンプの仕様や大きさに応じて自由に設定することが可能であると共に、そのコイル径や長さも自由に変更することができる。
【0223】
また、可変動弁装置としては、バルブタイミング制御装置に限定されるものではなく、油圧を作動源とする、例えば、機関弁の作動角とリフト量を可変にするリフト可変機構などに適用することが可能である。
【0224】
さらに、この可変容量形ポンプを、内燃機関以外の油圧機器類等に適用することも可能である。
【0225】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2吐出圧は、前記オイルジェットがオイルを吐出し始める圧力よりも高い圧力に設定したことを特徴とする可変容量形ポンプ。
【0226】
この発明によれば、請求項1の発明の作用効果に加えて、第2吐出圧をオイルジェットから噴射される圧力より高く設定することによって、油温の上昇や内燃機関の冷却状態のばらつきなどに左右されずにオイルジェットからピストンへの噴射をより確実なものとすることができる。
〔請求項b〕請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記オイルジェットは、
オイルが供給されるオイル供給部と、該オイル供給部に供給されたオイルを導入するオイル導入部と、該オイル供給部とオイル導入部との間に形成された弁座と、を備えたボディと、
前記オイル供給部に供給されるオイルの圧力に応じて前記弁座に離着座して前記オイル供給部を開閉する弁体と、
前記弁体を閉弁方向へ付勢すると共に、前記弁体の開弁圧を前記第1吐出圧よりも高い圧力に設定された付勢部材と、
前記オイル導入部の下流側に接続され、噴射口から前記ピストンに向かってオイルを噴射する噴射ノズルと、
を備えたことを特徴とする可変容量形ポンプ。
〔請求項c〕請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記可動部材は、内周面にカム面が形成されたカムリングであり、
前記ポンプ構成体は、内燃機関によって回転駆動されるロータと、該ロータの外周側から進退自在に設けられ、前記カムリングの内周面方向へ進出することによって前記複数の作動室を隔成するベーンと、を備え、
前記カムリングを移動させることにより、前記ロータの中心に対するカムリングの偏心量を変化にすることを特徴とする可変容量形ポンプ。
〔請求項d〕請求項cに記載した可変容量形ポンプにおいて、
前記吐出されるオイルは内燃機関の摺動部を潤滑するためのものであることを特徴とする可変容量形ポンプ。
〔請求項e〕請求項3に記載のオイルジェットにおいて、
前記オイルジェットがオイルを噴射し始める圧力を、前記第2吐出圧よりも低く設定したことを特徴とするオイルジェット。
〔請求項f〕請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記吐出されるオイルは、内燃機関の駆動回転体とカムシャフトとの相対回転位相を可変にするバルブタイミング制御装置と該バルブタイミング制御装置のロック機構を作動するためにも用いられ、
前記ロック機構のロックを解除する圧力が、前記第1吐出圧より低い圧力に設定されていることを特徴とする可変容量形ポンプ。
【符号の説明】
【0227】
01…可変容量形ポンプ
1・111…ポンプハウジング
1a…底面
2・112…カバー部材
2a…内側面
3・114…駆動軸
4・115…ロータ
5・117…カムリング
5a…カムリング内周面
5b…ピボット凸部
7・121…吸入ポート
8・122…吐出ポート
9…ピボットピン
11・116…ベーン
13・120…ポンプ室
14…シール部材
15…弾性部材
16…制御油室
16a・131…第1制御油室
16b・132…第2制御油室
17・117b…アーム
19…第1ばね収容室
20…第1コイルばね
21…第2ばね収容室
22…第2コイルばね
30…オイルジェット
46…ボール弁体(弁体)
50…バルブスプリング(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されるオイルの圧力が所定以上になったときに、内燃機関のピストンにオイルを噴射するオイルジェットにオイルを供給する可変容量形ポンプであって、
前記内燃機関によって回転駆動されることによって、吸入部から複数の作動室に流入したオイルを、前記作動室の容積変化を得て吐出部から吐出するポンプ構成体と、
一方向へ移動することにより前記吐出部から吐出されるオイルの流量を減少させる可動部材と、
前記オイルの吐出圧が第1吐出圧になると前記可動部材を一方向へ所定量だけ移動させ、前記第1吐出圧よりも高圧の第2吐出圧となると前記可動部材をさらに一方向に移動させる制御手段と、を備え、
前記第1吐出圧は、前記オイルジェットがオイルを噴射し始める圧力よりも低い圧力に設定したことを特徴とする可変容量形ポンプ。
【請求項2】
供給されるオイルの圧力が所定以上になったときに、内燃機関のピストンにオイルを噴射するオイルジェットと、
前記内燃機関によって回転駆動されることによって、吸入部から複数の作動室に流入したオイルを、前記作動室の容積変化を得て吐出部から吐出するポンプ構成体と、一方向へ移動することにより前記吐出部から吐出されるオイルの流量を減少させる可動部材と、前記オイルの吐出圧が第1吐出圧になると前記可動部材を一方向へ所定量だけ移動させ、前記第1吐出圧よりも高圧の第2吐出圧となると前記可動部材をさらに一方向に移動させる制御手段と、を備えた可変容量形ポンプと、
前記第1吐出圧は、前記オイルジェットがオイルを噴射し始める圧力よりも低い圧力に設定したことを特徴とする可変容量形ポンプを用いた潤滑システム。
【請求項3】
内燃機関によって回転駆動されることによって、吸入部から複数の作動室に流入したオイルを、前記作動室の容積変化を得て吐出部から吐出するポンプ構成体と、一方向へ移動することにより前記吐出部から吐出されるオイルの流量を減少させる可動部材と、前記オイルの吐出圧が第1吐出圧になると前記可動部材を一方向へ所定量だけ移動させ、前記第1吐出圧よりも高圧の第2吐出圧となると前記可動部材をさらに一方向に移動させる制御手段と、を備えた可変容量形ポンプから供給されたオイルの圧力が所定圧以上になったときに内燃機関のピストンにオイルを吐出するオイルジェットであって、
前記オイルジェットからオイルを噴射し始める圧力は、前記第1吐出圧よりも高い圧力に設定したことを特徴とするオイルジェット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2011−163194(P2011−163194A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26335(P2010−26335)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】