説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板から排出された処理液が蒸気となることを抑制または防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】基板処理装置1は、スピンチャック3、処理液ノズルおよびカップ5を備えている。スピンチャック3によりウエハWが回転された状態で、当該ウエハWの上面に処理液ノズルから処理液が供給される。ウエハWに供給された処理液は、遠心力によりウエハWから排出され、カップ5により受け止められる。このとき、処理液ノズルからの処理液の吐出と並行して、洗浄液ノズル38から洗浄液が吐出されており、カップ5により受け止められた処理液は、速やかに洗い流されて排液口32から排液される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、たとえば、半導体ウエハなどの基板に対して処理液を用いた処理が行われる。基板を1枚ずつ処理する基板処理装置は、たとえば、処理室内に、基板をほぼ水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板に処理液を供給するための処理液ノズルと、基板から排出される処理液を受け止めるためのカップとを備えている。
【0003】
処理液ノズルからは、スピンチャックにより基板が回転された状態で、処理液が吐出される。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の上面における回転中心を含む範囲に着液する。そして、この処理液は、基板の回転による遠心力を受けて基板の周縁に向けて広がっていく。これにより、基板の上面全域に処理液が供給される。基板の周縁に達した処理液は、遠心力により振り切られて基板から排出される。また、基板から排出された処理液は、カップにより受け止められて捕獲される。
【0004】
この基板処理装置による基板の処理では、たとえば、回転中の基板に薬液が供給され、当該基板に薬液処理が行われる。そして、薬液処理が行われた後に、回転中の基板に純水が供給され、基板上の薬液を洗い流すリンス処理が行われる。リンス処理が行われた後は、基板上に残留している純水を除去して基板を乾燥させる乾燥処理が行われる。この乾燥処理を行う方法としては、リンス処理が行われた基板の上面に、純水よりも揮発性が高い有機溶剤であるIPA(イソプロピルアルコール)を供給するものがある。
【0005】
具体的には、回転中の基板にIPAが供給され、リンス処理後の基板に残留している純水にIPAが溶け込みつつ洗い流されることによって、基板に残留している純水がIPAに置換される。そして、スピンチャックにより基板が高速回転される。これにより、IPAおよび純水を含む基板上の液成分が振り切られ、基板が乾燥される。
【特許文献1】特開2003−92280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板から排出された処理液は、カップにより受け止められ捕獲される。また、カップにより捕獲された処理液は、カップに形成された排液口に向けてカップ内を流れ、排液口から排液される。しかしながら、カップにより捕獲された処理液が排液口から排出されずにカップ内に残留してしまう場合がある。たとえば、基板から排出されたIPAがカップ内に残留してしまう場合がある。
【0007】
すなわち、カップ内からの処理液の排液は、重力によって行われるため、完全にはカップ内から排液されずにIPAがカップ内に留まってしまうことがある。
一方、IPAは、揮発性が高く蒸発しやすい有機溶剤である。したがって、IPAがカップ内に残留すると、IPAの蒸気がカップ内に発生し、この蒸気が処理室内に広がっていくおそれがある。IPAは、引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤であるので、このような有機溶剤の蒸気が処理室内に広がることは好ましくない。前述の問題は、IPAに限らず、引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤を含む処理液によって基板を処理する場合において同様に生じる問題である。
【0008】
そこで、この発明の目的は、基板から排出された処理液が蒸気となって処理室内に拡散することを抑制または防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持するための基板保持手段(3)と、引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤を含む処理液を、前記基板保持手段に保持された基板に向けて吐出するための処理液ノズル(4)と、この処理液ノズルに処理液を供給するための処理液供給手段(12)と、前記基板保持手段に保持された基板から排出される処理液を受け止めるための内壁面を有し、受け止められた処理液が導かれる溝(27)と、この溝に導かれた処理液が排液される排液口(32)とが前記内壁面に形成されたカップ(5)と、このカップの前記内壁面に向けて洗浄液を吐出するための洗浄ノズル(38,45)と、この洗浄ノズルに洗浄液を供給するための洗浄液供給手段(39)と、前記処理液供給手段および洗浄液供給手段を制御して、前記処理液ノズルから処理液を吐出させて前記基板保持手段に保持された基板を処理する処理工程と、この処理工程と並行して前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させて前記カップの内壁面を洗浄する洗浄工程とを行わせるための制御手段(44)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0010】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すものとする。
この発明によれば、制御手段が、処理液供給手段を制御して、基板保持手段により保持された基板に向けて引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤を含む処理液を処理液ノズルから吐出させる。これにより、基板に処理液が供給され、基板を処理する処理工程が行われる。
【0011】
基板に供給された処理液は当該基板から流下または飛散して排出される。また、基板から排出された処理液はカップの内壁面により受け止められて当該カップに捕獲される。そして、カップにより捕獲された処理液は当該カップの内壁面に形成された溝に導かれ、内壁面に形成された排液口から排液される。
また、制御手段は、処理液供給手段および洗浄液供給手段を制御して、処理液ノズルから処理液を吐出させつつ、カップの内壁面に向けて洗浄ノズルから洗浄液を吐出させる。これにより、前記処理工程と並行して、カップの内壁面に洗浄液が供給され、カップの内壁面を洗浄する洗浄工程が行われる。
