説明

吸引装置、印刷装置及びマイクロアレイの製造装置

【課題】 液滴吐出ヘッドのノズル孔間でのコンタミネーションを抑止し得る吸引装置、印刷装置及び液滴吐出装置の提供。
【解決手段】 配列された複数のノズル孔51を備えた液滴吐出ヘッド50のノズル孔51を外部から吸引する吸引装置30であって、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51を覆って閉空間を形成するキャップ31と、キャップ31の開口側であって、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51が形成された面53に接し得る位置に、前記開口部を閉じるように設けられたフィルタ33と、キャップ31内を外部から吸引する吸引手段35と、を備え、フィルタ33が、隔壁を隔てて並設される、フィルタ33の膜厚方向に延在する複数の貫通孔39を有し、貫通孔39が、液滴吐出ヘッド50の互いに隣接するノズル孔51相互間の距離に少なくとも1つ含まれる大きさである吸引装置30により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引装置、印刷装置及びマイクロアレイの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェット印刷装置では、ノズル孔のインク詰まりや気泡の発生による吐出不良を解消し、正常な吐出を行うために、吸引によりノズル孔先端まで吐出液体を充填する(プライミング)動作や、ノズル孔内の増粘物を吸引除去する動作を行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、気体を透過するが、ある限界圧力以下では液体を透過させない気体透過性フィルタを介してノズル孔内を吸引することで、ノズル孔先端にまで液体を充填する液体の充填方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−66506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献記載の方法では、気体透過性フィルタとして、ポリテトラフルオロエチレンの微細な繊維で形成されたフィルタを用いている。このため、当該フィルタを介して吸引した場合、フィルタの繊維を伝って液体が隣接するノズル孔に到達する虞がある。すると、隣接するノズル孔間で異なる種類の液体として例えばインクを吐出する場合には、インクの混色(コンタミネーション)が発生し、画質低下の原因となる虞がある。
【0005】
また、近年、病気の診断や新薬の開発に使用されるDNAチップ等のマイクロアレイの製造にも、液滴吐出ヘッドによる液滴吐出方法が利用されており、このような場合にも、ノズル詰まりの解消やノズル先端部への液体の充填が必要となる。このようなDNAチップ等のマイクロアレイでは、高い測定精度が要求されるため、さらにノズル孔間のコンタミネーションを防止する必要がある。
【0006】
したがって、本発明は、液滴吐出ヘッドのノズル孔間でのコンタミネーションを抑止し得る吸引装置、印刷装置及び液滴吐出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、配列された複数のノズル孔を備えた液滴吐出ヘッドの当該ノズル孔を外部から吸引する吸引装置であって、前記液滴吐出ヘッドのノズル孔を覆って閉空間を形成するキャップと、前記キャップの開口側であって、前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔が形成された面に接し得る位置に、前記開口部を閉じるように設けられたフィルタと、前記キャップ内を外部から吸引する吸引手段と、を備え、前記フィルタが、隔壁を隔てて並設され、当該フィルタの膜厚方向に延在する複数の貫通孔を有し、当該貫通孔が、前記液滴吐出ヘッドの互いに隣接するノズル孔間の距離に少なくとも1つ含まれる大きさである吸引装置を提供するものである。
【0008】
かかる構成によれば、隣接するノズル孔間の距離に少なくとも1つ含まれるような大きさの貫通孔が複数並設されたフィルタを備えているので、一の貫通孔を複数のノズル孔が共有することがない。また、隣接する貫通孔相互間は隔壁で隔てられているので、一のノズル孔から排出された液体が隣接するノズル孔に飛散等することにより汚染されるのを回避することが可能となる。よって、液滴吐出ヘッドのノズル孔間でのコンタミネーションを抑止し得る。また、このような貫通孔を複数備えた構造を有するので、ノズル孔を吸引するために、ノズル孔とフィルタの貫通孔との位置合わせをする必要がない。
【0009】
前記貫通孔の大きさが、前記液滴吐出ヘッドのノズル孔の大きさよりも小さいことが好ましい。これによれば、複数の貫通孔が一のノズル孔に接する為、貫通孔とノズル孔の位置合わせをすることなく、必要な吸引性を確保し得る。
【0010】
前記貫通孔の形状は、特に限定するものではなく、円形、楕円形、多角形(例:三角形、四角形、五角形、六角形等)のいずれであってもよく、また、これらが混在したものであってもよい。このような中でも、貫通孔の形状は三角形、四角形又は六角形であることが好ましい。これによれば、貫通孔をフィルタ内に密に配置し得る。よって、貫通孔相互間を隔てる隔壁の面積を実質的に減少させることが可能となるので、フィルタを介して吸引する際に、吸引性が向上する。
