説明

地図更新システム

【課題】複数の通信方式や記憶媒体に基づく複数の更新手段で更新を行う際における各更新手段の更新の優先順位を設けることにより、更新のタイミングが重複等することにより更新が競合した場合であっても、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とした地図更新システムを提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置6が地図配信センタ2から配信された差分更新データ28又は全更新データ29に基づいてナビ地図データ51の差分更新或いは全更新を行う際において、特に、更新処理の開始のタイミングが重複して更新が競合した場合であっても、優先順位設定テーブル53に従って各更新の有無と更新順序を設定して更新を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置等に記憶された地図情報の一部又は全てを更新情報に基づいて新たな地図情報に更新する地図更新システムにおいて、特に、複数の通信方式や記憶媒体に基づく複数の更新手段で更新を行う際における各更新手段の更新の優先順位を設けた地図更新システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。ここで、ナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより車両の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体、又はネットワークを通じて取得して液晶モニタに表示することが可能な装置である。そして、車両の現在位置を含む地図データを記録媒体等から読み出し、地図データに基づいて車両の現在位置の周囲における地図画像を描画して表示装置に表示するとともに、車両位置マーク(ロケーション)を地図画像に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロールしたり、地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させることによって、車両が現在どの地点を走行しているのかを一目でわかるようにしている。
【0003】
ここで、日本全国においては毎年新しい道路(新設道路)が建設されている。また、これに伴って、既存の道路がなくなったり、既存の道路の形状が変更されたりする。従って、ナビゲーション装置に記憶させる地図データはある程度の時間間隔で更新することが必要となる。ここで、地図データの更新は、新しいDVDを購入して古いDVDと交換したり、地図情報配信センタ等から配信された地図データに基づいてHDDの内容を書き換えることによって行われる。その際、特にHDDの内容を書き換える場合に用いられる更新方法は、基本的に以下の2種類の方法からなる。
一の方法としては、道路等に変更があった場合に、その変更部分のみを更新する差分更新データを地図情報配信センタで作成し、各ナビゲーション装置で更新が必要と思われる特定エリア(例えば、登録された自宅周辺エリア)に関連する差分更新データがある場合に、その差分更新データを用いて新たな地図データに更新(以下、差分更新という)する方法がある(例えば、特開2004−198841号公報参照)。
他の方法としては、定期的(例えば1年間隔)に全国の地図データを現在の道路状況を反映した新たな地図データへと一括して更新する全更新データを地図情報配信センタで作成し、作成された全更新データを用いて新たな地図データに完全に更新(以下、全更新という)する方法がある。
【特許文献1】特開2004−198841号公報(第5頁〜第8頁、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特に差分更新については、地図情報配信センタで作成された差分更新データを取得する方式が異なる以下の複数種類の更新方法が存在する。
(1)予め車両に搭載された車両用の通信モジュールを用いて差分更新データをセンタから取得し、ACCのON時や自宅登録時、目的地設定時等に自動的に更新を行う更新方法。
(2)携帯電話機をナビゲーション装置に対して接続した状態で、利用者が特定の操作を行うことによって、携帯電話機の通信機能を用いて差分更新データを取得し、取得した差分更新データに基づいて更新を行う更新方法。
(3)利用者のPC又はオペレータがインターネット回線を通じて差分更新データをセンタからダウンロードし、ダウンロードした差分更新データをCD−Rへと一端記録する。その後、記録したCD−Rをナビゲーション装置に挿入して読み取らせることにより更新を行う更新方法。
そして、上記の3種類の更新方法による差分更新及び全更新はそれぞれ独立して行われるので、更新を行うタイミングが重複してしまう虞がある。その際、一律に先に更新が開始された更新方法に基づく更新のみを行うこととしたり、全ての更新を更新が開始された順序で行うこととすると、必要なセンタとの通信処理や地図データの更新処理が中止されてしまったり、一方で不要なセンタとの通信処理や地図データの更新処理が行われてしまうこととなり、利用者の意図とは異なった地図データへと更新されてしまう虞があった。
【0005】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、複数の通信方式に基づく複数の更新手段で更新を行う際における各更新手段の更新の優先順位を設けることにより、更新のタイミングが重複等することにより更新が競合した場合であっても、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とした地図更新システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る地図更新システム(1)は、地図情報を記憶する地図情報記憶手段(43、44)と、前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報の一部又は全部を新たな地図情報に更新する更新情報を第1の通信方式による通信又は更新情報が記録された第1の記憶媒体を介して取得する第1更新情報取得手段(9、10、49)と、前記第1更新情報取得手段により取得された前記更新情報に基づいて前記地図情報を更新する第1更新手段(45)と、前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報の一部又は全部を新たな地図情報に更新する更新情報を第2の通信方式による通信又は更新情報が記録された第2の記憶媒体を介して取得する第2更新情報取得手段(9、10、49)と、前記第2更新情報取得手段により取得された前記更新情報に基づいて前記地図情報を更新する第2更新手段(45)と、前記第1更新手段に基づく更新と前記第2更新手段に基づく更新の優先順位を記憶した記憶手段(44)と、を有し、前記記憶手段に記憶された優先順位に基づいて前記第1更新手段及び前記第2更新手段は前記地図情報を更新することを特徴とする。
ここで、「第1の通信方式」と「第2の通信方式」はそれぞれ異なる通信装置や通信回線を用いた通信方式であっても良いし、同一の通信装置や通信回線を用いた通信方式であっても良い。
また、「第1の記録媒体」と「第2の記録媒体」としては、CD、CD−R、DVD、DVD−R、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等がある。
【0007】