【0012】
洗浄工程が行われることにより、カップにより受け止められた処理液が洗浄液によって洗い流され、排液口から排液される。これにより、カップ内に処理液が残留することが抑制または防止される。また、処理工程と並行して洗浄工程が行われることにより、カップにより受け止められた処理液が速やかに洗い流される。したがって、処理液が洗い流されるまでの間に、当該処理液の蒸気が発生することを抑制または防止することができる。これにより、基板から排出された処理液が、蒸気となって、基板保持手段等が収容された処理室内に広がることを抑制または防止することができる。
【0013】
制御手段は、処理液供給手段および洗浄液供給手段を制御して、処理液ノズルから処理液を吐出させている全期間において、洗浄ノズルから洗浄液を吐出させることが好ましい。つまり、処理工程の全期間において洗浄工程が行われることが好ましい。
請求項2記載の発明は、記制御手段は、前記洗浄工程を行わせた後、前記処理液ノズルからの処理液の吐出を停止させた状態で、前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させてカップ内を洗浄する後洗浄工程をさらに行わせるものである、請求項1記載の基板処理装置である。
【0014】
この発明によれば、洗浄工程が行われた後、制御手段が、処理液供給手段および洗浄液供給手段を制御して、処理液ノズルからの処理液の吐出を停止させた状態で、洗浄ノズルから洗浄液を吐出させる。これにより、洗浄工程が行われた後、カップ内を洗浄する後洗浄工程が行われる。したがって、洗浄工程が行われた後にカップ内に処理液が残留することを抑制または防止することができる。そのため、洗浄工程が行われた後にカップ内で処理液の蒸気が発生することが抑制または防止される。
【0015】
後洗浄工程は、洗浄工程の直後に実施されることが好ましく、とくに、洗浄工程と連続して実施されることが好ましい。より具体的には、洗浄工程において、処理液ノズルから処理液を吐出させ、洗浄ノズルから洗浄液を吐出させている状態から、処理液ノズルからの処理液の吐出を停止させ、洗浄ノズルからの洗浄液吐出を継続させて後洗浄工程に移行することが好ましい。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記溝が、当該溝に導かれた処理液が前記排液口に向けて流れるように高低差が設けられた溝底面(28)を有しており、前記洗浄ノズルは、前記溝底面における最も高さが高い部分(36)を含む範囲に向けて洗浄液を吐出するものである、請求項1または2記載の基板処理装置である。
この発明によれば、溝に導かれた処理液が排液口に向けて流れるように高低差が溝底面に設けられており、洗浄ノズルから吐出された洗浄液が当該溝底面における最も高さが高い部分を含む範囲に供給される。これにより、溝底面における最も高さが高い部分から排液口に向かう洗浄液の流れが形成される。また、洗浄液が溝底面に沿って流れることにより、当該溝底面の全域に洗浄液が供給される。これにより、溝内の処理液が洗い流され排液口から排液される。したがって、カップ内で処理液の蒸気が発生することが抑制または防止される。
【0017】
前記洗浄ノズル(38)は、請求項4記載の発明のように、前記溝底面における最も高さが高い位置を挟んで一対設けられていてもよい。この場合、溝底面の全域に洗浄液が均一に供給される。すなわち、たとえば請求項5記載の発明のように、前記溝は、前記基板保持手段を取り囲む環状溝(27)を含み、前記溝底面は、前記環状溝の中心を挟んで前記排液口に対向する位置が最も高くされている場合に、溝底面の全域に洗浄液が均一に供給される。
【0018】
より具体的には、溝が環状溝であり、溝底面おいて前記環状溝の中心を挟んで排液口に対向する位置が最も高くされている場合、溝底面における最も高さが高い位置から排液口に向かうルートが2つ(右回りのルートおよび左回りのルート)存在する。このような場合に、溝底面における最も高さが高い位置を挟んで洗浄ノズルを一対設け、さらに、溝底面における最も高さが高い部分を含む範囲に洗浄液を供給することにより、前記2つのルートの両方に向けて洗浄液を均一に供給することができる。これにより、溝底面の全域に洗浄液が均一に供給される。したがって、溝底面の全域が均一に洗浄され、カップ内での処理液の蒸気の発生が抑制または防止される。
【0019】
請求項6記載の発明は、前記洗浄ノズルは、前記溝内における処理液の流通方向に沿って洗浄液を吐出するものである、請求項1〜5の何れか1項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、溝内における処理液の流通方向に沿うように洗浄ノズルから洗浄液が吐出される。これにより、処理液の流通方向に沿う洗浄液の流れが溝内に形成される。したがって、溝に導かれた処理液は、洗浄液の流れに乗って排液口に導かれ、排液口から排出される。そのため、カップ内での処理液の蒸気の発生が抑制または防止される。
【0020】
請求項7記載の発明は、前記洗浄ノズル(45)は、前記溝内における処理液の流通方向に沿って配置された複数の吐出口(46)を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、複数の吐出口から、それぞれ、カップの内壁面における前記処理液の流通方向に離れた複数の位置に向けて処理液が吐出される。これにより、前記複数の位置のそれぞれに処理液が直接供給される。したがって、これらの位置に存在する処理液が洗浄液によって確実に洗い流される。これにより、カップ内での処理液の蒸気の発生が抑制または防止される。
【0021】
請求項8記載の発明は、引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤を含む処理液を、基板保持手段に保持された基板に向けて処理ノズルから吐出させて当該基板を処理する処理工程と、この処理工程と並行して実施され、前記基板保持手段に保持された基板から排出される処理液を受け止めるためのカップの内壁面に向けて洗浄ノズルから洗浄液を吐出させてカップ内を洗浄する洗浄工程とを含む、基板処理方法である。
【0022】
この発明によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す平面図である。また、図2および図3は、基板処理装置1の概略構成を示す縦断面図である。図2は、図1におけるII−II線に沿う断面であり、図3は、図1におけるIII−III線に沿う断面である。
【0024】
この基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)を1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、隔壁で区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持手段)と、ウエハWに処理液を供給するための処理液ノズル4と、スピンチャック3から排出される処理液を受け止めて捕獲するためのカップ5とを備えている。スピンチャック3は、ウエハWの中心を通るほぼ鉛直な軸線(以下、「回転軸線C」という。)まわりにウエハWを回転させることができる。
