説明

圧力調整弁

圧力調整弁(10)は、ハウジング(12)と、ハウジング(12)内を案内される弁スプール(14)であって、ハウジング(12)内の流入孔(44)と相互作用する少なくとも1つの流入制御端部(56)が形成された上記弁スプール(14)と、を備え、流入制御端部(56)に隣接して、調節孔(46)と少なくともほぼ対向するプランジャ上に括れ部(54)が存在する。弁スプール(14)は循環型の環状溝(70)を有し、循環型の環状溝(70)は、流入制御端部(56)の、括れ部(54)とは反対の側にあり、流入孔(44)にほぼ対向することが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2007/0051414号明細書には、弁スプールを備えた圧力調整弁が記載されており、この弁スプールは、調節孔に対向し形状的に特別に形成された、直径が減少された部分(「括れ部」)を有する。米国特許第4220178号明細書も同様に、弁スプールを備えた圧力調整弁について記載している。弁スプールは、調節孔と流出孔との間に同様に括れ部を有する。この種の圧力調整弁は、例えば車両の自動変速装置で、そこにある油圧クラッチを作動させるために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、作動液の流れを改善し、圧力調整弁の流入制御端部での不安定性を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の根底にある問題は、請求項1の特徴を備えた圧力調整弁によって解決される。本発明の更なる発展形態は独立請求項に記載される。本発明にとって重要な特徴が、さらに以下の記載及び図面で示され、その際、この特徴は単独でも、全く異なる組み合わせにおいても本発明にとって重要でありうるが、これに関して再び明示的には示さない。
【0005】
流入孔に対向する循環型の溝(環状溝)によって、半径方向における動水力を最小化し、これによりクラッチ充填時間を短縮する流量断面(Stroemungsprofil)が形成される。本発明にかかる溝は特に、流入制御端部が「開く」(Aufreissen)際に卓越している。なぜならば、流入制御端部が「開き」次第、即ち、流入孔が少なくとも少し開放され次第、流体が調節孔の方向に流れるからである。この場合に、弁スプール内の循環型の環状溝は、弁スプールの円周方向における迅速な圧力補正のために役立ち、これにより、弁スプールに対して作用する油圧による横方向の力が少なくとも低減される。このことは特に、流入チャネルが1つだけ設けられる場合に該当する。この措置により、同時に、調節孔への、流入制御端部での釣り合いの取れた流入(symmetrische Zustroemung)が達成される。全体として、本発明によって、作動液の流れが改善され、流入制御端部での不安定性が回避される。
【0006】
ここでは上述の横方向の力は、流入孔が例えばハウジング内の循環型の環状溝により形成されているのではなく、ハウジング内の2つの対向する貫通孔、例えば2つの半径方向のチャネル孔を有する場合にさらに低減される。但しこのことは、圧力調整弁が使用可能な弁ブロック内に、両側からの流れ(beidseitige Stroemung)も設けられる場合にのみ有効である。この措置により、油圧による横方向の力が同様に低減される。横方向の力の低減に関しては、同然のことながら、円周面に均等に分散して配置された複数の流入孔が、半径方向のチャネルの形態で設けられる場合が最善である。
【0007】
作動液の流量断面、及び、漏れの低減のためには、環状溝が流入制御端部から間隔を取って配置される場合に有利である。
【0008】
同様に、環状溝の幅が流入孔の幅よりも狭い場合に、流れの案内にとって有利である。このことは特に、流入孔がハウジング内の循環型の環状溝により形成される場合に該当する。このような循環型の環状溝は更に、弁スプールの円周面に渡る圧力補正に寄与する。
【0009】
制御端部の直後の、流入制御端部に隣接する弁スプール上の括れ部の斜面の、弁スプールの縦軸に対する角度は、52°から72°の間、好適には60°から64°の間、より好適には62°である場合には特に有利であると判明している。この角度によって、最初に半径方向の油圧流(Hydraulikstroemung)の十分に強い方向転換がもたらされ、その際に、この方向転換によって、望まれぬ強い乱水流及び圧力損失が発生することはない。
【0010】