また、請求項2に係る地図更新システムは、請求項1に記載の地図更新システム(1)であって、前記優先順位は前記第1更新情報取得手段(9、10、49)による更新情報の取得中に前記第2更新情報取得手段(9、10、49)による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段(45)に基づく更新及び前記第2更新手段(45)に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る地図更新システムは、請求項1に記載の地図更新システム(1)であって、前記優先順位は前記第1更新情報取得手段(9、10、49)による更新情報の取得中断中に前記第2更新情報取得手段(9、10、49)による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段(45)に基づく更新及び前記第2更新手段(45)に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る地図更新システムは、請求項1に記載の地図更新システム(1)であって、前記優先順位は前記第1更新手段(45)による地図情報の更新中に前記第2更新情報取得手段(9、10、49)による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段に基づく更新及び前記第2更新手段(45)に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする。
【0010】
更に、請求項5に係る地図更新システムは、請求項1に記載の地図更新システム(1)であって、前記優先順位は前記第1更新手段(45)による地図情報の更新中断中に前記第2更新情報取得手段(9、10、49)による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段に基づく更新及び前記第2更新手段(45)に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前記構成を有する請求項1に係る地図更新システムでは、第1更新情報取得手段により取得された更新情報に基づいて地図情報を更新する第1更新手段と、第2更新情報取得手段により取得された更新情報に基づいて地図情報を更新する第2更新手段の複数の更新手段に基づく更新の優先順位を設定し、設定された優先順位に基づいて第1更新手段及び第2更新手段は地図情報を更新するので、各更新手段で更新のタイミングが重複等することにより更新が競合した場合であっても、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とする。また、不要な通信や更新処理を行わないので、更新時間の短縮や制御装置の処理負担を軽減することができる。
【0012】
また、請求項2に係る地図更新システムでは、第1更新情報取得手段による更新情報の取得中に第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、第1更新手段に基づく更新及び第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定するので、更新のタイミングが重複することにより更新が競合した場合であっても、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とする。また、不要な通信や更新処理を行わないので、更新時間の短縮や制御装置の処理負担を軽減することができる。
【0013】
また、請求項3に係る地図更新システムでは、第1更新情報取得手段による更新情報の取得中断中に第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、第1更新手段に基づく更新及び第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定するので、更新のタイミングが重複することにより更新が競合した場合であっても、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とする。また、不要な通信や更新処理を行わないので、更新時間の短縮や制御装置の処理負担を軽減することができる。
【0014】
また、請求項4に係る地図更新システムでは、第1更新手段による地図情報の更新中に第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、第1更新手段に基づく更新及び第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定するので、更新のタイミングが重複することにより更新が競合した場合であっても、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とする。また、不要な通信や更新処理を行わないので、更新時間の短縮や制御装置の処理負担を軽減することができる。
【0015】
更に、請求項5に係る地図更新システムでは、第1更新手段による地図情報の更新中断中に第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、第1更新手段に基づく更新及び第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定するので、更新のタイミングが重複することにより更新が競合した場合であっても、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とする。また、不要な通信や更新処理を行わないので、更新時間の短縮や制御装置の処理負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る地図更新システムについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る地図更新システム1の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る地図更新システム1を示した概略構成図、図2は本実施形態に係る地図更新システム1の各構成を示したブロック図である。
【0017】
図1に示すように本実施形態に係る地図更新システム1は、地図配信センタ2と、ユーザPC(Personal Computer)3と、販売店4と、車両5に設置されるナビゲーション装置6(図4参照)とから基本的に構成されている。
ここで、地図配信センタ2は古いバージョンの地図データを新たなバージョンの地図データへと更新する為の更新データ(差分更新データと全更新データの2種類からなる)の作成、及び作成したデータの配信を行う配信センタである。
また、ユーザPC3は利用者の所有するPCであり、データを格納するHDD(Hard Disk Drive)7と、HDDに格納されたデータをCD−R13に記録するCD−Rドライブ8を備える。
また、販売店4は地図配信センタ2から配信された更新データを保存し、来店した利用者に対してそれらの更新データを供給する供給施設である。
また、ナビゲーション装置6は全国の道路を走行する又は駐車されている車両5に設置され、格納する地図データに基づいて自車位置周辺の地図を表示したり設定された目的地までの経路の探索及び案内を行う車載機である。
【0018】
ここで、地図配信センタ2とナビゲーション装置6は予め車両に搭載された車両用の通信モジュール9(以下、単に通信モジュール9という)や携帯電話機10等の通信機器を用いて双方向に通信可能に構成されており、両者間で差分更新データ等の各種情報を送受信する。尚、差分更新データとは、地図配信センタ2で作成されナビゲーション装置6に記憶された地図データの特定エリアのみを更新(以下、差分更新という)する為の更新データである。
【0019】
また、地図配信センタ2とユーザPC3はインターネット回線等の通信網を介して通信可能に構成されており、両者間で差分更新データ等の各種情報を送受信する。そして、地図配信センタ2からダウンロードした差分更新データを一旦HDD7へ格納し、更に格納したデータをCD−R13へと記録してナビゲーション装置6に読み取らせることにより、ナビゲーション装置6に対して差分更新データを受け渡すことが可能となるように構成されている。尚、ユーザPC3の代わりにオペレータが地図配信センタ2からの差分更新データの取得と、CD−R13への記録を行うようにしても良い。そして、オペレータが記録したCD−R13を利用者に対して配布することにより、利用者のナビゲーション装置6に対して差分更新データを受け渡すことが可能となる。
【0020】
