説明

回転電機

【課題】回転電機のステータの放熱性を高める。
【解決手段】第1回転電機20のステータ50は、ステータコア58とステータコア58の外周に配置された外周リング62を有する。外周リング62の外周面は、略円筒面であり、周方向に延びる突条76が設けられている。一方、ケース70は、ステータ50を収容するステータ収容部74を有する。ステータ収容部74にステータ50が収められたとき、ステータ収容部74の平らな内周面76に突条76が当接する。これにより、突条76の先端とケース70が密着し、ステータ50で発生した熱が、ケース70に直接伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機および発電機として機能する回転電機に関し、特に、その放熱性に関する。
【背景技術】
【0002】
原動機として内燃機関と回転電機を備えたハイブリッド車両が知られている。回転電機は、車両を駆動する動力を発生する電動機として機能すると共に、制動時車両の運動エネルギを電気エネルギに変換する発電機としても機能する。以下では、電動機と発電機の双方の機能を発揮し得る電動機を回転電機と記して説明する。
【0003】
上記のようなハイブリッド車両において、回転電機は動力装置のケース部材、例えばトランスアクスルまたはトランスミッションのケース内に配置する構成が知られている。このような配置の場合、回転電機、特にステータで発生した熱は、ケースを介して外気に放熱される。ステータからケースへの伝達の多くは、トランスアクスルまたはトランスミッション内の潤滑油等の液体を介して行われる。
【0004】
下記特許文献1には、ステータとこれを囲むケースの対向面に互いに嵌り合う凹凸形状を設け、接触面積を増加させることによって、ステータからハウジングへの伝熱性を改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−259560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1のように、ステータとケースの各々の対向面に互いに嵌り合う凹凸形状を形成する場合、この形状を加工する工程が必要になり生産性が低くなる。また、複雑な形状同士を嵌め合う工程は作業性が悪く、ステータをケースに収める際の生産性が低くなる。
【0007】
本発明は、ステータで発生した熱を動力装置のケース部材に効率よく伝達し、かつステータをケース部材の収める際の作業性を良好なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機は、円筒外周面を有するステータと、ステータの円筒外周面に対向する円筒内周面を有し、この円筒内周面に囲まれた空間にステータを収容するケースと、を有し、ステータの円筒外周面とケースの円筒内周面の一方の面に、他方の平らな面に先端が当接する突起または突条が設けられている。
【0009】
また、前記突起または突条は、ステータの円筒外周面に周方向に延びて設けられた突条とすることができる。
【0010】
また、ステータは、ステータの磁極ごとに周方向に分割されたコアセグメントを円環状に連ねて配列したステータコアと、このステータコアを束ねるようにステータコアの外周に配置された外周リングと、を含むものとでき、このとき外周リングの外周面が前記ステータの円筒外周面となる。
【発明の効果】
【0011】
突起または突条の先端と平らな面との接触であるので、ステータをケースに収める際の位置合わせが要求されず、作業性が低くなることがない。また、突起または突条の先端でケースに確実に接触し、ここから熱がケースへ伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ハイブリッド車両用動力装置の概略を示す骨格図である。
【図2】トランスアクスルの内部の要部構成を示す図である。
【図3】コイルの図示を省略したステータを示す図である。
【図4】図2に示すA−A線断面図である。
【図5】外周リングの形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。本発明の実施形態として、ハイブリッド車両用動力装置の、内燃機関と共に原動機として用いられる回転電機を例に挙げて説明する。図1は、動力装置10の概略構成を示す骨格図である。オットー機関、ディーゼル機関等の内燃機関12の出力は、トランスアクスル14を介して左右の駆動輪16,18に伝達され、車両が駆動される。トランスアクスル14内には、原動機として2個の回転電機20,22が搭載されている。3個の原動機は、トランスアクスル14内の動力分割遊星歯車装置24の3要素(サンギア、プラネタリキャリア、リングギア)にそれぞれ接続されている。動力分割遊星歯車機構24は、回転可能なサンギア26と、サンギア26の回転軸と同軸に配置され、この軸回りに回転可能なプラネタリキャリア28およびリングギア30を含む。また、プラネタリキャリア28は、回転可能に複数のプラネタリピニオン32を支持しており、これらのピニオン32は、それぞれサンギア26とリングギア30とかみ合っている。したがって、プラネタリピニオン32は、プラネタリキャリア28の回転により公転し、またサンギア26とリングギア30の回転速度に基づいて自転する。動力分割遊星歯車装置24のサンギア26には第1回転電機20の出力軸が、プラネタリキャリア28には内燃機関12の出力軸が接続される。
