説明

可燃物の焼却、熱分解ガス化、処理方法、および処理装置

【課題】 可燃物を予め破砕することなく処理することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても流動媒体にチャーやタールが付着して排出されることを防止することができる可燃物の処理方法を提供する。
【解決手段】 流動媒体が充填された乾燥・熱分解室10に流動化ガスを供給して乾燥・熱分解室10内の流動媒体を流動化し、乾燥・熱分解室10内の流動層内に可燃物50を供給する。流動媒体が充填された燃焼室12から乾燥・熱分解室10に流動媒体を受け入れて可燃物50を乾燥し、乾燥された可燃物50および乾燥・熱分解室10内の流動媒体を燃焼室12に供給する。燃焼室12に酸素を含む流動化ガスを供給して燃焼室12内の流動媒体を流動化し、供給された可燃物50を燃焼室12の流動層内で燃焼する。燃焼室12内の流動媒体を乾燥・熱分解室10に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃物の焼却、熱分解ガス化、処理方法、および処理装置に係り、特に流動媒体が充填された流動層炉を用いた可燃物の焼却、熱分解ガス化、処理方法、および処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の廃棄物焼却のための流動床焼却技術では、炉内の燃焼速度が速いため、原料供給量の変動がそのまま燃焼量の変動となり、空気不足状態を招きがちであった。したがって、従来の流動床焼却炉では、空気比を1.8以上と比較的高めに設定して空気を過剰気味に供給することで、COの発生を抑制していた。しかしながら、近年では、設備能力を抑えて設備のコストダウンを図ったり、通風量を抑えて運転コストを抑制したりするニーズが高まりつつある。
【0003】
一方、廃棄物等の可燃物の流動床ガス化技術においても、燃焼(ガス化反応)量の変動が生成ガス量の変動につながる。これは、後段のガス精製設備のガスボリュームを高める必要が生ずることを意味している。したがって、廃棄物等の可燃物のガス化技術においても、燃焼量の変動を抑制することが重要となる。
【0004】
燃焼量の変動を抑制するためには、流動床の温度を低くすればよいことは、原理的にも経験的にも知られてはいるが、流動床の温度が550℃以下になると、発生したタールやチャーが流動媒体や不燃物とともに炉床から外部に排出されてしまう傾向がある。このようにして炉床から外部に排出された流動媒体や不燃物やチャーを分析すると、有害物質(例えばダイオキシン類)の含有率が高くなる場合がありうるため、流動床の温度を低くするには限界があった。
【0005】
以上のことから、原料供給量の変動を吸収して燃焼量の変動幅を抑制するために、やむを得ず廃棄物等の可燃物を事前に破砕機により破砕して均質化させる方法が採用される場合もある。しかしながら、この場合には、破砕機のメンテナンスやトラブルのたびに装置全体を停止および再起動する必要があり、運転経費が増大するという問題がある。また、原料を前処理して均質化する(RDF化)する方法が採用される場合もあるが、この場合には、別途RDF化を行う設備を設けなければならないため、必ずしもコスト的に採算がとれるものとはいえない。
【0006】
このような観点から、廃棄物等の可燃物を予め破砕することなく、原料供給量の変動を吸収して燃焼量の変動を抑制することができる流動床焼却技術および流動床ガス化技術が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、可燃物を予め破砕することなく焼却することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても有害物質(例えばダイオキシン類)が外部に排出されることを防止することができる可燃物の焼却方法を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、可燃物を予め破砕することなく熱分解ガス化することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても有害物質(例えばダイオキシン類)が外部に排出されることを防止することができる可燃物の熱分解ガス化方法を提供することを第2の目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、可燃物を予め破砕することなく処理することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても有害物質(例えばダイオキシン類)が外部に排出されることを防止することができる可燃物の処理方法および処理装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、可燃物を予め破砕することなく焼却することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても流動媒体や不燃物にチャーやタールが付着して排出されることを防止することができる可燃物の焼却方法が提供される。この可燃物の焼却方法によれば、流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、上記乾燥・熱分解室内の流動層内に都市ごみ、廃油、石油系残渣油、石炭、コークス、廃プラスチック、シュレッダーダスト、建築廃材などのうち、特に性状が不均一、不均質な可燃物、または汚泥、生ごみ、未乾燥バイオマスなどのように水分含有量の多い可燃物を供給する。流動媒体が充填された燃焼室から上記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて上記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および上記乾燥・熱分解室内の流動媒体を上記燃焼室に供給する。上記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、供給された上記可燃物を上記燃焼室の流動層内で燃焼する。上記燃焼室内の流動媒体を上記乾燥・熱分解室に供給する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、可燃物を予め破砕することなく熱分解ガス化することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても流動媒体や不燃物にチャーやタールが付着して排出されることを防止することができる可燃物の熱分解ガス化方法が提供される。この可燃物の熱分解ガス化方法によれば、流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、上記乾燥・熱分解室内の流動層内に都市ごみ、廃油、石油系残渣油、石炭、コークス、廃プラスチック、シュレッダーダスト、建築廃材などのうち、特に性状が不均一、不均質な可燃物、または汚泥、生ごみ、未乾燥バイオマスなどのように水分含有量の多い可燃物を供給する。流動媒体が充填された燃焼室から上記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて上記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および上記乾燥・熱分解室内の流動媒体を上記燃焼室に供給する。上記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、供給された上記可燃物を上記燃焼室の流動層内で熱分解ガス化して可燃ガスを生成する。上記燃焼室内の流動媒体を上記乾燥・熱分解室に供給する。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、可燃物を予め破砕することなく処理することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても流動媒体や不燃物にチャーやタールが付着して排出されることを防止することができる可燃物の処理方法が提供される。この可燃物の処理方法によれば、流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、上記乾燥・熱分解室内の流動層内に都市ごみ、廃油、石油系残渣油、石炭、コークス、廃プラスチック、シュレッダーダスト、建築廃材などのうち、特に性状が不均一、不均質な可燃物、または汚泥、生ごみ、未乾燥バイオマスなどのように水分含有量の多い可燃物を供給する。流動媒体が充填された燃焼室から上記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて上記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および上記乾燥・熱分解室内の流動媒体を上記燃焼室に供給する。上記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、供給された上記可燃物を上記燃焼室の流動層内で部分燃焼して部分燃焼ガスを生成する。上記燃焼室内の流動媒体を上記乾燥・熱分解室に供給し、上記燃焼室で生成された部分燃焼ガスを溶融炉に供給する。上記溶融炉内で上記部分燃焼ガスを燃焼して灰分を溶融スラグ化する。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、可燃物を予め破砕することなく処理することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても流動媒体や不燃物にチャーやタールが付着して排出されることを防止することができる可燃物の処理方法が提供される。この可燃物の処理方法によれば、流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、上記乾燥・熱分解室内の流動層内に都市ごみ、廃油、石油系残渣油、石炭、コークス、廃プラスチック、シュレッダーダスト、建築廃材などのうち、特に性状が不均一、不均質な可燃物、または汚泥、生ごみ、未乾燥バイオマスなどのように水分含有量の多い可燃物を供給する。流動媒体が充填された燃焼室から上記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて上記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および上記乾燥・熱分解室内の流動媒体を上記燃焼室に供給する。上記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、供給された上記可燃物を上記燃焼室の流動層内で熱分解ガス化して可燃ガスを生成する。上記燃焼室内の流動媒体を上記乾燥・熱分解室に供給し、上記燃焼室で生成された可燃ガスを溶融炉に供給する。上記溶融炉内で上記可燃ガスを高温ガス化して灰分を溶融スラグ化するとともにガス化生成ガスを生成する。
【0014】
本発明の第5の態様によれば、可燃物を予め破砕することなく処理することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても流動媒体や不燃物にチャーやタールが付着して排出されることを防止することができる可燃物の処理装置が提供される。この処理装置は、流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された乾燥・熱分解室と、酸素を含む流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された燃焼室と、上記燃焼室で生成された部分燃焼ガスを燃焼して灰分を溶融スラグ化する溶融炉とを備えている。上記乾燥・熱分解室の流動層内には、都市ごみ、廃油、石油系残渣油、石炭、コークス、廃プラスチック、シュレッダーダスト、建築廃材などのうち、特に性状が不均一、不均質な可燃物、または汚泥、生ごみ、未乾燥バイオマスなどのように水分含有量の多い可燃物が供給される。上記乾燥・熱分解室は、上記燃焼室から受け入れられた流動媒体により上記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕する。上記燃焼室には、上記乾燥・熱分解室の乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および該乾燥・熱分解室内の流動媒体が供給される。上記燃焼室は、上記乾燥・熱分解室から供給された上記可燃物を該燃焼室の流動層内で部分燃焼して部分燃焼ガスを生成する。
【0015】
本発明の第6の態様によれば、可燃物を予め破砕することなく処理することができ、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げても流動媒体や不燃物にチャーやタールが付着して排出されることを防止することができる可燃物の処理装置が提供される。この処理装置は、流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された乾燥・熱分解室と、酸素を含む流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された燃焼室と、上記燃焼室で生成された可燃ガスを高温ガス化して灰分を溶融スラグ化するとともにガス化生成ガスを生成する溶融炉とを備えている。上記乾燥・熱分解室の流動層内には、都市ごみ、廃油、石油系残渣油、石炭、コークス、廃プラスチック、シュレッダーダスト、建築廃材などのうち、特に性状が不均一、不均質な可燃物、または汚泥、生ごみ、未乾燥バイオマスなどのように水分含有量の多い可燃物が供給される。上記乾燥・熱分解室は、上記燃焼室から受け入れられた流動媒体により上記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕する。上記燃焼室には、上記乾燥・熱分解室の乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および該乾燥・熱分解室内の流動媒体が供給される。上記燃焼室は、上記乾燥・熱分解室から供給された上記可燃物を該燃焼室の流動層内で熱分解ガス化して可燃ガスを生成する。
