説明

回路基板の端子位置認識方法及びその装置

【課題】回路基板の端子位置の観察精度を向上する。
【解決手段】基材7に導電材9の配線パターンが形成され、端部に前記導電材9を露出した端子部3を有した回路基板1の前記端子部3の位置を認識する際に、前記端子部3の導電材9の根元部3Bだけを観察対象として画像処理手段17で画像処理することで、前記端子部3の位置を認識することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回路基板の端子位置認識方法及びその装置に関し、特に回路基板の端子部を例えばCCDカメラなどの画像処理手段にて撮像して前記端子部の位置を認識する位置認識方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板としては、図5に示されているように、フレキシブルプリント回路基板(FPC)やリジットプリント基板(RPC)のプリント基板があり、このうちの例えばフレキシブルプリント回路基板(FPC)101は、例えばポリイミドあるいはポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材としての絶縁フィルム103の上に、例えば銅からなる箔状の導電材105を印刷などして配線パターンを形成し、さらに回路保護部材としてオーバレジスト107が配線パターンの上に積層されて構成している。また、端子部109にはエッチング処理されてオーバレジスト107が形成されておらず、導電材105が露出された状態となっている。
【0003】
例えば、上記のFPC101同士を端子部109で接合するには、端子部109をCCDカメラ111などで観察して、端子部109の位置に正確に認識することが重要となる。
【0004】
従来、回路基板の端子部109の位置を認識するために、特許文献1に示されているように、上記のFPC101は、FPC101の端子部109に照射光をあててCCDカメラ111や顕微鏡などの観察部を備えた観察装置113により検出して観察が行われる。例えば、固定台115に載置したFPC101の表面に対してLED照明117で斜め方向から赤外波長域の照射光を照射し、FPC101の上方への反射光によりFPC101の配線パターンを観察するものがある。
【0005】
上記のFPC101の観察方法により、各FPC101の端子部109の導電材105を露出している面が、観察部としてのCCDカメラ111で上方から観察される。このとき、各端子部109の水平面上で互いに直交するX軸、Y軸方向の位置座標が測定される。
【特許文献1】特開2007−42874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の観察装置113で認識した画像を見ると、図6のA部に示されているように、一般的にFPC101の端子部109の導電材105はX方向の先端部109Aが丸まって細くなってしまうのである。この現象は、例えば端子部109の導電材105を形成するためにエッチングする際に、端子部109の導電材105の幅寸法などの形状や場所によってエッチングの進行速度が異なっていることによる。
【0007】
その結果、端子部109のある1本の導電材105の位置を画像処理する際に、導電材105の先端部109Aを画像処理の対象部位とすると、特にY方向の観察精度が悪くなってしまうという問題点があった。
【0008】
近年は回路ピッチ(回路幅)が狭くなっており、先端丸まりによる画像処理精度への影響が問題となりやすくなってきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の回路基板の端子位置認識方法は、基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する際に、
前記端子部の導電材の根元部だけを観察対象として画像処理手段で画像処理することで、前記端子部の位置を認識することを特徴とするものである。
【0010】
また、この発明の回路基板の端子位置認識方法は、前記回路基板の端子位置認識方法において、前記端子部の導電材の根元部だけを観察対象とするために、前記端子部の導電材の先端部または根元部の範囲長さを予め決められた値に設定しておくことが好ましい。
【0011】
また、この発明の回路基板の端子位置認識方法は、基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する際に、
前記端子部の導電材の幅方向に跨ぐ複数本のカーソルラインを端子部の導電材の先端側から根元部に向けて並列して設定し、各カーソルラインにおける端子幅のうちのほぼ一定となる端子幅だけを観察対象として画像処理手段で画像処理することで、前記端子部の位置を認識することを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の回路基板の端子位置認識装置は、基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する回路基板の端子位置認識装置において、
