説明

含ピロールヘテロアセン化合物、該化合物の製造方法、該化合物を含む薄膜及び該薄膜を含む有機半導体デバイス

【課題】有機半導体活性層の薄膜を与え得る新規な化合物が求められている。
【解決手段】式(1)


(式中、X及びYは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。環構造A及び環構造Bは、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。該芳香族複素環は単一の環構造である。
およびRは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基を表す。)
で表される含ピロールヘテロアセン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ピロールヘテロアセン化合物、該化合物の製造方法、該化合物を含む薄膜及び該薄膜を含む有機半導体デバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体デバイスの1種である有機トランジスタは、電子ペーパー、大画面フラットパネルディスプレイ等の素子として用いられる。このような有機トランジスタは、有機半導体活性層、基板、絶縁層、電極等の部材から構成されている。有機半導体活性層を与える化合物としては、例えば、特許文献1には、ペンタセンが記載されており、ペンタセンを真空蒸着して得られた薄膜及び該薄膜を含有する有機トランジスタも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−85250号公報(実施例1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下、有機半導体活性層の薄膜を与え得る新規な化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
<1> 式(1)

(式中、X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。環構造A及び環構造Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。該芳香族複素環は単一の環構造である。
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基を表す。該アリール基及び該ヘテロアリール基には、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、フッ素原子、アリール基、ヘテロアリール基を有していてもよい。)
【0006】
<2> 前記式(1)において、環構造A及び環構造Bが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、又は置換基を有していてもよいチオフェン環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造であることを特徴とする<1>記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
<3> 前記式(1)において、X及びYが硫黄原子であることを特徴とする<1>又は<2>記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
<4> 前記式(1)において、環構造A及び環構造Bが、同一で、置換基を有していてもよいベンゼン環であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
<5> 前記式(1)において、環構造A及び環構造Bが、同一で、置換基を有していてもよいチオフェン環であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【0007】
<6> 前記式(1)において、R及びRは、同一で、フッ素原子を有していてもよいアルキル基又はフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基を有する炭素数7〜26のアリール基であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
<7> 前記式(1)において、R及びRは、同一で、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【0008】
<8> <1>〜<7>のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物を含む薄膜。
<9> <1>〜<7>のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物からなる薄膜。
<10> <8>または<9>記載の薄膜を含む有機トランジスタ。
<11> <8>または<9>記載の薄膜を含む有機半導体デバイス。
【0009】
<12> 式(2)

(式中、X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。
環構造A及び環構造Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。R〜R6は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
と、式(3)
7−NH (3)
(式中、R7は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基を表す。該アリール基及び該ヘテロアリール基には、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、フッ素原子を有していてもよい。)
で示されるアミン化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする式(1’)

(式中、環構造A、環構造B、X、Y及びR7は、前記と同じ定義である。)
で表される含ピロールヘテロアセン化合物の製造方法。
【0010】
<13> 式(2)

(式中、X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。
環構造A及び環構造Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。R〜R6は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
で表される化合物。
<14> <1>〜<7>のいずれか記載の式(1)で表される含ピロールヘテロアセン化合物及び有機溶媒を含むことを特徴とする組成物。
<15> <14>記載の組成物を基板又は絶縁層上に塗布する工程と、基板又は絶縁層上に塗布された塗布膜を乾燥する工程とを含むことを特徴とする薄膜の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機半導体活性層を与え得る新規な化合物が提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における有機トランジスタの一つの態様を説明する断面図である。
【図2】本発明における有機トランジスタの一つの態様を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0013】
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 有機半導体活性層
21 基板
22 ソース電極
23 ドレイン電極
24 ゲート絶縁膜
25 ゲート電極
26 有機半導体活性層
【発明を実施するための形態】
【0014】
<式(1)で表される含ピロールヘテロアセン化合物>
本発明の化合物は、式(1)

