説明

基板間の接続方法、フリップチップ実装体及び基板間接続構造

【課題】信頼性の高い実装体を実現することのできる基板間の接続方法を提供する。
【解決手段】第1及び第2の基板30、32との間に、導電性粒子11及び気泡発生剤を含有む樹脂10を供給し、樹脂の周縁部近傍に、第1及び第2の基板の間を塞ぐ隔壁部材20を設けた後、樹脂を加熱して、樹脂中に含有する気泡発生剤から気泡14を発生させて、樹脂を第1及び第2の電極の間に誘導するとともに、気泡を、隔壁部近傍と外部との圧力差により、外部に開放された樹脂の周縁部に導かれて外部に排出する。さらに、樹脂を加熱して、樹脂中に含有する導電性粒子を溶融して、電極間に接続体13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極が形成された基板間の接続方法、及び該接続方法を用いて形成されるフリップチップ実装体、基板間接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に使用される半導体集積回路(LSI)や回路基板、電子部品は高密度化に伴い、電極の多ピン、狭ピッチ化が急速に進んでいる。これら電子部品を実装する工法においては、狭ピッチ対応、短タクト、接続体の一括形成などが求められている。
【0003】
このような要求の中、本願出願人は、次世代の実装方法として、導電性粒子及び気泡発生剤を含有させた樹脂を用いたフリップチップ実装方法を、特許文献1に提案している。
【0004】
図11(a)〜(d)は、上記文献に開示したフリップチップ実装方法の基本的な工程を示した断面図である。
【0005】
図11(a)に示すように、複数の接続端子131を有する回路基板130上に、導電性粒子111と気泡発生剤(不図示)を含有した樹脂110を供給した後、図11(b)に示すように、回路基板130に対向させて、複数の電極端子133を有する半導体チップ132を配設する。その後、図11(c)に示すように、樹脂110を加熱して、樹脂110中の気泡発生剤から気泡114を発生させる。このとき、樹脂110は、成長する気泡114で気泡外に押し出されることによって、接続端子131と電極端子133との間に自己集合する。その後、図11(d)に示すように、樹脂110をさらに加熱することによって、接続端子131と電極端子133との間(以下、単に「端子間」という。)に自己集合した樹脂110中の導電性粒子111を溶融させて、端子間に接続体113を形成する。これにより、端子間が接続体113を介して電気的に接続されたフリップチップ実装体が得られる。なお、この方法は、電子部品が搭載された基板間の接続等にも適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4084834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記方法は、気泡発生剤から発生する気泡114の成長によって、樹脂110を端子間に移動させる促進力を付与しているため、狭ピッチな端子間の接続に適している。また、端子間に誘導された樹脂110は、表面張力により端子間に安定して留まることができ、さらに、端子間に自己集合した樹脂110中の導電性粒子111は、溶融することによって、端子間に濡れ広がることができるため、端子間に安定した接続体113を形成することができる。
【0008】
ところで、上記方法において、樹脂110中で発生した気泡114は、樹脂110を端子間に自己集合させた後、回路基板130及び半導体チップ132(以下、単に「基板」という。)周辺部(樹脂110の周縁部)から外部に排出されるのが好ましいが、端子間以外の基板間に残存する場合もある。その場合、例えば、フリップチップ実装体が、他の回路基板等に二次実装される際、再加熱によって気泡110に溜まった湿気が水蒸気爆発等を起こして、接続不良が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、樹脂中に発生した気泡の成長によって樹脂を端子間に自己集合させた後、樹脂中の導電性粒子を溶融させて端子間に接続体を形成することにより基板間を電気的に接続する方法において、樹脂中に発生した気泡を、基板周辺部(樹脂の周縁部)まで移動制御して、外部に効果的に排出することによって、信頼性の高い実装体を実現することのできる基板間の接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面における基板間の接続方法は、複数の第1の電極を有する第1の基板に対向させて、複数の第2の電極を有する第2の基板を配置し、第1の電極と第2の電極とを接続体を介して電気的に接続する基板間の接続方法であって、第1の基板と第2の基板との間であって、少なくとも複数の第1の電極及び第2の電極を覆う領域に、導電性粒子及び気泡発生剤が含有された樹脂を供給し、かつ、樹脂の周縁部近傍に、第1の基板と第2の基板との間を塞ぐ隔壁部材を設ける工程(a)と、工程(a)の後に、樹脂を加熱して、樹脂中に含有する気泡発生剤から気泡を発生させる工程(b)と、樹脂を加熱して、樹脂中に含有する導電性粒子を溶融する工程(c)とを含み、工程(a)において、隔壁部材の設けられていない前記樹脂の周縁部は外部に開放されており、工程(b)において、樹脂は、気泡発生剤から発生した気泡が成長することで気泡外に押し出されることによって、第1の電極と第2の電極との間に誘導されるとともに、樹脂中に発生した気泡は、隔壁部近傍と外部との圧力差により、外部に開放された樹脂の周縁部に導かれて外部に排出され、工程(c)において、第1及び第2の電極間に誘導された樹脂中に含有する導電性粒子が溶融することによって、第1及び第2の電極間に接続体が形成されることを特徴とする。
【0011】
上記の方法によれば、樹脂中に発生した気泡は、隔壁部材近傍の閉ざされた空間にある樹脂の圧力と開放側の外部の圧力(気圧)との圧力差により、外部に開放された樹脂の周縁部に導かれて外部に排出されるため、基板間に気泡が残留するのを防止することができ、これにより、信頼性の高い実装体を実現することができる。
【0012】
ある好適な実施形態において、上記隔壁部材は、樹脂の周縁部に隣接して設けられている。
【0013】
ある好適な実施形態において、上記複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、第1の基板及び第2の基板上にアレイ状に形成されており、隔壁部材は、アレイ状の電極領域の周辺の少なくとも1辺に沿って設けられている。
【0014】
