説明

含フッ素多環芳香族化合物、含フッ素重合体、有機薄膜及び有機薄膜素子

【課題】 電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規化合物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(I)で表される含フッ素多環芳香族化合物。


[式(I)中、Ar及びArは、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、R、R、R及びRは、水素原子、ハロゲン原子等を示し、R及びRは、水素原子又は置換基で置換されていてもよい1価の有機基を示し、s及びtは、2以上の整数を示す。但し、R及びRの少なくとも1つは、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された1価の有機基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素多環芳香族化合物、含フッ素重合体、有機薄膜及び有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子輸送性又はホール輸送性を有する有機材料を含む薄膜は、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の有機薄膜素子への応用が期待されているが、有機p型半導体(ホール輸送性を示す)に比べ、有機n型半導体(電子輸送性を示す)が得難いことから、有機n型半導体の開発が種々検討されている。
【0003】
フルオロアルキル基を導入したπ共役化合物は電子受容性が増加するため、有機n型半導体等の電子輸送性材料への展開が見込まれる化合物である。この観点から、近年、チオフェン環にフルオロアルキル基を導入した化合物の研究が盛んに行われている(特許文献1〜4)。
【0004】
一方、分子構造の平面性を向上させるため、架橋した構造を有するポリチオフェンやラダー型のフルオレンが種々検討されている(非特許文献1、2及び特許文献5)。
【0005】
また、平面性の高いペンタセンをフッ素化したテトラフルオロペンタセン等が、有機n型半導体として検討されている(特許文献6)。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/186266号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/183068号明細書
【特許文献3】国際公開第2003/010778号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第1279689号明細書
【特許文献5】特開2004−339516号公報
【特許文献6】特開2005−235923号公報
【非特許文献1】Paolo Coppo et al., J. Mat. Commun. 2002, 12(9), 2597.
【非特許文献2】Jacob, Josemon et al., J. American Chem. Soc. 2004, 126(22), 6987.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような公知の材料では、有機n型半導体としての性能が十分であるとは言い難く、さらに電子輸送性が向上した有機n型半導体が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規化合物及び新規重合体を提供することにある。本発明の目的はまた、この新規化合物及び/又は新規重合体を含有する有機薄膜、並びにこの有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(I)で表される含フッ素多環芳香族化合物を提供する。
【化1】


式(I)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R及びRは各々独立に、水素原子又は置換基で置換されていてもよい1価の有機基(当該1価の有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及び複素環基から選ばれ、当該1価の有機基において、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていてもよい。)を示し、s及びtは各々独立に、2以上の整数を示す。但し、R及びRの少なくとも1つは、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された上記1価の有機基である。また、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
なお、Arが、炭素数6以上の芳香族炭化水素基であるとは、式(I)中における「Ar」の記号を取り囲む環が全体として炭素数6以上の芳香族炭化水素基を形成していることをいい(Arについても同様である)、Arが、炭素数4以上の複素環基であるとは、式(I)中における「Ar」の記号を取り囲む環が全体として炭素数4以上の複素環基を形成していることをいう(Arについても同様である)。
また、s及びtの値については以下のように考えることができる。Arが、炭素数6以上の芳香族炭化水素基である場合、sが0と仮定したときの当該基における炭素に結合した水素の総数を計算する。その値がN1allであるならば、s=N1allとなる(Arが、炭素数4以上の複素環基である場合も同様である)。また、Arが、炭素数6以上の芳香族炭化水素基である場合、tが0と仮定したときの当該基における炭素に結合した水素の総数を計算する。その値がM1allであるならば、t=M1allとなる(Arが、炭素数4以上の複素環基である場合も同様である)。したがって、s及びtの値は、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の炭素に結合した水素数にしたがって一義的に決定できる。
【0009】
本発明はまた、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する含フッ素重合体を提供する。
【化2】


式(III)中、Ar及びArは各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R及びRは各々独立に、水素原子又は置換基で置換されていてもよい1価の有機基(当該1価の有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及び複素環基から選ばれ、当該1価の有機基において、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていてもよい。)を示し、s及びtは各々独立に、1以上の整数を示す。また、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
なお、Arが、炭素数6以上の芳香族炭化水素基であるとは、式(III)中における「Ar」の記号を取り囲む環が全体として炭素数6以上の芳香族炭化水素基を形成していることをいい(Arについても同様である)、Arが、炭素数4以上の複素環基であるとは、式(III)中における「Ar」の記号を取り囲む環が全体として炭素数4以上の複素環基を形成していることをいう(Arについても同様である)。
また、s及びtの値については以下のように考えることができる。Arが、炭素数6以上の芳香族炭化水素基である場合、sが0と仮定したときの当該基における炭素に結合した水素の総数を計算する。その値がN2allであるならば、s=N2allとなる(Arが、炭素数4以上の複素環基である場合も同様である)。また、Arが、炭素数6以上の芳香族炭化水素基である場合、tが0と仮定したときの当該基における炭素に結合した水素の総数を計算する。その値がM2allであるならば、t=M2allとなる(Arが、炭素数4以上の複素環基である場合も同様である)。したがって、s及びtの値は、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の炭素に結合した水素数にしたがって一義的に決定できる。
【0010】
このような骨格を備えた含フッ素多環芳香族化合物及び含フッ素重合体は、環同士のπ共役平面性が良好であるとともに、フッ素原子の導入により十分に低いLUMOを示すことができ、電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能である。また、これらの含フッ素多環芳香族化合物及び含フッ素重合体は、化学的に安定で、有機溶剤への溶解性が優れているため、これらを用いて薄膜を形成することで、性能の優れた有機薄膜素子が製造可能となる。
【0011】
本発明は更に、上記含フッ素多環芳香族化合物及び/又は含フッ素重合体を含む有機薄膜、並びに、当該有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供する。
【0012】
かかる有機薄膜及び有機薄膜素子は、本発明の含フッ素多環芳香族化合物や含フッ素重合体を含有するため、十分に低いLUMOを有し、優れた電子輸送性を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子輸送性の優れた有機n型半導体として利用可能な新規の含フッ素多環芳香族化合物及び新規の含フッ素重合体を提供することができる。また、この含フッ素多環芳香族化合物や含フッ素重合体を含む有機薄膜、並びに、この有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供することができる。また、前記含フッ素多環芳香族化合物及び含フッ素重合体は電子輸送性に優れることから、前記有機薄膜を備える有機薄膜トランジスタは、通常、良好なId−Vg特性を示し、有機薄膜太陽電池は、通常、優れた電圧−電流特性を示し、光センサは、通常、良好な光電流と暗電流との比を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
本発明の含フッ素多環芳香族化合物は、上記一般式(I)で表される構造を有している。
【0016】
上記一般式(I)において、Ar及びArは各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を表し、1又は複数の任意の置換基で置換されていてもよく、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を表す。R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、この有機基は1又は複数の任意の置換基で置換されていてもよく、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていてもよい。但し、R及びRの少なくとも1つは、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された上記1価の有機基である。また、この有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及び1価の複素環基であることが好ましい。s及びtは各々独立に、2以上の整数を示す。また、Ar及びArは同一でも異なっていてもよいが、製造上の容易さからは、Ar及びArは同一であることが好ましい。また、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0017】
また、上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】