一方、地図配信センタ2と販売店4は、衛星通信等のネットワーク11を介して双方向に通信可能に構成されており、両者間で全更新データ等の各種情報を送受信する。ここで、全更新データとは、地図配信センタ2で作成されナビゲーション装置6に記憶された地図データの全エリアを一括して更新(以下、全更新という)する為の更新データである。
また、販売店4は販売店PC30に接続された記憶媒体である販売店HDD12が取り外し可能に構成されている。そして、取り外した販売店HDD12を新たにナビゲーション装置6とIEEE1394(Institute of Electrical and Electronic Engineers 1394)規格等で接続することにより、販売店4とナビゲーション装置6は、全更新データ等の各種情報の受け渡しが可能となるように構成されている。
【0021】
そして、ナビゲーション装置6は地図配信センタ2、販売店4又はCD−R13から取得した差分更新データ及び全更新データを用いて格納された地図データの差分更新及び全更新を行うことが可能に構成されている。更に、ナビゲーション装置6は格納された地図データに基づいて経路の探索や案内をすることが可能となる。尚、ナビゲーション装置6の構成に関しては後に図4を用いて詳細に説明する。
【0022】
続いて、地図更新システム1を構成する地図配信センタ2について図2を用いてより詳細に説明する。
地図配信センタ2は、図2に示すようにサーバ20と、サーバ20に接続された情報記録部としてのセンタ側地図情報DB24と、バージョン管理DB25と、センタ側通信装置26とを備える。また、サーバ20は、サーバ20の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、古いバージョンの地図データと新しいバージョンの地図データに基づいて全更新データや差分更新データを作成する更新データ作成処理、作成した全更新データや差分更新データを販売店4やナビゲーション装置6に対して配信する地図データ配信処理等を行うための各種の制御プログラムが記録されたROM23等の内部記憶装置を備えている。尚、CPU21に代えてMPU等を使用することもできる。
【0023】
また、センタ側地図情報DB24には、外部からの入力データや入力操作に基づいて作成され、ナビゲーション装置6に記憶された地図データを更新する際の基本となる地図データである基本地図データ27がバージョン毎に区分されて記憶されている。ここで、バージョンとは地図データが作成された時期を特定する為の作成時期情報であり、バージョンを参照することによって地図データが作成された時期を特定することが可能となっている。また、センタ側地図情報DB24には、基本地図データ27に基づいてサーバ20により作成され、ナビゲーション装置6に格納された地図データの一部を新たなバージョンの地図データへと差分更新する為の差分更新データ28や、同じく基本地図データ27に基づいてサーバ20により作成され、ナビゲーション装置6に格納された全地図データを新たなバージョンの地図データに全更新する為の全更新データ29についてもそれぞれバージョン毎に区分されて記憶されている。
尚、基本地図データ27、差分更新データ28及び全更新データ29の詳細については後述する。
【0024】
そして、バージョン管理DB25には、各ナビゲーション装置6に格納されている地図データのバージョンに関する情報が記録されている。ここで、地図データは経路案内及び地図表示に必要な各種情報が記録されており、例えば、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ、道路(リンク)に関するリンクデータ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等から構成されている。
そして、本実施形態に係る地図更新システム1では上記地図データを2.5km四方のエリア毎にバージョン管理を行う。また、同じ2.5km四方のエリアであっても道路規格毎に更に3タイプに区分してバージョン管理を行う。ここで、図3は本実施形態に係る地図更新システム1の地図データのバージョン管理の仕組みを説明した説明図である。
【0025】
図3に示すように、バージョンの管理を行うに際しては、2.5km四方のエリア毎に区画ID(図3では16のエリアに対してA1〜D4)を設定し、更に各エリアを道路規格で区分した3つの配信道路区分毎にバージョンを対応付けて管理している。具体的には、都市間高速道路、都市高速道路、有料道路、1桁,2桁台の国道については、配信道路区分が「全国」に分類される。また、3桁台の国道、主要な地方道路、県道、一般道路については、配信道路区分が「一般」に分類される。また、細街路については、配信道路区分が「細街路」に分類される。従って、同一のエリアであっても対象となる道路種類によって3つの地図データのバージョンを備えることとなる。
例えば、図3に示すエリアA1では、配信道路区分が「全国」の地図データのバージョンは「1」であり、配信道路区分が「一般」の地図データのバージョンは「0」であり、配信道路区分が「細街路」の地図データのバージョンは「1」となっている。
【0026】
また、センタ側通信装置26は販売店4やナビゲーション装置6とネットワーク11、13を介して通信を行う為の通信装置である。ここで、ネットワーク11、13としては、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、携帯電話回線網、電話回線網、公衆通信回線網、専用通信回線網、インターネット等の通信回線網等の通信系を使用することができる。そして、放送衛星によるCS放送、BS放送、地上波ディジタルテレビ放送、FM多重放送等を利用する通信系を使用することもできる。更に、高度道路交通システム(ITS)において利用されるノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)、狭域通信システム(DSRC)等の通信系を使用することもできる。
【0027】
一方、販売店4は、図2に示すように販売店PC30と、販売店PC30に接続された情報記録部としての販売店HDD12と、販売店側通信装置31とを備える。そして、販売店PC30は、地図配信センタ2との間で全更新データの取得に必要なライセンス情報や課金情報の通信及び管理を行う制御部である。
【0028】
また、販売店HDD12には、地図配信センタ2から配信された全更新データ29が格納されている。更に、販売店HDD12は販売店PC30と取り外し可能に構成されており、取り外した販売店HDD12をナビゲーション装置6に接続することによって販売店HDD12に格納された全更新データ29をナビゲーション装置6との間で受け渡し可能に構成する。それによって、ナビゲーション装置6は後述のように販売店HDD12に記憶された全更新データ29に基づいて地図データの全更新を行うことが可能となる。
【0029】
また、販売店側通信装置31は地図配信センタ2と上述したネットワーク11を介して通信を行う為の通信装置である。
【0030】
次に、本実施形態に係る地図更新システム1を構成するナビゲーション装置6の概略構成について図4を用いて説明する。図4は本実施形態に係るナビゲーション装置6の構成を示したブロック図である。
【0031】
図4に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置6は、自車の現在位置を検出する現在地検出処理部41と、差分DB42と、ローカル保存DB43と、アプリ参照DB44と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーション制御部(第1更新手段、第2更新手段)45と、操作者からの操作を受け付ける操作部46と、操作者に対して地図等の情報を表示する液晶ディスプレイ47と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ48と、CDやDVD等の記録メディアを読み取り可能な読取装置であるDVDドライブ(第1更新情報取得手段、第2更新情報取得手段)49と、VICSセンタ等の交通情報センタや地図配信センタ2との間で通信を行う通信モジュール(第1更新情報取得手段、第2更新情報取得手段)9及び携帯電話機(第1更新情報取得手段、第2更新情報取得手段)10と、から構成されている。また、ナビゲーション制御部45には自車の走行速度を検出する車速センサ50が接続される。更に、販売店HDD12を接続する為の接続インターフェイスも備える。
