基板処理装置、基板処理方法および記憶媒体
【課題】高圧流体と接触させて基板に付着した液体を除去する処理を実施する過程で、基板にパーティクルが付着しにくい基板処理装置等を提供する。
【解決手段】基板Wの表面の乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器31内に高圧流体を供給する際、流体供給路351に設けられた遮断部を開き、流量調整部354により流量を調整した状態で開閉弁352を開いて処理容器31に高圧流体を導入し(または原料流体を処理容器31内で高圧流体に変化させ)、基板Wの表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、開閉弁352と減圧弁342とを開き、処理容器31に接続された排出路341を介して流体供給路351と処理容器31とを併せて減圧するステップと、その後、前記基板Wを当該処理容器31から搬出するステップと、を実行するように制御信号を出力する。
【解決手段】基板Wの表面の乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器31内に高圧流体を供給する際、流体供給路351に設けられた遮断部を開き、流量調整部354により流量を調整した状態で開閉弁352を開いて処理容器31に高圧流体を導入し(または原料流体を処理容器31内で高圧流体に変化させ)、基板Wの表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、開閉弁352と減圧弁342とを開き、処理容器31に接続された排出路341を介して流体供給路351と処理容器31とを併せて減圧するステップと、その後、前記基板Wを当該処理容器31から搬出するステップと、を実行するように制御信号を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体を接触させて基板の表面に付着した液体を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である半導体ウエハ(以下、ウエハという)などの表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液処理工程にてウエハの表面に付着した液体などを除去する際に、いわゆるパターン倒れと呼ばれる現象が問題となっている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0004】
こうしたパターン倒れの発生を抑えつつウエハ表面に付着した液体を除去する手法として超臨界状態や亜臨界状態の流体(背景技術の説明では、これらをまとめて超臨界流体という)を用いる方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を抽出する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、ウエハ表面に付着した液体を超臨界流体に溶解させたり、置換したりした後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0005】
発明者らは、このような超臨界流体を利用してウエハ表面の液体を除去する技術の実用化開発を行っている。この開発実験の過程において、予めクリーニングした処理容器内にて超臨界流体を用いてウエハ表面の液体を除去する実験を行った後、同じ処理容器内で別のウエハに対して同様の処理を行うと、2枚目以降のウエハには、1枚目のウエハと比べて多くのパーティクルが付着する現象が観察された。
【0006】
ここで特許文献1には、基板上に形成されたパターンに付着したリンス液を液体二酸化炭素と置換し、この二酸化炭素を加温して超臨界状態にしてから気化させることにより基板を乾燥させる方法が記載されている。しかしながら当該特許文献1には、上述のパーティクル付着現象を見出した旨の既述もなく、その解決方法も記載されていない。
【0007】
またここで上述の特許文献1に記載されているように、基板に付着している液体を除去する処理を終えた後は、反応室(処理容器)に液体二酸化炭素を供給する配管(供給配管)のバルブを閉じてから、排出口側のバルブを開いて反応室内の圧力を低下させる動作が一般に採用される。この場合には、供給側のバルブよりも上流側の配管内には液体二酸化炭素が残っていることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−158591号公報:段落0029、0039〜0040、図1、2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、高圧流体と接触させて基板に付着した液体を除去する処理を実施する過程で、基板にパーティクルが付着しにくい基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基板処理装置は、基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、前記開閉弁と減圧弁とを開いた状態とすることにより、前記流体供給路と処理容器との内部を減圧するステップと、その後、前記基板を当該処理容器から搬出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、他の発明に係わる基板処理装置は、基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流調調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記遮断部と開閉弁との間の流体供給路から分岐し、当該流体供給路内の流体を排出して減圧するための第1の減圧弁が設けられた分岐路と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための第2の減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記第1の減圧弁を閉じる一方、前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とすると共に開閉弁を閉じる一方、第2の減圧弁を開いた状態とすることにより、前記処理容器の内部を減圧するステップと、前記遮断部が遮断状態となり、開閉弁が閉じられた後、前記第1の減圧弁を開いて、前記流体供給路に残存する流体を分岐路から排出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
上述の各基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記高圧流体は、超臨界状態または亜臨界状態の流体であり、前記処理容器には、前記流体供給源から高圧流体が供給されるか、または当該処理容器内で前記原料流体が加熱されて高圧流体となることにより、前記乾燥防止用の液体が当該高圧流体に抽出されて基板の表面から除去されること。
(b)前記処理容器は、基板の表面の乾燥防止用の液体を加熱するための加熱部を備え、前記高圧流体は、前記乾燥防止用の液体を加熱して超臨界状態または亜臨界状態にしたときに液体にならず、当該乾燥防止用の液体の気化を防止するための加圧用の流体であり、前記乾燥防止用の液体は、前記高圧流体と接触して加圧された雰囲気下で前記加熱部により加熱され、液体から超臨界状態また亜臨界状態に直接変化することにより基板の表面から除去されること。
(c)線幅が20nm以下のパターンが形成された基板から乾燥防止用の液体を除去する処理が行われること。
(d)基板から乾燥防止用の液体を除去する処理を行う際の前記処理容器内の圧力が5MPa以上であり、当該処理容器内の圧力が大気圧まで減圧されること。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、基板に付着した液体に高圧流体を接触させて、当該液体を除去する処理を終えた後、処理が行われた処理容器、及びこの処理容器に前記高圧流体等を供給する流体供給路の減圧を併せて行うので、流体供給路と処理容器との間に急激な圧力差を発生させずに、処理容器を介して流体供給路内に残存する流体を外部へと排出できる。この結果、流体供給路に残存する流体が処理容器に流れ込む際の圧力低下幅を小さくして、当該流体の密度低下に起因する処理容器内部の汚染の発生を抑制できる。
【0014】
また他の発明は、基板に付着した液体に高圧流体を接触させて、当該液体を除去する処理を行った処理容器から流体を排出して減圧を行う排出路とは別に、前記処理容器に高圧流体等を供給する流体供給路から分岐させた分岐路を設けている。この結果、処理容器を経由することなく流体供給路内部に残存する流体を排出できるので、当該流体が処理容器に流れ込む際の密度低下に起因する汚染の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】洗浄処理システムの横断平面図である。
【図2】前記洗浄処理システムの外観斜視図である。
【図3】前記洗浄処理システムに設けられている洗浄装置の縦断側面図である。
【図4】実施の形態に係わる超臨界処理装置の構成図である。
【図5】前記超臨界処理装置の処理容器の外観斜視図である。
【図6】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図7】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図8】前記超臨界処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図9】前記超臨界処理装置の作用を示す第4の説明図である。
【図10】前記超臨界処理装置の作用を示す第5の説明図である。
【図11】他の実施の形態に係わる超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図12】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図13】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図14】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第4の説明図である。
【図15】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第5の説明図である。
【図16】実施例の結果を示す説明図である。
【図17】比較例の結果を示す説明図である。
【図18】超臨界処理装置から処理後の流体を排出する動作の従来法を示す第1の説明図である。
【図19】前記処理後の流体を排出する動作の従来法を示す第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係わる基板処理装置の実施の形態である超臨界処理装置の具体的構成を説明する前に、背景技術にて説明したウエハへのパーティクル付着現象の発生原因について説明する。例えば二酸化炭素(CO2:臨界温度31℃、臨界圧力(絶対圧)7.4MPa)を高圧流体として、超臨界状態のCO2をウエハW表面の液体と接触させて除去する超臨界処理装置について考える。
【0017】
例えば図18、図19には、ウエハWに付着した液体を除去する処理を終えた後、高圧流体(超臨界CO2)を排出する際の超臨界処理装置の従来の動作を示している。図中、31はウエハWから液体を除去する処理を行う処理容器、37は処理容器31に超臨界状態のCO2を供給する流体供給源、351は流体供給源37から供給された超臨界CO2を処理容器31に送る流体供給ライン(流体供給路)、341は処理容器31内の超臨界CO2を排出する排出ライン(排出路)である。
【0018】
また流体供給ライン351には、超臨界CO2の供給量を調節する流量調整部である流量調整弁354、流体供給源37に含まれているパーティクルを除去するためのフィルター353、流体供給源37から供給された超臨界CO2を処理容器31に導入し、また停止するための開閉弁352が上流側からこの順に介設されている。ここで、排出ライン341に介設された342は処理容器31の圧力を減圧すると共に、処理容器31に設けられた後述の圧力計の検出値に基づいて開度を調整し、処理容器31内の圧力を調整する機能を備えた減圧弁である。
【0019】
この超臨界処理装置では、ウエハW表面の液体に超臨界CO2を接触させて、当該液体を除去する処理を終えたら、流体供給ライン351の流量調整弁354、開閉弁352を閉じて超臨界CO2の供給を停止した後、CO2を排出して処理容器31内部を減圧し、ウエハWを取り出す準備を行う(図18)。
【0020】
このとき、流体供給ライン351の配管内は超臨界CO2で満たされた高圧雰囲気となっている。しかし、この流体供給ライン351内を高圧雰囲気としたまま次の処理を開始するために開閉弁352を開くと、当該配管内に残存している超臨界CO2が、流量調節弁354によって流量調整されることなく処理容器31内に急激に流れ込むことになる。この結果、処理容器31内のウエハWの位置がずれてしまったり、ウエハWを損傷してしまったりするおそれがあるため、処理後は流体供給ライン351の超臨界CO2も排出しておく必要がある。
【0021】
