説明

圧力逃し弁

【課題】圧力の異常上昇を検知して安全作動できるうえ、温度の異常上昇をも検知して安全作動でき、しかも大形化することなく安価に実施できるようにする。
【解決手段】ハウジング(2)の内部に入口路(9)と弁室(6)とガス放出路(12)とを順に備え、弁室(6)の入口路(9)側に弁座(10)を備える。弁室(6)内に安全部材(13)を弁座(10)へ接離可能に挿入する。ハウジング(2)内に合金収容室(7)を設け、合金収容室(7)の周囲に合金排出路(14)を形成する。合金収容室(7)に所定の設定温度で溶融する低融点合金(15)を収容する。閉弁バネ(17)を低融点合金(15)と安全部材(13)との間に配置する。安全部材(13)を閉弁バネ(17)で弁座(10)側へ弾圧し、その反力を、固相状態の低融点合金(15)で受け止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵用合金貯蔵タンクや高圧ガスボンベなどのガス容器に付設される圧力逃し弁に関し、さらに詳しくは、圧力の異常上昇を検知して安全作動できるうえ、温度の異常上昇をも検知して安全作動でき、しかも1つのガス逃し路を設けて1個の安全部材を配置するだけでよく、大形化することなく安価に実施できる圧力逃し弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水素吸蔵用合金貯蔵タンクや高圧ガスボンベなどの各種ガス容器にあっては、ガス容器の内部空間に連通するガス逃し路に、安全装置として圧力逃し弁を配置したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
この圧力逃し弁は、ハウジング内に入口路と弁室とガス放出路とを順に備えており、この入口路を上記のガス逃し路に連通してある。上記の弁室には、入口路側に弁座を設けてあり、この弁座へ接離可能に安全部材を弁室内へ挿入してある。この安全部材は閉弁バネで弁座側へ弾圧してあり、ガス逃し路から入口路へ流入するガス圧力が所定の設定圧力に達すると、そのガス圧力を受けた上記の安全部材が上記の閉弁バネの弾圧力に抗して弁座から離隔し、これにより上記のガスが弁室を経てガス放出路へ安全に排出される。そしてこのガスの放出によりガス容器内が設定圧力以下に低下すると、上記の入口路から流入するガス圧力も低下する。これにより上記の安全部材は、この低下したガス圧力に抗して閉弁バネの弾圧力により弁座側へ移動し、弁座に当接して入口路とガス放出路との連通が遮断され、ガスの放出が停止される。
【0003】
上記の圧力感応式安全装置を備えたガス容器は、火災発生時などに加熱されると容器の強度が低下するので、貯蔵ガス圧力が所定の設定圧力に達する前に、即ちガス逃し弁が作動する前に損傷を受ける虞がある。そこでこれを防止するため、ガス逃し路に温度感応式安全装置として、低融点合金を備えた安全弁を配置したものがある。
しかしながら、水素吸蔵用合金貯蔵タンクにあっては、水素を吸蔵した合金が貯蔵されており、加熱されるとこの合金から水素が放出されるため、タンク内の圧力が急上昇する傾向がある。従って、火災発生等の加熱でタンク内が設定圧力に達する前に、上記の低融点合金が溶融するように、この低融点合金の融点を例えば40℃など、かなり低い温度に設定する必要がある。このため、何らかの原因で雰囲気温度が上昇した場合に、上記の低融点合金が溶融される誤作動が生じ易い問題があった。
【0004】
従来、上記の問題点を解消するため、タンクの内部空間に連通する2つのガス逃し路を設けて、第1ガス逃し路に圧力感応式のガス逃し弁を設け、第2ガス逃し路に温度感応式の低融点合金を備えた安全弁を設けることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この従来技術では、タンクが火災発生等で加熱された場合、上記の低融点合金が溶融する前にタンク内の圧力が設定圧力に達すると、上記の圧力感応式のガス逃し弁が開弁し、第1ガス逃し路からガスが安全に放出されてタンク内の圧力上昇が停止される。また上記の加熱により低融点合金が溶融すると、この温度感応式の安全弁が開弁作動し、タンク内のガスが第2ガス逃し路から安全に放出される。