【0018】
上記一般式(II)において、R、R、R、R、R及びRは、前記と同義であり、Z及びZは各々独立に、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかである。但し、R及びRの少なくとも1つは、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された前記1価の有機基である。また、R、R、R及びR10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。更に、下記式(ii)で表される基は左右反転していてもよい。
【化4】

【0019】
また、本発明の含フッ素重合体は、上記一般式(III)で表される繰り返し単位を有している。すなわち、本発明の含フッ素重合体は、上記一般式(III)で表される繰り返し単位を(例えば後述の一般式(IV)で表される繰り返し単位として)1以上、好ましくは2以上有しており、他の繰り返し単位を有するものであってもよい。含フッ素重合体中には、R、R、R及びRが複数個存在するが、これらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、製造上の容易さからは、複数存在するR、R、R及びRのそれぞれは同一であることが好ましい。
【0020】
上記一般式(III)において、Ar及びArは各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を表し、1又は複数の任意の置換基で置換されていてもよく、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を表す。R及びRは各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、この有機基は1又は複数の任意の置換基で置換されていてもよく、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていてもよい。この有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及び1価の複素環基であることが好ましい。s及びtは各々独立に、1以上の整数を示す。また、Ar及びArは同一でも異なっていてもよいが、製造上の容易さからは、Ar及びArは同一であることが好ましい。また、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0021】
上記一般式(III)で表される繰り返し単位は、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位であることが好ましい。このような繰り返し単位を有することで、電子輸送性に特に優れた有機n型半導体として利用可能となる。
【化5】

【0022】
上記一般式(IV)において、R、R、R、R、R及びRは、前記と同義であり、Z及びZは各々独立に、上記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示す。R、R、R及びR10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。更に、上記式(ii)で表される基は左右反転していてもよい。
【0023】
本発明の含フッ素重合体は、一分子中に、上記一般式(III)で表される繰り返し単位として、異なる複数種の繰り返し単位を有していても、一種の繰り返し単位を有していてもよいが、製造上の容易さを考慮すると、一種の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0024】
本発明の含フッ素重合体は、上記一般式(III)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、上記一般式(III)で表される繰り返し単位とは異なる下記一般式(V)で表される繰り返し単位の少なくとも1つとを有することが好ましく、上記一般式(III)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位の少なくとも一つとを有することが更に好ましい。このような構成にすることにより、溶解性、機械的、熱的又は電子的特性を変化させ得る範囲が広くなる。なお、下記一般式(V)中、Arは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基(これらの基は置換基で置換されていてもよい)を示す。一般式(III)で表される繰り返し単位(好ましくは上記一般式(IV)で表される繰り返し単位)と、一般式(V)で表される繰り返し単位(好ましくは下記一般式(VI)で表される繰り返し単位)との比率は、好ましくは、前者100モルに対して後者10〜1000モルであり、より好ましくは、前者100モルに対して後者25〜400モルであり、さらに好ましくは、前者100モルに対して後者50〜200モルである。
【化6】

【0025】
この場合において、Arは、下記一般式(VI)で表される基であると好適である。このような繰り返し単位を有することで、溶解性又は電子的特性を制御しやすくなる。式中、Zは、Z又はZと同一又は異なり、上記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかである。また、R11及びR12は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R11とR12とは互いに結合して環を形成していてもよい。但し、R、R、R及びR10は、上記と同義である。
【化7】