【0016】
乾燥・熱分解室の流動層の温度を好ましくは約100〜550℃(水分の蒸発温度以上、緩慢な熱分解の起こる温度以下)、より好ましくは約120〜450℃(乾燥を促進する温度以上、鉄の軟化温度以下)、さらに好ましくは約120〜350℃(ポリ袋が溶解する温度以下)、さらに好ましくは約150〜350℃(乾燥をより促進する温度以上)に維持するのがよい。また、乾燥・熱分解室には、酸素を含まないガス(例えば、HO、N、CO、CO、H、CHなどのガスや、これらのガスが複数混合したガス)、あるいは上記燃焼室からの燃焼排ガス、あるいは空気を流動化ガスとして供給することができる。また、2軸のスクリューコンベヤ装置、プッシャー装置、およびプッシャー装置と火格子式搬送装置とを有する供給装置のうち少なくとも1つにより上記可燃物を上記乾燥・熱分解室に供給することができる。また、乾燥・熱分解室には、都市ごみ、生ごみ等の廃棄物や廃プラスチック、汚泥、シュレッダーダスト、廃油、生ごみなどの産業廃棄物、石油系残渣油や石炭、コークスなどの燃料、建築廃材、あるいはバイオマスなどの可燃物を単独で、または複数混合して供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流動層炉を用いて可燃物を焼却または熱分解ガス化するときに、流動層の温度を例えば約550℃以下に下げてもチャーやタールが流動媒体や不燃物とともに、炉床から外部に排出されることがない。すなわち、流動層炉は乾燥・熱分解室と燃焼室とに分けられており、流動媒体がその間を循環している。原料としての可燃物は乾燥・熱分解室に供給されるが、乾燥・熱分解室は水蒸気等の酸素を含まないガスあるいは燃焼排ガス等の酸素をほとんど含まないガスなどを流動化ガスとして流動化しているため、乾燥・熱分解室では原料はほとんど燃焼されないため発熱せず流動層の温度は550℃以下に保たれる。また、投入された可燃物は流動層内で緩慢な乾燥・熱分解を受け熱的に破砕され、可燃物を投入前に破砕しておく必要がない。この熱破砕された可燃物は流動媒体とともに燃焼室に移動する。燃焼室は空気などの酸素を含むガスで流動化しているため、燃焼室では燃焼反応が進み流動層の温度が上昇する。この燃焼室の温度は550℃以上に保たれ、乾燥・熱分解室で発生したタールやチャーが流動媒体や不燃物とともに外部に排出されてしまうことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る可燃物の処理方法を利用したシステムの実施形態について図1から図24を参照して詳細に説明する。なお、図1から図24において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。本実施形態におけるシステムは、投入された原料50を焼却処理するものである。図1に示すように、流動媒体が充填された乾燥・熱分解室10と流動媒体が充填された燃焼室12とを有する流動層炉14を備えており、原料50が乾燥・熱分解室10に投入される。
【0020】
原料50としては、都市ごみ、生ごみなどの廃棄物や廃プラスチック、汚泥、シュレッダーダスト、廃油、生ごみなどの産業廃棄物、石油系残渣油や石炭、コークスなどの燃料、あるいはバイオマス、建築廃材などの可燃物が単独または複数混合して投入される。この原料50は、原料供給装置16により流動層炉14の乾燥・熱分解室10に供給され、500℃程度の低温で緩慢に乾燥および熱分解される。この乾燥および熱分解により、乾燥および熱分解された原料50に加えて、乾燥により発生する水分と熱分解により発生する熱分解ガスとの混合物と、熱分解によって発生するタールとが生成される。このとき、原料50は解砕される。流動層炉の場合、発生するタールは、流動媒体に付着して存在するものもあるし、乾燥および熱分解された原料50に付着した状態のものもある。解砕は、乾燥・熱分解室10が流動層炉である場合には顕著に起こる。この解砕により、原料50は炉内で均一に分散されるので、原料供給装置16で供給できる大きさまでは、破砕することなく炉内に投入しても安定に燃焼させることができる。
【0021】
ここで、原料供給装置16には、図2(a)に示すような、モータ160と、モータ160に連結されたスクリュー161とを有するスクリューコンベヤ(スクリューフィーダ)16aを用いてもよいし、ストーカ炉のようにプッシャーだけを用いて原料50を押し込んでもよい。また、図2(b)に示すようなプッシャー162と火格子163とを備えた火格子式搬送装置16bや内部に砂が充填された傾斜コンベヤを用いてよい。このように原料供給装置16を簡素化できるのは、上述したように、乾燥・熱分解室10で原料50を乾燥および熱分解することで解砕し、炉内に均一に分散できるようにしたため、原料50の投入量の変動(まとまった原料が一時に大量に投入されてしまったり、供給されない時間が生じたりすることなどによる変動)があり、供給量の変動(一時的な大量投入や無供給時間ができること)によって炉内の発生ガスの量が変化し、この発生ガスの量の変化に起因する圧力の変動があっても、これらの変動に影響を受けることなく燃焼室12での安定した燃焼を実現することが可能になるからである。このような変動抑制の効果は、特に流動層炉を用いることで容易に実現可能である。
【0022】
乾燥・熱分解室10で乾燥および熱分解された原料50は、同時に発生したタールとともに、特に流動層炉を用いる場合にはさらに流動媒体とともに経路18を介して燃焼室12に移動される。燃焼室12に移動した原料50は、供給されるガス51中の酸素との反応により燃焼される。供給されるガス51として、空気、酸素を富化した空気、または酸素を水蒸気で希釈したガスなどの酸素を含むガスを用いることができる。また、燃焼室12で発生した燃焼排ガスの一部をそのまま、あるいは酸素を富化して供給してもよい。
【0023】
また、燃焼室12において、乾燥・熱分解室10から供給される原料50の理論酸素量よりも少ない酸素を含有するガスを供給することにより、燃焼室12を部分燃焼室として用い、流動層炉14をガス化炉として構成することもできる。この場合には、乾燥・熱分解された原料50を部分燃焼室12で部分燃焼させ、部分燃焼によって発生した熱と酸素により原料50の一部を熱分解・ガス化し、可燃性ガス成分を含むガス化生成ガスを部分燃焼室12から得られるようにすることができる。
【0024】
燃焼室12での燃焼反応によって、特に流動層炉を用いる場合には流動媒体が加熱され、加熱された流動媒体52を乾燥・熱分解室10に移動させ、乾燥・熱分解に必要な熱源として利用することもできる。
【0025】
乾燥・熱分解室10には、乾燥・熱分解のための乾燥剤53として水蒸気、空気や燃焼排ガスなどを供給する。乾燥および熱分解には熱の供給(乾燥用の原料を昇温させ、水分を気化させるのに必要な熱および熱分解に必要な熱)が必要であるが、この熱を燃焼室12からの燃焼排ガスや燃焼排ガスで加熱した加熱空気等の高温ガスの供給によってまかなってもよい。特に流動層炉の場合には、上述のように燃焼室12での燃焼反応によって高温化された流動媒体52を乾燥・熱分解室10に供給することで、乾燥と熱分解に必要な熱を供給することも可能である。このような場合には、流動化を維持し、発生した水分や熱分解ガスを排出するためのガスを乾燥・熱分解室10に供給してもよい。この場合に供給するガスとしては、水蒸気、空気や燃焼ガスなどを用いることができる。
【0026】
乾燥・熱分解室10は、これら乾燥剤53および/または燃焼室12からの流動媒体52によって供給される顕熱によって、約100〜550℃(水分の蒸発温度以上、緩慢な熱分解の起こる温度以下)、好ましくは約120〜450℃(乾燥を促進する温度以上、鉄の軟化温度以下)、より好ましくは約120〜350℃(ポリ袋が溶解する温度以下)、さらに好ましくは約150〜350℃(乾燥をより促進する温度以上)に保たれるのがよい。これらの温度は、乾燥に必要な温度(約100℃以上)よりも高く、緩慢な熱分解を起こすのに適した温度以下であるのが好ましい。乾燥・熱分解室10の温度の上限を低くする方が、熱分解反応が緩慢になり原料供給量の変動(すなわち発生するガスの量および質の変動)を吸収できることとなる点で好ましい。
【0027】
上述したように、乾燥・熱分解室10では、原料50の加熱、乾燥、熱分解、および解砕が行われる。乾燥により原料50中の水分が、熱分解により熱分解ガスとタールおよび熱分解残渣が発生する。この熱分解残渣が乾燥・熱分解された原料である。発生した水分と熱分解ガスは、一緒に乾燥・熱分解室10から排出される。排出された乾燥・熱分解ガス54は、乾燥・熱分解ガス利用/処理装置20に送られ、洗浄や精製などがなされてから可燃性ガスとして利用されるかもしくは燃焼処理される。
【0028】
図1は、乾燥・熱分解ガス54中に含まれる可燃ガス成分を精製して動力回収する例を示しているが、乾燥・熱分解ガス利用/処理装置20は、後述の実施形態で説明するように、このようなプロセスに限定されるものではない。
【0029】
図1では、乾燥・熱分解室10から排出された乾燥・熱分解ガス54は、まず乾燥・熱分解ガス利用/処理装置20の洗浄装置22に送られる。洗浄装置22においては、例えばスクラバなどを用いて、乾燥・熱分解ガス54が冷却され、ガス54中に含まれる水分が除去され、また、ガス54中に含まれるタールなどの低温で凝縮する物質およびダストが除去される。洗浄されたガス55は精製装置24に送られ、この精製装置24においては、例えば固定床や湿式洗浄塔などを用いて、ガス55中に含まれる塩化水素や硫化水素、硫黄酸化物などの酸性ガスやアンモニアやシアン等の有害物質が除去される。精製装置24で精製されたクリーンな可燃性ガス成分を含むガス56は貯留装置26に貯蔵され、必要量が動力回収装置28に送られて発電に供される。
【0030】
洗浄装置22でスクラバを用いた場合には排水57が発生するが、この排水57は系外に排出される。排水57を排出するにあたり、必要に応じて廃水処理設備(図示せず)により処理をするのが好ましい。本実施形態においては、乾燥・熱分解ガス利用/処理装置20において動力(電力)を回収することができ、さらに排気ガス58が排出される。排気ガス58は、必要に応じて排ガス処理設備(図示せず)により処理してから排出するのが好ましい。
【0031】
乾燥・熱分解室10で発生したタールと熱分解残渣は、流動層炉の場合には流動媒体とともに燃焼室12に送られる。燃焼室12には、酸素を含むガス51が供給され、供給されるガス51中の酸素との反応により熱分解残渣は燃焼または部分燃焼される。熱分解残渣の燃焼により発生する熱によって、燃焼室12を約550〜660℃に保つのがよい。これは、燃焼室12内での原料の燃焼によって発熱し、結果として流動媒体の温度が上昇するが、燃焼室12内の流動層の温度は、少なくとも約550℃以上に保つのがよく、上限はアルミニウムの融点である約660℃以下とするのがよいからである。また、原料の変動に伴う温度変動や燃焼反応が行われる温度が流動層の温度よりも高いことを考慮すると、燃焼室12の流動層の温度は、好ましくは約570〜630℃、より好ましくは約580℃〜620℃、さらに好ましくは約590〜610℃とするのがよい。
【0032】
燃焼室12では、熱分解残渣の少なくともその一部が燃焼し、燃焼ガス59が発生する。また、原料中の灰分も発生する。特に原料50が廃棄物等である場合、原料50中に含まれる不燃物は、燃焼によって可燃分から分離され、排出および回収される。また、乾燥・熱分解室10および燃焼室12で発生したタールも燃焼室12内で燃焼される。このため、タールが燃焼によりなくなったクリーンな状態で、不燃物60を燃焼室12から抜き出して回収することができる。
【0033】
燃焼室12が流動層炉である場合には、炉底に不燃物排出口を設け、不燃物排出装置により不燃物60を流動媒体とともに炉外に排出し、不燃物60と流動媒体を分離して、分離された流動媒体は炉内に戻すように構成するのがよい。また、燃焼室12が流動層炉である場合には、燃焼反応による発熱で流動媒体が加熱され、加熱された流動媒体を乾燥・熱分解室10に供給することで、乾燥・熱分解反応に必要な熱を流動媒体の移動により供給することも可能である。燃焼室12で発生した燃焼ガス59は、燃焼ガス利用/処理装置30で利用または処理される。
【0034】
図1に示す例では、燃焼ガス59は、2次燃焼装置32に供給され、空気等の酸素を含むガスと反応して完全燃焼される。焼却炉のように原料を完全燃焼処理するプロセスでは、NOxの発生量を低くするために2段燃焼システムを採用するのが一般的である。本実施形態においては、NOxの発生量を低くするためよりもむしろ炉内の温度を低く保つために2段燃焼システムを採用している。すなわち、通常、1次燃焼段階で供給される酸素量は、NOxの発生の抑制などを目的として燃焼室12に供給された原料の理論燃焼酸素量よりも少なく維持されるのが一般的であるが、本実施形態においては燃焼室12で燃焼される原料は乾燥・熱分解室10で予め熱分解を受けているため、有機性窒素等の揮発分が既に放出されており、NOxの発生量の増加を心配することなく酸素比を1以上にすることができる。しかしながら、本実施形態では、上述したように流動層の温度を所定の温度範囲に維持する必要があるため、大量の酸素で完全に燃焼させると所定温度以上の高温になってしまう場合には酸素比を1以下にする場合がある。このような理由から、図1に示す例では2次燃焼装置32を設けているが、原料によって1次酸素比を1以上にしても燃焼室12の流動層の温度を上述した適切な温度範囲に維持できる場合には、2次燃焼装置32をなくすことができる。
【0035】
2次燃焼装置32において完全燃焼されたガス61は高温であるため、熱回収装置34でその顕熱を回収して降温される。熱回収装置34には、ボイラや空気予熱器などの間接熱交換器を用いることができる。図示していないが、ボイラを用いた場合にはボイラで発生した水蒸気を乾燥・熱分解室10の乾燥剤として供給してもよく、また、空気予熱器を用いた場合には予熱され高温化された空気を燃焼室12の酸化剤または乾燥・熱分解室10の乾燥剤として供給してもよい。熱回収装置34で減温された燃焼ガス62は、脱塵装置36および有害物質除去装置38に導入され、ダストおよびガス中の塩化水素や硫黄酸化物等の有害成分が除去された後、煙突から排気される。
