説明

基板処理装置

【課題】エネルギ効率の良好な基板処理装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波を閉じ込めるシールドの上中下段に導入ポート53を穿設し、各導入ポート53に導波管54の一端を接続し、導波管54の他端にマイクロ波を供給するマイクロ波源55A、55B、55Cを接続する。シールド52内に保温チューブ36を設置し、保温チューブ36は複数枚のウエハを保持したボート42を搬入搬出可能に形成する。3本の熱電対が挿入されたカスケード温度センサ57を保温チューブ36内に敷設し、各熱電対の熱接点にシリコンからなる測温片をそれぞれ固着する。熱電対の温度測定器をマイクロ波源55A、55B、55Cのコントローラ56に接続する。3個の導入ポート53近傍にマイクロ波エネルギによって加熱されたウエハの熱を逃がさず、かつ、ウエハの温度分布を均一化する反射板62を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)が作り込まれる半導体ウエハ(以下、ウエハという。)に熱処理(thermal treatment )を施すのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造方法においてウエハに熱処理を施すのに、バッチ式縦型ホットウオール形熱処理装置が広く使用されている。
バッチ式縦型ホットウオール型熱処理装置は処理炉を備えており、処理炉は、処理室を形成したプロセスチューブと、処理室を排気する排気管と、処理室へ処理ガスを供給するガス供給管と、プロセスチューブ外に設置されて処理室内を全体にわたって均一に加熱するヒータユニットとから構成されている。
処理炉の真下近傍にはボートエレベータが設置されており、ボートエレベータのアームにはシールキャップが水平に支持されている。シールキャップ上にはボートが垂直に立脚されており、ボートは複数枚のウエハの中心を備えて水平に保持する。
そして、ボートがボートエレベータによって上昇されるのに伴って、複数枚のウエハが処理室に搬入され、処理室内において処理炉による熱処理を施される。
【0003】
従来のこの種の処理炉のヒータユニットは、抵抗発熱体と断熱筒とによって形成されているのが、一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒータユニットが抵抗発熱体と断熱筒とによって構成されたバッチ式縦形ホットウオール形熱処理装置においては、エネルギ効率が低いという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、エネルギ効率の良好な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
基板を収容するシールドと、
該シールド内に電磁波を導入する複数の導波管と、
該導波管に電磁波を供給する電磁波供給源と、
前記シールドと前記基板との間の空間に設けられた保温チューブと、
を有する基板処理装置。
【発明の効果】
【0007】
前記した手段によれば、シールドと基板との間に設けられた保温チューブにより、電磁波エネルギによって熱せられた基板の熱を逃がさず、かつ、基板の温度を均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
本実施の形態において、本発明に係る基板処理装置は、ウエハに各種の熱処理を施すバッチ式熱処理装置として構成されている。
【0010】
図1および図2に示されているように、バッチ式熱処理装置10においては、基板であるウエハ1を収納して搬送するためのウエハキャリアとしては、FOUP(以下、ポッドという。)2が使用されている。
バッチ式熱処理装置10は筐体11を備えている。
筐体11の正面壁11aの正面前方部には正面メンテナンス口12が開設されている。正面メンテナンス口12はメンテナンス作業を実施するための開口である。正面メンテナンス口12は正面メンテナンス扉13、13によって開閉される。
筐体11の正面壁11aにはポッド搬入搬出口14が筐体11の内外を連通するように開設されている。ポッド搬入搬出口14はフロントシャッタ15によって開閉される。
ポッド搬入搬出口14の正面前方側にはロードポート16が設置されている。ロードポート16はポッド2を載置されて位置合わせする。
