説明

均一な膜を備えたMEMSデバイス及びその製造方法

【課題】均一な膜を備えたMEMSデバイスを提供する。
【解決手段】膜によって覆われる凹部を有するMEMSベースデバイスに関する。凹部の上の膜は、高均一性のエピタキシャル層である層のスタックによって形成されているため、非常に均一である。ハンドル層等のスタックの不要な層は、所望の厚さの膜を達成するために、デバイスの完成前に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細加工デバイス及び微細加工デバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械素子(Micro Electro Mechanical Systems: MEMS)は電気部品を有しており、そこでは、電気信号がMEMSベースデバイスの各構造を駆動するか、又はそうした各構造の運動によって電気信号が生成される。多くの種類のMEMSベースデバイスでは、半導体基板に、従来の半導体処理技法を用いて機械構造が形成されている。MEMSベースデバイスは、単一構造を有することも複数構造を有することも可能である。
【0003】
MEMSベースデバイスの一実施態様は、チャンバが形成されている本体と、本体の外面に形成される圧電アクチュエータと、を有している。圧電アクチュエータは、セラミック等の圧電材料からなる層と圧電材料を挟装する電極等の導電素子とを有している。圧電アクチュエータの電極は、圧電材料に電圧を印加することができ、又は圧電材料が変形した場合に発生する電圧を伝達することができる。
【0004】
圧電アクチュエータを備えるMEMSベースデバイスの一種は、インクジェットプリンタ等の流体吐出デバイスである。インクジェットプリンタは、通常、インク供給部からインク液滴が吐出されるノズル開口部までのインク流路を有している。インク液滴の吐出は、インク流路内のインクをアクチュエータによって加圧することによって制御され、アクチュエータは、例えば圧電変位素子、サーマルバブルジェット発生素子又は静電変位素子であり得る。通常のプリントヘッドは、複数のインク流路とそれに対応するノズル開口部と関連するアクチュエータとの列を備え、各ノズル開口部からの液滴吐出を独立して制御することができる。ドロップ・オン・デマンド式のプリントヘッドでは、プリントヘッド及びプリント対象となる基板が互いに対して移動するにつれて、各アクチュエータが、画像の所定の画素位置に液滴を選択的に吐出するように駆動される。高性能プリントヘッドでは、ノズル開口部は、直径が50μm以下であることが可能であり、それらを、100〜300ノズル/インチのピッチで離間することができ、解像度が100dpi〜3000dpi以上であり、液滴サイズが約1〜70ピコリットル(pl)以下である。液滴吐出頻度は、10kHz以上であり得る。
【0005】
Hoisigtonらの特許文献1は、半導体プリントヘッド本体及び圧電アクチュエータを有するプリントヘッドを開示している。プリントヘッド本体はシリコン製であり、インク室を画成するようにエッチングされている。ノズル開口部は、シリコン本体に取り付けられている別個のノズルプレートによって画成されている。圧電アクチュエータは、圧電材料の層を有しており、それは、印加電圧に応じて形状が変化、即ち撓曲する。圧電層の撓曲により、インク流路に沿って位置するポンプ室内のインクが加圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,265,315号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プリント精度は、ヘッド内のノズル及びプリンタの複数のヘッドのノズルによって吐出される液滴のサイズ、速度及び均一性を含む、複数の要因によって影響を受ける。そして、液滴サイズ及び液滴速度の均一性は、インク流路の寸法の均一性、音響干渉の影響、インク流路内の汚染及びアクチュエータの作動の均一性等の要因によって影響を受ける。プリントヘッド内の各構造が全て非常に均一に動作することが望ましい場合がある。こうした均一性を達成するための一方法は、各構造体が非常に均一な要素を確実に有するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、微細加工デバイスを製造する方法は、エピタキシャル成長したシリコンスタックを、凹部を有する基板の第1面に接合して、凹部を覆ってチャンバを形成するステップであって、シリコンスタックがエッチストップ層及びハンドル層を有し、エッチストップ層が第1面とハンドル層との間にある、ステップと、シリコンスタックからハンドル層を除去することにより、チャンバの上に膜を形成するステップと、を含む。除去するステップはエッチングを含み、膜はエッチストップ層を含む。
【0009】
