説明

回路接続材料並びに回路端子の接続構造体及び接続方法

【課題】 低温速硬化性と貯蔵安定性に優れた回路接続材料を提供する。
【解決手段】 相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間のみを電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(3)の成分を含有する回路接続材料。
(1)ラジカル重合性物質
(2)ラジカル重合開始剤
(3)光照射によって塩基を発生する光塩基発生剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間のみを電気的に接続する回路接続材料と、回路端子の接続構造体及び接続方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂系接着剤は、高い接着強度が得られ、耐水性や耐熱性に優れること等から、電気・電子・建築・自動車・航空機等の各種用途に多用されている。
中でも一液型エポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤との混合が不必要であり使用が簡便なことから、フィルム状、ペースト状、粉体状の形態で使用されている。この場合、エポキシ樹脂と硬化剤及び変性剤との多様な組合せにより、特定の性能を得ることが一般的である。しかしながら、このようなエポキシ樹脂系のフィルム状接着剤は、作業性に優れるものの、低温速硬化性の点で不十分であった。
【0003】
低温速硬化性の接着剤として、ラジカル重合性接着剤が知られている(例えば、特許文献1)が、低温硬化性を重視した場合、分解温度(半減期温度)の低い硬化剤(過酸化物)が使用されるため、貯蔵安定性が低下する問題があった。また、エポキシ樹脂と光照射により塩基を発生するアミンイミド化合物を含む接着剤も、低温速硬化性の接着剤として提案されている(例えば特許文献2、3)。尚、この接着剤ではアミンイミド化合物はエポキシ樹脂に対する硬化剤として配合されている。
他に光照射と低温加熱による硬化方法として光カチオン硬化が提案されているが(例えば特許文献4)、金属部材への腐食及び触媒の毒性等で問題があった。
【特許文献1】WO98/44067パンフレット
【特許文献2】特開2001−279216号公報
【特許文献3】特開2003−26772号公報
【特許文献4】WO00/46315パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低温速硬化性と貯蔵安定性に優れた回路接続材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究した結果、ラジカル重合性接着剤に、ラジカル重合開始剤と共に、光照射によって塩基を発生する光塩基発生剤を組み合わせることで、光塩基発生剤由来の塩基がラジカル重合開始剤の分解を促すことにより、接着剤の低温速硬化が向上し、かつ光を遮断した場合には貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の回路接続材料等が提供される。
1.相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間のみを電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(3)の成分を含有する回路接続材料。
(1)ラジカル重合性物質
(2)ラジカル重合開始剤
(3)光照射によって塩基を発生する光塩基発生剤
2.前記光塩基発生剤がカルバミン酸エステル誘導体、オキシムエステル誘導体、アミンイミド誘導体、イミダゾリウム塩誘導体、4級アンモニウム塩誘導体、α-アミノケトン誘導体、ニフェジピン誘導体からなる群より選ばれる一以上の化合物である1記載の回路接続材料。
3.さらに、熱可塑性樹脂を含有する1または2記載の回路接続材料。
4.前記熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂から選ばれる3記載の回路接続材料。
5.さらに、導電性粒子を含有する1〜4のいずれか一項記載の回路接続材料。
6.第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に1〜5のいずれか記載の回路接続材料が介在されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみが電気的に接続されている回路端子の接続構造体。
7.第一の接続端子を有する第一の回路部材上に前記1〜5のいずれかに記載の回路接続材料を配置させ、回路接続材料の上方から光照射を行った後、第二の接続端子を有する第二の回路部材を対向して配置し、加熱しながら加圧して対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみを電気的に接続させる回路端子の接続方法。
8.第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に前記1〜5のいずれかに記載の回路接続材料を介在させ、光照射と同時に加熱しながら加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみを電気的に接続させる回路端子の接続方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低温速硬化性と貯蔵安定性に優れた回路接続材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において用いる(1)ラジカル重合性物質としては、スチレン化合物に代表されるようなラジカルによって重合する化合物であれば、特に制限無く公知のものを使用することができるが、分子内にアクリロイル基またはメタクリロイル基 (以後、(メタ)アクリロイル基と呼ぶ)を分子内に2つ以上有する化合物やマレイミド化合物が、より好ましい。