で表される含ピロールヘテロアセン化合物(以下、「化合物(1)」と記すことがある。)である。
【0015】
化合物(1)中、X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。
化合物(1)のX及びYは、化合物(1)の合成が容易となるので、同一であることが好ましく、いずれも硫黄原子であることがより好ましい。
【0016】
環構造A及び環構造Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。該芳香族複素環は単一の環構造である。
【0017】
環構造Aは、化合物(1)における=N−(R)基を有する5員環(以下、環構造Cと記すことがある)と縮合しており、環構造Bは、化合物(1)における=N−(R)基を有する5員環(以下、環構造Dと記すことがある)と縮合している。
環構造Aという場合には、環構造Cと共通する2つの炭素原子を含めた構造を意味し、環構造Bについても同様の構造を意味する。また、Xを有する環を環構造Eと記すことがあり、Yを有する環は環構造Fと記すことがある。
ここで、環構造Cは、環構造Aと環構造Eと縮合しており、環構造Aと共通する炭素原子2つと環構造Eと共通する炭素原子2つと=N−(R)基とからなる5員環を意味する。環構造Dは、環構造Bと環構造Fと縮合しており、環構造Bと共通する炭素原子2つと環構造Eと共通する炭素原子2つと=N−(R)基とからなる5員環を意味する。環構造Eは、環構造Cと環構造Fと縮合しており、環構造Cと共通する炭素原子2つと環構造Fと共通する炭素原子2つとXとからなる5員環を意味する。環構造Fは、環構造Dと環構造Eと縮合しており、環構造Dと共通する炭素原子2つと環構造Eと共通する炭素原子2つとYとからなる5員環を意味する。
【0018】
環構造A及び環構造Bの「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環」の芳香族炭化水素環とは、芳香族性を有する炭素数6〜20の環構造であり、該環構造は、単環(単一の環構造)であっても二環(2つの環構造)であっても三環(3つの環構造)であってもよい。具体的には、例えば、ベンゼン環などの単環、例えば、ナフタレン環などの二環、例えば、アントラセン環、フェナンスレン環及びフルオレン環などの三環等が挙げられ、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、更に好ましくはベンゼン環が挙げられる。
【0019】
環構造A及び環構造Bの「置換基を有していてもよい芳香族複素環」の芳香族複素環とは、芳香族性を有する環構造であり、該環構造は炭素原子及び異種原子を含む単環である。上記異種原子としては、酸素原子、セレン原子、硫黄原子、及び窒素原子などが挙げられる。上記芳香族複素環は、異種原子数が1個又は2個であることが好ましい。
上記芳香族複素環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環等が挙げられる。好ましくは、チオフェン環、フラン環、セレノフェン環、ピロール環、チアゾール環であり、更に好ましくは、チオフェン環の2位及び3位の炭素原子が環構造C又はDと縮環したもの、フラン環の2位及び3位の炭素原子が環構造C又はDと縮環したものであり、特に好ましくはチオフェン環の2位及び3位の炭素原子が環構造C又はDと縮環したものが挙げられる。
【0020】
環構造A及び環構造Bの「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環」及び「置換基を有していてもよい芳香族複素環」の置換基としては、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を有していてもよいヘテロアリール基、ハロゲン原子を有していてもよいアルケニル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルキニル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルキルチオ基、ハロゲン原子を有していてもよいアルキルカルボニル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子を有していてもよい(トリアルキル)シリル基、ハロゲン原子を有していてもよい(ジアルキル)アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられ、
好ましくは、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基若しくはアルコキシ基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、アルキル基若しくはアルコキシ基を有していてもよいへテロアリール基又はハロゲン原子であり、
更に好ましくは、フッ素原子を有していてもよいアリール基、フッ素原子を有していてもよいへテロアリール基又はフッ素原子である。
【0021】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、直鎖、分枝鎖、及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルキル基が挙げられる。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基、及びn−トリアコンチル基が例示され、
好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、
より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、2−ヘキシルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、及びn−ヘキサデシル基等の炭素数1〜16のアルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置き換わった基が挙げられる。
【0022】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基」のアルコキシ基としては、直鎖、分枝鎖、及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルコキシ基が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、2−ヘキシルデシル基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、n−ヘンイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基、n−ペンタコシルオキシ基、n−ヘキサコシルオキシ基、n−ヘプタコシルオキシ基、n−オクタコシルオキシ基、n−ノナコシルオキシ基、n−トリアコンチルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシメトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、ポリエチレングリコキシ基等が挙げられ、
好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシメトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられ、
より好ましくはエトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシメトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基の炭素数1〜16のアルコキシ基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置き換わった基が挙げられる。
【0023】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を有していてもよいアリール基」のアリール基としては、フェニル基若しくはナフチル基であることが好ましい。「ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を有していてもよいアリール基」としては、前記に例示されたアリール基の、水素原子の一部若しくは全てがハロゲン原子で置き換わった基が例示される。
【0024】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を有していてもよいヘテロアリール基」のへテロアリール基としては、好ましくは単環又は二環であり、より好ましくは、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、チエノ[3,2−b]チエニル基、フロ[3,2−b]フリル基、チエノ[3,2−b]フリル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾ[b]フリル基であり、更に好ましくは、チエニル基、フリル基、チエノ[3,2−b]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾ[b]フリル基である。「ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を有するヘテロアリール基」としては、前記に例示されたヘテロアリール基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0025】
「アルキル基を有していてもよいアリール基」及び「アルキル基を有していてもよいへテロアリール基」のアルキル基はハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を有していてもよく、「ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基」のアルキル基と同様のものが例示され、同様のものが好ましい。
【0026】
「アルコキシ基を有していてもよいアリール基」及び「アルコキシ基を有していてもよいへテロアリール基」のアルコキシ基はハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を有していてもよく、「ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基」のアルコキシ基と同様のものが例示され、同様のものが好ましい。
【0027】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよいアルケニル基」のアルケニル基としては、直鎖及び分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数2〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルケニル基が挙げられる。
上記アルケニル基としては、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−シクロヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デケニル基、1−ウンデケニル基、1−ドデケニル基、1−トリデケニル基、1−テトラデケニル基、1−ペンタデケニル基、1−ヘキサデケニル基、1−ヘプタデケニル基、1−オクタデケニル基、1−ノナデケニル基、1−イコセニル基、1−ヘンイコセニル基、1−ドコセニル基、1−トリコセニル基、1−テトラコセニル基、1−ペンタコセニル基、1−ヘキサコセニル基、1−ヘプタコセニル基、1−オクタコセニル基、1−ノナコセニル基、及び1−トリアコンテニル基が挙げられ、
好ましくはエテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デケニル基、1−ウンデケニル基、1−ドデケニル基、1−トリデケニル基、1−テトラデケニル基、1−ペンタデケニル基、1−ヘキサデケニル基、1−ヘプタデケニル基、1−オクタデケニル基、1−ノナデケニル基、及び1−イコセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられ、
より好ましくはエテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デケニル基、1−ウンデケニル基、1−ドデケニル基、1−トリデケニル基、1−テトラデケニル基、1−ペンタデケニル基、1−ヘキサデケニル基等の炭素数2〜16のアルケニル基が挙げられる。「ハロゲン原子を有するアルケニル基」としては、前記に例示されたアルケニル基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0028】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよいアルキニル基」のアルキニル基としては、直鎖及び分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数2〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキニル基が挙げられる。
上記アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、1−ヘプタデキニル基、1−オクタデキニル基、1−ノナデキニル基、1−イコシニル基、1−ヘンイコシニル基、1−ドコシニル基、1−トリコシニル基、1−テトラコシニル基、1−ペンタコシニル基、1−ヘキサコシニル基、1−ヘプタコシニル基、1−オクタコシニル基、1−ノナコシニル基、及び1−トリアコンチニル基が挙げられ、
好ましくはエチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、1−ヘプタデキニル基、1−オクタデキニル基、1−ノナデキニル基、及び1−イコシニル基等の炭素数2〜20のアルキニル基が挙げられ、
より好ましくはエチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、及び1−ヘキサデキニル基等の炭素数2〜16のアルキニル基が挙げられる。「ハロゲン原子を有するアルキニル基」としては、前記に例示されたアルキニル基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0029】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよいアルキルチオ基」のアルキルチオ基としては、直鎖、分枝鎖、及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルキルチオ基が挙げられる。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、シクロヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、シクロオクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、2−ヘキシルデシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基、n−ヘプタデシルチオ基、n−オクタデシルチオ基、n−ノナデシルチオ基、n−イコシルチオ基、n−ヘンイコシルチオ基、n−ドコシルチオ基、n−トリコシルチオ基、n−テトラコシルチオ基、n−ペンタコシルチオ基、n−ヘキサコシルチオ基、n−ヘプタコシルチオ基、n−オクタコシルチオ基、n−ノナコシルチオ基、及びn−トリアコンチルチオ基などが挙げられ、
好ましくはエチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、シクロヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、シクロオクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、2−ヘキシルデシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基、n−ヘプタデシルチオ基、n−オクタデシルチオ基、n−ノナデシルチオ基、及びn−イコシルチオ基等の炭素数2〜20のアルキルチオ基が挙げられ、
より好ましくはエチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、シクロヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、シクロオクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、2−n−ヘキシル−n−デシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、及びn−ヘキサデシルチオ基等の炭素数2〜16のアルキルチオ基が挙げられる。「ハロゲン原子を有するアルキルチオ基」としては、前記に例示されたアルキルチオ基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0030】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよいアルキルカルボニル基」のアルキルカルボニル基としては、直鎖及び分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数が2〜30、好ましくは2〜17の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキルカルボニルが挙げられる。
