説明

圧縮成形装置及び圧縮成形方法

【課題】プリフォームのブロー成形時において、加熱装置による温度調整を軽減又は省略すること。
【解決手段】プリフォームの圧縮成形金型33におけるキャビティ金型34の測定熱移動量Qb’とスライドインサート金型36の測定熱移動量Qn’を計測し、これらの測定熱移動量比Qn’/Qb’を監視する。測定熱移動量比Qn’/Qb’が一定の範囲内になるように、監視することによって、ブロー成形時に加熱手段を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームを連続的にブロー成形する際に、再加熱を軽減若しくは省略して好適な条件にてブロー成形できるようにする圧縮成形金型及び圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製容器は、軽量性や経済性或いは優れた物性などにより、飲料や食品用の容器として日常生活において汎用されている。特に、ポリエチレンテレフタレート(いわゆるPET)から成形される容器(ペットボトル)は、優れた機械的性質や透明性などにより清涼飲料水や嗜好飲料及び食品用の容器として非常に需要が高く、消費者に重用されている。
このように、ポリエチレンテレフタレートに代表される合成樹脂容器は、一般に、プリフォーム(予備成形された有底円筒状成形材料)に成形金型内にて空気などの流体を吹き込み膨張成形する延伸ブロー成形法(単に、延伸成形或いはブロー成形ともいわれる)によって効率的に製造されている。
【0003】
従来から、プリフォームの成形は、射出成形法が用いられていたが、射出成形装置に比べて低価格で、装置の小型化と低温成形が行える成形装置として圧縮成形機が提案されている。量産性を高めて製造効率を向上させるために、多数個の成形金型を回転円盤に取り付けたロータリー圧縮成形機(回転式可動型圧縮成形機)が開発され採用されるに至った。
圧縮成形の場合は、圧縮成形機によって合成樹脂からプリフォームが逐次連続成形され、成形されたプリフォームは搬送ラインによって直ちにブロー成形機へ逐次連続供給され、ブロー成形機において容器に逐次連続成形される。従って、圧縮成形機により成形されたプリフォームは高い温度を保ったまま、かつ、個々のプリフォームは温度のばらつきがほとんど無い状態でブロー成形まで連続的に進めることが可能であり、安定したボトル成形性が得られるばかりではなく、充填システムの無菌性を維持するといった観点からも好ましいと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−128839号公報 (該特許文献1の射出成形装置は、プリフォームを成形したボトルのノズル部(首部)の下側に肉溜りが生じ、これがブロー成形時に周方向にレンズ状リングとして外部に現れることから、溶融樹脂の成形時にコア型のノズル部の下部に対応する部分に断熱材を設け、溶融樹脂に温度差を設けることによって、肉溜まりを防止している。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮成形機によって成形されたプリフォームの成形直後における各部位の温度は肉厚によって左右される。一方、プリフォーム成形とブロー成形を直結したシステムにおいて、プリフォーム成形後のコア(雄型)からのプリフォームの取り出しの際やブロー成形時の高圧エアーシールの際にノズル部(口部)にかかる応力による変形や圧縮エアー自体による口部変形を回避するためにはノズル部の温度は一定温度以下に制約される。反面、圧縮成形後のノズル部の温度を下げるために、圧縮成形金型内で長時間過剰に冷やしすぎると、プリフォームの胴部及び(又は)底部の温度も低くなるので、圧縮成形後のプリフォームを加熱工程を簡略にして直ちに延伸ブロー成形する際、十分な延伸成形ができなくなることがある。このためブロー成形するにあたって、プリフォーム温度の低い個所については部分加熱などによる温度調整を要し、温度が著しく低い場合は多大な熱エネルギーが必要となる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、プリフォームのブロー成形時において、加熱装置による温度調整を軽減又は省略することができるプリフォームの圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の圧縮成形装置は、合成樹脂製ブロー成形容器を形成するためのノズル部、胴部及び底部を有するプリフォームを圧縮成形するためのプリフォーム圧縮成形金型を備えた圧縮成形装置であって、圧縮成形以前の溶融樹脂温度を測定する手段と、前記金型の前記ノズル部形成部の温度を測定する手段と、前記金型の前記胴部形成部の温度を測定する手段と、を備え、さらに、測定された温度から該ノズル部形成部と胴部形成部の移動熱量に関する比を求め、該移動熱量に関する比が所定の範囲内にあるよう温調制御する温調手段を備えている。
また、上記目的を達成するために、本発明の圧縮成形装置は、合成樹脂製ブロー成形容器を形成するためのノズル部、胴部及び底部を有するプリフォームを圧縮成形するためのキャビティ金型、スライドインサート金型及びコア金型を備えたプリフォーム圧縮成形金型を備えた圧縮成形装置において、溶融樹脂の平均押出樹脂温度をT0(℃)、プリフォームのノズル部の最高到達表面温度をHn(℃)、プリフォームの胴部の最高到達表面温度をHb(℃)、プリフォームのノズル部の肉厚をdn(mm)、プリフォームの胴部の肉厚をdb(mm)とし、圧縮成形中のプリフォームのノズル部から金型が吸収する理論移動熱量をQn(J/m/k)、圧縮成形中のプリフォームの胴部から金型が吸収する理論移動熱量をQn(J/m/k)としたとき、 理論移動熱量比Qn/Qbを[(T0−Hn)×dn]/[(T0−Hb)×db]として計算し、ノズル部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qn’、胴部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qb’を求めるとともに、測定熱移動量比Qn’/Qb’を求め、該測定熱移動量比Qn’/Qb’が、前記理論移動熱量比Qn/Qbに基づいて所定の範囲内にあるかを判定する制御手段を設けている。
さらに、上記目的を達成するために、本発明の圧縮成形装置は、合成樹脂製ブロー成形容器を形成するためのノズル部、胴部及び底部を有するプリフォームを圧縮成形するためのキャビティ金型、スライドインサート金型及びコア金型を備えたプリフォーム圧縮成形金型を備えた圧縮成形装置において、圧縮成形時にキャビティ金型へ投入される際の溶融樹脂の温度T0、該溶融樹脂によって成形されるプリフォームのノズル部の肉厚dn、胴部の肉厚db、圧縮成形後のプリフォームのノズル部の最高到達表面温度Hn及びプリフォームの胴部の最高到達表面温度Hbを予め計測し、これらのデータから、圧縮成形時におけるプリフォームのノズル部からスライドインサート金型への理論熱移動量Qbと胴部からキャビティ金型への理論熱移動量Qbの理論熱移動量比Qn/Qbを計算してサンプリングし、該サンプリング結果から、前記理論熱移動量比Qn/Qbの各データ及び該データに基づいた所定の最小値と最大値の範囲が記憶された制御部と、圧縮成形時に前記スライドインサート金型へ流れる冷却水の流量Vnを計測するノズル側流量計と、前記キャビティ金型に流れる冷却水の流量Vbを測定する胴部側流量計と、圧縮成形時における型締め時のスライドインサート金型へ供給される冷却水の温度Tn1を測定する温度センサと、スライドインサート金型から排水される冷却水の温度Tn2を測定する温度センサと、圧縮成形時における型締め時のキャビティ金型へ供給される冷却水の温度Tb1を測定する温度センサと、キャビティ金型から排水される冷却水の温度Tb2を測定する温度センサとを備え、前記制御部は、前記流量Vn,前記温度Tn1,Tn2、前記プリフォームのノズル部の長さLnの値によって、ノズル部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qn’を求め、また、前記流量Vb、前記温度Tb1,Tb2、前記プリフォームの胴部の長さLbの値によって、胴部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qb’を求めるとともに、測定熱移動量比Qn’/Qb’を制御部によって求め、前記記憶された所定の最小値と最大値の範囲にあるかを判定するようにした。
