説明

基板検査装置

【課題】基板上に存在するスジ状の欠陥を検出することができる基板検査装置および基板検査方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板W上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが画像上で異なるように、撮像部26と照明部24を、ガラス基板W上に存在するスジ状の欠陥の方向(X方向)と異なる方向(Y方向)に移動させながら撮像を行う。その結果、ガラス基板W上に発生するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが異なる画像が得られる。それらの方向の違いを考慮した輝度値の演算を行うことによって、ガラス基板W上に存在するスジ状の欠陥を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ(FPD)等に用いられる基板を検査する基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FPD等の製造工程においては、大型ガラス基板等の基板に塗布されたレジスト等の膜ムラや、異物、汚れ、キズ等の欠陥の検査が行われている。この検査に用いられる基板検査装置として、基板を一定方向に移動させながら、基板の移動方向と交差する方向に画素が並んだラインセンサカメラで基板の表面を走査して撮像した画像を処理することによって検査を行うものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記のような基板検査装置で撮像された画像には、照明やカメラといった光学系の影響により、ラインセンサの副走査方向(基板の移動方向)に沿ってスジ状の輝度ムラが現れる。そのため、画像の輝度ムラを補正するシェーディング補正(例えば特許文献2参照)が行われる。このシェーディング補正を完璧に行うことは、以下の理由により困難である。
1.基板の品種や工程によりノイズ強度が異なるため、補正データを品種毎、工程毎に用意する必要がある。
2.ノイズ強度が撮像角度に依存するため、上記に加え、角度毎の補正データも用意する必要がある。
3.ラインセンサに用いられるCCD(Charge Coupled Devices)のノイズ強度がカメラ本体の温度に依存する。
【0004】
したがって、シェーディング補正を行った画像でも、微妙な輝度濃淡を持った大小様々なスジ状の模様が、ラインセンサの副走査方向に沿って現れる。ラインセンサの副走査方向は通常、基板の移動方向と等しいため、スジ状の模様は、基板の移動方向に沿って現れる。一方、基板の表面にレジストを塗布する塗布装置も基板の移動方向に沿ってレジストを塗布することが多いため、塗布ムラに起因するスジ状の欠陥も、基板の移動方向に沿って現れる。
【特許文献1】特開2000−9661号公報
【特許文献2】特開2005−303705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板検査においては、塗布ムラに起因するスジ状の欠陥を検出したいのだが、上記の理由により、基板を撮像した画像では、光学系に起因するスジ状の模様の方向と、塗布ムラに起因するスジ状の欠陥の模様の方向が同方向であるため、これらを区別してスジ状の欠陥のみを検出することが困難であった。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、基板上に存在するスジ状の欠陥を検出することができる基板検査装置および基板検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、検査対象の基板を照明する照明手段と、前記基板を撮像して画像データを生成する撮像手段と、前記基板上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが画像上で異なるように、前記基板、前記照明手段、および前記撮像手段のうち少なくともいずれかを移動させる移動手段と、前記画像データの輝度値に基づいた演算により前記スジ状の欠陥を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする基板検査装置である。
【0008】
また、本発明は、検査対象の基板上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが画像上で異なるように、前記基板、前記基板を照明する照明手段、および前記基板を撮像して画像データを生成する撮像手段のうち少なくともいずれかを移動させながら、前記撮像手段に前記画像データを生成させるステップと、前記画像データの輝度値に基づいた演算により前記スジ状の欠陥を検出するステップとを備えたことを特徴とする基板検査方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板を撮像した画像上で、基板上に発生するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが異なっているので、それらの方向の違いを考慮した輝度値の演算を行うことによって、基板上に存在するスジ状の欠陥を検出することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1、図2、および図3に示すように、基板検査装置1は、除振装置2を介して床面に設置されるベース本体3を備えている。ベース本体3上には、エアーを吹き出してFPD用ガラス基板(ガラス基板W)を浮上させる、基板搬送手段たる浮上ステージ4が敷設されている。