ポッド2はロードポート16上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、ロードポート16上から搬出される。
【0011】
筐体11内の前後方向の略中央部における上部には、回転式ポッド棚17が設置されており、回転式ポッド棚17は複数個のポッド2を保管する。
すなわち、回転式ポッド棚17は支柱18および複数枚の棚板19を備えている。支柱18は水平面内で間欠回転される。複数枚の棚板19は支柱18に上中下段の各位置に配置され、放射状に支持されている。複数枚の棚板19はポッド2を複数個宛それぞれ載置した状態で保持する。
【0012】
筐体11内におけるロードポート16と回転式ポッド棚17との間には、ポッド搬送装置20が設置されている。ポッド搬送装置20はポッドエレベータ20aおよびポッド搬送機構20bを備えている。ポッド搬送装置20はポッドエレベータ20aとポッド搬送機構20bとの連続動作により、ロードポート16と回転式ポッド棚17とポッドオープナ21との間でポッド2を搬送する。
【0013】
ポッドオープナ21はポッド2を載置する載置台22、22と、ポッド2のキャップを着脱するキャップ着脱機構23、23とを備えている。ポッドオープナ21は載置台22に載置されたポッド2のキャップをキャップ着脱機構23によって装着したり外したりする。これにより、ポッド2のウエハ出し入れ口は開いたり閉じたりされる。
【0014】
筐体11内には前後方向略中央部下部に、サブ筐体24が後端まで構築されている。サブ筐体24の正面壁24aには一対のウエハ搬入搬出口25、25が垂直方向に上下二段に並べられて開設されている。上下段のウエハ搬入搬出口25、25には一対のポッドオープナ21、21がそれぞれ設置されている。ウエハ搬入搬出口25はウエハ1をサブ筐体24内に搬入したり、ウエハ1をサブ筐体24内から搬出するための出し入れ口(ゲート)である。
【0015】
サブ筐体24はポッド搬送装置20および回転式ポッド棚17の設置空間から流体的に隔絶された移載室26を構成している。移載室26は前側領域にウエハ移載機構27を設置されている。
ウエハ移載機構27はウエハ移載装置27a、ウエハ移載装置エレベータ27bおよびツィーザ27cを備えている。ウエハ移載装置27aは水平面内において回転または直動する。ウエハ移載装置エレベータ27bはウエハ移載装置27aを昇降させる。ツィーザ27cはウエハ移載装置27aに支持されており、ウエハ1を水平に保持する。
ウエハ移載装置エレベータ27bおよびウエハ移載装置27aの連続動作により、ツィーザ27cによって保持したウエハ1を後記するボートに搬送して装填(チャージング)したり、ボートに装填されたウエハ1をツィーザ27cによって受け取る。
図1に想像線で示されているように、ウエハ移載装置エレベータ27bは筐体11の右側端部とサブ筐体24の移載室26の前方領域右端部との間に設置されている。
【0016】
移載室26の後側領域には待機部28が構成されている。待機部28はボートを収容して待機させる予備室である。待機部28の天井面には炉口シャッタ29が設けられており、炉口シャッタ29は後記する処理炉の炉口を開閉する。
【0017】
図1に想像線で示されているように、筐体11の右側端部とサブ筐体24の待機部28の右端部との間には、ボートエレベータ30が設置されている。ボートエレベータ30のアーム31にはシールキャップ32が水平に据え付けられている。アーム31はボートエレベータ30の昇降台に連結された連結具である。シールキャップ32は処理炉の炉口を閉塞する蓋体である。
【0018】
図1に示されているように、ウエハ移載装置エレベータ27b側およびボートエレベータ30側と反対側である移載室26左側端部には、クリーンユニット33が設置されている。クリーンユニット33は供給フアンおよび防塵フィルタによって構成されている。クリーンユニット33は清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア34(図1の矢印参照)を供給する。
図示はしないが、ウエハ移載装置27aとクリーンユニット33との間にはノッチ合わせ装置が設置されている。ノッチ合わせ装置はウエハの円周方向の位置を整合させる。
