説明

基板処理装置

【課題】アルカリ性処理液及び酸性処理液を用いても、塩の生成や新たなパーティクルの発生を抑制し得る基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板Wに対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部2aおよび酸を含む処理液を供給する第2の処理液供給部2bと、ドレインカップ3と、ドレインカップ3の外側に設けられ、洗浄液を貯留可能な外カップ4と、を具備し、ドレインカップ3が、処理液を回収し、収容する液収容部3cを備え、外カップ4が洗浄液を貯留する貯留槽4bと、貯留槽4bに洗浄液を供給する洗浄液供給部4cと、貯留槽4bから洗浄液を排液する洗浄液排液部4dとを備え、外カップ4の洗浄液排液部4dが、ドレインカップ3の外周壁3aの上端部よりも低い位置にあり、外カップ4の洗浄液供給部4cが、洗浄液排液部4dよりも低い位置にあり、貯留槽4bの上方が開放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ等の基板に対して洗浄処理のような所定の処理を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハやガラス基板に処理液を供給して液処理を行うプロセスが多用されている。このようなプロセスとしては、例えば、基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理を挙げることができる。
【0003】
このような基板処理装置としては、半導体ウエハ等の基板をスピンチャックに保持し、基板を回転させた状態でウエハに処理液等の処理液を供給して洗浄処理を行うものが知られている。この種の装置では、通常、処理液はウエハの中心に供給され、基板を回転させることにより処理液を外側に広げて液膜を形成し、処理液を基板の外方へ離脱させる。
【0004】
このような洗浄処理に使用される処理液としては、過酸化水素水、及び/又は水に、アルカリであるアンモニアを混合したアルカリ性処理液、例えば、APM洗浄液やSC−1洗浄液などがよく知られている。これらのアルカリ性処理液は、例えば、基板上に付着したパーティクルの除去に有効である。アルカリ性処理液を用いて基板を洗浄する基板処理装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
さらに、特許文献1には、アルカリ性処理液を用いた洗浄処理の他、酸性の処理液を用いた洗浄処理についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−79200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アルカリ性処理液は、例えば、基板上からのパーティクルの除去に有効である。しかしながら、アルカリ性処理液と酸性処理液とが混ざりあってしまうと中和反応がおきるため、塩が生成されてしまう。半導体集積回路装置やFPDの分野においては、例えば、素子の微細化が急速に進展し続けている。生成された塩が微量なものであり、現状では影響がみられないにしても、将来的には何らかの影響がでてくる可能性がある。
【0008】
また、疎水性表面部を有する基板に有機溶媒を用いた乾燥を行う際、アルカリ雰囲気が残留すると、基板上に新たなパーティクルを発生させてしまうことも分ってきた。
【0009】
この発明は、アルカリ性処理液及び酸性処理液を用いても、塩の生成や新たなパーティクルの発生を抑制し得る基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明の一態様に係る基板処理装置は、基板を保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部と、前記基板保持部に保持された基板に対して酸を含む処理液を供給する第2の処理液供給部とを、備える処理液供給機構と、前記基板保持部の外側に設けられ、前記基板に供給された処理液を回収可能なドレインカップと、前記ドレインカップの外側に設けられ、洗浄液を貯留可能な外カップと、を具備し、前記ドレインカップが、前記基板保持部の周囲に設けられた外周壁と、前記外周壁の下方部分に設けられた、前記処理液を回収し、収容する液収容部と、を備え、前記外カップが、前記ドレインカップの外周壁の周囲に設けられ、前記洗浄液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽に前記洗浄液を供給する洗浄液供給部と、前記貯留槽から前記洗浄液を、前記ドレインカップとは異なる箇所に排液する洗浄液排液部と、を備え、前記外カップの洗浄液排液部が、前記ドレインカップの外周壁の上端部よりも低い位置にあり、前記外カップの洗浄液供給部が、前記外カップの洗浄液排液部よりも低い位置にあり、前記貯留槽の上方が、開放されている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、アルカリ性処理液及び酸性処理液を用いても、塩の生成や新たなパーティクルの発生を抑制し得る基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図
【図2】外カップ4の近傍を拡大して示す拡大断面図
【図3】外カップ4の近傍を拡大して示す拡大断面図
【図4】ドレインカップ3の近傍を拡大して示す拡大断面図
【図5】外カップ4の近傍を拡大して示す拡大断面図
【図6】外カップ4の近傍を拡大して示す拡大断面図
【図7】第1の実施形態に係る基板処理装置100aを用いた基板処理方法の一例を示す流れ図
【図8】主要な工程における基板処理装置100aの状態を概略的に示した断面図
【図9】主要な工程における基板処理装置100aの状態を概略的に示した断面図
【図10】主要な工程における基板処理装置100aの状態を概略的に示した断面図
【図11】主要な工程における基板処理装置100aの状態を概略的に示した断面図
【図12】主要な工程における基板処理装置100aの状態を概略的に示した断面図
【図13】この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図
【図14】図14Aは昇降カップ8を下降させている状態を示す断面図、図14Bは昇降カップ8を上昇させている状態を示す断面図
【図15】図15A及び図15Bは昇降カップ8の近傍を拡大して示す拡大断面図
【図16】第2の実施形態に係る基板処理装置100bを用いた基板処理方法の第1例を示す流れ図
【図17】主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図
