説明

地形点から3次元整合される地表そのもののデジタル標高モデル抽出

多次元対象についての複数の視野を表す複数のフレームを表している複数の未加工の地形点から、デジタル標高モデルを抽出する方法(300)は:表面上方の妨害物により生成されたデータ点をフィルタリング除去することによって表面を探知し(304)、それにより表面を表す複数の表面データ点を提供し;且つ競争的フィルタを用いて表面データ点をフィルタリングし(306)、それによりデジタル標高モデルのデータ点の多次元表面シェルを提供する;ステップ又は作用を有する。上記方法はまた、専用の情報処理システム、又はプログラム可能な情報処理システム(200)によって実行されることが可能であり、あるいは例えばCD−ROM又はDVD等のコンピュータ可読媒体内の命令セットとして実行されることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル標高モデルを抽出するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像のデジタル描写を処理するシステムは、一般に、例えばデジタル標高モデル(digital elevation model;DEM)等の、表面を表すデータを処理するために使用されている。DEMとは地球上の領域の標高を表すデジタル地図である。データは、例えばライダー(LIDAR)(画像化レーザレーダ)等の周知の何れかの手段によって、あるいは干渉合成開口レーダ(Interferometric Synthetic Aperture Radar;IFSAR)等によって収集される。動作において、LIDAR機器は標的に光を送出する。伝送された光は標的と相互作用し、該標的によって変化させられる。この光の一部は上記機器のセンサーへと反射又は散乱されて戻り、そこで検出され、記憶され且つ分析される。この光の特性変化により、標的の特性の一部を導出することが可能である。光が標的まで伝わってLIDAR機器に戻ってくるのに必要な時間が標的までの飛程を導出するために使用される。IFSARは、レーダ干渉計と呼ばれる技術によって作成された高解像度の標高データを取り込んで処理するために使用される。LIDARの場合のように、IFSARはDEMを抽出するのに有用なデータを作成する。
【0003】
デジタル標高モデルは階調画像による高度地図として描写され、画素値は実際の地形の標高値にされ得る。画素はまた、世界空間(経度及び緯度)と相関があり、各画素はモデルの目的及び描写される地域に応じて変化されられ得るこの空間のボリュームを表す。
【0004】
図1は、空挺LIDARシステム100の一例を示している。このシステムは航空機の底部に搭載されたLIDAR機器102を有している。航空機の下方は、地面と、空中から地面(大地)への視界を遮る木々及びその他の群葉により形成された林冠とを有する領域である。LIDAR機器102は地面に向かう複数のレーザ光パルスを放射する。LIDAR機器102はこれらパルスの反射/散乱を検出するセンサー103を有している。LIDAR機器102は単一の画像から標高と位置情報との関係を含むデータを提供する。しかしながら、この領域部分について異なる視野から見た複数のフレームが画像を作成するために用いられることに留意すべきである。地形の上方にある木々の林冠は、この木々の林冠の下にある標的(例えば、戦車106)を有意に不明瞭なものにする。故に、機器102のセンサーによって受信される地面及び標的106からの地点はまばらである。従って、地点を処理する堅牢なシステムが要望される。さらに、最も適切で有利な値とするためには、標的106が容易に感知され得る地面の画像が迅速に利用可能にされなければならない。
【0005】
DEMを作成するためにLIDARによって作成されたデータ点を抽出することが知られている。しかしながら、このような方法は計算集約的であり、多数のデータ点が処理される場合、ランタイム応用が困難となったり遅くなったりし得る。故に、地形データ点を用いてDEMを作成するための、より効率的な方法及びシステムへのニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の上記及び他の問題を解決した、多次元対象についての複数の視野を表す複数の未加工の地形点からデジタル標高モデルを抽出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の一態様に従った方法は:表面上方の妨害物により生成されたデータ点をフィルタリング除去することによって対象の表面を探知し、それにより表面を表す複数の表面データ点を提供し;且つ競争的フィルタを用いて表面データ点をフィルタリングし、それによりデジタル標高モデルのデータ点の多次元表面シェルを提供する;ステップ又は作用を有する。上記方法はまた、専用の情報処理システム、又はプログラム可能な情報処理システムによって実行されることが可能であり、あるいは例えばCD−ROM又はDVD等のコンピュータ可読媒体内の命令セットとして実行されることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図2は、本発明の一実施形態を用いる情報処理システム200を示すハイレベル・ブロック図を示している。システム200は地形データ点の出所202を有している。これらの点は、好ましくは、図1に関して説明されたLIDAR機器102によって提供される複数の3次元(3D)地形点の値である。
