説明

堆積膜形成方法

【課題】効率良く塵埃を低減することにより、堆積膜特性の向上を図るとともに、優れた生産性を有する堆積膜形成方法を提供すること。
【解決手段】下記の工程、を有することを特徴とする堆積膜形成方法。
(1)減圧可能な反応容器内に、投入ステージにてゲートバルブから被処理基体を設置する工程、
(2)前記反応容器を投入ステージから切り離し、処理ステージに移動させ、被処理基体に堆積膜形成処理を行う工程、
(3)減圧状態にて、前記ゲートバルブより被処理基体を反応容器から取り出す工程、
(4)処理ステージにて、前記反応容器にクリーニング性のガスを用いた、ドライエッチングを実施する工程、
(5)反応容器を処理ステージから切り離し、反応容器メンテナンスステージに移動させる工程、
(6)反応容器メンテナンスステージで、少なくとも前記ゲートバルブのメンテナンスを実施する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス等の堆積膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応容器内に被処理基体を設置する際、或は反応容器内で被処理基体に堆積膜の形成やエッチング等の処理を施す際には、反応容器内の雰囲気の清浄度が製品の品質、性能に大きな影響を与える場合がある。例えば、堆積膜の形成においては、基体の処理表面に付着した塵埃が核となって堆積膜が異常成長することで、堆積膜の品質を低下させる。又、エッチング処理においては、基体の処理表面に付着した塵埃によって適切な箇所にエッチングを施すことができなくなることがある。そのため、被処理基体を反応容器内に設置する際、更に被処理基体に堆積膜の形成やエッチング等の処理を施す際に、反応容器内の塵埃等の不要物質を除去することが一般的に行われている。
【0003】
反応容器内の雰囲気を、除去フィルターを通して循環させ、或は清浄気体を供給すること等により、反応容器内に存在する粉塵又は不要成分物質を反応容器内から除去する清浄手段を備えた処理方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
又、清浄気体を真空室内に導入する配管と、真空室に開口し主排気系とは別個に設けられて塵埃を排気する塵埃排気管を具備しており、且つ、前記配管により清浄気体の一部をワークの表面に吹付け得るようにした処理方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、反応容器と排気装置が分離可能な真空処理装置の構成は、生産における柔軟性を非常に高め、生産効率の向上、生産コストの低減が可能とする(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平09−264575号公報
【特許文献2】特公平05−073826号公報
【特許文献3】特開平10−168576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の方法により、反応容器内の塵埃を効率良く反応容器外に除去することが可能となり、品質の向上した製品を作製可能となってきた。
【0008】
しかし、例えば電子写真装置用のアモルファスシリコン感光体においては、電子写真装置の高速デジタル化、フルカラー化に伴い、電子写真装置内の帯電システム、光学露光システム、現像システム等の改良がなされた結果、感光体においても従来以上の画像特性の向上が求められるようになった。その結果、俗に「ポチ」と呼ばれる、白点状、黒点状の画像欠陥の減少、特に従来は問題にされなかった微少な大きさの「ポチ」の減少が求められるようになった。「ポチ」に関しては、その殆どが基体上に付着した塵埃を核としての堆積膜の異常成長である「球状突起」が原因となっている。そのため、基体上に付着する塵埃数を一層減らすことが要求されている。
【0009】
更に、反応容器と排気装置が分離可能な真空処理装置の構成においては、処理済の基体の搬出は、一般雰囲気で実施されるため、処理装置に塵埃の付着する確立が大幅にアップするため、従来以上の効率的な塵埃の除去方法が必要となってくる。
【0010】
従って、基体上への塵埃の付着の更なる防止を実現すると同時に、更なる生産効率の向上を可能とする処理方法の早期実現が望まれていた。
【0011】