【0006】
【特許文献1】特開平07−225000号公報
【特許文献2】特開2004−11765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、ガス容器の内部空間に連通させて2つのガス逃し路を設け、それぞれのガス逃し路に圧力感応式のガス逃し弁や温度感応式の安全弁を配置する必要があり、設備が大形化するうえ安価に実施できない問題がある。
【0008】
本発明の技術的課題は、上記の問題点を解消し、圧力の異常上昇を検知して安全作動できるうえ、温度の異常上昇をも検知して安全作動でき、しかも1つのガス逃し路に1個を配置するだけでよく、大形化することなく安価に実施できる圧力逃し弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図6に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明は圧力逃し弁に関し、ハウジング(2)の内部に入口路(9)と弁室(6)とガス放出路(12)とを順に備え、上記の弁室(6)の入口路(9)側に弁座(10)を備え、この弁室(6)内に安全部材(13)を上記の弁座(10)へ接離可能に挿入し、この安全部材(13)を閉弁バネ(17)で弁座(10)側へ弾圧した圧力逃し弁であって、上記のハウジング(2)内に合金収容室(7)を設けて、この合金収容室(7)の周囲に合金排出路(14)を形成し、上記の合金収容室(7)に所定の設定温度で溶融する低融点合金(15)を収容して、上記の閉弁バネ(17)をこの低融点合金(15)と安全部材(13)との間に配置し、上記の安全部材(13)を弁座(10)側へ弾圧する閉弁バネ(17)の反力を、固相状態のこの低融点合金(15)で受け止めたことを特徴とする。
【0010】
上記の入口路は、水素吸蔵用合金貯蔵タンクや高圧ガスボンベ等の、各種ガス容器の内部空間にガス逃し路を介して連通される。そして、ガス容器内の圧力が異常上昇して所定の設定圧力に達すると、上記のガス逃し路から入口路へ流入するガス圧力により、上記の安全部材が上記の閉弁バネの弾圧力に抗して弁座から離隔し、ガス逃し弁が開弁する。これによりガス容器内のガスがガス放出路から外部へ安全に排出され、ガス容器内の圧力の異常上昇が解消される。
【0011】
一方、火災発生等により雰囲気温度が所定の設定温度以上に上昇すると、上記の低融点合金が溶融し、上記の合金排出路から排出される。これにより、低融点合金は上記の閉弁バネの反力を受け止めることができなくなり、上記の安全部材に対する閉弁バネの弾圧力が低下する。この結果、この雰囲気が設定温度以上に上昇した場合は、ガス逃し路から入口路へ流入するガス圧力が上記の設定圧力よりも低い状態であっても、このガス圧力により上記の安全部材が閉弁バネの低下した弾圧力に抗して弁座から離隔し、ガス容器内のガスが入口路を経てガス放出路から外部へ安全に排出される。
【0012】
なお、水素吸蔵用合金貯蔵タンクにおいて、雰囲気温度の異常上昇により水素が吸蔵合金から放出されてガス容器内の圧力が設定圧力に達した場合、低融点合金が未だ所定の設定温度に達せず固相状態にある場合は、入口路へ流入する高いガス圧力で上記の安全部材が上記の閉弁バネの弾圧力に抗して弁座から離隔し、ガス容器内のガスがガス放出路から外部へ安全に排出され、ガス容器内の圧力の異常上昇が防止される。
【0013】
上記のハウジングは一体に構成して、この一体のハウジング内に上記の弁室と合金収容室とを互いに隣接させて設けても良い。この場合は、閉弁バネがハウジング内の弁室と合金収容室との間に配置されるので、閉弁バネの弾圧力を外部から変更できず、圧力設定値を所定の値に容易に保持できる利点がある。
しかし本発明では、上記のハウジングが第1ハウジング部分と第2ハウジング部分とを備え、この第1ハウジング部分に第2ハウジング部分を着脱可能に固定し、上記の弁室を第1ハウジング部分内に形成するとともに、上記の合金収容室を上記の第2ハウジング部分内に形成してもよい。この場合は、温度の異常上昇により安全作動すると、第2ハウジング部分のみを交換することで圧力逃し弁全体を再利用することができる利点がある。