こうした理由から、処理容器31内に次のウエハWが搬入されるまでに流体供給ライン351においても大気開放が行われる。このとき図19に示すように、流体供給ライン351の開閉弁352、排出ライン341の減圧弁342を開くことにより、流体供給ライン351内のCO2が処理容器31、排出ライン341を介して外部に排出される。
【0022】
そして背景技術にて説明したように、クリーニングを行った処理容器31にてウエハWを処理した後、上記の操作を行い、2枚目のウエハWを処理すると、1枚目よりも多くのパーティクルが付着する現象が観察される。
【0023】
図18、図19に示すように、超臨界処理装置の流体供給ライン351にはフィルター353が設けられており、流体供給源37内の原料に含まれるパーティクルを予め除去してから処理容器31へと供給されているにも係わらず、パーティクルの付着現象が見られる原因を究明するため、ウエハWに付着したパーティクルの組成を分析した。分析の結果によれば、流体供給源として市販のCO2ボンベを用いた場合、上記パーティクルの発生源の一つは原料CO2中に含まれる水分や油分であった。
【0024】
これらの事実から、発明者らは、原料CO2中に流体の状態で保持された水分や油分がフィルター353を通過した後、何らかの理由により処理容器31内でミスト化し、ウエハWに付着するのではないかと考えた。また、1枚目より、2枚目以降に処理したウエハWに多くのパーティクルが付着することから、これら水分や油分のミスト化は、1枚目のウエハWの処理を取り出した後、2枚目のウエハWの処理を開始する前に発生しているものと推定した。
【0025】
さらに発明者らは、高圧流体であるCO2の密度と水分や油分の保持能力との関係に注目した。一般に流体はその密度が高い程、これらパーティクルの原因物質を保持し易く、その保持能力は「液体>超臨界流体>高圧ガス>大気圧ガス」の順に小さくなる。
【0026】
このため、高圧流体(液体CO2や超臨界CO2、高圧ガスCO2)の密度が急激に低下して大気圧になる領域では、CO2に保持可能な水分や油分の量が低下して、これらの物質がミスト化することが予想できる。そこで、図18に示した処理容器31の大気開放操作において、超臨界CO2が急激に減圧される減圧弁342下流側の排出ライン341の配管内面を観察したところ、当該配管内にも多量のパーティクルが付着しており、これらの組成も原料CO2に含まれる水分や油分であった。ここで発明者らは、大気圧以上の例えば5MPaまで加圧された流体を大気圧まで減圧するといった大きな圧力差が存在する場合に、このようなパーティクルの生成量が顕著になることを把握している。
【0027】
上述の検討結果から、2枚目以降のウエハWの処理に際して、1枚目の場合よりも多くのパーティクルが付着する原因は、流体供給ライン351内に残存する超臨界CO2が処理容器31を介して外部に排出される際に、処理容器31内で急激に減圧され、処理容器31内で多量のミスト(パーティクル)が生成されることに起因していると推定した。
【0028】
また、これら水分や油分の含有量は、同じ純度のCO2を使用した場合であっても製造元毎、ボンベ毎に異なり、原料段階でパーティクルの発生原因を排除することは難しい。従って、CO2の使用先である超臨界処理装置側にてパーティクルの発生対策を行う必要がある。特にこのようなプロセスで生成するパーティクルには、粒径が40nm程度といった微小なサイズのパーティクルが含まれ、例えば線幅の間隔が20nm以下といった微細な配線パターンが形成されたウエハWの洗浄処理、及びその後の乾燥を行う場合に問題となる。
【0029】
上記の観点から本実施の形態に係わる超臨界処理装置3は、ウエハWの処理を行った後、流体供給ライン351内に残存している高圧流体(超臨界CO2や液体CO2、高圧ガスCO2)を排出して大気開放を行う際に、処理容器31内にて急激な圧力変化を発生させないことにより、ミスト化した水分や油分による処理容器31の内部の汚染やウエハWの汚染を防止している。この手法により、2枚目以降の処理時にウエハWに付着するパーティクルを大幅に低減できることは、後述する実施例にて実験的に確認している。
【0030】
以下、本実施の形態に係わる超臨界処理装置3、及びこの超臨界処理装置3を備えた洗浄システム1の構成について説明する。
はじめに、本実施の形態の超臨界処理装置3を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、洗浄処理後のウエハWに付着している乾燥防止用の液体(IPA)を超臨界CO2と接触させて除去する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。
【0031】
図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図、図2はその外観斜視図であり、これらの図に向かって左側を前方とする。洗浄処理システム1では、載置部11にFOUP100が載置され、このFOUP100に格納された例えば直径300mmの複数枚のウエハWが、搬入出部12及び受け渡し部13を介して後段の洗浄処理部14、超臨界処理部15との間で受け渡され、洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入されて洗浄処理や乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる。図中、121はFOUP100と受け渡し部13との間でウエハWを搬送する第1の搬送機構、131は搬入出部12と洗浄処理部14、超臨界処理部15との間を搬送されるウエハWが一時的に載置されるバッファとしての役割を果たす受け渡し棚である。
【0032】
洗浄処理部14及び超臨界処理部15は、受け渡し部13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路162に沿って前方からこの順番に設けられている。洗浄処理部14には、当該ウエハ搬送路162を挟んで洗浄装置2が1台ずつ配置されている。一方、超臨界処理部15には、本実施の形態の基板処理装置である超臨界処理装置3が、ウエハ搬送路162を挟んで3台ずつ、合計6台配置されている。
【0033】
ウエハWは、ウエハ搬送路162に配置された第2の搬送機構161によってこれら各洗浄装置2、超臨界処理装置3及び受け渡し部13の間を搬送される。ここで洗浄処理部14や超臨界処理部15に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の個数は、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択され、これら洗浄装置2や超臨界処理装置3の配置数などに応じて最適なレイアウトが選択される。
【0034】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、図3の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハの面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0035】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄が行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0036】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してからウエハWの表面及び裏面にIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、これらの面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態(ウエハW表面にIPAの液膜が形成された状態)のままウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送機構161に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。
【0037】
洗浄装置2にてウエハW表面に液盛りされたIPAは、洗浄装置2から超臨界処理装置3へのウエハWの搬送中や、超臨界処理装置3への搬入動作中に当該IPAが蒸発(気化)することによってパターン倒れが発生することを防ぐ乾燥防止用の液体としての役割を果たしている。
【0038】
洗浄装置2での洗浄処理を終え、表面に乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWは、超臨界処理装置3に搬送され、処理容器31内にてウエハW表面のIPAに超臨界CO2を接触させることにより、当該IPAを超臨界CO2に溶解させて除去し、ウエハWを乾燥する処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図4、図5を参照しながら説明する。また、図4、図5に示した超臨界処理装置3において、図18、図19を用いて説明した従来の超臨界処理装置3と共通の構成要素には、これらの図面にて使用したものと同様の符号を付してある。
【0039】
本実施の形態に係わる超臨界処理装置3は、ウエハW表面に付着した乾燥防止用の液体であるIPAを除去する処理が行われる処理容器31と、この処理容器31に高圧流体である超臨界CO2を供給する流体供給源37と、を備えている。
【0040】
図5に示すように処理容器31は、ウエハWの搬入出用の開口部312が形成された筐体状の容器本体311と、処理対象のウエハWを横向きに保持する保持板331と、この保持板331を支持すると共に、ウエハWを容器本体311内に搬入したとき前記開口部312を密閉する蓋部材332とを備えている。
【0041】
容器本体311は、例えば直径300mmのウエハWを収容可能な、200〜10000cm3程度の処理空間が形成された容器であり、その壁部には、処理容器31内に高圧流体を供給するための流体供給ライン351(流体供給路)と、処理容器31内の流体を排出するための排出ライン341(排出路)とが接続されている。また、処理容器1には処理空間内に供給された高圧状態の高圧流体から受ける内圧に抗して、容器本体311に向けて蓋部材332を押し付け、処理空間を密閉するための不図示の押圧機構が設けられている。
【0042】
処理容器1に接続された流体供給ライン351は、処理容器1への高圧流体の供給、停止に合わせて開閉する開閉弁352、フィルター353及び流量調整弁354を介して流体供給源37に接続されている。流体供給源37は、例えば液体CO2を貯留するCO2ボンベと、このCO2ボンベから供給された液体CO2を昇圧して超臨界状態とするための、シリンジポンプやダイヤフラムポンプなどからなる昇圧ポンプとを備えている。図4等には、これらCO2ボンベや昇圧ポンプを総括的にボンベの形状で示してある。
【0043】
流体供給源37から供給された超臨界CO2は、流量調整弁354にて流量を調節され、処理容器31に供給される。この流量調整弁354弁は、例えばニードルバルブなどから構成され、流体供給源37からの超臨界CO2の供給を遮断する遮断部としても兼用されている。
【0044】
また、排出ライン341の減圧弁342は圧力コントローラー343と接続されており、この圧力コントローラー343は、処理容器31に設けられた圧力計321から取得した処理容器31内の圧力の測定結果と、予め設定された設定圧力との比較結果に基づいて開度を調整するフィードバック制御機能を備えている。
【0045】
以上に説明した構成を備えた洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3は図1、図4に示すように制御部4に接続されている。制御部4は図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP100からウエハWを取り出して洗浄装置2にて洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWを乾燥する処理を行ってからFOUP100内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0046】
特に超臨界処理装置3について制御部4は、処理を終えたウエハWを取り出す前に、処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧することにより、流体供給ライン351から処理容器31へ向けて、減圧方向への急激な圧力変化が発生することを避けるように制御信号を出力する機能を備えている。このような観点から、図4に示すように制御部4は、排出ライン341に設けられた減圧弁342の開度を調節する圧力コントローラー343や、流体供給ライン351側の開閉弁352、流量調整弁354と電気的に接続されている。
【0047】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3の作用について図6〜図10の作用図を参照しながら説明する。各図においてバルブ354、352、342に付された「S」の符号は、その開閉バルブが閉状態となっていることを示し、「O」の符号は開状態となっていることを示している。
【0048】
既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAを液盛りしたウエハWが第2の搬送機構161に受け渡されると、第2の搬送機構161は、ウエハWを受け入れ可能な超臨界処理装置3が配置されている筐体内に進入する。