実施態様は、以下の特徴のうちの一つ又は複数を含むことができる。シリコンスタックは、第1面とエッチストップ層との間にデバイス層を更に有することができる。シリコンスタックからエッチストップ層を除去して、膜を形成することができる。デバイス層及びエッチストップ層を、異なるようにドープすることができ、例えば、デバイス層がN型層であってもよく、エッチストップ層はP++型層であってもよい。エッチストップ層及びハンドル層を、異なるようにドープすることができ、例えば、ハンドル層はN型層であってもよく、エッチストップ層はP++型層であってもよい。基板の第1面に、凹部を形成することができる。シリコンスタックからハンドル層を除去するステップは、ハンドル層をウェットエッチングすることを含んでもよい。膜は、P++型層を含むことができ、例えば、P++型層はホウ素・ゲルマニウム共ドープされている。膜の厚さは、15μm未満、例えば10μm未満、例えば5μm未満、更に例えば1μm未満であってもよい。膜の厚さの標準偏差は、0.12μm以下であることが可能である。デバイス全体にわたって複数の凹部の上に膜を形成することができ、膜の厚さの変動は、複数の凹部間で0.3μm以下とすることができる。
【0010】
別の態様では、微細加工デバイスは、複数の凹部を有する基板と、15μm未満の厚さの単結晶シリコン膜であって、基板の複数の凹部が膜によって少なくとも部分的に覆われるように基板に接合される、膜と、その膜上に形成される圧電構造体と、を有する。膜は複数の凹部にわたって厚さの変動が0.3μm以下である均一性を有し、膜と本体との間の界面にシリコン以外の材料が実質的になく、圧電構造体は、第1導電層及び圧電材料を有する。
【0011】
実施態様は、以下の特徴のうちの一つ又は複数を含むことができる。膜はP++型層であってもN型層であってもよく、例えばP++型層である。圧電構造体は、膜に直接接触することができる。
【0012】
別の態様では、微細加工デバイスは、複数の凹部を有する基板と、15μm未満の厚さの単結晶シリコン膜であって、基板の凹部が膜によって少なくとも部分的に覆われるように基板に接合される、膜と、その膜上に形成される圧電構造体と、を有する。膜と本体との間の界面に、シリコン以外の材料が実質的になく、膜は、P++型層又はN型層であり、圧電構造体は、第1導電層及び圧電材料を含む。
【0013】
本発明のあり得る利点は、以下のうちのいずれも含まないか、一つ又は複数を含むことができる。アクチュエータの非常に均一なアクチュエータ膜を、モジュール基板の上部に形成し又は接合することができる。シリコン基板を、モジュール基板の上に接合した後、所望の厚さまで研削してアクチュエータ膜を形成することができる。或いは、アクチュエータ膜を、モジュール基板上にエピタキシャル形成されたシリコン層のスタック(「EPIスタック」)を接合することによって形成することができる。所望の厚さのシリコン層を有するEPIスタックをモジュール基板上に接合することで、SOI(Silicon-On-Insulator)ウエハを用いて膜層を形成する場合に使用され得るような、研削技法又は研削及びエッチングの組合せを含む技法によるよりも、厚さが均一な膜を形成することができる。EPI基板の膜層の厚さは、各基板にわたり、かつ複数の基板間でも非常に均一であり得る。したがって、製造されるデバイスは、デバイス全体にわたって非常に均一な膜を有することができる。厚さが均一な薄膜は、液滴サイズの均一性を向上させることができるため、有利である。研削技法を用いる代りにEPIスタックをモジュール基板に接合する場合、プリントヘッド全体にわたって膜の厚さの均一性を向上させることができる。
【0014】
本発明の一つ又は複数の実施形態の詳細を、添付図面及び以下の説明において示す。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、かつ特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】九つのプリントヘッドユニットを有するインクジェットプリントヘッドの斜視図である。
【図1B】図1Aに示すプリントヘッドユニット内に含まれるプリントヘッドモジュールの断面組立図である。
【図2】プリントヘッドモジュール本体の製法を示すフローチャートである。
【図3】図2に記載されているプリントヘッドモジュール本体の製法を説明する断面図である。
【図4】図2に記載されているプリントヘッドモジュール本体の製法を説明する断面図である。
【図5】図2に記載されているプリントヘッドモジュール本体の製法を説明する断面図である。
【図6】図2に記載されているプリントヘッドモジュール本体の製法を説明する断面図である。
【図7】図2に記載されているプリントヘッドモジュール本体の製法を説明する断面図である。
【図8】図2に記載されているプリントヘッドモジュール本体の製法を説明する断面図である。
【0016】
それぞれの図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、微細加工デバイス及び微細加工デバイスを製造する方法について説明する。微細加工デバイスは、インクジェットプリントヘッド等の、空洞の上に薄膜を備えたMEMSベースデバイスであり得る。