【0036】
なお、本実施形態においては、2段燃焼システムを採用した例について説明したが、後述の実施形態で説明するように、燃焼ガス利用/処理装置30の構成は図1に示すものに限られるものではない。
【0037】
図3は、本発明の第2の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。図3に示すように、本実施形態におけるシステムは、流動媒体が充填された乾燥・熱分解室10と流動媒体が充填された燃焼室12とを有する流動層炉14を備えており、原料50が乾燥・熱分解室10に投入される。
【0038】
第1の実施形態と同様に、投入される原料50は予め破砕されている必要はなく、原料供給装置16が許容する最大サイズのまま流動層炉14に供給される。原料供給装置16としては、通常は2軸のスクリューコンベヤ(図2(a)参照)が用いられるが、ストーカ炉のようにプッシャーだけを用いて原料50を押し込んでもよい。また、図2(b)に示すようなプッシャー162と火格子163とを備えたストーカ炉型のフィーダ16bや内部に砂が充填された傾斜コンベヤを用いてもよい。
【0039】
乾燥・熱分解室10内の流動媒体は、蒸気等の酸素を含まないガスで流動化されており、原則として乾燥・熱分解室10で燃焼反応が生じないようにしている。なお、蒸気等の酸素を含まないガスの入手が困難な場合は、燃焼排ガスなどの酸素濃度が空気と比べて比較的低いガスを用いることもできる。また、原料50が大量の水分を含むような場合は、乾燥・熱分解室10の温度を維持するために、そこで乾燥・熱分解室10内で原料50を燃焼させる必要が生じる場合もあるが、その場合には、空気等の酸素含有ガスで原料50を流動化させてもよい。
【0040】
乾燥・熱分解室10の流動層の温度は、約550℃以下、好ましくは約500℃以下、より好ましくは約450℃以下、さらに好ましくは約400℃以下に保たれるのがよい。乾燥・熱分解室10の温度が低い方がよいのは、熱分解反応が緩慢になり、原料供給量の変動を吸収できるからである。流動層の温度の維持は、後述する燃焼室12から循環して戻ってくる流動媒体によってなされるが、この流動媒体の循環量をコントロールすることで乾燥・熱分解室10の流動層の温度を制御することができる。
【0041】
乾燥・熱分解室10に投入された原料50は、流動媒体の熱で乾燥および熱分解され、その結果破砕される。また、その過程で発生する蒸気やガス状の熱分解生成物は、後述する燃焼室12の燃焼ガスと流動層炉14の下流で混合される。
【0042】
乾燥・熱分解室10の流動層の温度を低くする以外に、熱分解反応を緩慢にさせるもう1つの手段としては、原料50の比表面積を小さくするという方法もある。原料50を破砕しないで供給できるのは、この点からも有効である。
【0043】
乾燥・熱分解室10で破砕された原料50は、流動媒体とともに燃焼室12に移動する。原料50の熱分解の過程でタールやチャーも発生するが、発生したタールやチャーの一部は流動媒体に付着して燃焼室12に供給される。
【0044】
燃焼室12内の流動媒体は、酸素を含むガスで流動化されており、酸素を含むガスとしては通常は空気を用いる。流動媒体とともに燃焼室12に移動した原料50は、燃焼室12で燃焼される。排ガスの発生量を減らしたい場合には、図3の点線で示すように、空気の代わりに燃焼排ガスに酸素を付加したものを流動化ガスとして用いてもよい。このようにすることにより、空気を供給する場合に比べて窒素をほとんど含まないため、燃焼ガスの量は約1/5程度まで減らすことができる。
【0045】
燃焼室12内では、原料50の燃焼によって発熱し、結果として流動媒体の温度が上昇する。燃焼室12内の流動層の温度は、少なくとも約550℃以上に保つのがよく、上限はアルミニウムの融点である約660℃以下とするのがよい。原料の変動に伴う温度変動や燃焼反応が行われる温度が流動層の温度よりも高いことを考慮すると、燃焼室12の流動層の温度は、好ましくは約570〜630℃、より好ましくは約580℃〜620℃、さらに好ましくは約590〜610℃とするのがよい。
【0046】
また、乾燥・熱分解室10で発生し流動媒体に付着していたタールやチャーも燃焼室12内で燃焼されるので、流動媒体は昇温されるとともにクリーニングされる。昇温およびクリーニングされた流動媒体は、再び乾燥・熱分解室10に還流し、乾燥・熱分解用の熱を乾燥・熱分解室10に供給する熱媒体として機能する。このような機能を発現させる焼却炉としては、本発明者等が先に発明した内部循環流動床炉が最も適当であるが、2塔循環式の炉や他の方式の炉を用いてもよいことは言うまでもない。
【0047】
通常、1次燃焼段階で供給される酸素量は、NOxの発生の抑制などを目的として燃焼室12に供給された原料の理論燃焼酸素量よりも少なく維持されるのが一般的であるが、本実施形態においては燃焼室12で燃焼される原料は乾燥・熱分解室10で予め熱分解を受けているため、有機性窒素等の揮発分が既に放出されており、NOxの発生量の増加を心配することなく酸素比を1以上にすることができる。しかしながら、本実施形態では、上述したように流動層の温度を所定の温度範囲に維持する必要があるため、大量の酸素で完全に燃焼させると所定温度以上の高温になってしまう場合には酸素比を1以下にする場合がある。このような理由から、図3に示す例では2次燃焼装置32を設けているが、原料によって1次酸素比を1以上にしても燃焼室12の流動層の温度を上述した適切な温度範囲に維持できる場合には、2次燃焼装置32をなくすことができる。また、本実施形態では、上述した乾燥・熱分解室10で発生する蒸気やガス状の熱分解生成物を2次燃焼装置32に供給して燃焼させ完全分解することとしているが、2次燃焼装置32を設けない場合は、乾燥・熱分解室10からの蒸気や熱分解生成物を燃焼室12のフリーボードに供給し、フリーボードで完全燃焼させることで同様の効果を得ることができる。
【0048】
2次燃焼装置32以降のプロセスは通常の焼却システムと同様である。すなわち、2次燃焼装置32で燃焼されたガスの顕熱がボイラなどの熱回収装置34aおよび空気予熱器などの熱回収装置34bによって回収される。この場合において、ボイラ34aで発生した水蒸気を流動化蒸気として乾燥・熱分解室10に供給することができるし、空気予熱器34bで予熱された空気を燃焼用空気として燃焼室12に供給することもできる。熱回収装置34a,34bで減温された燃焼ガスは、脱塵装置36および脱硝装置38aに導入された後、煙突から排気される。
【0049】
図4は、本発明の第3の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。本実施形態におけるシステムは、原料50として下水汚泥など高含水率の可燃物を用いた場合の例である。
【0050】
図4に示すように、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気やガス状の熱分解生成物は、凝縮器40に導入され、ここで水分が除去された後、2次燃焼装置32で燃焼室12からの燃焼ガスと混合される。従来の焼却炉では、原料中の水分が蒸発して発生した水蒸気は1次燃焼ガス中に含まれ、分離されることなく2次燃焼炉に供給されるため、原料中の水分に起因する水蒸気を2次燃焼炉の温度まで昇温するための顕熱も必要である。原料の燃焼によってこの顕熱がまかなえればよいが、高含水率の原料の場合には通常熱量が不足し、重油などの補助燃料を2次燃焼炉に供給して水蒸気を高温化するための顕熱を得ていることが多い。上述した本実施形態の構成により、原料中の水分に起因する水蒸気を2次燃焼室に供給する前に除去することができるので、水蒸気を高温化するための熱量が不要となるので、高含水率で発熱量の低い原料であっても補助燃料の供給なしに焼却処理を行うことができる。なお、この場合には、凝縮器40から排出される凝縮水の水処理装置42が必要となるので、下水処理場や製紙工場などの水処理設備が充実した場所に適用するのが好ましい。
【0051】
また、本実施形態においては、乾燥・熱分解室10が果たす役割は原料乾燥が主となるため、乾燥・熱分解室10の温度は水分が蒸発する温度以上であればよく、その上限は、好ましくは約300℃以下、より好ましくは約200℃以下、さらに好ましくは約150℃以下に保たれるのがよい。また、温度の下限は、好ましくは約100℃以上、より好ましくは約120℃以上とするのがよい。
【0052】
他の部分については、図3に示す第2の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0053】
図5は、本発明の第4の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。本実施形態におけるシステムは、原料50として廃プラスチックや乾燥バイオマスなど比較的発熱量の高い可燃物を用いた場合の例である。
【0054】
図5に示すように、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気やガス状の熱分解生成物は、第3の実施形態と同様に、凝縮器40に導入され、ここで水分が除去される。凝縮器40から排出されたガスは、スクラバ22aで洗浄され、有価なガスとして貯留装置26に貯蔵され、必要量が動力回収装置28に送られて発電に供される。
【0055】
本実施形態においても、第3の実施形態と同様に、凝縮器40から排出される凝縮水の水処理装置42が必要となるので、下水処理場や製紙工場などの水処理設備が充実した場所に適用するのが好ましい。
【0056】
なお、図5に示す例では、凝縮器40とスクラバ22aが独立して設けられているが、スクラバ22aに凝縮器としての機能を持たせてもよい。また、ガスの用途によっては貯留装置26や動力回収装置28を省略できることは言うまでもない。例えば、スクラバ22aを出た生成ガスをセメントキルンや熱分解炉などの熱源用燃料ガスとして利用する場合には、スクラバ22aを出たガスをそのままこれらの装置に供給したり、使用先の装置で要求されるガス組成となるように、水性ガスシフト反応やメタン改質などの炭化水素の水蒸気改質反応を行わせる触媒装置などを設けてもよい。
【0057】
他の部分については、図4に示す第3の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0058】
図6は、本発明の第5の実施形態における可燃物の処理方法をガス化溶融炉に利用したシステムを示すフロー図である。本実施形態においては、燃焼室12の下流に2次燃焼装置を兼ねた灰溶融炉32aが設けられている。この灰溶融炉32aの温度は約1300℃以上に維持されている。燃焼室12で発生した部分燃焼ガスは、灰溶融炉32aに導入され、灰溶融炉32aの下部からはスラグ62が排出される。
【0059】
このような構成により、灰溶融炉32aに供給される熱量の変動が抑制されるので、灰溶融炉32aで熱量が不足する頻度を大幅に減らすことができ、灰溶融炉32aの助燃料の消費量を大幅に抑制することができる。
【0060】
図6に示す例では、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気およびガス状の熱分解生成物を、燃焼室12からの部分燃焼ガスと同様に灰溶融炉32aに導入しているが、このような構成とするかどうかは、原料の発熱量や乾燥・熱分解室10の運転温度による。すなわち、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気とガス状の熱分解生成物との混合物の理論燃焼温度が約1300℃以上である場合は、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気およびガス状の熱分解生成物を灰溶融炉32aに供給してもよいが、約1300℃に満たない場合は、図6に点線で示すように、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気およびガス状の熱分解生成物を灰溶融炉32aの下流に供給するのがよい。灰溶融炉32aが、燃焼とスラグ化とスラグ壁面捕集を行う前段ゾーンと、ガスおよびガスに同伴される可燃物の完全燃焼を行う後段ゾーンの2つのゾーンから構成される場合には、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気およびガス状の熱分解生成物を、前段ゾーンと後段ゾーンの間に供給するのがよい。
【0061】
乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気およびガス状の熱分解生成物を灰溶融炉32aに導入しない場合には、灰溶融炉32aを小さく設計することができる。したがって、高級な耐火材の使用量を減らすことができるだけでなく、灰溶融炉32aでの放熱ロスを抑制することができ、さらに助燃料の消費量を抑制することができる。なお、この場合においては、乾燥・熱分解室10から排出される灰分は、灰溶融炉32aを通らず排出されるので、スラグ化率(=スラグとして排出される灰分重量/原料中の全灰分重量)が若干低下する。しかしながら、乾燥・熱分解室10から排出される比較的粒子の大きな灰分が灰溶融炉32aを通らないでそのまま熱回収装置34aに導入されるので、溶融飛灰が熱回収装置34a,34bの伝熱面に付着するトラブルを回避することができ、熱回収装置34a,34bの伝熱面の伝熱係数を大きく保つことができるというメリットもある。
【0062】
