説明

圧力流量比例制御弁

【課題】流体の流量制御を簡単、かつ連続的に変動無く行う。
【解決手段】圧力流体の流路に連通した圧力室2にその圧力によりピストン作用するプランジャー6を設けて、プランジャーによりニードルバルブ状の弁体6を作動させる。プランジャーはコイルスプリング8の押圧力が圧力室の圧力、若しくは負圧と平衡する関係におかれ、弁の開度は調整ネジ9によって行う。
予め、調整ネジによる弁体の開度とそれに平衡する圧力との関係を確認しておき、流体入口3を導入すべき流体供給源、出口4を圧力流体の流路に接続して、調整ネジにより弁体の開度を設定する。
該流路の圧力とコイルスプリングの押圧力により開放された弁体から流体が供給されると、流路圧力が低下、若しくは上昇し、その圧力変化に応じて弁体の開度がコイルスプリングの押圧力に抗して調整されて連続的に平衡状態に至るまで、弁体の開度が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された流体の圧力変化を利用して、供給する流体の流量を 制御する圧力流量比例制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気体及び液体などの流体の流量を制御する場合、一般には、流量比例制御弁に連通するポンプの吸引側に空気を混入させてポンプの回転インペラーで気液を混合し、主流体の圧力に応じて被制御流体の流量を制御するため圧力センサー、制御回路、比例作動弁などからなる複雑な構成を必要とし、また、設備費が嵩んで高価となる。
【特許文献1】特開平8−110818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、従来必要とされた圧力センサー、制御回路、比例作動弁などを不要とし、単純な機構により主流体の圧力変化に応じて被制御流体の流量を所定の値に制御できる圧力流量比例制御弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明者は、鋭意研究、検討を重ねた結果、供給された主流体の管路を圧力流量比例制御弁の圧力室に接続し、その圧力の強弱変化により、供給すべき流体の流量を制御する弁を動作、制御すると共に、弁の動作を該圧力と相対抗して働き、所定の流量において平衡する機構により行うことにより、所定の流量に至るまで連続的、かつ滑らかに制御することを可能とした。
すなわち本発明は、被制御流体とその流入により圧力変化する主流体との関係において、
被制御流体の流量を調整する制御弁を主流体の圧力もしくは負圧とこれに対向する力との間で平衡関係を形成する動作機構により制御するよう構成し、
該動作機構の平衡位置を設定さるべき圧力に対応して調整可能とすることにより、
主流体の圧力変化により設定された圧力に応じた流量となるよう被制御流体の流量を制御可能とした圧力流量比例制御弁であり、
具体的には上記制御弁をプランジャーの動作により開度調整可能とすると共に
該プランジャーが上記主流体の圧力若しくは負圧とこれに対抗するコイルスプリングの押圧力より上記平衡関係を形成することにより上記動作機構を構成し、
プランジャーの作動位置を調整する調整手段により、該動作機構の平衡位置が設定さるべき圧力に対応する位置となるよう調整可能としたことを特徴とする。
本発明に係る圧力流量比例制御弁は、主流体の圧力強弱に対応する機械的な作動をそのまま被制御流体の制御弁体に行わせて被制御流体の流量を制御することができる。上記圧力流量比例制御弁中の圧力室2に伝わった圧力が弁体6を操作するプランジャー5を押し戻すことにより、プランジャー5と一体になっている先端の弁体6が該制御弁の弁座7から離れ、被制御流体が流れることができる。本発明に係る圧力流量比例制御弁を使用すれば、正確且つ簡単に制御することができる。
【0005】
又、該制御弁本体1の下に取り付けられた圧力調整ネジ9を調整することにより、該制御弁を開放、閉鎖する方向に圧力の設定ができる。さらに、圧力が負圧(真空圧)の場合は該弁体6に当てているコイルスプリング8が作用する方向が逆になる構造で同じく流量を制御できる。また、この圧力調整手段として上記のバルブ構造に替えて、いわゆるコックを使用しても同様に作動させることができるのであって、これらいわゆるバルブ構造による制約は無い。
【0006】
主流体の圧力に応じて、被制御流体の流量を制御するには、主流体管路11からの分岐管路を該制御弁の圧力室2に接続し、被制御流体を流体入口3から取り入れ弁座7、弁体6を経由して流体出口4から、必要とするところに供給する。
【0007】
例えば、圧力室2に3kgf/cm2(約300kPa)の圧力がかかった場合、被制御流体を供給するように圧力調整ネジ9を調整して弁体6が弁座7から離れるように設定する。また、3kgf/cm2(約300kPa)以上では、その圧力に比例して弁体6と弁座7の隙間が大きくなり流量も増やす。また、流量大小の精度を求めるには、別途流体入口3に流入する被制御流体の流入圧力を調整すればよい。