【0049】
このときウエハWの搬入が行われる前の超臨界処理装置3は、処理容器31内を大気開放してから流体供給ライン351の開閉弁352、排出ライン341の減圧弁342を閉じた状態で待機している。また、流体供給ライン351についても予め大気開放操作が行われており、内部に高圧のCO2が残存していない状態にて開閉弁352及び流量調整弁354が閉じられている。
【0050】
上記の状態で待機している処理容器31内にIPAが液盛りされたウエハWが搬入されてきたら、図5に示すように容器本体311の外に保持板331を移動させ、不図示の支持ピンを介して第2の搬送機構161の搬送アームから保持板331にウエハWを受け渡す。そして、保持板331を移動させて開口部312を介してウエハWを容器本体311の内部に搬入し、蓋部材332にて開口部312を閉じ処理容器31内を密閉する(図6)。
【0051】
次いで、流体供給ライン351の開閉弁352を開くと共に、流量調整弁354の開度を調節して、予め定められた流量で超臨界CO2を処理容器31に導入する(図7)。このとき、既述のように原料CO2に含まれていた水分や油分も処理容器31内に持ち込まれるが、超臨界CO2を導入することにより、処理容器31内は大気圧からCO2の臨界圧以上の圧力まで昇圧されるので、これらの水分や油分は超臨界CO2に保持された状態を維持する。ここで図7等に示す太線の矢印は、流体供給ライン351や排出ライン341等の配管内を流体が流れていることを示している。
【0052】
圧力コントローラー343には、処理容器31内の目標圧力が設定されており、処理容器31内の圧力が前記目標圧力を超えたら、減圧弁342を開いて処理容器31内の超臨界CO2の一部を排出ライン341から抜き出すことにより、処理容器31内の圧力調整を行う(図8)。このときウエハWの表面では、ウエハWに液盛りされたIPAが超臨界CO2と接触して、超臨界CO2に抽出されウエハWの表面からIPAが除去されていく。
【0053】
やがて超臨界CO2は、ウエハWの表面に形成されたパターン内に進入して、当該パターン内のIPAを抽出して除去する。この結果、パターン内を満たしていたIPAは、超臨界CO2に置換され、ウエハWの表面から除去される。
【0054】
このとき図8に示すように、処理容器31内でIPAを抽出した超臨界CO2の一部を排出ライン341から抜き出し、流体供給ライン351からの新たな超臨界CO2の供給を継続する。これにより、処理容器31内の超臨界CO2によるIPAの抽出能力を大きく低下させずに、IPAを除去する処理を進行させることができる。
【0055】
こうして、パターン内に入り込んだIPAを抽出し、超臨界CO2にて置換するのに十分な時間が経過したら、圧力コントローラー343による圧力制御を解除して排出ライン341の減圧弁342を閉じると共に、流量調整弁354を閉止して、流体供給源37からの超臨界CO2の供給を遮断する(図9)。このとき、処理容器31及び流体供給ライン351の配管内部は超臨界CO2で満たされた状態となっている。
【0056】
超臨界CO2の供給が停止されたら、減圧弁342を開いて処理容器31及び流体供給ライン351の配管の内部の超臨界CO2を排出することにより、処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧する。この操作において、処理容器31や流体供給ライン351内に残存する超臨界CO2は、圧力の低下に伴って「超臨界CO2→高圧CO2ガス→低圧CO2ガス」と変化し、水分や油分の保持能力が低下していく。
【0057】
しかしながら、このとき処理容器31の内部と流体供給ライン351の配管内とを併せて減圧することにより、流体供給ライン351-処理容器31間に大きな圧力差が形成されないようにしながら内部のCO2を排出できる。即ち本例の超臨界処理装置3では、流体供給ライン351内のCO2が処理容器31内に流れ込んだとき、図19にて説明した従来の超臨界処理装置と比べて急激な減圧を生じない。
【0058】
この結果、超臨界CO2に保持されていた水分や油分が処理容器31でミスト化することを防ぎ、これらの水分や油分を保持した状態のままCO2を外部へ排出することができる。なお、超臨界CO2に保持されていた水分や油分は、排出ライン341の減圧弁342の下流側にてミスト化するが、排出ライン341から排出されたCO2を処理容器31へ逆流させなければ、これらのミストは処理容器31内を汚染する汚染源とはならない。
【0059】
このように、CO2に保持された水分や油分が、処理容器31内にてミスト化しにくい条件下で減圧を行うことにより、処理容器31内に残存し、また容器本体311の内壁面に付着するミストの量を低減し、次に処理するウエハWへのパーティクルの付着を低減できる。
そして、大気圧まで減圧された処理容器31の内部には、パターン内から液体IPAが除去され、乾燥した状態となったウエハWを得ることができる。ここで、容器本体311にテープヒーターなどの加熱部を設け、処理容器31内の温度をIPAの露点よりも高い温度に維持し、CO2の断熱膨張による温度低下に伴うウエハW表面へのIPAの結露を防止してもよい。
【0060】
処理容器31内を大気開放して乾燥した状態のウエハWが得られたら、保持板331を移動させて処理容器31からウエハWを搬出し、第2の搬送機構161の搬送アームにウエハWを受け渡す。しかる後、ウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送機構121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP100内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0061】
本実施の形態に係わる超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。超臨界CO2を用いてウエハWに付着した液体IPAに超臨界CO2を接触させて、当該液体IPAを除去する処理を終えた後、処理が行われた処理容器31、及びこの処理容器31に超臨界CO2を供給する流体供給ライン351の減圧を併せて行うので、流体供給ライン351と処理容器31との間に急激な圧力差を発生させずに、処理容器31を介して流体供給ライン351内部の超臨界CO2を外部へと排出できる。この結果、流体供給ライン351に残存する超臨界CO2が処理容器31に流れ込む際の圧力低下幅を小さくして、当該超臨界CO2の密度低下に起因する処理容器31内部の汚染の発生を抑制できる。
【0062】
このように、処理容器31内で超臨界CO2や高圧CO2ガスの急激な減圧操作を行わないことにより処理容器31の内部の汚染を防ぐという考え方によれば、流体供給ライン351内の超臨界CO2の排出ルートは、処理容器31を介して排出ライン341から排出する場合に限定されない。
【0063】
例えば図11〜図15に示した超臨界処理装置3は、流体供給ライン351から超臨界CO2を抜き出す専用の分岐ライン361(分岐路)を、当該流体供給ライン351から分岐するように設けた点が図4に示した第1の実施の形態の超臨界処理装置3と異なっている。図11〜図15に示した超臨界処理装置3において、図4に示した超臨界処理装置3と同じ構成要素には、図4に示したものと同じ符号を付してある。また図11〜図15では、圧力計321や圧力コントローラー343の記載は省略してある。
【0064】
分岐ライン361は、開閉弁352と流量調整弁354とに挟まれた流体供給ライン351の配管から分岐しており、処理容器31や流体供給源37から切り離された流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を排出することができる。また分岐ライン361には、減圧弁362(第1の開閉弁)が介設されている。
【0065】
ウエハWの搬入時において、処理容器31、流体供給ライン351、分岐ライン361は大気開放された後、各弁342、352、354、362を閉じた状態で待機している(図11)。この処理容器31に、IPAが液盛りされた状態のウエハWが搬入されてきたら、流体供給ライン351の開閉弁352を開くと共に、流量調整弁354の開度を調整して予め設定した量の超臨界CO2を処理容器31内に供給する(図12)。
【0066】
そして、処理容器31内の圧力が目標圧力を超えたら、図13に示すように減圧弁342の開度を調整して排出ライン341から超臨界CO2を抜き出しながら、ウエハW表面に付着した液体IPAを超臨界CO2と置換する点は、図7、図8に示した第1の実施の形態に係わる超臨界処理装置3の動作と同様である。
【0067】
こうしてウエハW表面の液体IPAを除去したら、流体供給ライン351の開閉弁352、流量調整弁354及び排出ライン341の減圧弁342(第2の減圧弁)を閉じて超臨界CO2の供給、排出を停止する。しかる後、図14に示すように排出ライン341の減圧弁342を開いて処理容器31内の超臨界CO2を排出し、処理容器31内を大気開放してウエハWを取り出す準備をする。このとき、流体供給ライン351の開閉弁352や分岐ライン361の減圧弁362は「閉」となっているので、流体供給ライン351の配管内には超臨界CO2が残存している。なお、排出ライン341の減圧弁342を一旦、閉じることなく、流体供給ライン351側の開閉弁352、流量調整弁354のみを閉じて処理容器31の大気開放を行ってもよい。
【0068】
処理容器31の大気開放の後、またはこの操作と並行して、分岐ライン361の減圧弁362を開き、流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を外部に向かって排出する(図15)。このとき、分岐ライン361を流れる超臨界CO2や高圧CO2ガスは、減圧弁362を通過するところで急激に減圧され、原料CO2に含まれる水分や油分がミスト化する可能性があるが、当該CO2は処理容器31内を通過しない。このため、流体供給ライン351内の超臨界CO2を排出する際に発生するミスト等が処理容器31内部に残留したり、処理容器31の壁面に付着したりすることがなく、次回の処理時にウエハWを汚染する原因とならない。
【0069】
第2の実施の形態に係わる超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。ウエハWに付着した液体IPAに超臨界CO2を接触させて、当該液体IPAを除去する処理を行った処理容器31から流体を排出して減圧を行う排出ライン341とは別に、前記処理容器31に超臨界CO2を供給する流体供給ライン351から分岐させた分岐ライン361を設けている。この結果、処理容器31を経由することなく流体供給ライン351内部に残存する超臨界CO2を排出できるので、当該超臨界CO2が処理容器に流れ込む際の密度低下に起因する汚染の発生を抑制できる。
【0070】
ここで上述の各実施の形態では、図8、図13に示すように、流体供給ライン351から超臨界CO2を連続供給しながら、排出ライン341より処理容器31内の超臨界CO2を抜き出して、ウエハW表面のIPAと置換する場合について説明したが、IPAの置換法は本法に限定されない。例えば、排出ライン341、流体供給ライン351の各弁342、352を閉じてバッチ状態とした処理容器31内で超臨界流体に乾燥防止用の液体を抽出し、当該液体の置換、除去を行ってもよい。
【0071】
この他、流体供給源37に設けられる供給遮断部の構成は、図4や図11に示した流量調整弁354を用いる場合に限定されない。例えば流量調整弁354に替えて開閉弁を設けてもよいし、CO2ボンベから供給された液体CO2を超臨界状態にするための昇圧ポンプを供給遮断部としてもよい。後者の場合には、シリンジポンプなどの昇圧ポンプの稼働、停止により高圧流体の供給、遮断が切り替えられることになる。
【0072】
また、既述の各実施の形態では、超臨界CO2を高圧流体として供給し、ウエハW表面の液体を除去する場合について説明したが、流体供給ライン351から供給する高圧流体の状態はこれに限られるものではない。例えば、亜臨界状態のCO2を供給してウエハW表面の液体と置換してもよい。
【0073】
また、液体CO2や高圧CO2ガスを原料流体として処理容器31に供給し、当該CO2を処理容器31内で加熱して超臨界状態や亜臨界状態にして液体との置換を行ってもよい。大気開放に伴って密度が低下することにより、原料に含まれているパーティクルの原因物質の保持可能量が低下する性質を持つ流体であれば、超臨界状態、亜臨界状態、液体、高圧ガスのいずれの状態で供給された流体に対しても本発明の効果を得ることができる。
【0074】
そして、高圧流体の種類もCO2に限られず、IPAやメタノールやエタノールなどの各種アルコール、各種のHFE(Hydro Fluoro Ether)やアセトンなどの超臨界流体、亜臨界流体、高圧ガスを用いてウエハW上の乾燥防止用の液体と置換してもよい。また、乾燥防止用の液体の種類についてもIPAに限られるものではなく、メタノールやエタノールなどの各種アルコール、各種のHFE(Hydro Fluoro Ether)やアセトン、純水などを用いてもよい。
【0075】