上記圧縮成形装置は、前記スライドインサート金型及び/又はコア金型のノズル部形成部にノズル部冷却手段を設け、前記キャビティ金型及び/又はコア金型の胴部形成部に胴部冷却手段を設け、前記制御手段は、前記ノズル部冷却手段と胴部冷却手段を制御し、前記測定移動熱量比Qn’/Qb’に応じて、前記制御手段が前記ノズル部冷却装置と前記胴部冷却装置の冷却水の温度及び/又は水量を調整することが好ましい。
上記圧縮成形装置は、前記理論熱移動量比Qn/Qbのデータに基づいた所定の最小値が0.278、所定の最大値が2.464であることが好ましい。
上記圧縮成形装置の前記コア金型のノズル部冷却手段と胴部冷却手段は、ノズル部冷却手段の方が胴部冷却手段よりも冷却能力を大きくすることが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明の圧縮成形方法は、圧縮成形時のキャビティ金型へ投入される際の溶融樹脂の温度T0、該溶融樹脂によって成形されるプリフォームのノズル部の肉厚dn、胴部の肉厚db、圧縮成形時におけるプリフォームのノズル部の最高到達表面温度Hn、プリフォームの胴部の最高到達表面温度Hb、圧縮成形時おける前記スライドインサート金型へ流れる冷却水の供給口と排水口の温度変化及び圧縮成形時おける前記キャビティ金型へ流れる冷却水の供給口と排水口の温度変化を予め計測する工程と、これらの計測データから、圧縮成形時のプリフォームのノズル部からスライドインサート金型への理論熱移動量Qnと圧縮成形時におけるプリフォームの胴部からキャビティ金型への理論熱移動量Qbの理論熱移動量比Qn/Qbのデータを予め求めるサンプリング工程と、圧縮成形時に前記スライドインサート金型へ流れる冷却水の流量Vnを計測する工程と、圧縮成形時に前記キャビティ金型へ流れる冷却水の流量Vbを計測する工程と、ノズル部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qn’を求める工程と、胴部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qb’を求める工程と、前記測定熱移動量Qn’と測定熱移動量Qb’とから測定熱移動量比Qn’/Qb’を求める工程と、前記サンプリング工程における前記理論熱移動量比Qn/Qbのデータと、前記測定熱移動量比Qn’/Qb’の計算値に基づいて前記インサート金型及び/又は前記キャビティ金型へ流れる冷却水の流量Vn,Vbを調整する流量調整工程を含むようにした。
上記圧縮成形方法は、前記スライドインサート金型及び/又はコア金型のノズル部形成部を冷却するとともに、前記キャビティ金型及び/又はコア金型の胴部形成部を冷却する冷却水の流れを制御手段が制御し、前記理論移動熱量比Qn/Qbにしたがって、前記制御手段が前記ノズル部形成部と前記胴部形成部の冷却水の温度及び/又は水量を調整することが好ましい。
上記圧縮成形方法は、前記測定熱移動量比Qn’/Qb’が、0.278<Qn’/Qb’<2.464の範囲外の時に前記流量調整工程によって、冷却水の流量Vn,Vbを調整することができる。
上記圧縮成形方法は、前記測定熱移動量Qn’及び前記測定熱移動量Qb’が、1<Qn’/Qb’を満たすことが好ましい。
上記圧縮成形方法は、前記プリフォームのノズル部の最高到達表面温度Hn及びプリフォームの胴部の最高到達表面温度Hbが、Hb−Hn≧20を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の圧縮成形装置及び圧縮成形方法によると、プリフォームの成形にあたって、ノズル部を積極的に冷却し、胴部の冷却を抑えることによって、プリフォーム成形後のブロー成形時に、ノズル部の変形を防止でき、胴部はブロー成形時に加熱装置を不要にしたり、若しくは加熱量を軽減できる。よって、プリフォームの不良率が減少し、加熱装置の設備の省略、若しくは縮小化を図ることができ、設備費を軽減できる。
測定熱移動量比Qn’/Qb’を監視することによって、理論移動熱量比Qn/Qbからプリフォームの成形の良否を判定することができ、ブロー成形後の加熱の必要性を判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態による圧縮成形金型を設備する圧縮成形システムの概略平面図である。
【図2】図1の圧縮成形システムの圧縮成形装置とその周辺に配置された装置の概略平面図である。
【図3】本実施形態で成形されるプリフォームの断面図である。
【図4】本発明の実施形態による圧縮成形金型の閉じ状態におけるの断面図である。
【図5】図4の圧縮成形金型の開状態における断面図である。
【図6】図4の圧縮成形金型の冷却流路を説明するための断面図である。
【図7】図6の圧縮成形金型に冷却水を圧送する冷却システムの概略図である。
【図8】Aはキャビティ金型に溶融樹脂を供給している状態の断面図、Bはスライドインサート金型が閉じ、コア金型が下降している状態の断面図、Cは圧縮成形金型の圧縮成形前の成形状態を示す断面図、Dは圧縮成形金型の圧縮成形後の成形状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態による圧縮成形金型の熱移動量比を監視するためのフローズである。
【図10】金型の冷却水の温度変化と成形時間との関係から移動熱量を導くための図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による圧縮成形金型の熱移動量比を監視するためのフローズである。
【図12】本発明の第4の実施形態による圧縮成形金型の閉じ状態におけるの断面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態による圧縮成形金型の閉じ状態におけるの断面図である。
【図14】本発明の第6の実施形態による圧縮成形金型の閉じ状態におけるの断面図である。
【図15】本発明の第7の実施形態による圧縮成形金型の閉じ状態におけるの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例によるプリフォームの圧縮成形金型及びブロー成形容器の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2を参照にして、樹脂供給装置1はシリンダ状の溶融樹脂の押出機2とカッタホイール8を設けている。押出機2は、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂素材を加熱溶融及び混練して、溶融樹脂を安定に搬送するため内部のギヤポンプに搬送する。ギヤポンプは、導管を介して下向きのノズル(図示せず)が設けられている押出ノズル4に接続され、押出ノズル4はそのノズル下端部に押出開口を形成し、溶融樹脂は押出開口から略円柱形状に形成されて連続的に下方に押し出されて、カッタホイール8に供給される。カッタホイール8には、回転ターレット9に設けられたカッタで溶融樹脂が切断され、カッタホイールには、その切断された溶融樹脂(ドロップ)を把持する把持部材9a(図8のAも参照)が設けられている。
【0010】
カッタホイール8の下流側には、圧縮成形装置31とブロー成形機52が配設され、圧縮成形装置31には、回転支持体32及び回転支持体32に配設された複数個の圧縮成形金型33が備えられている。回転支持体32は、図2に示す場合では、カッタホイール8と反対方向の反時計方向に回転駆動させられる。圧縮成形金型33は、回転支持体32の周方向に等間隔をおいて複数個配設されている。
カッタホイール8は、溶融樹脂把持部材の回転軌道と圧縮成形金型33のキャビティ金型34の回転軌道の接線が同方向に接し(図1)、それらの周速が一致するようにしている。それらの回転軌道の位置または区間では、溶融樹脂の把持部材9a(図8のA)がキャビティ金型34の直上方に位置するように同調回転される。この際、溶融樹脂は把持部材9aから解放されてキャビティ金型34に投下される。
【0011】
次に、プリフォームの圧縮成形金型とこの圧縮成形金型で成形されるプリフォームについて、詳細に説明する。
先ず、図3に示すプリフォーム5から説明する。
