説明

基板処理装置

【課題】基板の処理品質を向上させることができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板処理装置1は、基板Wを保持するスピンチャック3と、スピンチャック3の周囲を取り囲む有底筒状の処理カップ6と、スピンチャック3および処理カップ6を収容する処理室2と、処理室2内に清浄空気を供給して、処理室2内に清浄空気の下降気流を形成するFFU(ファン・フィルタ・ユニット)11と、処理カップ6内の雰囲気を排気するための吸引機構33と、処理カップ6の周囲において処理室2内を上下に仕切る仕切板7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理するための基板処理装置が用いられる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば下記特許文献1に開示されている。
この特許文献1に係る基板処理装置は、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板の上面に処理液を供給する処理液ノズルと、スピンチャックを収容する有底筒状の処理カップと、これらの構成を収容する処理室とを備えている。処理カップの底部には、カップ内排気ダクトが接続されており、このカップ内排気ダクトを介して処理カップ内の雰囲気が排気される。また、処理室には、処理室内排気ダクトが接続されており、この処理室内排気ダクトを介して処理室内の雰囲気が排気される。
【0003】
特許文献1に係る基板の処理では、たとえば、スピンチャックによって基板を回転させつつ、当該基板の上面中央部に向けて処理液ノズルから処理液が吐出される。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の上面中央部に着液し、基板の回転による遠心力を受けて、基板の上面周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板の上面全域に処理液が供給され、処理液による処理が基板の上面に行われる。処理液による処理が行われた後は、スピンチャックによって基板を高速回転させて当該基板を乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。また、処理液による処理や乾燥処理において、基板の周囲に飛散した処理液は、処理カップによって受け止められる。さらに、これらの処理において処理カップ内に発生した処理液のミストは、処理カップ内の排気に伴う気流に乗ってカップ内排気ダクトの方へ導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−111487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る基板処理装置では、基板の周囲に飛散した処理液の一部が、処理カップによって受け止められずに、処理カップの外に飛び出るおそれがある。また、処理カップ内に発生した処理液のミストの一部が、処理カップの上部開口を通って処理カップの外に漏れ出るおそれがある。そのため、基板の処理に悪影響が及ぼされるおそれがある。たとえば、処理液の液滴や処理液のミストが結晶化してパーティクルとなり、このパーティクルが処理室内を浮遊して基板に付着するおそれがある。
【0006】
一方、特許文献1に係る基板処理装置では、処理室内の雰囲気が処理室内排気ダクトを介して排気されるようになっている。したがって、処理室内にパーティクルが発生したとしても、このパーティクルは、処理室内の雰囲気とともに処理室から除去されると考えられる。しかしながら、スピンチャックなどの複数の構成が処理室内に収容されていることから処理室の体積が大きく、さらに、処理室内の排気量を十分に確保できない場合があるため、処理室内の排気が十分でないことがある。そのため、処理室内を浮遊するパーティクルが処理室内から完全に除去されず、基板に付着して当該基板が汚染されるおそれがある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、基板の処理品質を向上させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(3)と、前記基板保持手段の周囲を取り囲む有底筒状のカップ(6)と、前記基板保持手段およびカップを収容する処理室(2)と、前記処理室内に気体を供給して、処理室内に下降気流を形成する気流形成手段(11、111)と、前記カップ内の雰囲気を排気するカップ排気手段(31、32、33)と、前記カップの周囲において前記処理室内を上下に仕切る仕切板(7、107)とを含む、基板処理装置(1、101)である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すものとする。
【0009】
この発明によれば、気流形成手段よって処理室内に気体を供給することにより、処理室内にダウンフロー(下降気流)を形成することができる。したがって、処理室内の雰囲気は、このダウンフローに乗って下方に移動する。そして、下方に移動した処理室内の雰囲気は、カップ内に入り込む。より具体的には、下方に移動した処理室内の雰囲気が、直接的にカップ内に入り込んだり、カップや当該カップの周囲に配置された仕切板に当たった後にカップ内に入り込んだりする。そして、カップ内に入り込んだ雰囲気は、カップ排気手段によって排気されて、カップ内から除去される。このようにして、処理室内の雰囲気が排気され、処理室内の雰囲気が気流形成手段から供給された気体によって置換される。
【0010】
一方、この発明によれば、仕切板がカップの周囲において処理室内を上下に仕切っている。したがって、雰囲気が置換される空間の体積が処理室全体の体積よりも小さくなっている。そのため、大排気量のカップ排気手段を用いなくても、雰囲気が置換されるべき空間の雰囲気を十分に置換することができる。また、処理液による処理や乾燥処理において発生した処理液の液滴や処理液のミストがカップの外に出たとしても、この処理液の液滴などは、雰囲気が十分に置換される空間に進入する。したがって、カップの外に出た処理液の液滴などが結晶化してパーティクルとなった場合でも、このパーティクルは、排気される雰囲気とともに処理室内から確実に除去される。これにより、基板の処理に悪影響が及ぶことを抑制または防止することができ、基板の処理品質を向上させることができる。
【0011】
