回転電機
【課題】 低中速回転域では発電電力を増加し、高速回転域では過電圧の発生を有効に防止した、小型、安価でかつ高出力の回転電機を提供する。
【解決手段】 回転子8と電機子23とを有し、回転子8は界磁巻線16を有する円筒部18a,19aと、クローポール形の磁極部18b,19bとを備えた回転子鉄心18,19を有し、この回転子鉄心18,19の周方向において互いに隣接する各磁極部18b,19bの間には、回転子8の回転に伴って作用する遠心力により、高透磁率の材料からなる磁性板37が回転子鉄心18,19の径方向に向けて可動して界磁巻線16と共に電機子鉄心24に磁束を供給する永久磁石36のN極とS極間を短絡させる磁気短絡機構32が設けられている。
【解決手段】 回転子8と電機子23とを有し、回転子8は界磁巻線16を有する円筒部18a,19aと、クローポール形の磁極部18b,19bとを備えた回転子鉄心18,19を有し、この回転子鉄心18,19の周方向において互いに隣接する各磁極部18b,19bの間には、回転子8の回転に伴って作用する遠心力により、高透磁率の材料からなる磁性板37が回転子鉄心18,19の径方向に向けて可動して界磁巻線16と共に電機子鉄心24に磁束を供給する永久磁石36のN極とS極間を短絡させる磁気短絡機構32が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子内に界磁巻線と協働して電機子鉄心に磁束を供給する永久磁石が設けられている回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用の充電発電機において、車両に必要とされる電気負荷の増大や燃費の向上のために、高出力化と小型軽量化とが求められている。このような要求に対処するものとして、発電機の界磁に永久磁石による磁化力を付加することにより、磁極間の漏洩磁束を低減し、有効磁束を増大して出力を向上させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、このような構成の発電機では、界磁電流を流さず永久磁石の磁束のみで発電しても電気負荷が小さい状態で高速で回転される時には、電気負荷を超える発電量となり、このためバッテリが過充電状態となって破損したり、電気負荷に異常電圧が印加されて破損に至ることがあった。
【0004】
この対策のため、従来技術では、界磁巻線を備えた第1の回転子と、永久磁石を備えた第2の回転子との少なくとも2種類の回転子を設けるとともに、負荷の大小に応じて上記界磁巻線に流れる界磁電流値とその流れる向きを変えるスイッチング手段を備えた構成とし、負荷が大きいときには、界磁巻線に対して永久磁石の磁束と同方向に所定の磁束が発生するようにスイッチング手段によって電流値とその流れる向きを制御する一方、負荷が小さくて永久磁石の磁束だけで出力が足りるときには、永久磁石で発生する磁束を界磁巻線で発生する磁束で打ち消すようにスイッチング手段によって電流値とその流れる向きを制御することで出力電圧を適正値に調整し、これによって過電圧の発生を防止するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第2865091号公報
【特許文献2】特許第3063106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献2に開示された技術では、界磁巻線を備えた第1の回転子と永久磁石を備えた第2の回転子との少なくとも2種類の回転子を備える必要があるので、全体構造が複雑になるとともに、重量増加やコストアップの要因にもなっていた。
【0007】
また、負荷の大小に応じて上記界磁巻線に流れる界磁電流の値とその電流の向きを切り換えるためのスイッチング手段を別途追加することが必要であり、この点でもコストアップの要因となっていた。
【0008】
しかも、回転子が高速回転で駆動され、かつ、電気負荷が小さいときには、過電圧発生を抑えるために永久磁石で発生する磁束を減ずる向きの電流を界磁巻線に流し続けなければならず、電力消費量が増大するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、比較的簡単な構成であり、かつ、余分なコストアップを招来することなく、低中速回転域では発電電力を増加し、高速回転域では過電圧の発生を有効に防止できるようにして、小型、安価でかつ高出力の回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、電機子鉄心に電機子巻線が巻回されてなる電機子と、上記電機子の内径側に所定の空隙を介して回転自在に支承された回転子とを有し、上記回転子は、外周部に界磁巻線が巻回された円筒部と、周方向において互いに隣接する磁極が異極をなすように磁化されるクローポール形の磁極部とからなる回転子鉄心を有し、上記磁極部には、上記界磁巻線と協働して上記電機子鉄心に磁束を供給する永久磁石が設けられている回転電機において、次の構成を採用している。
【0011】
すなわち、本発明の回転電機は、上記回転子鉄心の周方向において互いに隣接する磁極部の間に、上記回転子の回転に伴って作用する遠心力により、高透磁率の材料からなる磁性板が上記回転子鉄心の径方向に向けて可動して上記永久磁石のN極とS極間を短絡させる磁気短絡機構が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低中速回転域では、磁気短絡機構の磁性板が永久磁石から離間しているので、永久磁石による磁束と界磁巻線の界磁による磁束とで有効磁束を増加して発電電力を増加することができる。一方、高速回転域では、遠心力によって磁性板が永久磁石に当接して永久磁石のN極とS極を短絡させるので、永久磁石から電機子鉄心に供給される磁束を減少し、軽負荷高速回転時における過電圧の発生を有効に防止することができる。
【0013】
このため、磁化力の大きな永久磁石を装着することができ、発電出力特性あるいはトルク特性を大幅に改善することができる。しかも、回転子の回転により生じる遠心力を利用して磁気短絡機構を動作させるため、過電圧発生防止のために、従来のような逆励磁するための界磁巻線を設けた回転子や界磁電流の向きを切り換えるスイッチング手段を設ける必要がない。したがって、小型、安価でかつ高出力の回転電機を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における回転電機の構成を示す断面図、図2は同回転電機の回転子の詳細構造を示す斜視図、図3は同回転電機の回転子を上部から見た一部を示す平面図、図4は回転子が備える磁気短絡機構を示す断面図である。
【0015】
この実施の形態1における回転電機は、充電発電機として機能するものであって、ケース1を有し、このケース1は、フロントブラケット2およびリアブラケット3がボルト4により一体化されて構成されている。そして、このケース1内には左右の軸受5,6によって回転軸7が回転自在に支承されており、この回転軸7にはクローポール形の回転子8が固定されている。
【0016】
また、回転軸7には、その一端側に図示しないエンジンにより駆動されるタイミングベルトが懸架されるプーリ9がナット10で固定され、他端側にはスリップリング13が嵌着されている。そして、このスリップリング13には一対のブラシ14が摺接するとともに、スリップリング13は電線15を介して回転子8の後述する界磁巻線16に電気的に接続されている。これにより、ブラシ14からスリップリング13および電線15を介して界磁巻線16に界磁電流が供給されるようになっている。
【0017】
上記の回転子8は、磁束を発生する界磁巻線16、およびこの界磁巻線16が巻回されたボビン17を備えるとともに、界磁巻線16の磁束によって磁極が形成される一対の回転子鉄心18,19が界磁巻線16を覆うように設けられている。そして、各回転子鉄心18,19の各側面に冷却ファン21,22が固定されている。
【0018】
回転子8の径方向外方には、ケース1の内周面に固定された電機子23が同心状に配置されている。この電機子23は、回転子8による回転磁界が通る電機子鉄心24と、この電機子鉄心24に巻回された電機子巻線25とから構成されている。