【0011】
前記フィルタが、ハニカム構造を有することが好ましい。これによれば、貫通孔をフィルタ内に密に配置し得る。
【0012】
前記フィルタが、弾性体であり、前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔が形成された面に密着させた場合に、当該ノズル孔が形成された面の表面凹凸を吸収し得る厚さであることが好ましい。これによれば、ノズル孔が形成された面(以下、ノズル形成面ともいう)の表面凹凸を吸収し得るので、より密着性を向上し得る。
【0013】
前記フィルタが、自己吸着性を有することが好ましい。これによれば、ノズル形成面との密着をさらに向上することが可能となる。ここで、「自己吸着性」とは、素材自体の有する性質(例えば、素材の分子構造)により、対象体へ吸着し得る性質をいう。
【0014】
前記キャップ内に、通液性を有し、前記フィルタを支持する支持部材を備えることが好ましい。これによれば、吸引時に吸引力によりフィルタが吸引側に引き寄せられ、ノズル形成面とフィルタとの密着性が弱められるのを回避し得る。
【0015】
前記フィルタの吸引面側に、前記ノズル孔より吸引された液体を吸収する吸収材をさらに備えることが好ましい。これによれば、吸収材を有するので、吸引した液体が跳ね返ったり、逆流することによりノズル形成面が汚染されるのを回避することが可能となる。特に、フィルタの厚みが薄い場合に有効である。
【0016】
前記フィルタを前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔が形成された面に密着させた場合に、当該ノズル孔が形成された面の表面凹凸を吸収し得る緩衝作用を有する緩衝材をさらに備えることが好ましい。緩衝材を有することで、例えば、フィルタが、厚みが薄く、弾性をあまり有しない材料である場合においても、ノズル形成面の表面凹凸を吸収し、密着性を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の印刷装置は、上記吸引装置を備えるものである。これによれば、上記吸引装置を備えるので、隣接ノズル孔間のインクの混色を抑止することが可能となる。
【0018】
本発明のマイクロアレイの製造装置は、上記吸引装置を備えるものである。これによれば、上記吸引装置を備えるので、隣接ノズル孔間のコンタミネーションを抑止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の吸引装置を説明するための図である。
図1に示すように、本実施形態の吸引装置は、キャップ31と、フィルタ33と、吸引手段としてのポンプ35とを含み主に構成されている。
【0021】
キャップ31は、ポンプ35により減圧される空間を形成するものであり、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51の周囲を覆って閉空間を形成するものである。キャップ31は、凹部形状を有し、例えばブチルゴムなどの弾性部材を用い、射出成形等により形成される。弾性部材を用いることで、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51が形成された面53(以下、ノズル形成面という)と密着させることが可能となり、閉空間36内の機密性を高めることが可能となるので好ましい。また、キャップ31の先端に、液滴吐出ヘッド50のノズル形成面42との密着性を高め、吸引時における吸引性を高めるために、Oリング等のパッキン37を備えていてもよい。
【0022】
フィルタ33は、ノズル孔51の吸引時に隣接位置にあるノズル孔51相互間のコンタミネーションを抑止するためのものである。フィルタ33は、隔壁を隔てて並設された、膜厚方向に延在する複数の貫通孔39を有する。貫通孔39は、密に形成されていることが好ましい。これにより、ノズル孔51がどの位置に配置されたとしても、良好に吸引し得ることになる。貫通孔39の断面形状は、特に限定するものではなく、円形、楕円形、多角形(例:三角形、四角形、五角形、六角形等)のいずれであってもよい。また、種々の形状の貫通孔39が混在したものであってもよい。このような中でも、貫通孔の形状は三角形、四角形又は六角形(例:ハニカム構造)であることが好ましい。これによれば、貫通孔をフィルタ33内に密に配置し得る。よって、貫通孔相互間を隔てる隔壁の面積を実質的に減少させることが可能となるので、フィルタ33を介して吸引する際に、吸引性が向上する。また、一のフィルタ33内に種々の大きさの貫通孔39が含まれていてもよい。
【0023】
また、貫通孔39は、液滴吐出ヘッド50の互いに隣接するノズル孔51間の距離(一のノズル孔の外径と他のノズル孔との外径との最も接近した距離)に少なくとも1つ含まれる大きさであることが好ましい。これにより、一の貫通孔39を複数のノズル孔51が共有することがなく、また、隣接する貫通孔39相互間が隔壁で隔てられているので、一のノズル孔51から排出された液体が隣接するノズル孔51に飛散等することにより汚染されるのを回避することが可能となる。なお、貫通孔39は、ノズル孔51より大きくても小さくてもよい。但し、ノズル孔との位置合わせの観点からは、貫通孔39はノズル孔51よりも小さい方が好ましい。