前記仕切板は、処理室内における仕切板の上方の空間と、下方の空間とを完全に分離した状態(流体が流通できない状態)で処理室内を上下に仕切るように構成されたものであってもよいし、仕切板の上方の空間と下方の空間とが部分的に繋がった状態で処理室内を上下に仕切るように構成されたものであってもよい。より具体的には、前記仕切板は、カップの周囲に位置する処理室の内壁面とカップの外周面との間を全周にわたって隙間なく塞ぐように構成されたものであってもよいし、処理室の内壁面とカップの外周面との間に流体が流通できる隙間などが形成されるように構成されたものであってもよい。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記仕切板(7)は、前記カップに向かって下方に傾斜するものである、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、ダウンフローに乗って下方に移動してきた処理室内の雰囲気が、仕切板に当たってカップの方に導かれる。したがって、処理室内の雰囲気を効率的にカップ内に入り込ませて排気することができる。これにより、雰囲気の置換効率を向上させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記仕切板は、前記カップと前記仕切板との間に隙間(G1)が形成されるように設けられたものである、請求項2記載の基板処理装置である。
この発明によれば、カップの方へ導かれる雰囲気中にパーティクルが含まれる場合でも、カップと仕切板との間の隙間からパーティクルを仕切板の下方の空間に移動させることができる。したがって、パーティクルがカップ内に入り込んで、基板保持手段に保持された基板に付着することを抑制または防止することができる。これにより、パーティクルの付着による基板の汚染を抑制または防止することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記カップの周囲で、かつ、前記仕切板よりも下方に配置された排気口(49)を有し、当該排気口から前記処理室内の雰囲気を排気する処理室排気手段(33、48、49)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、排気口から処理室内の雰囲気を吸い込むことにより、仕切板の下方の空間に存在する雰囲気を排気することができる。これにより、仕切板の下方の空間にパーティクルが存在する場合でも、排気される雰囲気とともにこのパーティクルを処理室内から除去することができる。したがって、仕切板の上方の空間と下方の空間とが部分的に繋がっている場合でも、仕切板の下方の空間から上方の空間にパーティクルが移動して、移動したパーティクルが基板保持手段に保持された基板に付着することを抑制または防止することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記処理室は、前記カップの周囲に位置する鉛直な内壁面(8a)を有するものであり、前記内壁面には、前記仕切板の一端(7a)が連結されており、前記内壁面における前記仕切板の一端よりも上側の部分と前記仕切板の一端とのなす角度(θ)が鈍角にされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0016】
この発明によれば、処理室の内壁面における仕切板の一端よりも上側の部分と仕切板の一端とのなす角度(以下、この項において単に「傾斜角度」という。)が鈍角にされているので、ダウンフローに乗って仕切板の一端に当たった雰囲気は、カップの方に向かって滑らかに流れていく。これにより、処理室の内壁面と仕切板の一端との連結部の近傍に雰囲気の滞留が生じることを抑制または防止しつつ、処理室内の雰囲気をカップの方に導くことができる。すなわち、前記傾斜角度が直角または鋭角である場合には、仕切板の一端に当たった雰囲気がカップの方に向かって滑らかに流れずに、雰囲気の滞留が生じる場合がある。しかしながら、雰囲気の滞留が生じると、処理室内の雰囲気の置換効率が低下する。したがって、この発明のように、前記傾斜角度を鈍角にすることにより、処理室内の雰囲気を効率的に置換することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、上下方向に気体を流通させる複数の流通孔(14)が全域にわたって形成された拡散板(13)をさらに含み、前記処理室は、前記気流形成手段から供給された気体が吹き出される吹出し口(12)が形成された天井(9)を有するものであり、前記拡散板は、前記天井全域を下方から覆うように前記天井から間隔をあけて設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0018】
この発明によれば、拡散板が天井全域を下方から覆うように天井から間隔をあけて設けられているので、吹出し口から気体が吹き出されると、天井と拡散板との間の空間に気体が拡散する。そして、この拡散した気体が、拡散板の全域に形成された複数の流通孔を通って下方に流れていく。したがって、拡散板の下面全域から気体が下方に吐出され、処理室内の上方全域にダウンフローが形成される。また、拡散板の下面全域から気体が下方に吐出されるので、処理室内における吹出し口の周囲の空間に雰囲気の滞留が生じることを抑制または防止することができる。これにより、処理室内の雰囲気を効率的に置換することができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記カップ排気手段は、排気された雰囲気を流通させる第1排気路(31)を有するものであり、前記処理室排気手段は、排気された雰囲気を流通させる第2排気路(48)を有するものであり、前記第1および第2排気路は、互いの下流側において合流されている、請求項4記載の基板処理装置である。
この発明によれば、第1および第2排気路が互いの下流側において合流しているので、1つの吸引手段によって第1および第2排気路内を吸引することにより、カップ内および処理室内の雰囲気を排気することができる。すなわち、1つの吸引手段でカップ内および処理室内の雰囲気を排気することができる。これにより、基板処理装置の部品点数を削減して、基板処理装置の部品コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す部分断面図である。
【図2】図1における矢視IIから見た基板処理装置の一部(拡散板)の底面図である。
【図3】スピンチャックおよび処理カップの構成を拡大して示す部分断面図である。
【図4】処理室内における雰囲気の流れについて説明するための部分断面図である。