さらに本発明を適用可能なウエハ処理は、流体供給源37から高圧流体を超臨界状態や亜臨界状態(これらをまとめて高圧状態という)で供給したり、また高圧流体を処理容器31内で高圧状態としたりすることにより、ウエハW表面の液体を高圧流体に抽出して当該液体を除去する処理に限定されない。例えば、処理容器31にウエハW表面の乾燥防止用の液体を加熱する加熱部を設け、前記液体を高圧状態(超臨界状態または亜臨界状態)に変化させることによりウエハWの表面から除去するウエハ処理装置に対しても本発明は適用することができる。
【0076】
但し、この場合にはウエハW表面の液体が気体の状態を経由して高圧状態に変化するとパターン倒れが発生してしまう。そこで、処理容器31内を加圧するための加圧用の高圧流体を流体供給源37から供給し、処理容器31内の圧力がウエハW表面の液体の蒸気圧よりも高くなるようにしてから加熱を行い、前記液体を直接高圧状態に変化させてウエハWから除去するとよい。ウエハW表面の液体が高圧状態となったら、処理容器31の温度を前記液体の露点以上に維持しながら処理容器31を大気開放することにより、乾燥したウエハWを得ることができる。
【0077】
ウエハW表面の乾燥防止用の液体を高圧状態に直接変化させる手法の具体例を挙げておくと、乾燥防止用の液体としてIPA(臨界温度235℃、臨界圧力4.8MPa(絶対圧))、加圧流体(高圧流体)として超臨界CO2(臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa(絶対圧))を用いる場合がある。超臨界CO2を供給した処理容器31内で液体IPAを加熱すると、IPAの臨界圧力よりも高圧の雰囲気下で加熱が行われるため、気体の状態を経由することなく液体IPAを超臨界IPAに直接変化させることができる。また、IPAの気化を防ぐという観点からすると、加圧流体は超臨界CO2であることは必要でなく、IPAの臨界圧力よりも高圧のガスCO2や亜臨界CO2を供給してもよいことは勿論である。
【0078】
このような手法によりウエハW表面の液体を除去する場合には、前記乾燥防止用の液体が高圧状態となる温度、圧力条件下で液体とならない物質であれば、流体供給源37から供給される加圧用の高圧流体は、高圧状態で供給してもよいし、大気圧よりも高圧のガス状態で供給してもよい。このような加圧用の高圧流体を流体供給源37から供給した後においても、図10に示すように処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧したり、また、図14、図15に示すように処理容器31と流体供給ライン351とを別々のライン341、361を使って減圧したりすることにより、処理容器31内におけるウエハWへのパーティクルの付着を防止できる。
【実施例】
【0079】
(実験1)
図4に示した超臨界処理装置3にて、超臨界CO2を用いてウエハWの表面のIPAを除去する処理を行った後、処理容器31を大気解放し、処理容器31を介して流体供給ライン351の大気開放を行った場合と、大気開放を行わなかった場合とで、処理容器31に搬入されたウエハWへのパーティクルの付着状況を比較した。
【0080】
A.実験条件
(参考例1)
クリーニングされた処理容器31に、洗浄処理後、IPAが液盛りされたウエハWを搬入し、図8に示すように超臨界CO2を60分間供給してIPAと置換する処理を行った。この処理の期間中における処理容器31内の温度は40℃、圧力は10MPa(絶対圧)とした。処理後、処理容器31を大気開放して、ウエハWを取り出した。次に、図19に示すように流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を、処理容器31を介して排出し、大気開放を行った。しかる後、液体の付着していない2枚目のウエハWを処理容器31内に搬入し、600秒間放置後、当該ウエハWを取り出し、当該ウエハWの表面に付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。パーティクルのカウントは、KLAテンコール社製のパーティクル検査装置により行った。
(参考例2)
1枚目のウエハWを取り出した後、流体供給ライン351の大気開放を行わなかった点以外は(参考例1)と同様の条件で処理容器31に2枚目のウエハWを搬入し、取り出したウエハW表面に付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。
【0081】
B.実験結果
(参考例1)の実験において、ウエハW表面に付着したパーティクル数は2712個、(参考例2)の実験においては627個であった。これらの実験の結果から、処理容器31と流体供給ライン351との大気開放を別々に行い、処理容器31を介して、流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を外部へ排出すると、処理容器31内に存在するパーティクル数が多くなって、2枚目以降に搬入されたウエハWの汚染原因となることが確認できる。
【0082】
(実験2)
本発明に係わる手法と、従来法とで3枚のウエハWを連続処理し、処理後のウエハWに付着しているパーティクル数を比較した。
【0083】
A.実験条件
(実施例1)
クリーニングされた処理容器31を用い、液体IPAが液盛りされたウエハWから当該IPAを除去する処理を行った後、処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧し、大気開放を行う処理(図6〜図10)を3枚のウエハWに対して連続して行った。処理容器31内の温度、圧力等、ウエハWの処理条件は(参考例1)と同様である。処理後の各ウエハWの表面に付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。
(比較例1)
超臨界CO2を用いてウエハW表面の液体IPAを除去する処理(図6〜図8)を行った後、図18、図19に示すように、処理容器31及び流体供給ライン351の大気開放を別々に行った点以外は、(実施例1)と同様の条件で3枚のウエハWを連続して処理した。処理後、各ウエハWに付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。
【0084】
B.実験結果
(実施例1)の結果を図16に示し、(比較例1)の結果を図17に示す。図16に示した(実施例1)の結果によれば、ウエハWに付着している直径40nm以上のパーティクルの数は600〜700個程度であり、ウエハWの処理順に係わらず、パーティクルの付着数の大きな変動はなかった。
【0085】
これに対して、処理容器31と流体供給ライン351とを別々に大気開放した(比較例1)の実験結果では、処理の順番が2、3枚目のウエハWにおいて、1枚目のウエハWの4倍以上のパーティクルが付着し、パーティクル汚染が大幅に増大している。これは(参考例1)で確認したように、処理容器31と流体供給ライン351とを別々に大気開放すると共に、流体供給ライン351の大気開放を処理容器31に向けて行うことにより、処理容器31内にパーティクルが発生し、このパーティクルが原因となって2枚目以降のウエハWの汚染が引き起こされた結果であると考えられる。
【0086】
(実施例1)、(比較例1)の実験結果を比較すると、図10に示すように処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧し、大気開放を行うことにより、処理容器31内におけるパーティクルの発生を抑え、後続する処理におけるウエハWのパーティクル汚染を抑制できることが確認できた。
【0087】
また先に検討したように、(参考例1)と(参考例2)とを比較したとき、処理容器31へ向けて流体供給ライン351の大気開放を行わない(参考例2)の場合の方が、次に処理容器31に搬入されたウエハWへ付着するパーティクルの数が少なかった。この事実から、図11〜図15に示すように、流体供給ライン351に分岐ライン361を設け、処理容器31を通らないように流体供給ライン351の減圧、大気開放を行う手法についても、ウエハWへのパーティクルの付着を抑制するうえで有効な手法であることが分かる。
【符号の説明】
【0088】
W ウエハ
1 洗浄システム
2 洗浄装置
3 超臨界処理装置
31 処理容器
341 排出ライン
342 減圧弁
351 流体供給ライン
352 開閉弁
354 流量調整弁
361 分岐ライン
362 減圧弁
37 流体供給源
4 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体を接触させて基板の表面に付着した液体を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である半導体ウエハ(以下、ウエハという)などの表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液処理工程にてウエハの表面に付着した液体などを除去する際に、いわゆるパターン倒れと呼ばれる現象が問題となっている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0004】
こうしたパターン倒れの発生を抑えつつウエハ表面に付着した液体を除去する手法として超臨界状態や亜臨界状態の流体(背景技術の説明では、これらをまとめて超臨界流体という)を用いる方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を抽出する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、ウエハ表面に付着した液体を超臨界流体に溶解させたり、置換したりした後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0005】
発明者らは、このような超臨界流体を利用してウエハ表面の液体を除去する技術の実用化開発を行っている。この開発実験の過程において、予めクリーニングした処理容器内にて超臨界流体を用いてウエハ表面の液体を除去する実験を行った後、同じ処理容器内で別のウエハに対して同様の処理を行うと、2枚目以降のウエハには、1枚目のウエハと比べて多くのパーティクルが付着する現象が観察された。
【0006】
ここで特許文献1には、基板上に形成されたパターンに付着したリンス液を液体二酸化炭素と置換し、この二酸化炭素を加温して超臨界状態にしてから気化させることにより基板を乾燥させる方法が記載されている。しかしながら当該特許文献1には、上述のパーティクル付着現象を見出した旨の既述もなく、その解決方法も記載されていない。
【0007】
またここで上述の特許文献1に記載されているように、基板に付着している液体を除去する処理を終えた後は、反応室(処理容器)に液体二酸化炭素を供給する配管(供給配管)のバルブを閉じてから、排出口側のバルブを開いて反応室内の圧力を低下させる動作が一般に採用される。この場合には、供給側のバルブよりも上流側の配管内には液体二酸化炭素が残っていることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−158591号公報:段落0029、0039〜0040、図1、2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、高圧流体と接触させて基板に付着した液体を除去する処理を実施する過程で、基板にパーティクルが付着しにくい基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基板処理装置は、基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、前記開閉弁と減圧弁とを開いた状態とすることにより、前記流体供給路と処理容器との内部を減圧するステップと、その後、前記基板を当該処理容器から搬出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、他の発明に係わる基板処理装置は、基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流調調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記遮断部と開閉弁との間の流体供給路から分岐し、当該流体供給路内の流体を排出して減圧するための第1の減圧弁が設けられた分岐路と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための第2の減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記第1の減圧弁を閉じる一方、前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とすると共に開閉弁を閉じる一方、第2の減圧弁を開いた状態とすることにより、前記処理容器の内部を減圧するステップと、前記遮断部が遮断状態となり、開閉弁が閉じられた後、前記第1の減圧弁を開いて、前記流体供給路に残存する流体を分岐路から排出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
上述の各基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記高圧流体は、超臨界状態または亜臨界状態の流体であり、前記処理容器には、前記流体供給源から高圧流体が供給されるか、または当該処理容器内で前記原料流体が加熱されて高圧流体となることにより、前記乾燥防止用の液体が当該高圧流体に抽出されて基板の表面から除去されること。