図に示すように、プリフォーム5は、上部から下部に向かって、ノズル部5a、胴部5b及び底部5cを備えている。ノズル部5aには、容器の成形時に飲料などの注入・注出口となる開口5d、キャップの雌ネジが螺着する雄ネジ部5e、該雄ネジ部5eの下部に配置される環状のカブラ部5f、及びネックリング部5gとからなる。プリフォーム5の胴部5bは、ネックリング部5gの下方に形成される。
【0012】
なお、ノズル部5aの上端は、図3に示すように角隅がシャープエッジになっている場合でもよいし、多少、角落としのため面取りが行われるか、若しくは、丸められていてもよい。多少の角落しがされている場合、プリフォームのノズル部の肉厚dnを決めるのにあたり、図3に示すように、ノズル部5a外径部上端を形成する金型内径Dno(プリフォーム製品の外径dnoに対応する径)と内径部上端を形成する金型外径Dni(プリフォーム製品での内径dniに対応する径)を決め、dn=(Dno−Dni)/2とする。なお、内外径部の上端での外径または内径の検査測定が困難な場合は、内外径部の上端近傍で、内外径部の上端と径の値が大きく変わらず検査測定しやすい箇所、例えばノズル部5aの天面から0.7mm下若しくは2.5mm下など、検査しやすい箇所の寸法を決めてdnを設定・製作してもよい。また、ノズル部の平均径DnはDn=(Dno+Dni)/2とする。
更に、プリフォームの胴部の肉厚dbおよび平均径Dbはプリフォーム胴部長さLbの中間位置における金型外径Dbo、金型内径Dbiよりdb=(Dbo−Dbi)/2、Db=(Dbo+Dbi)/2とする。
【0013】
図4は、上述した圧縮成形金型33の断面図であり、以下圧縮成形金型33について詳細に説明する。
圧縮成形金型33は、雌型であるキャビティ金型34、雄型であるコア金型35、左右に分離する分割型であるスライドインサート金型36及び溶融樹脂が供給されるキャビティ金型34の外周囲に配設されるガイドリング37を備えている。そして、上下方向における上方にコア金型35が配設され、コア金型35の下部にスライドインサート金型36が配設され、これらの下部にキャビティ金型34が配設される。
キャビティ金型34は、ほぼ円柱形状であって、中央部内側上部に円形の開口34aを有する成形孔38を形成し、成形孔38は開口34aからほぼ直下方に延びるようにして形成されている。成形孔38の内周面はプリフォームの外周面を形成する。なお、キャビティ金型34の成形孔38は、コア金型35及びスライドインサート金型36との型締め時に成形孔38はプリフォーム形状になるが、説明の便宜上、成形時においても、同一の符号を付して成形孔38とする。
【0014】
コア金型35は上部に支持部35aを設け、支持部35aの下面には、該下面の中央から下方に延びる略円柱形状のコア本体35bが設けられている。このコア本体35bの外周面は、プリフォームの内面を形成する。また、支持部35aの下面には、コア本体35bと同心円上に配置されている環状凹部35cが上向きに窪むようにして形成されている。
スライドインサート金型36は左右に2分割され、垂直面に対して対称の半円環であり、両者が一体となって環状になる。このように、スライドインサート金型36は、分割型が組み付けられた状態で中央を上下に貫通するノズル形成孔36aが形成されている。ノズル形成孔36aはプリフォーム5のノズル部(口部)5aの外周面及びノズル部5aの上側一部を形成し、雄ネジ5eやカブラ部5f,ネックリング部5gなどを形成するノズル形成部となる。
【0015】
円筒状のガイドリング37は、キャビティ金型34の外周面34eに配置され、その外周面34eを上下方向へ摺動することができる。ガイドリング37の上端部には、上方に向かって半径方向外側に拡径するテーパ状の内円錐台面37aを形成している。プリフォーム圧縮成形金型33の型締め時では、内円錐台面37aが、スライドインサート金型36の外円錐台面36cを若干摺動した後、当接する初期嵌合部37a,36cを形成する。
図4に示すように、プリフォームの圧縮成形金型33の型締め時では、プリフォーム5と同じ空間が形成され、コア本体35bとスライドインサート金型36との間には、プリフォーム5の口部上部肉厚dn(図3)と同じ大きさの隙間が形成され、コア本体35bとキャビティ金型34との間には、ネックリング部5gの下部において胴部5bと同じ肉厚db(図3)の隙間が形成される。圧縮成形金型33においてdnおよびdbは、樹脂の熱収縮率等を考慮して適宜、プリフォームの肉厚よりも僅かに大きい値に設定する。
【0016】
本実施形態では、図7に示すように、圧縮成形金型33にノズル部5a及び胴部5bを冷却する冷却装置40が配設されている。
冷却装置40は、プリフォームのノズル形成部を冷却するノズル部冷却系統40a、胴部形成部を冷却する胴部冷却系統40b、及びコア金型35を冷却するコア部冷却系統40cの3系統に分かれている。
ノズル部冷却系統40aは、冷却水をスライドインサート金型36に送るための冷却管48a(図6)とポンプ42a、冷却水の流量を変えて冷却水の温度調整をする流量制御弁43a、スライドインサート金型36の入口側と出口側の温度を測定するための熱電対44a,45aを備えている。
スライドインサート金型36の内部には、左右の金型を併せて一対の冷却管48a(図6)がノズル形成部の外周囲を取り囲むようにして配設されている。ポンプ42aによって圧送される冷却水は、配管55aを通り制御部39を介して流量制御弁43aによって流量調整がされ、熱電対44aによってスライドインサート金型36の供給口46a側の温度を測定した後、冷却水はスライドインサート金型36を冷却し、排水口47a側にて熱電対45aによって冷却水の温度と温度変化に関する時刻を測定し、熱が加えられた冷却水は熱交換機41によって冷却される。
【0017】
胴部冷却系統40bも同様に、冷却水をキャビティ金型34に送るための冷却管48bとポンプ42b、冷却水の流量を制御して冷却水の温度調整をする流量制御弁43b、スライドインサート金型36の入口側と出口側の温度を測定するための熱電対44b,45bを備えている。
キャビティ金型34の内部には、コイル形状の冷却管48b(図6)がノズル形成部の周囲を取り囲むようにして配設されている。ポンプ42bによって圧送される冷却水は、配管55bを通り、制御部39を介して流量制御弁43bによって流量調整がされ、熱電対44bによってキャビティ金型34の供給口46b側の温度を測定した後、冷却水はキャビティ金型34を冷却し、排水口47b側にて熱電対45bによって冷却水の温度と温度変化に関する時刻を測定し、熱が加えられた冷却水は熱交換機41によって冷却される。
【0018】
コア冷却系統40cも同様に、冷却水をコア金型35に送るための冷却管48cとポンプ42c、冷却水の流量を制御して冷却水の温度調整をする流量制御弁43c、コア金型35の入口側と出口側の温度を測定するための熱電対44c,45cを備えている。
コア金型35の内部には、冷却管48cがノズル形成部の周囲を取り囲むようにして配設されている。ポンプ42cによって圧送される冷却水は、配管55cを通り制御部39を介して流量制御弁43cによって流量調整がされ、熱電対44cによってコア金型35の供給口46c側の温度を測定した後、冷却水はキャビティ金型34を冷却し、排水口47c側にて熱電対45cによって冷却水の温度と温度変化に関する時刻を測定し、熱が加えられた冷却水は熱交換機41によって冷却される。
なお、ノズル部冷却系統40a、胴部冷却系統40b及びコア冷却系統40cの冷却について、金型の冷却方法として冷却水の冷却温度を一定にして冷却水量の増減によって調整するようにしたが、冷却水の流量を一定にして、水温を変化させることによって、ノズル部冷却系統40a、胴部冷却系統40b及びコア冷却系統40cの温度を調整するようにしてもよいし、さらには両者を併用して温度調整してもよい。
冷却水の流量を一定にして、水温を変化させるには、図7において、熱交換機41の冷却性能を調整したり、ノズル部冷却系統40a、胴部冷却系統40b及びコア冷却系統40cの各管路に対応するよう連結した各管路69a〜69c(想像線で示す)に温度調整用の冷水又は温水を引き込むようにしてもよい。
【0019】