【図5】処理室内の雰囲気を清浄空気によって置換するシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す部分断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る仕切板およびそれに関連する構成の断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る仕切板およびそれに関連する構成の断面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係るFFU(ファン・フィルタ・ユニット)およびそれに関連する構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す部分断面図である。また、図2は、図1における矢視IIから見た基板処理装置1の一部(後述の拡散板13)の底面図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円形の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理室2を有している。処理室2内には、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持手段)と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に薬液やリンス液などの処理液を供給するための上面ノズル4と、スピンチャック3に保持された基板Wの下面に薬液やリンス液などの処理液を供給するための下面ノズル5と、スピンチャック3を収容する有底筒状の処理カップ6とが配置されている。また、処理室2内における処理カップ6の周囲には、処理室2内を上下に仕切る仕切板7が配置されている。
【0022】
処理室2は、鉛直方向に沿う隔壁8と、その上端縁に結合された天井壁9(天井)と、天井壁9に対向する下方位置に配置された板状のベース10とによって区画された処理空間(たとえば、直方体形状の空間)を有している。スピンチャック3等は、この処理空間に配置されている。また、処理室2の天井壁9には、当該基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の清浄空気をさらに清浄化して処理室2内に取り込むためのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)11(気流形成手段)が取り付けられている。天井壁9の一部(この実施形態では、天井壁9の中央部)には、FFU11から供給された清浄空気を吹き出させるための吹出し口12が形成されている。
【0023】
また、隔壁8には、拡散板13が取り付けられている。拡散板13は、天井壁9全域を下方から覆うように天井壁9から間隔(たとえば、5mm〜1cm程度の間隔)をあけて設けられている。天井壁9と拡散板13との間には、水平に広がる空間が形成されている。拡散板13は、下方から吹出し口12に対向している。また、拡散板13には、鉛直方向に気体を流通させる複数の流通孔14が形成されている。図1および図2に示すように、複数の流通孔14は、拡散板13の全域にわたって等間隔で形成されている。
【0024】
スピンチャック3は、鉛直に延びる回転軸(図示せず)の上端に水平な姿勢で固定された円盤状のスピンベース15と、スピンベース15の下方に配置されて、回転軸を駆動するためのモータ16と、モータ16の周囲を包囲する筒状のカバー部材17とを備えている。スピンベース15の外径は、スピンチャック3に保持される基板Wの外径よりも僅かに大きくされている。スピンベース15の上面周縁部には、複数(たとえば6つ)の挟持部材18が基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔をあけて配置されている。また、カバー部材17は、その下端が処理室2のベース10に固定され、上端がスピンベース15の近傍にまで及んでいる。スピンチャック3は、各挟持部材18を基板Wの周端面に当接させることにより、当該基板Wをスピンベース15の上方で水平に挟持することができる。また、複数の挟持部材18によって基板Wを挟持した状態で、モータ16の駆動力を回転軸に入力させることにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線Cまわりに基板Wを回転させることができる。モータ16は、制御部19によって制御されるようになっている。
【0025】
上面ノズル4は、スピンチャック3による基板保持位置P1よりも上方に配置されている。上面ノズル4は、吐出した処理液がスピンチャック3に保持された基板Wの上面中央部に着液するように構成されている。また、下面ノズル5は、スピンチャック3による基板保持位置P1の下方に配置されている。下面ノズル5は、その吐出口がスピンチャック3に保持された基板Wの下面中央部に対向するように構成されている。下面ノズル5から吐出された処理液は、基板Wの下面中央部に着液する。上面ノズル4および下面ノズル5には、それぞれ、複数種の処理液が順次供給されるようになっている。この実施形態では、上面ノズル4および下面ノズル5が処理液供給手段として機能する。
【0026】
すなわち、スピンチャック3によって基板Wを回転させながら上面ノズル4から処理液を吐出させると、吐出された処理液は、基板Wの上面中央部に着液した後、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に処理液が供給され、処理液による処理が基板Wの上面に施される。また、スピンチャック3によって基板Wを回転させながら下面ノズル5から処理液を吐出させると、吐出された処理液は、基板Wの下面中央部に着液した後、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの下面周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの下面全域に処理液が供給され、処理液による処理が基板Wの下面に施される。
【0027】
なお、図1では、上面ノズル4がスピンチャック3による基板Wの回転軸線C上に固定的に配置されて、基板Wの上面に対して鉛直上方から処理液を供給する構成が示されているが、上面ノズル4は、たとえば、スピンチャック3の斜め上方に固定的に配置されて、基板Wの上面に対して斜め上方から処理液を供給する構成であってもよい。また、スピンチャック3の上方において水平面内で揺動可能なアームに上面ノズル4が取り付けられて、アームの揺動により基板Wの上面における処理液の供給位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。さらにまた、基板Wの上面に近接して対向配置される遮断板が備えられる場合には、遮断板の中央部に処理液供給口が形成されて、この処理液供給口から基板Wの上面に処理液が供給されるようにしてもよい。
