説明

回転機器

【課題】耐衝撃性を維持しながら軽量化または薄型化に好適な回転機器を提供する。
【解決手段】記録ディスク8が載置されるべきハブ28とシャフト26とを有する回転体6と、スリーブ15とハウジング13とベース4とを有する固定体7と、を備える。回転体6と固定体7とに連続して潤滑剤40が介在する。スリーブ15は焼結金属から形成される。ハウジング13は環囲壁部13aとフランジ部13cと底部13bとがプレス加工により一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブとハウジングとを有する流体軸受けを備える回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブなどのディスク駆動装置は、小型化、大容量化が進み、種々の電子機器に搭載されている。特にノートパソコンなどの携帯型の電子機器へのディスク駆動装置の搭載が進んでいる。このような携帯型の電子機器に搭載されるディスク駆動装置に対しては、デスクトップPC(Personal Computer)などの据置型の電子機器に搭載されるものと比べて、持ち運びに有利な軽量化や薄型化が求められている。
【0003】
このような電子機器に搭載される回転機器としては、記録ディスクが搭載されるべきハブと一体で回転するシャフトを回転自在に収納する円筒部材を備えたものがある。このような回転機器では、円筒部材中の流体に動圧を発生させて、シャフトをこの動圧で非接触で支持する。(例えば特許文献1、2、3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−8851号公報
【特許文献2】特開2010−244626号公報
【特許文献3】特開2006−234161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような回転機器では、スリーブの外周に張り出しているフランジ部と、ハブの内周に張り出している内側張出部材とが設けられている。フランジ部と内側張出部材とは、回転機器が衝撃を受けた際にハブが軸方向に抜けないように作用する。
【0006】
回転機器を軽量化する方法として、スリーブなどの構成部材を焼結金属から形成するものがある。焼結金属は、金属を主成分とする粉末を圧縮成型した後、高温で焼き固めて形成される。したがって焼結金属は内部に空孔を有する。この結果、焼結金属は空孔の分だけ軽量になる。しかし一方で、焼結金属は空孔の分だけ機械的強度が小さくなる。
【0007】
発明者は、焼結金属から形成したスリーブを搭載した特許文献1の記載の回転機器に衝撃を加えた場合についてシミュレーションを実施した。この結果、回転機器に衝撃を加えると内側張出部材がフランジ部に衝突し、この際にフランジ部が変形することが確認された。また、回転機器の薄型化のためにフランジ部を薄く形成すると、フランジ部の強度は低くなり、一層耐衝撃性が低下する懸念がある。つまりフランジ部の変形を抑制することが、回転機器の軽量化または薄型化の課題であると認識された。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は軽量化または薄型化に好適な回転機器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、回転機器に関する。この回転機器は、記録ディスクが載置されるべきハブと、一端側が前記ハブに固定されたシャフトと、を有する回転体と、前記シャフトを環囲して回転自在に支持するスリーブと、前記スリーブを環囲して固定するハウジングと、前記ハウジングを固定するベースと、を有する固定体と、を備える。
前記回転体と前記固定体とに連続して潤滑剤が介在している。前記スリーブは、焼結金属から形成され、前記ハウジングは、前記スリーブを環囲する環囲壁部と、前記環囲壁部の前記ハブ側の端から半径方向外側に突出しているフランジ部と、前記環囲壁部の前記ベース側の端を塞いでいる底部と、がプレス加工により一体に形成される。
【0010】
この態様によると、フランジ部が環囲壁部と一体でプレス加工により形成されるから、フランジ部を薄く形成してもフランジ部の強度の低下を抑制できる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軽量化または薄型化に好適な回転機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態に係る回転機器を示す図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2のうちハウジングの周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。 実施の形態に係る回転機器は、記録ディスクを搭載しそれを回転駆動するハードディスクドライブなどのディスク駆動装置として好適に用いられる。