【0008】
具体的には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
これらは単独又は併用して用いることができ、必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を適宜用いてもよい。
また、ジシクロペンテニル基及び/又はトリシクロデカニル基及び/又はトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。
【0009】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4−8(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらは単独でもまた組み合わせても使用できる。
【0010】
本発明において用いる(2)ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができるが、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1,000の過酸化物が好ましい。
具体的には、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0011】
(2)ラジカル重合開始剤の添加量は、(1)ラジカル重合性物質100部に対して、ラジカル重合開始剤0.05〜30質量部であり、好ましくは0.1〜20質量部である。添加量が0.05質量部未満の場合、硬化不足が懸念され、また、30質量部を超える場合には、放置安定性が低下する恐れがある。
【0012】
本発明に用いる(3)光塩基発生剤は、光照射によって、塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けないが、カルバミン酸エステル誘導体、オキシムエステル誘導体、アミンイミド誘導体、イミダゾリウム塩誘導体、4級アンモニウム塩誘導体、α-アミノケトン誘導体、ニフェジピン誘導体が、光照射に対して効率よく塩基を発生する観点から、より好ましい。
例えば、Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints,Ed.by G. Bradley,John Wiley and Sons Ltd.(1998年)、p479〜p545に記載されているカルバミン酸エステル誘導体やオキシムエステル誘導体、4級アンモニウム塩誘導体が挙げられる。また、特開平11-71450号に記載されているα-アミノアセトフェノン誘導体やWO2002/051905号に記載されているアミンイミド誘導体、特開2003−212856号に記載されているイミダゾリウム塩誘導体、特公平1−53771号に記載されているジヒドロピリジン誘導体(以下ニフェジピン誘導体と呼ぶ)が挙げられる。
【0013】
本発明の(3)光塩基発生剤の添加量は、(1)ラジカル重合性物質100重量部に対して0.01〜200重量部が好ましく、0.02〜150重量部がさらに好ましい。光塩基発生剤が0.01重量部未満では耐熱性が低下する傾向があり、200重量部を超える場合には、フィルム物性が低下する傾向がある。
【0014】
本発明の回路接続材料は、さらに熱可塑性樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限は受けないが、樹脂の主鎖骨格あるいは側鎖に水酸基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、アミド基、イミド基、カルボンキシル基、等の極性基を含有する樹脂が接着性の観点から好ましい。具体的には、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、等が使用できる。また前記ポリマーをラジカル重合性の官能基で変性したものは耐熱性が向上するためより好ましい。
これらのポリマーの分子量は特に制限を受けるものではないが、一般的な重量平均分子量としては5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。この値が、5,000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり、また150,000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。使用量としては(1)ラジカル重合性化合物100重量部に対して20〜320重量部とすることが好ましい。
【0015】
本発明の回路接続材料は導電性粒子がなくても、接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続が得られるが、導電性粒子を含有した場合、より安定した接続が得られる。
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、十分なポットライフを得るためには、表層はAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましくAuがより好ましい。
また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)等に前記した導通層を被覆等により形成し、最外層を貴金属類、核をプラスチックとした場合や、熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
導電性粒子の使用量は、回路接続材料100体積に対して0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。この値が、0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。尚、体積%は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。