【0009】
引き続き図2を参照するに、データ源202は従来からの方法で、例えば図1に示された地形のような複雑な多次元対象を表す点を有する複数のフレーム(又はボリューム)を作成する。この実施形態においては、対象は基本表面(例えば、地面又は地表)と、基本表面より上方の複数の妨害物(例えば、木の頂部)とを有している。各フレームは、航空機104がこの地形の上空を移動するときにセンサー103によって所定(露光)期間に収集された点を有する。好適な実施形態においては、この期間は1/3秒であり、現行の機器を用いると、この露光により何十万という点がLIDARセンサー103によって収集される結果となる。各点は3次元座標セット(x、y、z)によって規定される。
【0010】
このシステム200が従来技術の性能を向上させる一手法は、少なくとも部分的に、地表面及び(存在するならば)標的106を表すデータ点のみを使用し、地面から上方に所定の閾値を超えた高さにある妨害物を表すデータ点を使用しないことによる。地面の点のみを使用することにより、地上にリンクされて処理されるべき点の数が大いに削減され、それ故に、地形モデルを作成するのに必要な時間が短縮される。
【0011】
LIDAR機器102により提供されたデータはリンギング(又はコロナ効果)として知られる効果を含む場合がある。リンギングは標的領域により生成される光の散乱に起因し、誤った画像を生じさせることが時々ある。受け取った3次元地形点をフィルタリングしてリンギングを除去するためにリンギング除去フィルタ(回路又はプログラムロジック)204が使用される。全ての地形点がリンギングを含むわけではなく、故に、フィルタ204は常に必要とされるわけではない。リンギングは選択された(例えば)方位角設定を超える全データを無視することによって除去され、それにより如何なる誤った画像も排除される。方位角設定の選択は統計データにより決定されるか、あるいは経験的に(heuristically)決定されるかする。入力がリンギングを含んでいる場合、システム200でのリンギング除去フィルタ204の使用により、フィルタ204の出力での信号対雑音比が増大される。
【0012】
リンギングノイズ除去フィルタ204により提供される出力は地面探知器206で受け取られる。地面探知器206は上述の(例えば、LIDAR機器102からの)複数の未加工地形点とそれらの座標を用いて地表面を探知し、複数のフレームを表す、従って地表面及び標的106のパッチを表す複数の地面点を提供するために使用される。地面探知器206はその入力から地面点を抽出し、例えば木々の頂部からの点などの、妨害物を表す点をフィルタリング除去することによって地面を探知する。予期されるように、木々及びその他の群葉を通過して地面に到達するLIDARパルス数は、LIDAR源(又は放射体)により放射されたパルス数より遙かに少ない。故に、LIDARセンサー103で検出される地面を表す光の点(地面点)は、相応して、航空機104下方の地形全体から受信される全体数より少ない。
【0013】
地面探知器206は、こうして、リンギング除去フィルタ204の出力から提供された地形データから地表面の外観(3次元表面を定める点の組;以下、シェルと称する)を抽出する。地面探知器206の出力は標的106を含む地表面を表すデータセットを有する。
【0014】
地面探知器206はまた、地面が連続であり地形に大きな変化が存在しないことを確認する働きをする。これは、地表面に対する2次元(2D)格子を作り出し、この格子の各要素における地面の高さを決定することによって達成される。格子の各要素は、好ましくは、一辺が1メートルの地面の正方形部分を表す。格子全体に対してこのデータが収集されると、地面探知器206は、場所が不適切だと思われる点、又は不十分なデータに基づく点を排除する。何れの点が排除されるかについての決定は、地面探知器206にプログラムされた人為的なプログラムに基づく。地面探知器206は更に、地表面の等高線を計算するに際して所定の高さ(例えば、6フィートといった人の身長)より高い如何なる点も無視するようにプログラムされる。この所定の高さはルールに基づく統計学によって決定され、地面の部分ではなさそうな如何なる構造も排除されるように為される。故に、地面探知器206の出力は、木々の頂部のデータも同様に使用するシステムと比較して、実際の地表面により忠実な描写をもたらす。
【0015】