前記回路基板の端子部を撮像する撮像部と、
この撮像部で撮像された画像を処理する画像処理手段と、
この画像処理手段で処理された画像データから前記回路基板の端子部の導電材の根元部だけを観察対象として端子部の位置を判断する判断部と、
で構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の回路基板の端子位置認識装置は、基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する回路基板の端子位置認識装置において、
前記回路基板の端子部を撮像する撮像部と、
この撮像部で撮像された画像を処理する画像処理手段と、
この画像処理手段で処理された画像データから前記回路基板の端子部の導電材の幅方向に跨ぐ複数本のカーソルラインを端子部の導電材の先端側から根元部に向けて並列して設定し、各カーソルラインにおける端子幅のうちのほぼ一定となる端子幅だけを観察対象として端子部の位置を判断する判断部と、
で構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の回路基板の端子位置認識方法によれば、端子部の導電材の根元部だけを観察対象とするので、その先端部の丸まりの影響を受けずに、より高精度な画像処理を行うことができる。特に端子配列方向の端子位置の観察精度を向上することができる。
【0015】
また、この発明の回路基板の端子位置認識方法によれば、端子部の導電材の複数本の各カーソルラインにおける端子幅を検出し、丸まっていない画像処理に適した端子部の範囲を認識するので、より高精度な画像処理を行うことができる。特に端子配列方向の端子位置の観察精度を向上することができる。
【0016】
また、この発明の回路基板の端子位置認識装置によれば、画像処理手段で処理された画像データを基にして判断部で端子部の導電材の根元部だけを観察対象とするので、その先端部の丸まりの影響を受けずに、より高精度な画像処理を行うことができる。特に端子配列方向の端子位置の観察精度を向上することができる。
【0017】
また、この発明の回路基板の端子位置認識装置によれば、画像処理手段で処理された画像データを基にして判断部で端子部の導電材の複数本の各カーソルラインにおける端子幅を検出し、丸まっていない画像処理に適した端子部の範囲を認識するので、より高精度な画像処理を行うことができる。特に端子配列方向の端子位置の観察精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1ないしは図3を参照するに、この実施の形態に係る回路基板としては、例えばフレキシブルプリント回路基板1(以下、単に「FPC」という)があり、図1及び図2ではFPC1の端子部3の部分的な拡大した平面図が図示されている。図3では図1のFPC1の上下方向に沿った拡大縦断面図と前記FPC1の端子部の上方側から画像処理手段としての例えばCCDカメラ5で撮像する状態が図示されている。
【0020】
上記のFPC1は、例えばポリイミドあるいはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂からなる基材としての例えば絶縁フィルム7の上に、例えば銅からなる箔状の導電材9(9A〜9D)を印刷などして配線パターンを形成し、さらに回路保護部材としてオーバレジスト11が配線パターンの上に積層されて構成している。また、端子部3にはオーバレジスト11が形成されておらず、複数の導電材9が剥き出しとなっている。
【0021】
なお、この実施の形態では上記の絶縁フィルム7はポリイミドからなり、厚さは0.03〜0.1mm程度で、上記の端子部3の複数の各導電材9は絶縁フィルム7の表面上に突出しており、厚さは約20μmである。
【0022】
例えば、上記のFPC1同士を端子部3で接合するには、端子部3をCCDカメラ5などで観察して、端子部3の位置に正確に認識することが重要となる。そのために、FPC1の端子部3に剥き出している導電材9を観察して位置を正確に認識するためには、この実施の形態に係る回路基板の端子位置認識装置13が用いられる。
【0023】
図3を参照するに、回路基板の端子位置認識装置13としては、例えばFPC1を載置する固定台15が設けられている。また、固定台15の上方には、FPC1の端子部3の複数の導電材9を観察し、撮像するための撮像部としての例えばCCDカメラ5が設けられており、このCCDカメラ5は図4に示されているように、撮像された画像を処理するための画像処理手段としての例えば画像処理装置17を介して制御装置19に接続されている。なお、CCDカメラ5には、図3に示されているように、倍率を変更するためのレンズ21が内蔵されている。さらに、CCDカメラ5の撮像視野を照明するための照明装置としての例えばリング型のLED照明23が設けられている。
【0024】