上記アルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、n−ペンタデシルカルボニ基、n−イコシルカルボニル基などが例示され、好ましくは、n−ヘキシルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、及びn−ペンタデシルカルボニ基などが挙げられる。「ハロゲン原子を有するアルキルカルボニル基」としては、前記に例示されたアルキルカルボニル基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0031】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシカルボニル基」のアルコキシカルボニル基としては、直鎖及び分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数が2〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
上記アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、n−ペンタデシルオキシカルボニル基、及びn−イコシルオキシカルボニル基などが例示され、
好ましくはn−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、及びn−ペンタデシルオキシカルボニル基など、炭素数2〜17のアルコキシカルボニル基が挙げられる。「ハロゲン原子を有するアルコキシカルボニル基」としては、前記に例示されたアルコキシカルボニル基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0032】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよい(トリアルキル)シリル基」の(トリアルキル)シリル基としては、例えば、3つの炭素数1〜30のアルキル基がケイ素原子に結合している三置換シリル基が挙げられる。
上記(トリアルキル)シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−s−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、t−ブチル−ジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、及びトリ−n−ヘキシルシリル基、ジメチル−n−ドデシルシリル基などが例示され、
好ましくはトリメチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基など、3つの炭素数1〜6のアルキル基がケイ素原子に結合している三置換シリル基が挙げられる。「ハロゲン原子を有する(トリアルキル)シリル基」としては、前記に例示された(トリアルキル)シリル基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0033】
上記芳香族炭化水素環及び芳香族複素環における置換基の「ハロゲン原子を有していてもよい(ジアルキル)アミノ基」の(ジアルキル)アミノとしては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が2つ窒素原子に結合している二置換アミノ基が挙げられる。
上記(ジアルキル)アミノ基としては、好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−s−ブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、t−ブチルイソプロピルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、及びジ−n−デシルアミノ基などが挙げられる。「ハロゲン原子を有する(ジアルキル)アミノ基」としては、前記に例示された(ジアルキル)アミノ基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置き換わった基を例示することができる。
【0034】
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30のヘテロアリール基を表す。該アリール基及び該ヘテロアリール基には、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、フッ素原子を有していてもよい。
【0035】
およびRにおけるアルキル基とは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基であり、直鎖、分枝鎖、及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
およびRにおけるアルキル基としては、前記と同様のアルキル基が例示され、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基等及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられ、
より好ましくはエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、2−ヘキシルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、及びn−ヘキサデシル基等の炭素数2〜16のアルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられる。
【0036】
およびRにおけるアルコキシ基とは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルコキシ基であり、直鎖、分枝鎖及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルコキシ基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
およびRにおけるアルコキシ基としては、前記と同様のもの及び前記アルコキシ基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が例示され、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシメトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基、
より好ましくはエトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシメトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基の炭素数1〜16のアルコキシ基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられる。
【0037】
およびRにおけるアルケニル基とは、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜30のアルケニル基であり、直鎖、分枝鎖及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数2〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルケニル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
およびRにおけるアルケニル基としては、前記と同様のもの、及び、これらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が例示され、好ましくはエテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デケニル基、1−ウンデケニル基、1−ドデケニル基、1−トリデケニル基、1−テトラデケニル基、1−ペンタデケニル基、1−ヘキサデケニル基、1−ヘプタデケニル基、1−オクタデケニル基、1−ノナデケニル基、1−イコセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられ、
より好ましくはエテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デケニル基、1−ウンデケニル基、1−ドデケニル基、1−トリデケニル基、1−テトラデケニル基、1−ペンタデケニル基、1−ヘキサデケニル基等の炭素数2〜16のアルケニル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置き換わった基が挙げられる。
【0038】
およびRにおけるアルキニル基とは、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜30のアルキニル基であり、直鎖、分枝鎖及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数2〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルキニル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
およびRにおけるアルキニル基としては、前記と同様のもの、及び、これらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が例示され、好ましくはエチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、1−ヘプタデキニル基、1−オクタデキニル基、1−ノナデキニル基、1−イコシニル基等の炭素数2〜20のアルキニル基、及び、これらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられ、
より好ましくはエチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、及び1−ヘキサデキニル基等の炭素数2〜16のアルキニル基、及び、これらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられる。
【0039】
およびRにおけるアルキルチオ基とは、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキルチオ基であり、直鎖、分枝鎖及び環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖、分枝鎖、もしくは環状のアルキルチオ基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
およびRにおけるアルキルチオ基としては、前記と同様のもの、及び、これらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が例示され、
好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、シクロオクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、2−ヘキシルデシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基、n−ヘプタデシルチオ基、n−オクタデシルチオ基、n−ノナデシルチオ基、n−イコシルチオ基等の炭素数1〜20のアルキルチオ基等及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられ、
より好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、シクロオクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、2−ヘキシルデシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、2−ヘキシルオクチルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、及びn−ヘキサデシルチオ基等の炭素数1〜16のアルキルチオ基及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基が挙げられる。
【0040】
およびRにおけるアリール基とは、フッ素原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
およびRにおけるアリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、さらに、フッ素原子を有していてもよい。尚、これら置換基を有するアリール基の炭素数は、置換基を含めた合計で炭素数7〜30であることが好ましい。
およびRにおけるアリール基としては、アルキル基又はアルコキシ基を有したアリール基が好ましく、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−ヘプチルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−ノニルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ウンデシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−トリデシルフェニル基及びn−テトラデシルフェニル基等の炭素数1〜24の直鎖アルキル基を有するフェニル基;例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロポキシフェニル基、n−ブトキシフェニル基、n−ペンチルオキシフェニル基、n−ヘキシルオキシフェニル基、n−ヘプチルオキシフェニル基、n−オクチルオキシフェニル基、n−デシルオキシフェニル基、n−ウンデシルオキシフェニル基、n−ドデシルオキシフェニル基、n−トリデシルオキシフェニル基、n−テトラデシルオキシフェニル基等の炭素数1〜24の直鎖アルコキシ基を有するフェニル基等を挙げることができる。
【0041】
およびRにおけるヘテロアリール基とは、フッ素原子を有していてもよい炭素数4〜30のヘテロアリール基である。ヘテロアリール基としては、例えば、チオフェニリル基、フラニル基、セレノフェニル基、ピローリル基、オキサゾーリル基、チアゾール基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
ヘテロアリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、フッ素原子を有していてもよい。尚、これら置換基を有するアリール基の炭素数は、置換基を含めた合計で炭素数7〜16であることが好ましい。
【0042】
化合物(1)において、R及びRは、同一で、フッ素原子を有していてもよいアルキル基又はフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基を有する炭素数7〜26のアリール基であることも好ましい。
具体的には、メチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−ヘプチルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−ノニルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ウンデシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−トリデシルフェニル基及びn−テトラデシルフェニル基等の炭素数1〜14の直鎖アルキル基を有するフェニル基;例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロポキシフェニル基、n−ブトキシフェニル基、n−ペンチルオキシフェニル基、n−ヘキシルオキシフェニル基、n−ヘプチルオキシフェニル基、n−オクチルオキシフェニル基、n−デシルオキシフェニル基、n−ウンデシルオキシフェニル基、n−ドデシルオキシフェニル基、n−トリデシルオキシフェニル基、n−テトラデシルオキシフェニル基等の炭素数1〜14の直鎖アルコキシ基を有するフェニル基を挙げることができる。
【0043】
化合物(1)において、R及びRは、同一で、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であることも好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基等及びこれらの基の水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置き換わった基を挙げることができる。
【0044】
化合物(1)としては、表1〜10記載の化合物を挙げることができる。
【0045】
【表1】