【0032】
以下に、ナビゲーション装置6を構成する各構成要素について説明すると、現在地検出処理部41は、GPS61、地磁気センサ62、距離センサ63、ステアリングセンサ64、方位検出部としてのジャイロセンサ65、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位、目標物(例えば、交差点)までの距離等を検出することが可能となっている。
【0033】
具体的には、GPS61は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、地球上における自車の現在地及び現在時刻を検出し、地磁気センサ62は、地磁気を測定することによって自車方位を検出し、距離センサ63は、道路上の所定の位置間の距離等を検出する。ここで、距離センサ63としては、例えば、自車の車輪(図示せず)の回転速度を測定し、測定した回転速度に基づいて距離を検出するセンサ、加速度を測定し、測定した加速度を2回積分して距離を検出するセンサ等を使用することができる。
【0034】
また、ステアリングセンサ64は自車の舵(だ)角を検出する。ここで、ステアリングセンサ64としては、例えば、ステアリングホイール(図示せず)の回転部に取り付けられた光学的な回転センサ、回転抵抗センサ、車輪に取り付けられた角度センサ等が使用される。
【0035】
そして、ジャイロセンサ65は自車の旋回角を検出する。ここで、ジャイロセンサ65としては、例えば、ガスレートジャイロ、振動ジャイロ等が使用される。また、ジャイロセンサ65によって検出された旋回角を積分することにより、自車方位を検出することができる。
【0036】
また、差分DB42には、通信モジュール9や携帯電話機10、CD−R13により取得した差分更新データ28が記憶されるDBである。そして、後述するように差分DB42に記憶された差分更新データに基づいてナビ地図データ51の更新が行われる。
【0037】
また、ローカル保存DB43には、差分更新データ28や全更新データ29に基づいて更新される更新用の地図データであるナビ地図データ51が記憶されるDBである。そして、後述するようにローカル保存DB43に記憶されたナビ地図データ51を変換することによって参照用ナビ地図データ52が生成される。
【0038】
また、アプリ参照DB44には、ナビゲーション装置6の走行案内や経路探索に使用される参照用ナビ地図データ52、更新の優先順位を設定した優先順位設定テーブル53(図5〜図8参照)の他、所定のプログラム等が記憶される。尚、本実施形態においては、差分DB42、ローカル保存DB43、アプリ参照DB44の外部記憶装置及び記憶媒体としてハードディスクが使用されるが、ハードディスクのほかに、フレキシブルディスク等の磁気ディスクを外部記憶装置として使用することができる。また、メモリーカード、磁気テープ、磁気ドラム、CD、MD、DVD、光ディスク、MO、ICカード、光カード等を外部記憶装置として使用することもできる。
【0039】
ここで、ナビ地図データ51及び参照用ナビ地図データ52は前記した基本地図データ27と同様に経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されており、例えば、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、ノード点に関するノードデータ、道路(リンク)に関するリンクデータ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等から構成されている。
そして、ナビ地図データ51は、全国の全エリアの地図データを一括で更新する全更新、又は特定のエリアのみの地図データを更新する差分更新のいずれかによって更新される。また、参照用ナビ地図データ52は更新されたナビ地図データ51を変換することによって同じく更新される。尚、全更新及び差分更新の具体的な更新処理については後にフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0040】
また、ナビゲーション装置6を構成するナビゲーション制御部45は、ナビゲーション装置6の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71、並びにCPU71が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM72、制御用のプログラムのほか、参照用ナビ地図データ52に基づいて経路の探索や案内を行う経路案内処理プログラム、差分更新データや全更新データに基づいて設定された優先順位によりナビ地図データ51の差分更新又は全更新を行う地図データ更新処理プログラム(図9)等が記録されたROM73、ROM73から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ74等の内部記憶装置を備えている。尚、前記RAM72、ROM73、フラッシュメモリ74等としては半導体メモリ、磁気コア等が使用される。そして、演算装置及び制御装置としては、CPU71に代えてMPU等を使用することも可能である。
【0041】
続いて、本実施形態に係る優先順位設定テーブル53の詳細について説明する。図5〜図8は本実施形態に係る優先順位設定テーブル53を示した図である。ここで、優先順位設定テーブル53は本実施形態に係る地図更新システム1でナビ地図データ51及び参照用ナビ地図データ52を更新することが可能な4種類の更新方法による各更新の優先順位を設定したテーブルである。
その更新方法とは具体的に、
(1)ACCのON時や自宅登録時、目的地設定時においてナビゲーション装置6が自動的に車両用の通信モジュール9を介して差分更新データ28を地図配信センタ2から取得し、取得した差分更新データ28に基づいて差分更新を行う更新方法。
(2)携帯電話機10をナビゲーション装置6に対して接続した状態で、利用者が特定の操作を行うことによって、携帯電話機10の通信機能を用いて差分更新データ28を取得し、取得した差分更新データ28に基づいて差分更新を行う更新方法。
(3)ユーザPC3又はオペレータを介してダウンロードした差分更新データ28をCD−R13へと記録し、記録したCD−R13をDVDドライブ49に挿入して読み取らせることにより差分更新データ28を取得して差分更新を行う更新方法。
(4)全更新データ29が記憶された販売店HDD12をナビゲーション装置6に接続し、販売店HDD12を介して取得した全更新データ29に基づいてナビ地図データ51及び参照用ナビ地図データ52の全エリアについての全更新を行う更新方法。
である。
そして、上記の4種類の更新方法による差分更新又は全更新はそれぞれ独立して行われるので、更新を行うタイミングが重複してしまう虞があり、優先順位設定テーブル53ではその際の更新の有無と更新順序を設定する。尚、以下の説明では時期的に先に開始されている更新等の処理を「先イベント」とし、後に開始される更新等の処理を「後イベント」としている。
【0042】
例えば、図5に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の取得中断中に、通信モジュール9による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合であって、「検索条件(即ち更新対象エリア)が同じ」で且つ「取得中断中の差分更新データのバージョンと後に取得する差分更新データのバージョンが同じ」場合には、後イベントはキャンセルし、先イベントである取得中断中であった通信モジュール9による差分更新のみ実行する。これは、後イベントの更新が先イベントの更新と全く同じ更新内容であるためであり、同内容の更新を2度行う必要が無い為である。尚、差分更新データ28が取得中断中となる場合には、例えばトンネルなどに車両が進入して通信状態が悪くなった場合等がある。