更なる別の有利な構成は、流入制御端部から見て更なる別の輪郭(Verlauf)において、弁スプール上の括れ部が、凹面状に湾曲した部分を有することにより際立っている。この凹面上に湾曲した部分によって、調節孔への、油圧流の更なる別の段階的な方向転換が行われ、この方向展転換は、凹面状の湾曲部により段階的に行われるため、僅かな圧力損失のみ発生する。従って、本発明にかかる圧力調整弁が非常に動的でありうるが、安定的に機能しノイズに対して感度低く反応するように、噴流は湾曲部に沿って案内される。
【0011】
その際、約3.5mmの、凹面状に湾曲した部分の曲率半径が特に有利であるということが判明しており、この約3.5mmという値は特に、作動液の特性及び圧力調整弁の一般的な寸法にも依存する。この値はまた、少し大きく又は少し小さくてもよい。
【0012】
先に述べた利点は、凹面状に湾曲した部分により、弁スプール上の括れ部の直径が最小値を有し、括れ部が、更なる別の輪郭において、凹面状に湾曲した部分の後に、直径が一定の部分を有する場合には更に強化される。直径が一定の部分の始まりは、作動液の噴流が凹面状に湾曲した部分を貫流する際に、正にこの箇所で弁スプールとの接触を失い接線方向に更に流れ、直接的に調節孔に当たるように、選択される。
【0013】
更なる発展形態において、直径が一定の部分が半径方向の壁部により画定され、壁部の半径方向の外側の末端に、ハウジング内の流出孔と相互作用する流出制御端部が形成されることが提案される。これにより、括れ部は流入制御端部から流出制御端部まで伸張するが、このことは製造技術的な利点も有する。全体として、このように提案される弁スプール上の括れ部のジオメトリ(Geometrie)によって、動水力の観点から特に最適な流量断面が形成される。特に、軸方向における動水力が最小化され、このことにより、車両変速装置に適用した際のクラッチ充填時間が短縮される。従って、このような弁は非常に動的に機能しうるが、他方では安定しておりノイズに対する感度が低い。
【0014】
このことは、調節孔の幅が、流入制御端部から流出制御端部までの弁スプール上の括れ部の幅よりも僅かに狭い場合になおさら該当する。これにより、弁スプールの括れ部内に案内された流れが、特に良好にフランジ内で再び受け止められる。このことは特に、調節孔がハウジング内の循環型の内部環状溝により形成される場合に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下では、本発明の実施形態が、添付の図面を参照して例示的に解説される。
【図1】圧力調整弁の縦断面図を示す。
【図2】図1の細部IIを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
圧力調整弁には、図面において統一的に符号10が付される。圧力調整弁は、図示されない自動変速装置内、例えば、車両のギヤ式自動変速機構内での油圧クラッチの制御又は作動のために役立ち、又は、デュアルクラッチトランスミッション及びCVTにおけるサーボシリンダ(Stellzylinder)の制御又は作動のためにも役立つ。圧力調整弁10は、プランジャ形状の弁スプール14がその内部へと滑走しながら案内されるフランジ型ハウジング12を備える。連結ピン16を介して、弁スプール14の端面18には、電磁アクチュエータ20により力を加えることが出来る。弁スプール14の反対側の末端部22に、フランジ型ハウジング12の捻じ込みプラグ26で支持される圧力ばね24が当接する。
【0017】
圧力調整弁10は、組み込み位置において、流入接続部28と、調節接続部30と、流出接続部32と、還流接続部(「フィードバックチャネル」)34と流体連結される。還流接続部34と調節接続部30とは互いに流体連結される。流入接続部28は、図に示されない圧力源、例えば油圧ポンプと接続されている。調節接続部30は、作動すべき油圧クラッチと繋がっており、即ち、調節接続部30には、調整すべき油圧が印加される。流出接続部32は低圧領域と接続されている。さらに、フランジ型ハウジング12は、軸方向に互いに間隔を取った半径方向に通る4つのチャネル36〜42を備え、この4つのチャネル36〜42は、自身に割り当てられた環状溝44〜50に流れ込む。環状溝44〜50は、ガイドボア52の内側の壁面に形成され、このガイドボア52内に、フランジ型ハウジング12内の弁スプール14が案内される。
【0018】