波線は結合手を表す。
【0046】
【表2】

波線は結合手を表す。
【0047】
【表3】

波線は結合手を表す。
【0048】
【表4】

波線は結合手を表す。
【0049】
【表5】

波線は結合手を表す。
【0050】
【表6】

波線は結合手を表す。
【0051】
【表7】

波線は結合手を表す。
【0052】
【表8】

波線は結合手を表す。
【0053】
【表9】

波線は結合手を表す。
【0054】
【表10】

波線は結合手を表す。
【0055】
また、化合物(1)の他の実施態様として、下記式(1−1−68)〜(1−1−73)で表される化合物(式番号が化合物番号に対応する)を挙げることができる。

【0056】
さらに、化合物(1)の他の実施態様として、下記式(1−3−68)〜(1−3−71)で表される化合物(式番号が化合物番号に対応する)を挙げることができる。

【0057】
好ましい化合物(1)を化合物番号で表わせば、例えば、(1−1−1),(1−1−2),(1−1−3),(1−1−4),(1−1−5),(1−1−6),(1−1−7),(1−1−8),(1−1−9),(1−1−11),(1−1−12),(1−1−14),(1−1−15),(1−1−16),(1−1−17),(1−1−19),(1−1−21),(1−1−22),(1−1−27),(1−1−28),(1−1−29),(1−1−30),(1−1−31),(1−1−32),(1−1−34),(1−1−35),(1−1−36),(1−1−37),(1−1−38),(1−1−39),(1−1−41),(1−1−43),(1−1−47),(1−1−48),(1−1−50),(1−1−54),(1−1−55),(1−1−68),(1−1−70),(1−1−71),(1−2−1),(1−2−2),(1−2−4),(1−2−6),(1−2−7),(1−2−8),(1−2−10),(1−2−12),(1−2−14),(1−2−16),(1−2−18),(1−2−19),(1−2−20),(1−2−21),(1−2−24),(1−2−25),(1−2−27),(1−2−28),(1−2−30),(1−2−32),(1−2−33),(1−3−1),(1−3−2),(1−3−3),(1−3−4),(1−3−5),(1−3−7),(1−3−8),(1−3−9),(1−3−11),(1−3−12),(1−3−14),(1−3−15),(1−3−16),(1−3−19),(1−3−21),(1−3−22),(1−3−27),(1−3−28),(1−3−29),(1−3−30),(1−3−31),(1−3−32),(1−3−35),(1−3−36),(1−3−37),(1−3−38),(1−3−41),(1−3−42),(1−3−43),(1−3−44),(1−3−47),(1−3−48),(1−3−50),(1−3−51),(1−3−54),(1−3−55),(1−3−68),(1−3−69),(1−3−70),(1−3−71),(1−4−1),(1−4−2),(1−4−4),(1−4−6),(1−4−7),(1−4−8),(1−4−9),(1−4−10),(1−4−15),(1−4−16),(1−4−17),(1−4−18),(1−4−19),(1−4−20),(1−4−21),(1−4−24),(1−4−25),(1−4−27),(1−4−28),(1−4−30),(1−4−32),(1−4−33)等が挙げられ、
【0058】
さらに好ましくは、(1−1−2),(1−1−3),(1−1−5),(1−1−7),(1−1−9),(1−1−11),(1−1−12),(1−1−14),(1−1−15),(1−1−16),(1−1−28),(1−1−29),(1−1−30),(1−1−31),(1−1−32),(1−1−34),(1−1−35),(1−1−36),(1−1−38),(1−1−39),(1−1−68),(1−1−70),(1−2−4),(1−2−7),(1−2−8),(1−2−10),(1−2−16),(1−2−18),(1−2−19),(1−2−21),(1−2−25),(1−2−27),(1−2−28),(1−3−2),(1−3−3),(1−3−4),(1−3−5),(1−3−7),(1−3−9),(1−3−11),(1−3−12),(1−3−14),(1−3−29),(1−3−30),(1−3−31),(1−3−32),(1−3−35),(1−3−36),(1−3−38),(1−3−43),(1−3−47),(1−3−48),(1−3−68),(1−3−69),(1−4−4),(1−4−7),(1−4−8),(1−4−9),(1−4−10),(1−4−16),(1−4−17),(1−4−18),(1−4−19),(1−4−20),(1−4−21),(1−4−25),(1−4−27),(1−4−28)等が挙げられる。
【0059】
本発明の化合物(1)は、後述するように、真空プロセスで薄膜を形成することができる。また、化合物(1)は有機溶媒への溶解性に優れることから、化合物(1)及び有機溶媒を含む組成物(以下、本組成物と記すことがある)を調製し、本組成物を絶縁層などに塗布する方法によって薄膜を形成することができる。ここで、溶解可能な有機溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素等のハロゲン原子化脂肪族炭化水素溶媒、例えばジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、グルタロジニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ジメチルスルフォキサイド、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられ、中でも、トルエン、キシレン、o-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフランが好ましい。この溶媒は2種以上を混合溶媒にして用いることもできる。
【0060】
化合物(1)及び有機溶媒を含む組成物における化合物(1)の濃度としては、例えば、0.001〜50重量%の範囲等を挙げることができ、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲等が挙げられる。
本組成物には、化合物(1)及び有機溶媒以外にも、後述する薄膜(有機半導体活性層)のキャリア移動度を著しく損なわない範囲であれば、酸化防止剤、安定剤、有機半導体材料、有機絶縁性材料などと混合してもよい。
【0061】
化合物(1)以外の有機半導体材料としては、低分子材料でもよく、高分子材料でもよく、架橋反応が可能な場合は架橋していてもよく架橋していなくてもよい。好ましくは、高分子材料が挙げられる。具体例としては、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトリアリールアミン誘導体、ポリキノリン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、フタロシアニン誘導体などが挙げられ、この場合、化合物(1)の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上になるように調整することがより好ましい。
【0062】
該有機絶縁性材料としては、低分子材料でもよく、高分子材料でもよく、架橋反応が可能な場合は架橋していてもよく架橋していなくてもよい。好ましくは、高分子材料が挙げられる。具体例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ナイロン、ポリイミド、環状オレフィンコポリマー、エポキシポリマー、セルロース、ポリオキシメチレン、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、生分解性プラスチック、フェノール系樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び各種ポリマーユニットを組み合わせたコポリマーなどが挙げられ、この場合、本組成物における化合物(1)の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上になるように調整することがより好ましい。
本組成物の調製方法としては、例えば、有機溶媒に化合物(1)を、例えば、10〜200℃の範囲等、好ましくは20〜150℃の範囲等で溶解する方法等を挙げることができる。
【0063】
<式(1)で表される含ピロールヘテロアセン化合物の製造方法>
本発明の化合物(1)の製造方法としては、例えば、式(2)