【図18】主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図
【図19】主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図
【図20】主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図
【図21】第2の実施形態に係る基板処理装置100bを用いた基板処理方法の第2例を示す流れ図
【図22】主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図
【図23】主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図
【図24】主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図
【図25】この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この説明においては、この発明を半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の表裏面洗浄を行う液処理装置に適用した場合について示す。
【0014】
(第1の実施形態)
(基板処理装置)
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、第1の実施形態に係る基板処理装置100aは、ウエハWを保持する基板保持部1と、基板保持部1に保持されたウエハWに処理液を供給する処理液供給機構2と、基板保持部1の外側から下方にかけて設けられ、ウエハWに供給された処理液を回収可能なドレインカップ3と、ドレインカップ3の外側に設けられ、洗浄液を貯留可能で、かつ、洗浄液をドレインカップ3に対してオーバーフロー可能な外カップ4と、を備える。
【0016】
本例の基板保持部1は、水平に設けられた円板状をなす回転プレート1aと、回転プレート1aの裏面の中心部に接続され、下方に向かって鉛直に延びる円筒状の回転軸1bとを有している。回転プレート1aの中心部には円形の孔1cが形成され、孔1cは円筒状の回転軸1bの孔1dに連通される。孔1c及び孔1d内には裏面側液供給ノズル1eを備えた昇降部材1fが上下方向に昇降可能に設けられている。回転プレート1a上には、ウエハWの外縁を保持する保持部材1gが設けられている。保持部材1gは、図1では1つのみが示されているが、例えば、3つ設けられ、互いに等間隔で配置される。保持部材1gは、ウエハWが回転プレート1aから浮いた状態で水平にウエハWを保持する。
【0017】
本例の処理液供給機構2は、アルカリを含む処理液を供給する第1処理液供給部2aと、酸を含む処理液を供給する第2処理液供給部2bとを備える。
本例の第1処理液供給部2aは、アルカリを含む処理液を吐出するノズル2cと、洗浄液と気体とを噴霧する二流体スプレーノズル2dとを備える。なお、二流体スプレーノズル2dは必要に応じて設けられれば良い。アルカリを含む処理液の一例は、アルカリとしてアンモニアを含む処理液である。より詳しい一例は、過酸化水素水、及び/又は水に、アルカリであるアンモニアを混合したアルカリ性処理液である。例えば、APM洗浄液やSC−1洗浄液、あるいはこれら洗浄液に類似した洗浄液を挙げることができる。さらに、ノズル2cは、バルブ切り換えにより、リンス液を吐出する。リンス液の一例は純水(DIW)である。二流体スプレーノズル2dが噴霧する洗浄液としては純水(DIW)を挙げることができ、同じく気体としては窒素ガス又は窒素を含むガス等を挙げることができる。
【0018】
ノズル2c及び2dは第1スキャンアーム2eの先端部分に取り付けられている。第1スキャンアーム2eはシャフト2fに接続されており、シャフト2fを回動させることで、先端部分に取り付けられたノズル2c及び2dを、基板保持部1の外側にある待機位置と基板保持部1上に保持されたウエハWの上方の処理位置との間でスキャンさせることが可能になっている。さらに、シャフト2fは上下方向の昇降駆動が可能であり、例えば、処理位置においてシャフト2fを昇降させると、ノズル2c及び2dが吐出又は噴霧する位置(高さ)を調節することもできる。
【0019】
本例の第2処理液供給部2bは、酸を含む処理液を吐出するノズル2gと、乾燥溶媒を吐出するノズル2h、及び乾燥溶媒を乾燥させる気体を噴射するノズル2iとを備える。酸を含む処理液の一例は酸として弗酸を含む処理液である。より詳しい一例は、酸である弗酸を水等で希釈した酸性処理液、例えば、希弗酸である。さらに、ノズル2gは、バルブ切り換えにより、リンス液を吐出する。リンス液の一例は純水(DIW)である。乾燥溶媒の一例は有機系乾燥溶媒である。有機系乾燥溶媒の一例はイソプロパノール(IPA)である。乾燥溶媒を乾燥させる気体の一例は窒素である。
【0020】
ノズル2g、2h、及び2iも、ノズル2c及び2dと同様にスキャンアーム、本例では第2スキャンアーム2jの先端部分に取り付けられている。本例の第2スキャンアーム2jは、第1スキャンアーム2eよりも低い位置にある。第2スキャンアーム2jはシャフト2kに接続され、シャフト2kを回動させることで、ノズル2g、2h、及び2iを、待機位置と処理位置との間でスキャンさせることが可能になっている。さらに、シャフト2kも上下方向の昇降駆動が可能であり、例えば、処理位置においてノズル2g及び2hが吐出する位置(高さ)及びノズル2iが噴射する位置(高さ)を調節することもできる。
【0021】
本例の基板保持部1は、回転プレート1aに加えて、回転プレート1aの外側に、回転カップ1h及び回転ガイド1iを備えている。本例の回転カップ1h及び回転ガイド1iは、回転プレート1aの周方向に沿って設けられている。回転カップ1h及び回転ガイド1iは、回転プレート1aに、ねじ等の固定部材1jによって固定されており、回転プレート1aとともに回転する。回転カップ1hは、回転プレート1aの周囲を囲む筒状の壁部と、この壁部の上方で、回転プレート1aの外縁上方を覆う円環状の庇部とを有した形状をなしている。回転ガイド1iは、回転カップ1hの円環状の庇部と回転プレート1aの外縁との間で、ウエハWとほぼ同じ高さの位置に配置されている。回転カップ1hの筒状の壁部と回転プレート1aとの間には円環状の隙間が形成されている。ウエハWが回転プレート1a及び回転カップ1hとともに回転することで飛散した処理液は、円環状の隙間から基板保持部1の外側から下方にかけて設けられたドレインカップ3に導かれる。
【0022】