【0018】
MEMSベースデバイスを製造する一方法は、基板の第1面をエッチングして少なくとも一つのエッチング構造を形成することを含む。基板の第1面にシリコンスタックを接合することにより、第1面上のエッチング構造が覆われてチャンバが形成される。シリコンスタックは、シリコン層とハンドル層とを有している。接合により、基板の第1面とシリコン層との間にシリコン−シリコン接合が形成される。ハンドル層をシリコンスタックから除去することにより、チャンバの上にシリコン層を有する膜が形成される。この膜に圧電アクチュエータを接合することができる。
【0019】
シリコンスタックは、エピタキシャル形成された単結晶シリコン層のスタック(「EPIスタック」)であってもよく、そこでは、層のうちの一つがハンドル層であり、層のうちのもう一つがシリコン薄膜層であり、シリコン薄膜層の厚さは0.1μm〜50μm、例えば9μm〜20μm、更に例えば15μmである。ハンドル層もまたシリコンから形成されるが、二つの層のドーピング特性や電気特性等の特性は互いに異なることが可能である。エピタキシャル堆積では、堆積したシリコンは、その下にあるウエハのシリコン格子と同じ格子構造及び配向を有している。しかしながら、エピタキシャルプロセスにより、境界が非常に明確な異なるドーピング(P++からN−−)の複数のシリコン層の形成が可能となる。標準的なKOH化学エッチングにおけるエッチング速度はドーピングレベルによって決まるので、P++及びN又は他の低濃度ドープ層を並置することにより、優れたエッチストップ(選択比1:10〜1:100)を形成することができる。高い成膜均一性、明確なドーピング境界及び優れた選択比の組合せにより、隣接する層から効率的に分離することができる均一な層を形成する方法がもたらされる。EPIスタックはまた、追加のシリコン層を有することもできる。シリコン本体に接合されたシリコンの薄膜は、EPIスタックのハンドル層を除去することによって形成される。EPIスタックのシリコン層は非常に均一であり得るため、EPIスタックで形成される膜もまた非常に均一であり得る。
【0020】
特定の実施形態では、MEMSベースデバイスはインクジェットプリントヘッドであり得る。インクジェットプリンタは、通常、インク供給部からインク液滴が吐出されるノズル開口部までのインク流路を有している。インク液滴の吐出は、圧電アクチュエータ等のアクチュエータによりインク流路内のインクを加圧することによって制御される。通常のプリントヘッドは、複数のインク流路とそれに対応するノズル開口部と関連するアクチュエータとの列を備え、各ノズル開口部からの液滴吐出を独立して制御することができる。
【0021】
<プリントヘッドの構造>
図1Aにおいて、インクジェットプリントヘッドアセンブリ100はプリントヘッドユニット102を有しており、それらは、画像がプリントされる一枚のシートの全体又は一部にわたるように、枠103に保持されている。プリントヘッド100及びシートが相対的に(矢印方向に)移動する際に、プリントヘッドユニット102からインクを選択的に噴射することにより、画像をプリントすることができる。図1Aの実施形態では、例えば12インチ以上の幅にわたるプリントヘッドユニット102の三つのセットを示す。各セットは、プリントヘッドとシートとの間の相対移動の方向に沿って、複数、例えば三つのプリントヘッドユニットを有している。それらユニットを、解像度及び/又はプリント速度を向上させるためにノズル開口部をずらすように配置することができる。或いは、又は更に、各セットの各プリントヘッドユニットに、種類又は色の異なるインクを供給することができる。この構成を、プリントヘッドによるシートの単一パスでシートの全幅にわたってカラープリントするために使用することができる。
【0022】
<モジュール基板>
各プリントヘッドユニット102内には、ハウジング101内に格納されたプリントヘッドモジュール105(図1B)がある。簡単のために、プリントヘッドモジュールの一つの吐出構造のみを示している。プリントヘッドモジュールは、インクの液滴を制御可能に吐出することができる。
【0023】
図1Bにおいて、プリントヘッドモジュール105は、モジュール基板106及び圧電アクチュエータ構造体107を有している。モジュール基板106の表面108は、インク液滴が吐出される少なくとも一つのノズル109を有している。モジュール基板106の裏面110は、圧電アクチュエータ構造体107に固定されている。
【0024】
プリントヘッドモジュール105は、平行四辺形状、例えば長方形状又は台形状の薄板であってもよいが、そのように限定されない。一実施態様では、プリントヘッドモジュール105は、約30mm〜70mmの長さ、約4mm〜12mmの幅、及び400μm〜1000μmの厚さを有し、例えば15mmの長さ、15mmの幅及び650μmの厚さを有する。プリントヘッドモジュールの寸法を、例えば流路がエッチングされる半導体基板内で変えることができる。例えば、モジュールの幅及び長さは10cm以上であってもよい。