(b)前記処理容器は、基板の表面の乾燥防止用の液体を加熱するための加熱部を備え、前記高圧流体は、前記乾燥防止用の液体を加熱して超臨界状態または亜臨界状態にしたときに液体にならず、当該乾燥防止用の液体の気化を防止するための加圧用の流体であり、前記乾燥防止用の液体は、前記高圧流体と接触して加圧された雰囲気下で前記加熱部により加熱され、液体から超臨界状態また亜臨界状態に直接変化することにより基板の表面から除去されること。
(c)線幅が20nm以下のパターンが形成された基板から乾燥防止用の液体を除去する処理が行われること。
(d)基板から乾燥防止用の液体を除去する処理を行う際の前記処理容器内の圧力が5MPa以上であり、当該処理容器内の圧力が大気圧まで減圧されること。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、基板に付着した液体に高圧流体を接触させて、当該液体を除去する処理を終えた後、処理が行われた処理容器、及びこの処理容器に前記高圧流体等を供給する流体供給路の減圧を併せて行うので、流体供給路と処理容器との間に急激な圧力差を発生させずに、処理容器を介して流体供給路内に残存する流体を外部へと排出できる。この結果、流体供給路に残存する流体が処理容器に流れ込む際の圧力低下幅を小さくして、当該流体の密度低下に起因する処理容器内部の汚染の発生を抑制できる。
【0014】
また他の発明は、基板に付着した液体に高圧流体を接触させて、当該液体を除去する処理を行った処理容器から流体を排出して減圧を行う排出路とは別に、前記処理容器に高圧流体等を供給する流体供給路から分岐させた分岐路を設けている。この結果、処理容器を経由することなく流体供給路内部に残存する流体を排出できるので、当該流体が処理容器に流れ込む際の密度低下に起因する汚染の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】洗浄処理システムの横断平面図である。
【図2】前記洗浄処理システムの外観斜視図である。
【図3】前記洗浄処理システムに設けられている洗浄装置の縦断側面図である。
【図4】実施の形態に係わる超臨界処理装置の構成図である。
【図5】前記超臨界処理装置の処理容器の外観斜視図である。
【図6】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図7】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図8】前記超臨界処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図9】前記超臨界処理装置の作用を示す第4の説明図である。
【図10】前記超臨界処理装置の作用を示す第5の説明図である。
【図11】他の実施の形態に係わる超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図12】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図13】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図14】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第4の説明図である。
【図15】前記他の超臨界処理装置の作用を示す第5の説明図である。
【図16】実施例の結果を示す説明図である。
【図17】比較例の結果を示す説明図である。
【図18】超臨界処理装置から処理後の流体を排出する動作の従来法を示す第1の説明図である。
【図19】前記処理後の流体を排出する動作の従来法を示す第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係わる基板処理装置の実施の形態である超臨界処理装置の具体的構成を説明する前に、背景技術にて説明したウエハへのパーティクル付着現象の発生原因について説明する。例えば二酸化炭素(CO2:臨界温度31℃、臨界圧力(絶対圧)7.4MPa)を高圧流体として、超臨界状態のCO2をウエハW表面の液体と接触させて除去する超臨界処理装置について考える。
【0017】
例えば図18、図19には、ウエハWに付着した液体を除去する処理を終えた後、高圧流体(超臨界CO2)を排出する際の超臨界処理装置の従来の動作を示している。図中、31はウエハWから液体を除去する処理を行う処理容器、37は処理容器31に超臨界状態のCO2を供給する流体供給源、351は流体供給源37から供給された超臨界CO2を処理容器31に送る流体供給ライン(流体供給路)、341は処理容器31内の超臨界CO2を排出する排出ライン(排出路)である。
【0018】
また流体供給ライン351には、超臨界CO2の供給量を調節する流量調整部である流量調整弁354、流体供給源37に含まれているパーティクルを除去するためのフィルター353、流体供給源37から供給された超臨界CO2を処理容器31に導入し、また停止するための開閉弁352が上流側からこの順に介設されている。ここで、排出ライン341に介設された342は処理容器31の圧力を減圧すると共に、処理容器31に設けられた後述の圧力計の検出値に基づいて開度を調整し、処理容器31内の圧力を調整する機能を備えた減圧弁である。
【0019】
この超臨界処理装置では、ウエハW表面の液体に超臨界CO2を接触させて、当該液体を除去する処理を終えたら、流体供給ライン351の流量調整弁354、開閉弁352を閉じて超臨界CO2の供給を停止した後、CO2を排出して処理容器31内部を減圧し、ウエハWを取り出す準備を行う(図18)。
【0020】
このとき、流体供給ライン351の配管内は超臨界CO2で満たされた高圧雰囲気となっている。しかし、この流体供給ライン351内を高圧雰囲気としたまま次の処理を開始するために開閉弁352を開くと、当該配管内に残存している超臨界CO2が、流量調節弁354によって流量調整されることなく処理容器31内に急激に流れ込むことになる。この結果、処理容器31内のウエハWの位置がずれてしまったり、ウエハWを損傷してしまったりするおそれがあるため、処理後は流体供給ライン351の超臨界CO2も排出しておく必要がある。
【0021】
こうした理由から、処理容器31内に次のウエハWが搬入されるまでに流体供給ライン351においても大気開放が行われる。このとき図19に示すように、流体供給ライン351の開閉弁352、排出ライン341の減圧弁342を開くことにより、流体供給ライン351内のCO2が処理容器31、排出ライン341を介して外部に排出される。
【0022】
そして背景技術にて説明したように、クリーニングを行った処理容器31にてウエハWを処理した後、上記の操作を行い、2枚目のウエハWを処理すると、1枚目よりも多くのパーティクルが付着する現象が観察される。
【0023】
図18、図19に示すように、超臨界処理装置の流体供給ライン351にはフィルター353が設けられており、流体供給源37内の原料に含まれるパーティクルを予め除去してから処理容器31へと供給されているにも係わらず、パーティクルの付着現象が見られる原因を究明するため、ウエハWに付着したパーティクルの組成を分析した。分析の結果によれば、流体供給源として市販のCO2ボンベを用いた場合、上記パーティクルの発生源の一つは原料CO2中に含まれる水分や油分であった。
【0024】
これらの事実から、発明者らは、原料CO2中に流体の状態で保持された水分や油分がフィルター353を通過した後、何らかの理由により処理容器31内でミスト化し、ウエハWに付着するのではないかと考えた。また、1枚目より、2枚目以降に処理したウエハWに多くのパーティクルが付着することから、これら水分や油分のミスト化は、1枚目のウエハWの処理を取り出した後、2枚目のウエハWの処理を開始する前に発生しているものと推定した。
【0025】
さらに発明者らは、高圧流体であるCO2の密度と水分や油分の保持能力との関係に注目した。一般に流体はその密度が高い程、これらパーティクルの原因物質を保持し易く、その保持能力は「液体>超臨界流体>高圧ガス>大気圧ガス」の順に小さくなる。
【0026】
このため、高圧流体(液体CO2や超臨界CO2、高圧ガスCO2)の密度が急激に低下して大気圧になる領域では、CO2に保持可能な水分や油分の量が低下して、これらの物質がミスト化することが予想できる。そこで、図18に示した処理容器31の大気開放操作において、超臨界CO2が急激に減圧される減圧弁342下流側の排出ライン341の配管内面を観察したところ、当該配管内にも多量のパーティクルが付着しており、これらの組成も原料CO2に含まれる水分や油分であった。ここで発明者らは、大気圧以上の例えば5MPaまで加圧された流体を大気圧まで減圧するといった大きな圧力差が存在する場合に、このようなパーティクルの生成量が顕著になることを把握している。
【0027】
上述の検討結果から、2枚目以降のウエハWの処理に際して、1枚目の場合よりも多くのパーティクルが付着する原因は、流体供給ライン351内に残存する超臨界CO2が処理容器31を介して外部に排出される際に、処理容器31内で急激に減圧され、処理容器31内で多量のミスト(パーティクル)が生成されることに起因していると推定した。
【0028】
また、これら水分や油分の含有量は、同じ純度のCO2を使用した場合であっても製造元毎、ボンベ毎に異なり、原料段階でパーティクルの発生原因を排除することは難しい。従って、CO2の使用先である超臨界処理装置側にてパーティクルの発生対策を行う必要がある。特にこのようなプロセスで生成するパーティクルには、粒径が40nm程度といった微小なサイズのパーティクルが含まれ、例えば線幅の間隔が20nm以下といった微細な配線パターンが形成されたウエハWの洗浄処理、及びその後の乾燥を行う場合に問題となる。
【0029】
上記の観点から本実施の形態に係わる超臨界処理装置3は、ウエハWの処理を行った後、流体供給ライン351内に残存している高圧流体(超臨界CO2や液体CO2、高圧ガスCO2)を排出して大気開放を行う際に、処理容器31内にて急激な圧力変化を発生させないことにより、ミスト化した水分や油分による処理容器31の内部の汚染やウエハWの汚染を防止している。この手法により、2枚目以降の処理時にウエハWに付着するパーティクルを大幅に低減できることは、後述する実施例にて実験的に確認している。
【0030】
以下、本実施の形態に係わる超臨界処理装置3、及びこの超臨界処理装置3を備えた洗浄システム1の構成について説明する。
はじめに、本実施の形態の超臨界処理装置3を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、洗浄処理後のウエハWに付着している乾燥防止用の液体(IPA)を超臨界CO2と接触させて除去する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。
【0031】
図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図、図2はその外観斜視図であり、これらの図に向かって左側を前方とする。洗浄処理システム1では、載置部11にFOUP100が載置され、このFOUP100に格納された例えば直径300mmの複数枚のウエハWが、搬入出部12及び受け渡し部13を介して後段の洗浄処理部14、超臨界処理部15との間で受け渡され、洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入されて洗浄処理や乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる。図中、121はFOUP100と受け渡し部13との間でウエハWを搬送する第1の搬送機構、131は搬入出部12と洗浄処理部14、超臨界処理部15との間を搬送されるウエハWが一時的に載置されるバッファとしての役割を果たす受け渡し棚である。
【0032】
洗浄処理部14及び超臨界処理部15は、受け渡し部13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路162に沿って前方からこの順番に設けられている。洗浄処理部14には、当該ウエハ搬送路162を挟んで洗浄装置2が1台ずつ配置されている。一方、超臨界処理部15には、本実施の形態の基板処理装置である超臨界処理装置3が、ウエハ搬送路162を挟んで3台ずつ、合計6台配置されている。
【0033】
ウエハWは、ウエハ搬送路162に配置された第2の搬送機構161によってこれら各洗浄装置2、超臨界処理装置3及び受け渡し部13の間を搬送される。ここで洗浄処理部14や超臨界処理部15に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の個数は、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択され、これら洗浄装置2や超臨界処理装置3の配置数などに応じて最適なレイアウトが選択される。