【0026】
一般式(I)において、Arで表される炭素数6以上の芳香族炭化水素基とは、炭素数6以上のベンゼン環又は縮合環から(2+s)個の水素原子を除いた残りの原子団をいい、Arで表される炭素数6以上の芳香族炭化水素基とは、炭素数6以上のベンゼン環又は縮合環から(2+t)個の水素原子を除いた残りの原子団をいう。また、一般式(III)において、Arで表される炭素数6以上の芳香族炭化水素基とは、炭素数6以上のベンゼン環又は縮合環から(3+s)個の水素原子を除いた残りの原子団をいい、Arで表される炭素数6以上の芳香族炭化水素基とは、炭素数6以上のベンゼン環又は縮合環から(3+t)個の水素原子を除いた残りの原子団をいう。以上述べた基の炭素数は通常6〜60、好ましくは6〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、ペリレン環、フルオレン環が挙げられる。なお、芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0027】
一般式(I)において、Arで表される炭素数4以上の複素環基とは、複素環式化合物から(2+s)個の水素原子を除いた残りの原子団をいい、Arで表される炭素数4以上の複素環基とは、複素環式化合物から(2+t)個の水素原子を除いた残りの原子団をいう。また、一般式(III)において、Arで表される炭素数4以上の複素環基とは、複素環式化合物から(3+s)個の水素原子を除いた残りの原子団をいい、Arで表される炭素数4以上の複素環基とは、複素環式化合物から(3+t)個の水素原子を除いた残りの原子団をいう。以上述べた基の炭素数は、通常4〜60、好ましくは4〜20である。なお、複素環基上に置換基を有していてもよく、複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0028】
Arで表される2価の芳香族炭化水素基とは、ベンゼン環又は縮合環から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、通常、炭素数6〜60、好ましくは6〜20である。縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、フルオレン環が挙げられる。これらの中でもベンゼン環又はフルオレン環から水素原子2個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、芳香族炭化水素基上に置換基を有していてもよい。ここで、2価の芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0029】
また、Arで表される2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は、通常4〜60、好ましくは4〜20である。前記複素環式化合物としては、チオフェン環、チエノチオフェン環、ジチエノチオフェン環等のチオフェン環が2〜6個縮環した化合物、チアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環が挙げられ、チオフェン環、チエノチオフェン環、ジチエノチオフェン環等のチオフェン環が2〜6個縮環した化合物が好ましい。なお、2価の複素環基上に置換基を有していてもよく、2価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、飽和若しくは不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、1価の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0030】
ここで、複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ケイ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0031】
一般式(II)及び(IV)中のZ及びZは、例えば、上記式(i)〜(v)で表される基のいずれかで表されることが好ましく、式(i)、(iii)、(v)のいずれかで表されることがより好ましく、式(i)で表されることが特に好ましい。一般式(VI)中のZは、例えば、上記式(i)〜(v)で表される基のいずれかで表されることが好ましく、式(i)、(iii)、(v)のいずれかで表されることがより好ましく、式(v)で表されることが特に好ましい。チオフェン環、フラン環及びピロール環、特にチオフェン環は、特徴的な電気的性質を示し、種々の電気的特性が発揮される。
【0032】
式(i)、(ii)及び(iii)、並びに、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(VI)中、R〜R及びR〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を表し、RとRとの間、及び、R11とR12との間に環を形成していてもよい。
【0033】
〜R及びR〜R12である1価の基としては、直鎖状若しくは分岐状の低分子鎖、1価の環状基(この環状基は、単環でも縮合環でも、炭素環でも複素環でも、飽和でも不飽和でもよく、置換基を有していてもいなくてもよい)が好ましい。1価の基は電子供与基であっても電子吸引基であってもよい。
【0034】
また、R〜R及びR〜R12である1価の基としては、直鎖状若しくは分岐状の低分子鎖(炭素数が1〜20のものをいう)、環構成原子数が3〜60である1価の環状基(この環状基は、単環でも縮合環でも、炭素環でも複素環でも、飽和でも不飽和でもよく、置換基を有していてもいなくてもよい)、飽和若しくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されてもよい。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲン原子で置換されてもよい。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましい。
【0035】
なお、本明細書においてハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0036】
また、アルキル基には制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基等が挙げられ、アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基等)についても同様である。アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
【0037】
不飽和炭化水素基には制限がなく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基及び2−ブテニル基等が挙げられる。好ましい不飽和炭化水素基としては、ビニル基が挙げられる。
【0038】
アルカノイル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びイソバレリル基等が挙げられ、アルカノイル基をその構造中に含む基(アルカノイルオキシ基、アルカノイルアミノ基等)についても同様である。また、炭素数1のアルカノイル基とはホルミル基を指すものとし、アルカノイル基をその構造中に含む基についても同様とする。好ましいアルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基が挙げられる。
【0039】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)中、R及びRはハロゲン原子であることが特に好ましく、フッ素原子であることが特に好ましく、これにより、有機n型半導体として有機薄膜素子の薄膜材料に好適なものとなる。特に、本発明の含フッ素多環芳香族化合物及び含フッ素重合体は、フッ素原子導入によるLUMOレベルの低下だけでなく、有機溶剤に対する溶解度の向上、π共役平面性の保持等の観点から、有機半導体としての性能向上及び製造コスト低下への寄与が期待できる。本発明の有機薄膜素子は、前記含フッ素多環芳香族化合物又は含フッ素重合体を含有することにより、高い性能を得ることができる。
【0040】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)中の、R及びRはとしては、水素原子、フッ素原子、アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、各々独立に水素原子またはフッ素原子がより好ましい。
【0041】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)中のR及びRとしては、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のアリールアルキル基、置換又は無置換のアリールアルコキシ基、置換又は無置換の1価の複素環基であることが好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルコキシ基、アセチル基、フルオロアセチル基、電子供与基又は電子吸引基が例示され、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアセチル基、電子吸引基が好ましい。
【0042】
上記一般式(I)又は(II)中のR及びRとしては、少なくとも一つは置換基を含めた基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されている必要がある。このような基を有することで、LUMOレベルの低下及び有機溶剤に対する溶解度が向上する。電子輸送性を高めるという観点からは、R及びRのうち少なくとも一つは、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、フルオロアルキル基で置換されたアリール基、フルオロアルコキシ基で置換されたアリール基、フルオロアルキル基で置換された複素環基またフルオロアルコキシ基で置換された1価の複素環基が特に好ましく、R及びRの両方がフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、フルオロアルキル基で置換されたアリール基、フルオロアルコキシ基で置換されたアリール基、フルオロアルキル基で置換された1価の複素環基またフルオロアルコキシ基で置換された1価の複素環基であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の含フッ素重合体は、一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位を含んでいればよく、一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいてもよい。また、一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位に加えて、一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位を含んでいてもよく、一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいてもよい。
【0044】
本発明の含フッ素重合体は、上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位と、上記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位とが隣り合う構造を有することが好ましい。一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位と、一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位とが隣り合う場合、隣接する芳香環又は複素環同士の二面角を小さくすることができ、分子内の平面性が向上しやすく、分子内でのπ共役が広くなり、また、LUMOレベルも低くなることから、電子輸送性が向上する。ここで、二面角とは、一般式(III)又は(IV)で表される芳香環又は複素環を含む平面と、その隣に結合した芳香環又は複素環を含む平面とのなす角度のうち、0度以上90度以下の角度で定義される。上記一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位と、上記一般式(V)又は(VI)で表される繰り返し単位とが隣り合う場合、二面角は通常0〜45度、典型的には0〜40度、より典型的には0〜30度である。
【0045】
図12は、一般式(IV)で表される繰り返し単位の環と一般式(VI)で表される繰り返し単位の環とがなす二面角を表す図である。二面角は図12において、C−C−Cで形成される面と、C−C−Cで形成される面とがなす角を意味する。
【0046】
また、本発明の含フッ素重合体は、電子輸送性を高めるという観点から、下記一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表されるものが好ましい。
【化8】