【0025】
スピンチャック3は、筒状のカバー部材6によって包囲されたモータ7と、このモータ7の駆動力によって鉛直な軸線まわりに回転される円板状のスピンベース8と、このスピンベース8上に配置された複数個の挟持部材9とを備えている。カバー部材6は、水平に延びるベース10上にその下端が固定されており、その上端がスピンベース8の近傍にまで及んでいる。カバー部材6の上端部には、カバー部材6から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材11が取り付けられている。
【0026】
複数個の挟持部材9は、スピンベース8の上面周縁部においてウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔をあけて配置されている。複数個の挟持部材9は、互いに協働してウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持することができる。スピンチャック3は、複数個の挟持部材9によってウエハWを挟持した状態で回転軸線Cまわりに当該ウエハWを回転させることができる。
【0027】
なお、スピンチャック3としては、このような構成のものに限らず、たとえば、ウエハWの下面(裏面)を真空吸着することによりウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)であってもよい。
処理液ノズル4は、その吐出口をスピンベース8の上面に向けて、スピンチャック3の上方に配置されている。処理液ノズル4は、処理液供給管12(処理液供給手段)を通じて供給される処理液を、スピンチャック3により回転されるウエハWの上面に向けて吐出する。処理液ノズル4は、吐出された処理液がウエハWの上面における回転中心を含む範囲に着液するように配置されている。
【0028】
処理液供給管12には、薬液供給管13、リンス液供給管14およびIPA供給管15が接続されている。薬液供給管13、リンス液供給管14およびIPA供給管15には、それぞれ、薬液バルブ16、リンス液バルブ17およびIPAバルブ18が介装されている。これらのバルブ16,17,18の開閉は、制御部44により制御される(図6参照)。薬液バルブ16、リンス液バルブ17およびIPAバルブ18の開閉が制御されることにより、処理液供給管12に、薬液、リンス液、IPA(イソプロピルアルコール)が選択的に供給される。たとえば、リンス液バルブ17およびIPAバルブ18が閉じられた状態で薬液バルブ16が開かれると、薬液が処理液供給管12に供給される。
【0029】
薬液としては、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水のうちの少なくとも1つを含む液を用いることができる。また、リンス液としては、たとえば、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水、磁気水や、希釈濃度(たとえば、1ppm程度)のアンモニア水などを用いることができる。
IPAは、引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤である。IPAは、純水よりも揮発性が高く、かつ、純水よりも表面張力が小さい有機溶剤である。また、IPAは、純水に容易に溶け込ませることができる有機溶剤である。
【0030】
なお、IPAとしては、100%のIPAを供給しているが、それに限らず、IPAに純水が混合されたIPAと純水の混合液であってもよい。
スピンチャック3によりウエハWが回転された状態で、処理液ノズル4から処理液が吐出されると、当該処理液は、ウエハWの上面の回転中心を含む範囲に着液し、その後、ウエハWの回転による遠心力を受けて周縁に向かって広がっていく。これにより、ウエハWの上面全域に処理液が供給される。ウエハWの周縁に達した処理液の一部は、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られる。また、ウエハWの周縁に達した処理液の一部はウエハWから流下していく。このようにして、ウエハW上から処理液が排出される。
【0031】
カップ5は、有底筒状であり、図1に示すように、平面視においてスピンチャック3を取り囲んでいる。カップ5は、互いに独立して昇降可能な内構成部材19および外構成部材20を備えている。内構成部材19および外構成部材20は、それぞれ、ウエハWから排出される処理液を受け止めることができる。
内構成部材19は、回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。内構成部材19は、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。内構成部材19には、たとえばボールねじ機構等を含む第1昇降駆動機構21が接続されている。この第1昇降駆動機構21によって内構成部材19が昇降される。図2に、内構成部材19が下方位置に位置する状態を示し、図3に、内構成部材19が上方位置に位置する状態を示す。
【0032】
内構成部材19は、平面視において円環状をなす底部22と、この底部22の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部23と、底部22の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部24と、内周縁と外周縁との間に対応する底部22の一部から上方に立ち上がる円筒状の案内部25とを一体的に備えている。
内壁部23は、内構成部材19が上方位置にある状態で、カバー部材6と鍔状部材11との間に隙間を保って、その間に収容される長さに形成されている(図3参照)。また、案内部25は、底部22から立ち上がる円筒状の本体部25aと、この本体部25aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる筒状の上端部25bとを含む。案内部25と外壁部24との間は、ウエハWの処理に使用された処理液を集めて回収するための回収溝26とされている。また、内壁部23と案内部25との間は、ウエハWの処理に使用された処理液を集めて廃棄するための廃棄溝27とされている。
【0033】
回収溝26は、環状をなしており、案内部25の外周面と、外壁部24の内周面と、底部22の上面の外周よりの部分(溝底面)とによって形成されている。図示はしないが、回収溝26の溝底面には、回収溝26に導かれた処理液を回収するための回収機構が接続されている。回収溝26に導かれた処理液は、回収機構によって、回収溝26から排出され図示しない回収タンクに回収される。