ある好適な実施形態において、上記複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、第1の基板及び第2の基板の周辺に形成されており、隔壁部材は、基板周辺に形成された電極領域の内側に設けられている。
【0015】
ある好適な実施形態において、上記複数の第1の電極及び複数の第2の電極は、互いに平行にライン状に形成されており、隔壁部材は、ライン状に形成された電極に対して直交する方向に設けられている。また、隔壁部材は、ライン状に形成された電極領域の周辺であって、ライン状に形成された電極に平行な方向に設けられていてもよい。
【0016】
ある好適な実施形態において、上記工程(b)または工程(c)の後、隔壁部材を除去する工程をさらに含む。
【0017】
ある好適な実施形態において、上記樹脂に気泡発生剤を含有させる代わりに、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の基板に、気泡を発生させる気泡発生源が備えられ、工程(b)において、気泡は、気泡発生源から発生される。
【0018】
ある好適な実施形態において、上記第1の基板及び第2の基板は、回路基板または半導体チップからなる。
【0019】
本発明に係わるフリップチップ実装体は、回路基板上に半導体チップが実装されたフリップチップ実装体であって、回路基板及び半導体チップは、上記の本発明に係わる基板間の接続方法によって、回路基板及び半導体チップに形成された電極同士が接続体を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の一側面における基板間接続構造は、複数の電極を有する回路基板同士が電気的に接続された基板間接続構造であって、回路基板間は、上記の本発明に係わる基板間の接続方法によって、電極間に形成された接続体を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂の周縁部近傍に、基板間を塞ぐ隔壁部材を設けることによって、樹脂中に発生した気泡を、隔壁部材の設けられていない樹脂の周縁部から外部に効果的に排出することができるため、これにより、基板間に残留する気泡のない信頼性の高い基板間の接続を実現することができる。
【0022】
加えて、樹脂中に発生した気泡を、外部に開放された樹脂の周縁部に移動する途上において、電極間以外の領域に残存する導電性粒子の残渣は、気泡の移動経路上から押しやられて、対向する電極間にかき集められるので、導電性粒子の残渣を減少させることができる。これにより、導電性粒子の残渣のない絶縁性に優れた基板間の接続を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)及び(b)は、本発明における樹脂が電極間に自己集合する現象のメカニズムを説明した断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態における基板間の接続方法を示した断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における基板間の接続方法を示した平面図である。
【図4】4(a)〜(c)は、本発明における気泡が隔壁部材から開放側への移動するメカニズムを説明した図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明における気泡が隔壁部材から開放側への移動するメカニズムを説明した図である。
【図6】(a)〜(e)は、第1の実施形態の変形例における隔壁部材の配設方法を示した平面図である。
【図7】(a)〜(d)は、第1の実施形態の変形例における隔壁部材の形成方法を示した断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態における基板間の接続方法を示した平面図である。
【図9】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態における基板間の接続方法を示した断面図である。
【図10】(a)〜(d)は、第2の実施形態の変形例における隔壁部材の配設方法を示した平面図である。
【図11】(a)〜(d)は、従来のフリップチップ実装方法の基本的な工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における基板間の接続方法は、図11(a)〜(e)に示した方法と、基本的な工程は同じである。
【0025】
この方法の特徴は、回路基板(第1の基板)と半導体チップ(第2の基板)との隙間に供給された樹脂を加熱することによって、気泡発生剤から気泡を発生させ、気泡が拡大することで樹脂を気泡外に押し出すことにより、樹脂を電極間に自己集合させる点にある。
【0026】
ここで、樹脂が電極間に自己集合する現象のメカニズムを、図1(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0027】
図1(a)は、樹脂10が、拡大した気泡(不図示)によって、第1の基板30の第1の電極31と、第2の基板32の第2の電極33との間に押し出された状態を示した断面図である。第1の電極31及び第2の電極33に接した樹脂10は、その界面における界面張力(いわゆる樹脂の濡れ広がりに起因する力)Fsが、樹脂の粘度ηから発生する応力Fηよりも大きいので、第1の電極31及び第2の電極33の全面に亙って広がり、最終的に、第1の電極31及び第2の電極33の端部を境とした柱状樹脂10が形成される。そのため、第1の電極31と第2の電極33の対向する位置が多少ずれていても、確実に樹脂10を第1の電極31と第2の電極33との間(以下、単に「電極間」という。)に界面張力で自己集合させることができる。
【0028】
なお、電極間に自己集合して形成された柱状樹脂10には、図1(b)に示すように、気泡14の成長(または移動)による応力Fbが加わるが、樹脂10の粘度ηによる応力Fηの作用により、その形状を維持することができ、一旦自己集合した樹脂10が消滅することはない。また、樹脂10と気体(例えば気泡14)との境界には、表面張力(又は、気−液の界面張力)が働いており、この表面張力も柱状の樹脂の形状維持に作用し得る。
【0029】
ここで、自己集合した樹脂10が一定の形状を維持できるかどうかは、上記界面張力Fsの他に、電極31、33の面積S及び電極間の距離Lや、樹脂10の粘度ηにも依存する。樹脂10を一定形状に維持させる目安をTとすると、定性的には、以下のような関係が成り立つものと考えられる。
T=K・(S/L)・η・Fs (Kは定数)