【化9】


【化10】

【0047】
ここで、Z、Z、Z、R、R、R、R、R、R、R11及びR12は、上記と同義である。なお、複数存在する場合には、Z、Z、Z、R、R、R、R、R、R、R11及びR12は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは2〜500の整数を表し、2〜100の整数が好ましく、3〜20の整数がより好ましい。nは1〜500の整数を表し、1〜100の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましい。pは1〜500の整数を表し、1〜100の整数が好ましく、1〜10の整数がより好ましい。これらの中で、Z、Z及びZがすべて式(i)であり、かつR及びRがフッ素原子であるものが特に好ましい。
【0048】
また、含フッ素重合体の末端基として重合活性基を有している場合、それらは含フッ素重合体の前駆体として用いることもできる。その場合、含フッ素重合体は分子内に2つの重合活性基を有していることが好ましい。重合活性基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基、ホルミル基、又はビニル基が例示され、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基が好ましい。ここで、ホウ酸残基とはホウ素に水酸基が置換した基を表し、ホウ酸エステル残基とはホウ素にアルキルオキシ基が置換した基を表す。ホウ酸エステル残基としては、下記式(α)〜(δ)が例示される。
【化11】


【化12】


【化13】


【化14】

【0049】
また、本発明の含フッ素重合体を有機薄膜として用いる場合、末端基に重合活性基がそのまま残っていると、素子にしたときの特性や耐久性が低下する可能性があるため、安定な基で保護するようにしてもよい。
【0050】
末端基としては、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アミノケト基、アリール基、1価の複素環基(これらの基に結合している水素原子の一部又は全部はフッ素原子と置換されていてもよい)、及び電子供与基又は電子吸引基が挙げられ、電子輸送性を高めるという観点からフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基又は電子吸引基が好ましく、水素原子がすべてフッ素原子で置換された基、例えばパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、パーフルオロフェニル基がより好ましい。また、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものも好ましく、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は1価の複素環基と結合している構造が挙げられる。
【0051】
本発明の含フッ素重合体の中で、特に好ましいのは、例えば、下記一般式(1)〜(5)で表されるものである。
【化15】


【化16】


【化17】


【化18】


【化19】

【0052】
ここで、R13及びR14は末端基を表し、同一でも異なっていてもよく、上述した末端基が例示され、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましい。R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を示し、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基が好ましく、アルキル基がさらに好ましい。含フッ素重合体中にR15、R16、R17及びR18が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。なお、製造上の容易さからは、複数存在するR15、R16、R17及びR18はそれぞれ同一であることが好ましい。また、R、R、R、R、R及びRは、上記と同義である。qは、含フッ素重合体を用いた有機薄膜の形成方法に応じて適宜選ぶことができる。含フッ素重合体が昇華性を有していれば真空蒸着法等の気相成長法を用いて有機薄膜にすることができ、この場合、qは1〜10が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。一方、含フッ素重合体を有機溶剤に溶解した溶液を塗布する方法を用いて有機薄膜にする場合、qは3〜500が好ましく、6〜300がより好ましく、20〜200がさらに好ましい。塗布で成膜したときの膜の均一性の観点から含フッ素重合体のポリスチレン換算の数平均分子量は、1×10〜1×10が好ましく、1×10〜1×10がより好ましい。
【0053】
本発明の含フッ素多環芳香族化合物及び含フッ素重合体の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化20】


【化21】


【化22】


【化23】


【化24】


【化25】


【化26】


【化27】


【化28】


【化29】


【化30】


【化31】


【化32】


【化33】

【0054】
本発明の含フッ素多環芳香族化合物又は含フッ素重合体の製造方法は特に限定されず、どのような方法により製造してもよいが、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。
【0055】
まず、本発明の含フッ素多環芳香族化合物の製造方法について説明する。上記一般式(I)で表される含フッ素多環芳香族化合物は、前駆体として下記一般式(VII)で表される化合物を用い、この前駆体をフッ素化剤と反応させるフッ素化工程を含む製造方法により製造することが可能である。すなわち、上記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(VII)で表される化合物を前駆体として用い、例えば、アルコールをフッ素化させるOrganic Reactions vol.35, p.315 (1988) Chap.3 "Fluorination with DAST"に記載された方法と同様にして、上記前駆体をフッ素化剤と反応させる工程を含む製造方法により製造することが可能である。この反応工程の一例として、下記反応式(a)に示した化合物(6)から化合物(7)への変換工程が挙げられる。
【化34】

【0056】
なお上記一般式(VII)において、Ar、Ar、R、R、R、R、s、tは上記と同義であり、Vは水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を表す。
【化35】

【0057】
また、上記一般式(I)で表される本発明の含フッ素多環芳香族化合物のうち、R及びRがフッ素原子である化合物は、下記一般式(b)で表される化合物を前駆体として用い、この前駆体を、ハロニウムイオン発生剤の存在下、フッ化物イオン源と反応させる工程を含む製造方法、ArおよびArに結合した水素原子をハロゲン化する工程を含む製造方法、ハロゲン原子と下記一般式(c)とを反応させる工程を含む方法により製造することが好ましい。この反応工程の一例として、下記反応式(d)に示した化合物(8)から化合物(9)、化合物(11)、化合物(12)への変換工程、又は化合物(8)から化合物(10)、化合物(12)への変換工程が挙げられる。
【化36】

【0058】
なお一般式(b)において、Ar及びArは各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を表し、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を表す。X及びYは各々独立に、アルキルチオ基(ここで、X及びYはアルキル部分が連結してアルキレンジチオ基を形成していてもよく、X及びYが一体となって、結合する炭素原子とともにチオカルボニル基を形成していてもよい)を表す。
【化37】