【0014】
またこの場合、上記の第2ハウジング部分を、上記の第1ハウジング部分に対し進退調節可能に構成することもできる。この場合は、第1ハウジング部分に対する第2ハウジング部分の固定位置を調整することで、弁室に対する合金収容室の相対位置を変更して、低融点合金と安全部材との間に配置される上記の閉弁バネの弾圧力を調整することができ、従って、圧力逃し弁が安全作動する圧力を所望の値に容易に設定することができる利点がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0016】
(1) 入口路に流入するガス圧力が所定の設定圧力に達すると、そのガス圧力により安全部材が閉弁バネの弾圧力に抗して弁座から離隔するので、ガス容器内の圧力の異常上昇を検知して安全作動し、ガス容器内のガスをガス放出路から外部へ安全に排出して圧力の異常上昇を解消することができる。
【0017】
(2) 雰囲気温度が所定の温度以上に上昇すると、閉弁バネの反力を受け止めている上記の低融点合金が溶融し、閉弁バネの弾圧力が低下して安全部材が入口路のガス圧力で弁座から離隔する。この結果、火災発生時等に、雰囲気温度の異常上昇を検知して、ガス容器内のガスをガス放出路から外部へ安全に排出することができる。
【0018】
(3) 上記のように、圧力の異常上昇を検知して安全作動できるうえ、温度の異常上昇をも検知して安全作動できる安全装置でありながら、圧力検知式圧力逃し弁と温度検知式圧力逃し弁とを兼用しているので、1つのガス逃し路を設けて1個の安全部材を配置するだけでよく、装置全体を大形化することなく安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示す、圧力逃し弁の断面図である。
【0020】
図1に示すように、この圧力逃し弁(1)は、筒状のハウジング(2)の内部に装着穴(3)を形成してある。この装着穴(3)は、一方の端部にガス入口(4)を開口するとともに他方の端部は閉鎖してあり、この装着穴(3)内に弁座装着部(5)と弁室(6)と合金収容室(7)とをガス入口(4)側から順に形成してある。上記のガス入口(4)は、図示しないガス容器の内部空間にガス逃し路を介して接続される。
【0021】
上記の弁座装着部(5)には、筒状の弁座部材(8)が保密状に螺着固定してある。この弁座部材(8)内は入口路(9)に形成してあり、この入口路(9)を介して上記のガス入口(4)が上記の弁室(6)に連通される。またこの弁座部材(8)には、上記の弁室(6)に臨む端部に弁座(10)としてのOリングが付設してある。なお、符号(11)はフィルタを示す。
【0022】
上記の弁室(6)の周壁には、ガス放出路(12)が透設してある。このガス放出路(12)はハウジング(2)の外周面に開口してあり、従って、このガス放出路(12)を介して弁室(6)がハウジング(2)の外部に連通してある。
【0023】
上記の弁室(6)内には、安全部材(13)が上記の弁座(10)に対し進退移動可能に挿入してあり、弁座(10)側へ進出してこれに当接すると、上記の入口路(9)とガス放出路(12)との連通がこの安全部材(13)により遮断される。逆に、この安全部材(13)が弁座(10)側から後退して離隔すると、上記の入口路(9)がガス放出路(12)に連通する。
【0024】
上記の合金収容室(7)の周壁のハウジング(2)には合金排出路(14)が透設してある。この合金収容室(7)内には、所定温度で溶融する低融点合金(15)が収容してある。この合金収容室(7)は上記の弁室(6)に隣接させてあり、この弁室(6)に臨む側がバネ受部材(16)で蓋してある。このバネ受部材(16)と上記の安全部材(13)との間には閉弁バネ(17)が配置してあり、この閉弁バネ(17)の弾圧力で上記の安全部材(13)を弁座(10)側へ弾圧してある。そしてこの安全部材(13)を弁座(10)側へ弾圧する閉弁バネ(17)の反力が、上記のバネ受部材(16)を介して、上記の固相状態の低融点合金(15)に受け止めてある。