上記の説明のように、この方法は、樹脂10の界面張力による自己集合を利用して、電極間に樹脂10を自己整合的に形成するものであるが、かかる界面張力による自己集合は、第1の基板30及び第2の基板32の表面に形成された第1の電極31及び第2の電極33のうち少なくとも一方が凸状に形成されているが故に、基板間に形成されたギャップの中でさらに狭くなっている電極間において起きる現象を利用したものと言える。
【0030】
本願出願人が提案した上記の方法を用いると、樹脂10中に分散した導電性粒子を効率良く電極間に自己集合させることができるため、均一性に優れ、かつ、生産性の高い基板間の接続を実現することができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0032】
(第1の実施形態)
図2(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態における基板間の接続方法を示す工程断面図で、図3は、図2(a)の工程における平面図である。なお、図2(a)〜(d)に示した各工程の断面図は、図3の一点鎖線IIa−IIaに沿った断面図である。
【0033】
まず、図2(a)に示すように、第1の電極31を有する第1の基板30上に、導電性粒子(例えば、はんだ粉)11を含有した樹脂10を供給する。このとき、樹脂10の周縁部近傍に、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐ隔壁部材20が設けられている。例えば、図3に示すように、隔壁部材20は、樹脂10の周縁部の3方を囲むように設けられ、隔壁部材20が設けられていない樹脂10の周縁部は外部に開放されている。ここで、図3では、隔壁部材20は、樹脂10の周縁部に隣接して設けられているが、基板30、32間を塞ぐ態様であれば、樹脂10の周縁部と離間していてもよい。なお、隔壁部材20の配設方法については、後述する。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、樹脂10表面に、第2の電極33を有する第2の基板32を対向して配設する。
【0035】
この状態で、樹脂10を加熱すると、図2(c)に示すように、樹脂10中の気泡発生剤(不図示)から気泡14が発生し、樹脂10は、発生した気泡14が拡大することで、この気泡14外に押し出される。押し出された樹脂10は、電極間に柱状に自己集合する。
【0036】
次に、図2(d)に示すように、樹脂10を再び加熱すると、電極間に誘導された導電性粒子11が溶融することにより、導電性粒子11に対して濡れ性の高い電極間に溶融導電性粒子からなる接続体13が形成される。これにより、第1の電極31と第2の電極33とが、接続体13を介して電気的に接続され、第1の基板30と第2の基板32の間が、樹脂10で充填された状態を形成することができる。
【0037】
上記の方法において、樹脂10の周縁部近傍に、第1の基板30と第2の基板32の間を塞ぐ隔壁部材20が設けられているため、発生した気泡14の拡大により隔壁部材20に塞がれた側の閉ざされた空間にある樹脂の圧力を上昇させる。その結果、発生した気泡14は、隔壁部材20側と開放された側の圧力差によって、隔壁部材20側から、外部に開放された樹脂10の周縁部方向へ、流れを形成しながら移動する。このとき、拡大成長しながら移動する気泡14は、隣接する電極間を通り抜けていく。そのため、電極間以外の領域に残存する導電性粒子11を含む樹脂10は、対向する電極間に押し出しされながら自己集合するとともに、移動する気泡14は、外部に開放された樹脂10の周縁部から外部に排出される。
【0038】
すなわち、移動する気泡14は、隔壁部材20側から開放される方向に気泡14を案内する流れを形成し、樹脂10の中に発生した気泡14の移動方向をコントロールできるので、樹脂10の中に発生した気泡14を隔壁部材20に囲まれた領域外に効果的に排出でき、第1の基板30と第2の基板32との間に残存する気泡を除することができる。
【0039】
また、隔壁部材20側から開放側に向けて気泡14が移動する途上において、隣接する電極間に残存する導電性粒子11の残渣は、気泡14の移動経路上から対向する電極間に押しやられて電極間にかき集められるので、導電性粒子11の残渣を低減させることができる。
【0040】
これにより、短絡の原因となる導電性粒子11の残渣や、吸湿によるイオンマイグレーションなどの不良発生の原因や、後工程での再加熱時に起こりうる電極間の剥離の原因となる気泡の残渣(ボイド)を低減することができる。その結果、均一性に優れ、かつ、高い絶縁性と密着強度を確保することができ、高信頼性の基板間の接続を実現することができる。
【0041】
ここで、電極間に接続体13を形成した後、引き続き、基板30、32間に残存する樹脂10を硬化させることによって、第1の基板30と第2の基板32とを固定させてもよい。
【0042】
これにより、第1の基板30と第2の基板32の確実な機械的保持と、隣接電極間の絶縁信頼性を高めることができる。加えて、例えば、フリップチップ実装のような、配線基板上に半導体チップ搭載後、半導体チップを配線基板に固定するために半導体チップと配線基板間にアンダーフィル材を注入する工程を必要とせずに、一連の工程で、電極間の電気的接続と、基板30、32間の固定を同時に行なうことができるため、より生産性の高い基板間の接続を実現することができる。
【0043】
なお、隔壁部材20は、樹脂10中に発生した気泡14を、外部に効果的に排出させる目的で設けたものであるため、電極間に樹脂10を自己集合させた後、あるいは、電極間に溶融した導電性粒子からなる接続体13を形成した後、隔壁部材20を除去してもよい。
【0044】
ここで、図2(a)〜(d)及び図3に示した各構成の大きさや相対的な位置関係(例えば、導電性粒子11の大きさや、第1の基板30と第2の基板32とのギャップの距離等)は、説明を容易にするために便宜的に現されたもので、実際の大きさ等を示したものではない。
【0045】
また、図2(d)において、接続体13は、導電性粒子11全てが溶融し固化した状態を示しているが、必ずしも溶融・固化した状態である必要はない。例えば、導電性粒子11の一部が溶融しなかった状態、導電性粒子11の表面だけ溶融し固化して、導電性粒子11同士、または導電性粒子11と第1の電極31または第2の電極33表面の界面で金属結合をなすような状態も含むものである。
【0046】
また、図2(a)〜(d)では、第1の電極31及び第2の電極33の全ての電極間に接続体13を形成しているが、基板上の一部の電極間に接続体13を形成するものであってもよい。
【0047】