そこで、本発明は上記課題の解決を目的とするものである。即ち、効率良く塵埃を低減することにより、堆積膜特性の向上を図るとともに、優れた生産性を有する堆積膜形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため、本発明の堆積膜形成方法は、(1)減圧可能な反応容器内に、投入ステージにて、前記反応容器の基体搬出入口に設けられたゲートバルブから被処理基体を設置する工程、
(2)前記反応容器を投入ステージから切り離し、処理ステージに移動させ、被処理基体に堆積膜形成処理を行う工程、
(3)前記堆積膜形成処理が終了後、減圧状態にて、前記ゲートバルブより該被処理基体を前記反応容器から取り出す工程、
(4)その後、処理ステージにて、前記反応容器にクリーニング性のガスを用いたドライエッチングを実施する工程、
(5)反応容器を処理ステージから切り離し、反応容器メンテナンスステージに移動させる工程、
(6)反応容器メンテナンスステージで、少なくとも前記基体搬出入口に設けられたゲートバルブのメンテナンスを実施する工程、
を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の堆積膜形成方法により、被処理体を処理する処理装置の一例の模式図である。
【0015】
図1の処理装置は、基体投入ステージと処理ステージと反応容器メンテナンスステージから構成される。100は可動処理容器部であり、反応容器120、排気用ゲートバルブ123、基体搬出入口用ゲートバルブ124、架台121、移動可能手段としてのキャスター122、排気配管125から成る。
【0016】
移動可能手段122は、可動処理容器部100を可動させるものであれば良く、キャスター移動、ベルト移動、磁気浮動移動、空気浮動移動等が利用できるが、取り扱い易さ、コストの点からキャスター移動が望ましい。
【0017】
150,250は排気手段で、排気手段150には、排気配管101、メイン排気バルブ102、内圧測定器103、接続手段104、スロー排気バルブ105、スロー排気ライン106が接続されている。
【0018】
排気手段250には、排気配管201、メイン排気バルブ202、内圧測定器203、接続機構204、プリ排気バルブ252、プリ排気ライン251が接続されている。
【0019】
可動処理容器部100は、接続機構104,204介して排気手段150,250に接続可能となる。
【0020】
250はガス供給及び流量制御手段である。ガス供給及び流量制御手段260は、真空処理に必要となる複数のガスボンベ、レギュレータ、バルブ類、マスフローコントローラー等を含んでいることが望ましく、所望のガスを所望の流量、混合比で供給することができれば、如何なる構成でも構わない。又、更に好ましくはパージ用のガスボンベ、パージラインを含んでいることが望ましく、このことによりガスを安全に運用することが可能となる。処理に必要な原料ガスは、ガス供給及び流量制御手段260より、流量可変バルブ261、接続機構204を介して反応容器120内に供給される。
【0021】
又、可動処理容器部100と流量可変バルブ261との間にガス接続機構を設けることが望ましく、接続機構204にガス接続機構を組み込んである。
【0022】
接続機構104,204は、真空保持のためフランジ構造を取ることが望ましく、真空シールとしてはOリングシール、メタルシール等、何れでも良い。接続機構104,204と排気用ゲートバルブ123の固定方法としてはボルト、カプラ、クランプ等を用いた何れの方法でも良いが、着脱を容易に行える方がより好ましい。
【0023】
400は反応容器120から、処理済の基体を搬出する基体搬出容器であり、搬出容器401、ゲートバルブ402から成る。500は反応容器120内に、ダミーの基体を搬入するダミー搬入容器であり、搬入容器501、ゲートバルブ502から成る。
【0024】
110はクリーンルームで、クリーンルーム110の壁面には、壁面を開閉可能なドア111が設けられている。
【0025】
112は投入ステージ用のクリーンブースである。
【0026】
反応容器メンテナンスステージは、通常雰囲気エリア600とクリーンブースエリア601から成る。クリーンブース601と通常雰囲気エリア600とで差圧を設け、クリーンブース601を陽圧とする。
【0027】
図1に示す処理装置を用いた、本発明の堆積膜形成方法は、概略以下のようにして行うことができる。