【0012】
浮上ステージ4において、ベース本体3の長手方向(X方向)の一端部側から、ガラス基板Wの搬送方向(長手方向)に沿って、細長の浮上ブロック(搬送用浮上ブロック)5,6が、所定の間隔を空けて複数配設されている。また、この浮上ステージ4の長手方向の中間位置において、ガラス基板Wの浮上高さを高精度に制御可能な精密浮上ブロック(検査用浮上ブロック)7が、浮上ブロック5,6の長手方向に直交する幅方向(Y方向)に配置されている。
【0013】
これら浮上ブロック5,6と精密浮上ブロック7には、その上面に開口するエアー吹き出し孔10(図1には一部のみ図示されている)が等間隔に複数配設されている。これらエアー吹き出し孔10はエアコンプレッサ等の流体供給源11に接続されている。精密浮上ブロック7は、浮上ブロック5,6に比べて、エアー吹き出し孔10が密に配置されたものや、エアー吹き出し孔10の他にエアー排出孔を設け、エアー吐出力(正圧)とエアー吸引力(負圧)により、ガラス基板Wの浮上高さを高精度に制御するものであればよい。
【0014】
さらに、ベース本体3上で、長手方向に平行な一方の側縁部には、浮上ステージ4と平行にガイドレール12が敷設されており、このガイドレール12には、基板吸着テーブル13が移動自在に取り付けられている。基板吸着テーブル13には、ガイドレール12に沿って自走可能なリニアモータ等のスライド部14が設けられている。このスライド部14には、ガラス基板Wを吸着する吸着部15が上下移動可能に支持されている。吸着部15は、ベース本体3の長手方向に沿って等間隔に複数配設されている。各吸着部15の先端には樹脂性の吸着パッドが設けられ、この吸着パッドには上下に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔は吸引ポンプ17に接続されている。
【0015】
さらに、ベース本体3のガラス基板Wの搬入領域には、ガラス基板Wを挟むように、位置決め機構である基準ピン18と押し付けピン19が複数配設されている。基準ピン18は、浮上ステージ4の上面に対して出没可能に上下移動自在になっており、押し付けピン19は、ガラス基板Wに向かう方向に移動自在になっている。
【0016】
なお、ベース本体3のガラス基板Wの搬入領域の浮上ステージ4の下方には、ガラス基板Wをリフトアップして、搬送用ロボットによる基板交換を可能にする基板リフト部が設けられている。この基板リフト部では、上下移動するリフトピン20が、搬送用ロボットのロボットハンドと干渉しないように複数配置されている。
【0017】
ここで、浮上ステージ4において、ベース本体3の一端部から他端部に至るまでの間には、自動マクロ検査部21が配設されている。自動マクロ検査部21は、浮上ステージ4をY方向に平行に跨ぐように、ガイドレールを介してベース本体3に取り付けられた門型フレーム23を有する。門型フレーム23は、ガイドレールに沿って自走可能なリニアモータ等の図示しないスライド部に固定されている。
【0018】
門型フレーム23の水平フレーム部の一方の側面に沿って照明部24が取り付けられており、門型フレーム23の水平フレーム部の上面の、照明部24よりも高い位置に反射部25と撮像部26が取り付けられている。照明部24は、Y方向に平行な細長の照明光を基板表面に向かって照射するライン照射用光源27を有している。ライン照明用光源27としては、例えば、棒状のロッドレンズの端面に光源を配したものが挙げられる。
【0019】
照明光の反射光の光路上には、反射光を撮像部26に向かって折り返すミラー28を備えた反射部25が配置されている。撮像部26は、カメラレンズ29と、カメラレンズ29よりも他端部側に配置されたラインセンサカメラ30とを備えている。カメラレンズ29の前には、干渉フィルタ61が光路上に挿抜自在に配置されている。照明部24と、反射部25と、撮像部26との配置は、ガラス基板Wの観察領域で反射した光が収束しつつ像を結ぶように設定されている。
【0020】
また、門型フレーム23の可動範囲内でガラス基板WのY方向の幅が常に撮像部26の撮像範囲内に収まるように、反射部25と撮像部26の配置が調整されている。さらに、ガラス基板W表面の干渉像および回折像を取得するために、ライン照明用光源27は、任意の入射角度に設定できるように回動可能に設けられている。入射角度の変更は、駆動機構60により行われる。
【0021】