ここで、本発明の実施形態に使用する樹脂10、導電性粒子11、気泡発生剤、及び隔壁部材20は、特に限定されないが、それぞれ、以下のような材料を使用することができる。
【0048】
樹脂10は、室温から導電性粒子11の溶融温度の範囲内において、流動可能な程度の粘度を有するものであればよく、また、加熱することによって流動可能な粘度に低下するものも含む。代表的な例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエステルエストラマ、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂等の熱可塑性樹脂、又は光(紫外線)硬化樹脂等、あるいはそれらを組み合わせた材料を使用することができる。なお、樹脂以外にも、高沸点溶剤、オイル等も使用することができる。また、樹脂10中に気泡発生剤を含有させる代わりに、加熱時に樹脂10を沸騰、分解させることによって樹脂10中に気泡を発生させることも可能である。また、第1の基板30及び第2の基板32の少なくとも一方の基板に、気泡を発生させる気泡発生源を備えていてもよい。
【0049】
導電性粒子11は、金属粒子、はんだ粒子、はんだめっきや金属めっきされた金属粒子、及びはんだめっきや金属めっきされた樹脂粒子の少なくともいずれかを含有する物質で、例えば、Sn−Bi系、Sn−Ag系などのはんだ合金、あるいはCu、Ag、AgCuなどの金属を挙げることができる。本発明においては、導電性粒子の溶融によって電極間の電気的接続を図ることから、導電性粒子の表面には、できるだけ酸化膜が成長しないようにしておくことが好ましい。また、互いに接触する導電性粒子同士の表面だけ溶融して、互いの界面で金属結合をなすような状態であってもよい。
【0050】
気泡発生剤は、加熱時に沸騰によって気泡を発生する材料であればよいが、代表的な例としては、ヘキサンや酢酸ビニル、イソプロピルアルコール、水、1,4−ジオキサン、酢酸ブチルなどの低沸点の材料や、ジメチルアミン塩酸塩、ジメチルスルフォキシド、エチレングリコール、α―テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテートなどの比較的高沸点の材料を使用することができる。
【0051】
なお、電極間に自己集合した樹脂10中の導電性粒子11を溶融させる際、導電性粒子11は、電極間に集積される時点で一部溶融していてもよく、電極間に集積し終わった時点で溶融を開始してもよい。これら導電性粒子11が溶融開始する時間、気泡14が発生し始める時間や、気泡14が解放される方向へ移動し樹脂10の周縁部から排出される期間は、使用する導電性粒子11の融点、使用する樹脂10の粘度、及び使用する気泡発生剤の沸点の組み合わせ、並びに加熱する温度プロファイルを選定することで、適宜設定することができる。
【0052】
第1の基板30に形成された隔壁部材20は、種々の方法で形成することができる。例えば、樹脂を所定の位置に塗布する方法で形成することもできる。この場合、隔壁部材20の樹脂は、樹脂10と同じ組成であってもよいが、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐことを目的としているので、樹脂10のように、導電性粒子11や気泡発生剤を含有するものでなく、加熱工程において、導電性粒子11の溶融や気泡14の発生が起こらないものが好ましい。
【0053】
また、隔壁部材20は、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐために、少なくとも、樹脂10の加熱工程において、樹脂10よりも高い粘度を有する樹脂を用いることが好ましい。また、硬化型樹脂を用いる場合には、樹脂10よりも速い硬化速度を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0054】
また、隔壁部材20に樹脂を用いることで、図2(a)に示すように、導電性粒子11を含む樹脂10と同時に隔壁部材20を形成することが可能となり、工程数を減らすことができる上、第1の基板30及び第2の基板32のわずかな隙間も塞ぐことができる。
【0055】
また、隔壁部材20に用いる樹脂は、ペースト状の樹脂組成物の他に、例えば、シート状、ゼリー状のような樹脂組成物であってもよい。
【0056】
この種の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好適である。該エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。また、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0058】
また、樹脂10または隔壁部材20には、硬化剤の他に、硬化促進剤、重合抑制剤、増感剤、シランカップリング剤、チキソトロピック剤、難燃化剤などの添加剤を含有しても良い。また、揺変剤などの添加剤を含有して粘度調整を行うことにより、予め樹脂10および隔壁部材20の間に粘度差を設けておいてもよい。また、必要に応じてシリカ粒子やアルミナ粒子などのフィラーを添加してもよい。
【0059】
また、隔壁部材20として、第1の基板30または第2の基板32の表面に、あるいは、第1の基板30及び第2の基板32の両方の表面の所定位置に、予め別の材料(例えば、ソルダーレジストや、カバーレイなど)によって形成させておくことによって、第1の基板30と第2の基板32間の隙間を塞ぐこともできる。この場合、第1の電極31に対向して第2の電極33を配置した際に、第1の電極31と第2の電極33との隙間が、所定の段差(例えば、1〜100μm)となるように隔壁部材20の高さを設定しておいてもよい。この段差は、第1の基板30と第2の基板32とのギャップに対する段差の比率や、樹脂の粘度によって、その最適な高さが決められる。また、隔壁部材20は、第1の基板30または第2の基板32の外形に合わせて加工された治具(例えば、テフロン(登録商標)加工製品)でもよく、この場合、基板間の接続工程の終了後、取り外すことも可能である。
【0060】
また、第1の基板30及び第2の基板32は、導電性材料からなる接続体13を形成可能な第1の電極31及び第2の電極33が形成された基板であればよく、例えば、リジッド基板(例えば、FR4基板)の他、フレキシブル基板や、リジッドフレキ基板であってもよい。また、回路基板、片面配線基板、両面配線板や多層配線板でもよく、電子部品が内蔵された部品内蔵基板であってもよい。また、樹脂からなる基板(例えば、FR4基板)に限らず、セラミック基板であってもよい。加えて、半導体チップでもよく、半導体チップは、半導体チップの電極上に金バンプなどの導電性粒子が付与されたものや、半導体ベアチップが複数の電極端子(ランド)を有するインターポーザに搭載された格好で、基板にフリップチップ実装されたものも含む。