図6に示すように、コア金型35は上部に支持部35aを設け、支持部35aの下面には、該下面の中央から下方に延びる略円柱形状のコア本体35bが設けられている。コア金型35には、内部に冷却水の流路48cが設けられ、流路48cは支持部35aの上部に設けられた冷却水の供給口46aに一端が連通され、他端が支持部35aの周側部に設けられた排水口47aに連通されている。
流路48cは上方の供給口46aから、コア本体35bの中心部を通る中央流路64aの下端部まで延び、下端部から中央流路64aの周りに同心円上に配置されている外周流路65aが形成されている。
中央流路64aと外周流路65aはコア本体35bの下端部で連通し、外周流路65aはコア本体35bの下端側から上方の支持部35aまで延び、排水口47aに連通している。そして、外周流路65aはプリフォーム5のネックリング5gが形成される部分より下方は流路が狭く形成され、ネックリング5が形成される部分よりも上方は、流路の幅が広くなるように形成されている。プリフォーム5が形成されるネックリング5gの高さよりもやや高い位置には、中央流路64aと外周流路65aとを連通するバイパス流路66aが形成されている。バイパス流路66aは外周流路65aの流路が広い部分に形成されている。
本実施形態では、このように、キャビティ金型34、コア金型35及びスライドインサート金型36に別々の冷却機能を持たせている。
なお、説明は省略するが、コア金型35及びスライドインサート金型36には、これらを上下動させる移動手段、スライドインサート金型36にはこれを左右に開閉するスライド機構を備えている。
【0020】
圧縮成形装置31の下流側には、回転式のプリフォームの取り出し機構50(図1)が配設され、プリフォーム5を圧縮成形装置31から、ブロー成形機52に移送する。ブロー成形機52は、プリフォームを高圧空気で延伸してPETボトルを成形する。必要であれば、ブロー成形機52に赤外線ヒータなどの加熱設備を配設する。
ブロー成形機52の後流側にはPETボトルの取出機53が設けられ、ブロー成形機52から取り出したPETボトルを充填機側へ移送する。
【0021】
次に、プリフォームの圧縮成形金型33によるプリフォームの成形手順について説明する。
図3、図6、図8のAを参照にして、キャビティ金型34は回転支持体32によって円軌道を移動する。一方、カッタホイール8に設けられている溶融樹脂10を把持する把持部材9aが、キャビティ金型34とは別途の円軌道上を回転する。なお、図8のAは、圧縮成形装置31の複数ある圧縮成形金型33の1つを示している。初期状態ではキャビティ金型34、スライドインサート金型36及びコア金型35は上下に離間して配置されている。把持部材9aとキャビティ金型34の円軌道は上下方向に1接点(接線)を共通にして、キャビティ金型34の成形孔38の底部に溶融樹脂10を供給するように構成されている。
【0022】
把持部材9aは、溶融樹脂10をキャビティ金型34に供給すると、キャビティ金型34の軌道から離れ、図8のBに示すように、コア金型35及びスライドインサート金型36が下降する。次に、左右に開状態であるスライドインサート金型36をコア金型35方向に向けて前進させて、スライドインサート金型36を閉じて環状にする。コア金型35のコア本体35bが、ノズル形成孔36aを貫通した状態となる。
図8のCに示すように、さらにコア金型35が下降すると、コア本体35bの先端部が成形孔38内に進入し、スライドインサート金型36がガイドリング37に当接する。すなわち、スライドインサート金型36の下側外周部にある外側凸部36dの外円錐台面36cが、ガイドリング37の上側内周面の内円錐台面37aに一時的に当接後、これらの面が互いに嵌合して摺動し、ガイドリング37とスライドインサート金型36とが芯出しされた状態で当接する。また、スライドインサート金型36は、上部で環状突部36bが環状凹部35cと嵌合・当接して嵌合部35c,36bを形成する。スライドインサート金型36の下部では外側凸部36dがガイドリング37に嵌合・当接する。
【0023】
図8のCの状態から、さらにコア金型35が下降すると、コア本体35bが溶融樹脂10を圧縮し始める。そして、コア金型35が最下端位置に下降すると、図6に示すように、キャビティ金型34、コア金型35及びスライドインサート金型36によって、溶融樹脂10がプリフォーム形状の隙間が形成され、溶融樹脂10がその隙間を充填し、型締めがなされる。
圧縮成形金型33によって圧縮成形が実施されると、スライドインサート金型36を通る冷却水は、供給口46a(図7)から冷却管48aを通って、スライドインサート金型36を冷却することによって、溶融樹脂のノズル形成部を間接的に冷却してから排水口47a(図7)へ流れ、ノズル部冷却系統40aを循環する。
キャビティ金型34を通る冷却水は、供給口46bから冷却管48bを通って、キャビティ金型34を冷却することによって、溶融樹脂の胴部形成部を間接的に冷却してから排水口47bへ流れ、胴部冷却系統40bを循環する。
【0024】
コア金型35において流路48cを通る冷却水は、供給口46c(図7)から中央流路64aの下端を通って、外周流路65aへ抜ける経路と、中央流路64aからバイパス66aを通って、外周流路65aを抜け排水口47c(図7)へ抜ける経路を流通する。外周流路65aの下端側は流路が狭くなっており、バイパス流路66aが流路途上にあるため、冷却水の一部はバイパス66aから外周流路65aから排水口63へ流れる。
このように、本実施形態では、外周流路65aのコア本体35bに位置する流路が狭くなっており、併せてバイパス流路66aが形成されているので、プリフォーム5の胴部5bを形成する部分の冷却水の流量よりもノズル部5aを形成する部分の方が温度の低い冷却水が流れる。すなわち、冷却水の温度は下流側へ流れるほど高くなるが、バイパス流路66aによって、ショートカットされた分だけ温度が低い冷却水が流れるので、ノズル部5aを冷却させることができる。
【0025】
このように、キャビティ金型34、コア金型35、スライドインサート金型36は、冷却水の循環により冷却されているので、型締め時には、図6に示す状態で溶融樹脂10も冷却されていき、型締め時間が長ければ、ノズル部5aの表面温度が低くなる。
溶融樹脂10が冷却されて成形金型からの取り出し温度に達すると、圧縮成形金型33の開動作後は、コア金型35とスライドインサート金型36が共に上昇する。プリフォーム5は、ノズル形成部がコア金型35とスライドインサート金型36によって挟まれているので、コア本体35bと共に上昇する。
次いで、図8のDに示すように、コア金型35とスライドインサート金型36との離型が行われ、コア本体35bからプリフォーム5が引き抜かれる。そして、スライドインサート金型36が左右に開かれて、プリフォーム5がスライドインサート金型36から取り除かれる。
プリフォーム5は、圧縮成形金型33から離型すると、プリフォーム5の内部温度が高温であるので、内部から外側へ熱が伝わって表面温度は上昇し、プリフォーム表面の温度が最高値に到達した時点でほぼ肉厚方向の温度が均一化される。
【0026】
図1に示すように、圧縮成形装置31の回転方向の下流側には、成形されたプリフォーム5を取り出す取り出し機構50を配設し、スライドインサート金型36から取り除かれたプリフォーム5は、取り出し機構50によって下流側のブロー成形機に回転搬送される。この取り出し機構50において、プリフォームの搬送中に温度が低い場合は、赤外線ヒータなどでプリフォーム5を加熱する必要があるが、本実施形態では胴部5b及び底部5cの温度が高いので、赤外線ヒータによる加熱を省略、又は軽減することができる。
すなわち、圧縮成型金型33より圧縮成形が終わったプリフォームが逐次連続して取り出されブロー成形機52に投入されるため、ブロー成形機52の成形速度が圧縮成形金型33の成形速度以上であれば、圧縮成形されたプリフォームはブロー成形までの待機時間がなく、すぐさまブロー成形が可能となる。取り出し機構50からブロー成形機に搬送されたプリフォーム5はブロー成形金型にセットされ、高圧空気が注入され縦、横方向に延伸して容器に成形される。なお、圧縮成形装置31、取り出し機構50およびブロー成形機52を歯車等により機械的に連結させるか、若しくはサーボモータにより電気的に同期させ、圧縮成形されたプリフォームがブロー成形までの時間を一定とすると、ブロー成形直前の個々のプリフォーム温度のばらつきを抑えることができるので、安定したブロー成形が可能となる。
【0027】