上記のような自動マクロ検査部21はマクロ用制御部31に接続されている。照明制御部31aはライン照明用光源27の発光及び角度の制御を行う。フィルタ制御部31bは干渉フィルタ61の挿抜を制御する。画像取り込み部31cは、ラインセンサカメラ30から出力されたライン毎の画像データを取り込み、各ラインの画像データを合成して2次元の画像データを生成する。画像処理部31dは、画像取り込み部31cで生成された2次元の画像データを画像処理し、欠陥検出を行う。メモリ31eは、検出された欠陥の情報を保持する。
【0022】
基板検査装置1の全体の制御は、装置制御部50により統括して行われるようになっている。装置制御部50は、浮上ステージ4、門型フレーム23、基板吸着テーブル13、押し付けピン19、基板リフト部、マクロ用制御部31に接続されている。さらに、装置制御部50には、画像を表示するモニタ51と、観察者の操作を受け付ける操作部52とが接続されている。
【0023】
また、ガラス基板Wにはガラス製の方形基板が用いられ、このガラス基板W上に、配線やフィルタ等のパターンが半導体技術を用いて作製される。ガラス基板Wの欠陥とは、フィルタの膜や、製造過程で一時的に塗布されるレジスト膜等のパターン自体に膜ムラが発生しているような巨視的なものを指す。これらのパターンが、基板検査における検査対象となる。
【0024】
次に、本実施形態における基板検査の方法を説明する。図4は、本実施形態の特徴的な処理のみの手順を示しており、適宜、図4を参照する。まず、高輝度側しきい値と低輝度側しきい値を設定する(ステップS400)。これらのしきい値の詳細は後述する。続いて、浮上ステージ4の各エアー吹き出し孔10からエアーを上向きに吹き出させ、搬送用ロボットによって搬送されるガラス基板Wを浮上ステージ4上に移動および載置する。具体的には、各基準ピン18を浮上ステージ4の上面より突出させるように上昇させた後、基板リフト部を上方に移動させた状態で、リフトピン20により搬送ロボットからガラス基板Wを受け取って、基板リフト部をリフトダウンする。
【0025】
その結果、ガラス基板Wが、エアーによって浮上ステージ4上に浮上させられる。ガラス基板Wを浮上させた状態で、各押し付けピン19をX方向またはY方向に移動させ、ガラス基板Wを各基準ピン18に押し付けて位置決めを行ってから、吸引ポンプ17を駆動させてガラス基板Wを基板吸着テーブル13の吸着部15の先端の吸着パッドで吸着保持する。
【0026】
ガラス基板Wを位置決めして吸着保持したら、各基準ピン18を、基板吸着テーブル13およびガラス基板Wと干渉しない退避位置に下降させた後、基板吸着テーブル13をガイドレール12に沿って他端部(X方向)に向かって等速度で移動させる。このとき同時に、門型フレーム23をY方向に等速移動させる。これによって、照明部24、反射部25、および撮像部26がY方向に等速移動する。なお、照明部24、反射部25、撮像部26を一体で形成し、それらが一体で門型フレーム23上を移動する構成としてもよい。また、Y方向への移動量はガラス基板Wの横(Y方向)のサイズの1/4程度あることが望ましい。
【0027】
ガラス基板W上にライン照明用光源27からライン照明光が照射され、ガラス基板W表面での反射光が、撮像部26により撮像され、画像データが生成される。この場合、マクロ検査領域でガラス基板Wを往復させ、往路と復路でライン照明用光源27の入射角度を、撮像部26で回折光または干渉光が撮像される角度に変更し、回折画像と干渉画像とを撮像する(ステップS401)。
【0028】
マクロ用制御部31の画像処理部31dは、画像取り込み部31cで生成された2次元の画像データにシェーディング補正を行い(ステップS402)、続けて以下のようにして欠陥検出を行う。図5(a)の画像500は、門型フレーム23をY方向に移動させながら撮像した画像に対してシェーディング補正を行った後の画像を模式的に示している。説明の便宜上、画像500はガラス基板Wのみの画像を示すものとする。
【0029】
撮像部26がY方向に移動するため、撮像部26から見ると、ガラス基板WがY方向に平行な方向に移動することになる。すなわち、撮像部26を基準としたガラス基板WのY方向の位置が撮像タイミング毎に異なることになるので、各撮像タイミングで生成されたライン毎の画像を合成した2次元の画像500では、方形のガラス基板Wの外形が方形でなくなっている。
【0030】
ガラス基板Wの辺W1およびW2に平行な模様501および502は、ガラス基板W上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様である。また、撮像部26とライン照明用光源27が一体的にY方向に移動するため、撮像部26から見ると、ライン照明用光源27の輝度ムラのY方向の位置は一定である。したがって、模様503および504は光学系に起因する模様である。図5(a)に示すように、模様501および502の方向(A方向)と模様503および504の方向(B方向)は異なっている。
【0031】