【0019】
また、ケース1内のリアブラケット3側には、電機子23の出力電流を整流する整流器26、および電機子23の出力電圧を制御する電圧制御手段としての電圧制御ユニット27が設けられており、整流器26は電線28を介して電機子巻線25に電気的に接続され、また、整流器26も同様に電圧制御ユニット27に電気的に接続されている。
【0020】
上記の回転子8を構成する各回転子鉄心18,19は、円筒部18a,19aと、爪状の磁極部18b,19bとを有する。そして、円筒部18a,19aの外周部分に上記の界磁巻線16およびボビン17が収容されている。また上記の各磁極部18b,19bは、それぞれ所定の極数分だけ形成されるとともに、界磁巻線16の外径側を覆うように交互に交差している。互いに隣接する磁極部18b,19bは、周方向に所定の間隔を介して一定のピッチで配列されており、界磁巻線16により交互に極性が異なるように磁化されている。
【0021】
そして、互いに隣接する各磁極部18b,19bの間には、後述の永久磁石36を内蔵した磁気短絡機構32が設けられている。この磁気短絡機構32は、永久磁石36によって磁極部18b,19b間の漏洩磁束を低減すると共に、回転子8の回転数に対応して永久磁石36のN極とS極を磁気短絡するものであって、この磁気短絡機構32の詳細について次に説明する。
【0022】
磁気短絡機構32は、図4に示すように、ステンレス鋼等からなる非磁性のケース33を備え、このケース33は、断面逆U字形のケース本体34と、このケース本体34の下側の開口部を液密に塞ぐ蓋プレート35とからなる。そして、ケース33内に、永久磁石36、鋼板等からなる高透磁率の磁性板37、および、回転子8の径方向に伸縮して磁性板37を押圧するばね部材としての一対のコイルばね38が収納されている。
【0023】
そして、永久磁石36は、互いに隣接する磁極部18b,19bの極性に合致するように磁極部18b,19bとの対向する面がそれぞれN極とS極に着磁されており、また、磁極板37は、回転子8が回転せずに静止状態あるいは低速回転時の場合には、図示のごとくコイルばね38のばね力によって永久磁石36から所定間隔だけ離間した状態に保持されている。
【0024】
このように、磁気短絡機構32は、ケース33、永久磁石36、磁性板37、およびバネ部材38のみで構成できるので、全体構造が簡単であり、かつ回転子鉄心18,19とは独立してユニット化できるので、回転子8の組立を効率化することができる。また、磁気短絡機構32を互いに隣接する各磁極部18b,19bの間に介設しているので、磁気短絡機構32の取り付けスペースを容易に確保することができる。
【0025】
なお、コイルばね38は、永久磁石36の磁束の影響を受けないようにステンレス鋼等からなる非磁性のものであることが好ましい。また、この実施の形態1のようにケース33内を液密になるように構成すれば、外部からの塩水、泥水、塵埃の浸入を防止することができるので、ケース33内部の永久磁石36、磁性板37、コイルばね38等が錆びたり動作不良になることを防ぐことができる。特に、ケース33内に潤滑および防錆を兼ねたグリース等を封入すると一層好ましい。
【0026】
次に、上記構成を有する回転電機における充電発電機としての動作について、上記の図4、図5、および図6を参照して説明する。なお、図6は、磁性板37が可動せずに永久磁石36のNS磁極間を短絡していない状態において、永久磁石36と界磁巻線16とによって発生する磁束の流れをそれぞれ示した模式図である。
【0027】
いま、回転子8が低中速回転しているときには、遠心力があまり大きくないので、図4に示すように、磁気短絡機構32の磁性板37は、コイルばね38のばね力によって永久磁石36とは所定の間隔だけ離間した状態に保たれており、永久磁石36と磁極部18b,19bの間は空気層が介在するために磁気抵抗が大きい状態となっている。
【0028】
この場合には互いに隣接する磁極部18b,19b間での磁束の漏れが少なくなると共に、永久磁石36によって発生する磁束は、図6の矢印Aで示されるように、永久磁石36のN極→磁極部(N極)19b→空隙→電機子鉄心24→空隙→磁極部(S極)18b→永久磁石36のS極→永久磁石36のN極という磁束Aの流れを形成する。
【0029】
また、図6の矢印Bで示されるように、永久磁石36のN極→磁極部(N極)19b→円筒部19a→円筒部18a→磁極部(S極)18b→永久磁石36のS極→永久磁石36のN極という磁束Bの流れを形成する。
【0030】
さらに、界磁巻線16への通電によって発生する主磁束は、図6の矢印Cで示されるように、磁極部(N極)19b→空隙→電機子鉄心24→空隙→磁極部(S極)18b→円筒部18a→円筒部19a→磁極部(N極)19bという流れになる。
【0031】
したがって、電機子鉄心24を通る有効磁束は、永久磁石36による磁束Aと界磁巻線16による主磁束Cとを合算したものになり、界磁巻線16による主磁束Cだけの場合より大きくなる。
【0032】
次に、回転子8の回転が上昇して遠心力の大きさが次第に大きくなると、図5に示すように、磁性板37がコイルばね38のばね力に抗して回転子8の径方向外方に向けて移動し、第1の所定回転速度N1以上の高速回転で永久磁石36の内周面に接して押圧され、永久磁石36のN極とS極は、磁性板37を介して磁気回路的に短絡した状態となる(図5(b)参照)。その結果、図6の矢印Aで示す磁束Aが減少する。
【0033】
そして、次に、回転子8の回転速度が次第に低下してくると、遠心力が小さくなって第2の所定回転速度N2以下まで低下した時に、コイルばね38のばね力によって磁性板37は図4に示したように永久磁石36と所定の間隔だけ離れた元の位置に戻る。
【0034】
このように、この実施の形態1の充電発電機によれば、たとえ磁化力の強い永久磁石36を装着した場合でも、高速回転時には磁気短絡機構32が動作して永久磁石36のN極とS極との間を短絡し、永久磁石36の磁化力によって発生する電機子鉄心24を通る磁束Aを減少させる。このため、従来の充電発電機の課題であった軽負荷高速回転時の過電圧の発生を有効に防止することができる。
【0035】
一方、上記のように過電圧発生の問題なしに磁化力の強い永久磁石36を装着できることから、磁気短絡機構32が動作していない低中速回転時には、永久磁石36の磁化力による磁束によって電機子鉄心24を通る有効磁束を増加させることができ、出力電力を大幅に増加させることが可能になる。
【0036】
また、回転子8の回転速度に伴う遠心力を利用して磁気短絡機構32を動作させて永久磁石36のN極とS極を短絡することで高速回転時の過電圧発生を有効に防止できるので、従来技術のように、逆励磁するために特別な界磁巻線や界磁電流の向きを切り換えるためのスイッチング手段を設ける必要がない。このため、界磁巻線およびその付属装置の設計が容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
図7は、本発明の実施の形態1における充電発電機と従来の充電発電機との発電出力を比較して示す特性図である。なお、同図において、横軸は充電発電機の回転速度[r/min]、縦軸は出力電流[A]である。
【0038】
ここで、カーブA(実線)は電機子巻線の仕様が3TY(3ターンのスター結線)で磁石無しの場合の従来装置を示し、カーブB(一点鎖線)は電機子巻線の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の弱い磁石付きの場合の従来装置を示し、カーブC(破線)はこの実施の形態1の充電発電機の場合であり、電機子巻線の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の強い磁石付きの場合を示している。
【0039】
図7から分かるように、本発明の実施の形態1における充電発電機は、発電の立ち上がり回転速度は従来装置と同等以上を確保し、かつ低速回転から高速回転まで従来装置よりも大幅に大きい発電出力を発生させていることが理解される。
【0040】
実施の形態2.