ところで、圧縮成形終了後の雄型(コア金型)からのプリフォームの取り出しやブロー成形における圧縮エアーのシール(ノズルシール)の際にプリフォーム5のノズル部5aの変形を防止する観点からノズル部5aの温度は約60℃以下と低い方が好ましく、一方、ブロー成形するためには、胴部5bの温度が低いと近赤外などの赤外線ヒータや熱風、輻射熱などで熱を加える必要がある。胴部5b及び底部5cのブロー成形を行うための表面温度条件は、例えばガラス転移温度が約78℃のPET樹脂の場合、好適な表面温度の下限はプリフォームのガラス転移温度を越えた80℃であり、上限はブロー成形時に白化または偏肉を防ぎ、安定した成形性を得るため120℃に制約され、この温度範囲内でプリフォームの胴部5bに温度分布をつけてブロー成形することで、成形後のボトルの肉厚分布を調整すると、経済的なプリフォームの成形ができる。
【0028】
そこで、本実施形態では、好適な圧縮成形ができるように、圧縮成形金型33の型締め時から開時までの、溶融樹脂とキャビティ金型34、及び溶融樹脂とスライドインサート金型36の熱移動を監視する監視システムを設けるようにした。
以下、監視システムについて、実施例を含めて説明する。
まず、本実施形態では、同一の圧縮成形金型における圧縮成形時におけるプリフォーム5のノズル部5aからスライドインサート金型36への熱の移動量Qn(J/m/k)と胴部5bからキャビティ金型への熱移動量Qb(J/m/k)を求め、熱移動量比Qn/Qbから好適な圧縮成形のできる範囲があるか否か試験をしてみた。
【0029】
[実施例1]
表1に示すように、プリフォーム5(図3参照)のノズル部5aの最高到達表面温度Hnを30℃、40℃、50℃及び60℃のいずれかになるように、圧縮成形金型でプリフォームを形成し、プリフォームの胴部5bの最高到達表面温度Hbを80℃、100℃、120℃のいずれかになるように圧縮成形金型でプリフォームを形成するようにし、以下に示す表1のa〜lの12種類の組み合わせで示すHn,Hbの最高到達表面温度でプリフォームを成形するよう試みた。これらの12種類の組み合わせは、いずれもプリフォームのノズル部が胴部よりも温度が低く、ブロー成形時にノズル部5aの変形が起こりにくく、好適に胴部5bをブロー成形できる条件であり、Hb−Hn≧20として、少なくともノズル部5aが胴部5よりも20℃温度が低くなるような組み合わせである。
【0030】
【表1】

また、以下の表2に示すように、プリフォームのノズル部5aの肉厚dnを1mm、2mm、3mmとし、胴部5bの肉厚dbを2mm、3mm、4mmとしたものの組み合わせで、プリフォーム5を成形するようにし、m〜uの9種類の組み合わせで示す肉厚dn、dbの条件でプリフォームを成形するように準備した。
したがって、表1と表2を組み合わせると、108(12×9)種類の組み合わせで行うようにした。なお、肉厚dnとdbは、胴部5bよりもノズル5aが冷却しやすい条件として、dn≦dbであるものを選択している。
【0031】
【表2】

そして、表3の欄に示すように、溶融樹脂の温度が260℃、270℃及び280℃の温度で圧縮成形して試験データをサンプリングした。したがって、表1、表2及び表3の各組み合わせの総当りによって、324(12×9×3)種類の組み合わせた条件で理論熱移動量比Qn/Qbの試験を実施した。
【0032】
【表3】

理論熱移動量比Qn/Qbの求め方は以下の式で導くことができる。
理論移動熱量比Qn/Qb=[(T0−Hn)×dn]/[(T0−Hb)×db]
なお、この理論熱移動量比Qn/Qbでは、樹脂比熱、金型への熱伝達率などはQn/Qbでキャンセルされる。
その試験の結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

表4に示すように、溶融樹脂が280℃では理論熱移動量比Qn/Qbが、0.275<Qn/Qb<2.344の範囲に収まり、270℃では0.276<Qn/Qb<2.400の範囲に収まり、260℃では0.278<Qn/Qb<2.464の範囲に収まることが確認できた。したがって、溶融樹脂が260℃〜280℃の範囲内では、理論熱移動量比がQn/Qbが0.275から2.464の範囲内であれば、プリフォーム5のノズル部の温度を60°以下と低く、胴部5bの温度を80℃以上と、好適に温度差を付与することができる。
したがって、理論熱移動量比Qn/Qbをモニタリングすることによって、好適なブロー成形ができるようになる。
この実施例1の試験結果により、好適な理論熱移動量比Qn/Qbの範囲は、dnが1〜3mmの範囲内で、dbが2〜4mmの範囲内(かつdn≦db)で、溶融樹脂の温度が260℃〜280℃の範囲内にて、0.278<Qn/Qb<2.464の範囲に収まることが確認できた。
【0034】
以下、この実施例1の結果を用い、熱移動量比をその範囲内とするための圧縮成形金型の制御について説明する。
図9のフロー図に示すように、図7に示す流量計49a,49bによってキャビティ金型34及びスライドインサート金型36に流れる冷却水の流量Vn(ステップ101),Vb(ステップ106)を時間の経過とともに計測する、次いで、プリフォームのノズル部5aと胴部5bの最高到達温度Hn(ステップ107),Hb(ステップ102)を計測する。計測は、放射温度計を使用して表面温度を計測する。詳しくは、サーモグラフィにより面情報として計測後、ネックリング部5gと胴部5bの最高/最低温度を示す部位を特定、あるいは、ネックリング部ビード下部、胴部ネックリング下部10〜15mm、胴部中央、底部をIRセンサ(点情報)により計測している。
【0035】
ステップ103では、最高到達温度Hnが60℃を超えている場合、冷却水量を増やすように制御部によって、流量制御弁43a(図7)を調整して、スライドインサート金型36の温度を下げる。同様に、ステップ108及び109では、胴部5bの最高到達温度Hbが80℃より低い場合、冷却水量を減らすよう流量制御弁43b(図7)を調整して、スライドインサート金型36の温度を上げる。一方、最高到達温度Hbが120℃を超えている場合、冷却水量を増やすように流量制御弁43bを調整して、スライドインサート金型36の温度を下げる。
ステップ104に示すように、スライドインサート金型36では、熱電対44a,45aによって、各々圧縮成形時の型締め時から開時までの冷却水の入口水温Tn1(t)と出口水温Tn2(t)を時間毎に計測する。そして、ステップ105では、ノズル部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定移動熱量Qn’を積分式を用いて制御部によって計算する(図10参照)。ステップ105中のLnは、プリフォーム5のノズル部5aの長さである。ここで、図10は成形中の冷却水の金型入口水温と出口水温の温度差を示し、網部の面積が金型からの熱移動量Qを示す。
【0036】
同時に、ステップ110に示すように、キャビティ金型34では、熱電対44b,45bによって、各々圧縮成形時の型締め時から開時までの冷却水の入口水温Tb1(t)と出口水温Tb2(t)を時間ごとに計測する。そして、ステップ111では、胴部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定移動熱量Qb’を積分式を用いて制御部によって計算する。ステップ111中のLbは、プリフォーム5の胴部5bの長さである。
ステップ112では、圧縮成形作業又は測定熱移動量比Qn’/Qb’の監視作業を終了するか判断する。通常では、作業は継続するので、ステップ113に進み、測定熱移動量比Qn’/Qb’を制御部によって演算し、測定熱移動量比Qn’/Qb’が0.278〜2.464の範囲に含まれているか判定する。それらの範囲内であれば、ブロー成形に好適なプリフォーム5が成形されているので、ステップ114に進み、計測開始に戻り監視を継続する。
【0037】
ステップ113で示す範囲内に含まれていない場合は、成形不可としてステップ115に進み、例えば、ステップ115では、何らかの警告で成形不可、若しくはブロー成形時における胴部5bの加熱を多くするなどの状況に見合った処理を行う。