【0016】
さらに、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、アミノキシル誘導体や及びフェノール誘導体に代表される重合禁止剤を含有することもできる。
【0017】
本発明の回路接続材料は、(3)光塩基発生剤の塩基発生効率を向上させることを目的に、増感剤を併用してもよい。使用する増感剤としては、硬化性組成物に悪影響を及ぼさない限り、公知の一重項増感剤、三重項増感剤を用いることができる。例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン等の芳香族化合物誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体等が好適に用いられる。増感剤の使用量は、増感剤の吸収波長及びモル吸光係数を参考にする必要があるが、一般的に(3)光塩基発生剤1重量部に対して0.01〜5重量部であり、0.1〜2重量部が特に好ましい。増感剤が0.01重量部未満になると光吸収の効率が低くなり、5重量部を超えると硬化性組成物全体に光が届かない恐れがある。
【0018】
本発明の回路接続材料では、(3)光塩基発生剤が硬化剤として機能するよりむしろ(2)ラジカル重合開始剤の分解を促進することにより、回路接続材料全体の反応を進め、その結果、低温速硬化性が向上する。通常、ラジカル重合開始剤の分解は、塩基性化合物によって促進されるものの、塩基性化合物そのものを添加した場合、保存安定性が低下する。そこで、本発明では、光照射によって塩基性化合物を発生させることによって、保存安定性と低温速硬化が可能となる。
【0019】
本発明の接続方法は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の回路接続材料を介在させ、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみを電気的に接続させる。
このような回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板等が用いられる。回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。
【0020】
より良好な電気的接続を得るためには、回路電極(接続端子)の少なくとも一方の表面を、金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属にすることが好ましい。表面層は金、銀、白金族、又は錫のいずれかから選択され、これらを組み合わせて用いてもよい。また、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせて多層構成としてもよい。
【0021】
接続方法としては、第一の接続端子を有する第一の回路部材上に回路接続材料を仮圧着にて配置させた後、回路接続材料の上方から光照射を行った後、第二の接続端子を有する第二の回路部材を対向して配置し、加熱しながら加圧して接着させることができる。
また、第一の回路部材が紫外域から可視域にかけて透明な基材の場合には、第一の接続端子を有する第一の回路部材上に回路接続材料を仮圧着にて配置させた後、第二の接続端子を有する第二の回路部材を対向して配置し、第二の回路部材上から加熱、加圧すると共に第一の回路部材下方から光照射を行って接着させることができる。
硬化条件は、通常、加熱の場合、0.1〜10MPaの加圧下で、100〜200℃で1秒〜120秒であるが、これに限定されるものでない。光照射は、150〜750nmの波長域の照射光が好ましく、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプを使用することができ、光照射量としては365nm照度換算で0.01〜10J/cmであるが、これに限定されるものでない。
【0022】
本発明の回路接続材料は、常温(25℃)で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、硬化性に悪影響を及ぼさず、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満の場合、室温で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃を超えると、溶剤の除去が難しくなる恐れがある。
【0023】
本発明の回路接続材料はフィルム状にして用いることもできる。接着材組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
<カルバミン酸エステルの合成>
2,4−ジニトロベンジルアルコール (2.00g、10mmol)および1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(0.10g、0.6mmol)をテトラヒドロフラン20g中に溶解し、シクロヘキシルイソシアネート
(1.27g、10mmol)を室温で滴下した。滴下終了後室温で48時間攪拌したところ、白色沈殿が生成した。これを濾別した後、酢酸エチルで再結晶を行い、真空乾燥機で乾燥させてカルバミン酸エステル化合物を得た。収量2.23g、収率68%であった。
【0026】
<オキシムエステルの合成>
9−フルオレノンオキシム (2.00g、10mmol)およびピリジン (0.80g、10mmol)をテトラヒドロフラン20g中に溶解し、ジエチルカルバモイルクロリド
(1.36g、10mmol)を氷浴で冷却しながらで滴下した。滴下終了後室温で24時間攪拌したところ、白色沈殿が生成した。これに水を200g加えると淡黄色沈殿が析出した。これを濾別した後、アセトンで再結晶を行い、真空乾燥機で乾燥させてオキシムエステル化合物を得た。収量2.58g、収率88%であった。