図8,図9は本発明の実施の形態2における回転電機に使用される磁気短絡機構の詳細構造を示す断面図であり、図8は回転子が低中速回転しているときの状態を、図9は回転子が高速回転しているときの状態をそれぞれ示している。なお、図8および図9において、図4および図5に示した実施の形態1と対応もしくは相当する部分に同一の符号を付す。
【0041】
上記の実施の形態1では、磁気短絡機構32において磁性板37の復帰用としてコイルばね38を使用しているが、この実施の形態2では、コイルばね38に代えて板ばね39を使用している。なお、この場合の板ばね39は、永久磁石36の磁束の影響を受けないようにステンレス鋼等からなる非磁性のものを使用するのが好ましい。
【0042】
このような板ばね39を使用する場合には、コイルばね38を使用する場合よりも構造が簡単であり、また、ケース33内のスペースも少なくて済み、コスト的に有利である。
【0043】
その他の構成、および作用効果は、実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0044】
実施の形態3.
図10,図11は本発明の実施の形態3における回転電機に使用される磁気短絡機構の詳細構造を示す図であり、図10は回転子が低中速回転しているときの状態を、図11は回転子が高速回転しているときの状態をそれぞれ示している。なお、図10および図11において、図4および図5に示した実施の形態1と対応もしくは相当する部分に同一の符号を付す。
【0045】
上記の実施の形態1では磁気短絡機構32において、磁性板37の復帰用としてコイルばね38を使用し、また、実施の形態2では板ばね39を使用しているが、この実施の形態3では、コイルばね38と板ばね39とを組み合わせて使用している。
【0046】
このように、コイルばね38と板ばね39とを組み合わせて使用する場合には、各ばねのばね定数を組み合わせて選定することができるので、磁性板37が永久磁石36の内周面に接する場合の回転子の回転速度N1と、磁性板37が永久磁石36から離間する場合の回転子の回転速度N2とを任意に設定し易くなり、設計の自由度が増す。
【0047】
その他の構成、および作用効果は、実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0048】
実施の形態4.
図12は本発明の実施の形態4における回転電機に使用される磁気短絡機構の詳細構造を示す断面図であり、図4および図5に示した実施の形態1と対応もしくは相当する部分に同一の符号を付す。
【0049】
この実施の形態4において、磁気短絡機構32は、鋼板等からなる高透磁率の磁性金属板40を左右一対の永久磁石36により一体的に挟着固定してなる永久磁石ユニット41を備えている。この場合の左右の各永久磁石36は、磁性金属板40を挟んで互いに対向する面がそれぞれN極とS極とになるように着磁されている。
【0050】
そして、磁気短絡機構32は、ケース33内に上記の永久磁石ユニット41、磁極板37、および磁極板37を永久磁石ユニット41に対して近接離間するように伸縮するコイルばね38が収納されて構成されている。
【0051】
このように、一対の永久磁石36の間に磁性金属板40を介在させると、一般的に透磁率が低い永久磁石36を単独で使用する場合よりも磁気抵抗が格段に小さくなり、これによって磁束も増加するため、発電出力特性が向上する。
【0052】
その他の構成、および作用効果は、実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。なお、一対の永久磁石36の間に磁性金属板40を介在させた永久磁石ユニット41は、この実施の形態4だけでなく、実施の形態1〜3の磁気短絡機構32においても同様に適用することができる。
【0053】
上記の実施の形態1〜4は、本発明を充電発電機に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、充電発電機と始動電動機とを兼ねた回転電機についても適用できるのは勿論である。この場合、充電発電機として動作する場合の出力特性だけでなく、始動電動機として動作する場合のトルク特性も従来のものに比べて、低速回転領域から高速回転領域にわたって大幅に改善することができる。
【0054】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5における回転電機の断面図であり、図1に示した実施の形態1の構成と対応もしくは相当する部分には同一の符号を付す。
【0055】
この実施の形態5における回転電機は、充電発電機として機能するだけでなく、始動電動機としても機能するものであって、実施の形態1の充電発電機の構成と比べて、特有な構成要素として、回転子8の回転位置を検出する回転位置検出器43と、電機子巻線25に電気的に接続された三相端子44とを備えている。その他の部分については、磁気短絡機構32を含め実質的に同じ構成であるので、詳しい説明は省略する。
【0056】
図14は、図13に示した充電発電機と始動電動機とを兼ねた回転電機のシステム全体を示す回路図である。
【0057】
図14において、このシステムは、インバータユニット45、平滑用コンデンサ46、バッテリ47、コントローラ48、界磁電流制御装置49、およびコントローラ48に必要な情報を入力する図示していないECU(Engine Control Unit)を含む。そして、三相の電機子巻線25にインバータユニット45が接続され、このインバータユニット45は平滑コンデンサ46を介してバッテリ47に接続されている。また、界磁電流制御装置49は界磁巻線16を介してバッテリ47に接続されている。
【0058】
インバータユニット45は、並列接続されたスイッチング素子51およびダイオード52の組を2組直列に接続したものを並列に3つ配置して構成されている。そして、電機子巻線25の各Y結線(スター結線)の端部が、交流配線を介して直列に接続されたスイッチング素子51の中間接続点x、y、zにそれぞれ接続されており、コントローラ48によって各スイッチング素子51のスイッチング動作が制御される。
【0059】
界磁電流制御装置49は、コントローラ48からの指令に応じて界磁巻線16に流れる界磁電流を制御するもので、例えばトランジスタ等の素子で構成されている。また、コントローラ48は、始動電動機として動作する場合には、インバータユニット45の各スイッチング素子51をオン/オフ制御してバッテリ47からの直流電力を三相交流電力に変換して電機子23の電機子巻線25に供給し、また、充電発電機として動作する場合には、出力電圧を制御する電圧制御手段として作用し、電機子巻線25の出力電圧の値に基づいて界磁電流制御装置49を制御して、界磁巻線16に流れる界磁電流の大きさを調整すると共に、各スイッチング素子51をオン/オフすることで電機子巻線25に誘起された三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ47を充電するようになっている。
【0060】
次に、上記構成の回転電機の動作について説明する。この回転電機は、例えば、ハイブリッド自動車のアイドリングストップなどに使用される。ここでは、回転電機の動作をこのアイドリングストップにおける動作を通して説明する。
【0061】
まず、アイドリングストップを開始するための条件が成立すると、図示しないエンジンが停止され、そしてエンジンを再始動する条件が揃うと、バッテリ47から直流電力がインバータユニット45に給電される。そこで、コントローラ48がインバータユニット45の各スイッチング素子51をオン/オフ制御し、直流電力が三相交流電力に変換され、この三相交流電力が三相端子44および交流配線を介して電機子23の電機子巻線25に供給される。
【0062】
一方、回転子8の界磁巻線16には、予め界磁電流制御装置49からブラシ14、スリップリング13、および電線15を介して界磁電流が供給されて界磁巻線16の周囲に回転磁界が与えられているので、電機子23の電機子巻線25に流れる誘導電流との相互作用によって回転子8が回転駆動される。そして、この回転子8の回転動力がプーリ9から図示しない動力伝達装置を介してエンジンに伝達されて、エンジンが始動される。
【0063】
そして、エンジンが始動されると、逆にエンジンの回転動力が図外の動力伝達装置およびプーリ9を介して回転子8に伝達される。これにより、回転子8が回転駆動して電機子巻線25に三相交流電圧が誘起される。
【0064】
そこで、コントローラ48は、インバータユニット45の各スイッチング素子51をオン/オフ制御し、電機子巻線25に誘起された三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ47を充電する。この場合の充電発電機としての制御動作および作用効果は、実施の形態1で説明した内容と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0065】
図15は、本発明の実施の形態5による回転電機と、従来の回転電機のトルク特性とを比較して示す特性図である。なお、図において、横軸は発電電動機回転速度[r/min]、縦軸は出力トルク[Nm]である。
【0066】
ここで、カーブA(実線)は電機子巻線25の仕様が3TY(3ターンのスター結線)で磁石無しの場合の従来装置を示し、カーブB(一点鎖線)は電機子巻線25の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の弱い磁石付きの場合の従来装置を示し、カーブC(破線)はこの実施の形態5の充電発電機の場合であり、電機子巻線25の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の強い磁石付きの場合を示している。
【0067】
図15から分かるように、この実施の形態5における回転電機は、同じ回転速度の場合には大きなトルクが得られると共に、高回転速度までトルクを発生させることができることが理解される。
【0068】
このように、本発明の実施の形態5における回転電機によれば、磁気短絡機構32を適用することにより、充電発電機として動作させる場合には、軽負荷高速回転時の過電圧防止のための弱め界磁を行う必要がなくなり、低速から高速回転までの全回転域での発電出力特性が向上する。また、始動電動機として動作させる場合には、インバータの許容電流容量を下げることができるので、低速時のトルク特性が向上してエンジンをスムーズに始動できるだけでなく、従来よりも高い回転数まで回転させることができて、加速レスポンスが向上する。
【0069】
実施の形態6.