【0059】
なお上記式(c)において、Rは、一般式(1)で表されるRまたはRを表し、Wは重合活性基を表す。
【化38】

【0060】
上記一般式(b)で表される化合物を前駆体として用いた上記反応工程における反応条件は特に限定されず、例えば、アルキルスルファニル基(アルキルチオ基)等からフルオロ基への公知の変換反応における条件(例えば、特開平6−135869号公報等参照)を参考にして適宜選択してもよい。以下、具体的に説明する。
【0061】
上記反応工程における上記ハロニウムイオン発生剤としては、公知のものを適宜用いることができ、例えば、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBH)、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−ブロモアセトアミド(NBA)、2,4,4,6−テトラブロモ−2,5−シクロヘキサジエノン、N−ヨードコハク酸イミド(NIS)等が挙げられる。上記ハロニウムイオン発生剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、ハロニウムイオン換算で3当量〜大過剰量の範囲であり、反応効率及びコストの観点から、例えば3〜5当量が好ましい。
【0062】
上記フッ化物イオン源としては、例えば、フッ化水素、フッ化水素とアミンとの錯体、フッ化水素とピリジンとの錯体、二水素三フッ化四級アンモニウム、又は二水素三フッ化四級ホスホニウムが好ましく、これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。好適なフッ化物イオン源としては、例えば、(フッ化水素)/ピリジン錯体が挙げられる。また、上記フッ化物イオン源の使用量は、特に限定されないが、例えば、フッ化物イオン換算で3当量〜大過剰量の範囲が好ましく、反応効率及びコストの観点から、3〜5当量がさらに好ましい。
【0063】
なお、上記アミンとしては、例えば、ピリジン等の含窒素環式化合物、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアルキルアミン等が挙げられる。また、二水素三フッ化四級アンモニウム及び二水素三フッ化四級ホスホニウムは特に限定されず、公知の化合物を適宜用いることができる。二水素三フッ化四級アンモニウムとしては、例えば下記一般式(XI)で表される化合物が挙げられ、二水素三フッ化四級ホスホニウムとしては、例えば下記一般式(XII)で表される化合物が挙げられる。
19202122+ ・・・(XI)
23242526+ ・・・(XII)
【0064】
上記一般式(XI)及び(XII)において、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25及びR26はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ベンジル基等の炭化水素基を表す。一般式(XI)で表される二水素三フッ化四級アンモニウムとしては、例えば、二水素三フッ化テトラメチルアンモニウム、二水素三フッ化テトラエチルアンモニウム、二水素三フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAH2F3)、二水素三フッ化ベンジルトリメチルアンモニウム、二水素三フッ化ベンジルトリエチルアンモニウム、二水素三フッ化セチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。これらは、例えば、50%フッ酸、フッ化カリウム及びフッ化四級アンモニウムから容易に合成できる(例えば、Bull. Soc. Chim. Fr., 910 (1986)等参照)。また、上記一般式(XII)で表される二水素三フッ化四級ホスホニウムとしては、例えば、二水素三フッ化テトラメチルホスホニウム、二水素三フッ化テトラエチルホスホニウム、二水素三フッ化テトラブチルホスホニウム、二水素三フッ化ベンジルトリメチルホスホニウム、二水素三フッ化ベンジルトリエチルホスホニウム、二水素三フッ化セチルトリメチルホスホニウム等が挙げられる。
【0065】
また、上記反応工程において、必要に応じて溶媒を適宜用いてもよい。上記溶媒は特に限定されないが、なるべく目的の反応を阻害しないものであることが好ましく、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトニトリル等のニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし2種類以上併用してもよい。好適な溶媒としては、例えばジクロロメタンが挙げられる。
【0066】
反応温度及び反応時間は特に限定されず、前駆体の種類を考慮して適宜選択することができる。なお、上記反応温度は、例えば、−100℃〜100℃の範囲が好ましい。
【0067】
上記本発明の製造方法により、従来は困難であった、フルオロアルキルで架橋した環状化合物、特にジフルオロアルキルで架橋したターフェニル構造を含む化合物を、簡便に且つ高収率で製造できるようになる。また、本発明の製造工程におけるフッ素化反応では、安価で取り扱いが容易なフッ素化試薬を用いてフッ素化を行うこともできる。
【0068】
本発明の含フッ素多環芳香族化合物を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、製造した化合物を蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理することが好ましい。
【0069】
上記製造方法における反応条件、反応試薬等は、上記の例示以外にも適宜選択可能である。また、上記一般式(I)で表される本発明の含フッ素多環芳香族化合物は、上述の通り、上記製造方法により製造することが好ましいが、これに限定されず、どのような方法により製造してもよい。
【0070】
次に、本発明の含フッ素重合体の製造方法について説明する。本発明の含フッ素重合体は、例えば、下記一般式(XIII)〜(XVI)で表される化合物を原料として、これらを反応させることにより製造することができる。
【化39】