クリーンユニット33から吹き出されたクリーンエア34は、ノッチ合わせ装置、ウエハ移載装置27aおよびボートを流通する。その後に、クリーンエア34は図示しないダクトにより吸い込まれる。吸い込まれたクリーンエア34は筐体11の外部に排気がなされるか、または、クリーンユニット33の吸い込み側である一次側(供給側)に戻されて、クリーンユニット33から移載室26内に再び吹き出される。
【0019】
図1および図2に示されているように、筐体11の後側上部には処理炉35が垂直に設置されている。
図3に示されているように、処理炉35は保温チューブ36を備えている。保温チューブ36は石英が使用されて一端開口で他端閉塞の円筒形状に形成されており、保温チューブ36は中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持されている。
保温チューブ36の筒中空部は複数枚のウエハ1が収容される処理室37を形成しており、保温チューブ36の内径は取り扱うウエハ1の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
保温チューブ36の下端部には炉口フランジ38が設置されている。炉口フランジ38は処理炉35の炉口39を形成している。炉口フランジ38がサブ筐体24に支持された状態で、保温チューブ36は垂直に据え付けられた状態になっている。
【0020】
図3に示されているように、ボートエレベータ30は処理炉35の真下近傍に設置されている。ボートエレベータ30のアーム31に支持されたシールキャップ32は炉口39を閉塞する。すなわち、シールキャップ32は炉口フランジ38の外径と略等しい円盤形状に形成されており、ボートエレベータ30によって上昇されることにより、炉口39を気密シールする。
【0021】
保温チューブ36の下端部の側壁には排気管40の一端が接続されており、排気管40の他端は排気装置(図示せず)に接続されている。排気装置は排気管40を介して処理室37を排気する。
保温チューブ36の排気管40と異なる位置には、処理室37へ処理ガスを供給するためのガス供給管41の一端が接続されている。
【0022】
シールキャップ32上にはボート42が垂直に立脚されて支持されている。ボート42は複数枚のウエハ1を保持して、処理室37内に搬入(ボートローディング)したり、処理室37外へ搬出(ボートアンローディング)したりする。
ボート42は石英等の誘電体が使用されて形成されている。
ボート42は上下で一対の端板43、44と、3本の保持柱45、45、45とを備えている。3本の保持柱45、45、45は両端板43、44間に垂直に架橋されている。3本の保持柱45、45、45には複数の保持溝46が、上下方向に等間隔に配置されてそれぞれ形成されており、同一段の保持溝46、46、46は同一平面を構成している。すなわち、ボート42は同一段の保持溝46、46、46によってウエハ1の外周縁部を保持することにより、複数枚のウエハ1を中心を揃えて整列させた状態で保持する。
ボート42の下部には複数枚の断熱板47が配置されている。断熱板47は処理室37からの熱の放射を抑制する。
シールキャップ32下面の中央にはロータリーアクチュエータ48が設置されている。ロータリーアクチュエータ48の回転軸49はボート42を支持する。すなわち、ロータリーアクチュエータ48は回転軸49によってボート42を回転させる。
【0023】
保温チューブ36の外部にはベース51が水平に配置されており、ベース51上にはシールド52が保温チューブ36と同心円状に設置されている。シールド52は上端が閉塞した四角形筒形状、もしくは他の多角形筒状に形成されており、保温チューブ36よりも大きい。シールド52は保温チューブ36の外側を取り囲んで電磁波を閉じ込め、かつまた、反射させる。
シールド52は電磁波の外部への漏洩を効果的に防止可能な導電性材料によって形成されている。例えば、このような導電性材料としては、銅、アルミニウム、ステンレス、白金、銀等を挙げることができる。
但し、シールド52は導電性材料のみによって形成するに限らない。シールド52は多層シールド材料によって形成してもよい。例えば、多層シールド材料は、導電性材料からなる基材の保温チューブ36側表面に、電磁波を反射する反射面および電磁波を吸収する吸収層を形成することにより、構築することができる。
【0024】