【0034】
一方、廃棄溝27は、環状をなしており、案内部25の内周面と、内壁部23の外周面と、底部22の上面の内周よりの部分(溝底面28)とによって形成されている。本実施形態では、案内部25の内周面、内壁部23の外周面および溝底面28が、カップの内壁面とされている。
溝底面28には、カップ5内の雰囲気を排気させるための複数の排気口31(図2参照)と、廃棄溝27に導かれた処理液を排液させるための排液口32(図3参照)とが形成されている。図1に示すように、複数の排気口31および排液口32は、廃棄溝27の周方向に間隔を隔てて配置されている。
【0035】
また、図2に示すように、各排気口31には、図示しない負圧源から延びる配管33が接続されている。カップ5内の雰囲気は、この負圧源が発生する負圧によって各排気口31から排気される。カップ5内の雰囲気は、たとえば常時排気されるようになっている。また、図3に示すように、排液口32には、図示しない廃棄タンクから延びる廃棄配管34が接続されている。廃棄溝27に導かれた処理液は、廃棄配管34を介して廃棄タンクに回収される。
【0036】
溝底面28には、廃棄溝27に導かれた処理液が当該廃棄溝27の内側に向けて流れるように、廃棄溝27の径方向に関して高低差が設けられている。すなわち、溝底面28は、廃棄溝27の中心に向けて斜め下方に傾斜する傾斜面35を含む。廃棄溝27に導かれた処理液は、廃棄溝27の内側に向けて流れていく。
また、溝底面28には、廃棄溝27の周方向に関して高低差が設けられている。すなわち、溝底面28は、廃棄溝27の周方向に関して最も高さが高い部分である頂部36と、周方向に関して最も高さが低い部分である底辺部37とを含む。廃棄溝27に導かれた処理液は、廃棄溝27の内側に向けて流れるとともに、底辺部37に向けて廃棄溝27の周方向に流れていく。本実施形態では、廃棄溝27の周方向が、溝内における処理液の流通方向となっている。
【0037】
頂部36および底辺部37は、溝底面28において廃棄溝27の中心を挟んで互いに対向する位置に設けられている。図3は、頂部36、底辺部37および廃棄溝27の中心を含む基板処理装置1の断面を示している。図3において、回転軸線Cの左側に図示されたカップ5の断面が頂部36を含む断面であり、回転軸線Cの右側に図示されたカップ5の断面が底辺部37を含む断面である。図3に示すように、排液口32は底辺部37に形成されている。したがって、廃棄溝27に導かれた処理液は、溝底面28の傾斜によって底辺部37に導かれた後、この底辺部37に形成された排液口32から排出される。これにより、廃棄溝27内の処理液が確実に排液される。
【0038】
また図3に示すように、頂部36の近傍には、カップ5内を洗浄するための洗浄ノズル38が配置されている。図1に示すように、洗浄ノズル38は一対設けられており、これらのノズル38,38は、廃棄溝27の周方向に関して頂部36を挟んだ両側に配置されている。各洗浄ノズル38には、共通の洗浄液供給管39(洗浄液供給手段)に接続された分岐配管40が接続されている。各洗浄ノズル38には、洗浄液供給管39および分岐配管40を通じて洗浄液が供給される。洗浄液供給管39には、洗浄液バルブ41が介装されており、この洗浄液バルブ41が開かれることにより、一対の洗浄ノズル38,38に洗浄液が同時に供給される。
【0039】
各洗浄ノズル38は、廃棄溝27内に洗浄液を供給する。前述のように、各洗浄ノズル38が頂部36の近傍に配置されているので、各洗浄ノズル38から吐出された洗浄液は、溝底面28における頂部36を含む範囲に着液する。
溝底面28における頂部36を含む範囲に着液した洗浄液は、溝底面28の傾斜によって、排液口32が形成された底辺部37に向けて廃棄溝27の周方向に流れていく。本実施形態では、廃棄溝27が環状とされているので、廃棄溝27内において頂部36から底辺部37に向かう2つのルート(右回りのルートおよび左回りのルート)が形成されている。したがって、溝底面28における頂部36を含む範囲に着液した洗浄液は、前記2つのルートの何れかを通って底辺部37に向かっていく。
【0040】
頂部36から底辺部37に向けて洗浄液が溝底面28に沿って流れていくことで、溝底面28の全域に洗浄液が供給される。また、頂部36から底辺部37に向けて洗浄液が流れていくことで、廃棄溝27内の処理液が洗い流される。これにより、廃棄溝27内が洗浄される。
外構成部材20は、回転軸線Cに対してほぼ回転対称な形状を有している。外構成部材20は、内構成部材19の案内部25の外側においてスピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。外構成部材20には、たとえばボールねじ機構等を含む第2昇降駆動機構42が接続されている。この第2昇降駆動機構42によって外構成部材20が昇降される。図2において、外構成部材20が上方位置に位置する状態を実線で示し、外構成部材20が下方位置に位置する状態を二点鎖線で示す。
【0041】
外構成部材20は、案内部25と同軸円筒状をなす下端部20aと、下端部20aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(回転軸線Cに近づく方向)斜め上方に延びる筒状の上端部20bと、上端部20bの先端部を下方に折り返して形成された折返し部20cとを有している。
下端部20aは、回収溝26上に位置し、内構成部材19と外構成部材20が最も近接した状態で、回収溝26に収容される長さに形成されている。また、上端部20bは、内構成部材19の案内部25の上端部25bと上下方向に重なるように設けられ、内構成部材19と外構成部材20とが最も近接した状態で、案内部25の上端部25bに対してごく微少な隙間を保って近接するように形成されている。また、折返し部20cは、内構成部材19と外構成部材20とが最も近接した状態で、案内部25の上端部25bと水平方向に重なるように形成されている。
【0042】
第1および第2昇降駆動機構21,42は、内構成部材19を降下させ、外構成部材20を上昇させることにより、外構成部材20の内周面をスピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に対向させることができる。すなわち、図2に示すように、内構成部材19が下方位置に配置され、外構成部材20が上方位置に配置されることにより、内構成部材19の案内部25の上端部25bと外構成部材20の上端部20bとの間に、ウエハWの周端面に対向する開口が形成される。これにより、外構成部材20の内周面がスピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に対向される。
【0043】