【0028】
処理カップ6は、処理室2内に収容されたたとえば円筒状の排気桶20と、排気桶20内に収容された複数の処理カップ6(この実施形態では、第1カップ21および第2カップ22)と、排気桶20内に収容された複数のガード(この実施形態では、第1ガード23、第2ガード24、第3ガード25および第4ガード26)とを備えている。第1〜第4ガード23〜26は、それぞれ、筒状の第1案内部27、第2案内部28、第3案内部29、および第4案内部30を有している。処理カップ6は、基板Wの周囲に飛散する処理液を各案内部27〜30によって受け止めて捕獲できるように構成されており、各案内部27〜30によって受け止めた処理液を廃液または回収できるように構成されている。
【0029】
仕切板7は、処理カップ6の周囲において処理室2内を上下に仕切っている。仕切板7は、処理カップ6の周囲を取り囲むことができる環状または平面視C形をなす一枚の板状部材からなるものであってもよいし、処理カップ6の周囲に配置された複数の板状部材からなるものであってもよい。また、仕切板7が複数の板状部材からなる場合には、処理カップ6の周方向に隣接する2つの板状部材間に隙間が設けられておらず、当該2つの板状部材が隙間なく密着していてもよいし、周方向に隣接する2つの板状部材間に隙間が設けられていてもよい。また、仕切板7は、厚み方向に貫通する貫通穴や切欠きが形成されていないものであってもよいし、貫通穴や切欠き(たとえば上面ノズル4を支持するための支持軸を通すためのものや、上面ノズル4に処理液を供給するための処理液供給管を通すためのもの)が形成されたものであってもよい。この実施形態では、貫通穴や切欠きが形成されていない環状をなす一枚の板状部材が仕切板7として用いられている場合について説明する。
【0030】
仕切板7は、処理カップ6の周囲を取り囲んでいる。仕切板7の外周は、隔壁8の内壁面8aの横断面(水平方向に沿う断面)に対応する形状に形成されている。また、仕切板7の内周は、処理カップ6の外周面(排気桶20の外周面)に対応する形状に形成されている。この実施形態では、排気桶20が円筒状にされているので、仕切板7の内周は、排気桶20の外径よりも直径がやや大きな円状に形成されている。仕切板7は、外周端7a(仕切板7の一端)から内周端7bにかけて、中心(仕切板7の内周により形成される円の中心)に向かう方向に沿ってたとえば一定の傾斜角度で傾斜している。この実施形態では、仕切板7が、処理カップ6に向かって下方に傾斜する姿勢で処理カップ6の周囲に配置されている。
【0031】
また、仕切板7の外周端7aは、全周にわたって隔壁8の内壁面8aに連結されている。内壁面8aにおける仕切板7の外周端7aよりも上側の部分と、仕切板7の外周端7aとのなす角度θは、たとえば鈍角にされている。また、仕切板7の内周端7bは、全周にわたって排気桶20の上端に連結されている。仕切板7の上面は、たとえば、排気桶20の上面に連続的に連なっている。また、仕切板7の内周端7bと排気桶20との間は、全周にわたって密閉されている。さらに、仕切板7の外周端7aと隔壁8の内壁面8aとの間は、全周にわたって密閉されている。この実施形態では、貫通穴や切欠きが形成されていない環状をなす一枚の板状部材が仕切板7として用いられているので、隔壁8と処理カップ6との間は、仕切板7によって密閉されている。したがって、仕切板7は、処理室2内における仕切板7の上方の空間と、下方の空間とを完全に分離した状態(流体が流通できない状態)で処理室2内を上下に仕切っている。
【0032】
図3は、スピンチャック3および処理カップ6の構成を拡大して示す部分断面図である。この図3では、スピンチャック3の一部および処理カップ6を断面で示している。以下では、図3を参照して、処理カップ6の構成および状態について具体的に説明する。また、以下の説明において図1を適宜参照する。最初に、処理カップ6の構成について説明する。
【0033】
排気桶20は、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。排気桶20は、処理液を内側に溜められるように構成されている。排気桶20に溜められた処理液は、図示しない廃液機構へ導かれる。また、図1に示すように、排気桶20の下端部には、カップ内排気ダクト31が接続された排気口32が形成されている。排気桶20内の雰囲気は、たとえばポンプからなる吸引機構33(図1参照)によって、カップ内排気ダクト31および排気口32を介して排気される。排気口32から排気桶20内の雰囲気を排気することにより、処理室2内の雰囲気を排気桶20内に取り込みつつ、排気桶20内に下降気流を形成することができる。処理カップ6内の排気は、たとえば、少なくとも処理室2内において基板Wが処理されている間、好ましくは基板Wが処理されていない間も含めて常時行われるようになっている。また、吸引機構33による排気量は、たとえば、スピンチャック3によって基板Wを高速回転させたときに(たとえば2500rpmで基板Wを回転させたときに)、処理カップ6内に上昇気流が生じない量に設定されている。この実施形態では、カップ内排気ダクト31、排気口32、および吸引機構33からなるカップ排気手段が構成されている。
【0034】
第1カップ21は、スピンチャック3による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第1カップ21は、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。第1カップ21は、図示しない支持部材によって排気桶20内の一定位置で支持されている。第1カップ21は、平面視円環状の底部34と、この底部34の内周縁部から上方に立ち上がる円筒状の内壁部35と、底部34の外周縁部から上方に立ち上がる円筒状の外壁部36とを備えている。内壁部35の上端部は、カバー部材17に形成された環状溝17aに入り込んでいる。第1カップ21は、断面U字状をなしており、基板Wの処理に使用された処理液を集めて廃棄するための廃液溝37を区画している。廃液溝37に集められた処理液は、図示しない廃液機構に導かれる。
【0035】