(式中、X、Y、環構造A及び環構造Bは前記と同じ定義であり、R〜Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、好ましくは、臭素又はヨウ素を表す。)
で表される化合物(以下、化合物(2)と記すことがある)と、式(3)
−NH (3)
(式中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30のヘテロアリール基を表す。該アリール基及び該ヘテロアリール基には、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、フッ素原子を有していてもよい。)
で示されるアミン化合物(以下、単にアミン化合物と記すことがある)とを反応させる工程(以下、本工程と記すことがある)を含む方法等を挙げることができる。
【0064】
本工程で用いられる化合物(2)としては、下記式(2−1)〜(2−29)で表される化合物を挙げることができる。

【0065】

【0066】

【0067】
好ましい化合物(2)としては、例えば、前記式(2−1),(2−5),(2−9),(2−10),(2−13),(2−18),(2−19),(2−20),(2−23),(2−26)で表される化合物等が挙げられ、
さらに好ましくは、前記式(2−1),(2−13),(2−18),(2−23),(2−26)で表される化合物等が挙げられる。
【0068】
本工程に用いられるアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、3−メチルブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、2−ヘキシルデシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、n−イコシルアミン、n−ヘンイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−テトラコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、n−ヘキサコシルアミン、n−ヘプタコシルアミン、n−オクタコシルアミン、n−ノナコシルアミン、及びn−トリアコンチルアミン等の直鎖アルキルアミン等;アニリン、4−メチルアニリン、4−エチルアニリン、4−n−プロピルアニリン、4−イソプロピルアニリン、4−n−ブチルアニリン、4−n−ペンチルアニリン、4−n−ヘキシルアニリン、4−n−ヘプチルアニリン、4−n−オクチルアニリン、4−n−ノニルアニリン、4−n−デシルアニリン、4−n−ウンデシルアニリン、4−n−ドデシルアニリン、4−n−トリデシルアニリン、4−n−テトラデシルアニリン、4−パーフルオロヘキシルアニリン、ペンタフルオロアニリン、4−メトキシアニリン、4−エトキシアニリン、4−n−ヘキシロキシアニリン、3,5−ジ−n−ブチルアニリン等のアルキル基やアルコキシ基を有するアニリンなどを挙げることができる。
【0069】
本工程に用いられるアミン化合物の使用量は、化合物(2)1モルに対して、例えば、1〜50モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは2〜20モルの範囲等、より好ましくは2〜15モルの範囲等が挙げられる。
【0070】
本工程は、有機溶媒中で行うことが好ましい。
上記有機溶媒としては、上記反応に不活性な有機溶媒であればよく、例えば、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ジメトキシエタン等の脂肪族炭化水素溶媒;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒;メタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の炭素数1〜4のアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒;等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素溶媒及び脂肪族炭化水素溶媒が挙げられ、より好ましくはトルエンやキシレンが挙げられる。
【0071】
本工程において、反応溶液における化合物(2)の濃度としては、有機溶媒1リットル当たり、例えば、0.0001〜20モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0.001〜10モルの範囲、より好ましくは、例えば、0.01〜5モルの範囲等が挙げられる。
【0072】
本工程は、パラジウム触媒および塩基の存在下で行われることが好ましい。
パラジウム触媒の使用量としては、化合物(2)に対して、パラジウム触媒に含まれるパラジウム原子100モルに対し、例えば、0.01〜50モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは0.01〜30モルの範囲等が挙げられる。
【0073】
パラジウム触媒とは、パラジウム原子を含むパラジウム化合物と配位子とを含むものである。パラジウム触媒は、配位子とパラジウム化合物とを予め有機溶媒中で接触させることにより調製したものを用いてもよいし、配位子とパラジウム化合物とを本工程の反応溶液内で接触させて調製したものを用いてもよい。
【0074】
上記配位子としては、パラジウムに配位可能であって有機溶媒に可溶であればよく、例えば単座ホスフィン配位子、多座配位子、カルベン配位子等が挙げられ、単座配位子が好ましく、単座ホスフィン配位子がより好ましい。
単座ホスフィン配位子としては、例えばトリ(n−ブチル)ホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、及びジシクロヘキシルナフチルホスフィン等が挙げられ、トリ(t−ブチル)ホスフィンが好ましい。
【0075】
二座配位子としては、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル、5,5’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビ(1,3−ベンゾジオキソール)等のリン原子を2つ有する二座ホスフィン配位子;2−(N,N−ジメチルアミノ)−2’−(ジシクロヘキシルアミノ)ビフェニル等の窒素原子及びリン原子をそれぞれ1つずつ有する二座アミノホスフィン配位子;等が挙げられる。
【0076】
かかる配位子は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
かかる配位子の使用量は、パラジウム化合物に含まれるパラジウム原子1モルに対して、0.5〜20モルの範囲を挙げることができる。
【0077】
上記パラジウム化合物としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム、ジブロモビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジ−μ−クロロビス(π−アリル)ジパラジウム、ジクロロビス(ピリジン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ−[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム・ジクロロメタン錯体等の2価のパラジウム化合物; トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の0価のパラジウム化合物;等が挙げられ、中でもトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・クロロホルム錯体が好ましい。かかるパラジウム化合物は、通常、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0078】
上記塩基としては、例えば、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;等が挙げられ、好ましくは、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシドが挙げられ、より好ましくはアルカリ金属アルコキシド、更に好ましくは炭素数1〜6のアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。塩基は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよい。
【0079】
塩基の使用量は、化合物(2)1モルに対して、例えば、0.1〜25モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは1〜20モル、更に好ましくは2〜10モルの範囲等が挙げられる。塩基の使用量が25モル以下であると、未反応のアミン化合物の割合が低減される傾向があることから好ましい。
【0080】
本工程の反応温度は、0℃から反応溶液の還流温度の範囲から選ばれるが、好ましくは40〜200℃の範囲である。反応時間は、例えば、1分から120時間の範囲等が挙げられる。
【0081】
本工程を停止させる場合は、反応液に例えば、水、希塩酸などを添加すればよい。反応停止後、例えば抽出、洗浄等の後処理操作を行うことで、化合物(1)の粗生成物を得ることができる。該粗生成物は、晶析、昇華、又は各種クロマトグラフィーなどの精製操作、若しくはこれらを組み合わせた精製操作を行うことにより精製を行ってもよい。
【0082】
<式(2)で表される化合物の製造例>
化合物(2)の製造方法としては、例えば、WO2010031480記載の方法に準拠して、一般式(4)

(式中、Rは上記と同じ定義である。Rはハロゲン原子を表す。)
で表される化合物(以下、化合物(4)と記すことがある)と
一般式(5)