本例のドレインカップ3は、回転カップ1hの外側に設けられ、鉛直方向に設けられた筒状をなす外周壁3aと、外周壁3aの下端部から内側に向かって延びる内側壁3bとを有し、外周壁3aと内側壁3bとによって規定された環状の空間を、処理液を回収し、収容する液収容部3cとしている。液収容部3cは、回収した処理液を排液する排液管3dに接続されている。排液管3dにはバルブ3eが接続されている。バルブ3eを閉じると回収した処理液が液収容部3cに溜まり、開けると回収した処理液が、図示せぬ排液処理機構や処理液リサイクル機構に導かれるようになっている。ドレインカップ3の外側には、外カップ4が設けられている。
【0023】
本例の外カップ4は、ドレインカップ3の外周壁3aの外側に設けられ、鉛直方向に設けられた筒状をなす外周壁4aを有し、ドレインカップ3の外周壁3aと外カップ4の外周壁4aとによって規定された環状の空間を、洗浄液を貯留する貯留槽4bとしている。貯留槽4bは、本例の貯留槽4bに洗浄液を供給する供給管4c、貯留槽4bの上部から洗浄液を排液する第1排液管4d、及び貯留槽4bの底部から洗浄液を排液する第2排液管4eに接続されている。供給管4cにはバルブ4fが接続され、バルブ4fを開閉することで貯留槽4bへの洗浄液の供給が制御される。洗浄液の一例は、純水(DIW)である。第1排液管4dにはバルブ4gが接続され、第2排液管4eにはバルブ4hが接続されている。
【0024】
本例の外カップ4は、基板保持部1の下方に延びて形成されており、ドレインカップ3は、外カップ4の内部に配置された形状となっている。本例の外カップ4は、ドレインカップ3の内側壁3bよりも回転軸1b側に形成された内側壁4iを備えている。外カップ4の底部には内側壁4iと内側壁3bとの間の位置に設けられた排液孔があり、この排液孔には排液管4jが接続されている。さらに、外カップ4の底部には内側壁3bの下方に位置する部分には排気孔があり、この排気孔には排気管4kが接続されている。
【0025】
本例の外カップ4は、ベースプレート5の上に取り付けられている。さらに、外カップ4の外周壁4a上には、ウエハW、基板保持部1、処理液供給機構2、ドレインカップ3、及び外カップ4の上方を覆うようにケーシング6が設けられている。ケーシング6の上部には図示せぬファン・フィルター・ユニット(FFU)からの気流を、ケーシング6の側部に設けられた導入口6aを介して導入する気流導入部6bが設けられている。気流導入部6bは、基板保持部1に保持されたウエハWに、清浄空気をダウンフローで供給する。供給された清浄空気は、上記排気管4kを介して排気される。
【0026】
ケーシング6の側部には、さらに、基板搬入出口6cが形成されている。ウエハWは、基板搬入出口6cを介してケーシング6の内部に対して搬入出される。
【0027】
本例の基板処理装置100aは制御ユニット7を有する。制御ユニット7は基板処理装置100aを制御する。本例の制御ユニット7は、コンピュータであるプロセスコントローラ7aと、プロセスコントローラ7aに接続されたユーザーインターフェース7bと、同じくプロセスコントローラ7aに接続された記憶部7cとを備えている。
【0028】
ユーザーインターフェース7bは、オペレータが、基板処理装置100aを管理するコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置100aの稼働状況等を可視化して表示するディスプレイ等を有する。
【0029】
記憶部7cは、基板処理装置100aで実行される処理を、プロセスコントローラ7aの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じた処理を基板処理装置100aに実行させたりするプログラム、即ちレシピが格納される。レシピは記憶部7cの中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、ハードディスクや半導体メモリであっても良いし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであっても良い。任意のレシピは、ユーザーインターフェース7bからの指示等にて記憶部7cから読み出され、プロセスコントローラ7aに実行させることで、プロセスコントローラ7aの制御下で、基板処理装置100aによる基板処理が行われる。レシピは、例えば、専用回線を介して他の装置から適宜伝送させることも可能である。
【0030】
図2及び図3は、図1に示す外カップ4の近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【0031】
図2及び図3を参照して、本例に係る基板処理装置100aについて、さらに説明する。
【0032】
図2及び図3に示すように、本例では、外カップ4の外周壁4aに対する第1排液管4dの排液位置10がドレインカップ3とは反対側にある。これにより、本例の外カップ4は、貯留槽4bに貯留された洗浄液を、ドレインカップ3とは異なる箇所に排液できる。
【0033】
さらに、上記第1排液管4dの排液位置10が、供給管4cの供給位置11よりも上にある。このように第1排液管4dの排液位置10の高さを、供給管4cの供給位置11よりも高くすることで、例えば、次のような利点が得られる。
【0034】
例えば、図2に示すように、洗浄液12を、バルブ4fを開けて供給管4cから貯留槽4bに供給しながら、洗浄液12を、バルブ4gを開けて貯留槽4bの上部から第1排液管4dを介して排液する。このようにすることで、洗浄液12を清浄に保つことができる。しかも、清浄な洗浄液12の水位を排液位置10の高さに保ったまま、貯留槽4b内に貯留しておくことができる。
【0035】
さらに、本例の供給管4cの供給位置11が排液位置10よりも下にあり、かつ、外周壁4aの、排液位置10と貯留槽4bの底との中間の位置にある。このような構成によれば、例えば、洗浄液12を、貯留槽4bに対して、上にも、下にも、横(貯留槽4bの周方向)にも拡がるように供給することができる。洗浄液12を、外周壁4aの中間の位置から貯留槽4bに対して上にも、下にも、横にも拡がるように供給すれば、貯留槽4bに貯留される洗浄液12がよどみ難くなる、という利点を得ることができる。洗浄液12がよどみ難くなれば、貯留されている洗浄液12の清浄度を、さらに高めることが可能である。
【0036】
さらに、本例では、第1排液管4dの排液位置10がドレインカップ3の外周壁3aの上端部3fの位置13よりも下にある。このように排液位置10の高さを、上端部3fよりも低くすることで、例えば、次のような利点が得られる。
【0037】