【0025】
<アクチュエータ>
圧電アクチュエータ構造体107は、アクチュエータ膜111、接地電極層112、圧電層113及び駆動電極層114を有している。圧電層113は、厚さが約50μm以下、例えば25μm〜1μm、又は約8μm〜18μmである、圧電材料の薄膜である。圧電層113を、高密度、低空隙率及び高圧電定数等、望ましい特性を有する圧電材料から構成することができる。好適なアクチュエータについては、参照により本明細書に援用される、2005年5月12日に公開された米国特許出願公開第2005/0099467号明細書に記載されている。
【0026】
一方の側に接地電極層112がある圧電層113は、アクチュエータ膜111に固定されている。アクチュエータ膜111は、シリコンであってもよく、圧電層の作動によってアクチュエータ膜111の屈曲又は撓曲がもたらされるように選択された伸縮性を有している。印加電圧に応じて、圧電層113は形状が変化、即ち撓曲する。圧電層113の撓曲により、流路116に沿って位置するポンプ室115内のインクが加圧される。アクチュエータ膜の厚さ均一性がモジュール全体にわたって高い場合、各アクチュエータに同様の電圧バイアスが加えられた場合に、モジュール全体にわたって正確かつ均一な作動を達成することができる。
【0027】
EPIスタックを用いて、プリントヘッドモジュール105の上に薄いアクチュエータ膜111を形成することができる。アクチュエータ膜の厚さは、約0.1μm〜100μmであり、例えば約1μm〜70μm、例えば1μm〜40μm、例えば9μm〜20μm、更に例えば15μmである。アクチュエータ膜の厚さは、15μm未満であってもよく、例えば10μm未満、例えば5μm未満、更に例えば1μm未満であってもよい。アクチュエータ膜は、0.1μmより厚くてもよい。
【0028】
<製法>
図2は、EPIスタックを用いるMEMSベースデバイスの製造方法を示すフローチャートである。図3〜図8は、図2の方法によるMEMSベースデバイスの製法を説明する図である。複数の微細加工デバイスを、基板に同時に製造することができる。明確にするために、図3〜図8は、単一のMEMSベースデバイスの製法を示す。
【0029】
図2及び図3において、シリコン、例えば単結晶シリコンからなる単一の基板300を用意する(ステップ200)。或いは、基板を酸化シリコンから形成することができる。基板300は第1面301を有している。基板は、400μm〜1000μm、例えば約600μm、の厚さであってもよく、又はMEMSベースモジュールを作成するために好適ないかなる厚さであってもよい。
【0030】
図2及び図4において、基板300の第1面301をエッチングして凹部400を形成し(ステップ201)、実施形態によっては、この凹部400は出口と流体連通している。MEMSベースデバイスが流体吐出デバイスである場合、凹部400は、インク入口等、微細加工デバイスの流路の構造を提供することができる。
【0031】
特定の実施形態では、エッチングは、基板300の第1面301上にフォトレジストを堆積することを含む。フォトレジストをパターニングし、基板300をエッチングして凹部400を形成する。そして、残りのフォトレジスト及び任意に基板300のいかなる酸化物層も除去することができる。酸化物層が除去されている間に、基板300の反対側を、テープ又はフォトレジスト等により保護することができる。
【0032】
エッチングプロセスの一例は、深掘反応性イオンエッチングによる異方性ドライエッチングであり、それは、プラズマを利用してシリコンを選択的にエッチングすることにより、実質的に垂直な側壁を有する構造を形成する。Boschプロセスとして知られる反応性イオンエッチング技法については、Laermorらの米国特許第5,501,893号明細書において論じられている。
【0033】
図2、図5及び図6において、シリコン−シリコン融合接合、即ち直接シリコン接合を用いて、基板300の第1面301をシリコンスタックに接合する(ステップ202)ことにより、基板300の凹部400を覆い、チャンバ500を形成する。融合接合については、米国特許出願公開第2005/0099467号明細書に更に記載されている。シリコンスタックはEPIスタック504であってもよく、実施形態によっては、ホウ素・ゲルマニウム共ドープ層等、P型(P++)層を含む。それはN型層を更に含むことができる。EPIスタックは、例えばアメリカ合衆国アリゾナ州テンペのLawrence Semiconductor Research,Incから市販されている。EPIスタック504’は、図6に示すようにエッチストップ層503及びハンドル層502のみを有することもできる。エッチストップ層503は、P型層、例えばP++ドープ単結晶シリコンであってもよく、ハンドル層502はN型層であってもよい。任意に、シリコンスタックは、図5に示すように更にデバイス層501を有していてもよく、その場合、デバイス層は、第1面301とエッチストップ層503との間にある。デバイス層501はN型層であってもよい。