弁スプール14は、直径が減少された部分54を有し、この直径の推移は独特であり、以下でより詳細に解説する。弁スプール14の部分54を、以下では簡単に「括れ部」(Einschnuerung)と呼ぶ。部分54は、弁スプール14の全円周方向に渡っており、即ち、全体として回転対称的(rotationssymmetrisch)である。プランジャの括れ部54は図2で詳細に示されており、調整環状溝46にほぼ対向している。図2から分かるように、括れ部54は、図2では左側が、流入制御端部56により画定され、この流入制御端部56は、以下でさらに記載される形態及びやり方で、流入環状溝44と相互作用する。括れ部54はその意味では、流入制御端部56と直接的に隣接する。制御端部56に直接的に接して、括れ部54は、真っ直ぐに伸びる斜面58を有し、この斜面58は、弁スプール14の縦軸60に対して約62°の角度を有する。
【0019】
図2の括れ部54の輪郭に沿ってさらに右に進むと、斜面58に、凹面状に湾曲した部分62が繋がっている。この凹面状に湾曲した部分62の曲率半径は、ここでは3.5mmである。この凹面状に湾曲した部分62により、弁スプール14の半径は、括れ部54の領域において最小値、ここでは2.5mmを有する。凹面状に湾曲した部分62は、この最小値の部分を少し超えて、4mmの一定の半径を有する部分64まで伸びている。この部分64は、半径方向の壁部66により画定され、この壁部66の半径方向の外側の末端には、流出制御端部68が形成され、この流出制御端部68は、同様にさらに以下で記載される形態及びやり方で、フランジ型ハウジング12のガイドボア52内の流出環状溝48と相互作用する。従って、括れ部54は軸方向に、流入制御端部56から流出制御端部68まで伸びている。図2から、調整環状溝46の幅が、流入制御端部56から流出制御端部68までの括れ部54の軸方向の伸張(幅)よりも少し狭いことが分かる。図2で示される実施形態では、調整環状溝46の幅は7mmである。
【0020】
図2から特に分かるように、弁スプール14は循環型の環状溝70を有し、この環状溝70は、流入制御端部56の、括れ部54とは反対の側にあり、流入環状溝44にほぼ対向している。環状溝70は、図に示される実施形態において、端面の長さが2mmの方形の横断面を有する。環状溝70は、弁スプール14の軸方向に見て、ほぼこの寸法の分だけ、流入制御端部56から間隔が置かれている。図2から、環状溝70の幅が、流入環状溝44の幅よりも狭いことが分かる。
【0021】
圧力調整弁10は以下のように機能する。即ち、調整接続部30での所望の圧力が、電磁アクチュエータ20の対応する電流供給により調整される。調整接続部30での圧力が所望の圧力を超えて上昇する場合には、その意味では「圧力補正器」(Druckwaage)である弁スプール14が、図1及び図2では右へ、流出制御端部68が流出環状溝48に達するまで移動し、従って、作動液は流れ出ることが出来る。流出環状溝48は、その意味では流出孔を形成する。調整接続部30での圧力が、所望のレベルを下回って下がる場合には、弁スプール14は、図1及び図2では左へ、流入制御端部56が流入環状溝44の領域内に存在するまで移動する。流入環状溝44は、その意味では流入孔を形成する。従って、作動液は、流入接続部28から、流入チャネル36及び流入環状溝44を介して、括れ部54の領域内へと流れ込み、こうして調整環状溝46(「調整孔」)での圧力を再び高める。調整圧力がその所望の値に達した場合には、力の均衡が生まれ、弁スプール14は静止する。
【0022】
弁スプール14の括れ部54の前にある環状溝70により、弁スプール14の円周面に渡って圧力補正が達成され、括れ部54の方向への作動液の均等の取れた流入が保障される。括れ部54の輪郭の特別なジンメトリによってさらに、弁スプール14の軸方向に作用する流れ力を低減する安定的な流れの経路(Stroemungsverlauf)が保障される。また、特にクラッチ充填工程の際の圧力調整弁の動的な駆動において、即ち、制御接続部30での圧力上昇が望まれる場合に、油圧による横方向の力が低減される。直径が一定の部分64の始まりは、作動液の噴流が、凹面状の部分62を貫流する際に、正にこの箇所で弁スプール14との接触を失い接線方向に更に流れ、調整チャネル38の内部環状溝又は調整環状溝46に直接当たるように、選択される。これにより最終的に、安定的に機能しノイズに対する感度の低い圧力調整弁の非常に動的な駆動が保障される。
【0023】