シールド52の側壁は上中下段の3箇所に、電磁波導入ポート53を穿設されている。各電磁波導入ポート53にはシールド52内に電磁波を供給するための導波管54の一端がそれぞれ接続されている。各導波管54の他端には電磁波であるマイクロ波を供給する電磁波供給源(以下、マイクロ波源という。)55A、55B、55Cがそれぞれ接続されている。
マイクロ波源55は0.5〜50GHzのマイクロ波を導波管54に供給する。マイクロ波源55は基板であるウエハを加熱するマイクロ波加熱源を構成している。
各マイクロ波源55にはコントローラ56が接続されている。コントローラ56は供給するマイクロ波の周波数を増減して調整する調整部を構成している。
マイクロ波は波長1m以下の電波で極超短波とも称される。マイクロ波には遠赤外部に接する1mm以下のサブミリ波まで含まれる。
【0025】
図3および図4に示されているように、処理室37内にはカスケード温度センサ(以下、温度センサという。)57が垂直方向に敷設されており、温度センサ57の下端部は保温チューブ36およびシールド52を貫通して外部に引き出されている。温度センサ57は図5に示されているように構成されている。
温度センサ57は保護管58と3本の熱電対59A、59B、59Cと3個の測温片60A、60B、60Cとを備えている。保護管58は石英が使用されて上端が閉塞したエルボ管に形成されており、保護管58の下端部が保温チューブ36およびシールド52に挿通されて固定されることにより、温度センサ57は垂直に支持されている。3本の熱電対59A、59B、59Cの熱接点59aには各測温片60A、60B、60Cがそれぞれ固着されており、3本の熱電対59A、59B、59Cは保護管58内に、3個の測温片60A、60B、60Cが上中下段の3箇所に位置するように挿入されている。
図3および図4に示されているように、シールド52外において、温度センサ57は温度測定器61に接続されており、温度測定器61は3本の熱電対59の温度をコントローラ56に送信する。コントローラ56は温度測定器61からの測定結果に基づいて、最適制御を実施する。
【0026】
図3および図4に示されているように、シールド52内の電磁波導入ポート(以下、導入ポートという。)53に対向する位置には、マイクロ波エネルギがウエハに直接照射するのを防止するための反射板(バッファ板または拡散板とも称される。)62が垂直方向に敷設されており、反射板62は図6に示されているように構成されている。
反射板62は長方形の平板形状に形成された分割板(板状金網、パンチングパネル等によって形成されている。)63を一対備えている。反射板62の回転軸上の上端部および下端部には一対のロッド64、64がそれぞれ直角に突設されており、一対のロッド64、64がその軸線方向に進退させることにより、反射板62はマイクロ波導入口(導入ポート53)との距離を可変するように構成されている。
図3および図4に示されているように、一対のロッド64、64はシールド52の上段の導入ポート53および下段の導入ポート53の延長線上に進退自在に挿通されており、一対のロッド64、64のシールド52の外側端部には位置調整ナット65、65がそれぞれ螺合されている。一対のロッド64、64の径方向の位置は位置調整ナット65、65によって調整することができ、この調整により、反射板62とマイクロ波導入口(導入ポート53)との距離を調整することができる。
【0027】
次に、前記構成に係るバッチ式熱処理装置10を用いる本発明の一実施形態であるICの製造方法の熱処理工程を説明する。
【0028】
図1および図2に示されているように、ポッド2がロードポート16に供給されると、フロントシャッタ15はポッド搬入搬出口14を開放する。
ポッド搬入搬出口14が開放すると、ポッド搬送装置20はロードポート16上のポッド2を筐体11内へポッド搬入搬出口14から搬入する。ポッド搬送装置20は搬入したポッド2を回転式ポッド棚17の指定された棚板19へ搬送して受け渡す。
ポッド2を棚板19に一時的に保管した後、ポッド搬送装置20はポッド2を棚板19から一方のポッドオープナ21に搬送し、載置台22に移載する。
なお、ポッド搬送装置20はロードポート16上のポッド2を回転式ポッド棚17に搬送せずに、ポッドオープナ21に直接搬送する場合もある。
【0029】
ポッド2搬送中、キャップ着脱機構23はポッドオープナ21のウエハ搬入搬出口25を閉じている。クリーンユニット33は移載室26にクリーンエア34を流通させて循環させる。