【0015】
図1は、実施の形態に係る回転機器100を示す図である。なお、図1は、内部構成を露出させるために、トップカバー(不図示)を外した状態の回転機器100の上面図である。回転機器100は、記録ディスク8と、記録ディスク8を載置するハブ28と、ハブ28に固定されたシャフト26と、を含む。記録ディスク8はハブ28の回転と一体に回転する。回転機器100は、回転しないベース4と、データリード/ライト部10と、トップカバーと当該トップカバーを固定する複数のねじ(不図示)とを含む。
以降ベース4に対してハブ28が搭載される側を上側として説明する。
【0016】
記録ディスク8は、直径が65mmのガラス製の2.5インチ型記録ディスクであり、その中央の孔の直径は20mm、厚みは0.65mmである。ハブ28は2枚の記録ディスク8を搭載する。
ベース4は、回転機器100の底部を形成する底板部4aと、記録ディスク8の載置領域を囲むように底板部4aの外周に沿って形成された外周壁部4bと、を有する。
【0017】
データリード/ライト部10は、記録再生ヘッド(不図示)と、スイングアーム14と、ボイスコイルモータ16と、ピボットアセンブリ18と、を含む。記録再生ヘッドは、スイングアーム14の先端部に取り付けられ、記録ディスク8にデータを記録し、記録ディスク8からデータを読み取る。ピボットアセンブリ18は、スイングアーム14をベース4に対してヘッド回転軸Sの周りに揺動自在に支持する。ボイスコイルモータ16は、スイングアーム14をヘッド回転軸Sの周りに揺動させ、記録再生ヘッドを記録ディスク8の上面上の所望の位置に移動させる。ボイスコイルモータ16およびピボットアセンブリ18は、ヘッドの位置を制御する公知の技術を用いて構成される。
【0018】
図2は、図1のA−A線断面図である。回転機器100は、回転しない固定体7と、回転する回転体6と、固定体7と回転体6とに介在する潤滑剤40と、を備えている。固定体7は、ベース4、ハウジング13、スリーブ15、ステータコア11、コイル12、固定側リング27を含む。ステータコア11には、コイル12が巻きつけられている。回転体6は、シャフト26、ハブ28、円盤部材19、円筒部材20、マグネット21を含む。なお、以下の説明では、全体として、便宜上、図2におけるベース4を基準にハブ28の設けられる方向を上と表現するとともに、反対の方向を下と表現する。
【0019】
ベース4は、中心部分の軸受孔4aと、軸受孔4aを囲むように設けられた円筒部4bとを有する。ベース4は、軸受孔4aにハウジング13を固定して支持する。ハウジング13を環囲する円筒部4bの外周側には、ステータコア11が接着固定される。ベース4は、アルミダイキャストを切削加工して形成される。ベース4は、アルミ板またはニッケルメッキを施した鉄板をプレス加工して形成されてもよい。ベース4は、所望の仕様を満足するように別の材料又は別の製造方法により形成されてもよい。
【0020】
ステータコア11は、ケイ素鋼板等の磁性材を積層して形成される。ステータコア11の表面には、電着塗装や粉体塗装等による絶縁コーティングが施される。ステータコア11は、円環部と当該円環部から外方向に突出する9極の突極(図示せず)を有する。ステータコア11は、所望の仕様を満足するように別の突極数であってもよい。各突極には、コイル12が巻回されている。コイル12の巻き線端末は、ベース4の底面に配設された所定の駆動回路(図示せず)に接続される。コイル12に駆動回路から3相の略正弦波状の電流がコイル12に通電される。
【0021】
ハブ28は、中心部分に設けられた中心孔28aと、当該中心孔28aを囲むように設けられた内側円筒部28bと、当該内側円筒部28bの外側に配設される外側円筒部28cと、外側円筒部28cの下端にハブ28の半径方向に外延されたハブ外延部28dとを含んでいる。ハブ28は、略カップ状の形状に形成される。ハブ28は軟磁性を有する。ハブ28は、JIS名SUS430F等の鉄鋼材料が用いられる。ハブ28は、鉄鋼板をプレス加工あるいは切削加工することにより形成される。ハブ28は、所望の仕様を満足するように別の材料又は別の製造方法により形成されてもよい。ハブ28の外側円筒部28cの外周面には、記録ディスク8の中心孔が係合する。ハブ28のハブ外延部28dには、記録ディスク8が載置される。
【0022】