【0028】
先ず、可動処理容器100を基体投入ステージの接続機構104まで移動させ、排気用ゲートバルブ123と接続機構104とを接続させる。次に、基体搬出入口用ゲートバルブ124を開け、クリーンルーム110の壁面に設けられた、壁面を開閉可能なドア111を開放する。このとき、クリーンルーム110と、クリーンブース112とその他エリアとで差圧を設け、クリーンルーム110>クリーンブース112>その他エリアの順で陽圧とする。次に、基体搬出入用ゲートバルブ124を開ける。
【0029】
開閉可能なドア111より、反応容器100内に被処理基体(図示せず)を設置する。設置後、基体搬出入用ゲートバルブ124を閉じ、反応容器100内を減圧可能な状態にしたら、スロー排気バルブ105を開け、スロー排気ライン106を使用し、反応容器100内の減圧を開始する。
【0030】
内圧測定器103が所定の値に達すると、スロー排気バルブ105を閉じ、メイン排気バルブ102を開け、更に反応容器100内を減圧にする。内圧測定器103が所定の値に達すると、メイン排気バルブ102、排気用ゲートバルブ123を閉じ、メイン排気バルブ102と排気用ゲートバルブ123間を大気圧力に戻し、可動処理容器100を接続機構104から切り離す。
【0031】
次に、作業員による手動で可動処理容器部100を処理ステージまで搬送し、処理ステージの接続機構204と排気用ゲートバルブ123を接続させる。プリ排気バルブ252を開け、排気用ゲートバルブ123とメイン排気バルブ202間を減圧にし、内圧測定器203が所定の値に達すると、プリ排気バルブ252を閉じ、メイン排気バルブ202、排気用ゲートバルブ123を開ける。その後、ガス供給及び流量制御手段260を駆動させ、所望の処理用原料ガスを処理容器120内に導入し、所定の堆積膜形成処理が実施される。
【0032】
次に、反応容器100内のパージを行い、反応容器100内が充分パージされると、基体搬出用容器400のゲートバルブ402と、可動処理容器部100の基体搬出入用ゲートバルブ124を接続させる。排気手段(図示せず)により、基体搬出入用ゲートバルブ124とゲートバルブ402間を減圧にする。このとき、搬出用容器401内は、
減圧状態とする。内圧測定器(図示せず)が所定の値に達すると、基体搬出入用ゲートバルブ124とゲートバルブ402を開ける。搬出用容器401内の、基体搬出機構(図示せず)により、処理済の基体を反応容器100内から、搬出用容器401内に移動させる。ゲートバルブ402、基体搬出入用ゲートバルブ124を閉じ、ゲートバルブ402、基体搬出入用ゲートバルブ124間を大気圧力に戻し、基体搬出用容器400を可動処理容器100から切り離す。
【0033】
次に、ダミー搬入容器500のゲートバルブ502と、可動処理容器部100の基体搬出入用ゲートバルブ124を接続させる。排気手段(図示せず)により、基体搬出入用ゲートバルブ124とゲートバルブ502間を減圧にする。このとき、搬入容器501内は、
減圧状態とする。内圧測定器(図示せず)が所定の値に達すると、基体搬出入用ゲートバルブ124とゲートバルブ502を開ける。搬入容器501内の、ダミー搬出機構(図示せず)により、ダミー基体を反応容器100内に設置する。ダミー搬出機構(図示せず)が、搬入容器501内に戻ると、ゲートバルブ502、基体搬出入用ゲートバルブ124を閉じ、ゲートバルブ502、基体搬出入用ゲートバルブ124間を大気圧力に戻し、ダミー搬入容器500を可動処理容器100から切り離す。
【0034】
その後、ガス供給及び流量制御手段260を駆動し、所望のクリーニング用ガスを反応容器120内に導入し、所定のドライエッチング処理が実施される。
【0035】
ドライエッチング終了後、反応容器120内を充分パージし、可動処理容器部100を処理ステージから、反応容器メンテナンスステージの、通常雰囲気エリア600に移動させ、必要に応じ反応容器120の冷却を行い、リークバルブ(図示せず)を開し、反応容器120を大気圧力まで戻して、ダミー基体を取り出す。
【0036】
次に、反応容器メンテナンスステージにて、基体搬出入用ゲートバルブ124のメンテナンスが行われる。基体搬出入用ゲートバルブ124のメンテナンス終了後、再び、基体投入ステージに可動処理容器部100を搬送し、次の処理が行われる。
【0037】
次に、図2は本発明のプラズマ処理方法におけるゲートバルブのメンテナンスの一例を示す。