図4を参照するに、制御装置19は、中央処理装置としてのCPU31が備えられており、このCPU25には、種々のデータやプログラム等を入力するキーボードやタッチパネルなどの入力装置27と、CRTや液晶などの表示装置29と、入力装置27から入力されたプログラムやCCDカメラ5により撮像された画像データなどを記憶するメモリ31とが備えられている。
【0025】
また、CPU25には、前記画像処理装置17で撮像して得られたFPC1の端子部3の画像データから、観察対象とする端子部3の端子幅を計算する演算装置33と、この演算装置33で計算された端子幅や、予め決められた根本部だけ観察対象として判断する判断部35と、上記の画像処理装置17が接続されており、この画像処理装置17にはCCDカメラ5が接続されている。
【0026】
上記のCCDカメラ5で撮像された画像を処理した画像処理装置17による画像データを見ると、図1のA部に示されているように、FPC1の端子部3がX方向の先端部3Aが丸まって細くなってしまうので、上記の判断部35では、画像処理装置17による前記画像データから、図1のB部に示されているように、上記のFPC1の端子部3の根元部3Bだけを観察対象として端子部3の位置を判断するものである。この場合、前記端子部3の先端部3Aまたは根元部3Bの範囲長さを予め決められた長さに設定しておくことで、前記端子部3の根元部3Bだけを観察対象とすることができる。
【0027】
また、上記の判断部35の他の例としては、画像処理装置17による前記画像データから、図2に示されているように、上記のFPC1の端子部3の幅方向に跨ぐ複数本のカーソルライン、この実施の形態では5本のカーソルラインL1〜L5を端子部3の先端側から根元部3Bに向けて並列して設定しておき、各カーソルラインにおける端子幅のうちでほぼ一定となるカーソルラインの端子幅だけを観察対象として端子部3の位置を判断するものである。
【0028】
上記構成により、この実施の形態の回路基板の端子位置認識装置13を用いてFPC1の端子部3の導電材9を観察して端子部3の位置を認識する方法について図1を参照して説明する。
【0029】
まず、第1のFPC1Aが、端子部3に露出した導電材9を上に向けて固定台15に固定される。その後、上記のFPC1の端子部3が、図3に示されているように一方側からCCDカメラ5により撮像視野の範囲で撮像される。この撮像された画像は画像処理装置17に送られて画像処理される。
【0030】
なお、図1において、前記画像処理装置17による画像データは、例えば、端子部3に露出した導電材9として図1の左側から1番目〜4番目までの導電材9A〜9Dが映し出される。この画像の中で、例えば2番目の導電材9Bは、1番目の導電材9Aとは異なってエッチングを終えた左側エッジと右側エッジの形状が同じように良好であるので、2番目の導電材9Bを観察して端子部3の位置を認識することとする。
【0031】
2番目の導電材9Bは、図1のA部に示されているように、X方向の先端部3Aが丸まって細くなっているので、図1のB部に示されているように、導電材9Bの根元部3Bだけを観察対象として判断部35で判断し、演算装置33で前記根元部3Bの端子幅を計算する。この場合、上記の端子部3の2番目の導電材9Bの先端部3Aまたは根元部3Bの範囲長さを予め決められた長さで設定しておくことで、前記導電材9Bの根元部3Bだけを観察対象として判断することができる。
【0032】
これにより、導電材9Bの根元部3Bだけが観察対象となるので、その先端部3Aの丸まりの影響を受けずに、より高精度な画像処理が可能となる。この実施の形態では特にY方向、つまり端子配列方向の端子位置の観察精度が向上する。
【0033】
次に、他の実施の形態の回路基板の端子位置認識方法について図2を参照して説明する。前述した回路基板の端子位置認識方法とほぼ同様であるので、特に異なる部分のみを説明し、他の同様の部分の説明は省略する。
【0034】
図2を参照するに、CCDカメラ5により撮像された画像は、図1と同様に、例えば、端子部3に露出した導電材9として図1の左側から1番目〜4番目までの導電材9A〜9Dが映し出されており、2番目の導電材9Bを観察して端子部3の位置を認識することとする。
【0035】
2番目の導電材9BのX方向の先端部3Aが丸まって細くなっているので、導電材9Bの根元部3Bだけを観察対象として画像処理装置17で画像処理するために、次の手法で観察対象から外す先端部3Aの長さを決める。
【0036】
図2に示されているように、予め、2番目の導電材9Bの幅方向に跨ぐ複数本のカーソルラインを端子部3の先端側から根元部3Bに向けて並列して設定しておき、前記導電材9Bの先端から順に各カーソルラインで端子幅を演算装置33で計算する。
【0037】
上記の演算装置33で計算された端子幅を見ると、あるカーソルラインより先端側のカーソルラインにおける導電材9Bの太さは一律でなく値が異なっている。そこで、一律でない部分は導電材9Bの太さが変化していると判断し、観察対象から除外することにし、その逆に導電材9Bの太さがほぼ一定となるカーソルラインを観察対象とする。