シャフト26は略円筒形状である。シャフト26は、JIS名SUS420J2等のステンレス材料で形成される。シャフト26は、所望の仕様を満足するように別の材料により形成されてもよい。シャフト26は、上端側にネジ孔26aが形成される。ネジ孔26aにクランパー(不図示)の中心穴を貫通してねじが螺合されることによって、クランパーがシャフト26の上端に固定される。クランパーの外周部は記録ディスク8を押さえる。シャフト26は、ハブ28の中心孔28aに締り嵌めにより固定される。シャフト26は、所望の仕様を満足するように接着などの別の製造方法により固定されてもよい。シャフト26の上端部には、段状にされた段部26cが設けられている。ハブ28の中心孔28aの下端は、当該段部26cに接するように固定される。ハブ28は、段部26cにより軸方向の移動を規制される。なお、軸方向とは回転軸Rに沿った方向をいう。ハブ28は、所定の直角度でシャフト26と一体化される。シャフト26の先端部側は、スリーブ15の内周面15aに収納される。
【0023】
マグネット21は、略リング形状である。マグネット21は、Nd−Fe−B(ネオジウム−鉄−ボロン)系の材料で形成される。マグネット21の表面は、電着塗装やスプレー塗装が施される。マグネット21は、ハブ28の外側円筒部28cの内周面に接着固着される。マグネット21の内周面には12極の磁極を備える。マグネット21は、所望の仕様を満足するように別の極数を備えてもよい。マグネット21は、ベース4に固定されたステータコア11の外周面を環囲している。マグネット21の内周面とステータコア11の外周面との間には隙間が形成される。当該隙間は、例えば0.2〜0.8mmである。
【0024】
コイル12に駆動回路から電流が通電されることにより、ステータコア11の突極に、駆動磁界を発生する。当該駆動磁界とマグネット21の磁極の磁界との相互作用により、回転駆動力が生じる。この回転駆動力により、ハブ28は、シャフト26と一体に回転する。そして、ハブ28は、記録ディスク8を回転させる。
【0025】
図3は、図2のハウジング13の周辺を拡大した断面図である。
スリーブ15は円筒形状である。スリーブ15は、接着または圧入により、ハウジング13の内周面13abに固定される。スリーブ15は、内周面15aにシャフト26を収納する。スリーブ15の内周面15aにラジアル動圧発生溝30が形成される。ラジアル動圧発生溝30は、スリーブ15の内周面15aの代わりにシャフト26の外周面26bに形成されてもよい。ラジアル動圧発生溝30は、シャフト26とスリーブ15が相対的に回転することにより、潤滑剤40にラジアル動圧を発生する。ラジアル動圧発生溝30はヘリングボーン形状にされる。ラジアル動圧発生溝30はスパイラル形状または別の形状であってもよい。スリーブ15は、金属を主成分とする粉末を焼結して形成される。本実施の形態においては、スリーブ15は、鉄を主成分とする粉末を焼結後、表面に四酸化三鉄の被膜が付着されて形成される。具体的にはスリーブ15は粉末冶金工程によって形成された後、高温の水蒸気中に晒されて酸化膜が形成される。寸法精度の高い同形状のスリーブを大量生産しやすい点で有利である。スリーブ15は、所望の仕様を満足するように別の材料又は別の製造方法により形成されてもよい。
【0026】
ハウジング13は、スリーブ15の少なくとも一部を収納している。ハウジング13は、環囲壁部13aと底部13bとフランジ部13cとを含んでいる。環囲壁部13aはスリーブ15を環囲する。底部13bは環囲壁部13aの下側の端部を塞ぐ。フランジ部13cは、環囲壁部13aのハブ28側端に半径方向外側に突出して設けられる。本実施の形態においては、ハウジング13は、JIS名SUS303のステンレス板から環囲壁部13aと底部13bとフランジ部13cとがプレス加工により一体に形成される。ハウジング13は、所望の仕様を満足するように別の材料又は別の製造方法により形成されてもよい。ハウジング13は、金属板をプレス加工した後、切削加工して形成してもよい。所望の形状を高い精度で形成することができる。また、無電解ニッケルメッキ等の表面処理が施されてもよい。ハウジング13は、ベース4の軸受孔4aに接着固定される。
【0027】
本実施の形態においては、回転機器100は固定側リング部材27と円盤部材19とを含む。固定側リング部材27は、略リング形状でハウジング13を環囲して固定される。固定側リング部材27は、環囲壁部13aの外周面13aaに接着固定される。固定側リング部材27は、締り嵌め等の別の方法により固定されてもよい。固定側リング部材27の上面27bとフランジ部13cの下面13cbの間には空間が形成される。円盤部材19は、当該空間でハブ28と一体に回転する。固定側リング部材27は、金属材料や樹脂材料で形成することができる。例えば、固定側リング部材27は、ステンレス材料を切削加工して形成することができる。固定側リング部材27は、ハウジング13と同じ材料で形成してもよい。固定側リング部材27の外周面27aは、下向きに徐々に縮形している。
【0028】