例えば、図3に示すように、バルブ4fを開けて貯留槽4bに供給管4cから洗浄液12を供給しながら、バルブ4gを閉める。このようにすることで、貯留槽4b内の洗浄液12の水位を、第1排液管4dの箇所位置10を超える高さに上げることができる。さらに水位が上昇して上端部3fの位置13に達すると、洗浄液12は上端部3fを介してドレインカップ3に向かってオーバーフローする。洗浄液12がドレインカップ3に向かってオーバーフローすることで、ドレインカップ3を、上端部3fから外周壁3aの内壁面に沿って液収容部3cの内部まで洗浄することができる。
【0038】
図4は、ドレインカップ3の近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【0039】
図4に示すように、処理のためにウエハWが回転されると、ウエハW上に供給された処理液はミストとなり、ウエハWの外側に向かって飛散する。ミストの多くは、矢印14に示す気流にのって、回転カップ1hと回転ガイド1iとの間の隙間、及び回転ガイド1iと回転ステージ1aとの間の隙間に流れ込み、回転ステージ1aの下方に設けられた排気管4kに向かって引き込まれる。
【0040】
しかしながら、ミストの中には、矢印15に示す気流にのって、回転カップ1hの庇部16の上方を介して、ドレインカップ3の外周壁3aと回転カップ1hの壁部17との間の隙間に流れ込むものもある。矢印15に示す気流が存在する結果、ドレインカップ3の上端部3f、及びドレインカップ3の外周壁3aのうち、上端部3fから液収容部3cにかけての部分にミストが付着することがある。付着したミストのうち、例えば、液収容部3cの内部に付着したものは、ノズル2c又はノズル2gからリンス液、例えば、純水(DIW)を供給し、回転カップ1hの壁部17と隙間回転ステージ1aとの間の隙間を介して、液収容部3cに純水を溜めることで洗い流すことができる。しかしながら、液収容部3cの上方に付着したミスト18については、洗い流すことはできない。付着したミスト18が、例えば、アルカリ性処理液によるアルカリ性ミストであった場合には以下のような事情を生ずる。
【0041】
アルカリ性ミストがドレインカップ3に付着したまま、酸性処理液による処理を行ってしまうと、アルカリ性ミストが塩に変わってしまうことがある。生成された塩が微量なものであり、かつ、基板から離れた位置にあるため、現状では影響がみられないにしても、例えば、素子の微細化が急速に進展し続けている半導体集積回路装置やFPDの分野においては、将来的に何らかの影響がでてくる可能性がある。
【0042】
また、アルカリ性ミストがドレインカップ3に付着したままであると、アルカリ性雰囲気を漂わせてしまう。このまま、酸性処理液による処理を経て疎水性になったウエハWに有機系処理液を用いた処理、例えば、有機系乾燥溶媒、例えば、イソプロパノール(IPA)等を利用した乾燥処理を行ってしまうと、ウエハW上に新たなパーティクルが発生する可能性がある。
【0043】
以上のような事情に対して、本例では、貯留槽4bに貯留された洗浄液12を利用し、洗浄液12をドレインカップ3に対してオーバーフローさせる。このようにすることで、液収容部3cの上方に付着したミスト18を洗い流すことができる。しかも、本例では、洗浄液12が、ドレインカップ3の上端部3fを介してオーバーフローされるから、上端部3f上に付着したミストまで洗い流すことができる。
【0044】
もちろん液収容部3cの内部に付着したミストについても、例えば、図5に示すように、バルブ3eを閉めて、オーバーフローしてきた洗浄液12をドレインカップ3の液収容部3cに溜め、かつ、液収容部3cから排液管4jに向かってオーバーフローさせることで洗い流すことができる。
【0045】
第1の実施形態に係る基板処理装置100aによれば、外カップ4の貯留槽4bから洗浄液12をドレインカップ3に対してオーバーフローさせることができるので、例えば、ドレインカップ3を、その上端部3fから外周壁3aの内壁面に沿って液収容部3cの内部にいたるまで洗浄でき、ドレインカップ3を清浄に保つことができる。よって、塩の生成や新たなパーティクルの発生を抑制し得る基板処理装置を得ることができる。
【0046】
なお、本例において、貯留槽4bを空にしたいときには、図6に示すように、バルブ4fを閉めて洗浄液の供給を止め、バルブ4hを開いて貯留槽4bの底に接続された第2排液管4eから洗浄液を排液すれば良い。
【0047】
次に、第1の実施形態に係る基板処理装置100aを用いた基板処理方法の一例を説明する。
【0048】
(基板処理方法)
図7は、第1の実施形態に係る基板処理装置100aを用いた基板処理方法の一例を示す流れ図、図8乃至図12は、主要な工程における基板処理装置100aの状態を概略的に示した断面図である。本例は、アルカリを含む処理液を用いた基板処理、酸を含む処理液を用いた基板処理、及び有機系乾燥溶媒を用いた乾燥処理を順次行う例である。
【0049】
まず、図7中のステップ1に示すように、基板に対してアルカリを含む処理液を供給する。
【0050】
本例では、図8に示すように、回転ステージ1a上に、保持部材1gを用いてウエハWを保持した後、第1の処理液供給部2aをウエハWの上方に移動させる。次いで、回転ステージ1aを回転させてウエハWを回転させる。次いで、ウエハWの表面に対して、アルカリを含む処理液21をノズル2cから供給する。処理液21の具体例は、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC−1)である。その温度は約70℃である。
【0051】
ステップ1の際、貯留槽4bには洗浄液12を、例えば、満たしておく。洗浄液12の具体例は純水(DIW)である。
【0052】
また、ステップ1の間、ウエハWは回転しているので、処理液21、又は処理液21のミストが外カップ4に向かって飛散してくる。このため、貯留槽4bに洗浄液12を満たしておく場合には、洗浄液12を清浄に保つように、供給管4cから洗浄液12を供給し続け、第1排液管4dからは洗浄液12を排液し続けることが好ましい。
【0053】
ステップ1が終了したら、図7中のステップ2に示すように、ドレインカップ3に対して、外カップ4から洗浄液12をオーバーフローさせる。
【0054】
本例では、図9に示すように、バルブ4gを閉めて、洗浄液12を貯留槽4bからドレインカップ3の上端部3fからドレインカップ3の外周壁3aの内壁面に沿って液収容部3cに向かってオーバーフローさせる。さらに、本例では、バルブ3eを、例えば、閉じ、洗浄液12を液収容部3cからもオーバーフローさせる。これにより、ドレインカップ3に付着したミストは、液収容部3cの上方から液収容部3cの内部、さらには、内周壁3bの外側に付着したものも含めて洗い流すことができる。
【0055】
また、ステップ2に並行して、ステップ3に示すように、基板に対してリンス液を供給する。
【0056】