画像処理部31dは、ガラス基板Wの外形が方形となるように画像500を補正し、図5(b)の画像510を生成する(ステップS403)。模様511,512,513,514はそれぞれ図5(a)の模様501,502,503,504にそれぞれ対応している。この画像補正は、後述する処理に適した画像を生成するために行うものであり、スジ状欠陥の方向(すなわち模様501および502の方向)が、画素の並ぶ方向(X方向)と一致するように画像補正が行われる。
【0032】
図6はこの画像補正の方法を示している。図6(a)において、横方向に5つの領域が並んだ領域群600は、Nライン目の撮像時にラインセンサの各画素が撮像したガラス基板W上の撮像領域を示している。また、横方向に5つの領域が並んだ領域群610は、N+1ライン目の撮像時にラインセンサの各画素が撮像したガラス基板W上の撮像領域を示している。Nライン目とN+1ライン目のY方向位置がずれているため、前述したように、各ラインの画像を単純に合成した2次元画像上でのガラス基板Wの外形が方形でなくなる。
【0033】
そこで、Nライン目とN+1ライン目のY方向位置をずらさずに撮像したときと同様の画像となるように画像補正を行う。図6(b)において、領域群620および630は、撮像部26をY方向に移動させずに撮像を行ったときのNライン目とN+1ライン目のガラス基板W上の撮像領域を示している。例えば、N+1ライン目の領域631は、実際の撮像では図5(a)の領域611と612のそれぞれに分離している。
【0034】
そこで、領域631に対応した画素の輝度値を、領域611と612のそれぞれに対応した画素の輝度値から、以下の式により求める。これによって、撮像部26をY方向に移動させる実際の撮像で得られた画像を、撮像部26をY方向に移動させない撮像で得られる画像に変換することができる。
領域631の輝度値=(領域611の輝度値×α)+(領域612の輝度値×(1−α))
【0035】
なお、上式において、αは、領域631に対応した図6(a)の部分のY方向で領域611が占める割合を示しており、撮像部26の移動速度から求めることができる。上記の処理を各領域について行うことによって、図5の画像500から画像510を生成することができる。
【0036】
続いて、画像処理部31dは、図7のY’方向の各画素位置について、X方向(スジ状の欠陥に起因する模様の方向と同じ方向)に並んだ各画素の輝度値を積算し、輝度積算値曲線700を生成する(ステップS404)。図4のステップS400で設定された低輝度側しきい値を下回る曲線の谷部分701は画像510上の模様511に対応している。また、高輝度側しきい値を超える曲線の山部分702は画像510上の模様512に対応している。
【0037】
模様511と512はいずれも、ガラス基板W上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様である。画像処理部31dは、輝度積算値曲線700を構成する各輝度値と高輝度側しきい値および低輝度側しきい値とを比較することによって、谷部分701と山部分702をスジ状の欠陥として検出する(ステップS405)。なお、高輝度側しきい値および低輝度側しきい値として、最初は任意の値を設定し、以降は欠陥検出の精度に応じて経験的に値を決定すればよい。また、輝度積算値曲線700の輝度分布を生成し、統計的手法によってしきい値を決定してもよい。例えば、輝度分布の平均値と標準偏差を算出し、平均値から標準偏差の数倍離れた輝度値をしきい値とすればよい。
【0038】
検査が終了したら、基板吸着テーブル13を浮上ステージ4の一端部側の受け渡し位置(ガラス基板Wの搬入位置)まで搬送し、基板Wの吸着保持を解除してから、基板リフト部で基板Wをリフトアップする。この際、基板吸着テーブル13上に配置された各吸着部15の吸着パッドがガラス基板Wの裏面に接触し、この吸着パッドの摩擦力により、エアー浮上したガラス基板Wの移動力が規制される。これにより、ガラス基板Wは、位置決めされた状態でリフト部の各リフトピン20に受け渡される。他のガラス基板の検査を行う場合には、ロボットによってガラス基板が交換され、次のガラス基板について同様に検査を行う。
【0039】
次に、本実施形態による効果を説明する。図8の画像800は、従来と同様に撮像部26とライン照明用光源27をベース本体3に対して固定した状態でガラス基板Wを撮像した画像を示している。模様801〜804の方向はいずれも同一であり、各模様が、基板上のスジ状の欠陥に起因するのか、光学系による輝度ムラに起因するのかを区別することが困難である。
【0040】
画像800に対して本実施形態の欠陥検出方法を適用すると以下のようになる。輝度積算値曲線805は、図8のY’方向の各画素位置に関して、X方向に並んだ各画素の輝度値を積算して得られる曲線である。輝度積算値曲線805を構成する各輝度値と高輝度側しきい値および低輝度側しきい値とを比較することによって、谷部分806,807と山部分808,809を検出することができるか、それらが、基板上のスジ状の欠陥に起因するのか、光学系による輝度ムラに起因するのかを区別することはできない。