【化40】


【化41】


【化42】

【0071】
上記一般式(XIII)〜(XVI)中、Ar、Ar、Ar、Z、Z、Z、R、R、R、R、R、R、R11、R12、s及びtは、上記と同義である。W及びWはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基、ホルミル基、又はビニル基を示す。
【0072】
一般式(XIII)〜(XVI)で表される化合物の合成上の反応のしやすさの観点から、W及びWはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基又はホウ酸残基であることが好ましい。
【0073】
また、本発明の含フッ素重合体の製造に用いる反応方法としては、例えば、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法、FeCl等の酸化剤を用いる方法、電気化学的な酸化反応を用いる方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による方法等が例示される。
【0074】
これらのうち、Wittig反応を用いる方法、Heck反応を用いる方法、Horner−Wadsworth−Emmons反応を用いる方法、Knoevenagel反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、及びNi(0)触媒を用いる方法が、構造制御のしやすさから好ましい。さらに、Suzukiカップリング反応を用いる方法、Grignard反応を用いる方法、Stille反応を用いる方法、Ni(0)触媒を用いる方法が、原料の入手しやすさと反応操作の簡便さから好ましい。
【0075】
モノマー(上記一般式(XIII)〜(XVI)で表される化合物)は、必要に応じ、有機溶媒に溶解し、例えばアルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。
【0076】
有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために、用いる溶媒は十分に脱酸素処理を施し、不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、同様に、脱水処理を行うことが好ましい(但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない)。
【0077】
反応させるために、適宜アルカリや適当な触媒を添加する。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。このアルカリ又は触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。
【0078】
本発明の含フッ素重合体を有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるため、反応前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに重合することが好ましい。また含フッ素重合体を合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0079】
反応に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が挙げられる。上記溶媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0080】
反応後は、例えば水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する等の通常の後処理で得ることができる。生成物の単離後及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶等の方法により行うことができる。
【0081】
次に本発明の有機薄膜について説明する。本発明の有機薄膜は、本発明の含フッ素多環芳香族化合物及び/又は含フッ素重合体(以下これらをあわせて「本発明の含フッ素化合物」という)を含むものである。
【0082】
有機薄膜の膜厚としては、通常1nm〜100μm程度であり、好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは20nm〜200nmである。
【0083】
有機薄膜は、本発明の含フッ素化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また本発明の含フッ素化合物の2種類以上を含むものであってもよい。また、有機薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるため、本発明の含フッ素化合物以外に電子輸送性又はホール輸送性を有した低分子化合物又は高分子化合物を混合して用いることもできる。
【0084】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用でき、例えばピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖及び主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、又はポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が挙げられ、電子輸送性材料としては公知のものが使用でき、例えばオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0085】
また、本発明の有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては公知のものが使用でき、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が例示される。
【0086】
さらに、本発明の有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよい。例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、安定性を増すための安定化剤、UV光を吸収するためのUV吸収剤等が挙げられる。
【0087】
また、本発明の有機薄膜は、機械的特性を高めるため、本発明の含フッ素化合物以外の高分子化合物材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0088】
このような高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0089】
本発明の有機薄膜の製造方法に制限はないが、例えば、本発明の含フッ素化合物、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを含む溶液からの成膜による方法が挙げられる。また、本発明の含フッ素化合物が昇華性を有する場合は真空蒸着法により薄膜に形成することもできる。
【0090】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、本発明の含フッ素化合物及び混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。
【0091】
本発明の有機薄膜を溶液から成膜する場合に用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が例示される。本発明の含フッ素化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0092】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法を用いることが好ましい。
【0093】
本発明の有機薄膜を製造する工程には、本発明の含フッ素化合物を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により含フッ素化合物を配向させた有機薄膜は、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、電子移動度又はホール移動度が向上する。
【0094】
含フッ素化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が配向手法として簡便かつ有用で利用しやすく、ラビング法、シェアリング法が好ましい。
【0095】
本発明の有機薄膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、あるいは光吸収により発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等、種々の有機薄膜素子に用いることができる。本発明の有機薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、配向処理により配向させて用いることが電子輸送性又はホール輸送性がより向上するため好ましい。
【0096】
次に、本発明の有機薄膜の有機薄膜トランジスタへの応用について説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の含フッ素化合物を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造であればよく、電界効果型、静電誘導型などが例示される。
【0097】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の含フッ素化合物を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本発明の含フッ素化合物を含む有機薄膜層(活性層)に接して設けられており、さらに有機薄膜層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0098】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の含フッ素化合物を含有する有機薄膜層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、該ゲート電極が有機薄膜層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機薄膜層中に設けられたゲート電極が、本発明の含フッ素重合体を含有する有機薄膜層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0099】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0100】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0101】
図3は第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0102】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0103】
図5は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0104】
図6は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0105】
図7は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0106】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本発明の含フッ素化合物を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0107】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開2004−006476号公報記載の方法により製造することができる。
【0108】
基板1としては有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければ特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板を用いることができる。
【0109】
活性層2を形成する際に、有機溶媒可溶性の化合物を用いることが製造上非常に有利であり好ましいことから、上記で説明した本発明の有機薄膜の製造方法を用いて、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0110】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料で有れば特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えばSiOx,SiNx、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジスト等が挙げられる。低電圧化の観点から、誘電率の高い材料の方が好ましい。
【0111】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物等があげられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV、Oプラズマで処理をしておくことも可能である。
【0112】
有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する工程からの影響を低減することができる。
【0113】
保護膜を形成する方法としては、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等があげられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等)行うことが好ましい。
【0114】
次に、本発明の有機薄膜の太陽電池への応用を説明する。
図8は、実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。図8に示す太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の含フッ素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0115】
本実施形態に係る太陽電池においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。高い開放電圧を得るためには、それぞれの電極として、仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。活性層2(有機薄膜)中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0116】
次に、本発明の有機薄膜の光センサへの応用を説明する。
図9は、第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の含フッ素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0117】
図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された本発明の含フッ素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0118】
図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された本発明の含フッ素化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0119】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。活性層2(有機薄膜)中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加して用いることができる。また基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0121】
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名JMN−270(H測定時270MHz)、又は同社製の商品名JMNLA−600(19
測定時600MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。また、質量分析(MS)は、株式会社島津製作所製のGCMS−QP5050A(商品名)を用い、電子イオン化(EI)法、直接試料導入(DI)法により測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel 60N(40〜50μm)を用いた。全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社、又はダイキン化成品株式会社より購入した。
【0122】
サイクリックボルタンメトリーは、測定装置としてビー・エー・エス株式会社(BAS社)製の商品名「CV−50W」を使用し、作用電極としてBAS社製Pt電極、対電極としてPt線、参照電極としてAg線を用いて測定した。この測定時の掃引速度は100mV/sec、走査電位領域は−2.8V〜1.6Vであった。還元電位及び酸化電位の測定は、化合物及び重合体を1×10−3mol/L、支持電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート(TBAPF6)0.1mol/Lをモノフルオロベンゼン溶媒に完全に溶解し測定した。
【0123】
参考合成例1
<化合物Aの合成>
ナスフラスコにインデノ[1,2−b]フルオレン−6,12−ジオン(2.23g、7.91mmol)、三フッ化ホウ素−酢酸錯体(5.94g、31.6mmol)、エタンジチオール(2.98mg、31.6mmol)、クロロホルム(50mL)を入れた後90℃で反応させた。12時間後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。固体をエーテルで洗浄し、目的物(3.41g、収率99%)を白色固体として得た(化合物A)。

TLC Rf=0.3(hexane:chloroform=2:1):1H-NMR(270MHz,CDCl3):δ7.90(s,2H),7.65(m,4H),7.33(m,4H),3.70(s,8H):GC-MS(DI):m/z=434(M+).