【0025】
次に、上記の圧力逃し弁の作動について説明する。
雰囲気温度が所定の設定温度よりも低い状態にあっては、上記の低融点合金(15)は固相状態に維持されている。バネ受部材(16)を介してこの低融点合金(15)に受け止められた上記の閉弁バネ(17)は、上記の安全部材(13)を弁座(10)側に弾圧している。この状態で、上記の入口路(9)内のガス圧力が所定の設定圧力よりも低い状態にあっては、図1に示すように、上記の安全部材(13)は上記の閉弁バネ(17)の弾圧力により、上記のガス圧力に抗して弁座(10)側へ押付けられており、上記の入口路(9)とガス放出路(12)との連通は遮断されている。
【0026】
上記の入口路(9)に加わるガス圧力が上記の設定圧力に達すると、そのガス圧力により安全部材(13)が上記の閉弁バネ(17)の弾圧力に抗して弁座(10)から離隔する。これにより上記の入口路(9)内のガスが弁室(6)を経てガス放出路(12)へ安全に排出される。そしてこのガスの排出により上記の入口路(9)内の圧力が上記の設定圧力よりも低下すると、上記の安全部材(13)が閉弁バネ(17)の弾圧力により弁座(10)側へ付勢され、この弁座(10)に当接して入口路(9)とガス放出路(12)との連通が遮断され、ガスの排出が停止される。
【0027】
なお図1に示すように、上記の弁室(6)の内周面と安全部材(13)の外周面との間には、合金収容室(7)寄り部位にOリング(18)が付設してあり、この安全部材(13)は、弁座(10)に対して進退移動する際、弁室(7)の内周面にガイドされて保密摺動する。このOリング(18)により弁室(6)は合金収容室(7)から確実に遮断されるので、上記の安全部材(13)が開弁作動した場合、弁室(6)内へ流入したガスは、合金収容室(7)を経て合金排出路(14)から外部へ漏出することがなく、上記のガス放出路(12)から確実に排出される。また、弁室(6)を大流量のガスが通過する場合には、安全部材(13)がいわゆるチャタリングを生じる虞があるが、上記のOリング(18)の装着によりこのチャタリングの発生が効果的に防止される。
【0028】
火災発生等により雰囲気温度が上昇した場合、例えば上記の入口路(9)が水素吸蔵用合金貯蔵タンクのガス逃し路に接続されていると、水素吸蔵合金から水素ガスが過剰に放出され、この入口路(9)のガス圧力が高くなる。上記の低融点合金(15)が未だ所定の設定温度に達せず溶融しないうちに、上記の入口路(9)のガス圧力が所定の設定圧力に達した場合は、この入口路(9)へ流入する高いガス圧力で上記の安全部材(13)が前記のように閉弁バネ(17)の弾圧力に抗して弁座(10)から離隔し、水素吸蔵用合金貯蔵タンク内のガスが入口路(9)と弁室(6)とガス放出路(12)とを順に経て外部へ安全に排出され、タンク内の圧力の異常上昇が防止される。
【0029】
また上記の雰囲気温度が所定の設定温度以上に達して、上記の低融点合金(15)が溶融すると、この低融点合金(15)は、上記の閉弁バネ(17)の弾圧力でバネ受部材(16)に押圧されているので、上記の合金排出路(14)から排出される。この排出により、上記の低融点合金(15)は上記の閉弁バネ(17)の反力を受止めることができなくなり、上記のバネ受部材(16)は合金収容室(7)内側へ、即ち、上記の弁座(10)から離れる方向へ移動し、閉弁バネ(17)の弾圧力が低減もしくは消失する。この結果、上記の入口路(9)内のガス圧力が上記の設定圧力よりも低い状態であっても、上記の安全部材(13)がこのガス圧力により、閉弁バネ(17)の低下した弾圧力に抗して弁座(10)から離隔し、入口路(9)内のガスが弁室(6)を経てガス放出路(12)から外部へ安全に排出される。
【0030】
図2は本発明の第2実施形態を示す、圧力逃し弁の断面図である。