円筒部材20は、略円筒状である。円筒部材20は、ハブ28の内側円筒部28bの内周面28baに接着固定される。円筒部材20の内周面20aは、下側に向かって徐々に縮径している。円筒部材20は、JIS名SUS303やSUS430F等のステンレス材料から切削加工により形成される。円筒部材20は、所望の仕様を満足するように別の金属材料や樹脂材料又は別の製造方法により形成されてもよい。
【0029】
円筒部材20と固定側リング部材27とには、外周面27aと内周面20aとの隙間が下方向に向かって徐々に広がる隙間である、キャピラリーシール42が形成される。キャピラリーシール42は、毛細管現象により潤滑剤40の漏れ出しを抑制する。固定側リング部材27と円筒部材20とは、外周面27aと内周面20aとの間に潤滑剤40の気液界面41が設けられる。潤滑剤40の気液界面41は、固定側リング部材27の外周面27aと円筒部材20の内周面20aとに接する。キャピラリーシール42の出口付近には発油剤が付着される。漏れ出した潤滑剤40が当該発油剤に弾かれて気液界面41に戻ることにより潤滑剤40の減耗を抑制しうる。
【0030】
ハブ28の内側円筒部28bの内周面28baには、円盤部材19が接着固定される。円盤部材19は、フランジ部13cのベース4側の空間でハブ28と一体に回転する。円盤部材19の上面19aの一部は、ハブ28の下面28eに接している。円盤部材19は、JIS名SUS303やSUS430F等のステンレス材料から切削加工により円筒部材20と一体に形成される。円盤部材19は、所望の仕様を満足するように別の金属材料や樹脂材料又は別の製造方法により形成されてもよい。円盤部材19と円筒部材20とは別々に形成されてもよい。円盤部材19と円筒部材20とは分離してハブ28に固定されてもよい。
【0031】
ハブ28のベース4側の下面28fと、フランジ部13cのハブ28側の上面13caと、フランジ部13cのベース4側の下面13cbと、円盤部材19のハブ28側の上面19aと、円盤部材19のベース4側の下面19bと、固定側リング部材27のハブ28側の上面27bと、の少なくともいずれかにはスラスト動圧を発生するスラスト動圧発生溝が形成される。スラスト動圧発生溝はスパイラル形状に形成される。スラスト動圧発生溝はヘリングボーン形状又はその他の別の形状であってもよい。スラスト動圧発生溝は潤滑剤40にスラスト方向の動圧を発生する。スラスト動圧は、回転体6を非接触で固定体7からスラスト方向に支持する。
【0032】
回転機器100は、スリーブ15の上端面15cと下端面15dとを連通する連通路BPを含む。連通路BPには潤滑剤40が満たされる。連通路BPはスリーブ15の上端面15cと下端面15dとの圧力差を小さくする。連通路BPは、スリーブ15の外周面15bに軸方向の溝である溝部15eとして形成される。連通路BPは、スリーブ15を上下に貫通する孔として形成してもよい。連通路BPの内側表面が腐食して膨潤することがある。当該膨潤することにより、最悪の場合に連通路BPが詰まることがある。これに対応して、連通路BPの内側表面には、腐食を防止する表面処理が施される。本実施の形態においては、スリーブ15は鉄を主成分とする焼結金属から形成され、溝部15eの表面に四酸化三鉄の被膜が形成される。
【0033】
スリーブ15は焼結体であるから内部に表面と連通する空孔を有することがある。温度上昇により焼結体が膨張すると当該空孔も膨張して、表面の潤滑剤40を吸い込む。この結果、ラジアル動圧発生溝30の周辺などに存在する潤滑剤40の量が減少する。潤滑剤40の量が減少すると動圧の発生が不安定になり、回転体6の正常な回転の障害となることがある。これに対応して、ハウジング13の内部に潤滑剤40の溜まり部17が設けられる。回転体6と固定体7とに介在する潤滑剤40の総量が多くなるから、潤滑剤40がスリーブ15に吸収されることによる影響が相対的に小さくなる。具体的には、ハウジング13の環囲壁部13aの内周面13abには、スリーブ15が挿入された状態でスリーブ15の下端面15dと軸方向に対向するように半径方向内側に突出した段状である段部13fが設けられる。段部13fの半径方向内側の領域には潤滑剤40を保持する溜まり部17が設けられる。段部13fはプレス加工などの塑性加工により形成されうる。段部13fは、環囲壁部13aが形成された後、連続して加工して形成することにより加工の手間が少なくて済む。段部13fは下端面15dの少なくとも一部と接するように設けられてもよい。スリーブ15の軸方向の位置決めが容易になる。
【0034】