【化43】

【0124】
参考合成例2
<化合物Bの合成>
加熱乾燥した三つ口フラスコにN−ヨードスクシンイミド(6.00g、26.7mmol)を入れ窒素置換した後、ジクロロメタン(50mL)を加えた。反応溶液を−78℃に冷却し、フッ化水素−ピリジン(10mL)を滴下した。−78℃で30分撹拌した後、化合物A(1.50g、3.45mmol)のジクロロメタン溶液(50mL)を滴下した。−78℃で4時間撹拌した後、室温まで昇温し、さらに2時間撹拌した。反応液をベーシックアルミナカラムに通した。減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/クロロホルム)で精製を行い、目的物(1.01g、収率95%)を白色固体として得た(化合物B)。
TLC Rf=0.7(hexane:chloroform=2:1):1H-NMR(270MHz,CDCl3):δ7.81(s,2H),7.63(t,4H,J=8.2Hz),7.52(t,2H,J=6.9Hz),7.41(t,2H,J=7.3Hz):GC-MS(EI):m/z=326(M+).

【化44】

【0125】
参考合成例3
<化合物Cの合成>
ナスフラスコに化合物B(718mg、2.20mmol)、四塩化炭素(40mL)を入れた後、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン(1.23g、4.87mmol)、ヨウ素(1.97g、4.78mmol)を加え室温で反応させた。17時間後、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えクロロホルムで抽出した後、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧濃縮後、固体をメタノール、ヘキサン、アセトンで洗浄し、目的物(1.20g、収率94%)を黄白色固体として得た(化合物C)。
TLC Rf=0.6(hexane:chloroform=4:1):1H-NMR(270MHz,CDCl3):δ7.97(s,2H),7.85(d,2H,J=8.0Hz),7.77(s,2H),7.34(d,2H,J=8.0Hz):GC-MS(EI):m/z=578(M+).

【化45】

【0126】
参考合成例4
<化合物Dの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに化合物C(318mg、0.55mmol)、テトラヒドロフラン(26mL)を入れた。窒素置換し、−78℃に冷却した後n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液、0.80mL、1.43mmol)を加え反応させた。1時間後、−78℃で塩化トリブチルスズ(500mg、1.54mmol)を加え室温まで昇温させた。1時間後、水を加え酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。GPC(クロロホルム)で精製を行い、目的物(274mg、収率55%)を淡黄色液体として得た(化合物D)。
TLC Rf=0.8(hexane):δ7.78(s,2H),7.73(s,2H),7.60(d,2H,J=7.1Hz),7.54(d,2H,J=7.1Hz)),1.33(m,54H):MS(MALDI-TOF,1,8,9-trihydroxyanthracene matrix)m/z=903.1(M+,Calcd 904.4).

【化46】

【0127】
実施例1
<化合物Eの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物C(50mg、0.09mmol)、4−フルオロフェニルボロン酸(38mg、0.27mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10mg、0.009mmol)、炭酸ナトリウム(29mg、0.27mmol)、1,2−ジメトキシエタン(2mL)、水(0.5mL)を入れた後、窒素置換し80℃で反応させた。24時間後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラム(クロロホルム)で精製を行い、目的物(32mg、収率37%)を白色固体として得た(化合物E)。

TLC Rf=0.3(hexane:クロロホルム):1H-NMR(270MHz,CDCl3):δ8.22(m,2H),7.84(m,2H),7.69(s,2H),7.61(m,2H):GC-MS(DI):m/z=514(M+).

【化47】

【0128】
実施例2
<化合物Fの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物C(50mg,0.087mmol)、ペンタフルオロフェニルボロン酸(45mg、0.21mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(7mg、0.006mmol)、酸化銀(I)(25mg、0.10mmol)、フッ化セシウム(120mg、0.790mmol)、1,2−ジメトキシエタン(3mL)を入れた後、窒素置換し70℃で反応させた。60時間後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラム(hexane/クロロホルム)で精製を行い、目的物(35mg、収率62%)を淡黄色固体として得た(化合物F)。
TLC Rf=0.2(クロロホルム):1H-NMR(270MHz,CDCl3):δ7.89(s,2H),7.75(d,2H,J=7.8Hz),7.73(s,2H),7.60(d,2H,J=7.8Hz):GC-MS(DI):m/z=658(M+).

【化48】

【0129】
実施例3
<化合物Gの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に化合物D(274mg、0.303mmol)、4−アセチルフェニルボロン酸(306mg、1.21mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(35mg、0.010mmol)、トルエン(15mL)を入れた後、窒素置換し120℃で反応させた。42時間後、固体を濾取しメタノールで洗浄した。昇華で精製を行い、目的物(139mg、収率60%)を黄色固体として得た(化合物G)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ8.18(m,4H),7.83(m,12H):GC-MS(DI):m/z=670(M+).

