説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】Wet処理中のみならず、Wet処理後においても基板へのイオンコンタミネーションを防止する。
【解決手段】薬液に由来して処理チャンバ内に拡散するイオンを検出し、検出されたイオンの量が予め設定した数値範囲内にあるかどうかを判定し、検出されたイオンの量が該数値範囲の上限を超える場合に、処理チャンバ内への吸気量および処理チャンバからの排気量を調整することにより処理チャンバ内のイオンを排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置および基板処理方法に関し、例えばWet処理後の基板へのイオンコンタミネーション防止を対象とする。
【背景技術】
【0002】
基板のWet処理においては、処理中に基板表面に誘導帯電を含めた静電気が発生し、これによりイオンが基板に再付着するという問題があり、これを解決するため、基板の周囲に紫外線やイオンを照射することにより基板の帯電を防止することが提案されている(例えば特許文献1および2)。
【0003】
しかしながら、薬液吐出から水洗・乾燥を経て搬出されるまでの間に薬液に由来して発生し処理チャンバ内に拡散したイオン成分が基板表面に残留し、FOUP(Front Open Unified Pod)内に積載されて放置されている間に、上下に隣接する他の基板の表面に残留イオンが転写して汚染が拡大する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−116542
【特許文献2】特開2005−005469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、Wet処理中のみならず、Wet処理後においても基板へのイオンコンタミネーションを防止する基板処理装置および基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
基板を支持して回転駆動する支持手段と、洗浄液を前記基板に供給する洗浄液供給手段と、が設けられて前記基板にWet処理を行う処理チャンバと、
前記処理チャンバに空気を供給する吸気手段と、
前記処理チャンバから空気を排気する排気手段と、
前記洗浄液から発生し、前記処理チャンバ内に拡散するイオンを検出するイオン検出手段と、
検出されたイオンの量が予め設定した数値範囲内にあるかどうかを判定する判定手段と、
検出されたイオンの量が前記数値範囲の上限を超える場合に、前記吸気手段および前記排気手段を制御して前記処理チャンバ内のイオンの量を調整する制御手段と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の態様によれば、
基板を支持して回転駆動する支持手段と、洗浄液を前記基板に供給する洗浄液供給手段と、が設けられた処理チャンバを備えるWet処理可能な基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記処理チャンバに基板を搬入してWet処理を行う工程と、
前記洗浄液から発生し、前記処理チャンバ内に拡散するイオンを検出する工程と、
検出されたイオンの量が予め設定した数値範囲内にあるかどうかを判定する工程と、
前記検出されたイオンの量が前記数値範囲の上限を超える場合に、前記処理チャンバ内への吸気および前記処理チャンバからの排気により前記処理チャンバ内のイオンの量を調整する工程と、
を備える基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、Wet処理中のみならず、Wet処理後においても基板へのイオンコンタミネーションを防止すること可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の一形態による基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の一形態による基板処理方法の概略手順を示すフローチャートである。
【図3】処理対象である基板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について説明する前に、本願発明者が本発明に想到した経緯について簡単に説明する。
【0011】
前述したとおり、Wet処理中での基板へのイオンコンタミネーションは従来から問題視され、その解決手段もいくつか提案されてきた。
【0012】