固定側リング27の上面27bがフランジ部13cの下面13cbに接近しすぎると、上面27bが円盤部材19の下面19bに接触して正常な回転を妨げることがある。これに対応して、固定側リング27の軸方向の移動を規制する手段が設けられる。具体的には、ハウジング13の環囲壁部13aの外周面に半径方向外側に突出した突部13hが設けられる。ハウジング13の突部13hは、固定側リング27に貫挿された状態で固定側リング27のハブ28側の上面27bと接する。突部13hはプレス加工などの塑性加工により形成される。突部13hは、環囲壁部13aが形成された後、連続して加工することにより加工の手間が少なくて済む。
【0035】
スリーブ15を環囲壁部13aの内周面13abに挿入する際の挿入抵抗が大きすぎると、スリーブ15が傾いて固定されることがある。これに対応して、環囲壁部13aの内周面13abは挿入抵抗を小さくする手段が設けられる。具体的には、ハウジング13の環囲壁部13aの内周面13abにハブ28側に向かって徐々に拡径する傾斜が設けられる。この結果、スリーブ15の挿入抵抗が小さくなるからスリーブ15の傾きが抑制される。
【0036】
また、環囲壁部13aの内周面13abの周方向の表面粗度が小さいと、環囲壁部13aの中におけるスリーブ15の回転強度が小さくなることがある。当該回転強度が小さいとスリーブ15が環囲壁部13aから外れて、正常な回転を妨げることがある。一方で、内周面13abの軸方向の表面粗度が大きいと、スリーブ15の挿入抵抗が大きくなり、スリーブ15が傾いて固定されることがある。つまり、回転方向の表面粗度は大きい方が好ましく、軸方向の表面粗度は小さい方が好ましい。このため本実施の形態においては、環囲壁部13aの内周面13abは、軸方向に測定した表面粗度が周方向に測定した表面粗度より小さく形成される。この結果、スリーブ15の回転強度の低下を抑制しながら、スリーブ15の挿入抵抗を小さくしうる。
【0037】
なお本実施の形態においては、環囲壁部13aの内周面13abは、軸方向に測定した表面粗度が底部13bのハブ28側上面を周方向に測定した表面粗度より小さく形成される。
【0038】
ハウジング13の底部13bの肉厚が薄すぎると、回転機器100を製造する際に、底部13bが製造設備等に衝突した場合に変形を生じ易くなる。環囲壁部13aの底部13bが変形すると正常な回転を妨げることがある。一方で、ハウジング13の環囲壁部13aの厚みが厚くなると、その分だけ回転機器の外形が大きくなる。このため本実施の形態においては、ハウジング13は、底部13bの軸方向厚み寸法が環囲壁部13aの半径方向厚み寸法より大きく形成される。底部13bが変形する可能性を軽減しながら回転機器の外形が大きくなることを抑制しうる。なお、環囲壁部13aの半径方向厚み寸法とは突部13hを除いた部分の半径方向厚み寸法をいう。
【0039】
ハウジング13のフランジ部13cの肉厚が薄すぎると、フランジ部13cがハブ28に衝突した場合に変形を生じ易くなる。フランジ部13cが変形すると正常な回転を妨げることがある。このため本実施の形態においては、ハウジング13は、フランジ部13cの軸方向の厚み寸法が環囲壁部13aの半径方向厚み寸法より大きく形成される。フランジ部13cが変形する可能性を軽減しうる。
【0040】
ハウジング13の環囲壁部13aの肉厚が厚すぎると、その分回転機器の外形が大きくなる。逆に、回転機器の外形が一定の場合には、スリーブ15の周壁が薄く形成されることが一般的である。当該周壁が薄くなると、スリーブ15がハウジング13に挿入される際に、スリーブ15の内周面15aに形成されたラジアル動圧発生溝30に変形を生じる懸念がある。このため本実施の形態においては、ハウジング13は、環囲壁部13aの半径方向厚み寸法がスリーブ15の半径方向厚み寸法より小さく形成される。ラジアル動圧発生溝30の変形が軽減されうる。
【0041】
ハウジング13は、環囲壁部13aの肉厚を薄くすると、ベース4の軸受孔4aに挿入される際に変形を生じる懸念がある。このため本実施の形態においては、ハウジング13の環囲壁部13aは底部13bより硬く形成される。またハウジング13は、環囲壁部13aがスリーブ15より硬く形成される。例えば、環囲壁部13aに底部13bより大きな応力を加えて加工してもよい。環囲壁部13aの変形の懸念を軽減できる。
【0042】
以上、実施の形態に係る回転機器100の構成と動作について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0043】
実施の形態では、マグネット21がステータコア11の外側に位置する、いわゆるアウターロータ型の場合について説明したが、これに限られない。たとえばマグネットがステータコアの内側に位置する、いわゆるインナーロータ型であってもよい。
【0044】
実施の形態では、ステータコア11に積層したコアを用いる場合について説明したが、コアは積層コアでなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