また、流量大小の加減を求めるには、流体入口3に流入する被制御流体の流入圧力を調整すればその手段として、被制御流体供給元12と流体入口3との隙間の落差を利用するか、又は被制御流体を加圧状態にし、流体入口3の手前に減圧弁を取り付けて所要流量を求めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のフィードバック回路を含む複雑な機構を必要とせず、簡単な機構で必要とする流量に至るまで、連続的かつ滑らかに流量制御することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
〔実施例1〕
図3は、本発明に係る圧力流量比例制御弁を本発明者らが先に出願した特願2005-295417に開示される超微細気泡発生装置の気液混合装置に応用した実施態様を示す。
まず、気液混合流体を加圧するポンプ16の吐出圧は6kgf/cm2(ゲージ圧約600kPa)とし、圧力弁15の通過圧力を4kg/cm2(ゲージ圧約400kPa)に設定する、すなわち主流体管路11とこれに連通する圧力検知管路13から圧力流量比例制御弁10の圧力室2(図1参照)にいたるまで、ポンプ16作動中は常に4kg/cm2の圧力になる(圧力計17で確認できる)。そこで、本発明に係る圧力流量比例制御弁10の圧力調整ネジ9を調整して圧力計17の圧力が3.5 kg/cm2(ゲージ圧約350kPa)になるように設定する。
本発明に係る圧力流量比例制御弁10の構造は、図1に示すように第2の被制御流体である空気を導入する流体入口3から第1の主流体である水をポンプに供給する給水管路18に送り出す流体出口4との間に弁座7に対してニードルバルブ弁体6が設けられていて、第2の流体はこの弁を介して流量が制御される。
弁体6はピストン作用をするプランジャー5に結合されていて、圧力室2が圧力検知管13を介して主流体管路11に連通していることにより、その圧力が高くなればプランジャー5をその底部に設けられたコイルスプリング8の押圧力に抗して押し下げて被制御流体の導入流量を増加させ、逆にその圧力が低下すればプランジャー5がその底部に配置されたコイルスプリング8の押圧力により弁体6を閉じるように動作する。
圧力室2の圧力下におけるプランジャー5による弁体6の開閉度合いは、調整ネジ9によってコイルスプリング8によるプランジャー5への押圧力を調整することによって変更され、圧力室2の圧力とこの調整されたコイルスプリングによる押圧力とは平衡関係にある。したがって、被制御流体である空気流量を増すため、調整ネジによってコイルスプリング8を後退させてその押圧力を小さくすると、主流体管路11に置ける圧力によってプランジャー5は後退して弁体7を開ける方向に作動し、より多くの空気が主流体管路11に向けて導入される。
この結果、主流体管路11に導入された空気により主流体管路11における圧力が低下し、さらにこれと連通する圧力室2の圧力が低下するため、プランジャー5は再び弁体6を閉じる方向に作動する。
上記したように圧力室2の圧力とこの調整されたコイルスプリング8による押圧力とは平衡関係にあるため、この動作はこの平衡状態に向けて収束するように働き、いわゆるフィードバック回路による動作のように作動方向を交互に反転させながら所定の条件に向けて収束するような断続的な動作をせず、滑らかに平衡状態に達してその状態を維持、継続することができる。
本発明においては、所定の圧力においてこの平衡状態となるように調整ネジ9によって設定しなければならないが、予め調整ネジ9の操作量と圧力との関係を圧力計17によって確認しておけばよい。
すなわち、本発明に係る圧力流量比例制御弁の弁体6は、前述の設定条件においては4kgf/cm2(約400kPa)の主流体管路11の圧力の下で開放、若しくは開度を大きくし、被制御流体の空気が、被制御流体供給管路14から、吸水管路18を経由してポンプ16に吸い込まれる。ポンプ16に空気が入ると空気が圧縮され、吐出側の主流体管路11の圧力が降下し、それに伴なって弁体6の開度が小さくなるが、3.5kgf/cm2(約350kPa)に達すると主流体管路の圧力とコイルスプリング8による押圧力が平衡して弁体6がその圧力を維持する開度を保って停止する。
このように、弁体6は3.5kgf/cm2(約350kPa)以上で開き、3.5kg/cm2以下で閉じる動作を繰り返すのではなく、3.5kg/cm2に至るまで連続的に滑らかに導入空気量を変化させて安定して吸い込む。これは上記した原理により、プランジャー5の作動が主流体管路11の圧力に応じて平衡状態に向けて滑らかに作用するからである。また、上記の例においては弁体6としてニードルバルブ構造を使用したが、いわゆるコック構造など他のバルブ構造でもこれらの作用に変わりは無い。