しかしながら、Wet処理後における基板へのイオンコンタミネーションは問題にされることがなく、これに関心を寄せる技術者もいなかった。
【0013】
この一方、Wet処理が完了した基板について、必ずしも即座に次工程に移行するとは限らず、個々の製造プロセスの進捗状況に応じてFOUP内に積載されたまま待機する場合もある。待機後に次の処理を施す場合、基板の上面に形成された配線パターンが汚染しており、これにより歩留まりが低下する可能性があることが分かった。詳細に調査した結果、基板の上面に形成された金属配線が露出している状態で裏面洗浄を行い、薬液処理終了から水洗・乾燥を経て払い出しされるまでの間に処理チャンバ内に拡散したイオン成分が基板の裏面に残留し、待機期間中にFOUP内で直下の他の基板の上面に残留イオンが転写し、これにより基板上面の配線パターンが汚染していることが判明した。
【0014】
本願発明者は、このような経緯からWet処理中だけでなく、Wet処理後においても基板へのイオンコンタミネーションを防止する必要性を強く認識し、上述した通りの解決手段を導出した。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の各図において同一の部分には同一の参照番号を付し、その重複説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施の一形態による基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示す基板処理装置1は、処理チャンバ10と、FFU(Fan Filter Unit)20と、チャンバ排気ユニット30a,30bと、カップ排気ユニット90と、イオン検出器40,42a,42b,92と、制御コンピュータ50と、FFU制御部60と、チャンバ/カップ排気量調整部70と、表示部80とを備える。
【0017】
処理チャンバ10は、処理対象である基板Wを支持すると共に基板Wを回転駆動する基板ステージ12と、カップ18と、薬液を供給して基板Wの裏面に吐出する薬液ノズル22と、不活性ガス供給パイプ14と、薬液ミストの基板Wへの再付着を防止する遮蔽板16と、を含む。
【0018】
FFU20は、処理チャンバ10の頂面に取り付けられ、フィルタによりダストを濾過しながらファンにより処理チャンバ10へ空気を吸入する。
【0019】
チャンバ排気ユニット30a,30bは、基板ステージ12の近傍に設けられた排気ダクトから処理チャンバ10内の空気を排出する。
【0020】
カップ排気ユニット90は、カップ18内に設けられた排気ダクトからカップ内の空気を排出する。
【0021】
イオン検出器40は、薬液に由来して処理チャンバ10内に拡散するイオンを検出し、検出結果を制御コンピュータ50に送る。また、イオン検出器42a,42bはチャンバ排気ユニット30a,30bから排出される空気中のイオンをそれぞれ検出し、イオン検出器92はカップ排気ユニット90から排出される空気中のイオンを検出し、それぞれ検出結果を制御コンピュータ50に送る。
【0022】
制御コンピュータ50は、イオン検出器40,42a,42b,92の他、FFU制御部60、チャンバ/カップ排気量調整部70および表示部80にも接続されて次記するようにこれらの構成要素を制御する。
【0023】
制御コンピュータ50は、予め設定されメモリMR1に格納された数値範囲をメモリMR1から取り出し、イオン検出器40,42a,42b,92から送られる各検出結果と比較して該各検出結果がその数値範囲内にあるか否かを判定する。
【0024】
制御コンピュータ50は、イオンの検出結果が予め設定された数値範囲の上限を超えていると判定した場合に、制御信号を生成してFFU制御部60およびチャンバ/カップ排気量調整部70に供給する。FFU制御部60はFFU20に接続され、制御コンピュータ50から送られた制御信号に従ってFFU20のファンの風量を調整させる。また、チャンバ/カップ排気量調整部70はチャンバ排気ユニット30a,30bおよびカップ排気ユニット90に接続され、制御コンピュータ50から送られた制御信号に従ってチャンバ排気ユニット30a,30bおよびカップ排気ユニット90の各バルブVEを調整させる。これにより処理チャンバ10内に拡散するイオンが速やかに排出し、処理チャンバ10内の雰囲気を清浄な状態に保ち、イオンコンタミネーションを防止する。本実施形態において、制御コンピュータ50は例えば判定手段および制御手段に対応し、FFU20およびFFU制御部60は例えば吸気手段に対応し、チャンバ/カップ排気量調整部70、チャンバ排気ユニット30a,30bおよびカップ排気ユニット90は例えば排気手段に対応し、さらに、薬液ノズル22は洗浄液供給手段に対応する。