【0061】
また、第1の電極31及び第2の電極33は、少なくともどちらか一方が凸形状であればよく、片側が凹形状、または基板表面と同一平面上に存在していてもよい。また、第1の電極31及び第2の電極33には、配線パターンが施されていてもよい。
【0062】
ところで、気泡14を消す意味での消泡には、物理的な消泡、化学的な消泡がある。物理的な消泡としては、圧力の変化(例えば、減圧)、加熱、周波数印加などがあり、化学的な消泡としては、Marangoni効果、気泡物質の分離、pH変化・脱水・塩析、消泡剤添加などがある。本実施形態では、基板間において隔壁部材近傍と開放側との間に圧力差を設けることで、発生した気泡の移動方向を一定方向にし、気泡を樹脂外部へ排出し易くすることによる消泡(気泡の除去)を行っている。
【0063】
ここで、本発明の基板間の接続方法において、そのポイントとなる樹脂10内で発生した気泡14の隔壁部材20から開放側への移動、排出について、図4(a)〜(c)及び図5(a)、(b)を参照しながら、その原理を簡単に説明する。なお、説明を簡略にするために、樹脂10及び導電性粒子11、第1の電極31及び第2の電極33は省略している。
【0064】
図4(a)は、樹脂10が無限遠に広がっていると仮定したときに、加熱によって発生した気泡14が拡大する挙動を示した図である。気泡14の周囲は、全方位開放された状態であるため、気泡14は全方位に向かって拡大する。
【0065】
図4(b)は、樹脂10が、第1の基板30と第2の基板32との間に挟まれた状態のときの断面図である。拡大する気泡14の周囲は、その上下方向が第1の基板30及び第2の基板32によって閉じられた状態であるため、気泡14は、図中の矢印で示す開放された方位に向かって拡大する。
【0066】
図4(c)は、樹脂10が、第1の基板30と第2の基板32の間に挟まれた上に、さらに第1の基板30と第2の基板32の片側の隙間が隔壁部材20によって塞がれている状態のときの断面図である。拡大する気泡14は、その上下方向が第1の基板30及び第2の基板32によって閉じられた状態で、さらに、その水平方向において、隔壁部材20が形成された側は閉じられた状態であるため、隔壁部材20近傍の閉ざされた空間にある樹脂10の圧力P1は上昇する。そのため、開放側の圧力(大気圧)P0との間に圧力差(P1−P0)が生じる。その結果、気泡14は、図中の矢印で示す開放された方位に向かって拡大する。
【0067】
図5(a)、(b)は、図4(c)の状態と同様に、樹脂10が、第1の基板30と第2の基板32との間に挟まれた上に、さらに第1の基板30と第2の基板32の片側の隙間が隔壁部材20によって塞がれている状態のときの断面図である。
【0068】
図5(a)に示すように、樹脂10中において、仮に2ヶ所から気泡14が発生したときの例を考えると、経過において気泡14は拡大する。しかし、気泡14が隔壁部材20近傍の閉ざされた空間内で拡大する場合と、開放側の開かれた空間で拡大する場合を想定すると、拡大成長する気泡14の押圧によって、隔壁部材20近傍の閉ざされた空間にある樹脂の圧力P1は上昇するため、隔壁部材20近傍の圧力P1と、開放側の閉ざされた空間にある樹脂の圧力P2との間に圧力差(P1−P2)が生じる。さらに、開放側の閉ざされた空間にある樹脂の圧力P2と、開放側の圧力(大気圧)P0との間にも圧力差(P2−P0)が生じている。そのため、図5(b)に示すように、成長する気泡14は、圧力の高い方から低い方へと、つまり隔壁部材20から開放される方向へと移動することになる。また、図4(c)で示したように、隔壁部材20近傍で発生した気泡は、開放された方向に向かって拡大するため、開放側で発生した気泡を押し出すことになる。
【0069】
上述のような原理で、第1の基板30と第2の基板32との隙間を塞ぐように隔壁部材20を設けることで、発生し、拡大する気泡14は、隔壁部材20から開放される方向へ移動させることができる。なお、第1の基板30と第2の基板32との間に、第1の電極31及び第2の電極33が存在する場合、樹脂10及び気泡14は、図1(a)、(b)で示した通りの関係を保つため、気泡14は、隣接する電極間のみを移動し、樹脂10は対向する電極間に押しやられる。
【0070】
次に、本実施形態における具体的な実施例について説明する。
【0071】
第1の基板30として、FR−4基板を使用し、表層の配線パターンの一部に第1の電極31となる配線層(ピッチが200μm、電極径が100μm、厚み18μm、10×10個のエリアアレイ配列)を形成し、第2の基板32として、半導体チップ(シリコンメモリー半導体、厚み0.3mm、サイズ10mm×10mm、第1の電極31と対向する位置に第2の電極33を有する)を対向させた。また、第1の電極31および第2の電極33には、ニッケル、金の金属メッキが施されたものを使用した。
【0072】
隔壁部材20には、一液硬化型エポキシ樹脂を使用し、隔壁部材20は、図3に示すように、3方向から第1の電極31及び第2の電極33が存在する領域を囲うように、第1の基板30と第2の基板32との間を塞いだ。
【0073】
樹脂10には、主剤にビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤に酸無水物を用いた。また、導電性粒子11には、はんだ粒子SnBi、さらにはんだ粒子の酸化膜除去剤としてのステアリン酸と、気泡発生剤としてのジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル(沸点:140〜141℃)とを含有させた材料を用いた。このとき、樹脂10と導電性粒子11と、はんだ粒子の酸化膜除去剤の割合(wt%)は、45:50:5とし、上記材料の混合は、混錬機を用いて攪拌を行った。
【0074】
図2(c)に示すように、加熱によって樹脂10中から気泡14を発生させるために、樹脂10の加熱は、第1の基板30を200℃のホットプレートに設置して実行し、加熱時間は、約30秒(予熱時間約10秒を除く)とした。さらに、その後、120℃で30分間加熱を行い、樹脂10の硬化を行った。
【0075】
上記方法で、フリップチップ実装体を製造し、対向する電極間での電気接続を検査した結果、良好な初期接続を確認することができた。
【0076】
(第1の実施形態の変形例)