灰溶融炉32aの出口に設けられたボイラ34aには溶融飛灰が供給されるが、溶融飛灰はミスト状であるため、ボイラ34aの伝熱面に付着しやすい。伝熱面に付着した溶融飛灰ミストは冷却されて固着し、伝熱管の清掃によっても除去することが困難である。ボイラ34aの伝熱面に溶融飛灰が大量に付着することで、伝熱管の伝熱係数が悪化していく。このため、ボイラ34aの余裕率を大きくとる必要があり、これが高コスト化を招いていた。粗い粒子を含むガス(乾燥・熱分解室10からのガス)をボイラ34aに供給すると、ボイラ34aの伝熱面に粗い粒子が堆積し、溶融飛灰がこれらの粒子に付着する。したがって、ボイラ34aの伝熱管の清掃によって粗い粒子とともに溶融飛灰を除去することができるため、ボイラ34aの伝熱面の伝熱係数を低下させることがなくなる。
【0063】
また、図6の灰溶融炉32aでは、乾燥・熱分解室10からの水蒸気およびガス状の熱分解生成物の導入口33aと燃焼室12からの部分燃焼ガスの導入口33bとが別々に設けられているが、灰溶融炉32aに導入する前にこれらを混合して1つの導入口から供給するようにしてもよい。
【0064】
図7は、本発明の第6の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。図7に示すシステムは、図6に示すシステムにおいて、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気およびガス状の熱分解生成物を灰溶融炉32aの下流に供給する場合においてもスラグ化率が低下しないように工夫したものである。
【0065】
図7に示すように、乾燥・熱分解室10で発生した水蒸気およびガス状の熱分解生成物は、灰溶融炉32aの下流で燃焼ガスと混合され、燃焼ガス中に含まれる残酸素によって完全燃焼される。この燃焼ガスは、熱回収装置34a,34bを通って脱塵装置36に導入される。図7に示すように、脱塵装置36で回収された灰分の一部は灰溶融炉32aの上流に還流され、再び灰溶融炉32aへ導入される。このような構成によって、乾燥・熱分解室10から排出された未溶融の灰をそのまま系外に排出することを抑制することができるため、スラグ化率を高くし、飛灰の排出量を少なくすることができる。
【0066】
図8は、本発明の第7の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。図8に示すように、本実施形態では、図7に示す脱塵装置36の代わりに直列に並べた2つの脱塵装置36a,36bを備えている。上流側の脱塵装置36aは、サイクロンのような比較的大きな粒径の灰分を回収する脱塵装置とし、下流側の脱塵装置36bは、バグフィルタのように環境規制をクリアできるレベルの精密集塵が可能な脱塵装置としている。
【0067】
上流側の脱塵装置36aについては、できるだけ安価な材料で脱塵装置36aを構成し、各種金属塩類等をほとんど固化させてから集塵するために、脱塵装置36aに導入されるガスの温度は、約400℃以下、好ましくは約350℃以下、より好ましくは約300℃以下、さらに好ましくは約250℃以下になるように熱回収装置34a,34bで減温するのがよい。
【0068】
このような構成により、上流側の脱塵装置36aで捕集された比較的大きな未溶融粒子を灰溶融炉32aに供給して溶融させることができるので、スラグ化率の低下を防止することができる。
【0069】
図9は、本発明の第8の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。本実施形態におけるシステムは、原料50として廃プラスチックや乾燥バイオマスなど発熱量が15MJ/kg以上の可燃物を用いた場合の例である。
【0070】
図5に示す例と同様に、乾燥・熱分解室10で発生した蒸気や熱分解生成物は、凝縮器40に導入され、ここで水分が除去される。凝縮器40から排出されたガスは、スクラバ22aで洗浄され、有価なガスとして貯留装置26に貯蔵され、必要量が動力回収装置28に送られて発電に供される。
【0071】
本実施形態においては、凝縮器40から排出される凝縮水とスクラバ22aから排出される排水が水処理装置42で処理される。このように、本実施形態では、水処理装置42が必要となるので、下水処理場や製紙工場などの水処理設備が充実した場所に適用すれば、水処理設備の建設コストおよび運転コストを抑えられるので好ましい。なお、システム内で熱が余っている場合には、その余剰熱を使って排水を蒸発乾固させてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、図5に示す例と同様に、凝縮器40とスクラバ22aが独立して設けられているが、スクラバ22aに凝縮器としての機能を持たせてもよい。また、ガスの用途によっては貯留装置26や動力回収装置28を省略できることは言うまでもない。
【0073】
図10は、本発明の第9の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。本実施形態におけるシステムは、原料50として廃プラスチックなど発熱量が30MJ/kg以上の可燃物を用いた場合の例である。
【0074】
図10に示すように、乾燥・熱分解室10で発生した蒸気や熱分解生成物は、燃焼室12から排出された熱分解ガスとともに灰溶融炉32aに導入される。灰溶融炉32aは、部分燃焼によって約1300℃以上の温度に維持されているが、原料50の発熱量が高いので、まだ還元状態が保たれている。したがって、灰溶融炉32aから出たガス中には有価ガス成分が残存しており、このガスをスクラバ22aで洗浄して有価ガスとして利用することができる。このような構成により、固形化燃料(RDF)のように原料を前処理して均質化することなく、ガス化エネルギー回収を実現することができる。
【0075】
次に、上述した実施形態における流動層炉14として用いることができる熱分解・ガス化炉について説明する。
【0076】
図11は、上述した流動層炉14として用いることができる流動層炉の一例を示す模式図である。図11に示すように、流動層炉700は、上述した乾燥・熱分解室10および燃焼室12を備えている。乾燥・熱分解室10では、原料50の乾燥と熱分解が行われ、乾燥および熱分解された原料と、乾燥により発生する水分と熱分解により発生する熱分解ガスの混合ガスと、熱分解によって発生するタールとが生成される。燃焼室12では、乾燥・熱分解された原料が燃焼または部分燃焼され燃焼ガスまたはガス化ガスが生成される。
【0077】
図11に示す流動層炉700は、乾燥・熱分解室10と燃焼室12とを仕切る仕切壁702を有している。このように、炉内に仕切壁702を設けることで、乾燥・熱分解室10と燃焼室12とで発生するガスを混合させずに取り出すことができる。後述の例で述べるように、ガスが混合しても問題ない場合には、仕切壁702のようなフリーボード部を完全に仕切る仕切壁を設けなくてもよい。図3に示すような廃棄物等の焼却炉として用いる場合には、図11に示すようにフリーボード部が完全に仕切られている必要はない。また、図11に示す例では、仕切壁702の下部に開口704を設け、流動媒体および原料や熱分解残渣等の物質が、矢印で示すように、開口704を通って乾燥・熱分解室10と燃焼室12の間で移動するようになっている。
【0078】
乾燥・熱分解室10の炉内には、炉底の流動化ガス供給装置を介して乾燥剤53が流動化ガスとして供給される。また、燃焼室12の炉内には、炉底の流動化ガス供給装置を介して酸化剤51が流動化ガスとして供給される。乾燥剤53としては、水蒸気、空気、燃焼排ガスなどの酸素含有ガス、窒素などの不活性ガスなどが用いられるが、乾燥・熱分解室10で緩慢な熱分解を起こすためには酸素供給量は少ない方が好ましい。したがって、乾燥・熱分解室10には、水蒸気や窒素などの不活性ガスあるいは燃焼排ガスなど、酸素含有率が約5%以下、好ましくは約3%以下、より好ましくは約1%以下のガスを供給するのがよい。特に、燃焼排ガスなどの高温かつ酸素含有率の低いガスを供給することで、乾燥および熱分解に必要な熱を供給できるとともに、乾燥・熱分解室10内での燃焼を抑えることもできる。また、第2の実施形態で説明したとおり、原料50が大量の水分を含むような場合は、乾燥・熱分解室10の温度を維持するために、乾燥・熱分解室10内で原料50を燃焼させる必要が生じる場合もあるが、その場合には、空気等の酸素含有ガスで原料50を流動化させてもよい。
【0079】
特に廃棄物等を原料とする場合には、原料中に含まれている不燃物が流動層内に残る。この不燃物は、流動層の下部に設けた不燃物抜出口から不燃物排出装置706を介して炉外に抜き出される。燃焼室12ではタールが燃焼によりなくなってクリーンな状態の不燃物を回収できるので、不燃物排出口を燃焼室12に設けて不燃物を燃焼室12から抜き出すのがよい。不燃物排出口は、乾燥・熱分解室10の炉床に設けても、仕切壁702の下部近傍の炉床に設けても、あるいは燃焼室12の炉床に設けてもよい。
【0080】
原料50は原料供給装置16によって乾燥・熱分解室10に供給される。原料供給装置16としては、通常は2軸のスクリューコンベヤ(図2(a)参照)が用いられるが、ストーカ炉のようにプッシャーだけを用いて原料50を押し込んでもよい。また、図2(b)に示すようなプッシャー162と火格子163とを備えたストーカ炉型のフィーダ16bや内部に砂が充填された傾斜コンベヤを用いてもよい。このように原料供給装置16を簡素化できるのは、上述したように、乾燥・熱分解室10で原料50を乾燥および熱分解することで解砕し、炉内に均一に分散できるようにしたため、原料50の投入量の変動(まとまった原料が一時に大量に投入されてしまったり、供給されない時間が生じたりすることなどによる変動)があり、供給量の変動(一時的な大量投入や無供給時間ができること)によって炉内の発生ガスの量が変化し、この発生ガスの量の変化に起因する圧力の変動があっても、これらの変動に影響を受けることなく燃焼室12での安定した燃焼を実現することが可能になるからである。このような変動抑制の効果は、特に流動層炉を用いることで容易に実現可能である。
【0081】
次に、図11に示した流動層炉700における仕切壁について説明する。
【0082】
図12(a)は流動層炉700における仕切壁の一例を示す垂直断面図、図12(b)は平面図、図12(c)は側面図である。図12(a)から図12(c)に示すように、乾燥・熱分解室10と燃焼室12は仕切壁702aによって仕切られている。図12(c)に示すように、仕切壁702aの炉底近傍には、開口704aと開口704bの2つの開口が設けられている。流動媒体および原料や熱分解残渣等の物質は、開口704aおよび開口704bを通って乾燥・熱分解室10と燃焼室12の間を移動するようになっている。
【0083】
例えば、図12(b)で矢印708aに示すように、開口704aを通って燃焼室12から乾燥・熱分解室10に流動媒体が移動し、矢印708bに示すように、開口704bを通って乾燥・熱分解室10から燃焼室12に流動媒体と熱分解残渣が移動するように、一方の開口から入って他方の開口から出るような流れを形成してもよい。
【0084】
開口704aと開口704b以外の仕切壁702aによって、乾燥・熱分解室10と燃焼室12とが完全に仕切られているので、乾燥・熱分解室10と燃焼室12とで発生するガスは混合されずそれぞれの室の上部から排出される。
【0085】
乾燥・熱分解室10の炉底には、乾燥剤を供給する乾燥剤供給装置(例えば風箱、分散ノズルを有する分散板、ガスの噴出口を有する散気管等)を設ける。また、燃焼室12の炉底には、酸化剤を供給する酸化剤供給装置(例えば風箱、分散ノズルを有する分散板、ガスの噴出口を有する散気管等)および不燃物抜出口を設ける。また、乾燥・熱分解室10には、原料供給口を設けて原料供給装置により原料を供給する。
【0086】
開口704aおよび開口704bを介して流動媒体および熱分解残渣を必要量移動するには、単に開口を設けるだけでなく、積極的に流動媒体および熱分解残渣を移動させるようにしてもよい。例えば、開口に向かって下降するような傾斜を炉床に設ければ、流動媒体および熱分解残渣が開口に向かって流れやすくなる。
【0087】
また、炉底から供給する流動化ガス(乾燥剤または酸化剤)の流速を各室の内部で局所的に変化させることも、積極的に流動媒体および熱分解残渣を移動される上で有効である。すなわち、開口の近傍において、流動媒体もしくは熱分解残渣の流れの下流側に位置する室の流速を、流れの上流側に位置する室の流速よりも速くするように流動化ガスを供給すれば、仕切壁702aの両側で流動層の密度と粘度に差異が生じる。ガスの流速が大きいほど流動層の密度は小さくなるので、開口を挟んで流れの上流側の流動層は下流側の流動層に対して密度が高い状態となる。このようにして、流動媒体は、密度の大きい上流側から密度の小さい下流側に流れる。また、流動層の粘性(流れにくさ)は、流動化速度を低くするほど大きくなる(流れにくくなる)。したがって、流動化ガスの量が少ない場合には、流動媒体は流れにくくなり、移動量も少なくなる。
【0088】
このように、流動化ガスの速度(供給量)によって仕切壁702aの近傍の流動層の密度と粘性が変化することから、仕切壁702aの両側における開口704a,704b近傍の流動化状態(供給流動化ガス量)を変化させることで、両室間の移動量を変えることもできる。
【0089】
仕切壁702aで仕切られた両室間の移動は、仕切壁702aの開口704a,704bの両側の圧力差によって生じる。すなわち、圧力の高い方から低い方へ流動媒体は移動する。ここで、圧力は、流動層の密度と流動層の高さと重力加速度の積である。したがって、流動層の密度もしくは高さ(層高)を変化させることで、流動媒体の移動量を変えることができる。
【0090】
また、乾燥・熱分解室10と燃焼室12の間で流動媒体および熱分解残渣と不燃物を移動させ、かつ、その移動量を変化させるために、開口704a,704bの近傍の炉底の流動化ガス分散ノズルのガス噴射方向を、流動媒体を移動させたい方向に向けておくこともできる。このようにすることで、流動化ガス分散ノズルから噴出された流動化ガスのジェット効果によって、流動媒体および熱分解残渣と不燃物を移動させることができ、また、流動化ガスの流量を変えることにより、流動媒体および熱分解残渣と不燃物の移動量を変えることができる。開口704a,704bの近傍の炉底に設置した流動化ガス分散ノズルだけを、流動媒体および熱分解残渣と不燃物を移動させるためのジェット効果を行わせるために用いることにより、乾燥・熱分解室10に供給する乾燥剤と燃焼室12に供給する酸化剤の供給量をほとんど変化させないで、流動媒体および熱分解残渣と不燃物の移動量を変化させることができる。