地面探知器206の出力は競争的フィルタ208に提供される。競争的フィルタ208は地面探知器206により提供された地表面データ(地面点)を検討するために使用される。地面点はDEM点の3次元シェルを得るために競争的フィルタ208を用いてフィルタリングされる。競争的フィルタ208は、LIDAR機器202により収集されたデータ等の地球空間座標に結合されない地表面データをフィルタリングする。フィルタ208は各フレームのデータ点に対して所定の次数の多項式フィッティングを実行することによって機能する。これは、フレーム内の点の組を最も適切に表すのは何れの多項式であるかを決定することによって行われる。一例は1次式(傾斜平面)であり、他の例は数値の平均(0次)である。好適な実施形態においては、如何なる所与の点のフレーム又はボリュームにおいても、平均及び傾斜平面(それぞれ、0次式及び1次式)が最適フィッティングを競い合う。他の実施形態はより高次の多項式を用いてもよい。多項式をフレームにフィッティングする方法は米国特許出願09/827305号明細書(参照することによりその全体がここに組み込まれる)にて議論されている。
【0016】
従って、フィルタ208は点のフレーム毎にフレーム内の点にフィットする傾斜平面を決定する。各フレームは微小なフレームであり、処理されている領域全体の小さい部分を構成する地面の1パッチを対象とするものである。競争的フィルタ208の出力は複数の(例えば、30個の)平面を含む等高線であり、この平面は取得されたフレーム毎に1つである。最適に推定された地表面は、木々及び群葉による不明瞭さが部分的に不明瞭な標的についての画像を作成することを可能にする。各フレームがフィルタ208によって処理されると、その出力は未整合のDEM表面になる。この実施形態においては、この表面は地表面であるが、本発明に係る方法及びシステムが対象の如何なる表面についても使用され得ることは認識されるべきである。
【0017】
競争的フィルタ208により作成されたデータは、システム200のユーザに有用な画像を描写するのに適していない。見ることが可能な画像を作成するため、最初に整合処理を完了させなければならない。好適な実施形態において、この整合はブロック210(整合エンジン)及び212(剛体変換エンジン)により実行される反復処理によって行われる。この実施形態においては、地表面の3次元表示を得るため、幾つかのデータセット(フレーム)が自動的に繋ぎ合わされ、それにより標的の領域又は表面の全体画像が作成される。各データセット(又はフレーム)は異なる視野から取られ、表面の造形の異なる見え方を提供する。整合は、センサー103が上方を移動するときの表面を表す各点について、その相対位置を決定する。故に、表面領域の異なる見え方は、各フレームが隣接する1つ又は複数のフレームにフィットするように各フレームを平行移動及び回転を行うことによって、互いに位置合わせされる。
【0018】
整合処理の第1の部分は、第1(隣接)フレーム内の複数の点の各々に対して、第2フレーム内の最も近接する点を発見することである。最も近い点が発見されると、これらのフレームがうまくフィットして整合されたモデル又は画像を表すように、これらの点が位置合わせされる。これは対的(pair-wise)処理として知られている。この処理の各繰り返しによって、より良いフィッティングが生み出され、また、最適な位置合わせが実現されるまでこの処理が続けられる。これは、各フレームを他のフレームにフィッティングする各回転及び平行移動に付随する計算コストを決定することによって成し遂げられる。終了基準に到達するまで、各繰り返しで収集された情報(隣接フレーム間のマッチング)を用いて、後続の繰り返しが位置合わせを補正する。この基準は多数回の反復の完了、又は所定の目標の達成とすることができる。この実施形態においては、最近接点を少なくとも1つの他フレーム内に位置付けるために、各繰り返しからの観測結果を行列に入力し、全ての変換が実質的に同時に(すなわち、n的(n-wise)処理)実行されるように行列を一気に解くことによって、第1フレーム内の各点に対する最近接点探索を行っている。行列の一例はJ.A.Williams、M.Bennamoun、「Simultaneous Registration of Multiple Point Sets Using Orthonormal Matrices」、Proc.IEEE Int. Conf. on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP)、2000年6月、p.2199-2202に見出される。
【0019】
好適な実施形態においては、フレームに対する最適な回転及び平行移動を決定するために、この反復処理は数回(例えば、5回)繰り返される。先述のJ.A.Williams等の文献に提示されているアルゴリズムを用いることが好ましい。なお、この文献による開示は参照することによりここに組み込まれる。
【0020】
上述の反復的な変換はブロック212にて実行される。各変換は剛体(rigid)変換である。対応し合う点間の距離を保持する変換である場合、その変換は剛体的であると言われる。
【0021】