また、「検索条件(即ち更新対象エリア)が同じ」で且つ「取得中断中の差分更新データのバージョンより後に取得する差分更新データのバージョンが新しい」場合には、先イベントである取得中断中であった通信モジュール9による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、後イベントの更新を行えば、先イベントの更新を包含したより新しい地図データへと更新されるためである。
また、「検索条件(即ち更新対象エリア)が異なる」場合には、先イベントである取得中断中であった通信モジュール9による差分更新データ28を取得し、ナビ地図データ51を更新し、更に参照用ナビ地図データ52へのデータ変換を行った後に、後イベントである通信モジュール9による差分更新データ28の取得、更新、変換も行う。その後に、地図データの更新を行うか否かを利用者に確認する更新確認画面を液晶ディスプレイ47に表示して、更新を行うことが選択された場合には、先イベントと後イベントの差分更新によるDBの差し換えをまとめて行う。
【0043】
また、図5に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の更新中又は更新中断中に、通信モジュール9による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合には、先イベントである通信モジュール9による差分更新を実行し、更に参照用ナビ地図データ52へのデータ変換を行った後に、後イベントである通信モジュール9による差分更新データ28の取得、更新、変換も行う。その後に、地図データの更新を行うか否かを利用者に確認する更新確認画面を液晶ディスプレイ47に表示して、更新を行うことが選択された場合には、先イベントと後イベントの差分更新によるDBの差し換えをまとめて行う。尚、差分更新データ28が更新中断中となる場合には、例えば更新中にACCが一旦OFFされ、その後にONされた場合に行われる更新復帰処理までの間がある。
【0044】
また、図5に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の更新が終了し、DBへの差替えが行われる前に、通信モジュール9による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合であって、「後イベントがACCをONしたことによる通信開始の場合」には、先イベントである通信モジュール9によるDBの差し替えを行った後に、後イベントである通信モジュール9による差分更新データ28の取得、更新、変換、差し替えも行う。
また、「その他の条件(例えば、自宅が登録された場合や目的地が設定された場合)で後イベントの通信開始が開始された場合」には、後イベントである通信モジュール9による差分更新データ28の取得、更新、変換が行われた後に、DBの差し換えをまとめて行う。
【0045】
また、図5に示すようにCD−R13による差分更新データ28の取得中、更新中、更新中断中又は更新終了差替え前に、通信モジュール9による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合には、後イベントはキャンセルし、先イベントである取得中、更新中又は更新中断中であったCD−R13による差分更新のみ実行する。これは、CD−R13を用いた地図データの更新は利用者の意図に基づく更新であることから、利用者の意図とは異なった地図データへと更新されてしまうことを防止するためである。
【0046】
また、図5に示すようにCD−R13による差分更新データ28の取得中断中に、通信モジュール9による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合には、先イベントである取得中断中であったCD−R13による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、取得中断中となる場合はCD−R13がDVDドライブ49からイジェクトされた場合であることから、先イベントの更新が実行できないためである。
【0047】
尚、通信モジュール9による差分更新データ28の取得中に、通信モジュール9による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始されることは構成上ありえないので、更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
また、携帯電話機10による差分更新データ28の取得中に、通信モジュール9による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始されることはナビゲーション装置6において制限されているので、更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
また、販売店HDD12が接続されている状態では通信動作が行われないので、全更新データ29に基づく全更新が行われる最中には更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
【0048】
また、図6に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の取得中断中に、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合であって、「検索条件(即ち更新対象エリア)が同じ」で且つ「取得中断中の差分更新データのバージョンと後に取得する差分更新データのバージョンが同じ」場合には、後イベントはキャンセルし、先イベントである取得中断中であった携帯電話機10による差分更新のみ実行する。これは、後イベントの更新が先イベントの更新と全く同じ更新内容であるためであり、同内容の更新を2度行う必要が無い為である。尚、差分更新データ28が取得中断中となる場合には、例えばトンネルなどに車両が進入して通信状態が悪くなった場合等がある。
また、「検索条件(即ち更新対象エリア)が同じ」で且つ「取得中断中の差分更新データのバージョンより後に取得する差分更新データのバージョンが新しい」場合には、先イベントである取得中断中であった携帯電話機10による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、後イベントの更新を行えば、先イベントの更新を包含したより新しい地図データへと更新されるためである。
また、「検索条件(即ち更新対象エリア)が異なる」場合には、先イベントである取得中断中であった携帯電話機10による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、携帯電話機10を用いた地図データの更新は利用者の意図に基づく更新であることから、利用者の意図とは異なった地図データへと更新されてしまうことを防止するためである。
【0049】
また、図6に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の更新が終了し、差替えが行われる前に、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合には、後イベントである携帯電話機10による差分更新データ28の取得、更新、変換が行われた後に、先イベントである携帯電話機10によるDBの差し替えと後イベントである携帯電話機10によるDBの差し替えをまとめて行う。
【0050】
また、図6に示すようにCD−R13による差分更新データ28の取得中断中に、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合には、先イベントである取得中断中であったCD−R13による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、取得中断中となる場合はCD−R13がDVDドライブ49からイジェクトされた場合であることから、先イベントの更新が実行できないためである。
【0051】