【0034】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、図3の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハの面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0035】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄が行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0036】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してからウエハWの表面及び裏面にIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、これらの面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態(ウエハW表面にIPAの液膜が形成された状態)のままウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送機構161に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。
【0037】
洗浄装置2にてウエハW表面に液盛りされたIPAは、洗浄装置2から超臨界処理装置3へのウエハWの搬送中や、超臨界処理装置3への搬入動作中に当該IPAが蒸発(気化)することによってパターン倒れが発生することを防ぐ乾燥防止用の液体としての役割を果たしている。
【0038】
洗浄装置2での洗浄処理を終え、表面に乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWは、超臨界処理装置3に搬送され、処理容器31内にてウエハW表面のIPAに超臨界CO2を接触させることにより、当該IPAを超臨界CO2に溶解させて除去し、ウエハWを乾燥する処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図4、図5を参照しながら説明する。また、図4、図5に示した超臨界処理装置3において、図18、図19を用いて説明した従来の超臨界処理装置3と共通の構成要素には、これらの図面にて使用したものと同様の符号を付してある。
【0039】
本実施の形態に係わる超臨界処理装置3は、ウエハW表面に付着した乾燥防止用の液体であるIPAを除去する処理が行われる処理容器31と、この処理容器31に高圧流体である超臨界CO2を供給する流体供給源37と、を備えている。
【0040】
図5に示すように処理容器31は、ウエハWの搬入出用の開口部312が形成された筐体状の容器本体311と、処理対象のウエハWを横向きに保持する保持板331と、この保持板331を支持すると共に、ウエハWを容器本体311内に搬入したとき前記開口部312を密閉する蓋部材332とを備えている。
【0041】
容器本体311は、例えば直径300mmのウエハWを収容可能な、200〜10000cm3程度の処理空間が形成された容器であり、その壁部には、処理容器31内に高圧流体を供給するための流体供給ライン351(流体供給路)と、処理容器31内の流体を排出するための排出ライン341(排出路)とが接続されている。また、処理容器1には処理空間内に供給された高圧状態の高圧流体から受ける内圧に抗して、容器本体311に向けて蓋部材332を押し付け、処理空間を密閉するための不図示の押圧機構が設けられている。
【0042】
処理容器1に接続された流体供給ライン351は、処理容器1への高圧流体の供給、停止に合わせて開閉する開閉弁352、フィルター353及び流量調整弁354を介して流体供給源37に接続されている。流体供給源37は、例えば液体CO2を貯留するCO2ボンベと、このCO2ボンベから供給された液体CO2を昇圧して超臨界状態とするための、シリンジポンプやダイヤフラムポンプなどからなる昇圧ポンプとを備えている。図4等には、これらCO2ボンベや昇圧ポンプを総括的にボンベの形状で示してある。
【0043】
流体供給源37から供給された超臨界CO2は、流量調整弁354にて流量を調節され、処理容器31に供給される。この流量調整弁354弁は、例えばニードルバルブなどから構成され、流体供給源37からの超臨界CO2の供給を遮断する遮断部としても兼用されている。
【0044】
また、排出ライン341の減圧弁342は圧力コントローラー343と接続されており、この圧力コントローラー343は、処理容器31に設けられた圧力計321から取得した処理容器31内の圧力の測定結果と、予め設定された設定圧力との比較結果に基づいて開度を調整するフィードバック制御機能を備えている。
【0045】
以上に説明した構成を備えた洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3は図1、図4に示すように制御部4に接続されている。制御部4は図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP100からウエハWを取り出して洗浄装置2にて洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWを乾燥する処理を行ってからFOUP100内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0046】
特に超臨界処理装置3について制御部4は、処理を終えたウエハWを取り出す前に、処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧することにより、流体供給ライン351から処理容器31へ向けて、減圧方向への急激な圧力変化が発生することを避けるように制御信号を出力する機能を備えている。このような観点から、図4に示すように制御部4は、排出ライン341に設けられた減圧弁342の開度を調節する圧力コントローラー343や、流体供給ライン351側の開閉弁352、流量調整弁354と電気的に接続されている。
【0047】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3の作用について図6〜図10の作用図を参照しながら説明する。各図においてバルブ354、352、342に付された「S」の符号は、その開閉バルブが閉状態となっていることを示し、「O」の符号は開状態となっていることを示している。
【0048】
既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAを液盛りしたウエハWが第2の搬送機構161に受け渡されると、第2の搬送機構161は、ウエハWを受け入れ可能な超臨界処理装置3が配置されている筐体内に進入する。
【0049】
このときウエハWの搬入が行われる前の超臨界処理装置3は、処理容器31内を大気開放してから流体供給ライン351の開閉弁352、排出ライン341の減圧弁342を閉じた状態で待機している。また、流体供給ライン351についても予め大気開放操作が行われており、内部に高圧のCO2が残存していない状態にて開閉弁352及び流量調整弁354が閉じられている。
【0050】
上記の状態で待機している処理容器31内にIPAが液盛りされたウエハWが搬入されてきたら、図5に示すように容器本体311の外に保持板331を移動させ、不図示の支持ピンを介して第2の搬送機構161の搬送アームから保持板331にウエハWを受け渡す。そして、保持板331を移動させて開口部312を介してウエハWを容器本体311の内部に搬入し、蓋部材332にて開口部312を閉じ処理容器31内を密閉する(図6)。
【0051】
次いで、流体供給ライン351の開閉弁352を開くと共に、流量調整弁354の開度を調節して、予め定められた流量で超臨界CO2を処理容器31に導入する(図7)。このとき、既述のように原料CO2に含まれていた水分や油分も処理容器31内に持ち込まれるが、超臨界CO2を導入することにより、処理容器31内は大気圧からCO2の臨界圧以上の圧力まで昇圧されるので、これらの水分や油分は超臨界CO2に保持された状態を維持する。ここで図7等に示す太線の矢印は、流体供給ライン351や排出ライン341等の配管内を流体が流れていることを示している。
【0052】
圧力コントローラー343には、処理容器31内の目標圧力が設定されており、処理容器31内の圧力が前記目標圧力を超えたら、減圧弁342を開いて処理容器31内の超臨界CO2の一部を排出ライン341から抜き出すことにより、処理容器31内の圧力調整を行う(図8)。このときウエハWの表面では、ウエハWに液盛りされたIPAが超臨界CO2と接触して、超臨界CO2に抽出されウエハWの表面からIPAが除去されていく。
【0053】
やがて超臨界CO2は、ウエハWの表面に形成されたパターン内に進入して、当該パターン内のIPAを抽出して除去する。この結果、パターン内を満たしていたIPAは、超臨界CO2に置換され、ウエハWの表面から除去される。
【0054】
このとき図8に示すように、処理容器31内でIPAを抽出した超臨界CO2の一部を排出ライン341から抜き出し、流体供給ライン351からの新たな超臨界CO2の供給を継続する。これにより、処理容器31内の超臨界CO2によるIPAの抽出能力を大きく低下させずに、IPAを除去する処理を進行させることができる。
【0055】
こうして、パターン内に入り込んだIPAを抽出し、超臨界CO2にて置換するのに十分な時間が経過したら、圧力コントローラー343による圧力制御を解除して排出ライン341の減圧弁342を閉じると共に、流量調整弁354を閉止して、流体供給源37からの超臨界CO2の供給を遮断する(図9)。このとき、処理容器31及び流体供給ライン351の配管内部は超臨界CO2で満たされた状態となっている。
【0056】
超臨界CO2の供給が停止されたら、減圧弁342を開いて処理容器31及び流体供給ライン351の配管の内部の超臨界CO2を排出することにより、処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧する。この操作において、処理容器31や流体供給ライン351内に残存する超臨界CO2は、圧力の低下に伴って「超臨界CO2→高圧CO2ガス→低圧CO2ガス」と変化し、水分や油分の保持能力が低下していく。
【0057】
しかしながら、このとき処理容器31の内部と流体供給ライン351の配管内とを併せて減圧することにより、流体供給ライン351-処理容器31間に大きな圧力差が形成されないようにしながら内部のCO2を排出できる。即ち本例の超臨界処理装置3では、流体供給ライン351内のCO2が処理容器31内に流れ込んだとき、図19にて説明した従来の超臨界処理装置と比べて急激な減圧を生じない。
【0058】
この結果、超臨界CO2に保持されていた水分や油分が処理容器31でミスト化することを防ぎ、これらの水分や油分を保持した状態のままCO2を外部へ排出することができる。なお、超臨界CO2に保持されていた水分や油分は、排出ライン341の減圧弁342の下流側にてミスト化するが、排出ライン341から排出されたCO2を処理容器31へ逆流させなければ、これらのミストは処理容器31内を汚染する汚染源とはならない。
【0059】
このように、CO2に保持された水分や油分が、処理容器31内にてミスト化しにくい条件下で減圧を行うことにより、処理容器31内に残存し、また容器本体311の内壁面に付着するミストの量を低減し、次に処理するウエハWへのパーティクルの付着を低減できる。
そして、大気圧まで減圧された処理容器31の内部には、パターン内から液体IPAが除去され、乾燥した状態となったウエハWを得ることができる。ここで、容器本体311にテープヒーターなどの加熱部を設け、処理容器31内の温度をIPAの露点よりも高い温度に維持し、CO2の断熱膨張による温度低下に伴うウエハW表面へのIPAの結露を防止してもよい。
【0060】
処理容器31内を大気開放して乾燥した状態のウエハWが得られたら、保持板331を移動させて処理容器31からウエハWを搬出し、第2の搬送機構161の搬送アームにウエハWを受け渡す。しかる後、ウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送機構121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP100内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0061】
本実施の形態に係わる超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。超臨界CO2を用いてウエハWに付着した液体IPAに超臨界CO2を接触させて、当該液体IPAを除去する処理を終えた後、処理が行われた処理容器31、及びこの処理容器31に超臨界CO2を供給する流体供給ライン351の減圧を併せて行うので、流体供給ライン351と処理容器31との間に急激な圧力差を発生させずに、処理容器31を介して流体供給ライン351内部の超臨界CO2を外部へと排出できる。この結果、流体供給ライン351に残存する超臨界CO2が処理容器31に流れ込む際の圧力低下幅を小さくして、当該超臨界CO2の密度低下に起因する処理容器31内部の汚染の発生を抑制できる。
【0062】
このように、処理容器31内で超臨界CO2や高圧CO2ガスの急激な減圧操作を行わないことにより処理容器31の内部の汚染を防ぐという考え方によれば、流体供給ライン351内の超臨界CO2の排出ルートは、処理容器31を介して排出ライン341から排出する場合に限定されない。
【0063】