【0041】
これに対して、本実施形態では、基板上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが画像上で異なるように、撮像部26とライン照明用光源27を、基板上に存在するスジ状の欠陥の方向と異なる方向に移動させながら撮像を行う。その結果、基板上に発生するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが異なる画像が得られる。それらの方向の違いを考慮した輝度値の演算を行うことによって、基板上に存在するスジ状の欠陥を検出することができる。また、輝度積算値曲線を構成する各輝度値と所定のしきい値とを比較することによって、簡易な方法でスジ状の欠陥を検出することができる。
【0042】
なお、図5の画像500において、スジ状の欠陥に起因する模様501および502の方向に沿って輝度値を積算することによって、図7の輝度積算値曲線700に対応した曲線を生成し、その曲線を構成する各輝度値と所定のしきい値とを比較することによって、スジ状の欠陥を検出するようにしてもよい。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。撮像部26に起因するノイズは画像上で検出しやすいため、本実施形態ではその影響を無視する。したがって、ライン照明用光源27が第1の実施形態と同様に門型フレーム23と共にY方向に移動する一方で、撮像部26はベース本体3に固定されている(図示省略)。
【0044】
撮像動作は第1の実施形態と同様であり、門型フレーム23をY方向に移動させながらガラス基板Wを撮像する。本実施形態では、撮像部26が固定されているため、画像上のガラス基板Wの外形は方形のままである。また、ライン照明用光源27がY方向に移動するため、その移動に伴って、輝度ムラがY方向に移動する。その結果、撮像された画像は図5の画像510と同様の画像となる。得られた画像データに対する以降の処理は第1の実施形態と同様である。
【0045】
本実施形態によれば、第1の実施形態で説明した画像補正を行う必要がなくなるので、処理時間を短縮することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態で説明したように、ベース本体3のガラス基板Wの搬入領域には、ガラス基板Wを挟むように、位置決め機構である基準ピン18と押し付けピン19が複数配設されている。基準ピン18は、浮上ステージ4の上面に対して出没可能に上下移動自在になっており、押し付けピン19は、ガラス基板Wに向かう方向に移動自在になっている。また、本実施形態では、門型フレーム23はベース本体3に対して固定されている(図示省略)。
【0047】
押し付けピン19は、方形のガラス基板Wの一辺が図1のX方向、Y方向のいずれとも非平行となるように、ガラス基板Wを基準ピン18に押し付ける。続いて、ガラス基板WをX方向に移動させながらガラス基板Wを撮像する。図9は、本実施形態で撮像された画像を示している。図9の画像900は、図5の画像500等と異なり、ガラス基板W以外の部分も含んでいる。
【0048】
模様901は、ガラス基板W上に存在するスジ状の欠陥の模様である。また、撮像部26およびライン照明用光源27がベース本体3に対して固定されているため、光学系に起因する輝度ムラのY方向位置は一定である。模様902は、光学系に起因する輝度ムラの模様である。画像処理部31dは、模様901の方向(C方向)が、画素の並ぶ方向(X方向)と一致するように画像900を回転させることによって、画像補正を行う。以降の処理は第1の実施形態と同様である。
【0049】
上述したように、本実施形態では、基板上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが画像上で異なるようにガラス基板Wを載置した状態でガラス基板Wを所定方向に移動させながら撮像を行う。その結果、基板上に発生するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが異なる画像が得られるので、第1の実施形態と同様にスジ状の欠陥を検出することができる。また、門型フレーム23の移動機構を設けなくてよいので、第1および第2の実施形態と比較して装置構成を簡易にすることができる。
【0050】