【0024】
また、貫通孔39相互間を隔てる隔壁の厚みは、流路抵抗を減少させ、吸引力を低減し得るという観点からは薄い方が好ましい。なお、吸引時に、フィルタ33に吸引による力がかかるので、吸引力に耐えられ得る厚みであることを要する。貫通孔39の隔壁の厚みは、特に限定するものではないが、一例を挙げると1〜50μmである。
【0025】
ノズル孔51の膜厚方向の形状は、特に限定されるものではないが、膜厚方向に略直線的な形状をしている直孔であることが好ましい。これにより、吸引性を向上することが可能となる。
【0026】
フィルタ33は、キャップ31の開口側であって、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51が形成された面(ノズル形成面)53に接し得る位置に、開口部を閉じるように設けられる。これにより、フィルタ33をノズル形成面53に密着させることが可能となる。
フィルタ33の構成例については、後述する。
【0027】
キャップ31には、チューブ41を介して吸引手段としてのポンプ35(例:減圧ポンプ、チューブポンプ等)が接続されている。これにより、液滴吐出ヘッド50装着時にキャップ31内を減圧にすることが可能となる。なお、チューブ41は、キャップ31と一体形成されていても別体であってもよい。
【0028】
図2は、貫通孔とノズル孔との関係を説明するための図である。図中、ハッチングがされている貫通孔39は、ノズル孔51から吸引される液体が通過する貫通孔39を示す。また、ハッチングがされていない貫通孔39は、液体が通過しない貫通孔39を示す。
【0029】
図2(a)に、ハニカム構造に貫通孔39が形成されたフィルタ33の例を示す。このように、フィルタ33をハニカム構造とすることで、貫通孔39が密に配置されるので、ノズル孔51がどの位置に配置されても、良好に吸引が可能となる。また、隣接するノズル孔51相互間に、どのノズル孔からの液体も通過しない貫通孔39が配置されることになるので、確実に隣接するノズル孔間の液体の混液を抑止することが可能となる。
【0030】
図2(b)は、円形の貫通孔39が形成されたフィルタ33の例を示す。この例でも同様に、隣接するノズル孔間の液体の混液を抑止し得る。
【0031】
図3は、本実施形態の吸引装置30の変形例を説明するための図である。
図3(a)に示すように、吸引装置30は、キャップ31内にフィルタ33を支持するための支持部材43を有していてもよい。支持部材43は、ノズル孔51から吸引する液体が、通化し得るように通液性を有するものであることが好ましい。また、フィルタ33をノズル形成面53に密着させる際に、フィルタ33に押圧力を付与し得るよう剛性を有する素材により構成されていることが好ましい。このような支持部材43の一例としては、ガラスフィルタ等が挙げられる。
【0032】
図3(b)に示すように、吸引装置30は、フィルタ33の吸引面側に、ノズル孔より吸引された液体を吸収させるための吸収材45をさらに備えていてもよい。フィルタ33と吸収材45がこのような二層構造を有することで、フィルタ33を通過した液体が跳ね返ったり、逆流することによりノズル形成面53が汚染されることを回避することが可能となる。また、吸収材45は、緩衝作用を有するものであってもよい。このような吸収材45としては、例えば、セルロース繊維性ろ紙が挙げられる。特に、フィルタ33が、厚みが薄く(例:5〜100μm程度)、弾性をあまり有しない材料(剛性材料)である場合には、フィルタ33単独ではノズル形成面53の表面凹凸を吸収し得ない場合がある。しかし、緩衝作用を有する部材をさらに積層させることで、表面凹凸への密着性を向上させることが可能となる。
【0033】
なお、上記例では緩衝作用と吸収作用の両方を有する部材を例に挙げたが、緩衝作用を有する部材と吸収作用を有する部材を各々別々に用いてもよい。
【0034】
次に、フィルタ33の構成例について説明する。
フィルタ33としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から構成されるものが用いられる。PDMSは、加工性が良好であり、自己吸着性を有する材料であるので好適に用いられる。
PDMSを用いたフィルタ33の製造方法の一例を挙げる。
【0035】
図4は、成形材料(PDMS)を用いたフィルタ33の製造方法を説明するための図である。
【0036】
図4(a)に示すように、まず、シリコン基板にフォトリソグラフィ技術を用いてフィルタ33の貫通孔39を形成するための凸部72を形成する。次に、このように形成された鋳型の表面に離型処理を施す(図4(b))。図中、符号73は、離型剤を示す。離型処理としては、具体的には、例えばパリレンを蒸着することにより行われる。その後、必要に応じて硬化剤を混合した成形材料(PDMS)75を例えばスピンコート等により鋳型内に導入し(図4(c))、平板77で蓋をして硬化させる(図4(d))。その後、必要に応じて、表面を例えば反応性イオンエッチング(RIE)等により研磨する。硬化した材料を鋳型から取り出すことによりフィルタ33が得られる(図4(e))。
【0037】
PDMSを用いると、このように鋳型を用いた微細加工が可能となるので、貫通孔の形状、孔径、貫通孔間の距離を任意に調整したフィルタ33を容易に得ることが可能となる。