【0091】
ここで、図12(c)に示すような構造の場合、炉の大きさが小さいと、2つの開口704a,704bが接近して存在することとなるため、一方の開口から入ってきた流動媒体や熱分解残渣がすぐに他方の開口から出て行ってしまう可能性があり、流動媒体および熱分解残渣の両室間の移動量の制御性が必ずしもよいとはいえない。図13(a)および図13(b)は、これらの課題を解決することができる構造を有する流動層炉700を示す。
【0092】
図13(a)および図13(b)に示すように、乾燥・熱分解室10と燃焼室12は仕切壁702bによって仕切られ、別の仕切壁702c,702dによって仕切壁702bと仕切壁702c,702dの間にそれぞれ流動媒体沈降室710a,710bが形成されている。図13(a)では、流動媒体が、燃焼室12から仕切壁702cを飛び越えて流動媒体沈降室710aに移動し、流動媒体沈降室710a内を沈降し、仕切壁702bの開口704aから乾燥・熱分解室10に移動する。図13(b)では、流動媒体と熱分解残渣が、乾燥・熱分解室10から仕切壁702dを飛び越えて流動媒体沈降室710bへ移動し、流動媒体沈降室710b内を沈降し、仕切壁702bの開口704bから燃焼室12に移動する。
【0093】
このように、2種類の仕切壁によって構成される流動媒体沈降室710a,710bを、仕切壁702bの開口704a、704bの上流側に設けるように構成する。仕切壁702bに対して流動媒体等の流れの上流側では、流動層でありながら流動媒体が沈降するような下降流を形成するように、弱い流動化状態とする。すなわち、仕切壁702bに対して流動媒体等の流れの上流側では、流動化速度を低く、もしくは流動化ガスの流量を少なくして、流動層の密度を大きくする。一方、仕切壁702bに対して流動媒体等の流れの下流側では流動化状態を強くする。すなわち、流動媒体等の流れの下流側では、流動化速度を高く、もしくは流動化ガスの流量を多くして、流動層の密度を小さくする。このようにすることで、流動媒体沈降室710a,710bから乾燥・分解室10または燃焼室12に流動媒体等を容易に移動させることができる。
【0094】
また、流動媒体沈降室710a,710bの流動化状態を一定にした場合には、仕切壁702bの下流側の流動化状態を変える(すなわち流動化速度または流動化ガスの流量を変化させる)ことで、流動媒体の移動量(すなわち両室間の流動媒体の循環量)を変えることが可能となる。例えば、仕切壁702bの下流側の流動化状態を、流動媒体沈降室710a,710bにおける流動化状態に近い弱い流動化状態とすれば、密度差が小さいので、流動媒体の移動量が少なくなる。また、仕切壁702bの下流側の流動化状態を、流動媒体沈降室710a,710bの流動化状態に比べて強くすればするほど、流動媒体の移動量は多くなる。逆に、仕切壁702bの下流側の流動化状態を一定とし、流動媒体沈降室710a,710bの流動化状態を変えることで、流動媒体の移動量すなわち循環量を変えることも可能である。
【0095】
図13(a)および図13(b)に示すように、流動媒体沈降室710a,710bを設けることで、図12(a)に示すように流動媒体沈降室を設けない場合に比べて、流動媒体を積極的に仕切壁702bの開口704a,704bに向かって下降させる流れを形成するような流動化域を形成することができる。したがって、仕切壁702bの前後での密度差および粘性差を顕著にすることができ、流動媒体の移動量の制御性を高めることができる。
【0096】
また、流動媒体沈降室710a,710bを設けることで、流動媒体および熱分解残渣の移動の一方向性が強まるので、流動媒体および熱分解残渣の移動量を適切に制御することで、各室での原料および熱分解残渣の滞留時間を制御することも可能となる。流動層の温度とともに原料および熱分解残渣の滞留時間を制御できれば、乾燥・分解室10での乾燥量や熱分解量、特に燃焼室12での燃焼量といった反応量が制御可能となる。このように、各室で発生するガスおよび残渣の量を制御できるので、後段で必要とされるようなガスおよび残渣を得ることが可能となる。
【0097】
また、流動媒体沈降室710a,710bを設けることで、流動媒体の移動量を決定する因子の1つである流動層の層高を変えることも容易になる。すなわち、仕切壁702c,702dを飛び越える流動媒体の量が少なければ、流動媒体沈降室710a,710bの層高は低くなり、流動媒体の移動量は少なくなる。仕切壁702c,702dを飛び越える流動媒体の量が多ければ、流動媒体沈降室710a,710bの層高は高くなり、流動媒体の移動量は多くなる。仕切壁702c,702dを飛び越える流動媒体の量は、仕切壁702c,702dの近傍の流動化状態に依存し、例えば、図13(a)の領域712が強い流動化状態であれば、すなわち流動化速度が速ければ(供給される流動化ガス714の流量が多ければ)であれば、仕切壁702cを飛び越える流動媒体の量が多くなる。
【0098】
特に、図13(a)および図13(b)に示すように、炉底に流動化ガス供給装置を領域ごとに区分けして設けて、内部旋回流を形成するように炉内の流動化状態に差を設けることにより、流動層内の流動媒体の混合を容易に実現できる。
【0099】
ここで、内部旋回流とは、例えば、図13(a)の乾燥・熱分解室10において、おおよそ右側半分の流動層の空塔速度を速くし、おおよそ左側半分の流動層の空塔速度を遅くすることで、おおよそ右側半分の流動層がマクロにみて粒子全体が上昇し、おおよそ左側半分の流動層がマクロにみて粒子全体が下降し、その流動媒体の移動に伴って、おおよそ上方の流動層がマクロにみて粒子全体が左側に移動し、おおよそ下方の流動層がマクロにみて右側に移動し、マクロにみて流動層全体にわたって、流動媒体が大きな旋回移動をすることである。
【0100】
また、例えば、図13(a)の燃焼室12における内部旋回流とは、燃焼室12において、おおよそ左側半分の流動層の空塔速度を速くし、おおよそ右側半分の流動層の空塔速度を遅くすることで、おおよそ左側半分の流動層がマクロにみて粒子全体が上昇し、おおよそ右側半分の流動層がマクロにみて粒子全体が下降し、その流動媒体の移動に伴って、おおよそ上方の流動層がマクロにみて粒子全体が右側に移動し、おおよそ下方の流動層がマクロにみて左側に移動し、マクロにみて流動層全体にわたって、流動媒体が大きな旋回移動をすることである。
【0101】
図14(a)から図14(c)、図15(a)から図15(c)は、それぞれ図13(a)に示す構成の具体例を示すものであり、図14(a)および図15(a)は垂直断面図、図14(b)および図15(b)は平面図、図14(c)および図15(c)は側面図である。図14(a)から図14(c)に示す例では、燃焼室12の内部に仕切壁702cで仕切られた流動媒体沈降室710aが形成されている。図15(a)から図15(c)に示す例では、仕切壁702bが折り曲げた構造となっており、乾燥・熱分解室10の片側に流動媒体沈降室710aが形成されている。
【0102】
いずれの例においても、流動媒体の流れ方は同様であり、乾燥・熱分解室10で発生した熱分解残渣と流動媒体は、矢印708bに示すように仕切壁702bの開口704bを通って燃焼室12に移動する。燃焼室12の流動媒体は、矢印708cに示すように仕切壁702cを飛び越え、流動媒体沈降室710aを沈降して、矢印708aに示すように仕切壁702bの開口704aを通って乾燥・熱分解室10に移動する。
【0103】
図16(a)から図16(c)は、図15(a)から図15(c)に示す流動媒体沈降室710aを2つ備えた構成の具体例を示すものであり、図16(a)は垂直断面図、図16(b)は平面図、図16(c)は側面図である。大量の流動媒体を移動させる場合には、このように構成することで、大型の炉であっても流動媒体の移動を実現することが可能となる。
【0104】
図17(a)および図17(b)は、上述した流動層炉14として用いることができる流動層炉の他の例を示す模式図である。図17(a)および図17(b)に示すように、乾燥・熱分解室10と燃焼室12は仕切壁702bによって仕切られている。図17(a)に示すように、別の仕切壁702cによって仕切壁702bと仕切壁702cとの間に流動媒体沈降室710aが、さらに別の仕切壁702eによって仕切壁702bと仕切壁702eとの間に流動媒体上昇室710cが形成されている。また、図17(b)に示すように、別の仕切壁702dによって仕切壁702bと仕切壁702dとの間に流動媒体沈降室710bが、さらに別の仕切壁702fによって仕切壁702bと仕切壁702fとの間に流動媒体上昇室710dが形成されている。
【0105】
図17(a)に示すように、燃焼室12から乾燥・熱分解室10への流動媒体の移動流路として、仕切壁702bと仕切壁702cとの間に流動媒体沈降室710aと、仕切壁702bと仕切壁702eとの間に流動媒体上昇室710cとを設けている。燃焼室12内の燃焼によって高温になった流動媒体は、矢印716で示すように燃焼室12から仕切壁702cを飛び越えて流動媒体沈降室710aに移動し、矢印718で示すように流動媒体沈降室710aの弱い流動化によって流動媒体沈降室710a内を下降し、矢印708aで示すように仕切壁702bの開口704aを通って流動媒体上昇室710cに移動する。流動媒体上昇室710cでは、矢印720で示すように強い流動化によって流動媒体は上方に吹き上げられ、矢印722で示すように仕切壁702eを飛び越えて乾燥・熱分解室10に移動する。
【0106】
このような流動媒体上昇室710cを設けることで、図13(a)および図13(b)に示す例に比べ、仕切壁702bの開口704aの両側の密度差および粘性の差を明確にすることができ、仕切壁702bの開口704aの両側の圧力差が明確になる。したがって、流動媒体の移動量の制御がより行いやすくなる。また、小さい炉の場合、燃焼室12から乾燥・熱分解室10への流動媒体の流れの流路の開口704aと乾燥・熱分解室10から燃焼室12への流動媒体の流れの流路の開口704bとが近接しがちであるが、図17(a)および図17(b)に示すような構造とすることで、これらの2つの開口704a,704bが隣接しても流動媒体のショートパスが起こることがないという利点がある。
【0107】
図17(b)に示すように、乾燥・熱分解室10から燃焼室12への流動媒体と乾燥・熱分解された原料の移動流路として、仕切壁702bと仕切壁702dとの間に流動媒体沈降室710bと、仕切壁702bと仕切壁702fとの間に流動媒体上昇室710dとを設けている。流動媒体と乾燥・熱分解された原料は、矢印724で示すように仕切壁702dを飛び越えて流動媒体沈降室710bに移動し、矢印726で示すように流動媒体沈降室710b内を下降し、矢印708bで示すように仕切壁702bの下部開口704bを通って流動媒体上昇室710dに移動する。流動媒体と乾燥・熱分解された原料は、矢印728で示すように流動媒体上昇室710d内で上方に吹き上げられ、矢印730で示すように仕切壁702fを飛び越えて燃焼室12に移動する。
【0108】
このような流動媒体上昇室710dを設けることで、図13(a)および図13(b)に示す例に比べ、仕切壁702bの開口704bの両側の密度差および粘性の差を明確にすることができ、仕切壁702bの開口704bの両側の圧力差が明確になる。したがって、流動媒体の移動量の制御がより行いやすくなる。また、小さい炉の場合、燃焼室12から乾燥・熱分解室10への流動媒体の流れの流路の開口704aと乾燥・熱分解室10から燃焼室12への流動媒体の流れの流路の開口704bとが近接しがちであるが、図17(a)および図17(b)に示すような構造とすることで、これらの2つの開口704a,704bが隣接しても流動媒体のショートパスが起こることがないという利点がある。
【0109】
なお、図11から図17(b)に示す例において、燃焼室12の層温を低く一定に保つために、燃焼室12の一部に層内伝熱管を浸漬させ、熱回収を行うことで層温を制御するように構成してもよい。また、伝熱管を浸漬した部分への流動媒体の供給を一方向にするとともに流動媒体の供給量を変化させることで回収熱量を制御するために、後述の例のように熱回収部を仕切壁で仕切って構成してもよい。熱回収部を構成する場合には、燃焼室12の流動層内に仕切壁を設け、該仕切壁の下部炉床との間に開口を設け、燃焼室12と熱回収室の間で流動媒体の移動が可能なように構成するのがよい。特に、流動層の表面近傍に上端があるような仕切壁の上部を飛び越えて高温の流動媒体が熱回収室に入り、熱回収されて低温化した流動媒体が仕切壁の下部の開口を通って熱回収室から燃焼室12に戻るように構成することが好ましい。このような構成とする場合、燃焼室12と熱回収室の間の流動媒体の循環量を熱回収室の流動化状態を変化させることで変え、循環量の変化によって流動媒体から回収する熱量を変化させて層温を制御することが可能となる。
【0110】
図18は、上述した流動層炉14として用いることができる流動層炉の一例を示す垂直断面図である。図18に示すように、流動層炉400の内部は第1仕切壁402によって乾燥・熱分解炉403と燃焼炉404に分割されている。第1仕切壁402には上部開口437、下部開口438が設けてあり、乾燥・熱分解炉403と燃焼炉404とが相互に連絡されている。乾燥・熱分解炉403と燃焼炉404との境界をなす第1仕切壁402は、傾斜面を有してもよいし垂直面になっていてもよい。第2仕切壁405も同様である。乾燥・熱分解炉403にはガス排出口449が設けられ、このガス排出口449から生成ガス450が外部に導出される。
【0111】