クリーンユニット33が移載室26にクリーンエア34として窒素ガスを循環させることにより、移載室26内の酸素濃度は筐体11内(大気雰囲気)の酸素濃度よりも遥かに低く(例えば、20ppm以下)維持される。
【0030】
ポッドオープナ21は載置台22に載置されたポッド2の開口側端面をサブ筐体正面壁24aの搬入搬出口25開口縁辺部に押し付ける。キャップ着脱機構23はポッド2のキャップを取り外し、ウエハ出し入れ口を開放させる。
ポッド2が開放されると、ウエハ移載装置27aはツィーザ27cによってウエハ1をポッド2からウエハ出し入れ口を通じてピックアップしノッチ合わせ装置に搬送する。
ノッチ合わせ装置がウエハ1のノッチを合わせると、ウエハ移載装置27aはウエハ1をノッチ合わせ装置からピックアップし、移載室26の後方にある待機部28へ搬入し、ボート42に装填(チャージング)する。
ボート42にウエハ1を受け渡したウエハ移載装置27aはポッド2に戻り、次のウエハ1をピックアップし、再び、ボート42に搬送し、ボート42に装填する。
この一方(上段または下段)のポッドオープナ21からボート42へのウエハ1の装填作業中に、ポッド搬送装置20は回転式ポッド棚17から別のポッド2を他方(下段または上段)のポッドオープナ21に搬送し移載する。ポッドオープナ21はポッド2を開放する。すなわち、ウエハ移載装置27aによるウエハ装填作業と、ポッド搬送装置20およびポッドオープナ21によるポッド開放作業とが、同時進行される。
【0031】
ボートエレベータ30は所定枚数のウエハ1が移載されたボート42を上昇させ、図4に示されているように、処理炉35の処理室37に搬入(ボートローディング)する。
ボート42が上限に達すると、シールキャップ32が炉口39をシール状態に閉塞するので、処理室37は気密に閉じられた状態になる。
【0032】
気密に閉じられると、排気管40は処理室37を排気する。
マイクロ波源55はウエハ1を所定温度(例えば、200℃程度)に昇温させる。すなわち、マイクロ波源55はマイクロ波を導波管54を経由してシールド52内に供給する。シールド52内に供給されたマイクロ波は保温チューブ36およびウエハ1に入射して効率的に吸収されるために、保温チューブ36およびウエハ1をきわめて効果的に昇温させる。このとき、保温チューブ36は全長にわたって均一に発熱することにより、ボート42上のウエハ1群を全長にわたって均等に加熱する。
ウエハ1が所定の温度に昇温すると、ロータリーアクチュエータ48がボート42を回転させながら、ガス供給管41が所定処理ガス(図示せず)を所定時間だけ供給する。
【0033】
予め設定された処理時間が経過すると、ボート42の回転、処理ガスの供給、マイクロ波の供給および排気管40の排気が停止する。
その後に、ボートエレベータ30はシールキャップ32を下降させることにより、炉口39を開口するとともに、ボート42を炉口39から処理室37の外部に搬出(ボートアンローディング)する。
【0034】
ウエハ移載機構27はボート42のウエハ1をポッド2内に、前述した作動とは逆の手順により収める。
以上の作動が繰り返されることにより、複数枚のウエハ1がバッチ処理される。
【0035】
ところで、シールド52の材質は熱伝導率が高い材料で作られているために、マイクロ波加熱されたウエハ1の熱がシールド52外に逃げ易くなる。
本実施形態においては、シールド52とボート42すなわちウエハ1群との間に、石英からなる保温チューブ36が設けられているので、マイクロ波加熱されたウエハ1の熱がシールド52外に逃げるのを保温チューブ36によって防止することができるとともに、保温チューブ36が全長にわたって均一に発熱することにより、ボート42上のウエハ1群を全長にわたって均等に加熱することができる。
【0036】
前述した熱処理工程において、マイクロ波の周波数は3〜10GHzの範囲内で最も加熱効率が高い値に設定される。このマイクロ波の最適周波数は、実験やコンピュータシミュレーションおよび過去の実績データの活用のような経験的手法によって求めることができるが、このような経験的手法によってマイクロ波の最適周波数を求めるには、時間や手間がかかるという問題点がある。
また、処理炉35のセットアップの仕方やボート42の回転およびボート42の傾き等によってシールド52内の条件が大きく変動することにより、最適周波数の値が変動するために、バッチ相互間で処理時間が変動してしまうという問題点がある。