4 ベース、 6 回転体、 7 固定体、 8 記録ディスク、 10 データリード/ライト部、 13 ハウジング、 13f 段部、 13h 突部、 14 スイングアーム、 15 スリーブ、 15e 溝部、 16 ボイスコイルモータ、 17 溜まり部、18 ピボットアセンブリ、 19 円盤部材、 20 円筒部材、26 シャフト、 27 固定側リング部材、 28 ハブ、 40 潤滑剤、 41 気液界面、 42キャピラリーシール、 BP 連通路、 R 回転軸、 S ヘッド回転軸、 100 回転機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ディスクが載置されるべきハブと、一端側が前記ハブに固定されたシャフトと、を有する回転体と、
前記シャフトを環囲して回転自在に支持するスリーブと、前記スリーブを環囲して固定するハウジングと、前記ハウジングを固定するベースと、を有する固定体と、を備え、
前記回転体と前記固定体とに連続して潤滑剤が介在し、
前記スリーブは、焼結金属から形成され、
前記ハウジングは、前記スリーブを環囲する環囲壁部と、前記環囲壁部の前記ハブ側の端から半径方向外側に突出しているフランジ部と、前記環囲壁部の前記ベース側の端を塞いでいる底部と、がプレス加工により一体に形成されることを特徴とする回転機器。
【請求項2】
前記固定体は、前記ハウジングを環囲して固定される固定側リング部材を含み、
前記回転体は、前記フランジ部と前記固定側リング部材との間の軸方向の空間で前記ハブと一体に回転する円盤部材を含み、
前記潤滑剤の気液界面は、前記固定側リング部材の外周面に接することを特徴とする請求項1に記載の回転機器。
【請求項3】
前記回転体は、前記ハウジングを環囲して前記ハブと一体に回転する円筒部材を含み、
前記潤滑剤の気液界面は、前記円筒部材の内周面に接することを特徴とする請求項2に記載の回転機器。
【請求項4】
前記スリーブの外周面には回転軸に沿った方向の溝が設けられ、当該溝の表面には、四酸化三鉄の被膜が付着されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回転機器。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記環囲壁部の内周面に前記スリーブが挿入された状態で前記スリーブの前記ベース側の端面と軸方向に対向するように半径方向内側に突出した段部が設けられ、
前記段部の半径方向内側の領域には前記潤滑剤が保持される溜まり部が設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転機器。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記環囲壁部の外周面に前記固定側リングに貫挿された状態で前記固定側リングの前記ハブ側上面と契合するように半径方向外側に突出した突部が設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の回転機器。
【請求項7】
前記ハウジングの前記環囲壁部の内周面は、軸方向に測定した表面粗度が周方向に測定した表面粗度より小さく形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の回転機器。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記底部の軸方向厚み寸法が前記環囲壁部の半径方向厚み寸法より大きく形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の回転機器。
【請求項9】
前記ハウジングは、前記環囲壁部の半径方向厚み寸法が前記スリーブの半径方向厚み寸法より小さく形成されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の回転機器。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記環囲壁部が前記底部より硬く形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の回転機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−237327(P2012−237327A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105024(P2011−105024)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(508100033)アルファナテクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】