【化49】

【0130】
実施例4
<有機薄膜素子Aの作成および太陽電池特性の評価>
実施例1で合成した化合物E及びポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT、Aldrich製)を用い、それぞれの2.0重量%o−ジクロロベンゼン溶液を調整し、0.2μmメンブランフィルターで濾過した。化合物Eの溶液及びP3HTの溶液を1:1の容量比で混合し、混合塗布液とした。スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、上記混合塗布液を用いスピンコートにより70nmの厚みの有機薄膜を形成した。得られた有機薄膜の上に真空蒸着法により、フッ化リチウムを約4nm、次いでアルミニウムを70nm蒸着した。さらに、その上にガラス板をUV硬化樹脂で接着して封止し、化合物EとP3HTを用いた有機薄膜素子Aを作製した。得られた有機薄膜素子Aにソーラシミュレーターを用いてAM1.5(100mW/cm)の疑似太陽光を照射しながら、電圧−電流特性を測定したところ、短絡電流20μA/cm、開放電圧0.75Vの太陽電池特性を得た。
【0131】
実施例5
<光センサの評価>
実施例4で作成した有機薄膜素子Aを用いて、200 lxの白色光を照射した時の光電流と、未照射時の暗電流を測定したところ、印加電圧−0.5Vで光電流と暗電流の電流比2.1×10が得られ、光センサとして動作することを確認できた。
【0132】
実施例6
<有機薄膜素子Bの作成および太陽電池特性の評価>
実施例4と同様にし、化合物Eの代わりに実施例2で合成した化合物Fを用いて、化合物FとP3HTを用いた有機薄膜素子Bを作製した。得られた有機薄膜素子Bにソーラシミュレーターを用いてAM1.5(100mW/cm)の疑似太陽光を照射しながら、電圧−電流特性を測定したところ、短絡電流35μA/cm、開放電圧1.08Vの太陽電池特性を得た。
【0133】
実施例7
<光センサの評価>
実施例6で作成した有機薄膜素子Bを用いて、200 lxの白色光を照射した時の光電流と、未照射時の暗電流を測定したところ、印加電圧−0.5Vで光電流と暗電流の電流比1.1×10が得られ、光センサとして動作することを確認できた。
【0134】
実施例8
<有機薄膜素子Cの作成および太陽電池特性の評価>
実施例4と同様にし、化合物Eの代わりに実施例3で合成した化合物Gを用いて、化合物GとP3HTを用いた有機薄膜素子Cを作製した。得られた有機薄膜素子Cにソーラシミュレーターを用いてAM1.5(100mW/cm)の疑似太陽光を照射しながら、電圧−電流特性を測定したところ、短絡電流64μA/cm、開放電圧1.08Vの太陽電池特性を得た。
【0135】
実施例9
<光センサの評価>
実施例8で作成した有機薄膜素子Cを用いて、200 lxの白色光を照射した時の光電流と、未照射時の暗電流を測定したところ、印加電圧−0.5Vで光電流と暗電流の電流比2.3×10が得られ、光センサとして動作することを確認できた。
【0136】
実施例10
<有機薄膜素子Dの作製及びトランジスタ特性の評価>
ゲート電極となる高濃度にドープされたn−型シリコン基板の表面上に、熱酸化により絶縁層となるシリコン酸化膜を形成した基板を用意し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)に50℃で浸漬し、シリコン酸化膜表面を処理する。次に、この表面処理した基板上に、真空蒸着法により、化合物Gの有機薄膜を堆積させる。次いで、この有機薄膜の上に、シャドウマスクを通してAuを蒸着し、ソース電極及びドレイン電極を形成し、有機薄膜素子Dを作製する。得られた有機薄膜素子Dに、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させてトランジスタ特性を測定することにより良好なId−Vg特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図9】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図12】一般式(IV)で表される繰り返し単位の環と一般式(VI)で表される繰り返し単位の環とがなす二面角を表す図である。
【符号の説明】
【0138】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される含フッ素多環芳香族化合物。
【化1】


[式(I)中、
Ar及びArは各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、
、R、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、
及びRは各々独立に、水素原子又は置換基で置換されていてもよい1価の有機基(当該1価の有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及び複素環基から選ばれ、当該1価の有機基において、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていてもよい。)を示し、
及びtは各々独立に、2以上の整数を示す。
但し、R及びRの少なくとも1つは、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された前記1価の有機基である。
また、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1記載の含フッ素多環芳香族化合物。
【化2】


[式(II)中、
、R、R、R、R及びRは、前記と同義であり、
及びZは各々独立に、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示す。
但し、R及びRの少なくとも1つは、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された前記1価の有機基である。
また、R、R、R及びR10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。更に、下記式(ii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【化3】

【請求項3】
前記Z及び前記Zが、前記式(i)で表される基である、請求項2記載の含フッ素多環芳香族化合物。
【請求項4】
前記R及び前記Rが、フッ素原子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物。
【請求項5】
下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する含フッ素重合体。
【化4】


[式(III)中、
Ar及びArは各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、
、R、R及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、
及びRは各々独立に、水素原子又は置換基で置換されていてもよい1価の有機基(当該1価の有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及び複素環基から選ばれ、当該1価の有機基において、置換基を含め全水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていてもよい。)を示し、
及びtは各々独立に、1以上の整数を示す。
また、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項6】
前記一般式(III)で表される繰り返し単位が、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位である、請求項5記載の含フッ素重合体。
【化5】


[式(IV)中、
、R、R、R、R及びRは、前記と同義であり、
及びZは各々独立に、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示す。
、R、R及びR10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。なお、下記式(ii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【化6】

【請求項7】
前記Z及び前記Zが、前記式(i)で表される基である、請求項6記載の含フッ素
重合体。
【請求項8】
前記一般式(III)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、下記一般式(V)で表される繰り返し単位の少なくとも1つとを有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の含フッ素重合体。
【化7】


[式(V)中、Arは、2価の芳香族炭化水素基又は2価の複素環基(これらの基は置換基で置換されていてもよい。)を示す。]
【請求項9】
前記Arが、下記一般式(VI)で表される基である、請求項8記載の含フッ素重合体。
【化8】


[式(VI)中、
11及びR12は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、Zは、下記式(i)〜(ix)で表される基のいずれかを示す。但し、R11とR12とは互いに結合して環を形成していてもよい。
、R、R及びR10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。なお、下記式(ii)で表される基は左右反転していてもよい。]
【化9】

【請求項10】
前記Zは、前記式(v)で表される基である、請求項9記載の含フッ素重合体。
【請求項11】
前記R及び前記Rは、フッ素原子である、請求項5〜10のいずれか一項に記載の含フッ素重合体。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の含フッ素多環芳香族化合物、及び/又は、請求項5〜11のいずれか一項に記載の含フッ素重合体を含む、有機薄膜。
【請求項13】
真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、フレキソ印刷法、ノズルコート法又はキャピラリーコート法により形成される請求項12記載の有機薄膜。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の有機薄膜を備える有機薄膜素子。
【請求項15】
ソース電極及びドレイン電極と、これら電極の間の電流経路となる有機半導体層と、前記電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、を備えた有機薄膜トランジスタであって、前記有機半導体層が請求項12又は13に記載の有機薄膜を備える有機薄膜トランジスタ。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の有機薄膜を備える有機太陽電池。
【請求項17】
請求項12又は13に記載の有機薄膜を備える光センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−255097(P2008−255097A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35015(P2008−35015)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】