図6(a)〜(e)を参照しながら、第1の実施形態における変形例を説明する。ここで、図6(a)〜(e)は、図3に対応した平面図で、隔壁部材20の配設方法を示したものである。なお、説明を簡明にするために、第2の基板32及び第2の電極33、導電性粒子11や接続体13、第1の電極31上の樹脂10等は省略している。
【0077】
図6(a)に示した隔壁部材20は、少なくとも直交する2方向から第1の電極31及び第2の電極33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。
【0078】
このような隔壁部材20の配設により、樹脂10中に発生した気泡14の移動方向を、2方向の隔壁部材20が直交する交点から広がる方向にコントロールできるので、実装体の構成に応じて、気泡14の排出方向を任意の方向に案内できる。
【0079】
図6(b)に示した隔壁部材20は、少なくとも平行な2方向から第1の電極31及び第2の電極33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。
【0080】
このような隔壁部材20の配設により、樹脂10の中に発生した気泡14の移動方向を、直線状の相反する方向にコントロールできるので、実装体の構成に応じて、気泡14の排出方向を任意の方向に案内できる。
【0081】
図6(c)及び(d)に示した隔壁部材20は、少なくとも3方向から第1の電極31及び第2の電極33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。また、図6(d)に示すように、開放口を隔壁部材20の配置によって任意に変えることができ、排出する気泡量をコントロールすることもできる。
【0082】
このような隔壁部材20の配設により、樹脂10の中に発生した気泡14の移動方向を、隔壁部材20から開放される一方向へと収斂させて気泡14を案内する全体の流れを形成し、樹脂10の中に発生した気泡14の移動方向をコントロールできるので、樹脂10の中に発生した気泡14を、隔壁部材20に囲まれた領域外に効果的に排出でき、第1の基板30と第2の基板32との間に残存する気泡14を除去することができる。
【0083】
図6(e)は、第1の電極31及び第2の基板32がペリフェラル状に配列された場合の隔壁部材20の配設を示した図で、隔壁部材20は、第1の基板30と第2の基板32の間の中央部で、第1の電極31及び第2の電極33が存在しない領域を埋めて塞ぐように設けられている。なお、第1の電極31及び第2の電極33は、千鳥格子上に配列されていてもよい。
【0084】
このような隔壁部材20の配設により、樹脂10の中に発生した気泡14の移動方向を、隔壁部材20から開放される第1の基板30または第2の基板32の外側へ案内する全体の流れを形成し、樹脂10の中に発生した気泡14の移動方向をコントロールできるので、樹脂10の中に発生した気泡14を領域外に効果的に排出でき、第1の基板30と第2の基板32との間に残存する気泡14を除去できる。また、基板間の第1の電極31及び第2の電極33の存在しない中央部を隔壁部材20で埋めることで、基板間全面に導電性粒子11を含む樹脂10を塗布する場合と比較して、導電性粒子11の残渣を大幅に抑制することができ、接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0085】
なお、第1の基板30と前記第2の基板32との間を塞ぐ隔壁部材20の配設は、気泡14を排出させるために開放される個所があればよく、図6(a)〜(e)に示した変形例に限定されない。
【0086】
次に、図7(a)〜(d)を参照しながら、第1の実施形態における他の変形例を説明する。ここで、図7(a)〜(d)は、図2(d)に対応した断面図で、隔壁部材20の形成方法を示したものである。
【0087】
図7(a)に示した隔壁部材20は、第2の基板32の端面においてフィレット形状をなすように形成されたものである。
【0088】
また、図7(b)に示した隔壁部材20は、モールド樹脂のように第2の基板32を覆うように形成したものである。
【0089】
また、図7(c)に示した隔壁部材21は、第1の基板30と第2の基板32の表面に形成されたソルダーレジストまたはカバーレイで構成されている。
【0090】
また、図7(d)に示した隔壁部材23は、基板間の接続工程において、第1の基板30又は第2の基板32の外形に合わせて加工された治具で構成されている。この場合、隔壁部材23は、基板間の接続が終了後、取り外すことも可能である。
【0091】
次に、第1の実施形態の変形例における具体的な実施例について説明する。
【0092】
使用した第1の基板30、第2の基板32、樹脂10、導電性粒子11、気泡発生剤、及び隔壁部材20は、上述した第1の実施形態にける実施例で使用したものと同様のものを使用した。なお、隔壁部材20は、図6(a)に示すように、直交する2方向から第1の電極31及び第2の電極33が存在する領域を囲うように、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けた。
【0093】
また、樹脂10中に気泡14を発生させるための熱処理、導電性粒子11を溶融させるための熱処理、及びエポキシ樹脂を硬化させるための熱処理は、上述した第1の実施形態にける実施例と同じ条件の加熱温度及び加熱時間を採用した。
【0094】
上記方法で、フリップチップ実装体を製造し、対向する電極間での電気接続を検査した結果、良好な初期接続を確認することができた。
【0095】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第1の電極31及び第2の電極33は、図3及び図6に示したように、基板30、32上にアレイ状又はペリフェラル状に配列されていたのに対し、第2の実施形態では、第1の電極31及び第2の電極33が互いに平行にライン状に形成されていることを特徴とする。
【0096】
以下、図8(a)、(b)、及び図9(a)、(b)を参照しながら、本実施形態における基板間の接続方法を説明する。ここで、図9(a)及び(b)は、図8(a)の一点鎖線IXa-IXaに沿った断面図、及び一点鎖線IXb-IXbに沿った断面図である。なお、電極31、33以外の構成、及び基板間の接続工程については、第1の実施形態で説明したのと基本的に同じであるため、詳細な説明は省略する。また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮し得る。
【0097】
図8(a)、図9(a)、(b)に示すように、第1の基板30及び第2の基板32上に、ライン状の第1の電極31及び第2の電極33が互いに平行に形成されている。そして、隔壁部材20は、ライン状に形成された電極31、33に対して直交する方向に、第1の電極31及び第2の電極33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。