また、PDMSの代わりに、ポリカーボネートシート(ADVANTEC社製、商品名:ポリカーボネートタイプメンブランフィルタ)等の多孔性膜を利用することも可能である。
【0038】
このような吸引装置30は、印刷装置に用いられるインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)のノズル孔51のメンテナンスや、マイクロアレイの製造装置に用いられる液滴吐出ヘッドのノズル孔51のメンテナンス等に好適に用いられる。
【0039】
吸引装置30の動作の一例について説明する。
まず、キャップ31のフィルタ33を液滴吐出ヘッド50のノズル形成面53に密着させる(図1参照)。次に、ポンプ35を起動させ、吸引を開始する。ポンプ35が起動されると、ノズル孔51内の液体が貫通孔39を介してキャップ31内に排出される。所定の時間吸引を行った後、ポンプ35を停止する。
【0040】
このような動作を行うことにより、液滴吐出ヘッド50の種々のメンテナンスが可能となる。
【0041】
また、メンテナンスには、具体的には、例えば以下のものが含まれる。
例えばリザーバタンクに収容された液体をインクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドのノズル先端にまで、吐出液体(例:インク、生体試料溶液等)を充填させる操作(プライミング)が含まれる。
【0042】
また、例えば、ノズル孔内の増粘した吐出液体や残留する気泡を除去する操作(サッキング)が含まれる。
【0043】
なお、吸引装置30の使用停止時においては、キャップ31を液滴吐出ヘッド50の乾燥防止のために用いてもよい。
【0044】
次に、上記吸引装置30を備えた印刷装置及びマイクロアレイの製造装置の一例について説明する。
【0045】
図5は、本実施形態のインクジェット印刷装置を説明するための図である。
図5に示すように、本実施形態のインクジェット印刷装置10は、キャリッジ11、液滴吐出ヘッド50、インクカートリッジ13、キャリッジモータ14、タイミングベルト15、ガイド部材16、ブラテン17、及び吸引装置30から要部が構成されている。
【0046】
キャリッジ11は、液滴(インク滴)を吐出する液滴吐出ヘッド50及び液滴吐出ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ13を搭載し、搬送するためのものである。キャリッジ11は、キャリッジモータ14により駆動されるタイミングベルト15に結合されており、ガイド部材16に案内されてプラテン17の主軸と平行(主走査方向X)に往復移動するように構成されている。記録媒体20の送り方向(副走査方向Y)は、主走査方向Xと直交している。
【0047】
液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)50は、ノズル孔から液滴を記録媒体20に吐出するものであり、キャリッジ11下部の記録媒体20に対向する側に装備されている。液滴吐出ヘッド50は、静電アクチュエータ、圧電方式のアクチュエータ、サーマル方式のいずれの方式を採るものであってもよい。
【0048】
インクカートリッジ(タンク)13は、液滴吐出ヘッド50に供給するインク(液体)を貯留する容器であり、不図示の接続部を介して液滴吐出ヘッド50上に取り付けられている。なお、本実施形態では、インクカートリッジ13は液滴吐出ヘッド50と別体として構成されているが、一体に構成されていてもよい。
【0049】
吸引装置30は、上述のように、液滴吐出ヘッド50のノズル孔を外部から吸引するための装置である。吸引装置30は、印刷領域外に位置する液滴吐出ヘッド50の格納位置(ホームポジション)に設置される。吸引装置30は、シリンダ又はボールネジ機構等により昇降可能に構成されている。これにより、必要に応じて、吸引装置30を液滴吐出ヘッド50のノズル開口面(ノズル形成面)まで移動させることが可能となる。なお、キャップ31のみが昇降可能になるよう構成されていてもよい。
【0050】
図6は、本実施形態のマイクロアレイの製造装置を説明するための図である。
図6に示すように、本実施形態のマイクロアレイの製造装置100は、基台101、X軸方向に往復移動する液滴吐出ヘッド50、Y軸方向に往復移動しマイクロアレイ基板105を載置するテーブル103、及び、液滴吐出ヘッド50の格納位置(ホームポジション)に吐出液体充填用の吸引装置30を備えている。なお、図5において、104は液滴吐出ヘッド50及びテーブル103の駆動部であり、液滴吐出ヘッド50及びテーブル103は、例えば、タイミングベルト機構やボールネジ機構等を用いて数値制御方式等により移動させることができる。
【0051】
ここでの液滴吐出ヘッド50は、DNA又はタンパク質等を含む生体試料溶液をマイクロアレイ基板105上に吐出するものである。液滴吐出ヘッド50は、外部に液滴を吐出するヘッド部とヘッド部に生体試料溶液を供給する貯留部(タンク)が一体的に形成されていても、別体として形成されていてもよい。
吸引装置30は、上述したものと同様のものを用いることが可能である。
【0052】