図16は、本発明の実施の形態6における回転電機の断面図であり、図13に示した実施の形態5の構成と対応もしくは相当する部分には同一の符号を付す。
【0070】
この実施の形態6における回転電機は、充電発電機として機能するとともに、始動電動機としても機能するものであって、上記の実施の形態5においては、図14に示したシステムのインバータユニット45や平滑用コンデンサ46は、回転電機とは別の箇所に設けているが、この実施の形態6では、インバータユニット45および平滑用コンデンサ46を含む回路部分が回路基板54に集約して搭載され、この回路基板54がリアブラケット3の端面に一体的に装着されている。
【0071】
すなわち、図16において、絶縁性樹脂からなる略円筒状のケース55に円筒状のヒートシンク56が一体形成されており、このヒートシンク56が軸受6および回転位置検出器43が設けられたベアリングボックス57を外囲するように、リブラケット3の端面に直接取り付けられている。
【0072】
上記のヒートシンク56は、銅、アルミニウム等の熱伝導性の良好な金属を用いて軸方向から見てC形状に形成されたもので、このヒートシンク56の内周面には、軸方向に延びるフィン56aが周方向に等角ピッチで立設されている。また、ヒートシンク56の外周面上には、回路基板54が電気絶縁状態に配設されてケース55内に収納されている。そして、この回路基板54に前述のインバータユニット45を構成するスイッチング素子51とダイオード52、および平滑用コンデンサ46が、図14に示した回路を構成するように実装されている。
【0073】
そして、電機子巻線25のY結線端部から延びる三相の電線28がインバータユニット45に電気的に接続されている。このため、実施の形態5のような電機子巻線25に接続された三相端子44は省略され、その代わりに、バッテリ47に接続するための電源端子59が設けられている。
【0074】
その他の磁気短絡機構32を含めた構成、および作用効果については、実施の形態5の場合と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0075】
以上のように、この実施の形態6における回転電機は、実施の形態5で述べた効果に加えて、軽負荷高速回転時の過電圧防止のための弱め界磁を行う必要がなくなり、インバータの許容電流容量を下げることができることと相俟って、インバータユニット45等の設置や接続がコンパクトに達成でき、小型化とコスト低減を実現することができる。
【0076】
なお、この実施の形態6では、インバータユニット45や平滑用コンデンサ46を回路基板54に搭載してリアブラケット3の端面に一体的に装着しているが、さらに、図14に示したシステムのコントローラ48や界磁電流制御装置49も同時に回路基板54に搭載してリアブラケット3の端面に一体的に装着した構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は上記の実施の形態1〜6に限定されるものではなく、遠心力により駆動される磁気短絡機構32により永久磁石36のN極とS極間を短絡させることによって永久磁石36による磁束を減少させるという本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の変形を加えることが可能である。また、本発明は、充電発電機や始動電動機に限定されるものではなく、他の発電機、電動機、および発電電動機のあらゆる回転電機に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1において、充電発電機として機能する回転電機の構成を示す断面図である。
【図2】同回転電機の回転子の詳細構造を示す斜視図である。
【図3】同回転電機の回転子を上部から見た一部を示す平面図である。
【図4】回転子が備える磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板がコイルばねのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図5】同磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板がコイルばねのばね力に抗して永久磁石の内周面に押圧された状態を示している。
【図6】永久磁石と界磁巻線によって発生する磁束の流れをそれぞれ示した模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1における充電発電機として機能する回転電機の発電出力を、従来の充電発電機の発電出力と比較して示す特性図である。
【図8】本発明の実施の形態2における磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図9】同磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねのばね力に抗して永久磁石の内周面に押圧された状態を示している。
【図10】本発明の実施の形態3における磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねとコイルばねとのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図11】同磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねとコイルばねとのばね力に抗して永久磁石の内周面に押圧された状態を示している。
【図12】本発明の実施の形態4における磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板がコイルばねのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図13】本発明の実施の形態5において、充電発電機および始動電動機として機能する回転電機の構成を示す断面図である。
【図14】同回転電機のシステム全体を示す回路図である。
【図15】同回転電機と従来の回転電機とのトルク特性を比較して示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6において、充電発電機および始動電動機として機能する回転電機の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
7 回転軸、8 回転子、16 界磁巻線、18,19 回転子鉄心、
18a,19a 円筒部、18b,19b 磁極部、23 電機子、24 電機子鉄心、
25 電機子巻線、27 電圧制御ユニット(電圧制御手段)、32 磁気短絡機構、
33 ケース、36 永久磁石、37 磁性板、38 コイルばね(ばね部材)、
39 板ばね(ばね部材)、40 磁性金属板、41 永久磁性ユニット、
45 インバータユニット、48 コントローラ(電圧制御手段)、
49 界磁電流制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子内に界磁巻線と協働して電機子鉄心に磁束を供給する永久磁石が設けられている回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用の充電発電機において、車両に必要とされる電気負荷の増大や燃費の向上のために、高出力化と小型軽量化とが求められている。このような要求に対処するものとして、発電機の界磁に永久磁石による磁化力を付加することにより、磁極間の漏洩磁束を低減し、有効磁束を増大して出力を向上させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、このような構成の発電機では、界磁電流を流さず永久磁石の磁束のみで発電しても電気負荷が小さい状態で高速で回転される時には、電気負荷を超える発電量となり、このためバッテリが過充電状態となって破損したり、電気負荷に異常電圧が印加されて破損に至ることがあった。
【0004】