【0025】
制御コンピュータ50はまた、イオンの検出結果が予め設定された数値範囲の上限を超えていると判定した場合に、Wet処理が終了した後であっても、基板Wの処理チャンバ10からの搬出を禁止する旨の警告信号を生成し、表示部80に表示させてオペレータの注意を喚起する。また、同一の基板処理装置1にて連続する処理を行う場合には、制御コンピュータ50は次工程の処理への移行を禁止する旨の警告信号を生成して表示部80に表示させる。
【0026】
基板処理装置1は、通常動作モードと省電力モードとを有する。イオンの検出結果が予め設定された数値範囲の下限を下回っていると制御コンピュータ50が判定した場合、制御コンピュータ50はモード切替信号を生成して図示しない切換手段に供給する。これにより、基板処理装置1は省電力モードに切り替わる。
【0027】
基板処理装置1を用いた基板処理方法について図2のフローチャートを参照しながら簡単に説明する。
【0028】
まず、基板Wを処理チャンバ10のカップ18内に搬入し(ステップS1)、ステージ12により両側を保持させる。基板Wは、例えば図3の断面図に示すように、上面に成膜された炭素を含有する絶縁膜、例えばSiOC膜、SiCN膜、SiONC膜等のLow−k膜110と、Low−k膜110内に形成された銅(Cu)配線100と、基板Wの裏面に成膜された窒化膜または酸化膜等の絶縁膜130とを備え、銅(Cu)配線100は基板Wの上面に露出した状態となっている。銅(Cu)配線100は、ストッパ膜120をエッチングストッパとしてレジストを用いたパターニングによりLow−k膜110内にビア(Via)およびトレンチを形成した後、バリアメタルを成膜し、その後銅(Cu)メッキで埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により上面を平坦にすることにより形成可能である。本実施形態において、基板Wの上面は例えば第1の面に対応し、基板Wの裏面は例えば第2の面に対応する。なお、基板Wは、半導体基板の他、ガラス基板やセラミック基板も使用可能である。また、配線100の材料も銅(Cu)に限ることは決してなく、他の金属材料による配線にも適用可能である。
【0029】
続いて、ステージ12を回転させながらWet処理を開始するとともにイオン検出器40,42a,42b,92により処理チャンバ10内のイオンを検出する(ステップS2)。このイオン検出はWet処理が終了した後も基板Wを処理チャンバ10から搬出するまで継続して行う(ステップS8、S9)。Wet処理の薬液として、例えば塩化水素(HCl)および過酸化水素水(H)を使用し、裏面に付着した余分な金属不純物を洗浄する。
【0030】
同時に、不活性ガス供給パイプ14から不活計ガス、例えば窒素(N)を基板Wの上面に継続的に吹き付け、これにより、裏面に向けて吐出された薬液(塩化水素(HCl)および過酸化水素水(H))が基板Wの上面の銅(Cu)配線100へ回り込むことを防止する。
【0031】
次に、検出したイオンの量を予め設定した数値範囲と比較し、その上限を超えている場合には(ステップS3)、制御コンピュータ50、FFU制御部60およびチャンバ/カップ排気量調整部70により、FFU20による吸気量、チャンバ排気ユニット30a,30bおよびカップ排気ユニット90による排気量を、例えば処理チャンバ10内の塩素イオン(Cl)濃度が1ppb以下になるまで調整する(ステップS4)。
【0032】
次に、Wet処理が終了し、検出したイオンの量が、上記数値範囲の下限を下回ることとなった場合には、基板処理装置1の動作モードを省電力モードに切り換える(ステップS7)。
【0033】
同一処理チャンバを用いた次工程、例えば超純水によるリンス工程、スピンドライによる乾燥工程などがある場合には(ステップS8)、次工程に移行し(ステップS9)、次工程が無い場合には、基板Wを処理チャンバ10から搬出する(ステップS10)。
【0034】
本実施形態によれば、例えば塩素イオン(Cl)(実際には塩化水素(HCl)のガス成分)の処理チャンバ10内の量を常にモニタし、所定の上限値を超えると吸排気量を調整して処理チャンバ10の外部に排出するので、塩素イオン(Cl)(または塩素(Cl)系ミスト)による基板Wへのセルフコンタミネーションが防止され、FOUP内に積載されたまま待機する場合があっても、下方の基板Wの上面の金属配線へのイオン吸着が抑制されてクロスコンタミネーションを防止できる。これにより、基板Wの表面および裏面への塩素イオン(Cl)(または塩素(Cl)系ミスト)の吸着がなくなるので、製品歩留まりの低下を防止することができる。