また、図6に示すようにCD−R13による差分更新データ28の更新が終了し、DBの差替えが行われる前に、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始された場合には、後イベントである携帯電話機10による差分更新データ28の取得、更新、変換が行われた後に、先イベントであるCD−R13によるDBの差し替えと後イベントである携帯電話機10によるDBの差し替えをまとめて行う。これは、CD−R13を用いた地図データの更新と携帯電話機10を用いた地図データの更新とは共に利用者の意図に基づく更新であることから、利用者の意図とは異なった地図データへと更新されてしまうことを防止するためである。
【0052】
尚、通信モジュール9による差分更新データ28の取得中に、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始されることはナビゲーション装置6において制限されているので、更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
また、携帯電話機10による差分更新データ28の取得中に、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始されることは構成上ありえないので、更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
また、携帯電話機10による差分更新データ28の更新中及び更新中断中には、携帯電話機10による地図データ更新の要求操作が行えないので、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始されることはなく、更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
また、CD−R13による差分更新データ28の取得中、更新中及び更新中断中には、携帯電話機10による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始されることはナビゲーション装置6において制限されているので、更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
また、販売店HDD12が接続されている状態では通信動作が行われないので、全更新データ29に基づく全更新が行われる最中には更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
【0053】
また、図7に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の取得中及び取得中断中に、CD−R13がDVDドライブ49に挿入されて差分更新データの取得が開始された場合には、先イベントである取得中又は取得中断中であった通信モジュール9による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、CD−R13を用いた地図データの更新は利用者の意図に基づく更新であることから、利用者の意図とは異なった地図データへと更新されてしまうことを防止するためである。
【0054】
また、図7に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、CD−R13がDVDドライブ49に挿入されて差分更新データの取得が開始された場合には、先イベントである通信モジュール9による地図データの更新及び変換を行った後に、CD−R13が継続して挿入されていることを条件として後イベントであるCD−R13による差分更新データ28の取得、更新、変換を行い、先イベントと後イベントの差分更新によるDBの差し換えをまとめて行う。
【0055】
また、図7に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の取得中及び取得中断中に、CD−R13がDVDドライブ49に挿入されて差分更新データの取得が開始された場合には、先イベントである取得中断中であった携帯電話機10による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。但し、携帯電話機10を用いた地図データの更新は利用者の意図に基づく更新であり、また通信料金も利用者が負担していることから、先イベントによる更新を中止してよいかを利用者に確認し、同意が得られた場合にのみ携帯電話機10による更新を中止する。
【0056】
また、図7に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、CD−R13がDVDドライブ49に挿入されて差分更新データの取得が開始された場合には、先イベントである携帯電話機10による地図データの更新及び変換を行った後に、CD−R13が継続して挿入されていることを条件として後イベントであるCD−R13による差分更新データ28の取得、更新、変換を行い、先イベントと後イベントの差分更新によるDBの差し換えをまとめて行う。
【0057】
また、図7に示すようにCD−R13による差分更新データ28の取得中断中に、CD−R13がDVDドライブ49に挿入されて差分更新データの取得が開始された場合には、先イベントである取得中断中であったCD−R13による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、取得中断中となる場合はCD−RがDVDドライブ49からイジェクトされた場合であることから、先イベントの更新が実行できないためである。
【0058】
また、図7に示すようにCD−R13による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、CD−R13がDVDドライブ49に挿入されて差分更新データの取得が開始された場合には、後イベントであるCD−R13による差分更新データ28の取得、更新、変換が行われた後に、先イベントであるCD−R13によるDBの差し替えと後イベントであるCD−R13によるDBの差し替えをまとめて行う。これは、先イベントがCD−R13からのデータの読取が終了しているために、CD−R13を入れ換えた場合でも先イベントと後イベントの両方の更新を行うことができるからである。
【0059】
尚、CD−R13による差分更新データ28の取得中に、CD−R13による新たな差分更新データ28のデータ取得が開始されることはDVDドライブ49の構成上できないので、更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
また、販売店HDD12が接続されている状態では通信動作が行われないので、全更新データ29に基づく全更新が行われる最中には更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
【0060】
また、図7に示すようにCD−R13による差分更新データ28の取得中断中に、CD−R13をDVDドライブ49からイジェクトする操作が行われた場合には、挿入されているCD−R13をイジェクトする。尚、再度CD−R13が挿入された場合には、再びデータの取得を最初から開始する。
【0061】
また、図7に示すようにCD−R13による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、CD−R13をDVDドライブ49からイジェクトする操作が行われた場合には、挿入されているCD−R13をイジェクトした後に、先イベントであるCD−R13による差分更新データ28の更新、変換、差し替えも行う。これは、先イベントがCD−R13からのデータの読取が終了しているために、CD−R13をイジェクトした場合でも先イベントの更新を行うことができるからである。
【0062】
尚、通信モジュール9及び携帯電話機10による差分更新データ28の更新及び全更新には、CD−R13は使用されないのでCD−R13をイジェクト操作した場合の優先順位の設定はない。
【0063】