第2カップ22は、スピンチャック3による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第2カップ22は、第1カップ21の外側において、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。第2カップ22は、図示しない支持部材によって排気桶20内の一定位置で支持されている。第2カップ22は、平面視円環状の底部38と、この底部38の内周縁部から上方に立ち上がる円筒状の内壁部39と、底部38の外周縁部から上方に立ち上がる円筒状の外壁部40とを備えている。第2カップ22は、断面U字状をなしており、基板Wの処理に使用された処理液を集めて回収するための内側回収溝41を区画している。内側回収溝41に集められた処理液は、図示しない第1回収機構に導かれる。
【0036】
第1ガード23は、スピンチャック3による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第1ガード23は、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。第1ガード23は、筒状の第1案内部27と、この第1案内部27に連結された円筒状の処理液分離壁42とを備えている。
第1案内部27は、スピンチャック3の周囲を取り囲む円筒状の下端部27aと、この下端部27aの上端から外方(基板Wの回転軸線Cから遠ざかる方向)に延びる筒状の厚肉部27cと、厚肉部27cの上面外周部から鉛直上方に延びる円筒状の中段部27dと、中段部27dの上端から内方(基板Wの回転軸線Cに近づく方向)に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部27bとを有している。処理液分離壁42は、厚肉部27cの外周部から鉛直下方に延びており、内側回収溝41上に位置している。また、第1案内部27の下端部27aは、廃液溝37上に位置している。また、第1案内部27の上端部27bは、たとえば、内周端に至るまで一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。上端部27bの内周端は、第1案内部27の上端に相当する部分であり、たとえば、下方に凸となる凸形状にされている。
【0037】
第2ガード24は、スピンチャック3による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第2ガード24は、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。第2ガード24は、筒状の第2案内部28と、カップ部43とを備えている。
第2案内部28は、第1ガード23の周囲を取り囲む円筒状の下端部28aと、下端部28aの上端から内方に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部28bとを有している。下端部28aは、内側回収溝41上に位置している。また、第2案内部28の上端部28bは、たとえば、内周端に至るまで、第1案内部27の上端部27bと等しい一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。上端部28bの内周端は、第2案内部28の上端に相当する部分であり、たとえば、下方に凸となる凸形状にされている。
【0038】
一方、カップ部43は、平面視円環状の底部44と、この底部44の内周縁部から上方に立ち上がる円筒状の内壁部45と、底部44の外周縁部から上方に立ち上がる円筒状の外壁部46とを備えている。カップ部43の内壁部45は、第2案内部28の上端部28bの外周縁部に連結されている。また、カップ部43は、断面U字状をなしており、基板Wの処理に使用された処理液を集めて回収するための外側回収溝47を区画している。外側回収溝47に集められた処理液は、図示しない第2回収機構に導かれる。
【0039】
第3ガード25は、スピンチャック3による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第3ガード25は、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。第3ガード25は、筒状の第3案内部29を有している。第3案内部29は、第2ガード24の周囲を取り囲む円筒状の下端部29aと、下端部29aの上端から内方に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部29bと、上端部29bにおける外周よりの位置から鉛直下方に延びる垂下部29cとからなる。第3案内部29の垂下部29cは、外側回収溝47上に位置している。また、第3案内部29の上端部29bは、たとえば、内周端に至るまで、第1案内部27の上端部27bと等しい一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。上端部29bの内周端は、第3案内部29の上端に相当する部分であり、たとえば、下方に凸となる凸形状にされている。
【0040】
第4ガード26は、スピンチャック3による基板Wの回転軸線Cに関してほぼ回転対称な形状に形成されている。第4ガード26は、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。第4ガード26は、筒状の第4案内部30を有している。第4案内部30は、第3ガード25の周囲を取り囲む円筒状の下端部30aと、下端部30aの上端から内方に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部30bとからなる。第4案内部30の上端部30bは、たとえば、内周部に至るまで、第1案内部27の上端部27bと等しい一定の傾斜角度で緩やかに斜め上方に延びている。上端部30bの内周部は、第4案内部30の上端部に相当する部分であり、断面倒立V字状に形成されている。
【0041】
このように、4つのガード23〜26には、それぞれ、筒状の案内部27〜30が設けられている。前述のように、4つの案内部27〜30の上端部27b、28b、29b、30bは、それぞれ、基板Wの回転軸線Cに近づく方向に向かって斜め上方に延びている。また、4つの上端部27b、28b、29b、30bの内径は、それぞれ、スピンベース15の外径より大きな一定の大きさに揃えられている。この実施形態では、スピンベース15の外径がスピンチャック3に保持される基板Wの外径よりも僅かに大きくされているので、各上端部27b、28b、29b、30bの内径は、スピンチャック3に保持される基板Wの外径よりやや大きな一定の大きさに揃えられている。
【0042】