そこで、本実施の形態においては、ボート42の上段、中段および下段における温度を温度センサ57の3本の熱電対59A、5B9、59Cによってそれぞれ測定し、測定した温度に基づきそれぞれの熱電対の位置に対応した3箇所のマイクロ波源55A、55B、55Cをフィードバック制御するものとした。例えば、熱電対59Aの測定温度に基づきマイクロ波源55Aを制御する。
【0037】
ここで、熱電対59が保護管58によって保護されたのみの従来のカスケード温度センサにおいては、急速に変化するウエハ1の温度を精度良く測定することができない。
本実施形態においては、シリコンからなる測温片60が熱電対59の熱接点59aに固着されていることにより、熱電対59はシリコンからなるウエハ1の温度変化に追従するシリコンからなる測温片60の温度を測定することになるので、急速に変化するウエハ1の温度を精度良く測定することができる。
したがって、コントローラ56は3箇所のマイクロ波源55A、55B、55Cをより一層精度良くフィードバック制御することができる。
【0038】
また、導入ポート53近傍はマイクロ波エネルギが高いために、図7(a)に示されているように、反射板62が無い場合には、ウエハ1における導入ポート53側周辺部の温度が著しく高くなる問題点がある。
本実施形態においては、図7(b)示されているように、導入ポート53近傍に敷設された反射板62によりマイクロ波エネルギが拡散され、特定の部分に集中するのを防止することができるので、ウエハ1における導入ポート53側周辺部の温度が著しく高くなるのを防止することができる。
しかも、反射板62とマイクロ波導入口(導入ポート53)との距離をナット65によって調整することにより、マイクロ波エネルギの拡散程度を調整することができるので、ウエハ1における温度分布をより一層均一化することができる。
【0039】
前記実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0040】
1) マイクロ波によってウエハを加熱することにより、ウエハを直接的に加熱することができるので、ウエハをエネルギ効率よく加熱することができ、また、低温領域での温度を適正かつ精密に制御することができる。
【0041】
2) 複数枚のウエハをマイクロ波によって一律に加熱することにより、ウエハのボート全長および各ウエハ面内の温度を均一に分布させることができるため、ウエハの熱処理状況をウエハ面内および各ウエハ相互間のいずれにおいても均一化することができる。
【0042】
3) 複数枚のウエハを一括してバッチ処理することにより、ウエハを一枚ずつ枚葉処理する場合に比べて、スループットを大幅に向上させることができる。
【0043】
4) シールドとウエハ群との間に石英からなる保温チューブを設けることにより、マイクロ波加熱されたウエハの熱がシールド外に逃げるのを保温チューブによって防止することができるとともに、保温チューブが全長にわたって均一に発熱することにより、ウエハ群を全長にわたって均等に加熱することができる。
【0044】
5) ボートの上段、中段および下段における温度を温度センサの3本の熱電対によってそれぞれ測定することにより、3箇所のマイクロ波源をフィードバック制御することができるので、各ウエハ相互間の温度分布をより一層均一化することができる。
【0045】
6) シリコンからなる測温片を熱電対の熱接点に固着することにより、熱電対は急速に変化するウエハの温度を精度良く測定することができるので、コントローラは3箇所のマイクロ波源をより一層精度良くフィードバック制御することができる。
【0046】
7) マイクロ波導入ポート近傍に敷設された反射板によりマイクロ波エネルギを拡散し、特定の部分に集中するのを防止することができるので、ウエハにおける導入ポート側周辺部の温度が著しく高くなるのを防止することができる。
【0047】
8) 反射板とマイクロ波導入口(導入ポート53)との距離を調整することにより、マイクロ波エネルギの拡散程度を調整することができるので、ウエハにおける温度分布をより一層均一化することができる。
【0048】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0049】