また、図8に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の取得中及び取得中断中に、販売店HDD12がナビゲーション装置6に接続されて全更新が開始される場合には、先イベントである取得中断中であった通信モジュール9による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、先イベントで差分更新したとしても、その後の全更新によって全エリアの地図データが書き換えられてしまうので、不要な通信及び更新処理を行わないようにする為である。
【0064】
また、図8に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、販売店HDD12がナビゲーション装置6に接続されて全更新が開始される場合には、先イベントである更新中であった通信モジュール9による差分更新を中止し、後イベントである全更新を行う。但し、全更新を行った後に取得した差分更新データのバージョンと全更新後の地図データのバージョンを比較して、差分更新データのほうがバージョンが新しい場合には、全更新後に既に取得した差分更新データに基づく差分更新を行う。これは、全更新によって古いバージョンの地図情報へと更新されてしまうのを防止するためである。
【0065】
また、図8に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の取得中及び取得中断中に、販売店HDD12がナビゲーション装置6に接続されて全更新が開始される場合には、先イベントである取得中断中であった携帯電話機10による差分更新を中止し、後イベントの更新を実行する。これは、先イベントで差分更新したとしても、その後の全更新によって全エリアの地図データが書き換えられてしまうので、不要な通信及び更新処理を行わないようにする為である。
【0066】
また、図8に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、販売店HDD12がナビゲーション装置6に接続されて全更新が開始される場合には、先イベントである更新中であった携帯電話機10による差分更新を中止し、後イベントである全更新を行う。但し、全更新を行った後に取得した差分更新データのバージョンと全更新後の地図データのバージョンを比較して、差分更新データのほうがバージョンが新しい場合には、全更新後に既に取得した差分更新データに基づく差分更新を行う。これは、全更新によって古いバージョンの地図情報へと更新されてしまうのを防止するためである。
【0067】
また、図8に示すようにCD−R13による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、販売店HDD12がナビゲーション装置6に接続されて全更新が開始される場合には、先イベントである更新中であったCD−R13による差分更新を中止し、後イベントである全更新を行う。但し、全更新を行った後にCD−R13に記録された差分更新データのバージョンと全更新後の地図データのバージョンを比較して、差分更新データのほうがバージョンが新しい場合には、全更新後にCD−R13に基づく差分更新を行う。これは、全更新によって古いバージョンの地図情報へと更新されてしまうのを防止するためである。
【0068】
尚、販売店HDD12が接続されている状態では他の販売店HDD12が接続できないので、全更新データ29に基づく全更新が行われる最中には更に全更新が開始されて更新が競合する虞が無く優先順位の設定はない。
【0069】
また、図8に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の取得中及び取得中断中に、ACCのOFF操作がされた場合にはACCがOFFされ、次回にACCがONされたときにレジュームする。
【0070】
また、図8に示すように通信モジュール9による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、ACCのOFF操作がされた場合にはACCがOFFされ、次回にACCがONされたときに更新を再開する。尚、更新終了後で差し換え前であった場合には、ACCのON後に地図データの更新を行うか否かを利用者に確認する更新確認画面を液晶ディスプレイ47に表示する。
【0071】
また、図8に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の取得中及び取得中断中に、ACCのOFF操作がされた場合にはACCがOFFされ、差分更新データ28の取得は中止される。
【0072】
また、図8に示すように携帯電話機10による差分更新データ28の更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、ACCのOFF操作がされた場合にはACCがOFFされ、次回にACCがONされたときに更新を再開する。尚、更新終了後で差し換え前であった場合には、ACCのON後に地図データの更新を行うか否かを利用者に確認する更新確認画面を液晶ディスプレイ47に表示する。
【0073】
また、図8に示すようにCD−R13による差分更新データ28の取得中、取得中断中、更新中、更新中断中、更新終了差替え前に、ACCのOFF操作がされた場合にはACCがOFFされ、次回にACCがONされたときに更新を再開する。
【0074】
尚、販売店HDD12が接続されている状態ではACCのOFF操作は受け付けないので、全更新データ29に基づく全更新が行われる最中にはACCがOFFされる虞が無く優先順位の設定はない。
【0075】
続いて、前記構成を有する地図更新システム1においてナビゲーション装置6のナビゲーション制御部45が実行する地図データ更新処理プログラムについて図9に基づき説明する。図9は本実施形態に係る地図データ更新処理プログラムのフローチャートである。ここで、地図データ更新処理プログラムは、通信モジュール9や携帯電話機10、CD−R13等を介して取得した差分更新データ28や販売店HDD12を介して取得した全更新データ29に基づいて優先順位設定テーブル53に設定された優先順位によりナビ地図データ51の差分更新又は全更新を行うプログラムである。尚、以下の図9にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置6が備えているRAM72やROM73に記憶されており、CPU71により所定間隔(例えば200ms毎)で繰り返し実行される。
【0076】
地図データ更新処理プログラムでは、先ずステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU71は差分更新又は全更新が開始される開始条件を満たしたか否かを判定する。具体的には、通信モジュール9を用いた差分更新は、ACCがONされたこと、操作部46を用いて自宅の登録(変更を含む)が行われたこと、又は操作部46を用いて経路探索の目的地が設定されたことのいずれかを満たした場合に開始される。また、携帯電話機10を用いた差分更新は、利用者が携帯電話機10をナビゲーション装置6に接続し、操作部46を用いて所定の更新開始操作が行われた場合に開始される。また、CD−R13を用いた差分更新は、差分更新データ28が記録されたCD−R13がDVDドライブ49に挿入された場合に開始される。また、全更新は、全更新データ29が記録された販売店HDD12がナビゲーション装置6に接続された場合に開始される。
【0077】
そして、上記いずれの開始条件も満たしていないと判定された場合(S1:NO)には処理プログラムを終了する一方、上記いずれかの開始条件を満たしたと判定された場合(S1:YES)にはS2へと移行する。
【0078】
S2で、CPU71は差分更新データ28又は全更新データ29を取得してナビ地図データ51の更新と参照用ナビ地図データ52への変換を行う。尚、差分更新データ28の取得については、通信モジュール9或いは携帯電話機10を介した通信により地図配信センタ2から取得すること、差分更新データ28が記録されたCD−R13をDVDドライブ49で読み取ることにより可能となる。また、全更新データ29の取得については、全更新データ29が記録された販売店HDD12へとIEEE1394ケーブルを介してアクセスすることにより可能となる。