本実施形態によれば、隣接するノズル孔51間の距離に少なくとも1つ含まれるような大きさの貫通孔39が複数並設されたフィルタ33を備えているので、一の貫通孔39を複数のノズル孔51が共有することがない。また、隣接する貫通孔39相互間は隔壁で隔てられているので、一のノズル孔51から排出された液体が隣接するノズル孔51に飛散等することにより汚染されるのを回避することが可能となる。よって、液滴吐出ヘッド50のノズル孔51間でのコンタミネーションを抑止し得る。また、このような貫通孔を複数備えた構造を有するので、ノズル孔51を吸引するために、ノズル孔51とフィルタ33の貫通孔39との位置合わせをする必要がない。また、貫通孔39の孔径を小さくすることで、どのような大きさのノズル孔51にも対応し得るので、汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本実施形態の吸引装置を説明するための図である。
【図2】図2は、貫通孔とノズル孔との関係を説明するための図である。
【図3】図3は、本実施形態の吸引装置30の変形例を説明するための図である。
【図4】図4は、成形材料(PDMS)を用いたフィルタ33の製造方法を説明するための図である。
【図5】図5は、本実施形態のインクジェット印刷装置を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態のマイクロアレイの製造装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0054】
10・・・インクジェット印刷装置、11・・・キャリッジ、13・・・インクカートリッジ、14・・・キャリッジモータ、15・・・タイミングベルト、16・・・ガイド部材、17・・・ブラテン、20・・・記録媒体、30・・・吸引装置、31・・・キャップ、33・・・フィルタ、35・・・ポンプ、36・・・閉空間、37・・・パッキン、39・・・貫通孔、41・・・チューブ、43・・・支持部材、45・・・吸収材、50・・・液滴吐出ヘッド、51・・・ノズル孔、53・・・ノズル形成面、72・・・凸部、73・・・離型剤、75・・・成形材料、77・・・平板、100・・・マイクロアレイの製造装置、101・・・基台、103・・・テーブル、104・・・駆動部、105・・・マイクロアレイ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された複数のノズル孔を備えた液滴吐出ヘッドの当該ノズル孔を外部から吸引する吸引装置であって、
前記液滴吐出ヘッドのノズル孔を覆って閉空間を形成するキャップと、
前記キャップの開口側であって、前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔が形成された面に接し得る位置に、前記開口部を閉じるように設けられたフィルタと、
前記キャップ内を外部から吸引する吸引手段と、
を備え、
前記フィルタが、隔壁を隔てて並設され、当該フィルタの膜厚方向に延在する複数の貫通孔を有し、当該貫通孔が、前記液滴吐出ヘッドの互いに隣接するノズル孔相互間の距離に少なくとも1つ含まれる大きさであることを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記フィルタが、ハニカム構造を有する、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記フィルタが、弾性体であり、前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔が形成された面に密着させた場合に、当該ノズル孔が形成された面の表面凹凸を吸収し得る厚さである、請求項1又は請求項2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記フィルタが、自己吸着性を有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項5】
前記キャップ内に、通液性を有し、前記フィルタを支持する支持部材を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項6】
前記フィルタの吸引面側に、前記ノズル孔より吸引された液体を吸収する吸収材をさらに備える、請求項1乃至5のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項7】
前記フィルタを前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル孔が形成された面に密着させた場合に、当該ノズル孔が形成された面の表面凹凸を吸収し得る緩衝作用を有する緩衝材をさらに備える、請求項1乃至6のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の吸引装置を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の吸引装置を備えることを特徴とするマイクロアレイの製造装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−69091(P2006−69091A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256698(P2004−256698)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】