(式中、X,Y,R及びRは上記と同じ定義である。R及びR10は、それぞれハロゲン原子を表す。)
で表される化合物(以下、化合物(5)と記すことがある)とを、遷移金属触媒存在下、根岸カップリング反応に供することで製造することができる。
【0083】
<薄膜、素子及び有機半導体デバイス>
次に、本発明の薄膜及び有機半導体デバイスについて説明する。
本発明の薄膜は、化合物(1)を含有する。該薄膜は高いキャリア移動度を示すことから、該薄膜を有機半導体活性層として有する有機半導体デバイスの材料として好適である。
また、本発明の有機半導体デバイスは、本発明の薄膜を含有するものである。本発明の有機半導体デバイスとしては、例えば、有機トラジスタ、電界発光素子、太陽電池等を挙げることができる。また、本発明の有機トランジスタは、例えば、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、ICタグ、及びセンサ等に使用可能である。
【0084】
次に、本発明の薄膜及び有機半導体デバイスについて説明する。
本発明の薄膜は、化合物(1)を含有する。該薄膜は高いキャリア移動度を示すことから、該薄膜を有機半導体活性層として有する有機半導体デバイスの材料として好適である。
また、本発明の有機半導体デバイスは、本発明の薄膜を含有するものである。本発明の有機半導体デバイスとしては、例えば、有機トラジスタ、電界発光素子、太陽電池等を挙げることができる。また、本発明の有機トランジスタは、例えば、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、ICタグ、及びセンサ等に使用可能である。
【0085】
本発明の薄膜の形成方法としては、例えば、塗布成膜加工を挙げることができる。ここで、塗布成膜加工とは、前述したように、化合物(1)を溶媒に溶解し、得られた溶液を基板もしくは絶縁体層に塗布する工程を有する成膜加工を意味する。
塗布の方法としては、キャスティング法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などが挙げられる。これらの手法は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0086】
化合物(1)及び有機溶媒を含む溶液を、基板又は絶縁層に塗布して塗布膜を形成せしめた後、該塗布膜に含有されている溶媒を除去することで、基板上又は絶縁層上に薄膜が形成される。この有機溶媒の除去には自然乾燥処理、加熱処理、減圧処理、通風処理又はこれらを組み合わせた処理が採用されるが、操作が簡便である点で自然乾燥処理もしくは加熱処理が好ましい。この処理に係わる条件を簡単に記載すると、大気下で放置もしくはホットプレートで基板加熱(例えば、40〜250℃、好ましくは、50〜200℃)という条件が挙げられる。
【0087】
本発明の薄膜は、化合物(1)が溶媒に分散している分散液を用いて塗布成膜加工により薄膜を形成することもできる。この場合は、上述の塗布成膜加工において、溶液を該分散液に読み替えれば容易に実施可能である。 このように、本発明の薄膜は、上記の塗布成膜加工等の簡便な方法により形成することができる。
【0088】
本発明の薄膜を形成する方法の異なる例示として、化合物(1)を、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシャル成長法などの真空プロセスに供して薄膜を形成する方法を挙げることができる。
【0089】
真空蒸着法による薄膜の形成方法は、化合物(1)をルツボや金属ボート中で真空下、加熱し、蒸発した有機半導体材料を基板もしくは絶縁体材料に蒸着させる方法である。蒸着時の真空度は、通常1×10−1Pa以下、好ましくは1×10−3Pa以下である。蒸着時の基板温度は通常0℃〜300℃、好ましくは20℃〜200℃である。蒸着速度は、例えば、0.001nm/sec〜10nm/secの範囲等を挙げることができ、好ましくは0.01nm/sec〜1nm/secの範囲である。
【0090】
上記塗布成膜加工又は上記真空プロセスにより得られる化合物(1)を含有する薄膜の膜厚は、たとえば有機トランジスタの素子構造により適宜調節することができるが、好ましくは1nm〜10μmであり、さらに好ましくは5nm〜1μmである。
【0091】
本発明の有機トランジスタとしては、例えば、有機電界効果トランジスタ(OFET)が挙げられる。
該有機電界効果トランジスタの構造は、通常、ソース電極及びドレイン電極が本発明の薄膜からなる有機半導体活性層に接して設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば、
(1)基板/ゲート電極/絶縁層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層 という構造、
(2)基板/ゲート電極/絶縁層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極 という構造(図1参照)
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁層/ゲート電極 という構造
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁層/ゲート電極(図2参照)という構造などがあげられる。このとき、ソース電極,ドレイン電極, ゲート電極は、それぞれ複数設けてもよい。また、複数の有機半導体活性層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
【0092】
次に、本発明の有機トランジスタの他の構成成分に関し、具体例を挙げて説明する。
本発明における、有機トランジスタの作製において、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、酸化モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、酸化モリブデン、インジウム、ITO、炭素が好ましい。又は、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。これらの導電性材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。電極の膜厚は、材料によっても異なるが、好ましくは0.1nm〜10μmであり、さらに好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜3μmである。また、ゲート電極と基板を兼ねる場合は上記の膜厚より大きくてもよい。
【0093】
本発明の有機トランジスタに用いられるソース電極、ドレイン電極は、表面処理が施されていてもよい。本発明の薄膜(有機半導体活性層)と接触する電極表面に表面処理が施されていると、該薄膜を含む有機トランジスタのトランジスタ特性が向上する傾向があることから好ましい。表面処理としては、例えば、1−オクチルチオール、1−パーフルオロオクチルチオール、1−オクタデシルチオール、1−パーフルオロオクタデシルチオール等のチオール基を有する飽和炭化水素化合物、例えば、ベンゼンチオール、パーフルオロベンゼンチオール等のチオール基を有する芳香族化合物、例えば、チエニルチオール、パーフルオロチエニルチオール等のチオール基を有する複素環芳香族化合物等のチオール化合物をアルコールなどとともに溶液とし、上記電極を該溶液に浸漬処理するなどして上記電極の表面を修飾する方法等を挙げることができる。
【0094】
電極の形成方法としては、上記原料を用いて種々の方法で実施することができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。成膜時又は成膜後に、パターニングを必要に応じて行うことが好ましい。パターニングの方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、フォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法などが挙げられる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法なども挙げられる。これらの手法は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してパターニングを行うことも可能である。
【0095】
絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができる。該絶縁膜の材料として、無機酸化物、無機窒化物、有機化合物等を挙げることができる。
無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられ、好ましくは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。有機化合物としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合又は光カチオン重合して得られる光硬化性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、シアノエチルプルランなどが挙げられ、好ましくは、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの絶縁層の材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
絶縁層の膜厚は、材料によっても異なるが、好ましくは0.1nm〜100μmであり、さらに好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは5nm〜10μmである。
【0096】
絶縁層の形成方法としては、上記原料を用いて種々の方法で実施することができる。
具体的には、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、キャスト、バーコート、ブレードコーティング、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、CVD法などのドライプロセス法が挙げられる。その他、ゾルゲル法やアルミニウム上のアルマイト、シリコンの熱酸化膜のように金属上に酸化物膜を形成する方法などが挙げられる。
【0097】
基板の材料としては、ガラス、紙、石英、セラミック、樹脂製シートなどが挙げられる。該樹脂製シートの材質としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)などが挙げられる。基板の厚さは、好ましくは1μm〜10mmであり、さらに好ましくは5μm〜5mmである。
【0098】
本発明の薄膜(以下、有機半導体活性層と記すことがある)と接触する絶縁層や基板の部分において、絶縁層や基板上に表面処理を行ってもよい。有機半導体活性層が積層される絶縁層上に表面処理を行うことにより、有機トランジスタのトランジスタ特性を向上させることができる。表面処理としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシランなどによる疎水化処理、塩酸、硫酸、過酸化水素水などによる酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどによるアルカリ処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴンなどのプラズマ処理、ラングミュラー・ブロジェット膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理、機械的処理、コロナ放電などの電気的処理、繊維などを利用したラビング処理などが挙げられる。
【0099】
表面処理を行う方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。
【0100】
また、有機半導体活性層上に樹脂もしくは無機化合物からなる保護膜を設けてもよい。
保護膜の形成により、外気の影響を抑制してトランジスタの駆動を安定化することができる。
【0101】
本発明の薄膜は、化合物(1)を含有することから、高いキャリア移動度を示す。ゆえに、本発明の薄膜は、有機トランジスタにおける有機半導体活性層として有用であり、本発明の薄膜を含有する有機半導体活性層をもつ有機トランジスタは優れたトランジスタ特性を発現するものであり、有機半導体デバイスに有用なものとなる。
【0102】
本発明の薄膜は発光性を示す場合があり、発光性薄膜として用いることができる。
発光性薄膜とは、化合物(1)を含む薄膜であって、光や電気的刺激の条件下で発光する薄膜を意味する。発光性薄膜は、例えば有機発光ダイオード、液晶表示素子、有機電界発光素子、電子ペーパー等の発光素子の材料として有用である。
本発明の発光性薄膜は、本発明の化合物(1)を材料として用いる以外は、従来公知の方法と同様に製造することができる。
【0103】
本発明の薄膜を含む有機半導体デバイスとしては、前記の有機トランジスタ、発光素子のほか、センサー、RFIDs(radio frequency identification cards)などに適用可能である。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
なお、反応の進行の確認は以下のガスクロマトグラフィー(GC)及び高速液体クロマトグラフィー(LC)による分析によって行った。
1.ガスクロマトグラフィー分析
装置 島津GC2010
カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1、内径0.25mm、長さ30m
2.高速液体クロマトグラフィー分析
装置 島津LC10AT
カラム 化学物質評価機構製、L−column ODS、内径4.6mm、長さ15cm
【0105】
また、各実施例において生成物の同定は以下の装置による測定によって行った。
1.H−NMR:EX270(日本電子株式会社製)
2.LC−HRMS:装置 QSTAR XL
(Applied Biosystems社製)
カラム 化学物質評価機構製、L−column ODS、内径4.6mm、
長さ15cm
【0106】
(3,6−ジブロモ−2、5−ジヨードチエノ[3、2−b]チオフェンの製造例1)
原料である3,6−ジブロモチエノ[3、2−b]チオフェンは、2,5−ジブロモチエノ[3、2−b]チオフェンにリチウムジイソプロピルアミドを反応させて調製した(Org.Lett.、2007年、9巻、1005頁参照)。なお、2,5−ジブロモチエノ[3、2−b]チオフェンはチエノ[3、2−b]チオフェンをN−ブロモコハク酸イミドと反応させて調製した(Dalton Trans.、2005年、874頁参照)。
攪拌子、温度計、コンデンサーを取り付けたフラスコに、前記で得られた3,6−ジブロモチエノ[3、2−b]チオフェンの結晶(12.00g、40.3mmol)、ヨウ素(8.18g、32.2mmol)、ヨウ素酸(3.54g、20.1mmol)、硫酸(0.39g)、四塩化炭素132ml、酢酸264ml及び水41mlを仕込み、窒素雰囲気下、45℃にて20時間、攪拌した。次に、該フラスコに、ヨウ素(0.45g、1.8mmol)及びヨウ素酸(0.20g、1.1mmol)を追加し、さらに窒素雰囲気下、45℃にて10時間攪拌した。得られた反応マスを室温まで冷却し、濾過後、濾上物を水、メタノールで洗浄した。濾上物は減圧下で乾燥後、モノクロロベンゼンに溶解し、再結晶して、3,6−ジブロモ−2、5−ジヨードチエノ[3、2−b]チオフェンの白色結晶(19.5g、35.5mmol)を収率88%で得た。なお、その構造式を下記に示す。