詳しくは、胴部5が下限値を若干下回る表面温度(70℃程度)であればプリフォームの肉厚内部寄りの温度は表面より高いので、加熱なしでもブロー成形が可能な場合もあり、プリフォームに温度分布をつける必要があれば該当部分を赤外線ヒータ等の加熱装置により短時間で加熱することにより、多大な加熱装置を用いないでもブロー成形が可能となる。また、プリフォームが上限値を超える表面温度(例えば130℃程度)の場合や、下げ方向でプリフォームに温度分布を付ける場合、圧縮成形からブロー成形までの間にプリフォーム表面の該当部分を僅かに空冷することにより良好なブロー成形性が得られる。
【0038】
従来では、圧縮成形において型締め時間が長いとプリフォームの冷却時間が長くなり、ノズル部5aの変形のおそれは少なくなるが、ブロー成形に必要な温度にプリフォームを加熱する必要が生じる。型締め時間が短いと、ブロー成形に必要な温度には達するが、ノズル部5aの変形が生じる。したがって、ノズル部5aの冷却と、胴部5bをブロー成形するための温度を同時に制御するのが困難であり、ノズル部5aの変形を防止するためノズル部5aの温度を低く調整すると、胴部5bの温度も低くなり、加熱装置などの多大な付帯設備を必要とした。
本実施形態では、測定熱移動量比Qn’/Qb’を監視することによって、プリフォームの圧縮成形時にノズル部5aと、胴部5bに温度差を付与し、ノズル部5aは速く冷却し、胴部5b及び底部5cの温度が高く維持される。したがって、赤外線ヒータなどの加熱装置の使用を軽減、さらには不要にすることができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、上記第1の実施形態に対して監視システムのみが異なるので、図11に示す監視システムの手順のみについて説明する。
図11のフロー図に示すように、図7に示す流量計49a,49bによってキャビティ金型34及びスライドインサート金型36に流れる冷却水の流量Vn(ステップ201),Vb(ステップ207)を時間の経過とともに計測する、次いで、プリフォームのノズル部5aと胴部5bの最高到達温度Hn(ステップ202),Hb(ステップ208)を計測する。計測は、上記第1の実施形態と同様に、放射温度計を使用して表面温度を計測する。
【0040】
ステップ209及び210では、胴部5bの最高到達表面温度Hbが80℃より低い場合、冷却水量を減らすよう流量制御弁43b(図7)を調整して、スライドインサート金型36の温度を上げる。一方、最高到達表面温度Hbが120℃を超えている場合、冷却水量を増やすように流量制御弁43bを調整して、スライドインサート金型36の温度を下げる。
次いで、ステップ203に示すように、スライドインサート金型36では、熱電対44a,45a(図7)によって、各々圧縮成形時の型締め時から開時までの冷却水の入口水温Tn1(t)と出口水温Tn2(t)を、時間の経過とともに計測する。そして、ステップ204では、測定移動熱量Qn’を積分式を用いて制御部によって計算する。ステップ204中のLnは、プリフォーム5のノズル部5aの長さである。
同時にステップ211に示すように、キャビティ金型34では、熱電対44b,45bによって、各々圧縮成形時の型締め時から開時までの冷却水の入口水温Tb1(t)と出口水温Tb2(t)を時間の経過とともに計測する。そして、ステップ211では、測定移動熱量Qb’を積分式を用いて制御部によって計算する。ステップ211中のLnは、プリフォーム5の胴部5bの長さである。このステップ212では、測定移動熱量Qb’をステップ205に出力する。
【0041】
一方、ステップ205では、移動熱量Qb’の値が入力されると、測定熱移動量比Qn’/Qb’が0.278より小さければ、制御部が冷却水の流量を所定量増加し、ステップ201の冷却水の流量を測定し、制御部で監視する。
ステップ206では、測定熱移動量比Qn’/Qb’が2.464より大きければ、制御部39が冷却水の流量を所定量減少し、ステップ201で冷却水の流量を測定し、制御部39で監視する。ステップ213では、終了の指令がでるまでは、制御開始の初期位置に戻り、再度、フロー図にしたがって、測定熱移動量比Qn’/Qb’を監視する。このように、本実施形態では、胴部5bの温度を監視しながら、ノズル部の冷却条件を制御することができる。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
表5は、溶融樹脂の温度T0が270℃(表3のtを選択)のとき、ノズル部の最高到達表面温度Hnが50℃、胴部の最高到達表面温度Hbが120℃に設定(表1のkを選択)したときに、表2のm〜uに示す条件のプリフォームを組み合わせて、圧縮成形したときの理論熱移動量比Qn/Qbを予め試験した値を示す。
【0043】
【表5】

表5から、溶融樹脂の溶融温度T0が270℃、プリフォームのノズル部の表面温度最高到達を50℃、胴部の最高到達表面温度Hbを120℃に設定する場合に、ノズルの肉厚dnを2mmとし、胴部の肉厚dbを3mmに設定して、プリフォームを連続して形成するとする。
この場合、表5から理論熱移動量Qn/Qbは0.978であることが分かっている。したがって、測定熱移動量Qn’/Qb’を測定し、値0.978であれば、プリフォームのノズル部5aの表面温度最高到達及び胴部5bの最高到達表面温度Hbを測定しなくても、ノズル部5aの最高到達表面温度は50℃であり、胴部5bの最高到達表面温度が120℃あることが分かる。
そこで、プリフォームの表面温度が分からなくても、溶融樹脂の温度Hn0を270℃に設定し、測定熱移動量比Qn’/Qb’をモニタリングすることによって、測定熱移動量比Qn’/Qb’が0.772になるように、制御部39が冷却装置の設定をすれば、ノズル部5aの温度を50℃近傍とし、胴部5bの温度を高く120℃近傍として、ブロー成形時において加熱装置をほぼ必要としない好適なブロー成形ができるようになる。
このように、測定熱移動量比Qn’/Qb’と、生産するプリフォーム5との条件を組み合わせることによって、種々のモニタリングが可能になる。
【0044】
次に、本発明の第4の実施形態による圧縮成形金型について図12を参照にして説明する。
なお、本実施形態では上記第1の実施形態に対して圧縮成形金型33のコア金型35の流路部の構造のみが異なるので、キャビティ金型34、コア金型35及びスライドインサート金型36については、上記第1の実施形態と同じ符号を付して説明する。また、キャビティ金型34及びスライドインサート金型36の冷却部の構造は、図中において省略する(以下の第5〜第7の実施形態も同じである)。
図12に示すように、コア金型35は上部に支持部35aを設け、支持部35aの下面には、該下面の中央から下方に延びる略円柱形状のコア本体35bが設けられている。コア金型35には、内部に冷却水の流路61bが設けられ、流路61bは支持部35aの上部に設けられた冷却水の供給口62bに一端が連通され、他端が支持部35aの周側部に設けられた排水口63bに連通されている。
【0045】
流路61bは上方の供給口62bから、コア本体35bの中心部を通る中央流路64bの下端部まで延び、下端部から中央流路64bの周りに同心円上に配置されている外周流路65bが形成されている。
中央流路64bと外周流路65bはコア本体35bの下端部で連通し、外周流路65bはコア本体35bの下端側から上方の支持部35aまで延び、排水口63bに連通している。そして、外周流路65bはプリフォーム5のネックリング5gが形成される部分より下方は流路が狭く形成され、ネックリング5gが形成される部分よりも上方は、流路の幅が広くなるように形成されている。
コア本体5bの外周流路65bが狭くなっている部分には、断熱材67が配設されている。
【0046】
圧縮成形金型によって圧縮成形が実施されると、流路61bを通る冷却水は、供給口62bから中央流路64b、該中央流路64bの下端から外周流路65b、さらに排水口63bへと流出される。
コア本体35bの胴部5bを形成する部分には、コア本体35bにおいて流路が狭くなっており、併せて外周流路65aの周囲には断熱材67が配設されているので、その部分では溶融樹脂と冷却水が熱交換される割合が小さい。溶融樹脂によって形成されるプリフォーム5は、ノズル部5aを形成する部分の温度が比較的低く、胴部5bを形成する部分が比較的温度が高い。その結果、次工程におけるブロー成形工程では、ノズル部5aが変形することなく、胴部5bの加熱手段を必要としない経済的な成形が可能になる。