この対策のため、従来技術では、界磁巻線を備えた第1の回転子と、永久磁石を備えた第2の回転子との少なくとも2種類の回転子を設けるとともに、負荷の大小に応じて上記界磁巻線に流れる界磁電流値とその流れる向きを変えるスイッチング手段を備えた構成とし、負荷が大きいときには、界磁巻線に対して永久磁石の磁束と同方向に所定の磁束が発生するようにスイッチング手段によって電流値とその流れる向きを制御する一方、負荷が小さくて永久磁石の磁束だけで出力が足りるときには、永久磁石で発生する磁束を界磁巻線で発生する磁束で打ち消すようにスイッチング手段によって電流値とその流れる向きを制御することで出力電圧を適正値に調整し、これによって過電圧の発生を防止するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第2865091号公報
【特許文献2】特許第3063106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献2に開示された技術では、界磁巻線を備えた第1の回転子と永久磁石を備えた第2の回転子との少なくとも2種類の回転子を備える必要があるので、全体構造が複雑になるとともに、重量増加やコストアップの要因にもなっていた。
【0007】
また、負荷の大小に応じて上記界磁巻線に流れる界磁電流の値とその電流の向きを切り換えるためのスイッチング手段を別途追加することが必要であり、この点でもコストアップの要因となっていた。
【0008】
しかも、回転子が高速回転で駆動され、かつ、電気負荷が小さいときには、過電圧発生を抑えるために永久磁石で発生する磁束を減ずる向きの電流を界磁巻線に流し続けなければならず、電力消費量が増大するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、比較的簡単な構成であり、かつ、余分なコストアップを招来することなく、低中速回転域では発電電力を増加し、高速回転域では過電圧の発生を有効に防止できるようにして、小型、安価でかつ高出力の回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、電機子鉄心に電機子巻線が巻回されてなる電機子と、上記電機子の内径側に所定の空隙を介して回転自在に支承された回転子とを有し、上記回転子は、外周部に界磁巻線が巻回された円筒部と、周方向において互いに隣接する磁極が異極をなすように磁化されるクローポール形の磁極部とからなる回転子鉄心を有し、上記磁極部には、上記界磁巻線と協働して上記電機子鉄心に磁束を供給する永久磁石が設けられている回転電機において、次の構成を採用している。
【0011】
すなわち、本発明の回転電機は、上記回転子鉄心の周方向において互いに隣接する磁極部の間に、上記回転子の回転に伴って作用する遠心力により、高透磁率の材料からなる磁性板が上記回転子鉄心の径方向に向けて可動して上記永久磁石のN極とS極間を短絡させる磁気短絡機構が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低中速回転域では、磁気短絡機構の磁性板が永久磁石から離間しているので、永久磁石による磁束と界磁巻線の界磁による磁束とで有効磁束を増加して発電電力を増加することができる。一方、高速回転域では、遠心力によって磁性板が永久磁石に当接して永久磁石のN極とS極を短絡させるので、永久磁石から電機子鉄心に供給される磁束を減少し、軽負荷高速回転時における過電圧の発生を有効に防止することができる。
【0013】
このため、磁化力の大きな永久磁石を装着することができ、発電出力特性あるいはトルク特性を大幅に改善することができる。しかも、回転子の回転により生じる遠心力を利用して磁気短絡機構を動作させるため、過電圧発生防止のために、従来のような逆励磁するための界磁巻線を設けた回転子や界磁電流の向きを切り換えるスイッチング手段を設ける必要がない。したがって、小型、安価でかつ高出力の回転電機を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における回転電機の構成を示す断面図、図2は同回転電機の回転子の詳細構造を示す斜視図、図3は同回転電機の回転子を上部から見た一部を示す平面図、図4は回転子が備える磁気短絡機構を示す断面図である。
【0015】
この実施の形態1における回転電機は、充電発電機として機能するものであって、ケース1を有し、このケース1は、フロントブラケット2およびリアブラケット3がボルト4により一体化されて構成されている。そして、このケース1内には左右の軸受5,6によって回転軸7が回転自在に支承されており、この回転軸7にはクローポール形の回転子8が固定されている。
【0016】
また、回転軸7には、その一端側に図示しないエンジンにより駆動されるタイミングベルトが懸架されるプーリ9がナット10で固定され、他端側にはスリップリング13が嵌着されている。そして、このスリップリング13には一対のブラシ14が摺接するとともに、スリップリング13は電線15を介して回転子8の後述する界磁巻線16に電気的に接続されている。これにより、ブラシ14からスリップリング13および電線15を介して界磁巻線16に界磁電流が供給されるようになっている。
【0017】
上記の回転子8は、磁束を発生する界磁巻線16、およびこの界磁巻線16が巻回されたボビン17を備えるとともに、界磁巻線16の磁束によって磁極が形成される一対の回転子鉄心18,19が界磁巻線16を覆うように設けられている。そして、各回転子鉄心18,19の各側面に冷却ファン21,22が固定されている。
【0018】
回転子8の径方向外方には、ケース1の内周面に固定された電機子23が同心状に配置されている。この電機子23は、回転子8による回転磁界が通る電機子鉄心24と、この電機子鉄心24に巻回された電機子巻線25とから構成されている。
【0019】
また、ケース1内のリアブラケット3側には、電機子23の出力電流を整流する整流器26、および電機子23の出力電圧を制御する電圧制御手段としての電圧制御ユニット27が設けられており、整流器26は電線28を介して電機子巻線25に電気的に接続され、また、整流器26も同様に電圧制御ユニット27に電気的に接続されている。
【0020】
上記の回転子8を構成する各回転子鉄心18,19は、円筒部18a,19aと、爪状の磁極部18b,19bとを有する。そして、円筒部18a,19aの外周部分に上記の界磁巻線16およびボビン17が収容されている。また上記の各磁極部18b,19bは、それぞれ所定の極数分だけ形成されるとともに、界磁巻線16の外径側を覆うように交互に交差している。互いに隣接する磁極部18b,19bは、周方向に所定の間隔を介して一定のピッチで配列されており、界磁巻線16により交互に極性が異なるように磁化されている。
【0021】
そして、互いに隣接する各磁極部18b,19bの間には、後述の永久磁石36を内蔵した磁気短絡機構32が設けられている。この磁気短絡機構32は、永久磁石36によって磁極部18b,19b間の漏洩磁束を低減すると共に、回転子8の回転数に対応して永久磁石36のN極とS極を磁気短絡するものであって、この磁気短絡機構32の詳細について次に説明する。
【0022】
磁気短絡機構32は、図4に示すように、ステンレス鋼等からなる非磁性のケース33を備え、このケース33は、断面逆U字形のケース本体34と、このケース本体34の下側の開口部を液密に塞ぐ蓋プレート35とからなる。そして、ケース33内に、永久磁石36、鋼板等からなる高透磁率の磁性板37、および、回転子8の径方向に伸縮して磁性板37を押圧するばね部材としての一対のコイルばね38が収納されている。
【0023】
そして、永久磁石36は、互いに隣接する磁極部18b,19bの極性に合致するように磁極部18b,19bとの対向する面がそれぞれN極とS極に着磁されており、また、磁極板37は、回転子8が回転せずに静止状態あるいは低速回転時の場合には、図示のごとくコイルばね38のばね力によって永久磁石36から所定間隔だけ離間した状態に保持されている。
【0024】