また、4つのガード23〜26は、4つの案内部27〜30が同軸になるように配置されている。4つの案内部27〜30の上端部27b、28b、29b、30bは、下から第1案内部27、第2案内部28、第3案内部29、第4案内部30の順番で上下方向に重なり合っている。また、4つの上端部27b、28b、29b、30bの内径が一定の大きさに揃えられているので、4つの上端部27b、28b、29b、30bの内周端は、基板Wの回転軸線Cを中心軸線とする同一の円筒面上で上下方向に間隔を隔てて配置されている。さらに、この実施形態では、各上端部27b、28b、29b、30bの傾斜角度が等しくされているので、4つの上端部27b、28b、29b、30bは、平行になっている。
【0043】
また、図示はしないが、この基板処理装置1には、第1ガード23を昇降させるための第1昇降機構と、第2ガード24を昇降させるための第2昇降機構と、第3ガード25を昇降させるための第3昇降機構と、第4ガード26を昇降させるための第4昇降機構とが備えられている。4つのガード23〜26は、独立して昇降可能に設けられており、各昇降機構は、対応するガード23〜26を他のガード23〜26から独立して昇降させることができる。昇降機構としては、モータを駆動源とする昇降機構(たとえば、ボールねじ機構)やシリンダを駆動源とする昇降機構等が採用されている。
【0044】
各昇降機構は、対応するガード23〜26を、当該ガード23〜26に設けられた案内部27〜30の上端がスピンチャック3による基板保持位置P1よりも上方に位置する上位置と、当該ガード23〜26に設けられた案内部27〜30の上端がスピンチャック3による基板保持位置P1よりも下方に位置する下位置との間で昇降させることができる。図1では、各ガード23〜26がそれぞれの下位置に配置された状態を示しており、図3では、各ガード23〜26がそれぞれの上位置に配置された状態を示している。各昇降機構は、対応するガード23〜26を上位置および下位置に移動させて当該位置で待機させることができ、さらに、上位置および下位置間の任意の位置に対応するガード23〜26を移動させて当該位置で待機させることができる。各昇降機構は、制御部19によって制御されるようになっている。
【0045】
次に、処理カップ6の状態について説明する。
制御部19は、4つの昇降機構(図示せず)を制御することにより、処理カップ6を複数の状態に切り替えることができる。より具体的には、制御部19は、各ガード23〜26がそれぞれの下位置に位置する原点状態(図1に示す状態)と、スピンチャック3に保持された基板Wの周端面に第1案内部27を対向させることができる第1状態(図3に示す状態)と、スピンチャック3に保持された基板Wの周端面に第2案内部28を対向させることができる第2状態と、スピンチャック3に保持された基板Wの周端面に第3案内部29を対向させることができる第3状態と、スピンチャック3に保持された基板Wの周端面に第4案内部30を対向させることができる第4状態(図4参照)とを含む複数の状態に処理カップ6を切り替えることができる。
【0046】
制御部19は、スピンチャック3によって基板Wを回転させながら当該基板Wに処理液を供給するときに、処理カップ6を第1状態にすることにより、基板Wの周囲に飛散する処理液を第1案内部27によって受け止めて捕獲させることができる。そして、第1案内部27に受け止められた処理液を第1案内部27の内面に沿って流下させて、廃液溝37に導くことができる。これにより、廃液溝37に処理液を集めて、集めた処理液を廃液することができる。
【0047】
また、制御部19は、スピンチャック3によって基板Wを回転させながら当該基板Wに処理液を供給するときに、処理カップ6を第2状態にすることにより、基板Wの周囲に飛散する処理液を第2案内部28によって受け止めて捕獲させることができる。そして、第2案内部28に受け止められた処理液を第2案内部28の内面に沿って流下させて、内側回収溝41に導くことができる。これにより、内側回収溝41に処理液を集めて、集めた処理液を回収することができる。
【0048】
また、制御部19は、スピンチャック3によって基板Wを回転させながら当該基板Wに処理液を供給するときに、処理カップ6を第3状態にすることにより、基板Wの周囲に飛散する処理液を第3案内部29によって受け止めて捕獲させることができる。そして、第3案内部29に受け止められた処理液を第3案内部29の内面に沿って流下させて、外側回収溝47に導くことができる。これにより、外側回収溝47に処理液を集めて、集めた処理液を回収することができる。
【0049】
また、制御部19は、たとえば基板Wを乾燥させるときに(スピンチャック3によって基板Wを高速回転させて基板Wに付着している処理液を除去させるときに)、処理カップ6を第4状態にして、基板Wの周囲に飛散する処理液を第4案内部30の内面によって受け止めさせることができる。そして、第4案内部30に受け止められた処理液を第4案内部30の内面に沿って流下させて、排気桶20内に導くことができる。これにより、排気桶20内に処理液を集めて、集めた処理液を廃液することができる。
【0050】
図4は、処理室2内における雰囲気の流れについて説明するための部分断面図である。この図4では、処理カップ6が第4状態にされており、上面ノズル4の図示が省略されている。
FFU11から供給された清浄空気が吹出し口12から吹き出されると、吹き出された清浄空気が、天井壁9と拡散板13との間の空間に拡散する。そして、拡散した清浄空気が、各流通孔14からほぼ均一な流量で鉛直下方に吐出される。したがって、拡散板13の下面全域から清浄空気が鉛直下方に吐出される。これにより、清浄空気のダウンフロー(下降気流)が処理室2内の上方全域に形成される。また、拡散板13の下面全域から清浄空気が吐出されるので、天井壁9と隔壁8との連結部の近傍(たとえば図4において一点鎖線L1で囲まれた空間)に雰囲気の滞留が発生することが抑制または防止される。さらに、清浄空気が流通孔14を通ることで、清浄空気の流れ方向が鉛直下方になる。これにより、流れ方向が鉛直下方に整えられた、均一なダウンフローが処理室2内に形成される。
【0051】