【0107】
[実施例1:3,6−ジブロモ−2,5−ビス(2−ブロモフェニル)−チエノ[3、2−b]チオフェン(化合物(2−1))の製造例1]
攪拌子、温度計、コンデンサー、滴下ロートを取り付けたフラスコに2−ブロモヨードベンゼン(東京化成製、46.3g、163.7mmol)を仕込み、該フラスコ内を窒素置換した後、脱水テトラヒドロフラン480mlを室温(約25℃)にて加えた。前記の脱水テトラヒドロフラン溶液を−78℃まで冷却し、該フラスコにイソプロピルマグネシウムブロミド(東京化成製、1.00M)のテトラヒドロフラン溶液(163.7ml、163.7mmol)を同温にて滴下ロートより1時間かけて加え、さらに同温で30分間攪拌した。得られた反応溶液に塩化亜鉛(アルドリッチ製、1.00M)のジエチルエーテル溶液(163.7ml、163.7mmol)を−78℃にて滴下ロートより1時間かけて加え、さらに同温で10分間攪拌後、室温まで徐々に昇温した。この溶液に3,6−ジブロモ−2、5−ジヨードチエノ[3、2−b]チオフェン(30.0g、54.6mmol)、テトラキストリフェニルホスフィン(東京化成製、6.3g、5.5mmol)を仕込み、還流下、5時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下で濃縮した。濃縮残渣に10%塩化アンモニウム水溶液(重量比)とクロロホルムとを加え、得られた固形分を含む混合物を濾過し、固形分を得た。該固形分を水、クロロホルム、メタノールの順で洗浄し、乾燥することで、前記式(2−1)で表される3,6−ジブロモ−2,5−ビス(2−ブロモフェニル)−チエノ[3、2−b]チオフェン(化合物(2−1)、14.7g、24.2mmol)の黄色結晶を3,6−ジブロモ−2、5−ジヨードチエノ[3、2−b]チオフェンに対する収率44%で得た。化合物(2−1)の物性は以下の通りであった。
H−NMR(δ、CDCl):7.31〜7.49(m、6H)、7.75(d×d、2H)
【0108】
[実施例2:前記式(1−1−32)で表される化合物(化合物(1−1−32))の製造例]
攪拌子、温度計、コンデンサーを取り付けたフラスコに化合物(2−1) 2.00g(3.29mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.60g、0.66mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.27g、1.32mmol)、パラ−ドデシルアニリン(3.44g、13.16mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(1.90g、19.74mmol)及び脱水トルエン60mlを窒素雰囲気下で仕込み、窒素雰囲気下で還流するまで昇温して同温で24時間攪拌した。得られた反応マスを室温まで冷却した後、水及びトルエンを加え分液した。得られたトルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で濃縮した。得られた濃縮残渣をヘキサン及びトルエンの混合溶媒に溶解した後、冷却し、濾過によって結晶を取り出した(前記溶解、冷却、濾過及び結晶の取り出しを再結晶と記すことがある)。該結晶を濾過によって取り出した後、該結晶をテトラヒドロフランに溶解した。得られた溶解液に活性炭を加え、還流下で30分間攪拌した後、ラジオライトでコートした濾過器で熱時濾過した。得られた濾液から溶媒を減圧下で留去し、前記再結晶を2回繰り返すことで、下記の式(1−1−32)