一方、燃焼炉404はさらに第2仕切壁405によって、主燃焼室406と熱回収室407とに分割してもよい。ただし、上方では分割されず、フリーボード部は主燃焼室と熱回収室とは一体化しており、それぞれの燃焼排ガスはフリーボード部で混合されたのち、ガス排出口451から燃焼排ガス452となって外部に導出される。熱回収室407には伝熱面446が埋設されており、流動媒体から熱回収することができる。また、第2仕切壁405には、下部開口440が設けてあり、上部開口部439と合わせ主燃焼室406と熱回収室407相互の流動媒体の移動が可能になっている。
【0112】
乾燥・熱分解炉403の下部には炉床427,428が構成されており、炉床427,428の下部には風箱408,409が設けられている。風箱408,409にはそれぞれ接続口413,414を通して、流動化ガス418a,419aが導入される。一方、炉床427,428にはそれぞれ散気装置432,433が設けられている。散気装置432からは、実質的に大きな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、その結果、炉床427の上方に強流動化域441aを形成する。散気装置433からは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、炉床428の上方に弱流動化域442aを形成する。このように、乾燥・熱分解炉403の流動層内に2つの異なる流動化域が存在する結果、流動媒体が強流動化域441aで上昇し、弱流動化域442aで下降する旋回流が生じる。
【0113】
一方、燃焼炉404においても、主燃焼室406の下部には炉床429,430,4130aが構成されており、炉床429,430,4130aの下部には風箱410,411,511aが設けられている。風箱410,411,511aにはそれぞれ接続口415,416,516aを通して流動化ガス420a,427a,421aが導入される。一方、炉床429,430,530aにはそれぞれ散気装置434,435,535aが設けられている。散気装置434,435からは、実質的に大きな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、その結果、炉床429,430の上方に強流動化域562a,462aを形成する。散気装置535aからは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、炉床530aの上方に弱流動化域443aを形成する。このように、主燃焼室406の流動層内に2つの異なる流動化域が存在する結果、流動媒体が弱流動化域444aで沈降し、強流動化域443a,443aで上昇する旋回流が生じる。
【0114】
一方、熱回収室407においても、下部には炉床431が構成されており、炉床431の下部には風箱412が設けられている。風箱412には接続口417を通して流動化ガス422が導入される。また炉床431には散気装置436が設けられている。散気装置436からは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、その結果、炉床431の上方に弱流動化域445を形成する。
【0115】
上述のように、流動化速度の異なる複数の流動化域を組み合わせることよって、以下のような流れが生じる。すなわち、乾燥・熱分解炉403の流動層内においては、弱流動化域442aで流動媒体は沈降流457aに乗って下降する。そして炉床428近くで、強流動化域441aに向かう水平流456aに転じ、強流動化域441aではさらに上昇流455aとなる。一方、下降流457aは炉床428近傍で、強流動化域441aへ向かう流れ456aと第1仕切壁402の開口438を通って燃焼炉404へ向かう流れ460aとに分岐する。
【0116】
したがって、乾燥・熱分解炉403の流動層内部では弱流動化域442aで沈降し、強流動化域441aで上昇する旋回流が形成される一方で、一部の流動媒体は第1仕切壁402の下部開口438を通って主燃焼室406に導入される。
【0117】
一方、主燃焼室406においても、炉床429,430の上方には強流動化域443aが形成され、また炉床530aの上方には弱流動化域444aが形成されているため、主燃焼室406の流動層内においても、弱流動化域444aで流動媒体は沈降流470aに乗って下降する。そして流動層表面近傍で、一部は第1仕切壁402の上部開口437を通る反転流459aとなって乾燥・熱分解炉403に戻るほか、弱流動化域444aに向かう水平流571aとなり、弱流動化域444aではさらに下降流470aとなる。一方、上昇流462aは流動層表面近傍で、弱流動化域444aへ向かう流れ471aと第2仕切壁405の上部開口部439を通って、熱回収室407へ向かう流れ464とに分岐する。
【0118】
したがって、燃焼炉404の主燃焼室406の流動層内部では弱流動化域444aで沈降し、強流動化域443aで上昇する旋回流が形成される一方で、一部の流動媒体は第2仕切壁405の上部を越えて熱回収室407に導入され、さらに一部の流動媒体は第1仕切壁402の上部開口437を通って乾燥・熱分解炉403に導入される。
【0119】
一方、熱回収室407においては、弱流動化域445が形成されているので、沈降流465が生じ、さらに流動媒体は第2仕切壁405の下部開口440を通る還流466によって主燃焼室406へ戻る。このように乾燥・熱分解炉403、燃焼炉404の主燃焼室406の流動層においては、それぞれ内部の旋回流と相互の循環流とが形成されており、燃焼炉404の熱回収室407においては、内部の沈降流と、主燃焼室406との間の循環流が形成されている。
【0120】
したがって、乾燥・熱分解炉403の弱流動化域442aの上方に可燃物投入口447を設け、可燃物448を投入すると、沈降流457aによって乾燥・熱分解炉403の流動層内部に飲み込まれ、旋回流によって均一に分散混合し、部分燃焼、ガス化が行われる。乾燥・熱分解炉403の炉床部分に供給する流動化ガスは、空気、水蒸気、酸素、窒素、二酸化炭素、可燃性ガス、または燃焼排ガスのいずれかであるか、あるいはそれらのうち2つ以上を組み合わせたものからなっている。
【0121】
一方、未燃チャーを含む流動媒体は反転流460aによって主燃焼室406に導入され、旋回流によって均一に分散混合し、酸化雰囲気で完全に燃焼される。図18に示すように、必要に応じて主燃焼室406の上方に燃料投入口468を設け、補助燃料469を供給することも可能である。
【0122】
また、フリーボード部に複数のノズル453を設け、2次空気454を導入して完全に燃焼させることも必要に応じて行うことができる。
【0123】
燃焼炉404の主燃焼室406内における燃焼により発生した熱量は、一部が第1仕切壁402の上部開口437を通る流れ459aによって乾燥・熱分解炉403に導入されて乾燥および熱分解の熱源となるほか、第2仕切壁上部439を越える反転流464として熱回収室407に入り、沈降流465となったのち、第2仕切壁下部開口440から主燃焼室406に戻る流動媒体循環流によって、熱回収室407に運ばれ、伝熱面446を通じて外部に取り出される。
【0124】
このように投入された可燃物のエネルギーについて、一部はガスとなって化学エネルギー(または化学製品の原料など)として取り出され、ガス化しにくい成分は熱エネルギーとして有効に高効率で回収することが可能である。
【0125】
また、投入される可燃物の中に不燃分が混入していることも多い。そのため、図18に示す例では、乾燥・熱分解炉403の炉床428と燃焼炉404の炉床429との間に不燃物排出口423が設けられており、この排出口423から不燃物425を排出するようにしている。さらに、補助燃料469に不燃物が混入している場合には、図18に示す例のように主燃焼室406の炉床430と熱回収室407の炉床431の間に不燃物排出口424を設け、この排出口424から不燃物426を排出してもよい。また、不燃物排出を容易にするため、それぞれの炉床が不燃物出口に向かって下降傾斜面をなしていることが好ましい。
【0126】
図19は、上述した流動層炉14として用いることができる流動層炉の他の例を示す垂直断面図である。流動層炉300は、水平断面が概略矩形をなしている。図19に示すように、流動層炉300の内部は第1仕切壁302によって乾燥・熱分解炉303と燃焼炉304に分割されている。第1仕切壁302には上部開口337、下部開口338が設けてあり、乾燥・熱分解炉303と燃焼炉304とが相互に連絡されている。乾燥・熱分解炉303にはガス排出口349が設けられ、このガス排出口349から生成ガス350が外部に導出される。
【0127】
一方、燃焼炉304はさらに第2仕切壁305によって、主燃焼室306と熱回収室307とに分割してもよい。ただし、上方では分割されず、フリーボード部は主燃焼室と熱回収室とは一体化しており、それぞれの燃焼排ガスはフリーボード部で混合されたのち、ガス排出口351から燃焼排ガス352となって外部に導出される。熱回収室307には伝熱面346が埋設されており、流動媒体から熱回収することができる。また、第2仕切壁305には、下部開口340が設けてあり、上部開口339と合わせ主燃焼室306と熱回収室307相互の流動媒体の移動が可能になっている。
【0128】
乾燥・熱分解炉303の下部には炉床327,328が構成されており、炉床327,328の下部には風箱308,309が設けられている。風箱308,309にはそれぞれ接続口313,314を通して、流動化ガス318,319が導入される。一方、炉床327,328にはそれぞれ散気装置332,333が設けられている。散気装置332からは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、その結果、炉床327の上方に弱流動化域341を形成する。散気装置333からは、実質的に大きな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、炉床328の上方に強流動化域342を形成する。このように、乾燥・熱分解炉303の流動層内に2つの異なる流動化域が存在する結果、流動媒体が弱流動化域341で沈降し、強流動化域342で上昇する旋回流が生じる。
【0129】
一方、燃焼炉304においても、主燃焼室306の下部には炉床329,330が構成されており、炉床329,330の下部には風箱310,311が設けられている。風箱310,311にはそれぞれ接続口315,316を通して流動化ガス320,321が導入される。一方、炉床329,330にはそれぞれ散気装置334,335が設けられている。散気装置334からは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、その結果、炉床329の上方に弱流動化域343を形成する。散気装置335からは、実質的に大きな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、炉床330の上方に強流動化域344を形成する。このように、主燃焼室306の流動層内に2つの異なる流動化域が存在する結果、流動媒体が弱流動化域343で沈降し、強流動化域344で上昇する旋回流が生じる。
【0130】
一方、熱回収室307においても、下部には炉床331が構成されており、炉床331の下部には風箱312が設けられている。風箱312には接続口317を通して流動化ガス322が導入される。また、炉床331には散気装置336が設けられている。散気装置336からは、実質的に小さな流動化速度を与えるように流動化ガスを噴出し、その結果、炉床331の上方に弱流動化域345を形成する。
【0131】
上述のように、流動化速度の異なる複数の流動化域を組み合わせることよって、以下のような流れが生じる。すなわち、乾燥・熱分解炉303の流動層内においては、弱流動化域341で流動媒体は沈降流355に乗って下降する。そして、炉床327近くで、強流動化域342に向かう水平流356に転じ、強流動化域342ではさらに上昇流357となる。一方、上昇流357は流動層表面近傍で、弱流動化域341へ向かう流れ358と第1仕切壁302の上部開口337を通って燃焼炉304へ向かう流れ359とに分岐する。
【0132】
したがって、乾燥・熱分解炉303の流動層内部では弱流動化域341で沈降し、強流動化域342で上昇する旋回流が形成される一方で、一部の流動媒体は第1仕切壁302の上部開口337を通って主燃焼室306に導入される。
【0133】
一方、主燃焼室306においても、炉床329の上方には弱流動化域343が形成され、また、炉床330の上方には強流動化域344が形成されているため、主燃焼室306の流動層内においても、弱流動化域343で流動媒体は沈降流360に乗って下降する。そして、炉床329の近くで、一部は第1仕切壁302の下部開口338を通る還流367となって乾燥・熱分解炉303に戻るほか、強流動化域344に向かう水平流361となり、強流動化域344ではさらに上昇流362となる。一方、上昇流362は流動層表面近傍で、弱流動化域343へ向かう流れ363と第2仕切壁305の上部開口339を通って、熱回収室307へ向かう流れ364とに分岐する。
【0134】
したがって、燃焼炉304の流動層内部では弱流動化域343で沈降し、強流動化域344で上昇する旋回流が形成される一方で、一部の流動媒体は第2仕切壁305の上部を越えて熱回収室307に導入される。
【0135】
一方、熱回収室307においては、弱流動化域345が形成されているので、沈降流365が生じ、さらに流動媒体は第2仕切壁305の下部開口340を通る還流366によって主燃焼室306へ戻る。このように乾燥・熱分解炉303、燃焼炉304の主燃焼室306、燃焼炉304の熱回収室307の流動層においては、それぞれ内部の旋回流と相互の循環流とが形成されている。
【0136】
したがって、乾燥・熱分解炉303の弱流動化域341の上方に可燃物投入口347を設け、可燃物348を投入すると、沈降流355によって乾燥・熱分解炉303の流動層内部に飲み込まれ、旋回流によって均一に分散混合し、部分燃焼、ガス化が行われる。乾燥・熱分解炉303の炉床部分に供給する流動化ガスは、空気、水蒸気、酸素、窒素、二酸化炭素、可燃性ガス、または燃焼排ガスのいずれかであるか、あるいはそれらのうち2つ以上を組み合わせたものからなっている。