【0034】
エッチストップ層及びハンドル層を有する例示的なEPIスタックは、厚さが約3μmのP型ホウ素・ゲルマニウム共ドープ層(エッチストップ層503)と、厚さが約600μmのN型層(ハンドル層502)とを有している。配向は、ミラー指数<100>によって画定され、平面配向が<2°である。この例では、平面度はSEMI規格である。
【0035】
エッチストップ層、ハンドル層及びデバイス層を有する別の例示的なEPIスタックは、厚さが約1μm〜70μmのN型層(デバイス層501)と、厚さが約600μmのN型層(ハンドル層502)と、それらN型層の間に厚さが約3μmのP型ホウ素・ゲルマニウム共ドープ層(エッチストップ層503)と、を有している。配向は、ミラー指数<100>によって画定され、平面配向が<2°である。この例では、平面度はSEMI規格である。ホウ素・ゲルマニウム共ドープシリコンの平均格子サイズは、下にある非ドープシリコンの平均格子サイズに非常に近くてもよく、それにより応力が低くなる。
【0036】
図2、図7及び図8において、シリコンスタックを基板300に接合した後、シリコンスタックのハンドル層502を除去して、チャンバの上に膜を形成する(ステップ203)。除去にはエッチングが含まれ、任意に、エッチストップ層503を除去しないことにより、膜がエッチストップ層503を含むようにする。エッチングを、エッチストップ層503をエッチングせずにハンドル層502を選択的にエッチングする材料を用いて行う。例として、ハンドル層は、低濃度ドープNシリコンであってもよく、膜層はP++ドープシリコン層であってもよい。そして、KOHウェットエッチングを用いて、エッチングは実質的にN/P++界面で停止する。図7は、図5に対応し、デバイスに残っているデバイス層501及びエッチストップ層503を示している。任意に、エッチストップ層503を除去することができる。図8は、図6に対応し、エッチストップ層503が膜を形成するデバイスを示している。
【0037】
スタックが、エッチストップ層及びハンドル層に加えてデバイス層を有する実施形態では、除去は、任意に、エッチストップ層503の除去を更に含むことができ、それにより、デバイス層501のみが膜を形成するために残る。エッチストップ層を、時限ドライエッチングによって除去することができる。
【0038】
シリコンスタックから残っている膜は非常に薄く、約1μmまでにすることができる。膜は、基板全体にわたり均一かつ複数の基板間において均一であり、したがって、シリコンスタック基板をチャンバ本体に接合することによって形成されるアクチュエータ膜内の厚さ均一性が高い。本明細書で開示したシリコンスタック及びウェットエッチング方法を用いて達成される均一性の程度は、SOIプロセスの研削/研磨方法を用いて達成される均一性より優れている。例えば、ウエハ全体にわたって、膜の厚さは、標準偏差が約0.12μm以下であることが可能であり、例えば又は総厚さ変動が約0.3μm以下であることが可能である。したがって、MEMSベースデバイスが複数の層から形成されるため、単一基板にわたる誤差及び互いに接合された複数の基板にわたる複合誤差が低減する。
【0039】
EPIスタックは必ずしもSOIウエハと交換可能ではない、ということが留意され得る。EPIスタックは、処理上の考慮事項のために全てのデバイスに利用可能であるとは限らない。例えば、上述した技法においてはKOHエッチングを用いてEPIスタックからハンドル層を除去するが、SOI上のデバイスは、KOHエッチングから保護することができない構造、例えば電子部品を有している場合があり、その場合、EPIスタックとの交換は可能でないこともある。しかしながら、EPIスタックが上述した技法において別個に製造されるため、ウエハを、他の構造との相互作用なしに、強力なエッチング液、例えばKOH内に配置することができる。
【0040】
本発明の複数の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくさまざまな変更を行うことができる、ということが理解されよう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細加工デバイスを製造する方法であって、
エピタキシャル成長したシリコンスタックを、凹部を有する基板の第1面に接合して、前記凹部を覆ってチャンバを形成するステップであって、前記シリコンスタックがエッチストップ層及びハンドル層を有し、前記エッチストップ層が前記第1面と前記ハンドル層との間にある、ステップと、