【0098】
樹脂10を加熱することにより、樹脂10中に発生した気泡14は、図8(b)に示すように、隔壁部材20から開放される方向へ排出される。これにより、図9(a)、(b)に示すように、第1の基板30と第2の基板32との間に残存する気泡14が除去された状態で、ライン状の第1の電極31及び第2の電極33が接続体13を介して電気的に接続された基板間接続が行われる。
【0099】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、樹脂10の周縁部近傍に、基板30、32間を塞ぐ隔壁部材20を設けることによって、樹脂10中に発生した気泡14を、隔壁部材20の設けられていない樹脂10の周縁部から外部に効果的に排出することができるため、基板30、32間に残留する気泡のない信頼性の高い基板間の接続を実現することができる。
【0100】
また、樹脂10中に発生した気泡14を、外部に開放された樹脂10の周縁部に移動する途上において、電極間以外の領域に残存する導電性粒子の残渣は、気泡14の移動経路上から押しやられて、対向する電極間にかき集められるので、導電性粒子の残渣を減少させることができる。これにより、導電性粒子の残渣のない絶縁性に優れた基板間の接続を実現することができる。
【0101】
次に、本実施形態における具体的な実施例について説明する。
【0102】
第1の基板30及び第2の基板32には、基材がポリイミドからなるフレキシブル基板を使用し、表層の配線パターンの一部に、第1の電極31及び第2の電極となる配線層(ピッチが200μm、ライン幅が100μm、厚み12μm、30配線)を対向するように配置した。
【0103】
また、樹脂10、導電性粒子11、気泡発生剤、及び隔壁部材20には、第1の実施形態の実施例で使用したものと同様のものを使用した。隔壁部材20は、図8(a)、(b)に示したように、ライン状に形成された電極31、33に対して直交する方向に、第1の電極31及び第2の電極33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けた。
【0104】
また、樹脂10中に気泡14を発生させるための熱処理、導電性粒子11を溶融させるための熱処理、及びエポキシ樹脂を硬化させるための熱処理は、上述した第1の実施形態にける実施例と同じ条件の加熱温度及び加熱時間を採用した。
【0105】
上記方法で、基板間接続構造を製造し、対向する電極間(配線層間)での電気接続を検査した結果、良好な初期接続を確認することができた。
【0106】
(第2の実施形態の変形例)
図10(a)〜(d)を参照しながら、第2の実施形態における変形例を説明する。ここで、図10(a)〜(d)は、図8(a)に対応した平面図で、隔壁部材20の配設方法を示したものである。なお、説明を簡明にするために、第2の基板32及び第2の電極33、導電性粒子11や接続体13、第1の電極31上の樹脂10等は省略している。
【0107】
図10(a)に示した隔壁部材20は、ライン状に形成された第1の電極31及び第2の電極33に対して直交する方向に1本、及び平行な方向であって、電極31、33の両端部の外側に位置に2本形成され、3方向から電極31、電極33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。
【0108】
このような隔壁部材20の配設により、ライン状の第1の電極31及び第2の電極33の両端部の外側においても、ライン状の第1の電極31及び第2の電極33と平行する隔壁部材20が存在するため、ライン状の第1の電極31及び第2の電極33の両端部の外側で発生した気泡14を効率よく外部に排出することができる。
【0109】
図10(b)に示した隔壁部材20は、図10(a)に示した隔壁部材20のうち、ライン状に形成された第1の電極31及び第2の電極33に直交する方向に設けられた隔壁部材20を省いたものである。すなわち、隔壁部材20は、ライン状に形成された第1の電極31及び第2の電極33に平行な方向であって、電極31、33の両端部の外側に位置に2本形成され、2方向から電極31、電極33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。
【0110】
このような隔壁部材20の配設により、ライン状に形成された第1の電極31及び第2の電極33の両端部の外側で発生した気泡14を効率よく外部に排出することができる。
【0111】
図10(c)に示した隔壁部材20は、ライン状に形成された第1の電極31及び第2の電極33に対して直交する方向であって、電極31、33が存在する領域の中心付近の位置に、1方向から電極31、33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。
【0112】
このような隔壁部材20の配設により、隔壁部材20の配設位置によって樹脂10中に発生した気泡14の移動方向を、ライン状の電極31、33に平行な方向であって、隔壁部材20の配置位置から両方向にコントロールできるので、実装体の構成に応じて気泡の排出方向を任意の方向に案内することができる。
【0113】
図10(d)に示した隔壁部材20は、図10(b)に示した隔壁部材20と図10(c)に示した隔壁部材20とを組み合わせたものである。すなわち、隔壁部材20は、ライン状に形成された第1の電極31及び第2の電極33に平行な方向であって、電極31、33の両端部の外側に位置に2本形成され、かつ、ライン状に形成された第1の電極31及び第2の電極33に対して直交する方向であって、電極31、33が存在する領域の中心付近の位置に1本、3方向から電極31、33が存在する領域を囲うとともに、第1の基板30と第2の基板32との間を塞ぐように設けられている。
【0114】
このような隔壁部材20の配設により、隔壁部材20の配置位置によって樹脂10中に発生した気泡14の移動方向を、ライン状の電極31、33に平行な方向であって、隔壁部材20の配置位置から両側にコントロールでき、さらに、ライン状の電極31、33の両端部の外側においても、ライン状の電極31、33に平行な方向の隔壁部材20が存在するため、ライン状の電極31、33の両端部の外側で発生した気泡14を効率よく外部に排出することができる。