例えば図11〜図15に示した超臨界処理装置3は、流体供給ライン351から超臨界CO2を抜き出す専用の分岐ライン361(分岐路)を、当該流体供給ライン351から分岐するように設けた点が図4に示した第1の実施の形態の超臨界処理装置3と異なっている。図11〜図15に示した超臨界処理装置3において、図4に示した超臨界処理装置3と同じ構成要素には、図4に示したものと同じ符号を付してある。また図11〜図15では、圧力計321や圧力コントローラー343の記載は省略してある。
【0064】
分岐ライン361は、開閉弁352と流量調整弁354とに挟まれた流体供給ライン351の配管から分岐しており、処理容器31や流体供給源37から切り離された流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を排出することができる。また分岐ライン361には、減圧弁362(第1の開閉弁)が介設されている。
【0065】
ウエハWの搬入時において、処理容器31、流体供給ライン351、分岐ライン361は大気開放された後、各弁342、352、354、362を閉じた状態で待機している(図11)。この処理容器31に、IPAが液盛りされた状態のウエハWが搬入されてきたら、流体供給ライン351の開閉弁352を開くと共に、流量調整弁354の開度を調整して予め設定した量の超臨界CO2を処理容器31内に供給する(図12)。
【0066】
そして、処理容器31内の圧力が目標圧力を超えたら、図13に示すように減圧弁342の開度を調整して排出ライン341から超臨界CO2を抜き出しながら、ウエハW表面に付着した液体IPAを超臨界CO2と置換する点は、図7、図8に示した第1の実施の形態に係わる超臨界処理装置3の動作と同様である。
【0067】
こうしてウエハW表面の液体IPAを除去したら、流体供給ライン351の開閉弁352、流量調整弁354及び排出ライン341の減圧弁342(第2の減圧弁)を閉じて超臨界CO2の供給、排出を停止する。しかる後、図14に示すように排出ライン341の減圧弁342を開いて処理容器31内の超臨界CO2を排出し、処理容器31内を大気開放してウエハWを取り出す準備をする。このとき、流体供給ライン351の開閉弁352や分岐ライン361の減圧弁362は「閉」となっているので、流体供給ライン351の配管内には超臨界CO2が残存している。なお、排出ライン341の減圧弁342を一旦、閉じることなく、流体供給ライン351側の開閉弁352、流量調整弁354のみを閉じて処理容器31の大気開放を行ってもよい。
【0068】
処理容器31の大気開放の後、またはこの操作と並行して、分岐ライン361の減圧弁362を開き、流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を外部に向かって排出する(図15)。このとき、分岐ライン361を流れる超臨界CO2や高圧CO2ガスは、減圧弁362を通過するところで急激に減圧され、原料CO2に含まれる水分や油分がミスト化する可能性があるが、当該CO2は処理容器31内を通過しない。このため、流体供給ライン351内の超臨界CO2を排出する際に発生するミスト等が処理容器31内部に残留したり、処理容器31の壁面に付着したりすることがなく、次回の処理時にウエハWを汚染する原因とならない。
【0069】
第2の実施の形態に係わる超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。ウエハWに付着した液体IPAに超臨界CO2を接触させて、当該液体IPAを除去する処理を行った処理容器31から流体を排出して減圧を行う排出ライン341とは別に、前記処理容器31に超臨界CO2を供給する流体供給ライン351から分岐させた分岐ライン361を設けている。この結果、処理容器31を経由することなく流体供給ライン351内部に残存する超臨界CO2を排出できるので、当該超臨界CO2が処理容器に流れ込む際の密度低下に起因する汚染の発生を抑制できる。
【0070】
ここで上述の各実施の形態では、図8、図13に示すように、流体供給ライン351から超臨界CO2を連続供給しながら、排出ライン341より処理容器31内の超臨界CO2を抜き出して、ウエハW表面のIPAと置換する場合について説明したが、IPAの置換法は本法に限定されない。例えば、排出ライン341、流体供給ライン351の各弁342、352を閉じてバッチ状態とした処理容器31内で超臨界流体に乾燥防止用の液体を抽出し、当該液体の置換、除去を行ってもよい。
【0071】
この他、流体供給源37に設けられる供給遮断部の構成は、図4や図11に示した流量調整弁354を用いる場合に限定されない。例えば流量調整弁354に替えて開閉弁を設けてもよいし、CO2ボンベから供給された液体CO2を超臨界状態にするための昇圧ポンプを供給遮断部としてもよい。後者の場合には、シリンジポンプなどの昇圧ポンプの稼働、停止により高圧流体の供給、遮断が切り替えられることになる。
【0072】
また、既述の各実施の形態では、超臨界CO2を高圧流体として供給し、ウエハW表面の液体を除去する場合について説明したが、流体供給ライン351から供給する高圧流体の状態はこれに限られるものではない。例えば、亜臨界状態のCO2を供給してウエハW表面の液体と置換してもよい。
【0073】
また、液体CO2や高圧CO2ガスを原料流体として処理容器31に供給し、当該CO2を処理容器31内で加熱して超臨界状態や亜臨界状態にして液体との置換を行ってもよい。大気開放に伴って密度が低下することにより、原料に含まれているパーティクルの原因物質の保持可能量が低下する性質を持つ流体であれば、超臨界状態、亜臨界状態、液体、高圧ガスのいずれの状態で供給された流体に対しても本発明の効果を得ることができる。
【0074】
そして、高圧流体の種類もCO2に限られず、IPAやメタノールやエタノールなどの各種アルコール、各種のHFE(Hydro Fluoro Ether)やアセトンなどの超臨界流体、亜臨界流体、高圧ガスを用いてウエハW上の乾燥防止用の液体と置換してもよい。また、乾燥防止用の液体の種類についてもIPAに限られるものではなく、メタノールやエタノールなどの各種アルコール、各種のHFE(Hydro Fluoro Ether)やアセトン、純水などを用いてもよい。
【0075】
さらに本発明を適用可能なウエハ処理は、流体供給源37から高圧流体を超臨界状態や亜臨界状態(これらをまとめて高圧状態という)で供給したり、また高圧流体を処理容器31内で高圧状態としたりすることにより、ウエハW表面の液体を高圧流体に抽出して当該液体を除去する処理に限定されない。例えば、処理容器31にウエハW表面の乾燥防止用の液体を加熱する加熱部を設け、前記液体を高圧状態(超臨界状態または亜臨界状態)に変化させることによりウエハWの表面から除去するウエハ処理装置に対しても本発明は適用することができる。
【0076】
但し、この場合にはウエハW表面の液体が気体の状態を経由して高圧状態に変化するとパターン倒れが発生してしまう。そこで、処理容器31内を加圧するための加圧用の高圧流体を流体供給源37から供給し、処理容器31内の圧力がウエハW表面の液体の蒸気圧よりも高くなるようにしてから加熱を行い、前記液体を直接高圧状態に変化させてウエハWから除去するとよい。ウエハW表面の液体が高圧状態となったら、処理容器31の温度を前記液体の露点以上に維持しながら処理容器31を大気開放することにより、乾燥したウエハWを得ることができる。
【0077】
ウエハW表面の乾燥防止用の液体を高圧状態に直接変化させる手法の具体例を挙げておくと、乾燥防止用の液体としてIPA(臨界温度235℃、臨界圧力4.8MPa(絶対圧))、加圧流体(高圧流体)として超臨界CO2(臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa(絶対圧))を用いる場合がある。超臨界CO2を供給した処理容器31内で液体IPAを加熱すると、IPAの臨界圧力よりも高圧の雰囲気下で加熱が行われるため、気体の状態を経由することなく液体IPAを超臨界IPAに直接変化させることができる。また、IPAの気化を防ぐという観点からすると、加圧流体は超臨界CO2であることは必要でなく、IPAの臨界圧力よりも高圧のガスCO2や亜臨界CO2を供給してもよいことは勿論である。
【0078】
このような手法によりウエハW表面の液体を除去する場合には、前記乾燥防止用の液体が高圧状態となる温度、圧力条件下で液体とならない物質であれば、流体供給源37から供給される加圧用の高圧流体は、高圧状態で供給してもよいし、大気圧よりも高圧のガス状態で供給してもよい。このような加圧用の高圧流体を流体供給源37から供給した後においても、図10に示すように処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧したり、また、図14、図15に示すように処理容器31と流体供給ライン351とを別々のライン341、361を使って減圧したりすることにより、処理容器31内におけるウエハWへのパーティクルの付着を防止できる。
【実施例】
【0079】
(実験1)
図4に示した超臨界処理装置3にて、超臨界CO2を用いてウエハWの表面のIPAを除去する処理を行った後、処理容器31を大気解放し、処理容器31を介して流体供給ライン351の大気開放を行った場合と、大気開放を行わなかった場合とで、処理容器31に搬入されたウエハWへのパーティクルの付着状況を比較した。
【0080】
A.実験条件
(参考例1)
クリーニングされた処理容器31に、洗浄処理後、IPAが液盛りされたウエハWを搬入し、図8に示すように超臨界CO2を60分間供給してIPAと置換する処理を行った。この処理の期間中における処理容器31内の温度は40℃、圧力は10MPa(絶対圧)とした。処理後、処理容器31を大気開放して、ウエハWを取り出した。次に、図19に示すように流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を、処理容器31を介して排出し、大気開放を行った。しかる後、液体の付着していない2枚目のウエハWを処理容器31内に搬入し、600秒間放置後、当該ウエハWを取り出し、当該ウエハWの表面に付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。パーティクルのカウントは、KLAテンコール社製のパーティクル検査装置により行った。
(参考例2)
1枚目のウエハWを取り出した後、流体供給ライン351の大気開放を行わなかった点以外は(参考例1)と同様の条件で処理容器31に2枚目のウエハWを搬入し、取り出したウエハW表面に付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。
【0081】
B.実験結果
(参考例1)の実験において、ウエハW表面に付着したパーティクル数は2712個、(参考例2)の実験においては627個であった。これらの実験の結果から、処理容器31と流体供給ライン351との大気開放を別々に行い、処理容器31を介して、流体供給ライン351の配管内に残存している超臨界CO2を外部へ排出すると、処理容器31内に存在するパーティクル数が多くなって、2枚目以降に搬入されたウエハWの汚染原因となることが確認できる。
【0082】
(実験2)
本発明に係わる手法と、従来法とで3枚のウエハWを連続処理し、処理後のウエハWに付着しているパーティクル数を比較した。
【0083】
A.実験条件
(実施例1)
クリーニングされた処理容器31を用い、液体IPAが液盛りされたウエハWから当該IPAを除去する処理を行った後、処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧し、大気開放を行う処理(図6〜図10)を3枚のウエハWに対して連続して行った。処理容器31内の温度、圧力等、ウエハWの処理条件は(参考例1)と同様である。処理後の各ウエハWの表面に付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。
(比較例1)
超臨界CO2を用いてウエハW表面の液体IPAを除去する処理(図6〜図8)を行った後、図18、図19に示すように、処理容器31及び流体供給ライン351の大気開放を別々に行った点以外は、(実施例1)と同様の条件で3枚のウエハWを連続して処理した。処理後、各ウエハWに付着している直径40nm以上の大きさのパーティクル数をカウントした。
【0084】
B.実験結果
(実施例1)の結果を図16に示し、(比較例1)の結果を図17に示す。図16に示した(実施例1)の結果によれば、ウエハWに付着している直径40nm以上のパーティクルの数は600〜700個程度であり、ウエハWの処理順に係わらず、パーティクルの付着数の大きな変動はなかった。
【0085】
これに対して、処理容器31と流体供給ライン351とを別々に大気開放した(比較例1)の実験結果では、処理の順番が2、3枚目のウエハWにおいて、1枚目のウエハWの4倍以上のパーティクルが付着し、パーティクル汚染が大幅に増大している。これは(参考例1)で確認したように、処理容器31と流体供給ライン351とを別々に大気開放すると共に、流体供給ライン351の大気開放を処理容器31に向けて行うことにより、処理容器31内にパーティクルが発生し、このパーティクルが原因となって2枚目以降のウエハWの汚染が引き起こされた結果であると考えられる。
【0086】
(実施例1)、(比較例1)の実験結果を比較すると、図10に示すように処理容器31と流体供給ライン351とを併せて減圧し、大気開放を行うことにより、処理容器31内におけるパーティクルの発生を抑え、後続する処理におけるウエハWのパーティクル汚染を抑制できることが確認できた。