フレーム統合ブロック214は、ブロック212により作成された整合済みのボリュームの統合(又は結合)を実行し、その結果は表示に適した大きさ及び形状にトリミングされ、さらに標的の構造を示すためにブロック216で視覚的に利用される。結果は迅速に表示される3次元モデルである。ここで説明された実施形態においては、図1に示されるように木々の頂部の下に隠れた戦車106等の標的が、戦車106上の木々の林冠による不明瞭化の影響なく描写される。
【0022】
上述のように、戦闘環境で例えば戦車106等の隠れた標的の位置を特定するような多くの用途においては、整合処理の速さは非常に重要である。この処理を高速化する一手法は、フレーム間で対応し合う点を探索する速さを向上させることである。これは、幾つかある周知のk−Dツリー・アルゴリズムの何れかを使用することによって達成され得る。従って、各フレームからのデータ点はツリー構造内にマッピングされ、第1フレーム内の所与の点に対する最近接点を発見するために隣接フレーム内の点の組全体が探索される必要がないようにされる。k−Dツリー・アルゴリズムの一例はウェブサイト(http://www.rolemaker.dk/nonRoleMaker/uni/algogem/kdtree.htm)にて見出される。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に従った、むき出しの地表そのもののデジタル標高モデルを抽出する単純化された方法300を例示するフローチャートである。この方法は、例えば図2に関連して述べられたシステム等の、あるシステムを用いて実行される。ステップ302にて、システムはフレームボリュームを表す複数の多次元点を受信する。ステップ304にて、システムは地面点を地面より上方の妨害物から分離することによって地面を探知する。ステップ306にて、システムは地面点をフィルタリングしてデジタル標高モデル点の多次元シェルを得る。フィルタリングの結果は図1に示される妨害物の真下の地面領域を表すDEMとなる。この出力に関して幾つもの用途が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】標的を隠す木々に覆われた地形の画像を処理する空挺LIDAR機器を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従った情報処理システムを示すハイレベル・ブロック図である。
【図3】本発明の他の一実施形態に従った、むき出しの地表のデジタル標高モデルを抽出する方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と表面上方の妨害物とを含む多次元対象を表す複数の未加工の地形点から、地球そのもののデジタル標高モデルを抽出するシステムであって:
各フレームが前記表面の一部を表している複数のフレームを表す前記複数の未加工の地形点を受け取り、且つ地面点を地面上方の妨害物点からフィルタリングすることにより、地表面を表す複数の地面点を提供する地面探知器;及び
前記地面点をフィルタリングしてデジタル標高モデル点の多次元シェルを得る競争的フィルタ;
を有するシステム。
【請求項2】
デジタル標高モデル点の前記シェルを整合させる整合ロジックを更に有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記地面探知器が、地面点を処理することにより前記地表面を探知し、且つ所定の閾高さを超える全ての点を排除する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記多次元の点が3次元座標を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の未加工の地形点を受け取って該未加工の地形点内の如何なるリンギング効果をも除去し、それにより信号対雑音比が増大された信号を前記地面探知器に提供するリンギングノイズ除去フィルタを更に有する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
対象表面によって反射又は散乱された光の点を受信して前記複数の地形点を提供するLIDARセンサーを更に有する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
光パルスを前記表面に放射するLIDAR源を更に有する請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
対象表面によって生成されたデータ点を受信して前記複数の地形点を提供するIFSAR機器を更に有する請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−506135(P2008−506135A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521506(P2007−521506)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/024114
【国際公開番号】WO2006/019595
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】