【0014】
また、リングギア30には、減速遊星歯車機構34を介して第2回転電機22の出力軸が接続されている。減速遊星歯車機構34は、前出のリングギア30と共に遊星歯車装置ホイール35に一体に形成されたリングギア36と、複数のプラネタリピニオン38と、リングギア36と同軸配置されたサンギア40を含み、このサンギア40が第2回転電機22の出力軸に接続している。プラネタリピニオン38は、リングギア36とサンギア40とかみ合い、これらのギアの回転速度に応じて自転するが、その回転軸は固定されており公転はしない。この結果、第2回転電機22の出力は、減速されて遊星歯車装置ホイール35に伝達される。
【0015】
遊星歯車装置ホイール35の外周側にはドライブギア42が形成され、カウンタギア44を介してファイナルドリブンギア46に連なるギア列が形成されている。ファイナルドリブンギア46は差動装置48を駆動し、差動装置48は駆動輪16,18に動力と伝達する。
【0016】
動力分割遊星歯車装置24の3要素は、2つの要素の回転速度が定められると、もう一つの要素の回転が規定される関係にある。例えば、リングギア30の速度は、車両の速度と一意の関係にあるので、ある車両速度のときに、第1回転電機20の速度を変えることで、内燃機関12の回転速度を変えることができる。したがって、動力分割遊星歯車装置24および第1回転電機20は、変速装置として機能する。一方、減速遊星歯車機構34は、プラネタリピニオン38が公転しない、つまりプラネタリキャリアの回転が固定されているので、サンギア40と、リングギア36は常に一定の速度比をもって回転することになる。
【0017】
第1回転電機20は、主に発電機として機能する。発電時には、内燃機関12の出力の一部および全部により動力分割遊星歯車装置24を介して第1回転電機20のロータを駆動する。発電された電力は、不図示の二次電池に蓄えられる。また、第1回転電機20は、内燃機関12の始動時において、その出力軸(クランクシャフト)を駆動する電動機として使用される。
【0018】
第2回転電機22は、主に電動機として機能する。発進時、軽負荷走行時には、内燃機関12は停止され第2回転電機22単独で車両を駆動する。定常走行時には、内燃機関12と共に車両を駆動する。加速時には、二次電池に蓄えられた電力に加え、第1回転電機20で発電された電力により第2回転電機22を駆動し、より大きな加速を得るようにできる。制動時においては、第2回転電機22は車両の慣性により駆動されて発電機として機能し、発電された電力は二次電池に蓄えられる。
【0019】
第1および第2回転電機20,22のステータ50,52は概略的に円筒形状であり、円筒の内周面に、磁極となる突起が周方向に配列されたステータコアと、前記の突起に巻かれたコイルを含む。ステータコアの外周面は、略円筒面である。
【0020】
図2は、トランスアクスル14の内部の、第1回転電機20の軸方向より視た状態が示されている。また、図2において、第1回転電機20の搭載に関連する部分以外については、省略されている。図3は、図2に示されるステータ50をコイルを省略した状態で示す図である。図4は、図2に示すA−A線における断面図である。
【0021】
図2,3を参照する。ステータ50は、円筒形状の周部分54の内周面に周方向に配列された突起56を有するステータコア58と、ステータコアの突起56に巻き付くように配置されたコイル59(図4参照)を含む。このコイル59が券回された突起56が磁極となる(以下、磁極56と記す。)。この実施形態の回転電機は、ステータコア58が磁極56ごとにコアセグメント60に分割されている。つまり、コアセグメント60は、周部分と、周部分から突出する突起により略T字形状を有し、周部分をつなげて全体として円筒形状となるように配置されてステータコア58が形成される。ステータ52は、さらにステータコア58の外側に、コアセグメント60を束ねるように配置された外周リング62を含む。外周リング62の外側の数カ所には、貫通孔64を有するフランジ66が設けられている。
【0022】