このように、磁気短絡機構32は、ケース33、永久磁石36、磁性板37、およびバネ部材38のみで構成できるので、全体構造が簡単であり、かつ回転子鉄心18,19とは独立してユニット化できるので、回転子8の組立を効率化することができる。また、磁気短絡機構32を互いに隣接する各磁極部18b,19bの間に介設しているので、磁気短絡機構32の取り付けスペースを容易に確保することができる。
【0025】
なお、コイルばね38は、永久磁石36の磁束の影響を受けないようにステンレス鋼等からなる非磁性のものであることが好ましい。また、この実施の形態1のようにケース33内を液密になるように構成すれば、外部からの塩水、泥水、塵埃の浸入を防止することができるので、ケース33内部の永久磁石36、磁性板37、コイルばね38等が錆びたり動作不良になることを防ぐことができる。特に、ケース33内に潤滑および防錆を兼ねたグリース等を封入すると一層好ましい。
【0026】
次に、上記構成を有する回転電機における充電発電機としての動作について、上記の図4、図5、および図6を参照して説明する。なお、図6は、磁性板37が可動せずに永久磁石36のNS磁極間を短絡していない状態において、永久磁石36と界磁巻線16とによって発生する磁束の流れをそれぞれ示した模式図である。
【0027】
いま、回転子8が低中速回転しているときには、遠心力があまり大きくないので、図4に示すように、磁気短絡機構32の磁性板37は、コイルばね38のばね力によって永久磁石36とは所定の間隔だけ離間した状態に保たれており、永久磁石36と磁極部18b,19bの間は空気層が介在するために磁気抵抗が大きい状態となっている。
【0028】
この場合には互いに隣接する磁極部18b,19b間での磁束の漏れが少なくなると共に、永久磁石36によって発生する磁束は、図6の矢印Aで示されるように、永久磁石36のN極→磁極部(N極)19b→空隙→電機子鉄心24→空隙→磁極部(S極)18b→永久磁石36のS極→永久磁石36のN極という磁束Aの流れを形成する。
【0029】
また、図6の矢印Bで示されるように、永久磁石36のN極→磁極部(N極)19b→円筒部19a→円筒部18a→磁極部(S極)18b→永久磁石36のS極→永久磁石36のN極という磁束Bの流れを形成する。
【0030】
さらに、界磁巻線16への通電によって発生する主磁束は、図6の矢印Cで示されるように、磁極部(N極)19b→空隙→電機子鉄心24→空隙→磁極部(S極)18b→円筒部18a→円筒部19a→磁極部(N極)19bという流れになる。
【0031】
したがって、電機子鉄心24を通る有効磁束は、永久磁石36による磁束Aと界磁巻線16による主磁束Cとを合算したものになり、界磁巻線16による主磁束Cだけの場合より大きくなる。
【0032】
次に、回転子8の回転が上昇して遠心力の大きさが次第に大きくなると、図5に示すように、磁性板37がコイルばね38のばね力に抗して回転子8の径方向外方に向けて移動し、第1の所定回転速度N1以上の高速回転で永久磁石36の内周面に接して押圧され、永久磁石36のN極とS極は、磁性板37を介して磁気回路的に短絡した状態となる(図5(b)参照)。その結果、図6の矢印Aで示す磁束Aが減少する。
【0033】
そして、次に、回転子8の回転速度が次第に低下してくると、遠心力が小さくなって第2の所定回転速度N2以下まで低下した時に、コイルばね38のばね力によって磁性板37は図4に示したように永久磁石36と所定の間隔だけ離れた元の位置に戻る。
【0034】
このように、この実施の形態1の充電発電機によれば、たとえ磁化力の強い永久磁石36を装着した場合でも、高速回転時には磁気短絡機構32が動作して永久磁石36のN極とS極との間を短絡し、永久磁石36の磁化力によって発生する電機子鉄心24を通る磁束Aを減少させる。このため、従来の充電発電機の課題であった軽負荷高速回転時の過電圧の発生を有効に防止することができる。
【0035】
一方、上記のように過電圧発生の問題なしに磁化力の強い永久磁石36を装着できることから、磁気短絡機構32が動作していない低中速回転時には、永久磁石36の磁化力による磁束によって電機子鉄心24を通る有効磁束を増加させることができ、出力電力を大幅に増加させることが可能になる。
【0036】
また、回転子8の回転速度に伴う遠心力を利用して磁気短絡機構32を動作させて永久磁石36のN極とS極を短絡することで高速回転時の過電圧発生を有効に防止できるので、従来技術のように、逆励磁するために特別な界磁巻線や界磁電流の向きを切り換えるためのスイッチング手段を設ける必要がない。このため、界磁巻線およびその付属装置の設計が容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
図7は、本発明の実施の形態1における充電発電機と従来の充電発電機との発電出力を比較して示す特性図である。なお、同図において、横軸は充電発電機の回転速度[r/min]、縦軸は出力電流[A]である。
【0038】
ここで、カーブA(実線)は電機子巻線の仕様が3TY(3ターンのスター結線)で磁石無しの場合の従来装置を示し、カーブB(一点鎖線)は電機子巻線の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の弱い磁石付きの場合の従来装置を示し、カーブC(破線)はこの実施の形態1の充電発電機の場合であり、電機子巻線の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の強い磁石付きの場合を示している。
【0039】
図7から分かるように、本発明の実施の形態1における充電発電機は、発電の立ち上がり回転速度は従来装置と同等以上を確保し、かつ低速回転から高速回転まで従来装置よりも大幅に大きい発電出力を発生させていることが理解される。
【0040】
実施の形態2.
図8,図9は本発明の実施の形態2における回転電機に使用される磁気短絡機構の詳細構造を示す断面図であり、図8は回転子が低中速回転しているときの状態を、図9は回転子が高速回転しているときの状態をそれぞれ示している。なお、図8および図9において、図4および図5に示した実施の形態1と対応もしくは相当する部分に同一の符号を付す。
【0041】
上記の実施の形態1では、磁気短絡機構32において磁性板37の復帰用としてコイルばね38を使用しているが、この実施の形態2では、コイルばね38に代えて板ばね39を使用している。なお、この場合の板ばね39は、永久磁石36の磁束の影響を受けないようにステンレス鋼等からなる非磁性のものを使用するのが好ましい。
【0042】
このような板ばね39を使用する場合には、コイルばね38を使用する場合よりも構造が簡単であり、また、ケース33内のスペースも少なくて済み、コスト的に有利である。
【0043】
その他の構成、および作用効果は、実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0044】
実施の形態3.
図10,図11は本発明の実施の形態3における回転電機に使用される磁気短絡機構の詳細構造を示す図であり、図10は回転子が低中速回転しているときの状態を、図11は回転子が高速回転しているときの状態をそれぞれ示している。なお、図10および図11において、図4および図5に示した実施の形態1と対応もしくは相当する部分に同一の符号を付す。
【0045】
上記の実施の形態1では磁気短絡機構32において、磁性板37の復帰用としてコイルばね38を使用し、また、実施の形態2では板ばね39を使用しているが、この実施の形態3では、コイルばね38と板ばね39とを組み合わせて使用している。
【0046】
このように、コイルばね38と板ばね39とを組み合わせて使用する場合には、各ばねのばね定数を組み合わせて選定することができるので、磁性板37が永久磁石36の内周面に接する場合の回転子の回転速度N1と、磁性板37が永久磁石36から離間する場合の回転子の回転速度N2とを任意に設定し易くなり、設計の自由度が増す。
【0047】
その他の構成、および作用効果は、実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0048】
実施の形態4.