この第2実施形態では、圧力逃し弁(1)のハウジング(2)が、第1ハウジング部分(2a)と第2ハウジング部分(2b)とを備え、この第1ハウジング部分(2a)に第2ハウジング部分(2b)を着脱可能に螺着固定してある。この第1ハウジング部分(2a)内には弁室(6)が形成してあり、第2ハウジング部分(2b)内には合金収容室(7)が、上記の弁室(6)に臨ませた状態で形成してある。
【0031】
この第2実施形態では、上記の合金収容室(7)内に収容された低融点合金(15)が、雰囲気温度の上昇により溶融して合金排出路(14)から排出された場合、上記の第2ハウジング部分(2b)を、新しい低融点合金(15)を備えた第2ハウジング部分(2b)に交換することで、この圧力逃し弁(1)を再利用することができる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので、説明を省略する。
【0032】
図3は本発明の第3実施形態を示す、圧力逃し弁の断面図である。
この第3実施形態では、上記の第2実施形態と同様、圧力逃し弁(1)のハウジング(2)が、第1ハウジング部分(2a)と第2ハウジング部分(2b)とを備え、この第1ハウジング部分(2a)に第2ハウジング部分(2b)を着脱可能に螺着固定してある。但しこの第3実施形態では、上記の第1ハウジング部分(2a)に対する第2ハウジング部分(2b)の固定位置を進退調節可能に構成してあり、これにより弁室(6)に対する合金収容室(7)の相対位置を変更できるようにしてある。この結果、安全部材(13)と低融点合金(15)との間に配置される閉弁バネ(17)の弾圧力を調整することができ、従って、この圧力逃し弁(1)が安全作動する圧力を所望の値に容易に設定することができる。
【0033】
上記の各実施形態で説明した圧力逃し弁は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部材の形状や構造、配置などをこれらの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0034】
例えば、上記の各実施形態では、合金排出路(14)を合金収容室(7)の周壁に透設した。しかし本発明では、この合金排出路を合金収容室の周囲に設けてあればよく、例えば図4に示す変形例1のように、バネ受部材(16)にこの合金排出路(14)を設けることも可能である。この場合、雰囲気温度の異常上昇により溶融した低融点合金(15)は、上記のバネ受部材(16)に設けた合金排出路(14)から弁室(6)内へ排出され、これに伴ってバネ受部材(16)が合金収容室(7)内へ押し込まれる。
【0035】
また、上記の各実施形態では弁座(10)にOリングを用いたが、本発明では、弁室の内面や入口路の内面を弁座に用いてもよい。例えば図5に示す変形例2では、弁室(6)の内面を弁座(10)に用いてあり、安全部材(13)の弁座(10)と対面する部位にシール部材(19)を付設してある。
【0036】
また、上記の各実施形態や変形例では、筒状ハウジング(2)のガス入口(4)とは反対側の端部を閉塞して、この端部に合金収容室(7)を形成し、上記のガス放出路(12)を弁室(6)の周壁に透設した。しかし本発明では、ガス放出路や合金収容室など、各構成をいずれの部位に形成してもよい。
【0037】
例えば図6に示す第4実施形態では、筒状ハウジング(2)のガス入口(4)とは反対側の端部に、ガス放出路(12)が形成してある。このガス放出路(12)に配管を接続することで、安全作動時にガス排出路(12)へ排出されるガスを、所望の外部空間へ安全に案内できるようにしてある。また、弁室(6)内に挿入された安全部材(13)の内部には、上記のガス放出路(12)側に連通路(20)が形成してあり、この連通路(20)を介して弁室(6)内がガス放出路(12)に連通してある。上記の安全部材(13)の外周面と筒状ハウジング(2)の内周面との間には合金収容室(7)が形成してあり、低融点合金(15)が収容してある。上記の合金収容室(7)は、ハウジング(2)に透設した合金排出路(14)を介して外部空間に連通してある。一方、上記の安全部材(13)の外周面には、フランジ部(21)が突設してあり、このフランジ部(21)と上記の低融点合金(15)との間に、合金収容室(7)を蓋するバネ受部材(16)を介して閉弁バネ(17)が配設してある。