本例では、図9に示すように、ウエハWの表面に対して、ノズル2cからリンス液22を供給する。リンス液22の具体例は純水(DIW)である。リンス液22は、回転カップ1hと回転ガイド1iとの間の隙間、回転ガイド1iと回転ステージ1aとの間の隙間、並びに回転カップ1hと回転ステージ1aとの隙間を介して、液収容部3cに流される。
【0057】
ステップ2及びステップ3が終了したら、図7中のステップ4に示すように、基板に対して、酸を含む処理液を供給する。
【0058】
本例では、図10に示すように、第1の処理液供給部2aを待機部に待機させ、第2の処理液供給部2bをウエハWの上方に移動させる。次いで、回転しているウエハWの表面に対して、酸を含む処理液23をノズル2gから供給する。処理液23の具体例は、弗酸を水で希釈した希弗酸(DHF)である。
【0059】
ステップ4の際、貯留槽4bには洗浄液12を、満たしておいても良い。ステップ4の間もウエハWは回転しているから、貯留槽4bに洗浄液12を満たしておく場合には、洗浄液12を清浄に保つように、供給管4cから洗浄液12を供給し続け、第1排液管4dからは洗浄液12を排液し続けることが好ましい。
【0060】
ステップ4が終了したら、図7中のステップ5に示すように、基板に対して、リンス液を供給する。
【0061】
本例では、図11に示すように、ウエハWの表面に対して、ノズル2gからリンス液24を供給する。リンス液24の具体例はステップ3と同様に純水(DIW)である。
【0062】
ステップ5の際、貯留槽4bには洗浄液12を満たしておいても良いし、洗浄液12を貯留槽4bからドレインカップ3に対してオーバーフローさせ、ステップ2と同様に、ドレインカップ3を洗浄するようにしても良い。
【0063】
ステップ5が終了したら、図7中のステップ6に示すように、基板に対して有機系乾燥溶媒を供給し、基板を乾燥させる。
【0064】
本例では、図12に示すように、ウエハWの表面に対して、乾燥溶媒25をノズル2hから供給する。乾燥溶媒25の具体例はイソプロパノール(IPA)である。さらに、乾燥溶媒25を供給した後、又は供給しながら、ウエハWの表面に対して、乾燥溶媒25を乾燥させる気体26をノズル2iから噴射し、第2のスキャンアーム2jを、ウエハWの中心からウエハWの外周に向かってスキャンする。これにより、ウエハWの表面を乾燥させる。乾燥させる気体26の一例は窒素ガスである。
【0065】
なお、基板乾燥工程は、乾燥溶媒を用いた乾燥に限らず、ウエハWを回転させてウエハWを乾燥させるスピン乾燥であっても良い。
【0066】
ステップ6の際、貯留槽4bには洗浄液12を満たしておいても良いし、洗浄液12を貯留槽4bからドレインカップ3に対してオーバーフローさせておいても良い、また、洗浄液12を貯留槽4bからドレインカップ3に対してオーバーフローさせる場合には、ステップ6の終了後にオーバーフローさせるようにしても良い。
【0067】
また、ステップ6におけるIPA乾燥中、ケーシング6内の水分を、より抑制したい場合には、貯留槽4b内の洗浄液(純水)12を排出しても良い。
【0068】
このような一例に係る基板処理方法によれば、アルカリを含む処理液を用いた第1の基板処理工程の後、かつ、酸を含む処理液を用いた第2の基板処理工程の前に、貯留槽4bから洗浄液12をドレインカップ3に対してオーバーフローさせてドレインカップ3を洗浄するので、ドレインカップ3に付着したアルカリ性ミストを一因とした塩の生成を抑制することができる。
【0069】
さらに、有機系乾燥溶媒を用いた基板乾燥工程を行う場合にも、基板乾燥工程の前に、ドレインカップ3に付着したアルカリ性ミストを洗い流すことができる。このため、新たなパーティクルの発生をも抑制することができる。
【0070】
このように、一例に係る基板処理方法によれば、アルカリ性処理液を用いても、塩の生成や新たなパーティクルの発生を抑制し得る基板処理方法を得ることができる。
【0071】
(第2の実施形態)
図13は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図である。図13においては、図1と同一の部分には同一の参照符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0072】
図13に示すように、第2の実施形態に係る基板処理装置100bが、第1の実施形態に係る基板処理装置100aと異なるところは、外カップ4の貯留槽4bの内部と、この貯留槽4bの上方との間で昇降する昇降カップ8、をさらに具備することである。他の部分は、第1の実施形態に係る基板処理装置100aとほぼ同様である。
【0073】
本例の昇降カップ8は円筒形であり、ドレインカップ3の外周壁3aに外側に沿って、ドレインカップ3の外周壁3aを囲む。これにより、昇降カップ8は基板支持部1の周囲を囲む。本例の昇降カップ8は貯留槽4b内に配置されており、その洗浄は貯留槽4bに貯留された洗浄液が用いられる。さらに、本例の昇降カップ8は、昇降機構8aによって昇降される。昇降機構8aは昇降カップ8を昇降できれば良く、昇降機構8aが取り付ける位置は限定されない。あえて、昇降機構8aの取り付け位置の一例を挙げるならば、貯留槽4bの外側から貯留槽4bの内部にかけてである。昇降機構8aの一例を、図14A及び図14Bに示す。
【0074】
図14Aは一例に係る昇降機構8aが昇降カップ8を下降させている状態を示す断面図、図14Bは一例に係る昇降機構8aが昇降カップ8を上昇させている状態を示す断面図である。
【0075】
図14A及び図14Bに示すように、一例に係る昇降機構8aは、昇降カップ8に取り付けられた断面がL字型の取り付け部材8bと、取り付け部材8bの昇降カップ8の側面方向に張り出した支持部8cに取り付けられた垂直アーム8dと、垂直アーム8dを高さ方向に上下動させる駆動部8eとを備える。
【0076】
本例では、駆動部8eが外カップ4の貯留槽4bの外側下方に設けられており、駆動部8eに接続された垂直アーム8dが、貯留槽4bの外側下方から貯留槽4bの中に延在している。下降時においては、図14Aに示されるように、取り付け部材8bと垂直アーム8dとが、例えば、貯留槽4bに貯留された洗浄液12中に水没する。水没させるための一例は、例えば、取り付け部材8b及び垂直アーム8dの取り付け位置が、下降時において、第1排液管4dの排液位置10よりも下方になるように、昇降カップ8に取り付ければ良い。さらに、本例では、貯留槽4b内において、垂直アーム8dを、伸縮自在な防水カバー、例えば、蛇腹型防水カバー8fを用いて囲み、垂直アーム8dを洗浄液12から保護している。
【0077】