ステータ50は、外周リングのフランジ66の貫通孔64に数本のボルト68により、トランスアクスル14内部の各機構を収容するケース70に締結される。図4に示すようにケース70は、ステータ50の外周を囲む円筒の内周面72を有するステータ収容部74を備える。したがって、トランスアクスルのケース70のステータ収容部74は、第1回転電機20のステータ50を収容するケースとして機能する。ステータ50は、このステータ収容部74に図4において下側から挿入されて、ボルト68により固定される。
【0023】
ステータ50の外周面には突条76が設けられ、この先端がステータ収容部の内周面72に当接している。この実施形態においては、ステータの外周面を形成する外周リング62の外周面に突条76が形成される。図5に示すように突条76は、1条が外周リング62の周方向に延びて全周に設けられている。しかし、これに限らず、2条以上の突条が設けられてよく、また、全周に延びるのでなく、部分的に設けられてもよい。さらに、突条の延びる方向は周方向に限らず、他の方向、例えばモータの軸線の方向に延びるように配置されてもよい。また、各図においては、突条76の突出量は、強調して描かれている。また、突条のように、一方向に延びる形状ではなく、ステータ収容部の内周面72に点接触するような突起を設けてもよい。これらの突条、突起は、プレス成形等の塑性変形を用いて、形成することができる。また、突条は、ステータコア58と外周リング62が接触している部分の、外周リングの外側に設けることができる。
【0024】
ステータ収容部の内周面72の、突条76の当接する部分は平らな面となっている。ここで、「平らな面」とは、平面を意味するのではなく、突条76の形状に適合した嵌合形状等の凹凸を有する面ではないことを意味する。つまり、内周面72は、突条76が接する部分の周囲において、円筒の内周面となっている。
【0025】
ステータ50をステータ収容部74に収容する際には、ステータを図4の下側から挿入し、ボルト68によりケース70に固定する。外周リング62がわずかに変形するように、突条76の外径を内周面72の内径より若干大きく形成しておくことにより、突条76先端がステータ収容部の内周面72に確実に接触するようになる。また、ステータ収容部の内周面72は、平らな円筒面であるので、周方向の位置合わせを必要とせず、簡略な作業で装着ができる。また、突条76の先端のみが内周面72に接するので、全面が接する場合に比べ、摺動摩擦が少なく、容易に所定の位置まで挿入することができる。突条76の先端が確実に内周面72に接触するので、ステータ50で発生した熱が、ここからケース70に伝達される。
【0026】
以上、第1回転電機20について説明したが、第2回転電機22も同様に、ステータの円筒外周面に突起または突条を設けて、この先端がケースに当接するようにできる。また、上述の実施形態と反対に、ステータ外周面を平らな面とし、ケース側に突条または突起を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 動力装置、12 内燃機関、14 トランスアクスル、20 第1回転電機、22 第2回転電機、50,52 ステータ、58 ステータコア、60 コアセグメント、62 外周リング、70 ケース、72 ステータ収容部の内周面、74 ステータ収容部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒外周面を有するステータと、
ステータの円筒外周面に対向する円筒内周面を有し、この円筒内周面に囲まれた空間にステータを収容するケースと、
を有し、
ステータの円筒外周面とケースの円筒内周面の一方の面に、他方の平らな面に先端が当接する突起または突条が設けられた、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、前記突起または突条は、ステータの円筒外周面に周方向に延びて設けられた突条である、回転電機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転電機であって、
ステータは、ステータの磁極ごとに周方向に分割されたコアセグメントを円環状に連ねて配列したステータコアと、このステータコアを束ねるようにステータコア外周に配置された外周リングと、を含み、
外周リングの外周面が、前記ステータの円筒外周面となる、
回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−223810(P2011−223810A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92453(P2010−92453)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】