処理室2内に清浄空気のダウンフローが形成されることにより、処理室2内の雰囲気は、このダウンフローに乗って下方に移動する。そして、下方に移動してきた処理室2内の雰囲気は、直接的に処理カップ6内に入り込んだり、処理カップ6や仕切板7に当たった後に処理カップ6内に入り込んだりする。より具体的には、図4に示すように、処理カップ6が第4状態にされている場合には、下方に移動してきた処理室2内の雰囲気が、第4案内部30の上端によって区画された開口(当該上端の内側の空間)や、処理カップ6の隙間(たとえば排気桶20と第4案内部30との間の径方向の隙間)を直接通って処理カップ6内に入り込む。また、第4案内部30に当たった雰囲気は、流れ方向が変換された後に、ダウンフローに合流したり、処理カップ6内の排気に伴う吸引力によって吸引されたりして処理カップ6内に入り込む。さらに、仕切板7に当たった雰囲気は、仕切板7が処理カップ6に向かって下方に傾斜しているので、流れ方向が処理カップ6に向かう方向に変換されて、仕切板7の上面および排気桶20の上面に沿って処理カップ6の方に向かって流れる。そして、仕切板7の上面および排気桶20の上面に沿って流れる雰囲気が、ダウンフローに合流したり、処理カップ6内の排気に伴う吸引力によって吸引されたりして処理カップ6内に入り込む。仕切板7に当たった雰囲気は、隔壁8の内壁面8aと仕切板7とのなす角度θ(図1参照)が鈍角にされているので、隔壁8と仕切板7との連結部の近傍(たとえば図4において二点鎖線L2で囲まれた空間)に雰囲気の滞留が発生することが抑制または防止されている。
【0052】
このように、処理室2内の雰囲気は、清浄空気のダウンフローに乗って下方に導かれる。そして、下方に移動してきた雰囲気は、処理カップ6内に入り込んで、カップ内排気ダクト31を通って処理カップ6から排気される。したがって、処理室2内の雰囲気は、カップ内排気ダクト31を介して排気されながら清浄空気によって置換されていく。また、この実施形態では、仕切板7が処理カップ6の周囲において処理室2内を上下に仕切っており、雰囲気が置換される空間の体積が処理室2内全体の体積よりも小さくなっている。そのため、大排気量の吸引機構33を用いなくても、雰囲気が置換されるべき空間の雰囲気を十分に置換することができる。また、処理液による処理や乾燥処理において発生した処理液の液滴や処理液のミストが処理カップ6の外に出たとしても、この処理液の液滴などは、雰囲気が十分に置換される空間に進入する。したがって、処理カップ6の外に出た処理液の液滴などが結晶化してパーティクルとなった場合でも、このパーティクルは、排気される雰囲気とともに処理室2内から除去される。これにより、基板Wの処理に悪影響が及ぶことを抑制または防止することができる。しかも、この実施形態では、処理室2内の上方の空間や、隔壁8と仕切板7との連結部の近傍に雰囲気の滞留が生じることが抑制または防止されているので、処理室2内の雰囲気を効率的に置換することができる。
【0053】
図5は、処理室2内の雰囲気を清浄空気によって置換するシミュレーションの結果を示すグラフである。この図5におけるデータ1(この発明の実施例に係るデータ)は、第1実施形態に係る基板処理装置1に対応する。また、図5におけるデータ2(この発明の実施例に係るデータ)は、基板処理装置1から拡散板13を除いた構成に対応する。また、図5におけるデータ3(比較例に係るデータ)は、基板処理装置1から拡散板13および仕切板7を除いた構成に対応する。3つのデータは、処理室内に塩化水素(HCl)の蒸気を充満させてから、処理カップ内の排気およびFFUから処理室内への清浄空気の供給を30sec間行ったときの処理室内における塩化水素の残留量をシミュレーションによって求めた結果を表している。
【0054】
図5に示すように、第1実施形態に係る基板処理装置1を用いたときの塩化水素の残留量(データ1)は、ほぼ0Lであった。また、基板処理装置1から拡散板13を除いた構成の基板処理装置を用いたときの塩化水素の残留量(データ2)は、約0.1Lであった。また、基板処理装置1から拡散板13および仕切板7を除いた構成の基板処理装置を用いたときの塩化水素の残留量(データ3)は、約0.6Lであった。したがって、第1実施形態に係る基板処理装置1では、処理室2内の雰囲気がほぼ完全に置換されていることが分かる。また、基板処理装置1から拡散板13を除いた構成の基板処理装置では、基板処理装置1より劣るももの、基板処理装置1から拡散板13および仕切板7を除いた構成の基板処理装置に比べて、処理室内の雰囲気が十分に置換されている。
【0055】
図6は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置101の概略構成を示す部分断面図である。この図6において、前述の図1〜図5に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、第1実施形態では、処理室2内における仕切板7の上方の空間と下方の空間とが完全に分離されていたのに対し、この第2実施形態では、仕切板7の上方の空間と下方の空間とが部分的に連通されていることにある。より具体的には、仕切板7の内周端7bと処理カップ6の外周面(排気桶20の外周面)との間に隙間G1が設けられており、この隙間G1を介して仕切板7の上方の空間と下方の空間とが部分的に繋がっている。
【0056】
また、カップ内排気ダクト31(第1排気路)の下流側には、処理室2内の雰囲気を排気するための処理室内排気ダクト48(第2排気路)が接続されている。処理室内排気ダクト48は、カップ内排気ダクト31からたとえば上方に延びており、その上端部に排気口49が形成されている。排気口49は、処理カップ6の周囲で、かつ、仕切板7よりも下方に位置している。また、排気口49の大きさは、たとえば、排気桶20に形成された排気口32よりも小さくされている。
【0057】
処理室2内における仕切板7の下方の空間に存在する雰囲気は、吸引機構33によって排気される。より具体的には、仕切板7の下方の空間に存在する雰囲気は、吸引機構33による吸引力によって、排気口49、処理室内排気ダクト48、およびカップ内排気ダクト31をこの順番で通って排気される。排気口49から雰囲気が吸引されることにより、仕切板7と処理カップ6との間の隙間G1からその上方の雰囲気が取り込まれつつ、仕切板7の下方の空間に存在する雰囲気が排気される。この実施形態では、カップ内排気ダクト31、排気口32、および吸引機構33からなるカップ排気手段が構成されている。また、この実施形態では、処理室内排気ダクト48、排気口49、および吸引機構33からなる処理室排気手段が構成されている。すなわち、吸引機構33は、カップ排気手段および処理室排気手段によって共用されている。これにより、基板処理装置101の部品点数が削減され、基板処理装置101の部品コストが低減されている。
【0058】