【0038】
例えば、この実施の形態では5本のカーソルラインL1〜L5が設定されており、各カーソルラインL1〜L5における端子幅は、例えば、ラインL1が80μm、ラインL2が90μm、ラインL3が100μm、ラインL4が100μm、ラインL5が100μmであった。
【0039】
したがって、例えばラインL3より先端側は太さが80〜100μmと異なっているので観察対象から除外し、その逆にラインL3より根元側は太さがほぼ一定の約100umとなっているので、この部分を観察対象とする。
【0040】
以上のように、2番目の導電材9Bの複数の各カーソルラインL1〜L5における端子幅を検出し、丸まっていない画像処理に適した端子の範囲を認識することが可能となったので、この実施の形態では特にY方向、つまり端子配列方向の端子位置の観察精度が向上する。
【0041】
なお、前述した実施の形態では、CCDカメラ5の撮像部は、FPC1の端子部3の導電材9が露出している側から撮像しているが、絶縁フィルム7が透光性のある材質であれば端子部3の導電材9が露出していない側から撮像する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施の形態の回路基板の端子位置認識装置による画像の平面図である。
【図2】この発明の他の実施の形態の回路基板の端子位置認識装置による画像の平面図である。
【図3】この発明の実施の形態の回路基板の端子位置認識装置の縦断面図である。
【図4】制御装置のブロック構成図である。
【図5】従来の観察装置の縦断面図である。
【図6】従来の観察装置による画像の平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 FPC(回路基板)
3 端子部
3A 先端部
3B 根元部
5 CCDカメラ(撮像部)
7 絶縁フィルム(基材)
9,9A〜9D 導電材
11 オーバレジスト
13 回路基板の端子位置認識装置
15 固定台
17 画像処理装置(画像処理手段)
19 制御装置
21 レンズ
23 LED照明(照明装置)
25 CPU
27 入力装置
29 表示装置
31 メモリ
33 演算装置
L1〜L5 カーソルライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する際に、
前記端子部の導電材の根元部だけを観察対象として画像処理手段で画像処理することで、前記端子部の位置を認識することを特徴とする回路基板の端子位置認識方法。
【請求項2】
前記端子部の導電材の根元部だけを観察対象とするために、前記端子部の導電材の先端部または根元部の範囲長さを予め決められた値に設定しておくことを特徴とする請求項1記載の回路基板の端子位置認識方法。
【請求項3】
基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する際に、
前記端子部の導電材の幅方向に跨ぐ複数本のカーソルラインを端子部の導電材の先端側から根元部に向けて並列して設定し、各カーソルラインにおける端子幅のうちのほぼ一定となる端子幅だけを観察対象として画像処理手段で画像処理することで、前記端子部の位置を認識することを特徴とする回路基板の端子位置認識方法。
【請求項4】
基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する回路基板の端子位置認識装置において、
前記回路基板の端子部を撮像する撮像部と、
この撮像部で撮像された画像を処理する画像処理手段と、
この画像処理手段で処理された画像データから前記回路基板の端子部の導電材の根元部だけを観察対象として端子部の位置を判断する判断部と、
で構成されていることを特徴とする回路基板の端子位置認識装置。
【請求項5】
基材に導電材の配線パターンが形成され、端部に前記導電材を露出した端子部を有した回路基板の前記端子部の位置を認識する回路基板の端子位置認識装置において、
前記回路基板の端子部を撮像する撮像部と、
この撮像部で撮像された画像を処理する画像処理手段と、
この画像処理手段で処理された画像データから前記回路基板の端子部の導電材の幅方向に跨ぐ複数本のカーソルラインを端子部の導電材の先端側から根元部に向けて並列して設定し、各カーソルラインにおける端子幅のうちのほぼ一定となる端子幅だけを観察対象として端子部の位置を判断する判断部と、
で構成されていることを特徴とする回路基板の端子位置認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−15788(P2009−15788A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180161(P2007−180161)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】