【0079】
尚、地図更新システム1で行われる通信モジュール9に基づく差分更新処理では、ACCがONされたタイミングで行われる差分更新では、特に配信道路区分が「全国」に区分された全国エリアの地図データ(図3参照)と、配信道路区分の種類に係わらず自宅中心とした100km四方のエリアの地図データ(図10参照)が更新対象となる。
また、自宅が登録(変更を含む)されたタイミングで行われる差分更新では、特に配信道路区分が「全国」に区分された全国エリアの地図データ(図3参照)と、配信道路区分の種類に係わらず自宅中心とした100km四方のエリアの地図データ(図10参照)が更新対象となる。
また、目的地が設定されたタイミングで行われる差分更新では、特に配信道路区分が「全国」に区分された全国エリアの地図データ(図3参照)と、配信道路区分の種類に係わらず目的地中心とした10km四方のエリアの地図データ(図10参照)が更新対象となる。
そして、更新対象となったいずれかのエリア内で配信道路区分に対応する道路の新設、変更等があった場合には地図配信センタ2から送信された差分更新データに基づいて該当エリアの地図データが新たなバージョンの地図データへと更新される。
【0080】
次に、S3でCPU71は新たに差分更新又は全更新が開始される開始条件を満たしたか否かを判定する。尚、開始条件は前記S1と同じ条件であるのでここではその説明は省略する。
【0081】
その結果、いずれの開始条件も満たしていないと判定された場合(S3:NO)には既に前記S2で開始されている地図データの差分更新又は全更新が終了した後に処理プログラムを終了する。一方、いずれかの開始条件を満たしたと判定された場合(S3:YES)にはS4へと移行する。
【0082】
S4では、更新を行うタイミングが重複したことに基づいて、優先順位設定テーブル53(図5〜図8)に従って先イベントと後イベントの更新の有無と更新順序を設定し、更新を行う。尚、優先順位設定テーブル53については既に図5〜図8を用いて詳細に説明したので、ここではその説明は省略する。
【0083】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る地図更新システム1では、ナビゲーション装置6が地図配信センタ2から配信された差分更新データ28又は全更新データ29に基づいてナビ地図データ51の差分更新或いは全更新(S2)を行う際において、特に、更新処理の開始のタイミングが重複して更新が競合した場合(S3:YES)であっても、優先順位設定テーブル53に従って各更新の有無と更新順序を設定して更新を行うので、利用者の意図に沿った地図データへの更新を可能とする。また、不要な通信や更新処理を行わないので、更新時間の短縮や制御装置の処理負担を軽減することができる。
【0084】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではナビゲーション装置6が有する地図データの全更新を行う際に、販売店HDD12を販売店PC30から取り外してナビゲーション装置6に接続することにより行うが、ナビゲーション装置6から各DBを格納したHDDを取り外して販売店PC30に接続することにより地図データの全更新を行うようにしても良い。
【0085】
また、本実施形態ではナビゲーション装置6の有する地図データを更新する場合を例にして説明したが、ナビゲーション装置6以外であっても地図データを有する装置であれば、その地図データの更新に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施形態に係る地図更新システムを示した概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る地図更新システムの各構成を示したブロック図である。
【図3】本実施形態に係る地図更新システムの地図データのバージョン管理の仕組みを説明した説明図である。
【図4】本実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示したブロック図である。
【図5】本実施形態に係る優先順位設定テーブルを示した図である。
【図6】本実施形態に係る優先順位設定テーブルを示した図である。
【図7】本実施形態に係る優先順位設定テーブルを示した図である。
【図8】本実施形態に係る優先順位設定テーブルを示した図である。
【図9】本実施形態に係る地図データ更新処理プログラムのフローチャートである。
【図10】差分更新を行う際の更新対象エリアを示した図である。
【符号の説明】
【0087】
1 地図更新システム
2 地図配信センタ
3 ユーザPC
4 販売店
6 ナビゲーション装置
9 通信モジュール
10 携帯電話機
12 販売店HDD
13 CD−R
28 差分更新データ
29 全更新データ
43 ローカル保存DB
44 アプリ参照DB
45 ナビゲーション制御部
49 DVDドライブ
51 ナビ地図データ
52 参照用ナビ地図データ
53 優先順位設定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報の一部又は全部を新たな地図情報に更新する更新情報を第1の通信方式による通信又は更新情報が記録された第1の記憶媒体を介して取得する第1更新情報取得手段と、
前記第1更新情報取得手段により取得された前記更新情報に基づいて前記地図情報を更新する第1更新手段と、
前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報の一部又は全部を新たな地図情報に更新する更新情報を第2の通信方式による通信又は更新情報が記録された第2の記憶媒体を介して取得する第2更新情報取得手段と、
前記第2更新情報取得手段により取得された前記更新情報に基づいて前記地図情報を更新する第2更新手段と、
前記第1更新手段に基づく更新と前記第2更新手段に基づく更新の優先順位を記憶した記憶手段と、を有し、
前記記憶手段に記憶された優先順位に基づいて前記第1更新手段及び前記第2更新手段は前記地図情報を更新することを特徴とする地図更新システム。
【請求項2】
前記優先順位は前記第1更新情報取得手段による更新情報の取得中に前記第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段に基づく更新及び前記第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする請求項1に記載の地図更新システム。
【請求項3】
前記優先順位は前記第1更新情報取得手段による更新情報の取得中断中に前記第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段に基づく更新及び前記第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする請求項1に記載の地図更新システム。
【請求項4】
前記優先順位は前記第1更新手段による地図情報の更新中に前記第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段に基づく更新及び前記第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする請求項1に記載の地図更新システム。
【請求項5】
前記優先順位は前記第1更新手段による地図情報の更新中断中に前記第2更新情報取得手段による更新情報の取得が開始された場合に、前記第1更新手段に基づく更新及び前記第2更新手段に基づく更新の有無又は更新の順序を設定することを特徴とする請求項1に記載の地図更新システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−58748(P2008−58748A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237182(P2006−237182)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】