【0035】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、本発明は上記形態に限るものでは決してなく、その技術的範囲内において種々変更して実施できることは勿論である。例えば、図2に示すフローチャートでは吸気量および排気量の調整後にWet処理が終了することとしたが、この順序に限るものでは決してなく、例えばステップS3の前にWet処理が終了しても、ステップ6の後にWet処理が終了する場合にも適用可能である。また、Wet処理の薬液として、塩化水素(HCl)を用いる場合を例に挙げたが、これに限るものでは決してなく、塩化水素(HCl)以外の酸系またはアルカリ系の薬液も使用可能である。また、上記実施形態では裏面を洗浄する形態について説明したが、金属材料が表面に露出している状態で、酸系またはアルカリ系のWet処理を行う全てのプロセスに適用可能である。さらに、上記実施形態では、一例として塩素イオン(Cl)について説明したが、これに限ることなく、全てのイオン種に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:基板処理装置
10:処理チャンバ
20:FFU
22:薬液ノズル
30a,30b:チャンバ排気ユニット
90:カップ排気ユニット
40,42a,42b,92:イオン検出器
50:制御コンピュータ
60:FFU制御部
70:チャンバ/カップ排気量調整部
80:表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持して回転駆動する支持手段と、洗浄液を前記基板に供給する洗浄液供給手段と、が設けられて前記基板にWet処理を行う処理チャンバと、
前記処理チャンバに空気を供給する吸気手段と、
前記処理チャンバから空気を排気する排気手段と、
前記洗浄液から発生し、前記処理チャンバ内に拡散するイオンを検出するイオン検出手段と、
検出されたイオンの量が予め設定した数値範囲内にあるかどうかを判定する判定手段と、
検出されたイオンの量が前記数値範囲の上限を超える場合に、前記吸気手段および前記排気手段を制御して前記処理チャンバ内のイオンの量を調整する制御手段と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記検出されたイオンの量が前記数値範囲の上限を超える場合に、前記吸気手段および前記排気手段により前記検出されたイオンの量が予め設定した数値範囲内に収まるまで前記基板の前記処理チャンバからの搬出または引き続く処理への移行を禁止する警告を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出されたイオンの量が前記数値範囲の下限を下回る場合に、基板処理装置の動作モードを通常処理モードから省電力モードに切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を支持して回転駆動する支持手段と、洗浄液を前記基板に供給する洗浄液供給手段と、が設けられた処理チャンバを備えるWet処理可能な基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記処理チャンバに基板を搬入してWet処理を行う工程と、
前記洗浄液から発生し、前記処理チャンバ内に拡散するイオンを検出する工程と、
検出されたイオンの量が予め設定した数値範囲内にあるかどうかを判定する工程と、
前記検出されたイオンの量が前記数値範囲の上限を超える場合に、前記処理チャンバ内への吸気および前記処理チャンバからの排気により前記処理チャンバ内のイオンの量を調整する工程と、
を備える基板処理方法。
【請求項5】
前記基板は金属配線パターンが形成された第1の面と、前記第1の面とは逆の裏面とを有し、
前記金属配線パターンは、前記基板の前記第1の面で露出し、
前記Wet処理は、前記基板の前記裏面への洗浄処理を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−206086(P2010−206086A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52121(P2009−52121)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】