【0038】
図2(A)は、前述のように、ドライエッチングが終了した、稼動反応容器100が、反応容器メンテナンスステージの、通常雰囲気エリア600に移動させた状態を示す。ここで、124Aは、既に清浄化された基体搬出入用ゲートバルブを示す。
【0039】
ゲートバルブのメンテナンスは概略以下のようにして行うことができる。
【0040】
先ず、稼動反応容器100に取り付けてある基体搬出入用ゲートバルブ124を通常雰囲気エリア600で取り外す。取り外された基体搬出入用ゲートバルブ124は、一旦通常雰囲気エリア600内に保管される(図2(B))。次に、稼動反応容器100をクリーンブースエリア601に移動させる。そして、既に清浄化されクリーンブースエリア601に保管されていた別の基体搬出入用ゲートバルブ124Aを稼動反応容器100に取り付ける(図2(C))。
【0041】
一方、通常雰囲気エリア600内に保管されていた、取り外された基体搬出入用ゲートバルブ124は、一度、分解され、弁板、弁座、シール面、シール材及びシリンダーロッドや、それらを収納してあるゲートチャンバーの、拭き上げ清掃を実施する。更に、各部品にエアーブローを実施し、各部品の表面に存在する塵埃を取り除く。このとき、拭き上げ清掃とエアーブローを併用することは必須ではなく、どちらか一方でも良い。又、エアーブローは、エアーガン等のブロー機器を用い、各部品個別にブローしても良く、エアーシャワー室等の個室に各部品を設置し、所定の時間エアーブローを実施しても良い。
【0042】
このとき、各部品の清浄度は、ISO清浄度規格で、クラス3以上の清浄度とする。
【0043】
その後、各部品をクリーンブースエリア601内で組み立て、次に反応容器メンテナンスステージに移動してくる稼動反応容器のための、清浄化された基体搬出入用ゲートバルブとして保管される。
【0044】
次に、図3は本発明のプラズマ処理方法におけるゲートバルブのメンテナンスの別の一例を示す。
【0045】
図3において、124は前述の基体搬出入用ゲートバルブである。301はエアーシリンダー、302はシリンダーロッド、303は基体でシリンダーロッド302に接続されている。304は弁板、305はシール材でOリングである。306は反応容器120側の開口部である。307は基体303と弁板304を連結するスプリング、308はローラーである。309は上記ゲートバルブ124の部品を収納しているゲートチャンバーである。310はブロー用ノズルで、吹き出し口311が稼動部側に向いている。
【0046】
ゲートバルブ124のメンテナンスは概略以下のようにして行うことができる。
【0047】
先ず、基体搬出入用ゲートバルブ124を開にし、ブロー用ノズル310を図3のように設置する。次に、吹き出し口311からクリーンエアーをゲートバルブ124の稼動部に向かって吹き付ける。
【0048】
このとき、少なくとも弁板304の反応容器120側(図3の下側)に吹き付を実施する必要がある。又、吹出し口311を例えば上下左右に動かす、或は吹出しを連続的でなく、間歇的に吹出しても良い。そうする方が、塵埃の除去には、効果的でより好ましい。又、クリーンエアーの吹出し圧力は、例えば、0.02MPa〜0.6MPaで実施する。吹出し圧力が0.02MPa未満だと、ゲートバルブ124の稼動部を清浄にするのに時間を要してしまう。又、吹出し圧力が0.6MPaより大きいと、ゲートバルブ124の近傍に乱流が発生し、塵埃が上手く排出されない場合が生じる。
【0049】
吹き付ける時間は、弁板304の近傍にダストカウンター(図示せず)を設置しておき、計測値がISO清浄度規格で、クラス3以上の清浄度が得られると、吹き付けを停止する。ダストカウンターは、毎回実施する必要はなく、一度測定を行い、計測値が所定の値に達する時間を決定し、その後は、決定した時間で管理しても良い。
【0050】
更に、上記のゲートバルブ124の清浄度に加え、反応容器120の清浄化を実施しても良い。反応容器120の清浄化としては、反応容器120内の部品を、上記ゲートバルブ124と同様に、清浄化済の部品と交換したり、或は同じく上記ゲートバルブ124と同様に、クリーンエアーを反応容器120内にブローする方法が挙げられる。こうする方が塵埃低減の面からより好ましい。
【0051】