上記の条件で、一定比率の空気と水の混合体が、圧力弁15を通り、外部で減圧されて超微細気泡を形成する。
〔実施例2〕
【0010】
図4は、本発明に係る圧力流量比例制御弁を海水淡水化真空蒸発装置に応用した実施態様を示す。
まず、低真空の真空ポンプ22の真空吸引力を10Torr(約1.3kPa)とする。従って、主流体管路21、圧力検知管路23、本発明に係る(真空)圧力流量比例制御弁20の圧力室2(図2参照)は同10Torrになる。そこで、本発明に係る圧力流量比例制御弁20の圧力調整ネジ9の調整にて真空計27が真空度15 Torr(約2kPa)になるように予め確認した操作量により、調整する。
圧力流量比例制御弁の構造は、圧力室に働く圧力関係が負圧として作動するため、プランジャー5に対する圧力の作用方向が図1と逆であるほか原理的に変わらない。
上記の調整により、本発明に係る圧力流量比例制御弁は、15 Torr以下で開放し、それ以上では閉じる方向に作動する。
15 Torr以下の減圧下で海水が真空蒸発室26に吸い込まれ、スプレ−・ノズル25から噴霧状態で噴出されて蒸発気化する。霧状の液体と気体との比表面積が大きければ、それに比例して蒸発速度も速くなる。
真空ポンプ22により、蒸気は冷却室28へ送り込まれ、冷却水により冷却されて凝縮した蒸気は蒸留水となって冷却室から出てくる。
真空蒸発室26で蒸発しきれなかった海水は、濃縮されて真空蒸発室26の底から排出される。
15 Torrにおける水の蒸発温度は、約17.5℃である故、寒い時期は、海水を前もって17.5℃以上に加熱する必要があるが、このように低温であるからその加熱手段もエネルギー単価の低い太陽光による集光加熱装置で十分間に合う。
以上の実施例1及び2に示したように、本発明の圧力流量比例制御弁の適用できる流体として、主流体と被制御流体とが気体と液体で異なる形態であるか否かを問わない。さらに、同じ流体の形態が変化した関係にあっても、主流体と被制御流体として両者の流量と圧力との間に相関関係が成り立つのであれば、本発明の原理は等しく適用できるのであって、本発明の適用対象としてなんら変わりは無い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】超微細気泡発生装置に応用される本発明に係る圧力流量比例制御弁の縦断面図である。
【図2】海水淡水化真空蒸発装置に応用される本発明に係る圧力流量比例制御弁の縦断面図である
【図3】本発明に係る圧力流量比例制御弁を特願2005−295417に開示される超微細気泡発生装置に応用した実施態様を示す。
【図4】本発明に係る圧力流量比例制御弁を海水淡水化真空蒸発装置に応用した実施態様を示す。
【符号の説明】
【0012】
1 本体
2 圧力室
3 流体入口
4 流体出口
5 プランジャー
6 弁体
7 弁座
8 コイルスプリング
9 圧力調整ネジ
10 圧力流量比例制御弁
11 主流体管路
12 被制御流体供給元
13 圧力検知管路
14 被制御流体供給管路
15 圧力弁
16 ポンプ
17 圧力計
18 吸水管路
20 真空圧力流量比例制御弁
21 主流体管路
22 真空ポンプ
23 圧力検知管路
24 被制御流体供給管路
25 スプレ−.ノズル
26 真空蒸発室
27 真空計
28 冷却室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御流体とその流入により圧力変化する主流体との関係にある流体を対象とし、
被制御流体の流量を調整する該制御弁を主流体の圧力若しくは負圧とこれに対向する力との間で平衡関係を形成して動作する動作機構により操作、制御するよう構成すると共に該動作機構の平衡位置を調整可能とし、
上記調整に伴なって生じた主流体の圧力変化を上記の平衡関係を介して上記動作機構に作用せしめて、その調整された平衡関係にある流量となるよう被制御流体の流量を制御可能としたことを特徴とする、
圧力流量比例制御弁。
【請求項2】
上記制御弁をプランジャーの動作により開度調整可能とすると共に
該プランジャーが上記主流体の圧力若しくは負圧とこれに対抗するコイルスプリングの押圧力により上記平衡関係を形成することにより上記動作機構を構成し、
プランジャーの作動位置を調整する調整手段により、該動作機構の平衡位置を調整可能としたことを特徴とする、
請求項1に記載する圧力流量比例制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−156649(P2007−156649A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348381(P2005−348381)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503355052)
【Fターム(参考)】