また、第1および第2昇降駆動機構21,42は、内構成部材19および外構成部材20を上昇させることにより、内構成部材19の内周面(案内部25の内周面)をスピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に対向させることができる。すなわち、図3に示すように、内構成部材19および外構成部材20がそれぞれ上方位置に配置されることにより、案内部25の内周面がスピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に対向される。これにより、内構成部材19の内周面がスピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に対向される。
【0044】
本実施形態では、ウエハWの周端面に外構成部材20の内周面が対向された状態で、スピンチャック3により回転されるウエハWの上面に処理液ノズル4から薬液が供給される。したがって、ウエハWの回転によりその周囲に飛散する薬液は、案内部25の上端部25bと外構成部材20の上端部20bとの間に飛入して、外構成部材20の内周面により受け止められる。そして、外構成部材20の内周面により受け止められた薬液は、流下して回収溝26に導かれる。これにより、ウエハWの処理に使用された薬液が回収溝26に導かれる。
【0045】
また、本実施形態では、ウエハWの周端面に内構成部材19の内周面が対向された状態で、スピンチャック3により回転されるウエハWの上面に処理液ノズル4からリンス液またはIPAが供給される。したがって、ウエハWの回転によりその周囲に飛散するリンス液およびIPAは、案内部25の内周面により受け止められる。案内部25の内周面により受け止められたリンス液およびIPAは、流下して廃棄溝27に導かれる。また、ウエハWの周縁から流下するリンス液およびIPAは、廃棄溝27に直接飛入する。これにより、ウエハWの処理に使用されたリンス液およびIPAが廃棄溝27に導かれる。
【0046】
図4は、洗浄ノズル38の一部を拡大した図である。以下では、図3および図4を参照して、洗浄ノズル38について説明する。
各洗浄ノズル38は、内構成部材19に対して、内構成部材19の底部22から斜め上方に挿入されている。各洗浄ノズル38の先端部は溝底面28の傾斜面35から突出している。各洗浄ノズル38の先端部は廃棄溝27内に位置している。各洗浄ノズル38は、たとえば、先端が封止された円筒状をなしている。
【0047】
各洗浄ノズル38からは、当該洗浄ノズル38の中心軸線に直交するとともに、当該中心軸線上の点を中心とする十字方向(4方向)に洗浄液が吐出される。すなわち、各洗浄ノズル38の先端部には、当該洗浄ノズル38の周方向に等間隔を隔てて配置された4つの吐出口43が形成されている。洗浄ノズル38の径方向に対向する一対の吐出口43,43からは、互いに逆方向に洗浄液が吐出される。
【0048】
洗浄液の吐出方向である十字方向のうち2つの方向(上下2つの吐出口43からの吐出方向)は、傾斜面35とほぼ平行であるとともに、廃棄溝27の周方向に沿わされている。また、前記十字方向のうち残る2つの方向(左右2つの吐出口43からの吐出方向)は、傾斜面35とほぼ平行であるとともに、平面視において廃棄溝27の径方向に沿わされている。すなわち、各洗浄ノズル38は、傾斜面35と平行であり廃棄溝27内における処理液の流通方向とほぼ平行な2方向と、傾斜面35と平行であり前記処理液の流通方向に直交する2方向とに洗浄液を吐出するように配置されている。
【0049】
図5は、廃棄溝27の周方向に沿って展開した溝底面28の断面および一対の洗浄ノズル38,38の配置を示す模式図である。この図5において、横軸は廃棄溝27の周方向を示しており、縦軸は高さを示している。この横軸における0度の位置が頂部36となっており、±180度の位置が底辺部37となっている。廃棄溝27の周方向に沿って展開した溝底面28の断面は、たとえば、頂部36を頂点とした山形となっている。
【0050】
以下では、図3および図5を参照して、洗浄ノズル38によるカップ5の洗浄について説明する。また、以下では、溝底面28に沿って頂部36から底辺部37に向かう右回り方向を右側といい、左回り方向を左側という。
各洗浄ノズル38の上下2つの吐出口43からは、傾斜面35と平行であり廃棄溝27内における処理液の流通方向に直交する方向に洗浄液が吐出される。この洗浄液は、溝底面28における頂部36を含む範囲に着液する。より具体的には、頂部36の右側に配置された洗浄ノズル38の上下2つの吐出口43から吐出された洗浄液は、頂部36および溝底面28における頂部36よりも僅かに右側の位置に着液する。また、頂部36の左側に配置された洗浄ノズル38の上下2つの吐出口43から吐出された洗浄液は、頂部36および溝底面28における頂部36よりも僅かに左側の位置に着液する。
【0051】
頂部36に着液した洗浄液は、溝底面28に沿って右側または左側に流れていく。また、溝底面28における頂部36よりも僅かに右側の位置に着液した洗浄液は、溝底面28に沿って右側に流れていく。また、溝底面28における頂部36よりも僅かに左側の位置に着液した洗浄液は、溝底面28に沿って左側に流れていく。頂部36から底辺部37に向けて洗浄液が溝底面28に沿って流れていくことで、溝底面28の全域に洗浄液が供給される。これにより、廃棄溝27内の処理液が洗い流され、廃棄溝27内が洗浄される。
【0052】
本実施形態では、頂部36の近傍であり、かつ、廃棄溝27の周方向に頂部36を挟んだ両側に一対の洗浄ノズル38,38が設けられているので、溝底面28における頂部36を挟んだ左右両側の位置に洗浄液が確実に供給される。したがって、廃棄溝27内における2つのルートに洗浄液が確実に供給される。これにより、廃棄溝27内の全域が確実に洗浄される。
【0053】
一方、各洗浄ノズル38の左右2つの吐出口43からは、傾斜面35と平行であり廃棄溝27内における処理液の流通方向に沿う方向に洗浄液が吐出される。より具体的には、図5に示すように、頂部36の右側に配置された洗浄ノズル38の左右2つの吐出口43からは、右側の溝底面28とほぼ平行であり、廃棄溝27内における処理液の流通方向に沿う方向に洗浄液が吐出される。また、図5に示すように、頂部36の左側に配置された洗浄ノズル38の左右2つの吐出口43からは、左側の溝底面28とほぼ平行であり、廃棄溝27内における処理液の流通方向に沿う方向に洗浄液が吐出される。
【0054】
処理液の流通方向に沿って吐出された洗浄液は、右側または左側の溝底面28に着液し、溝底面28に沿って流れていく。また、処理液の流通方向に沿う方向に吐出された洗浄液には、底辺部37に向かう勢いが付与されているので、この洗浄液が溝底面28に着液することにより、底辺部37に向かう洗浄液の流れが廃棄溝27内に形成される。