昇降カップ8を上昇させるときには、図14Bに示すように、駆動部8eを用いて垂直アーム8dを上昇させる。これにより、昇降カップ8が上昇する。下降させるときには、駆動部8eが垂直アーム8dを下降させれば良い。
【0078】
一例に係る昇降機構8aでは、取り付け部材8b、昇降カップ8を上下動させるアーム、本例では垂直アーム8dを、貯留槽4b内に収容できるように構成されているので、例えば、取り付け部材8b、垂直アーム8dを、昇降カップ8ごと貯留槽4b内の洗浄液12を用いて洗浄できる、という利点を得ることができる。このため、取り付け部材8b、垂直アーム8dにミストが付着しても、昇降カップ8に付着したミストごと洗い流すことができる。
【0079】
また、垂直アーム8dは、上下に駆動される駆動体である。駆動体が洗浄液12によって劣化する可能性がある場合には、垂直アーム8dの周囲を、本例のように、防水カバー8fで囲めば良い。本例では、防水カバー8fを、貯留槽4bの底から取り付け部材8bの支持部8cの下方との間に取り付けているので、防水カバー8fも貯留槽4b内の洗浄液12を用いて洗浄できる。よって、防水カバー8fに付着したミストも、昇降カップ8に付着したミストごと洗い流すことができる。
【0080】
図15A及び図15Bは、図13に示す昇降カップ8の近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【0081】
昇降カップ8の利用方法であるが、昇降カップ8を上昇させておくことで、ミストを遮蔽するミスト遮蔽板として利用することができる。
【0082】
例えば、図15Aに示すように、例えば、ノズル2cを用いたアルカリを含む処理液21、例えば、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC−1)を用いた処理の際に飛散してくるアルカリ性ミスト30から、第2処理液供給部2bを保護、及びケーシング6内部での飛散を防止することができる。
【0083】
本例の第2処理液供給部2bは、酸を含む処理液を吐出するノズル2gと、乾燥溶媒を吐出するノズル2hとを備えている。これらのノズル2g及び2hに、もしもアルカリ性ミスト30が付着したならば、塩が生成されたり、新たなパーティクルが生成されたりする。このような事情は、昇降カップ8を上昇させて、アルカリ性ミスト30が、第2処理液供給部2bに向かって飛散しないように遮蔽することで解消することができる。
【0084】
ミストの遮蔽効果を高めるためには、例えば、図15Aに示すように、昇降カップ8の上端部8gの位置を、例えば、酸を含む処理液を吐出するノズル2g、及び/又は乾燥溶媒を吐出するノズル2hの位置よりも、高さH1高くなるように上昇させれば良い。
【0085】
また、上昇時においては、貯留槽4bの内部に洗浄液12を貯留しておき、昇降カップ8の下端部8hの位置を、洗浄液12の液面12aの位置よりも、高さH2低くなるようにして下端部8hを洗浄液12中に水没させておけば良い。このように下端部8hを洗浄液12中に水没させておくことで、下端部8hの下方を介したミストの飛散経路を、水封により遮断することができる。
【0086】
昇降カップ8をミスト遮蔽板として利用した場合には、昇降カップ8にミスト、例えば、アルカリ性ミスト30が付着する。このため、昇降カップ8は洗浄しなければならないが、本例では昇降カップ8を、外カップ4の貯留槽4bの内部と、この貯留槽4bの上方との間で昇降するようにしたことで、簡易な洗浄を実現した。
【0087】
即ち、上昇させた昇降カップ8を、図15Bに示すように、貯留槽4bの内部に下降させ、昇降カップ8を、貯留槽4bに貯留された洗浄液12に浸漬するだけで洗浄することができる。
【0088】
洗浄効果をより良く得るためには、図15Bに示すように、洗浄液12を供給管4cから貯留槽4b内に供給し続け、かつ、洗浄液12を、第1排液管4dを介して貯留槽4bから排液し続けると良い。このようにすれば、清浄な洗浄液12を供給しながら、汚れた洗浄液12を排液することができるので、洗浄効果を高めることができる。
【0089】
また、洗浄時においては、図15Bに示すように、昇降カップ8の上端部の位置を、洗浄液12の液面の位置よりも高さH3低くなるようにして昇降カップ8の全体を洗浄液12中に水没させるようにすると、なお良い。昇降カップ8の全体を洗浄液12中に水没させておくことで、昇降カップ8の上端部に付着したミストについても洗い流すことができる。
【0090】
第2の実施形態に係る基板処理装置100bによれば、酸を含む処理液を吐出するノズル2gと、乾燥溶媒を吐出するノズル2hとを備えた第2処理液供給部2bに向かってミスト、例えば、アルカリ性ミストが飛散することを抑制できる。よって、第1の実施形態に係る基板処理装置100aと同様に、アルカリ性処理液を用いても、塩の生成や新たなパーティクルの発生を抑制し得る基板処理装置を得ることができる。
【0091】
次に、第2の実施形態に係る基板処理装置100bを用いた基板処理方法の例のいくつかを説明する。
【0092】
(基板処理方法1)
図16は、第2の実施形態に係る基板処理装置100bを用いた基板処理方法の第1例を示す流れ図、図17乃至図20は、主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図である。本例は、アルカリを含む処理液を用いた基板処理、酸を含む処理液を用いた基板処理、及び有機系乾燥溶媒を用いた乾燥処理を順次行う例である。
【0093】
図16中のステップ11に示すように、昇降カップ8を上昇させる。
【0094】
本例では、図17に示すように、回転ステージ1a上に、保持部材1gを用いてウエハWを保持した後、第1の処理液供給部2aをウエハWの上方に移動させる。次いで、昇降機構8a(図16では省略)を用いて昇降カップ8を上昇させる。
【0095】
ステップ11の際、貯留槽4bには洗浄液12を、例えば、満たしておき、昇降カップ8の下端部を洗浄液12中に水没させておく。洗浄液12の具体例は純水(DIW)である。
【0096】
ステップ11が終了したら、図16中のステップ12に示すように、基板に対してアルカリを含む処理液を供給する。
【0097】
本例では、図18に示すように、回転ステージ1aを回転させてウエハWを回転させる。次いで、ウエハWの表面に対して、アルカリを含む処理液21をノズル2cから供給する。処理液21の具体例は、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC−1)である。その温度は約70℃である。
【0098】