その他の説明しない部分の圧縮成形装置の構成及び効果は、上記第1の実施形態と同じである。
【0047】
次に、本発明の第5の実施形態による圧縮成形金型について図13を参照にして説明する。
図13に示すように、コア金型35は上部に支持部35aを設け、支持部35aの下面には、該下面の中央から下方に延びる略円柱形状のコア本体35bが設けられている。コア金型35には、内部に冷却水の流路61cが設けられ、流路61cは支持部35aの上部に設けられた冷却水の供給口62cに一端が連通され、他端が支持部35aの周側部に設けられた排水口63cに連通されている。
【0048】
流路61cは上方の供給口62cから、コア本体35bの中心部を通る中央流路64cの下端部まで延び、下端部から中央流路64cの周りに同心円上に配置されている外周流路65cが形成されている。
中央流路64cと外周流路65cはコア本体35bの下端部で連通し、外周流路65cはコア本体35bの下端側から上方の支持部35aまで延び、排水口63cに連通している。そして、コア本体35bには、プリフォーム5のネックリング5gが形成される部分より下方は流路が狭く形成され、ネックリング5が形成される部分よりも上方は、流路の幅が広くなるように形成されている。また、コア本体35bはほぼプリフォーム5が形成されるネックリング5gの高さ位置よりも上側では、外側流路65cとコア本体35bの外周面までの肉厚が薄く形成され、ネックリング5gの位置よりも下側では、外側流路65cとコア本体35bの外周面までの肉厚が厚く形成されている。
【0049】
圧縮成形金型によって圧縮成形が実施されると、流路61cを通る冷却水は、供給口62cから中央流路64c、該中央流路64cの下端から外周流路65c、さらに排水口63cへと流出される。
コア本体35bの胴部5bを形成する部分では、外周流路65cの流路が狭くなっており、併せて外側流路65cとコア本体35bの外周面までの肉厚が厚く形成されているので、その部分では溶融樹脂と冷却水が熱交換される割合が小さい。したがって、溶融樹脂によって形成されるプリフォーム5は、ノズル部5aを形成する部分の温度が比較的低く、胴部5bを形成する部分が比較的温度が高い。その結果、次工程におけるブロー成形工程では、ノズル部5aが変形することなく、胴部5bの加熱手段を必要としない経済的な成形が可能になる。
その他の説明しない部分の圧縮成形装置の構成及び効果は、上記第1の実施形態と同じである。
【0050】
次に、本発明の第6の実施形態による圧縮成形金型について、図14を参照にして説明する。
図14に示すように、コア金型35は上部に支持部35aを設け、支持部35aの下面には、該下面の中央から下方に延びる略円柱形状のコア本体35bが設けられている。コア金型35の内部には、コイル状の冷却水の流路61dが設けられ、流路61dは支持部35aの外周面に設けられた冷却水の供給口62dに一端が連通され、他端が排水口63dに連通されている。
また、コア金型35には支持部35aの上部にヒートパイプ68aの取付部68dを設け、ヒートパイプ68aは、取付部68dから先端を下方へ向けて垂下され、支持部35aからコア本体35bの中心軸に沿って下端まで延びて配設されている。プリフォーム5のネックリング5bが配設される部位よりも上方に位置するヒートパイプ68aの周囲には、上述した流路61dが配設されている。
【0051】
圧縮成形金型によって圧縮成形が実施されると、冷却水は、供給口62dから流路61dを通って排水口63dへ流れる。流路61dは、プリフォーム5のネックリング5gよりも上のノズル部5aの部分を流れるので、ヒートパイプ68aは上部側が冷却される。ヒートパイプ68aの下部では冷却水が流れていないので、上部からの冷却熱が伝導する分だけ冷却されるが、上部側よりも熱は高くなる。
その結果、溶融樹脂によって形成されるプリフォーム5は、ノズル部5aを形成する部分の温度が比較的低く、胴部5bを形成する部分が比較的温度が高く、次工程におけるブロー成形工程では、ノズル部5aが変形することなく、胴部5bの加熱手段を必要としない経済的なブロー成形が可能になる。
その他の説明しない部分の圧縮成形装置の構成及び効果は、上記実施形態と同じである。
【0052】
次に、本発明の第7の実施形態による圧縮成形金型について図15を参照にして説明する。
図15に示すように、コア金型35は上部に支持部35aを設け、支持部35aの下面には、該下面の中央から下方に延びる略円柱形状のコア本体35bが設けられている。コア金型35には、内部に冷却水の流路61eが設けられ、流路61eは支持部35aの上部に設けられた冷却水の供給口62eに一端が連通され、他端が支持部35aの周側部に設けられた排水口63eに連通されている。
【0053】
流路61eは上方の供給口62eから、コア本体35bの中心部を通る中央流路64eの下端部まで延び、下端部から中央流路64eの周りに同心円上に配置されている外周流路65eが形成されている。
中央流路64eと外周流路65eはコア本体35bの下端部で連通し、外周流路65eは、コア本体35bの下端側から上方の支持部35aまで延び、排水口63eに連通している。本実施形態では、冷却水の第2の供給口62fが形成され、外周流路65eの外側に最外周流路65fが形成されている。最外周流路65fは、プリフォーム5のネックリング5gが形成される部分よりも上側に形成され、ネックリング5gが形成される部分で外周流路65eに連通する。第2の供給口62fに導入された冷却水は、最外周流路64fから外周流路65eに合流してから上方へ流れ、排水口63eから排水される。
【0054】
圧縮成形金型によって圧縮成形が実施されると、流路61eを通る冷却水は、供給口62eから中央流路64eの下端を通って、外周流路65eへ抜ける経路と、第2の供給口62fを通って、外周流路65eに流入し、排水口63eへ抜ける経路がある。
冷却水の流量は、第2の流路61fが設けられている分だけ、プリフォーム5のノズル部5aが形成される部分の方が多く流れ、プリフォーム5の胴部5bを形成する部分の流量がノズル部5aを形成する部分よりも冷却水の流量は多く流れる。加えて、冷却水の温度は下流側へ流れるほど高くなるが、第2の流路61fに新たな温度の低い冷却水を合流させて、ノズル部5aを胴部5bよりも冷却させることができる。
こうして、溶融樹脂によって形成されるプリフォーム5は、ノズル部5aを形成する部分の温度が比較的低く、胴部5bを形成する部分が比較的温度が高く、次工程におけるブロー成形工程では、ノズル部5aが変形することなく、胴部5bの加熱手段を必要としない経済的なブロー成形が可能になる。
その他の説明しない部分の圧縮成形装置の構成及び効果は、上記実施形態と同じである。
【0055】
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
例えば上記実施形態では、測定熱移動量比Qn’/Qb’(及び/又は理論熱移動量比Qn/Qb)について、スライドインサート金型36とキャビティ金型35によって求め、コア金型35については考慮しなかったが、コア金型35のノズル形成部と胴部形成部の冷却手段を分離し、コア金型35を含めた熱移動量比測定熱移動量比Qn’/Qb’(及び/又は理論熱移動量比Qn/Qb)を考慮してもよく、この場合はコア金型35単独で測定熱移動量比Qn’/Qb’(及び/又は理論熱移動量比Qn/Qb)を求めてもよい。
【符号の説明】
【0056】
5 プリフォーム
5a ノズル部
5b 胴部
5g ネックリング
31 圧縮成形装置
34 キャビティ金型
35 コア金型
36 スライドインサート金型
39 制御部
40 冷却装置
41 熱交換機
43a〜43c 流量制御弁
44a〜44c,45a〜45c 熱電対
49a〜49c 流量計
46a〜46c 供給口
47a〜47c 排水口
48a〜48c 流路
52 ブロー成形機
Qn,Qb 理論熱移動量
Qn’,Qb’ 測定熱移動量
Qn/Qb 理論熱移動量比
Qn’/Qb’ 測定熱移動量比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製ブロー成形容器を形成するためのノズル部、胴部及び底部を有するプリフォームを圧縮成形するためのプリフォーム圧縮成形金型を備えた圧縮成形装置であって、
圧縮成形以前の溶融樹脂温度を測定する手段と、
前記金型の前記ノズル部形成部の温度を測定する手段と、