なお、スジ状の欠陥に起因する模様901の方向に沿って輝度値を積算することによって、図7の輝度積算値曲線700に対応した曲線を生成し、その曲線を構成する各輝度値と所定のしきい値とを比較することによって、スジ状の欠陥を検出するようにしてもよい。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、ライン照明用光源27はLED等でもよい。また、反射部25を設けずに基板表面からの光が撮像部26に直接入射するようにしてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、光学系全体が、または撮像部26を除く光学系が図1のY方向へ移動するが、光学系の構成部品である照明のみ、ミラーのみ、カメラのみ、フィルタのみ、あるいはそれらの組合せが図1のY方向へ移動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態による基板検査装置の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による基板検査装置の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による基板検査装置が備える光学系の構成を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における欠陥検出の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態における欠陥検出の方法を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における画像補正の方法を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における欠陥検出の方法を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における欠陥検出の方法による効果を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における欠陥検出の方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0054】
13・・・基板吸着テーブル(移動手段)、23・・・門型フレーム(移動手段)、24・・・照明部(照明手段)、26・・・撮像部(撮像手段)、31d・・・画像処理部(検出手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の基板を照明する照明手段と、
前記基板を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
前記基板上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが画像上で異なるように、前記基板、前記照明手段、および前記撮像手段のうち少なくともいずれかを移動させる移動手段と、
前記画像データの輝度値に基づいた演算により前記スジ状の欠陥を検出する検出手段と、
を備えたことを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記スジ状の欠陥の方向に輝度値を積算した値としきい値との比較により前記スジ状の欠陥を検出することを特徴とする請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記スジ状の欠陥の方向と異なる方向に前記照明手段と前記撮像手段を移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板検査装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記スジ状の欠陥の方向と異なる方向に前記基板を移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板検査装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記スジ状の欠陥の方向と、画素が並ぶ方向との関係に応じて前記画像データを補正した上で、前記画素が並ぶ方向に輝度値を積算することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の基板検査装置。
【請求項6】
前記撮像手段は固定されており、
前記移動手段は、前記スジ状の欠陥の方向と異なる方向に前記照明手段を移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板検査装置。
【請求項7】
検査対象の基板上に存在するスジ状の欠陥に起因する模様の方向と、光学系に起因するスジ状の模様の方向とが画像上で異なるように、前記基板、前記基板を照明する照明手段、および前記基板を撮像して画像データを生成する撮像手段のうち少なくともいずれかを移動させながら、前記撮像手段に前記画像データを生成させるステップと、
前記画像データの輝度値に基づいた演算により前記スジ状の欠陥を検出するステップと、
を備えたことを特徴とする基板検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−39730(P2008−39730A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218128(P2006−218128)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】