前記シリコンスタックから前記ハンドル層を除去することにより、前記チャンバの上に膜を形成するステップであって、エッチングを含み、前記膜が前記エッチストップ層を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記シリコンスタックが、前記第1面と前記エッチストップ層との間にデバイス層を更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコンスタックから前記エッチストップ層を除去して前記膜を形成するステップを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記デバイス層及び前記エッチストップ層が、異なるようにドープされる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記デバイス層がN型層であり、前記エッチストップ層がP++型層である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エッチストップ層及び前記ハンドル層が、異なるようにドープされる、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ハンドル層がN型層である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチストップ層がP++型層である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記基板の前記第1面に前記凹部を形成するステップを更に含む、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記シリコンスタックから前記ハンドル層を除去するステップが、前記ハンドル層をウェットエッチングすることを含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記膜がP++型層を含む、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記P++型層がホウ素・ゲルマニウム共ドープされている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膜の厚さが15μm未満である、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記膜の厚さが10μm未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記膜の厚さが5μm未満である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記膜の厚さが1μm未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記膜の厚さの標準偏差が、0.12μm以下である、請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスにわたって複数の凹部の上に膜を形成するステップを含み、前記膜の厚さの変動が、前記複数の凹部間で0.3μm以下である、請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
微細加工デバイスであって、
複数の凹部を有する基板と、
15μm未満の厚さの単結晶シリコン膜であって、前記基板の前記複数の凹部が前記膜によって少なくとも部分的に覆われるように前記基板に接合され、前記膜は前記複数の凹部にわたって厚さの変動が0.3μm以下である均一性を有し、前記膜と本体との間の界面にシリコン以外の材料が実質的にない、膜と、
前記膜上に形成される圧電構造体であって、第1導電層及び圧電材料を含む、圧電構造体と、
を備えるデバイス。
【請求項20】
前記膜がP++型層又はN型層である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記膜がP++型層である、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記圧電構造体が前記膜に直接接触している、請求項20又は21に記載のデバイス。
【請求項23】
微細加工デバイスであって、
複数の凹部を有する基板と、
15μm未満の厚さの単結晶シリコン膜であって、前記基板の前記複数の凹部が前記膜によって少なくとも部分的に覆われるように前記基板に接合され、前記膜と本体との間の界面にシリコン以外の材料が実質的になく、P++型層又はN型層である、膜と、
前記膜上に形成される圧電構造体であって、第1導電層及び圧電材料を含む、圧電構造体と、
を備えるデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−240825(P2010−240825A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249269(P2009−249269)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】