前記金型の前記胴部形成部の温度を測定する手段と、を備え、
さらに、測定された温度から該ノズル部形成部と胴部形成部各々の、溶融樹脂からの移動熱量に関する比を求め、該移動熱量に関する比が所定の範囲内にあるよう温調制御する温調手段を備えたことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項2】
合成樹脂製ブロー成形容器を形成するためのノズル部、胴部及び底部を有するプリフォームを圧縮成形するためのキャビティ金型、スライドインサート金型及びコア金型を備えたプリフォーム圧縮成形金型を備えた圧縮成形装置において、
溶融樹脂の平均押出樹脂温度をT0、
プリフォームのノズル部の最高到達表面温度をHn、
プリフォームの胴部の最高到達表面温度をHb、
プリフォームのノズル部の肉厚をdn、
プリフォームの胴部の肉厚をdbとし、
圧縮成形中のプリフォームのノズル部から金型が吸収する理論移動熱量をQn、
圧縮成形中のプリフォームの胴部から金型が吸収する理論移動熱量をQbとしたとき、
理論移動熱量比Qn/Qbを[(T0−Hn)×dn]/[(T0−Hb)×db]として計算し、
ノズル部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qn’、胴部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qb’を求めるとともに、測定熱移動量比Qn’/Qb’を求め、
該測定熱移動量比Qn’/Qb’が、前記理論移動熱量比Qn/Qbに基づいて得られる所定の望ましい範囲内にあるかを判定する制御手段を設けたことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項3】
合成樹脂製ブロー成形容器を形成するためのノズル部、胴部及び底部を有するプリフォームを圧縮成形するためのキャビティ金型、スライドインサート金型及びコア金型を備えたプリフォーム圧縮成形金型を備えた圧縮成形装置において、
圧縮成形時にキャビティ金型へ投入される際の溶融樹脂の温度T0、該溶融樹脂によって成形されるプリフォームのノズル部の肉厚dn、胴部の肉厚db、圧縮成形後のプリフォームのノズル部の最高到達表面温度Hn及びプリフォームの胴部の最高到達表面温度Hbを予め計測し、これらのデータから、圧縮成形時におけるプリフォームのノズル部からスライドインサート金型への理論熱移動量Qnと胴部からキャビティ金型への理論熱移動量Qbの理論熱移動量比Qn/Qbを計算してサンプリングし、該サンプリング結果から、前記理論熱移動量比Qn/Qbの各データ及び該データに基づいた所定の最小値と最大値の範囲が記憶された制御部と、
圧縮成形時に前記スライドインサート金型へ流れる冷却水の流量Vnを計測するノズル側流量計と、
前記キャビティ金型に流れる冷却水の流量Vbを測定する胴部側流量計と、
圧縮成形時における型締め時のスライドインサート金型へ供給される冷却水の温度Tn1を測定する温度センサと、スライドインサート金型から排水される冷却水の温度Tn2を測定する温度センサと、
圧縮成形時における型締め時のキャビティ金型へ供給される冷却水の温度Tb1を測定する温度センサと、キャビティ金型から排水される冷却水の温度Tb2を測定する温度センサとを備え、
前記制御部は、前記流量Vn,前記温度Tn1,Tn2、前記プリフォームのノズル部の長さLnの値によって、ノズル部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qn’を求め、また、前記流量Vb、前記温度Tb1,Tb2、前記プリフォームの胴部の長さLbの値によって、胴部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qb’を求めるとともに、測定熱移動量比Qn’/Qb’を制御部によって求め、前記記憶された所定の最小値と最大値の範囲にあるかを判定するようにした圧縮成形装置。
【請求項4】
前記スライドインサート金型及び/又はコア金型のノズル部形成部にノズル部冷却手段を設け、前記キャビティ金型及び/又はコア金型の胴部形成部に胴部冷却手段を設け、
前記制御手段は、前記ノズル部冷却手段と胴部冷却手段を制御し、
前記測定移動熱量比Qn’/Qb’に応じて、前記制御手段が前記ノズル部冷却装置と前記胴部冷却装置の冷却水の温度及び/又は水量を調整するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の圧縮成形装置。
【請求項5】
前記理論熱移動量比Qn/Qbのデータに基づいた所定の最小値が0.278、所定の最大値が2.464であることを特徴とする、請求項3または4に記載の圧縮成形装置。
【請求項6】
前記コア金型のノズル部冷却手段と胴部冷却手段は、ノズル部冷却手段の方が胴部冷却手段よりも冷却能力を大きくしたことを特徴とする請求項5に記載の圧縮成形装置。
【請求項7】
圧縮成形時のキャビティ金型へ投入される際の溶融樹脂の温度T0、該溶融樹脂によって成形されるプリフォームのノズル部の肉厚dn、胴部の肉厚db、圧縮成形時におけるプリフォームのノズル部の最高到達表面温度Hn、プリフォームの胴部の最高到達表面温度Hb、圧縮成形時おける前記スライドインサート金型へ流れる冷却水の供給口と排水口の温度変化及び圧縮成形時おける前記キャビティ金型へ流れる冷却水の供給口と排水口の温度変化を予め計測する工程と、
これらの計測データから、圧縮成形時のプリフォームのノズル部からスライドインサート金型への理論熱移動量Qnと圧縮成形時におけるプリフォームの胴部からキャビティ金型への理論熱移動量Qbの理論熱移動量比Qn/Qbのデータを予め求めるサンプリング工程と、
圧縮成形時に前記スライドインサート金型へ流れる冷却水の流量Vnを計測する工程と、
圧縮成形時に前記キャビティ金型へ流れる冷却水の流量Vbを計測する工程と、
ノズル部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qn’を求める工程と、
胴部からスライドインサート金型へ伝わる熱の移動量としての測定熱移動量Qb’を求める工程と、
前記測定熱移動量Qn’と測定熱移動量Qb’とから測定熱移動量比Qn’/Qb’を求める工程と、
前記サンプリング工程における前記理論熱移動量比Qn/Qbのデータと、前記測定熱移動量比Qn’/Qb’の計算値に基づいて前記インサート金型及び/又は前記キャビティ金型へ流れる冷却水の流量Vn,Vbを調整する流量調整工程を含む圧縮成形方法。
【請求項8】
前記スライドインサート金型及び/又はコア金型のノズル部形成部を冷却するとともに、前記キャビティ金型及び/又はコア金型の胴部形成部を冷却する冷却水の流れを制御手段が制御し、
前記理論移動熱量比Qn/Qbにしたがって、前記制御手段が前記ノズル部形成部と前記胴部形成部の冷却水の温度及び/又は水量を調整するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の圧縮成形方法。
【請求項9】
前記測定熱移動量比Qn’/Qb’が、0.278<Qn’/Qb’<2.464の範囲外の時に前記流量調整工程によって、冷却水の流量Vn,Vbを調整するようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の圧縮成形方法。
【請求項10】
前記測定熱移動量Qn’及び前記測定熱移動量Qb’が、1<Qn’/Qb’を満たすことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の圧縮成形方法。
【請求項11】
前記プリフォームのノズル部の最高到達表面温度Hn及びプリフォームの胴部の最高到達表面温度Hbが、Hb−Hn≧20を満たすことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の圧縮成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−230293(P2011−230293A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99958(P2010−99958)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】