この第2実施形態によれば、仕切板7と処理カップ6との間に隙間G1が設けられているので、仕切板7に当たって処理カップ6の方へ導かれる雰囲気中にパーティクルが含まれる場合でも、仕切板7と処理カップ6との間の隙間G1からパーティクルを仕切板7の下方の空間に移動させることができる。したがって、処理カップ6内にパーティクルが入り込んで、スピンチャック3に保持された基板Wに付着することを抑制または防止することができる。これにより、パーティクルの付着による基板Wの汚染を抑制または防止することができる。また、仕切板7の下方の空間に存在する雰囲気が排気口49を介して排気されるので、仕切板7の下方の空間にパーティクルが入り込んだ場合でも、このパーティクルを処理室2内から除去することができる。これにより、仕切板7の下方の空間から上方の空間にパーティクルが移動(逆流)して、逆流したパーティクルがスピンチャック3に保持された基板Wに付着することを抑制または防止することができる。
【0059】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1および第2実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の第1および第2実施形態では、基板保持手段として、基板Wの周端面を挟持して保持する挟持式のチャック(スピンチャック3)を用いる場合について説明したが、基板保持手段としては、挟持式のチャックに限らず、たとえば、基板Wの下面(裏面)を吸引して保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0060】
また、前述の第1および第2実施形態では、仕切板7が、外周端7aから内周端7bにかけて、中心(仕切板7の内周により形成される円の中心)に向かう方向に沿ってたとえば一定の傾斜角度で傾斜している場合について説明したが、仕切板7の傾斜角度は、一定でなくてもよく、たとえば連続的または段階的に変化していてもよい。より具体的には、低くなるほど傾斜角度が小さくなるような曲面または球面であってもよいし、低くなるほど傾斜角度が小さくなるような屈曲面であってもよい。また、仕切板7は、部分的に傾斜していてもよい。
【0061】
また、前述の第1および第2実施形態では、仕切板7が、処理カップ6に向かって一定の傾斜角度で下方に傾斜する姿勢で処理カップ6の周囲に配置されている場合について説明したが、これに限らない。たとえば図7に示すように、平板状の部材を仕切板107として用いて、この仕切板107を水平な姿勢で処理カップ6の周囲に配置してもよい。また、図8に示すように、仕切板7は、処理カップ6に向かって一定の傾斜角度で上方に傾斜する姿勢で処理カップ6の周囲に配置されていてもよい。さらに、図8に示すように、仕切板7の外周端7aと隔壁8の内壁面8aとの間に隙間G2が設けられていて、この隙間G2を介して仕切板7の上方の空間と下方の空間とが部分的に繋がっていてもよい。
【0062】
また、前述の第1および第2実施形態では、天井壁9の一部に吹出し口12が形成されており、FFU11から供給された清浄空気が天井壁9の一部から吹き出される場合について説明したが、これに限らない。具体的には、図9に示すように、天井壁9に代えて、処理室2全体(より具体的には、処理空間全体)を上方から覆うことができる吹出し口が設けられたFFU(ファン・フィルタ・ユニット)111によって処理室2全体を上方から覆ってもよい。そして、このFFU111によって処理室2内に清浄空気を供給して、処理室2内の上方全域に清浄空気のダウンフローを形成してもよい。この図9に示す実施形態では、拡散板13(たとえば図1参照)を用いることなく、処理室2内の上方全域に清浄空気のダウンフローを形成することができる。
【0063】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 基板処理装置
2 処理室
3 スピンチャック
6 処理カップ
7 仕切板
7a 仕切板の外周端
8a 内壁面
9 天井壁
11 FFU(ファン・フィルタ・ユニット)
12 吹出し口
13 拡散板
14 流通孔
31 カップ内排気ダクト
32 排気口
33 吸引機構
48 処理室内排気ダクト
49 排気口
101 基板処理装置
107 仕切板
111 FFU(ファン・フィルタ・ユニット)
G1 隙間
W 基板
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段の周囲を取り囲む有底筒状のカップと、
前記基板保持手段およびカップを収容する処理室と、
前記処理室内に気体を供給して、処理室内に下降気流を形成する気流形成手段と、
前記カップ内の雰囲気を排気するカップ排気手段と、
前記カップの周囲において前記処理室内を上下に仕切る仕切板とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記仕切板は、前記カップに向かって下方に傾斜するものである、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記仕切板は、前記カップと前記仕切板との間に隙間が形成されるように設けられたものである、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記カップの周囲で、かつ、前記仕切板よりも下方に配置された排気口を有し、当該排気口から前記処理室内の雰囲気を排気する処理室排気手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理室は、前記カップの周囲に位置する鉛直な内壁面を有するものであり、
前記内壁面には、前記仕切板の一端が連結されており、
前記内壁面における前記仕切板の一端よりも上側の部分と前記仕切板の一端とのなす角度が鈍角にされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
上下方向に気体を流通させる複数の流通孔が全域にわたって形成された拡散板をさらに含み、
前記処理室は、前記気流形成手段から供給された気体が吹き出される吹出し口が形成された天井を有するものであり、
前記拡散板は、前記天井全域を下方から覆うように前記天井から間隔をあけて設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記カップ排気手段は、排気された雰囲気を流通させる第1排気路を有するものであり、
前記処理室排気手段は、排気された雰囲気を流通させる第2排気路を有するものであり、
前記第1および第2排気路は、互いの下流側において合流されている、請求項4記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−192686(P2010−192686A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35589(P2009−35589)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】