図12は本発明の実施の形態4における回転電機に使用される磁気短絡機構の詳細構造を示す断面図であり、図4および図5に示した実施の形態1と対応もしくは相当する部分に同一の符号を付す。
【0049】
この実施の形態4において、磁気短絡機構32は、鋼板等からなる高透磁率の磁性金属板40を左右一対の永久磁石36により一体的に挟着固定してなる永久磁石ユニット41を備えている。この場合の左右の各永久磁石36は、磁性金属板40を挟んで互いに対向する面がそれぞれN極とS極とになるように着磁されている。
【0050】
そして、磁気短絡機構32は、ケース33内に上記の永久磁石ユニット41、磁極板37、および磁極板37を永久磁石ユニット41に対して近接離間するように伸縮するコイルばね38が収納されて構成されている。
【0051】
このように、一対の永久磁石36の間に磁性金属板40を介在させると、一般的に透磁率が低い永久磁石36を単独で使用する場合よりも磁気抵抗が格段に小さくなり、これによって磁束も増加するため、発電出力特性が向上する。
【0052】
その他の構成、および作用効果は、実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。なお、一対の永久磁石36の間に磁性金属板40を介在させた永久磁石ユニット41は、この実施の形態4だけでなく、実施の形態1〜3の磁気短絡機構32においても同様に適用することができる。
【0053】
上記の実施の形態1〜4は、本発明を充電発電機に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、充電発電機と始動電動機とを兼ねた回転電機についても適用できるのは勿論である。この場合、充電発電機として動作する場合の出力特性だけでなく、始動電動機として動作する場合のトルク特性も従来のものに比べて、低速回転領域から高速回転領域にわたって大幅に改善することができる。
【0054】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5における回転電機の断面図であり、図1に示した実施の形態1の構成と対応もしくは相当する部分には同一の符号を付す。
【0055】
この実施の形態5における回転電機は、充電発電機として機能するだけでなく、始動電動機としても機能するものであって、実施の形態1の充電発電機の構成と比べて、特有な構成要素として、回転子8の回転位置を検出する回転位置検出器43と、電機子巻線25に電気的に接続された三相端子44とを備えている。その他の部分については、磁気短絡機構32を含め実質的に同じ構成であるので、詳しい説明は省略する。
【0056】
図14は、図13に示した充電発電機と始動電動機とを兼ねた回転電機のシステム全体を示す回路図である。
【0057】
図14において、このシステムは、インバータユニット45、平滑用コンデンサ46、バッテリ47、コントローラ48、界磁電流制御装置49、およびコントローラ48に必要な情報を入力する図示していないECU(Engine Control Unit)を含む。そして、三相の電機子巻線25にインバータユニット45が接続され、このインバータユニット45は平滑コンデンサ46を介してバッテリ47に接続されている。また、界磁電流制御装置49は界磁巻線16を介してバッテリ47に接続されている。
【0058】
インバータユニット45は、並列接続されたスイッチング素子51およびダイオード52の組を2組直列に接続したものを並列に3つ配置して構成されている。そして、電機子巻線25の各Y結線(スター結線)の端部が、交流配線を介して直列に接続されたスイッチング素子51の中間接続点x、y、zにそれぞれ接続されており、コントローラ48によって各スイッチング素子51のスイッチング動作が制御される。
【0059】
界磁電流制御装置49は、コントローラ48からの指令に応じて界磁巻線16に流れる界磁電流を制御するもので、例えばトランジスタ等の素子で構成されている。また、コントローラ48は、始動電動機として動作する場合には、インバータユニット45の各スイッチング素子51をオン/オフ制御してバッテリ47からの直流電力を三相交流電力に変換して電機子23の電機子巻線25に供給し、また、充電発電機として動作する場合には、出力電圧を制御する電圧制御手段として作用し、電機子巻線25の出力電圧の値に基づいて界磁電流制御装置49を制御して、界磁巻線16に流れる界磁電流の大きさを調整すると共に、各スイッチング素子51をオン/オフすることで電機子巻線25に誘起された三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ47を充電するようになっている。
【0060】
次に、上記構成の回転電機の動作について説明する。この回転電機は、例えば、ハイブリッド自動車のアイドリングストップなどに使用される。ここでは、回転電機の動作をこのアイドリングストップにおける動作を通して説明する。
【0061】
まず、アイドリングストップを開始するための条件が成立すると、図示しないエンジンが停止され、そしてエンジンを再始動する条件が揃うと、バッテリ47から直流電力がインバータユニット45に給電される。そこで、コントローラ48がインバータユニット45の各スイッチング素子51をオン/オフ制御し、直流電力が三相交流電力に変換され、この三相交流電力が三相端子44および交流配線を介して電機子23の電機子巻線25に供給される。
【0062】
一方、回転子8の界磁巻線16には、予め界磁電流制御装置49からブラシ14、スリップリング13、および電線15を介して界磁電流が供給されて界磁巻線16の周囲に回転磁界が与えられているので、電機子23の電機子巻線25に流れる誘導電流との相互作用によって回転子8が回転駆動される。そして、この回転子8の回転動力がプーリ9から図示しない動力伝達装置を介してエンジンに伝達されて、エンジンが始動される。
【0063】
そして、エンジンが始動されると、逆にエンジンの回転動力が図外の動力伝達装置およびプーリ9を介して回転子8に伝達される。これにより、回転子8が回転駆動して電機子巻線25に三相交流電圧が誘起される。
【0064】
そこで、コントローラ48は、インバータユニット45の各スイッチング素子51をオン/オフ制御し、電機子巻線25に誘起された三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ47を充電する。この場合の充電発電機としての制御動作および作用効果は、実施の形態1で説明した内容と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0065】
図15は、本発明の実施の形態5による回転電機と、従来の回転電機のトルク特性とを比較して示す特性図である。なお、図において、横軸は発電電動機回転速度[r/min]、縦軸は出力トルク[Nm]である。
【0066】
ここで、カーブA(実線)は電機子巻線25の仕様が3TY(3ターンのスター結線)で磁石無しの場合の従来装置を示し、カーブB(一点鎖線)は電機子巻線25の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の弱い磁石付きの場合の従来装置を示し、カーブC(破線)はこの実施の形態5の充電発電機の場合であり、電機子巻線25の仕様が4TΔ(4ターンのデルタ結線)(=2.3ターンのスター結線相当)で磁化力の強い磁石付きの場合を示している。
【0067】
図15から分かるように、この実施の形態5における回転電機は、同じ回転速度の場合には大きなトルクが得られると共に、高回転速度までトルクを発生させることができることが理解される。
【0068】
このように、本発明の実施の形態5における回転電機によれば、磁気短絡機構32を適用することにより、充電発電機として動作させる場合には、軽負荷高速回転時の過電圧防止のための弱め界磁を行う必要がなくなり、低速から高速回転までの全回転域での発電出力特性が向上する。また、始動電動機として動作させる場合には、インバータの許容電流容量を下げることができるので、低速時のトルク特性が向上してエンジンをスムーズに始動できるだけでなく、従来よりも高い回転数まで回転させることができて、加速レスポンスが向上する。
【0069】
実施の形態6.