完全なものとするために、漏れ接続部が図1に符号99で示される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両の自動変速装置で使用するための圧力調整弁(10)であって、
ハウジング(12)と、前記ハウジング(12)内を案内される弁スプール(14)であって、前記ハウジング(12)内の流入孔(44)と相互作用する少なくとも1つの流入制御端部(56)が形成された前記弁スプール(14)と、を備え、前記流入制御端部(56)に隣接して、前記ハウジング(12)内の調節孔(46)と少なくとも略対向するプランジャ上の括れ部(54)が存在する、前記圧力調整弁(10)において、
前記弁スプール(14)は循環型の環状溝(70)を有し、
前記循環型の環状溝(70)は、前記流入制御端部(56)の、前記括れ部(54)とは反対の側にあり、前記流入孔(54)に略対向することを特徴とする、圧力調整弁(10)。
【請求項2】
前記環状溝(70)は、前記流入制御端部(56)から間隔を有して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項3】
前記環状溝(70)の幅は、前記流入孔(44)の幅よりも狭いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項4】
前記流入孔は、前記ハウジング(12)内の循環型の環状溝(44)により形成されることを特徴とする、請求項3に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項5】
前記弁スプール(14)の縦軸(60)に対する、前記流入制御端部(56)に隣接する前記括れ部(52)の斜面(58)の角度は、52°から72°の間、好適には60°から64°の間、より好適には62°であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項6】
前記流入制御端部(56)から見て更なる別の輪郭において、前記括れ部(52)は、凹面状に湾曲した部分(62)を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項7】
前記凹面状に湾曲した部分(62)の曲率半径は、約3.5mmであることを特徴とする、請求項6に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項8】
前記凹面状に湾曲した部分(62)により、前記括れ部(52)の直径は最小値を有し、前記括れ部(52)は、前記更なる別の輪郭において、前記凹面状に湾曲した部分(62)の後に、直径が一定の部分(64)を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項9】
直系が一定の前記部分(64)は、半径方向の壁部(66)により画定され、前記壁部(66)の半径方向の外側の末端には、前記ハウジング(12)内の流出孔(48)と相互作用する流出制御端部(68)が形成されることを特徴とする、請求項8に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項10】
前記直径が一定の部分(64)の始まりは、作動液の噴流が前記凹面状に湾曲した部分(62)を貫流する際に、正にこの箇所で前記弁スプール(14)との接触を失い接線方向に更に流れ、直接的に前記調節孔(46)に当たるように、選択されることを特徴とする、請求項8又は9のいずれか1項に記載の圧力調整弁。
【請求項11】
前記調節孔(46)の幅は、前記流入制御端部(56)から前記流出制御端部(68)までの前記括れ部(52)の幅よりも僅かに狭いことを特徴とする、請求項9に記載の圧力調整弁(10)。
【請求項12】
前記調節孔は、前記ハウジング(12)内の循環型の環状溝(46)により形成されることを特徴とする、請求項10に記載の圧力調整弁(10)。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500444(P2013−500444A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522055(P2012−522055)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058141
【国際公開番号】WO2011/012366
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】