【0087】
また先に検討したように、(参考例1)と(参考例2)とを比較したとき、処理容器31へ向けて流体供給ライン351の大気開放を行わない(参考例2)の場合の方が、次に処理容器31に搬入されたウエハWへ付着するパーティクルの数が少なかった。この事実から、図11〜図15に示すように、流体供給ライン351に分岐ライン361を設け、処理容器31を通らないように流体供給ライン351の減圧、大気開放を行う手法についても、ウエハWへのパーティクルの付着を抑制するうえで有効な手法であることが分かる。
【符号の説明】
【0088】
W ウエハ
1 洗浄システム
2 洗浄装置
3 超臨界処理装置
31 処理容器
341 排出ライン
342 減圧弁
351 流体供給ライン
352 開閉弁
354 流量調整弁
361 分岐ライン
362 減圧弁
37 流体供給源
4 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、前記開閉弁と減圧弁とを開いた状態とすることにより、前記流体供給路と処理容器との内部を減圧するステップと、その後、前記基板を当該処理容器から搬出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流調調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記遮断部と開閉弁との間の流体供給路から分岐し、当該流体供給路内の流体を排出して減圧するための第1の減圧弁が設けられた分岐路と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための第2の減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記第1の減圧弁を閉じる一方、前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とすると共に開閉弁を閉じる一方、第2の減圧弁を開いた状態とすることにより、前記処理容器の内部を減圧するステップと、前記遮断部が遮断状態となり、開閉弁が閉じられた後、前記第1の減圧弁を開いて、前記流体供給路に残存する流体を分岐路から排出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
前記高圧流体は、超臨界状態または亜臨界状態の流体であり、前記処理容器には、前記流体供給源から高圧流体が供給されるか、または当該処理容器内で前記原料流体が加熱されて高圧流体となることにより、前記乾燥防止用の液体が当該高圧流体に抽出されて基板の表面から除去されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理容器は、基板の表面の乾燥防止用の液体を加熱するための加熱部を備え、
前記高圧流体は、前記乾燥防止用の液体を加熱して超臨界状態または亜臨界状態にしたときに液体にならず、当該乾燥防止用の液体の気化を防止するための加圧用の流体であり、
前記乾燥防止用の液体は、前記高圧流体と接触して加圧された雰囲気下で前記加熱部により加熱され、液体から超臨界状態また亜臨界状態に直接変化することにより基板の表面から除去されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
線幅が20nm以下のパターンが形成された基板から乾燥防止用の液体を除去する処理が行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載された基板処理装置。
【請求項6】
基板から乾燥防止用の液体を除去する処理を行う際の前記処理容器内の圧力が5MPa以上であり、当該処理容器内の圧力が大気圧まで減圧されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、前記流体供給路における当該流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、前記処理容器内の圧力を減圧するための減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、を用いた基板処理方法であって、
前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去する工程と、
次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、前記開閉弁と減圧弁とを開いた状態とすることにより、前記流体供給路と処理容器との内部を減圧する工程と、
その後、前記基板を前記処理容器から搬出する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、前記流体供給路における流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、前記遮断部と開閉弁との間の流体供給路から分岐し、当該流体供給路内の流体を排出して減圧するための第1の減圧弁が設けられた分岐路と、前記処理容器内の圧力を減圧するための第2の減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、を用いた基板処理方法であって、
前記第1の減圧弁を閉じる一方、前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去する工程と、
次いで、前記遮断部を遮断状態とすると共に開閉弁を閉じる一方、第2の減圧弁を開いた状態とすることにより、前記処理容器の内部を減圧する工程と、
遮断部が遮断状態となり、開閉弁が閉じられた後、前記第1の減圧弁を開いて、前記流体供給路に残存する流体を分岐路から排出する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
線幅が20nm以下のパターンが形成された基板から乾燥防止用の液体を除去する処理が行われることを特徴とする請求項7または8に記載された基板処理方法。
【請求項10】
基板から乾燥防止用の液体を除去する処理を行う際の前記処理容器内の圧力が5MPa以上であり、当該処理容器内の圧力が大気圧まで減圧されることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項11】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項7ないし10のいずれか一つに記載された基板処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、前記開閉弁と減圧弁とを開いた状態とすることにより、前記流体供給路と処理容器との内部を減圧するステップと、その後、前記基板を当該処理容器から搬出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、
前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、
この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、
この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、
前記流体供給路における流調調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、
前記遮断部と開閉弁との間の流体供給路から分岐し、当該流体供給路内の流体を排出して減圧するための第1の減圧弁が設けられた分岐路と、
前記処理容器内の圧力を減圧するための第2の減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、
前記第1の減圧弁を閉じる一方、前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去するステップと、次いで、前記遮断部を遮断状態とすると共に開閉弁を閉じる一方、第2の減圧弁を開いた状態とすることにより、前記処理容器の内部を減圧するステップと、前記遮断部が遮断状態となり、開閉弁が閉じられた後、前記第1の減圧弁を開いて、前記流体供給路に残存する流体を分岐路から排出するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
前記高圧流体は、超臨界状態または亜臨界状態の流体であり、前記処理容器には、前記流体供給源から高圧流体が供給されるか、または当該処理容器内で前記原料流体が加熱されて高圧流体となることにより、前記乾燥防止用の液体が当該高圧流体に抽出されて基板の表面から除去されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理容器は、基板の表面の乾燥防止用の液体を加熱するための加熱部を備え、
前記高圧流体は、前記乾燥防止用の液体を加熱して超臨界状態または亜臨界状態にしたときに液体にならず、当該乾燥防止用の液体の気化を防止するための加圧用の流体であり、
前記乾燥防止用の液体は、前記高圧流体と接触して加圧された雰囲気下で前記加熱部により加熱され、液体から超臨界状態また亜臨界状態に直接変化することにより基板の表面から除去されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
線幅が20nm以下のパターンが形成された基板から乾燥防止用の液体を除去する処理が行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載された基板処理装置。
【請求項6】
基板から乾燥防止用の液体を除去する処理を行う際の前記処理容器内の圧力が5MPa以上であり、当該処理容器内の圧力が大気圧まで減圧されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、前記流体供給路における当該流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、前記処理容器内の圧力を減圧するための減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、を用いた基板処理方法であって、
前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去する工程と、
次いで、前記遮断部を遮断状態とする一方、前記開閉弁と減圧弁とを開いた状態とすることにより、前記流体供給路と処理容器との内部を減圧する工程と、
その後、前記基板を前記処理容器から搬出する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理が行われる処理容器と、前記高圧流体またはこの高圧流体の原料流体を、大気圧よりも高圧の状態で供給するための流体供給源と、この流体供給源と処理容器とを接続する流体供給路と、この流体供給路に上流側からこの順に設けられた流量調整部及び開閉弁と、前記流体供給路における流量調整部の上流側に設けられ、または流量調整部を兼用する遮断部と、前記遮断部と開閉弁との間の流体供給路から分岐し、当該流体供給路内の流体を排出して減圧するための第1の減圧弁が設けられた分岐路と、前記処理容器内の圧力を減圧するための第2の減圧弁が設けられ、当該処理容器内の流体の排出が行われる排出路と、を用いた基板処理方法であって、
前記第1の減圧弁を閉じる一方、前記遮断部を開き、流量調整部により流量を調整した状態で前記開閉弁を開いて処理容器に高圧流体を導入し、または前記原料流体を導入して高圧流体に変化させ、基板の表面から乾燥防止用の液体を除去する工程と、
次いで、前記遮断部を遮断状態とすると共に開閉弁を閉じる一方、第2の減圧弁を開いた状態とすることにより、前記処理容器の内部を減圧する工程と、
遮断部が遮断状態となり、開閉弁が閉じられた後、前記第1の減圧弁を開いて、前記流体供給路に残存する流体を分岐路から排出する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
線幅が20nm以下のパターンが形成された基板から乾燥防止用の液体を除去する処理が行われることを特徴とする請求項7または8に記載された基板処理方法。
【請求項10】
基板から乾燥防止用の液体を除去する処理を行う際の前記処理容器内の圧力が5MPa以上であり、当該処理容器内の圧力が大気圧まで減圧されることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項11】
基板の表面の乾燥防止用の液体に高圧流体を接触させて、前記乾燥防止用の液体を除去する処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項7ないし10のいずれか一つに記載された基板処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−12538(P2013−12538A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143336(P2011−143336)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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