なお、導入ポートはシールドの3箇所に配置するに限らず、2または4箇所以上に配置してもよい。
【0050】
本発明に係るバッチ式熱処理装置は、拡散装置や減圧CVD装置およびアニール装置等の基板処理装置全般に使用することができる。特に、本発明に係る基板処理装置は、減圧下で低温領域の熱処理を施す場合に優れた効果を奏する。
【0051】
また、被処理基板はウエハに限らず、ホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【0052】
本発明の好ましい態様を付記する。
(1)基板を収容するシールドと、
該シールド内に電磁波を導入する複数の導波管と、
該導波管に電磁波を供給する電磁波供給源と、
前記シールドと前記基板との間の空間に設けられた保温チューブと、
を有する基板処理装置。
(2)前記保温チューブ内に複数の熱電対が挿入されたカスケード温度センサを敷設し、前記複数の熱電対の熱接点に前記基板と同質の測温片をそれぞれ固着することを特徴とする前記(1)に記載の基板処理装置。
(3)前記複数の導波管の近傍にマイクロ波エネルギによって加熱された前記基板の熱を逃がさず、かつ、前記基板の温度を均一化する反射板を設けることを特徴とする前記(1)(2)に記載の基板処理装置。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態であるバッチ式熱処理装置を示す一部省略斜視図である。
【図2】側面断面図である。
【図3】処理炉を通る正面断面図である。
【図4】処理ステップにおける処理炉部分を示す正面断面図である。
【図5】温度センサを示しており、(a)は正面断面図、(b)は(a)のb部を示す斜視図である。
【図6】反射板を示しており、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は(b)のc矢視図である。
【図7】反射板の作用を示す各模式図であり、(a)は反射板が無い場合を示し、(b)は反射板が有る場合を示している。
【符号の説明】
【0054】
1…ウエハ(基板)、2…ポッド、
10…バッチ式熱処理装置(基板処理装置)、11…筐体、11a…正面壁、12…正面メンテナンス口、13…正面メンテナンス扉、14…ポッド搬入搬出口、15…フロントシャッタ、16…ロードポート、
17…回転式ポッド棚、18…支柱、19…棚板、
20…ポッド搬送装置、20a…ポッドエレベータ、20b…ポッド搬送機構、
21…ポッドオープナ、22…載置台、23…キャップ着脱機構、
24…サブ筐体、24a…正面壁、25…ウエハ搬入搬出口、26…移載室、
27…ウエハ移載機構、27a…ウエハ移載装置、27b…ウエハ移載装置エレベータ、27c…ツィーザ、
28…待機部、29…炉口シャッタ、
30…ボートエレベータ、31…アーム、32…シールキャップ、
33…クリーンユニット、34…クリーンエア、
35…処理炉、36…保温チューブ、37…処理室、38…炉口フランジ、39…炉口、40…排気管、41…ガス供給管、
42…ボート(搬送治具)、43、44…端板、45…保持柱、46…保持溝、47…断熱板、48…ロータリーアクチュエータ、49…回転軸、
51…ベース、52…シールド、53…導入ポート(電磁波導入ポート)、54…導波管、55A、55B、55C…マイクロ波源(電磁波波供給源)、56…コントローラ(調整部)、
57…温度センサ(カスケード温度センサ)、58…保護管、59A、59B、59C…熱電対、59a…熱接点、60A、60B、60C…測温片、61…温度測定器、
62…反射板、63…分割板、64…ロッド、65…位置調整ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容するシールドと、
該シールド内に電磁波を導入する複数の導波管と、
該導波管に電磁波を供給する電磁波供給源と、
前記シールドと前記基板との間の空間に設けられた保温チューブと、
を有する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−80537(P2010−80537A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244776(P2008−244776)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】