【0038】
なお、本発明において上記の入口路は、ガス容器の内部空間にガス逃し路を介して連通してあればよい。従って、上記のハウジングはガス容器やこれに付設する容器弁に装着してもよく、あるいはこれ等に接続した配管に装着してもよい。さらに上記のガス容器は水素吸蔵用合金貯蔵タンクだけでなく、その他の高圧ガスボンベであってもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の圧力逃し弁は、圧力の異常上昇を検知して安全作動できるうえ、温度の異常上昇をも検知して安全作動でき、しかも1つのガス逃し路を設けて1個の安全部材を配置するだけでよく、大形化することなく安価に実施できるので、水素吸蔵用合金貯蔵タンクに付設する安全装置として特に好適であるが、他の高圧ガスボンベに付設される安全装置としても好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、圧力逃し弁の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す、圧力逃し弁の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す、圧力逃し弁の断面図である。
【図4】第1実施形態の変形例1を示す、合金収容室近傍の断面図である。
【図5】第1実施形態を変形例2を示す、弁座近傍の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示す、圧力逃し弁の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…圧力逃し弁
2…ハウジング
2a…第1ハウジング部分
2b…第2ハウジング部分
6…弁室
7…合金収容室
9…入口路
10…弁座
12…ガス放出路
13…安全部材
14…合金排出路
15…低融点合金
17…閉弁バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)の内部に入口路(9)と弁室(6)とガス放出路(12)とを順に備え、上記の弁室(6)の入口路(9)側に弁座(10)を備え、この弁室(6)内に安全部材(13)を上記の弁座(10)へ接離可能に挿入し、この安全部材(13)を閉弁バネ(17)で弁座(10)側へ弾圧した圧力逃し弁であって、
上記のハウジング(2)内に合金収容室(7)を設けて、この合金収容室(7)の周囲に合金排出路(14)を形成し、
上記の合金収容室(7)に所定の設定温度で溶融する低融点合金(15)を収容して、上記の閉弁バネ(17)をこの低融点合金(15)と安全部材(13)との間に配置し、
上記の安全部材(13)を弁座(10)側へ弾圧する閉弁バネ(17)の反力を、固相状態のこの低融点合金(15)で受け止めたことを特徴とする、圧力逃し弁。
【請求項2】
上記のハウジング(2)は第1ハウジング部分(2a)と第2ハウジング部分(2b)とを備え、この第1ハウジング部分(2a)に第2ハウジング部分(2b)を着脱可能に固定し、上記の弁室(6)を第1ハウジング部分(2a)内に形成するとともに、上記の合金収容室(7)を上記の第2ハウジング部分(2b)内に形成した、請求項1に記載の圧力逃し弁。
【請求項3】
上記の第2ハウジング部分(2b)を、上記の第1ハウジング部分(2a)に対し進退調節可能に構成した、請求項2に記載の圧力逃し弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−58088(P2009−58088A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227361(P2007−227361)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】