【0115】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、次世代LSIのフリップチップ実装に適用可能な、生産性及び信頼性の高いフリップチップ実装方法、及び基板間接続方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0117】
10 樹脂
11 導電性粒子
13 接続体
14 気泡
20〜23 隔壁部材
30 第1の基板
31 第1の電極
32 第2の基板
33 第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の電極を有する第1の基板に対向させて、複数の第2の電極を有する第2の基板を配置し、前記第1の電極と前記第2の電極とを接続体を介して電気的に接続する基板間の接続方法であって、
前記第1の基板と前記第2の基板との間であって、少なくとも前記複数の第1の電極及び第2の電極を覆う領域に、導電性粒子及び気泡発生剤が含有された樹脂を供給し、かつ、前記樹脂の周縁部近傍に、前記第1の基板と前記第2の基板との間を塞ぐ隔壁部材を設ける工程(a)と、
前記工程(a)の後に、前記樹脂を加熱して、前記樹脂中に含有する気泡発生剤から気泡を発生させる工程(b)と、
前記樹脂を加熱して、前記樹脂中に含有する前記導電性粒子を溶融する工程(c)とを含み、
前記工程(a)において、前記隔壁部材の設けられていない前記樹脂の周縁部は外部に開放されており、
前記工程(b)において、前記樹脂は、前記気泡発生剤から発生した気泡が成長することで該気泡外に押し出されることによって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に誘導されるとともに、前記樹脂中に発生した前記気泡は、前記隔壁部近傍と外部との圧力差により、前記外部に開放された前記樹脂の周縁部に導かれて外部に排出され、
前記工程(c)において、前記第1及び第2の電極間に誘導された前記樹脂中に含有する導電性粒子が溶融することによって、前記第1及び前記第2の電極間に前記接続体が形成される、基板間の接続方法。
【請求項2】
前記隔壁部材は、前記導電性粒子及び前記気泡発生剤を含まない樹脂である、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項3】
前記隔壁部材は、前記工程(b)及び前記工程(c)において、前記樹脂よりも高い粘土を有する樹脂、または、前記樹脂よりも速い硬化速度を有する樹脂である、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項4】
前記隔壁部材は、前記第1の基板または前記第2の基板の外形に合わせて加工された治具である、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項5】
前記工程(a)において、前記隔壁部材は、前記樹脂の周縁部に隣接して設けられている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項6】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、前記第1の基板及び前記第2の基板上にアレイ状に形成されており、
前記隔壁部材は、前記アレイ状の電極領域の周辺の少なくとも1辺に沿って設けられている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項7】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、前記第1の基板及び前記第2の基板の周辺に形成されており、
前記隔壁部材は、前記基板周辺に形成された電極領域の内側に設けられている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項8】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、互いに平行にライン状に形成されており、
前記隔壁部材は、前記ライン状に形成された電極に対して直交する方向に設けられている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項9】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、互いに平行にライン状に形成されており、
前記隔壁部材は、前記ライン状に形成された電極領域の周辺であって、前記ライン状に形成された電極に平行な方向に設けられている、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項10】
前記工程(b)または前記工程(c)の後、前記隔壁部材を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項11】
前記樹脂に前記気泡発生剤を含有させる代わりに、前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方の基板に、気泡を発生させる気泡発生源が備えられ、
前記工程(b)において、前記気泡は、前記気泡発生源から発生される、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項12】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、回路基板または半導体チップからなる、請求項1に記載の基板間の接続方法。
【請求項13】
回路基板上に半導体チップが実装されたフリップチップ実装体であって、
前記回路基板及び前記半導体チップは、請求項1に記載された基板間の接続方法によって、前記回路基板及び前記半導体チップに形成された電極同士が接続体を介して電気的に接続されている、フリップチップ実装体。
【請求項14】
複数の電極を有する回路基板同士が電気的に接続された基板間接続構造であって、
前記回路基板間は、請求項1に記載された基板間の接続方法によって、前記電極間に形成された接続体を介して電気的に接続されている、基板間接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−48292(P2013−48292A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252830(P2012−252830)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2009−95083(P2009−95083)の分割
【原出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】