図16は、本発明の実施の形態6における回転電機の断面図であり、図13に示した実施の形態5の構成と対応もしくは相当する部分には同一の符号を付す。
【0070】
この実施の形態6における回転電機は、充電発電機として機能するとともに、始動電動機としても機能するものであって、上記の実施の形態5においては、図14に示したシステムのインバータユニット45や平滑用コンデンサ46は、回転電機とは別の箇所に設けているが、この実施の形態6では、インバータユニット45および平滑用コンデンサ46を含む回路部分が回路基板54に集約して搭載され、この回路基板54がリアブラケット3の端面に一体的に装着されている。
【0071】
すなわち、図16において、絶縁性樹脂からなる略円筒状のケース55に円筒状のヒートシンク56が一体形成されており、このヒートシンク56が軸受6および回転位置検出器43が設けられたベアリングボックス57を外囲するように、リブラケット3の端面に直接取り付けられている。
【0072】
上記のヒートシンク56は、銅、アルミニウム等の熱伝導性の良好な金属を用いて軸方向から見てC形状に形成されたもので、このヒートシンク56の内周面には、軸方向に延びるフィン56aが周方向に等角ピッチで立設されている。また、ヒートシンク56の外周面上には、回路基板54が電気絶縁状態に配設されてケース55内に収納されている。そして、この回路基板54に前述のインバータユニット45を構成するスイッチング素子51とダイオード52、および平滑用コンデンサ46が、図14に示した回路を構成するように実装されている。
【0073】
そして、電機子巻線25のY結線端部から延びる三相の電線28がインバータユニット45に電気的に接続されている。このため、実施の形態5のような電機子巻線25に接続された三相端子44は省略され、その代わりに、バッテリ47に接続するための電源端子59が設けられている。
【0074】
その他の磁気短絡機構32を含めた構成、および作用効果については、実施の形態5の場合と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0075】
以上のように、この実施の形態6における回転電機は、実施の形態5で述べた効果に加えて、軽負荷高速回転時の過電圧防止のための弱め界磁を行う必要がなくなり、インバータの許容電流容量を下げることができることと相俟って、インバータユニット45等の設置や接続がコンパクトに達成でき、小型化とコスト低減を実現することができる。
【0076】
なお、この実施の形態6では、インバータユニット45や平滑用コンデンサ46を回路基板54に搭載してリアブラケット3の端面に一体的に装着しているが、さらに、図14に示したシステムのコントローラ48や界磁電流制御装置49も同時に回路基板54に搭載してリアブラケット3の端面に一体的に装着した構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は上記の実施の形態1〜6に限定されるものではなく、遠心力により駆動される磁気短絡機構32により永久磁石36のN極とS極間を短絡させることによって永久磁石36による磁束を減少させるという本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の変形を加えることが可能である。また、本発明は、充電発電機や始動電動機に限定されるものではなく、他の発電機、電動機、および発電電動機のあらゆる回転電機に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1において、充電発電機として機能する回転電機の構成を示す断面図である。
【図2】同回転電機の回転子の詳細構造を示す斜視図である。
【図3】同回転電機の回転子を上部から見た一部を示す平面図である。
【図4】回転子が備える磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板がコイルばねのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図5】同磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板がコイルばねのばね力に抗して永久磁石の内周面に押圧された状態を示している。
【図6】永久磁石と界磁巻線によって発生する磁束の流れをそれぞれ示した模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1における充電発電機として機能する回転電機の発電出力を、従来の充電発電機の発電出力と比較して示す特性図である。
【図8】本発明の実施の形態2における磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図9】同磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねのばね力に抗して永久磁石の内周面に押圧された状態を示している。
【図10】本発明の実施の形態3における磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねとコイルばねとのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図11】同磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板が板ばねとコイルばねとのばね力に抗して永久磁石の内周面に押圧された状態を示している。
【図12】本発明の実施の形態4における磁気短絡機構を示す断面図であり、磁性板がコイルばねのばね力によって永久磁石から離間されている状態を示している。
【図13】本発明の実施の形態5において、充電発電機および始動電動機として機能する回転電機の構成を示す断面図である。
【図14】同回転電機のシステム全体を示す回路図である。
【図15】同回転電機と従来の回転電機とのトルク特性を比較して示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6において、充電発電機および始動電動機として機能する回転電機の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
7 回転軸、8 回転子、16 界磁巻線、18,19 回転子鉄心、
18a,19a 円筒部、18b,19b 磁極部、23 電機子、24 電機子鉄心、
25 電機子巻線、27 電圧制御ユニット(電圧制御手段)、32 磁気短絡機構、
33 ケース、36 永久磁石、37 磁性板、38 コイルばね(ばね部材)、
39 板ばね(ばね部材)、40 磁性金属板、41 永久磁性ユニット、
45 インバータユニット、48 コントローラ(電圧制御手段)、
49 界磁電流制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子鉄心に電機子巻線が巻回されてなる電機子と、上記電機子の内径側に所定の空隙を介して回転自在に支承された回転子とを有し、上記回転子は、外周部に界磁巻線が巻回された円筒部と、周方向において互いに隣接する磁極が異極をなすように磁化されるクローポール形の磁極部とからなる回転子鉄心を有し、上記磁極部には、上記界磁巻線と協働して上記電機子鉄心に磁束を供給する永久磁石が設けられている回転電機において、
上記回転子鉄心の周方向において互いに隣接する磁極部の間には、上記回転子の回転に伴って作用する遠心力により、高透磁率の材料からなる磁性板が上記回転子鉄心の径方向に向けて可動して上記永久磁石のN極とS極間を短絡させる磁気短絡機構が設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記磁気短絡機構は、非磁性のケースを有し、このケース内に、上記永久磁石、上記磁極板、および磁極板を永久磁石に対して近接離間するように伸縮するバネ部材が収納されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
上記磁気短絡機構は、非磁性のケースを有し、このケース内に、透磁率の高い磁性金属板を一対の上記永久磁石で挟んで固着してなる永久磁石ユニット、上記磁極板、および磁極板を永久磁石ユニットに対して近接離間するように伸縮するバネ部材が収納されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項4】
上記ばね部材は、コイル状のばね部材、および板状のバネ部材の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
上記ケースは、その内部が液密になるように構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
上記回転子鉄心の所定回転数N1以上への加速により上記磁極板が永久磁石側に押圧され、上記回転子鉄心の所定回転数N2以下への減速により上記磁極板が永久磁石から離間するように、上記ばね部材のばね定数が設定されていることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
上記電機子巻線の出力電圧の値に基づいて上記界磁巻線に流れる界磁電流を制御して上記出力電圧を制御する電圧制御手段を備えることにより、充電発電機として構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
バッテリの電力を変換するインバータユニットと、上記界磁巻線に流れる電流を制御する界磁電流制御装置と、上記インバータユニットおよび界磁電流制御装置を制御する制御手段とを備えることにより、充電発電機と始動電動機とを兼用するものとして構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
上記電機子および回転子を覆うケースの端面あるいは周面上には、少なくとも上記インバータユニットが装着されていることを特徴とする請求項8記載の回転電機。
【請求項1】
電機子鉄心に電機子巻線が巻回されてなる電機子と、上記電機子の内径側に所定の空隙を介して回転自在に支承された回転子とを有し、上記回転子は、外周部に界磁巻線が巻回された円筒部と、周方向において互いに隣接する磁極が異極をなすように磁化されるクローポール形の磁極部とからなる回転子鉄心を有し、上記磁極部には、上記界磁巻線と協働して上記電機子鉄心に磁束を供給する永久磁石が設けられている回転電機において、
上記回転子鉄心の周方向において互いに隣接する磁極部の間には、上記回転子の回転に伴って作用する遠心力により、高透磁率の材料からなる磁性板が上記回転子鉄心の径方向に向けて可動して上記永久磁石のN極とS極間を短絡させる磁気短絡機構が設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記磁気短絡機構は、非磁性のケースを有し、このケース内に、上記永久磁石、上記磁極板、および磁極板を永久磁石に対して近接離間するように伸縮するバネ部材が収納されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
上記磁気短絡機構は、非磁性のケースを有し、このケース内に、透磁率の高い磁性金属板を一対の上記永久磁石で挟んで固着してなる永久磁石ユニット、上記磁極板、および磁極板を永久磁石ユニットに対して近接離間するように伸縮するバネ部材が収納されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項4】
上記ばね部材は、コイル状のばね部材、および板状のバネ部材の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
上記ケースは、その内部が液密になるように構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
上記回転子鉄心の所定回転数N1以上への加速により上記磁極板が永久磁石側に押圧され、上記回転子鉄心の所定回転数N2以下への減速により上記磁極板が永久磁石から離間するように、上記ばね部材のばね定数が設定されていることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
上記電機子巻線の出力電圧の値に基づいて上記界磁巻線に流れる界磁電流を制御して上記出力電圧を制御する電圧制御手段を備えることにより、充電発電機として構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
バッテリの電力を変換するインバータユニットと、上記界磁巻線に流れる電流を制御する界磁電流制御装置と、上記インバータユニットおよび界磁電流制御装置を制御する制御手段とを備えることにより、充電発電機と始動電動機とを兼用するものとして構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項9】
上記電機子および回転子を覆うケースの端面あるいは周面上には、少なくとも上記インバータユニットが装着されていることを特徴とする請求項8記載の回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−320116(P2006−320116A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140458(P2005−140458)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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