また、ステップ12の間、ウエハWは回転しているので、処理液21、又は処理液21のミストが昇降カップ8に向かって飛散してくる。このため、昇降カップ8の下の貯留槽4bに、処理液21、又は処理液21のミストが落下することがある。もし、貯留槽4b内の洗浄液12を清浄に保ちたいのであれば、供給管4cから洗浄液12を供給し続け、第1排液管4dからは洗浄液12を排液し続けると良い。
【0099】
ステップ12が終了したら、図16中のステップ13に示すように、昇降カップ8を下降させ、昇降カップ8を洗浄液12に浸漬する。
【0100】
本例では、図19に示すように、昇降カップ8を貯留槽4bの洗浄液12中に、例えば、水没させる。水没された状態で、供給管4cから洗浄液12を供給し続け、第1排液管4dからは洗浄液12を排液し続ける。このようにして、昇降カップ8を洗浄する。
【0101】
なお、ステップ13に並行して、ステップ14に示すように、基板に対してリンス液を供給する。なお、昇降カップ8は、リンス工程の途中まで上昇させておき、リンス工程の途中から貯留槽4b内に下降させるようにすることも可能である。
【0102】
本例では、図19に示すように、ウエハWの表面に対して、ノズル2cからリンス液22を供給する。リンス液22の具体例は純水(DIW)である。
【0103】
また、ステップ12が終了したら、図16中のステップ15に示すように、ドレインカップ3に対して、外カップ4から洗浄液12をオーバーフローさせる。
【0104】
本例では、図20に示すように、バルブ4gを閉めて、洗浄液12を貯留槽4bからドレインカップ3の上端部3fを介して液収容部3cに向かってオーバーフローさせる。この際、バルブ3eも、例えば、閉じ、液収容部3cからも洗浄液12をオーバーフローさせる。これにより、ドレインカップ3に付着したミストは、液収容部3cの上方に付着したものも含めて洗い流すことができる。
【0105】
また、ステップ15に並行して、ステップ14に示した基板リンス工程が行われる。
【0106】
ステップ15以降は、図7を参照して説明したステップ4乃至6を実施すれば良い。ステップ4乃至6に示す工程は上述した通りである。その説明は省略する。
【0107】
このような基板処理方法によれば、アルカリを含む処理液を用いた第1の基板処理工程に際し、昇降カップ8を上昇させることで、ミストが基板保持部1の周囲に飛散することを抑制する。このため、酸を含む処理液を吐出するノズルや、有機系乾燥溶媒を吐出するノズルに、例えば、アルカリ性ミストが付着することを抑制できる。よって、酸を含む処理液を吐出するノズルに塩が生成されてしまうことや、有機系乾燥溶媒を吐出するノズルに、新たなパーティクルが発生してしまうことを抑制することができる。
【0108】
このように、上記基板処理方法によれば、アルカリ性処理液を用いても、塩の生成や新たなパーティクルの発生を抑制し得る基板処理方法を得ることができる。
【0109】
(基板処理方法2)
昇降カップ8は、アルカリ性ミストを遮蔽するだけではなく、例えば、二流体スプレー工程におけるミストの遮蔽にも利用することができる。昇降カップ8を、二流体スプレー工程におけるミストの遮蔽に利用した例を、基板処理方法の第2例として説明する。
【0110】
図21は、第2の実施形態に係る基板処理装置100bを用いた基板処理方法の第2例を示す流れ図、図22乃至図24は、主要な工程における基板処理装置100bの状態を概略的に示した断面図である。本例は、アルカリを含む処理液を用いた基板処理、酸を含む処理液を用いた基板処理、及び有機系乾燥溶媒を用いた乾燥処理を順次行う例である。
【0111】
図21に示すように、本例では、図16に示したステップ11からステップ15にかけての工程をふむ。ステップ11からステップ15は、基板処理方法1の欄において説明した通りであるので、その説明は省略する。
【0112】
ステップ15、即ちドレインカップ洗浄工程が終了したら、図21中のステップ21に示すように、昇降カップ8を上昇させる。
【0113】
本例では、図22に示すように、第1の処理液供給部2aをウエハWの上方に移動させる。次いで、昇降機構8aを用いて昇降カップ8を上昇させる。
【0114】
ステップ21の際、貯留槽4bには洗浄液12を、例えば、満たしておき、昇降カップ8の下端部を洗浄液12中に水没させておく。洗浄液12の具体例は純水(DIW)である。
【0115】
ステップ21が終了したら、図21中のステップ22に示すように、基板に対して洗浄液と気体とを混合した液滴を噴霧する。
【0116】
本例では、図23に示すように、ウエハWの表面に対して、洗浄液と気体とを同時に供給することで生成した二流体洗浄液27を噴霧する。二流体洗浄液27の具体例は、洗浄液を純水(DIW)、気体を窒素ガスとして生成したものである。
【0117】
ステップ22が終了したら、図21中のステップ23に示すように、昇降カップ8を下降させ、昇降カップ8を洗浄液12に浸漬する。
【0118】
本例では、図24に示すように、昇降カップ8を貯留槽4bの洗浄液12中に、例えば、水没させる。水没された状態で、供給管4cから洗浄液12を供給し続け、第1排液管4dからは洗浄液12を排液し続ける。このようにして、昇降カップ8を洗浄する。
【0119】
なお、ステップ23に並行して、ステップ24に示すように、基板に対して酸を含む処理液を供給し、第2の基板処理工程を行うこともできる。さらには、ステップ25に示すように、基板に対してリンス液を供給し、基板リンス工程も並行して行うこともできる。
【0120】
ステップ25が終了したら、図7を参照して説明したステップ6、例えば、基板乾燥工程を実施すれば良い。基板乾燥工程、即ちステップ6に示す工程は上述した通りであるので、その説明は省略する。
【0121】
このような基板処理方法によれば、ミストが発生しやすい二流体スプレー工程に際し、昇降カップ8を上昇させることで、ミストが基板保持部1の周囲に飛散することを抑制できる。
【0122】
このように、第2の実施形態に係る基板処理装置100bが備える昇降カップは、二流体スプレー工程におけるミストの遮蔽にも使うこともできる。
【0123】
(第3の実施形態)
図25は、この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図である。図25においては、図1と同一の部分には同一の参照符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0124】
図25に示すように、第3の実施形態に係る基板処理装置100cが、第1の実施形態に係る基板処理装置100aと異なるところは、ドレインカップ3の上端部3fが、外カップ4の貯留槽4bから、ドレインカップ3の液収容部3cに向かって低くなるように傾斜していること、である。他の部分は、第1の実施形態に係る基板処理装置100aとほぼ同様である。
【0125】