本実施形態では、各洗浄ノズル38から吐出された洗浄液により、底辺部37に向かう洗浄液の流れが廃棄溝27内に形成されるので、廃棄溝27内に導かれた処理液が、確実に底辺部37に流れていく。したがって、廃棄溝27内に導かれる処理液が少量であったとしても、洗浄液の流れにより処理液が押し流され、当該処理液が確実に排液口32に導かれる。これにより、廃棄溝27内に導かれた処理液が確実に排液される。
【0055】
また、本実施形態では、傾斜面35とほぼ平行な方向に各洗浄ノズル38から洗浄液が吐出されるので、吐出された洗浄液が確実に傾斜面35を伝って廃棄溝27内に供給される。すなわち、たとえば装置の隙間や回転機構などの洗浄液が進入してはいけない部分に、各洗浄ノズル38から吐出された洗浄液が進入することが抑制されている。
図6は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【0056】
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御部44を備えている。この制御部44には、薬液バルブ16、リンス液バルブ17、IPAバルブ18、洗浄液バルブ41ならびに第1および第2昇降駆動機構21,42が制御対象として接続されている。
図7は、基板処理装置1によるウエハWの処理の一例を説明するための工程図である。また、図8は、ウエハWの処理の一例における各バルブ6,7,8,41の開閉状態およびスピンチャック3によるウエハWの回転速度を示すグラフである。
【0057】
処理対象のウエハWは、内構成部材19および外構成部材20が下方位置に配置された状態で処理室2内に搬入され、たとえば、デバイス形成面であるウエハWの表面を上に向けてスピンチャック3に保持される(ステップS1)。ウエハWがスピンチャック3に保持されると、制御部44により第2昇降駆動機構42が制御されて、外構成部材20が上方位置まで上昇される。これにより、内構成部材19の案内部25の上端部25bと外構成部材20の上端部20bとの間に、ウエハWの周端面に対向する開口が形成される(図2参照)。
【0058】
次いで、制御部44によりモータ7が制御されて、所定の回転速度(たとえば800rpm)でスピンチャック3に保持されたウエハWが回転される(ステップS2)。その後、制御部44により薬液バルブ16が開かれて、ウエハWの上面に向けて薬液(たとえばフッ酸)が吐出される(ステップS3)。処理液ノズル4から吐出された薬液は、ウエハWの上面の回転中心を含む範囲に着液し、その後、ウエハWの回転による遠心力を受けて周縁に向かって広がっていく。これにより、ウエハWの上面全域に薬液が供給され、薬液処理がウエハWの上面に行われる。
【0059】
一方、ウエハWの周縁に達した薬液はウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られる。さらに、ウエハWの周囲に振り切られた薬液は、案内部25の上端部25bと外構成部材20の上端部20bとの間に飛入して、回収溝26に導かれる。これにより、ウエハWの処理に使用された薬液が回収溝26に導かれる。
薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御部44により薬液バルブ16が閉じられて、処理液ノズル4からウエハWへの薬液の供給が停止される(ステップS4)。そして、制御部44により第1昇降駆動機構21が制御されて、内構成部材19が上方位置まで上昇される(図3参照)。これにより、案内部25の内周面がスピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に対向される。
【0060】
案内部25の内周面がスピンチャック3に保持されたウエハWの周端面に対向されると、制御部44によりリンス液バルブ17が開かれて、処理液ノズル4からウエハWの上面に向けてリンス液(たとえば純水)が吐出される(ステップS5)。処理液ノズル4から吐出されたリンス液は、ウエハWの上面の回転中心を含む範囲に着液し、その後、ウエハWの回転による遠心力を受けて周縁に向かって広がっていく。これにより、ウエハWの上面全域にリンス液が供給され、ウエハW上の薬液を洗い流すリンス処理がウエハWの上面に行われる。なお、リンス液が吐出される前に、制御部44によりモータ7が制御されて、薬液処理時よりも低速の回転速度(たとえば600rpm)でスピンチャック3に保持されたウエハWが回転された状態でリンス処理が行われる。
【0061】
また、リンス液によりウエハW上から洗い流される薬液や、ウエハWの周縁に達した後にウエハWから排出されるリンス液は、案内部25の内周面に受け止められたり、廃棄溝27に直接飛入したりして、廃棄溝27に導かれる。これにより、ウエハWの処理に使用された薬液およびリンス液が廃棄溝27に導かれる。
また、このとき案内部25の上端部25bおよび外構成部材20の上端部20bはごく微小な隙間を保った状態で近接しており、外構成部材20の折返し部20cは案内部25の上端部25bと水平方向において重なっている。したがって、案内部25と外構成部材20との間にリンス液が進入することが防止されている。これにより、回収溝26内で、薬液とリンス液とが混触することが防止されている。
【0062】
リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御部44によりリンス液バルブ17が閉じられて、処理液ノズル4からウエハWへのリンス液の供給が停止される(ステップS6)。そして、制御部44によりIPAバルブ18および洗浄液バルブ41が、たとえば同時に開かれる(ステップS7)。これにより、処理液ノズル4からIPAが吐出され、一対の洗浄ノズル38,38から洗浄液(たとえば純水)が吐出される。
【0063】
一対の洗浄ノズル38,38から吐出された洗浄液は、溝底面28における頂部36を含む範囲に着液する。そして、溝底面28に着液した洗浄液は、溝底面28の傾斜によって、排液口32が形成された底辺部37に向けて廃棄溝27の周方向に流れていく。これにより、溝底面28の全域に洗浄液が供給される。また、各洗浄ノズル38からは廃棄溝27の周方向に沿う方向に洗浄液が吐出されるので、廃棄溝27内に底辺部37に向かう洗浄液の流れが形成される。
【0064】
一方、処理液ノズル4から吐出されたIPAは、ウエハWの上面の回転中心を含む範囲に着液する。そして、ウエハWの回転による遠心力を受けて周縁に向かって広がっていく。これにより、ウエハWの上面全域にIPAが供給され、ウエハWの上のリンス液がIPAによって洗い流される。IPAは、この処理の一例でリンス液として用いられている純水を容易に溶け込ませることができる有機溶剤である。したがって、ウエハW上に付着しているリンス液にIPAが溶け込みつつ、ウエハW上のリンス液をIPAに置換する置換処理がウエハWの上面に行われる(処理工程)。
【0065】
また、IPAによりウエハW上から洗い流されるリンス液や、ウエハWの周縁に達した後にウエハWから排出されるIPAは、案内部25の内周面に受け止められたり、廃棄溝27に直接飛入したりして、廃棄溝27に導かれる。これにより、ウエハWの処理に使用されたリンス液およびIPAが廃棄溝27に導かれる。