【0027】
<アミンイミドの合成>
p-ニトロ安息香酸メチルエステル(2.00g、11mmol)、N,N−ジメチルヒドラジン(0.66g、11mmol)、フェニルグリシジルエーテル(1.66g、11mmol)をtert−ブタノール(15.0g)に添加し、50℃で10時間攪拌した後、さらに室温(25℃)で48時間攪拌したところ、白色沈殿が生成した。これを濾別した後、酢酸エチルで2度洗浄し、真空乾燥機で乾燥させてアミンイミド化合物を得た。収量3.67g、収率85%であった。
【0028】
<イミダゾリウム塩の合成>
p−ニトロフェナシルブロマイド (2.00g、8.2mmol)をアセトン(20g)に溶解させ、これにアセトン(5g)に溶解させた1,2−ジメチルイミダゾール(0.79g、8.2mmol)の溶液をゆっくり添加し、この後、室温で2時間攪拌したところ、白色結晶が析出した。これをろ過し、アセトンで2度洗浄を行った後、真空下60℃で5時間乾燥して、イミダゾリウム・ブロマイド塩を得た(収量2.62g)。
上記イミダゾール・ブロマイド塩(2.00g、5.8mmol)を、メタノール/水(15g/15g)溶液に溶解させ、これに水(5.0g)に溶解させたテトラフェニルほう酸ナトリウム塩(2.01g、5.8mmol)の溶液をゆっくり添加した。添加とともに、白色スラリー状の析出が認められ、添加後、さらに室温で5時間攪拌した。これをろ過し、アセトン(20g)に溶解させて再結晶を行い、目的のイミダゾリウム・テトラフェニルほう酸塩(イミダゾリウム塩)を得た(収量3.23g)。
【0029】
<4級アンモニウム塩の合成>
p−ニトロフェナシルブロマイド (2.00g、8.2mmol)をアセトン(20g)に溶解させ、これにアセトン(5g)に溶解させたN,N-ジメチルベンジルアミン(1.10g、8.2mmol)の溶液をゆっくり添加し、この後、室温で2時間攪拌したところ、白色結晶が析出した。これをろ過し、アセトンで2度洗浄を行った後、真空下60℃で5時間乾燥して、アンモニウム・ブロマイド塩を得た(収量2.73g)。
上記アンモニウム・ブロマイド塩(2.00g、5.3mmol)を、メタノール/水(15g/15g)溶液に溶解させ、これに水(5.0g)に溶解させたテトラフェニルほう酸ナトリウム塩(1.84g、5.3mmol)の溶液をゆっくり添加した。添加とともに、白色スラリー状の析出が認められ、添加後、さらに室温で5時間攪拌した。これをろ過し、アセトン(20g)に溶解させて再結晶を行い、目的の4級アンモニウム塩を得た(収量2.98g)。
【0030】
(実施例1〜7、比較例1〜2)
熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂及びウレタン樹脂を使用した。フェノキシ樹脂(PKHC、ユニオンカーバイト社製商品名、平均分子量45,000)40gを、メチルエチルケトン60gに溶解して、固形分40重量%の溶液とした。また、ウレタン樹脂は、平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール450重量部と平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール450重量部、1,4−ブチレングリコール100重量部をメチルエチルケトン4000重量部中で均一に混合し、ジフェニルメタンジイソシアネート390重量部を加えて70℃にて反応させて得られた重量平均分子量15万のウレタン樹脂を使用した。(1)ラジカル重合性物質として、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亜合成株式会社製商品名)、ウレタンアクリレート(AT−600、共栄社化学株式会社製商品名)及び2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ライトエステルP-2M、共栄社株式会社製商品名)、(2)ラジカル重合開始剤として10時間半減期温度が73.1℃であるジ-(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド(ナイパーBMT、日本油脂株式会社製商品名)、(3)光塩基発生剤として表1に示す化合物を用いた。またポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
固形重量比で表1に示すように配合し、さらに導電性粒子を1.5体積%配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤を得た。
【0031】
【表1】

α-アミノケトン:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン−1
ニフェジピン:ジメチル 2,6−ジメチル−4−(o-ニトロフェニル)-1,4−ジヒドロ−3,5−ピリジンジカルボキシレート
【0032】
〔接着強度、接続抵抗の測定〕
上記製法によって得たフィルム状接着剤を用いて、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(TCP)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて130℃の温度で3MPaで10秒間の加熱加圧を行って幅2mmにわたり接続し、接続体を作製した。この時、あらかじめITOガラス上に、フィルム状回路接続材料の接着面を70℃、1MPaで3秒間加熱加圧して仮接続した後、フッ素樹脂フィルムを剥離し、回路接続用組成物からなるフィルム面に、高圧水銀ランプを有する紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社製)を用いて1.0J/cmの紫外線を照射した。その後、もう一方の被着体であるFPCと接続し接続体を作製した。この接続体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した後にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗37点の平均で示した。