本例のようにドレインカップ3の上端部3fを傾斜させることで、貯留槽4bから洗浄液12をオーバーフローさせた際、洗浄液12が上端部3f上を流れやすくすることができる。さらに、上端部3fを傾斜させておくことで、洗浄液12が上端部3f上を加速しながら、ドレインカップ3の外周壁3aに向かって流すことができ、洗浄液12の流速を高めることができる。
【0126】
このようにドレインカップ3の上端部3fを傾斜させた第3の実施形態によれば、貯留槽4bからオーバーフローさせた洗浄液12を利用したドレインカップ3の洗浄において、その洗浄効果を、より高めることが可能となる。
【0127】
なお、図25には、上端部3fを傾斜させた例を、第1の実施形態に適用した例を示しているが、上端部3fを傾斜させる第3の実施形態は、第2の実施形態にも適用することができる。
【0128】
以上、この発明を実施形態により説明したが、この発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。
【0129】
例えば、上記実施形態では、ウエハの表裏面洗浄を行う洗浄処理装置を例にとって示したが、本発明はこれに限らず、表面のみまたは裏面のみの洗浄処理を行う洗浄処理装置であってもよく、また、洗浄処理に限らず、他の液処理であっても構わない。
【0130】
さらに、上記実施形態では被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板等、他の基板に適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0131】
1…基板保持部、2…処理液供給機構、2a…第1処理液供給部、2b…第2処理液供給部、2c…ノズル(アルカリ)、2d…ノズル(二流体スプレー)、2g…ノズル(酸)、2h…ノズル(乾燥溶媒)、2i…ノズル(気体)、3…ドレインカップ、3a…外周壁、3b…内周壁、3c…液収容部、3f…上端部、4…外カップ、4a…外周壁、4b…貯留槽、4c…供給管、4d…第1排液管、10…排液位置、11…供給位置、12…洗浄液、13…上端部3fの位置、21…アルカリを含む処理液、22…リンス液、23…酸を含む処理液、24…リンス液、25…乾燥溶媒、26…気体、27…二流体洗浄液、W…基板(ウエハ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部と、前記基板保持部に保持された基板に対して酸を含む処理液を供給する第2の処理液供給部とを、備える処理液供給機構と、
前記基板保持部の外側に設けられ、前記基板に供給された処理液を回収可能なドレインカップと、
前記ドレインカップの外側に設けられ、洗浄液を貯留可能な外カップと、
を具備し、
前記ドレインカップが、
前記基板保持部の周囲に設けられた外周壁と、
前記外周壁の下方部分に設けられた、前記処理液を回収し、収容する液収容部と、を備え、
前記外カップが、
前記ドレインカップの外周壁の周囲に設けられ、前記洗浄液を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に前記洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記貯留槽から前記洗浄液を、前記ドレインカップとは異なる箇所に排液する洗浄液排液部と、を備え、
前記外カップの洗浄液排液部が、前記ドレインカップの外周壁の上端部よりも低い位置にあり、
前記外カップの洗浄液供給部が、前記外カップの洗浄液排液部よりも低い位置にあり、
前記貯留槽の上方が、開放されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記外カップの貯留槽内と、前記貯留槽の上方との間で昇降する昇降カップを、さらに具備することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記昇降カップの上昇時、前記昇降カップの上端部が、前記第2の処理液供給部の酸を含む処理液を供給する部分よりも上に位置されることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記昇降カップの上昇時、前記昇降カップの下端部が、前記貯留槽内に満たされた洗浄液中に水没されることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記昇降カップの下降時、前記昇降カップの全体が、前記貯留槽内に満たされた洗浄液中に水没されることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記昇降カップを昇降させる昇降機構が、前記貯留槽の外側から前記貯留槽の中にかけて設けられ、
前記昇降機構のうち、前記貯留槽の中に設けられた部分が、前記貯留槽内で洗浄可能なように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理液供給機構が、有機系乾燥溶媒を供給する乾燥溶媒供給部を、備え、
前記第1の処理液供給部が処理位置にあるとき、前記乾燥溶媒供給部が前記処理位置とは異なる位置にあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記有機系乾燥溶媒が、イソプロパノールを含む有機系乾燥溶媒であり、
前記アルカリを含む処理液が、アンモニアを含む処理液であり、
前記酸を含む処理液が、弗酸を含む処理液であり、
前記洗浄液が純水であることを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記外カップは、前記ドレインカップの外周壁の外側に設けられた筒状をなす外周壁を有し、前記ドレインカップの外周壁と前記外カップの外周壁とによって規定された空間を、前記貯留槽とすることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記空間は環状であり、前記昇降カップは円筒形であり、
前記円筒形の昇降カップが、前記ドレインカップの外周壁を囲むことを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−119722(P2012−119722A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28774(P2012−28774)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2007−318881(P2007−318881)の分割
【原出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】