【0137】
一方、未燃チャーを含む流動媒体は反転流359によって主燃焼室306に導入され、そこで沈降流360によって流動層内に飲み込まれ、旋回流によって均一に分散混合し、酸化雰囲気で完全に燃焼される。図19に示されるように、必要に応じて弱流動化域43の上方に燃料投入口368を設け、補助燃料369を供給することも可能である。また、フリーボード部に複数のノズル353を設け、2次空気354を導入して完全に燃焼させることも必要に応じて行うことができる。
【0138】
燃焼炉304の主燃焼室306内における燃焼により発生した熱量は、一部が第1仕切壁302の下部開口338を通る還流367によって乾燥・熱分解炉303に導入されて乾燥および熱分解の熱源となるほか、第2仕切壁305の上部開口339を越える流れ364として熱回収室307に入り、沈降流365となったのち、第2仕切壁305の下部開口340から主燃焼室306に戻る流動媒体循環流によって、熱回収室307に運ばれ、伝熱面346を通じて外部に取り出される。
【0139】
このように投入された可燃物のエネルギーについて、一部はガスとなって化学エネルギー(または化学製品の原料など)として取り出され、ガス化しにくい成分は熱エネルギーとして有効に高効率で回収することが可能である。
【0140】
また、投入される可燃物の中に不燃分が混入していることも多い。そのため、図19に示す例においては、乾燥・熱分解炉303の炉床328と燃焼炉304の炉床329との間に不燃物排出口323が設けられており、この排出口323から不燃物325を排出するようにしている。さらに、補助燃料369に不燃物が混入している場合には、図19に示す例のように主燃焼室306の炉床30と熱回収室307の炉床331の間に不燃物排出口324を設け、この排出口324から不燃物326を排出してもよい。また、不燃物排出を容易にするため、それぞれの炉床が不燃物出口に向かって下降傾斜面をなしていることが好ましい。乾燥・熱分解炉303と燃焼炉304との境界をなす第1仕切壁302は、ガス化炉側においてはガス化炉側に倒れるような傾斜面302aを有し、一方、燃焼炉側は垂直面になっている。燃焼炉304において、主燃焼室306と熱回収室307との境界をなす第2仕切壁305は、主燃焼室側においては主燃焼室側に倒れるような傾斜面305aを有し、一方、熱回収室側は垂直面になっている。なお、上記傾斜面302a,305aは垂直面になっていてもよい。
【0141】
また、図13(a)および図13(b)、図18、図19などに記載の内部旋回流は、1室の流動層の左右どちらかおおよそ半分の領域の空塔速度を速く、それ以外のおおよそ半分の領域の空塔速度を遅くすることで形成させることができるが、1室の流動層において、炉底の流動化ガス供給用の風箱を分割することで、空塔速度の異なる領域を生じさせることができる。また、流動化ガス供給装置を以下のようにすることで、風箱を分割することなく内部旋回流を形成させることもできる。
(1)空塔速度を速くしたい流動層領域(1室の流動層の左右どちらかおおよそ半分の領域)の炉底の流動化ガス供給ノズルの孔径を大きくし、空塔速度を遅くしたい流動層領域の炉底の流動化ガス供給ノズルの孔径を小さくする。
(2)空塔速度を速くしたい流動層領域(1室の流動層の左右どちらかおおよそ半分の領域)の炉底の流動化ガス供給ノズルの配置間隔を狭くし、空塔速度を遅くしたい流動層領域の炉底の流動化ガス供給ノズルの配置間隔を広くする。
(3)上記(1)と(2)の両方を行う。
【0142】
次に、上述した実施形態における灰溶融炉32aとして用いることができる溶融炉について説明する。
【0143】
図20は、上述した灰溶融炉32aとして用いることができる旋回溶融炉の一例を示す垂直断面図、図21は、図20の水平断面図である。図20に示すように、旋回溶融炉800は、上述した乾燥・熱分解室10および/または燃焼室12から供給されるガス802を高温にてガス化または燃焼する燃焼室804と、生成したスラグを冷却して回収するスラグ分離室806とを備えている。
【0144】
燃焼室804の側面の吹込口807から、図21に示す仮想円柱の接線方向に含酸素ガス808が吹き込まれ、炉内に供給されたガス802と含酸素ガス808は仮想円と同一径の旋回流を形成する。この旋回流は、粒子状の可燃分を多く含有する外周側の旋回流と、ガス状の可燃分を多く含有する内周側の旋回流とを含んでいる。外周側の旋回流に向けて燃焼室804の側面の吹込口807から酸素を供給し、粒子状の可燃分のガス化を促進するようにしている。また、溶融炉800においては、灰のセルフコーティング作用により炉壁を保護することができる。
【0145】
ここで、旋回流の作る仮想円の径は、旋回溶融炉800の内径rの1/2〜2/3程度とされる。また、ガス802と含酸素ガス808の吹き込み角度については、水平より下向きに3〜15゜、好ましくは5〜10゜とするのがよい。含酸素ガス808の吹込口807は、燃焼室804の側面の同一平面上に離間して2箇所以上設けることができ、あるいは燃焼室804の側面の上下方向に離間して設けることができる。また、吹き込みの方向は仮想円にほぼ接する方向が好ましい。
【0146】
また、燃焼室804の内部温度は、約1200〜1600℃、好ましくは約1200〜1500℃に維持されるのがよい。燃焼室804に吹き込む含酸素ガス808は、空気、酸素富活空気、酸素のいずれか、またはこれらにスチームまたは炭酸ガスを添加したものがよい。また、燃焼室804は、炉材中に水管809を配したボイラ構造としてもよい。
【0147】
燃焼室804の下に接続されるスラグ分離室806の側面と輻射ボイラとの間には空間が設けられ、この空間の側面上部にガス排出口が設けられている。輻射ボイラと水槽810の水面の間にガス通路を設けてもよいし、あるいは、輻射ボイラが水槽810の水中に没した構造としてもよい。また、輻射ボイラの代わりに、熱回収を目的としないガス導入管を用いることもできる。さらに、燃焼室804の出口の開口部にガス整流板を設けて、スラグ分離室806内の旋回流を抑制することもできる。
【0148】
図22は、上述した灰溶融炉32aとして用いることができる旋回溶融炉の他の例を示す垂直断面図、図23は図22の平面図である。図22に示すように、旋回溶融炉820は、上述した乾燥・熱分解室10および/または燃焼室12から供給されるガスを高温でガス化または燃焼する燃焼室824,825と、排ガスと溶融スラグとを分離して排ガス826を上方に排出する排ガス流路828と、溶融スラグ830を下方に排出するスラグ排出口832とを備えている。
【0149】
燃焼室は単段でも複数段でもよいが、例えば、2段に構成した場合、1次燃焼室824の上部には、乾燥・熱分解室10および/または燃焼室12から供給されるガスを炉内に供給するガス供給口834と、燃焼用空気を炉内に吹き込む吹込口836とが設けられる。図23に示すように、ガス供給口834と吹込口836とを1次燃焼室824の円筒部の接線方向に配設して炉内でガスの旋回流を形成し、燃焼溶融を行う。
【0150】
また、1次燃焼室824の上部には、補助燃焼用バーナ838が1次燃焼室824円筒部の接線方向に沿って設けられている。1次燃焼室824の下部には、出口方向に向かって炉内径が順次縮小する傾斜面で構成された絞り部分840が設けられており、この絞り部分840により溶融スラグの捕集効率が高められる。さらに、1次燃焼室824の下部には、傾斜した円筒部を有する2次燃焼室825が接続されている。
【0151】
また、2次燃焼室825には、燃焼用空気吹込口842が2次燃焼室825の円筒部の接線方向に配置されている。2次燃焼室825の下部には、出口方向に向かって炉内径が順次縮小する絞り部分844が形成されている。この絞り部分844は、上方に位置する排ガス流路828および下方に位置するスラグ排出口832に接続されている。また、2次燃焼室825の上部には、補助燃焼用バーナ846が2次燃焼室825の円筒部の接線方向に設けられている。
【0152】
図24は、上述した灰溶融炉32aとして用いることができる溶融炉の一例を示す垂直断面図である。図24に示すように、溶融炉920は、高温ガス冷却装置930との結合プラントとして構成されている。
【0153】
溶融炉920は、水管壁921、断熱材922、耐火材923、燃焼溶融部としての燃焼室924、炉頂に設けられたガス投入部925、酸化剤投入部926、炉底に設けられたスラグ落ち口927を備えている。燃焼室924は900℃〜1600℃の高温になるから、炉壁を保護するために水管壁921、断熱材922、耐火レンガのような耐火材923が積層されている。炉の大きさや使用目的によっては、水管壁921と耐火材923のみ、あるいは断熱材922と耐火材923のみの組み合わせも用いられる。ガス投入部925には乾燥・熱分解室10および/または燃焼室12から供給されるガスが供給される。酸化剤投入部926には、酸素、空気、並びにガス化ガスのガス成分を調整するための水蒸気等が供給される。供給された乾燥・熱分解室10および/または燃焼室12からのガスは酸化剤により燃焼され、炉内は900〜1600℃の高温となり灰分は溶融される。スラグ落ち口927は、飛灰が溶融して生成した溶融スラグ928が、燃焼室924から高温ガス冷却装置930に向けて落下する開口部である。
【0154】
高温ガス冷却装置930は、導入口931、水冷ジャケット932、飛灰水冷室933、連絡部934、濡れ壁邪魔板部935、排出口936、噴霧器937、濡れ壁938a、938b、938cを備えている。導入口931は、ここではスラグ落ち口927の飛灰水冷室933側への開口部が該当している。水冷ジャケット932は、自然循環水942の供給を受け、帰還循環水944として排水することにより壁面を水冷するものである。なお、水冷ジャケット932の冷却能力は、スラグ落ち口927が過度に冷却されて、溶融スラグ928の固化によりスラグ落ち口927が閉塞するのを防止するため、適切な範囲に設定する。
【0155】
飛灰水冷室933は高温ガス冷却装置930の底部に設けられた貯留水を貯える室で、ここでは導入口931側と排出口936側とを共通の室とする一室構造になっている。飛灰水冷室933の底部には、水砕スラグを排出する水砕スラグ排出口933aが設けられている。連絡部934は、飛灰水冷室933に流入した高温ガス940を貯留水の水面933bに沿って移動させて、排出口936側に導くガス通路である。濡れ壁邪魔板部935は、水冷ジャケット932の連絡部934側の下側に設けられたもので、飛灰水冷室933側の表面が水で濡れた濡れ壁938bを有するとともに、高温ガス940の流通する連絡部934の天井側を規制する邪魔板としても機能する。
【0156】
排出口936は、連絡部934を通過してきた高温ガス940を貯留水の水面933b上側に排出させる開口部である。噴霧器937は、排出口936付近に設けられた冷却水の噴霧器で、排出される高温ガス940の性状、例えば温度を300℃〜900℃の範囲で調整したり、あるいは排出される高温ガス940を原料として利用する下流側プロセスの仕様に適合するように、水分の含有率を調整するのに用いる。濡れ壁938aは高温ガス冷却装置930の導入口931側壁面を水で濡れた状態に保持する。濡れ壁938cは高温ガス冷却装置930の排出口936側壁面の表面を水で濡れた状態に保持する。
【0157】
溶融炉920は、飛灰を大量に発生する燃料や、これら燃料をガス化して得た飛灰を多量に含む燃料ガスを燃焼させるのに特に適する構造となっている。高温ガス冷却装置930の導入口931には、燃料や燃料ガスから生成された高温ガスが供給される。高温ガスの温度は、燃焼室924内部では例えば1300℃以上に到達しているので、飛灰が溶融して溶融スラグが生成する。溶融スラグのうち、燃焼室924の壁面に捕捉された溶融スラグ928は、燃焼室924の壁面からスラグ落ち口927に流下し、さらにスラグ落ち口927から飛灰水冷室933の貯留水に落下して、水砕スラグとして固体化される。なお、高温ガスの温度が非常に高い場合、例えば1600℃以上の場合には実質的にほとんどが溶融スラグとなる。高温ガスの温度が中間的な場合、例えば1000℃から1600℃の間では飛灰と溶融スラグの双方が含まれる。高温ガスの温度が比較的低い場合、例えば900℃から1000℃の間では、飛灰が多くなる。
【0158】
飛灰や溶融スラグを同伴する高温ガス940は、導入口931から連絡部934を経て排出口936に排出される。この高温ガス940の流れの経路は、導入口931から飛灰水冷室933の貯留水水面933bへの重力方向への流れと、貯留水水面933bに沿って連絡部934に移動する水平方向の流れにて構成される。濡れ壁邪魔板部935により連絡部934の入口が狭くなっているため、高温ガス940の重力方向の流れと水平方向の流れの境界領域では、流れの方向が急変している。そこで、高温ガス940に同伴される飛灰や溶融スラグのうち、大粒径のものは慣性が大きいため、高温ガス940の重力方向への流れにより飛灰水冷室933の貯留水に捕捉される。
【0159】
他方、中小粒径のものは慣性が小さいため、高温ガス940の水平方向の流れに沿って連絡部934の入口へ移動する。しかし、中小粒径の飛灰や溶融スラグにも重力が作用しているから、連絡部934から排出口936への流れの途中で飛灰水冷室933の貯留水に捕捉される。また、中小粒径の飛灰や溶融スラグのうち、排出口936まで到達したものは、噴霧器937の噴霧する液滴により凝集して粒径が大型化し、重力の作用で飛灰水冷室933の貯留水に落下する。
【0160】
高温ガス940に同伴される飛灰や溶融スラグを捕捉する機能を有する構成要素として、濡れ壁938a,938b,938cがある。濡れ壁938a,938b,938cの表面は水で濡れているので、飛灰や溶融スラグが捕捉されやすくなっている。そして、捕捉された飛灰や溶融スラグは水とともに流下して、飛灰水冷室933の貯留水に落下する。さらに、濡れ壁938a,938b,938cには、スラグ付着を防止して缶体を保護するとともに、排出口936に熱交換器のような顕熱回収部を設けている場合には、噴霧器937との協働によるガス洗浄効果により伝熱管へのダスト堆積によって促進される溶融塩腐食を低減できる。