【0033】
また、この接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。
【0034】
以上のようにして行った接続体の接着強度、接続抵抗の測定の結果を表2に示した。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例1〜7で得られた接着剤組成物は、加熱温度130℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した後で、良好な接続抵抗及び接着強度を示し、良好な特性を示すことが分かった。本発明における光塩基は発生剤を使用しない比較例1では、接着直後の接続抵抗値が高く、85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した場合には、急激な接続抵抗の上昇がみられた。また、接着力についても実施例1〜7と比較して低下し、本発明の光塩基発剤を用いることで、低温硬化性と高い信頼性を確保できることが明らかになった。
【0037】
(比較例2)
実施例4で得られたフィルム状接着剤の接続体作製の際に、紫外線照射を省略した以外は実施例4と同様にTCPとITOとを130℃、3MPa、10sで加熱圧着した。以上のようにして得られた接続体の接着強度、接続抵抗を測定したところ、接続抵抗は4.6Ω、接着強度は150N/mを示し、接続抵抗、接着強度とも紫外線照射を行った実施例4と比較して悪化した。
【0038】
(実施例8)
実施例1で得られたフィルム状接着剤を、真空包装を施して、40℃で3日間放置した後、実施例1と同様にTCPとITOとを130℃、3MPa、10sで加熱圧着を行った。以上のようにして行った接続体の接着強度、接続抵抗を測定したところ、接着強度は780N/m、接続抵抗は1.5Ωを示し、放置安定性に優れることが分かった。
【0039】
(比較例3)
比較例1のラジカル重合開始剤を10時間半減期温度が40.3℃であるジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルNPP、日本油脂株式会社製商品名)に変更した以外は、比較例1と同様にフィルム状接着剤を作成し、真空包装を施して、40℃で3日間放置した後、放置前後のフィルム状接着剤を実施例1と同様にTCPとITOとを130℃、3MPa、10sで加熱圧着を行った。以上のようにして行った接続体の接着強度、接続抵抗の測定の結果を表3に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
比較例3のフィルム状接着剤は、放置前は接続抵抗、接着強度とも良好な特性を示したものの、40℃で3日放置後は抵抗が上昇し、かつ接着強度は低下した。この結果から、40℃放置中に硬化が進行し、放置安定性に劣ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の回路接続材料は、電気・電子用の異方性接着剤等として、幅広く使用できる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間のみを電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(3)の成分を含有する回路接続材料。
(1)ラジカル重合性物質
(2)ラジカル重合開始剤
(3)光照射によって塩基を発生する光塩基発生剤
【請求項2】
前記光塩基発生剤がカルバミン酸エステル誘導体、オキシムエステル誘導体、アミンイミド誘導体、イミダゾリウム塩誘導体、4級アンモニウム塩誘導体、α-アミノケトン誘導体、ニフェジピン誘導体からなる群より選ばれる一以上の化合物である請求項1記載の回路接続材料。
【請求項3】
さらに、熱可塑性樹脂を含有する請求項1または請求項2記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂から選ばれる請求項3記載の回路接続材料。
【請求項5】
さらに、導電性粒子を含有する請求項1〜4のいずれか一項記載の回路接続材料。
【請求項6】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1〜5のいずれか一項記載の回路接続材料が介在されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみが電気的に接続されている回路端子の接続構造体。
【請求項7】
第一の接続端子を有する第一の回路部材上に請求項1〜5のいずれか一項記載の回路接続材料を配置させ、回路接続材料の上方から光照射を行った後、第二の接続端子を有する第二の回路部材を対向して配置し、加熱しながら加圧して対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみを電気的に接続させる回路端子の接続方法。
【請求項8】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1〜5のいずれか一項記載の回路接続材料を介在させ、光照射と同時に加熱しながら加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみを電気的に接続させる回路端子の接続方法。

【公開番号】特開2007−45900(P2007−45900A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230620(P2005−230620)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】