で表される化合物 0.90g(化合物(1−1−32)、1.11mmol)の黄色結晶を収率34%で得た。
化合物(1−1−32)の物性は以下の通りであった。
H−NMR(δ、テトラヒドロフラン−d):0.89(t、6H)、1.25〜1.55(m、36H)、1.70〜1.85(m、4H)、2.82(t、4H)、7.17(t×d、2H)、7.22(t×d、2H)、7.49(d×d、2H)、7.54(d、4H)、7.64(d、4H)、7.70(d×d、2H)
LC−HRMS(APPI+):calcd for C5467、807.4740;found 807.4746
【0109】
[実施例3:前記式(1−3−14)で表される化合物(化合物(1−3−14))の製造例]
攪拌子、温度計、コンデンサーを取り付けたフラスコに、化合物(2−1)(0.100g、0.164mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.030g、0.033mmol)、ラセミ−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(0.041g、0.066mmol)、ドデシルアミン(0.122g、0.658mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(0.095g、0.989mmol)及び脱水トルエン3mlを窒素雰囲気下で仕込み、窒素雰囲気下で還流するまで昇温して同温で24時間攪拌した。得られた反応マスを室温まで冷却し、さらに、水及びトルエンを追加えて分液した。得られたトルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた混合物を、容積比0.2%のトリエチルアミンを添加したヘキサンとトルエンとの混合溶媒を用いてシリカゲルクロマトグラフィーにて分離精製することで、下記の式(1−3−14)

で表される化合物(化合物(1−3−14)、0.026g、0.040mmol)の黄色結晶を収率24%で得た。
化合物(1−3−14)の物性は以下の通りであった。
H−NMR(δ、テトラヒドロフラン−d):0.87(t、6H)、1.20〜1.60(m、36H)、1.95〜2.10(m、4H)、4.49(t、4H)、7.14(t、2H)、7.26(t、2H)、7.54(d、2H)、7.70(d、2H)
LC−HRMS(APPI+):calcd for C4259、655.4114;found 655.4103
【0110】
<薄膜及び該薄膜を有機半導体活性層とする有機トランジスタの製造例1>
ガラス基板上に、リフトオフプロセスまたはフォトリソグラフィを用いて、クロム、金の順に蒸着して、ソース及びドレイン電極を設置した。この時のクロム層の厚さは5nm、金層の厚さは40nmであった。電極設置後、基板をアセトン、イソプロピルアルコールの順で超音波洗浄を行い、乾燥後、酸素プラズマにてクリーニングを行った後、脱水操作のために80℃で5分間加熱した。この時のチャネル幅は2mm、チャネル長は20μmであった。チャネル部分にフェネチルトリクロロシラン処理を、電極部分にペンタフルオロベンゼンチオール処理を行った後、窒素雰囲気下にて、実施例3で製造した化合物(1−1−32)を0.5g/Lの濃度で含有するテトラリン溶液を滴下し、スピンコート法により薄膜(有機半導体活性層)を、次に有機半導体活性層の上に、フッ素系ポリマーを含有する溶液を滴下し、スピンコート法により絶縁層を形成した。この時の化合物(1−1−32)の有機半導体活性層の膜厚は25nm、絶縁層の膜厚は300nmであった。絶縁層の上にシャドーマスクを用いて、クロム、アルミニウムの順に蒸着してゲート電極を設置し、図2に示すような有機トランジスタを製造した。この時のクロム層の厚さは5nm、アルミニウム層の厚さは200nmであった。
【0111】
次に、得られた有機トランジスタデバイスの電気特性を測定した。その結果、あるゲート電圧(Vg)において、ドレイン電圧(Vd)に対するドレイン電流(Id)の変化曲線は、良好であり、高いドレイン電圧において飽和領域を有していた。また、ゲート電極に印加する負のゲート電圧を増加させると、負のドレイン電流も増加することから、化合物(1−1−32)の薄膜を有機半導体活性層にもつ有機トランジスタは、p型の有機トランジスタであることを確認することができた。さらに、有機トランジスタのキャリア移動度μは、有機トランジスタの電気的特性の飽和領域におけるドレイン電流Idを表す式
Id=(W/2L)μCi(Vg−Vt) ・・・( a )
を用いて算出した。ここで、L及びWは、それぞれ、有機トランジスタのゲート長及びゲート幅であり、Ciは、ゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量であり、Vgは、ゲート電圧であり、Vtは、ゲート電圧のしきい値電圧である。式(a)を用いて、製造した薄膜を有機半導体活性層にもつ有機トランジスタのキャリア移動度μを計算した結果、キャリア移動度は、0.014cm/Vsであった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、有機半導体活性層を与え得る新規な化合物が提供可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。環構造A及び環構造Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。該芳香族複素環は単一の環構造である。
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基を表す。該アリール基及び該ヘテロアリール基には、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、フッ素原子、アリール基、ヘテロアリール基を有していてもよい。)
で表される含ピロールヘテロアセン化合物。
【請求項2】
前記式(1)において、環構造A及び環構造Bが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、又は置換基を有していてもよいチオフェン環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環構造であることを特徴とする請求項1記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【請求項3】
前記式(1)において、X及びYが硫黄原子であることを特徴とする請求項1又は2記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【請求項4】
前記式(1)において、環構造A及び環構造Bが、同一で、置換基を有していてもよいベンゼン環であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【請求項5】
前記式(1)において、環構造A及び環構造Bが、同一で、置換基を有していてもよいチオフェン環であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【請求項6】
前記式(1)において、R及びRは、同一で、フッ素原子を有していてもよいアルキル基又はフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基を有する炭素数7〜26のアリール基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【請求項7】
前記式(1)において、R及びRは、同一で、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物を含む薄膜。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか記載の含ピロールヘテロアセン化合物からなる薄膜。
【請求項10】
請求項8または9記載の薄膜を含む有機トランジスタ。
【請求項11】
請求項8または9記載の薄膜を含む有機半導体デバイス。
【請求項12】
式(2)

(式中、X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。
環構造A及び環構造Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。R〜R6は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
と、式(3)
7−NH (3)
(式中、R7は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基を表す。該アリール基及び該ヘテロアリール基には、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基又はアルキルチオ基を有していてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基、該アルキニル基又は該アルキルチオ基には、フッ素原子を有していてもよい。)
で示されるアミン化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする式(1’)

(式中、環構造A、環構造B、X、Y及びR7は、前記と同じ定義である。)
で表される含ピロールヘテロアセン化合物の製造方法。
【請求項13】
式(2)

(式中、X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子又はSOを表す。
環構造A及び環構造Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。R〜R6は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
で表される化合物。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか記載の式(1)で表される含ピロールヘテロアセン化合物及び有機溶媒を含むことを特徴とする組成物。
【請求項15】
請求項14記載の組成物を基板又は絶縁層上に塗布する工程と、基板又は絶縁層上に塗布された塗布膜を乾燥する工程とを含むことを特徴とする薄膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−184196(P2012−184196A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48586(P2011−48586)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】