【0161】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の第1の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図2】図1に示すシステムにおいて用いることができる原料供給装置を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図5】本発明の第4の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図6】本発明の第5の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図7】本発明の第6の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図8】本発明の第7の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図9】本発明の第8の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図10】本発明の第9の実施形態における可燃物の処理方法を利用したシステムを示すフロー図である。
【図11】本発明に係る可燃物の処理方法で用いることができる流動層炉の一例を示す模式図である。
【図12】図12(a)は図11に示す流動層炉における仕切壁の配置の一例を示す垂直断面図、図12(b)は平面図、図12(c)は側面図である。
【図13】図13(a)および図13(b)は、流動媒体沈降室を有する流動層炉の例を示す模式図である。
【図14】図14(a)は図13(a)に示す構成の具体例を示す垂直断面図、図14(b)は平面図、図14(c)は側面図である。
【図15】図15(a)は図13(a)に示す構成の具体例を示す垂直断面図、図15(b)は平面図、図15(c)は側面図である。
【図16】図16(a)は図15(a)に示す流動媒体沈降室を2つ備えた構成の具体例を示す垂直断面図、図16(b)は平面図、図16(c)は側面図である。
【図17】図17(a)および図17(b)は本発明に係る可燃物の処理方法で用いることができる流動層炉の他の例を示す模式図である。
【図18】本発明に係る可燃物の処理方法で用いることができる流動層炉の一例を示す模式図である。
【図19】本発明に係る可燃物の処理方法で用いることができる流動層炉の他の例を示す模式図である。
【図20】本発明に係る可燃物の処理方法で用いることができる旋回溶融炉の一例を示す垂直断面図である。
【図21】図20の水平断面図である。
【図22】本発明に係る可燃物の処理方法で用いることができる旋回溶融炉の他の例を示す垂直断面図である。
【図23】図22の平面図である。
【図24】本発明に係る可燃物の処理方法で用いることができる溶融炉の一例を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0163】
10 乾燥・熱分解室
12 燃焼室
14 流動層炉
16 原料供給装置
50 原料
22 洗浄装置
24 精製装置
26 貯留装置
28 動力回収装置
32,32a 2次燃焼装置(灰溶融炉)
34,34a,34b 熱回収装置
36,36a,36b 脱塵装置
38,38a 有害物質除去装置(脱硝装置)
40 凝縮器
42 水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、
前記乾燥・熱分解室内の流動層内に性状が不均一もしくは不均質な可燃物または水分含有量の多い可燃物を供給し、
流動媒体が充填された燃焼室から前記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて前記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、
乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および前記乾燥・熱分解室内の流動媒体を前記燃焼室に供給し、
前記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、
供給された前記可燃物を前記燃焼室の流動層内で燃焼し、
前記燃焼室内の流動媒体を前記乾燥・熱分解室に供給することを特徴とする可燃物の焼却方法。
【請求項2】
前記乾燥・熱分解室の流動層の温度を100℃〜550℃に維持することを特徴とする請求項1に記載の可燃物の焼却方法。
【請求項3】
前記乾燥・熱分解室の流動層の温度を120℃〜450℃に維持することを特徴とする請求項1に記載の可燃物の焼却方法。
【請求項4】
前記乾燥・熱分解室の流動層の温度を120℃〜350℃に維持することを特徴とする請求項1に記載の可燃物の焼却方法。
【請求項5】
前記乾燥・熱分解室には、酸素を含まない流動化ガスを供給することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の可燃物の焼却方法。
【請求項6】
前記乾燥・熱分解室には、蒸気または前記燃焼室からの燃焼排ガスを流動化ガスとして供給することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の可燃物の焼却方法。
【請求項7】
前記乾燥・熱分解室には、スクリューコンベヤ装置、プッシャー装置、およびプッシャー装置と火格子式搬送装置とを有する供給装置のうち少なくとも1つにより前記可燃物を供給することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の可燃物の焼却方法。
【請求項8】
前記乾燥・熱分解室には、生ごみ、都市ごみ、汚泥、およびバイオマスのうち少なくとも1つを含む可燃物を供給することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の可燃物の焼却方法。
【請求項9】
流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、
前記乾燥・熱分解室内の流動層内に性状が不均一もしくは不均質な可燃物または水分含有量の多い可燃物を供給し、
流動媒体が充填された燃焼室から前記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて前記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、
乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および前記乾燥・熱分解室内の流動媒体を前記燃焼室に供給し、
前記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、
供給された前記可燃物を前記燃焼室の流動層内で熱分解ガス化して可燃ガスを生成し、
前記燃焼室内の流動媒体を前記乾燥・熱分解室に供給することを特徴とする可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項10】
前記乾燥・熱分解室の流動層の温度を100℃〜550℃に維持することを特徴とする請求項9に記載の可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項11】
前記乾燥・熱分解室の流動層の温度を120℃〜450℃に維持することを特徴とする請求項9に記載の可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項12】
前記乾燥・熱分解室の流動層の温度を120℃〜350℃に維持することを特徴とする請求項9に記載の可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項13】
前記乾燥・熱分解室には、酸素を含まない流動化ガスを供給することを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項14】
前記乾燥・熱分解室には、蒸気または前記燃焼室からの燃焼排ガスを流動化ガスとして供給することを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項15】
前記乾燥・熱分解室には、スクリューコンベヤ装置、プッシャー装置、およびプッシャー装置と火格子式搬送装置とを有する供給装置のうち少なくとも1つにより前記可燃物を供給することを特徴とする請求項9から14のいずれか一項に記載の可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項16】
前記乾燥・熱分解室には、生ごみ、都市ごみ、汚泥、およびバイオマスのうち少なくとも1つを含む可燃物を供給することを特徴とする請求項9から15のいずれか一項に記載の可燃物の熱分解ガス化方法。
【請求項17】
流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、
前記乾燥・熱分解室内の流動層内に性状が不均一もしくは不均質な可燃物または水分含有量の多い可燃物を供給し、
流動媒体が充填された燃焼室から前記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて前記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、
乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および前記乾燥・熱分解室内の流動媒体を前記燃焼室に供給し、
前記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、
供給された前記可燃物を前記燃焼室の流動層内で部分燃焼して部分燃焼ガスを生成し、
前記燃焼室内の流動媒体を前記乾燥・熱分解室に供給し、
前記燃焼室で生成された部分燃焼ガスを溶融炉に供給し、
前記溶融炉内で前記部分燃焼ガスを燃焼して灰分を溶融スラグ化することを特徴とする可燃物の処理方法。
【請求項18】
流動媒体が充填された乾燥・熱分解室に流動化ガスを供給して該乾燥・熱分解室内の流動媒体を流動化し、
前記乾燥・熱分解室内の流動層内に性状が不均一もしくは不均質な可燃物または水分含有量の多い可燃物を供給し、
流動媒体が充填された燃焼室から前記乾燥・熱分解室に流動媒体を受け入れて前記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、
乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および前記乾燥・熱分解室内の流動媒体を前記燃焼室に供給し、
前記燃焼室に酸素を含む流動化ガスを供給して該燃焼室内の流動媒体を流動化し、
供給された前記可燃物を前記燃焼室の流動層内で熱分解ガス化して可燃ガスを生成し、
前記燃焼室内の流動媒体を前記乾燥・熱分解室に供給し、
前記燃焼室で生成された可燃ガスを溶融炉に供給し、
前記溶融炉内で前記可燃ガスを高温ガス化して灰分を溶融スラグ化するとともにガス化生成ガスを生成することを特徴とする可燃物の処理方法。
【請求項19】
流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された乾燥・熱分解室と、
酸素を含む流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された燃焼室と、
前記燃焼室で生成された部分燃焼ガスを燃焼して灰分を溶融スラグ化する溶融炉と、
を備え、
前記乾燥・熱分解室の流動層内には、性状が不均一もしくは不均質な可燃物または水分含有量の多い可燃物が供給され、
前記乾燥・熱分解室は、前記燃焼室から受け入れられた流動媒体により前記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、
前記燃焼室には、前記乾燥・熱分解室の乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および該乾燥・熱分解室内の流動媒体が供給され、
前記燃焼室は、前記乾燥・熱分解室から供給された前記可燃物を該燃焼室の流動層内で部分燃焼して部分燃焼ガスを生成することを特徴とする可燃物の処理装置。
【請求項20】
流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された乾燥・熱分解室と、
酸素を含む流動化ガスにより流動化される流動媒体が充填された燃焼室と、
前記燃焼室で生成された可燃ガスを高温ガス化して灰分を溶融スラグ化するとともにガス化生成ガスを生成する溶融炉と、
を備え、
前記乾燥・熱分解室の流動層内には、性状が不均一もしくは不均質な可燃物または水分含有量の多い可燃物が供給され、
前記乾燥・熱分解室は、前記燃焼室から受け入れられた流動媒体により前記可燃物を乾燥、または熱分解、または熱破砕し、
前記燃焼室には、前記乾燥・熱分解室の乾燥、または熱分解、または熱破砕により、水分が蒸発した可燃物、または水分が蒸発して熱破砕された可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行した可燃物、または水分が蒸発して熱分解が一部進行して熱破砕された可燃物および該乾燥・熱分解室内の流動媒体が供給され、
前記燃焼室は、前記乾燥・熱分解室から供給された前記可燃物を該燃焼室の流動層内で熱分解ガス化して可燃ガスを生成することを特徴とする可燃物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−275442(P2006−275442A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97239(P2005−97239)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】