前述のように、廃棄溝27には洗浄液が供給されており、廃棄溝27内には、底辺部37に向かう洗浄液の流れが形成されている。そのため、廃棄溝27に導かれたリンス液およびIPAは、洗浄液によって速やかに洗い流され、排液口32を介してカップ5内から排液される(洗浄工程)。これにより、IPAによる処理が終了した後も、リンス液およびIPAが廃棄溝27内に残留することを抑制でき、廃棄溝27に導かれたリンス液およびIPAが廃棄溝27内で蒸発して、リンス液およびIPAの蒸気が発生することが抑制されている。また、リンス液およびIPAは、廃棄溝27に到達するとすぐに洗い流されるので、リンス液およびIPAが洗い流されるまでの間に、リンス液およびIPAの蒸気が発生することが抑制または防止されている。
【0066】
IPAバルブ18が開かれてから所定時間が経過すると、制御部44によりIPAバルブ18が閉じられる(ステップS8)。
また、洗浄液バルブ41は開かれており、一対の洗浄ノズル38,38からの洗浄液の吐出は継続されている。すなわち、制御部44は、処理液ノズル4からのIPAの吐出を停止させた状態で、一対の洗浄ノズル38,38から洗浄液を吐出させている(後洗浄工程)。
【0067】
IPAバルブ18が閉じられると、制御部44によりモータ7が制御されて、ウエハWの回転速度が所定の高回転速度(たとえば3000rpm)に変更される(ステップS9)。これにより、ウエハW上に付着しているIPAがウエハWの周囲に振り切られる。したがって、ウエハWの上面はリンス液が完全に除去された状態で乾燥される。これにより、ウエハWの上面にウォータマークなどの乾燥不良が発生することが抑制されている。また、IPAは、揮発性の高い有機溶剤であるので、ウエハWの乾燥に要する時間が短縮されている。
【0068】
一方、ウエハWが高速回転される間、洗浄液バルブ41は開かれており、一対の洗浄ノズル38,38からの洗浄液の吐出は継続されている。すなわち、制御部44は、処理液ノズル4からのIPAの吐出を停止させた状態で、一対の洗浄ノズル38,38から洗浄液を吐出させる後洗浄工程を継続して行わせている。したがって、廃棄溝27内には底辺部37に向かう洗浄液の流れが形成されており、ウエハWから振り切られて廃棄溝27に導かれたIPAは、洗浄液によって速やかに洗い流される。これにより、廃棄溝27に導かれたIPAが排液口32を介して廃棄溝27内から排液される。
【0069】
IPAは、揮発性が高く蒸発しやすい有機溶剤である。したがって、廃棄溝27に導かれたIPAを速やかに洗い流すことで、廃棄溝27内にIPAの蒸気が発生することを確実に抑制または防止することができる。これにより、ウエハWから排出されたIPAが、蒸気となって処理室2内に広がることが抑制または防止される。
ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられると、制御部44によりモータ7が停止されて、スピンチャック3によるウエハWの回転が停止される(ステップS10)。そして、制御部44により洗浄液バルブ41が閉じられて、洗浄ノズル38から廃棄溝27への洗浄液の供給が停止される(ステップS11)。また、制御部44により第1および第2昇降駆動機構21,42が制御されて、内構成部材19および外構成部材20がそれぞれの下方位置まで降下される。その後、処理済みのウエハWが処理室2から搬出されていく(ステップS12)。
【0070】
以上のように本実施形態では、ウエハWの処理において、処理液ノズル4からIPAを吐出させつつ、一対の洗浄ノズル38,38から洗浄液を吐出させる(ステップS7〜S8)。また、それに続いて、処理液ノズル4からのIPAの吐出を停止させた状態で、一対の洗浄ノズル38,38から洗浄液を吐出させる(ステップS8〜S11)。
処理液ノズル4からIPAを吐出させつつ、一対の洗浄ノズル38,38から洗浄液を吐出させることにより、ウエハWから排出され廃棄溝27に導かれたIPAを速やかに洗い流して、排液口32から排液させることができる。これにより、ウエハWから排出されたIPAが廃棄溝27内に残留することにより廃棄溝27内にIPAの蒸気が発生することを抑制または防止することができる。これにより、ウエハWから排出されたIPAが、蒸気となって処理室2内に広がることが抑制または防止される。
【0071】
また、処理液ノズル4からのIPAの吐出を停止させた状態で、一対の洗浄ノズル38,38から洗浄液を吐出させることにより、処理液ノズル4からのIPAの吐出が停止された後も、引き続きカップ5内を洗浄することができる。これにより、処理液ノズル4からのIPAの吐出が停止された後に、廃棄溝27内でIPAの蒸気が発生することを抑制または防止することができる。
【0072】
IPAは、引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤である。そのため、このような有機溶剤の蒸気が処理室2内に広がることは好ましくない。なお、溝底面28に形成された複数の排気口31からカップ5内を常時排気しているので、IPAの蒸気が発生したとしても、IPAの蒸気が処理室2内に広がることを基本的には抑制または防止することができるが、本実施形態のように、カップ5内を洗浄することでIPAの蒸気の発生を抑制することにより、このような有機溶剤の蒸気が処理室2内に広がることを確実に抑制または防止することができる。
【0073】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、一対の洗浄ノズル38,38が、洗浄液を吐出するための洗浄ノズルとして用いられている場合について説明したが、これに限らない。すなわち、図9に示すように、内構成部材19の案内部25の内周面に沿って廃棄溝27の周方向に延びる環状の配管45が前記洗浄ノズルとして用いられてもよい。この図9において、前述の図1〜図8に示された各部と同等の構成部分については、図1〜図8と同一の参照符号を付している。
【0074】
配管45には、洗浄液を吐出するための複数の吐出口46が形成されている。これらの吐出口46は、配管45の長手方向に所定間隔を隔てて並んで配置されている。また、これらの吐出口46は、配管45の断面中心を挟んで対向するように、配管45の一方側(上側)および他方側(下側)に配置されている。配管45からは互いに逆方向となる二方向に洗浄液が吐出される。配管45は、洗浄液の吐出方向が案内部25の内周面に沿うように、保持部材47によって案内部25の内側で保持されている。
【0075】
配管45から吐出された洗浄液は、廃棄溝27内における周方向に離れた複数の位置に直接着液する。したがって、廃棄溝27内における複数の位置に確実に洗浄液が供給され、これらの位置が確実に洗浄される。そのため、ウエハWから排出された処理液(IPA等)の蒸気の発生が確実に抑制または防止される。
また、前述の実施形態では、IPAが、引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤を含む処理液として用いられている場合について説明したが、これに限らない。すなわち、たとえばメタノールやエタノール等のアルコール系の有機溶剤が、前記有機溶剤を含む処理液として用いられていてもよい。また、これらの有機溶剤と他の処理液との混合液が、前記有機溶剤を含む処理液として用いられていてもよい。
【0076】
また、前述のウエハWの処理の一例(ステップS7)では、制御部44によりIPAバルブ18および洗浄液バルブ41が同時に開かれる場合について説明したが、これに限らず、たとえば、IPAバルブ18が開かれる前に洗浄液バルブ41が開かれてもよい。すなわち、制御部44は、前記置換処理(処理工程)を行わせる前に、処理液ノズル4からの処理液の吐出を停止させた状態で、洗浄ノズル38から洗浄液を吐出させてカップ5内を洗浄する前洗浄工程を行わせてもよい。この場合、溝底面28にIPAが付着することを抑制または防止することができる。
【0077】
すなわち、IPAバルブ18よりも先に洗浄液バルブ41を開くことで、溝底面28を予め洗浄液で覆うことができる。したがって、ウエハWから排出されたIPAは、洗浄液によって溝底面28がコーティングされた状態で廃棄溝27内に導かれる。これにより、IPAが溝底面28に接触することが抑制または防止され、溝底面28にIPAが付着することが抑制または防止される。
【0078】
また、前述の実施形態では、処理対象となる基板としてウエハWを取り上げたが、ウエハWに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】前記基板処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】前記基板処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】洗浄ノズルの一部を拡大した図である。
【図5】廃棄溝の周方向に沿って展開した溝底面の断面および一対の洗浄ノズルの配置を示す模式図である。
【図6】前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図7】前記基板処理装置によるウエハの処理の一例を説明するための工程図である。
【図8】前記ウエハの処理の一例における各バルブの開閉状態およびスピンチャックによるウエハの回転速度を示すグラフである。
【図9】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 基板処理装置
3 スピンチャック(基板保持手段)
4 処理液ノズル
5 カップ
12 処理液供給管(処理液供給手段)
27 廃棄溝(溝、環状溝)
28 溝底面
32 排液口
36 頂部(溝底面における最も高さが高い部分)
38 洗浄ノズル
39 洗浄液供給管(洗浄液供給手段)
44 制御部(制御手段)
45 配管(洗浄液ノズル)
46 吐出口(複数の吐出口)
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するための基板保持手段と、
引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤を含む処理液を、前記基板保持手段に保持された基板に向けて吐出するための処理液ノズルと、
この処理液ノズルに処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板から排出される処理液を受け止めるための内壁面を有し、受け止められた処理液が導かれる溝と、この溝に導かれた処理液が排液される排液口とが前記内壁面に形成されたカップと、
このカップの前記内壁面に向けて洗浄液を吐出するための洗浄ノズルと、
この洗浄ノズルに洗浄液を供給するための洗浄液供給手段と、
前記処理液供給手段および洗浄液供給手段を制御して、前記処理液ノズルから処理液を吐出させて前記基板保持手段に保持された基板を処理する処理工程と、この処理工程と並行して前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させて前記カップの内壁面を洗浄する洗浄工程とを行わせるための制御手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記洗浄工程を行わせた後、前記処理液ノズルからの処理液の吐出を停止させた状態で、前記洗浄ノズルから洗浄液を吐出させてカップ内を洗浄する後洗浄工程をさらに行わせるものである、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記溝が、当該溝に導かれた処理液が前記排液口に向けて流れるように高低差が設けられた溝底面を有しており、
前記洗浄ノズルは、前記溝底面における最も高さが高い部分を含む範囲に向けて洗浄液を吐出するものである、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記洗浄ノズルは、前記溝底面における最も高さが高い位置を挟んで一対設けられている、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記溝は、前記基板保持手段を取り囲む環状溝を含み、
前記溝底面は、前記環状溝の中心を挟んで前記排液口に対向する位置が最も高くされている、請求項3または4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記洗浄ノズルは、前記溝内における処理液の流通方向に沿って洗浄液を吐出するものである、請求項1〜5の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記洗浄ノズルは、前記溝内における処理液の流通方向に沿って配置された複数の吐出口を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
引火点が常温以下である可燃性の有機溶剤を含む処理液を、基板保持手段に保持された基板に向けて処理ノズルから吐出させて当該基板を処理する処理工程と、
この処理工程と並行して実施され、前記基板保持手段に保持された基板から排出される処理液を受け止めるためのカップの内壁面に向けて洗浄ノズルから洗浄液を吐出させてカップ内を洗浄する洗浄工程とを含む、基板処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−206359(P2009−206359A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48426(P2008−48426)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】