又、可動処理容器部100を複数用意しておくことで、別の可動処理容器部100が堆積膜形成処理中に、上記のようなゲートバルブの清浄化を行うことで、清浄化による装置のダウンタイムを防止でき、より好ましい。
【0052】
上記のように、クリーンエアーのゲートバルブの稼動部に向かっての吹き付け及び反応容器120内の部品の交換や、反応容器120内へのクリーンエアーのブローは、クリンブース等の清浄な雰囲気で実施される。
【0053】
従来より、堆積膜形成前の被処理基体は厳密に洗浄され、クリンルーム等の塵埃管理された環境により反応容器内に設置されることにより、被処理基体に塵埃が付着することを極力避けるようにしてきた。このような清浄な状態で反応容器内に運搬された被処理基体であるが、塵埃が付着し、堆積膜形成後の特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0054】
塵埃の付着に関し、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、反応容器に取り付けられている、ゲートバルブが塵埃発生の1つの要因であることが判明した。
【0055】
ゲートバルブは、機械的に駆動する機構を備えているため、駆動により振動を発生する。又、ゲートバルブの種類によっては、物理的に摺擦する部分が存在するものもある。
【0056】
よって、塵埃が比較的発生し易い部品と考えられる。
【0057】
被処理基体を反応容器内に設置するために、ゲートバルブを駆動した場合、塵埃が発生しても、被処理基体がゲートバルブの近傍に存在しなければ、何ら影響はない。
【0058】
しかし、被処理基体が反応容器内に設置後、反応容器を減圧可能或は減圧状態を維持するために、ゲートバルブを駆動する必要がある。このとき、ゲートバルブから塵埃が発生した場合、ゲートバルブの直下に被処理基体が存在するため、塵埃の影響をダイレクトに受けてしまう。特に、ゲートバルブの駆動が、低真空圧力で行われた場合は、顕著となる。つまり、例えば圧力の場合は、発生した塵埃は空間内を浮遊する。その結果、或る空間において単位時間当たりのパーティクル数は多くなる。逆に、高真空圧力で行われた場合は、発生した塵埃は、余り浮遊せずに短い時間で落下してしまうと考えられるからである。
【0059】
本発明においては、堆積膜形成後、被処理基体を減圧状態にて反応容器から取り出す。被処理基体に堆積膜形成を実施すると、被処理基体以外に、反応容器内や、ゲートバルブの弁板の反応容器側等にも、堆積膜が形成される。このとき、反応容器を大気圧力に戻し、被処理基体を取り出すと、例えばゲートバルブの弁板上の堆積膜を例にとると、
(1)堆積膜に水分が吸着し、堆積膜内の応力が変化し、堆積膜が弁板表面から剥がれ易くなる。
(2)冷却して取り出す場合、堆積膜と弁板との熱膨張係数の違いにより、堆積膜が弁板表面から剥がれ易くなる。
【0060】
この結果、取り出し時に膜剥がれが生じ、ゲートチャンバー内が汚染される場合がある。
【0061】
本発明の堆積膜形成方法によれば、堆積膜形成後、被処理基体を減圧状態にて反応容器から取り出すため、上記(1),(2)による膜剥がれ抑制でき、その結果、特にゲートバルブ内の塵埃汚染防止に有効となる。その結果、後述のゲートバルブの清浄化が効果的に且つ短時間で実施できる。
【0062】
更に、本発明の堆積膜形成方法によれば、ドライエッチングを実施後、反応容器を成膜ステージから切り離し、ゲートバルブの清浄化を実施する。
【0063】
これは、ドライエッチングにより、一度被処理基体以外に堆積した、堆積膜を除去することで、上記(1)による膜剥がれが抑制される。更に、ドライエッチングを実施後、反応容器を成膜ステージから切り離すことで、次のような効果が得られる。
【0064】
前述のように、堆積膜は被処理基体以外にも堆積するが、これは反応容器内だけでなく、成膜ステージの接続機構204及び排気配管201の内面にも堆積する。ドライエッチング無しに、堆積膜形成処理終了後、移動反応容器100を、成膜ステージから切り離す場合、接続機構204及び排気配管201の内面の堆積膜が蓄積され、容易に膜剥がれを起こす場合がある。移動反応容器100が切り離されている場合には、成膜ステージ全体を汚染してしまう。又、移動反応容器100が接続され、堆積膜形成処理中に、膜剥がれが生じると、或る程度の大きさの膜片がプラズマ中に飛散してくると、プラズマを乱し、堆積膜特性に影響を及ぼす場合がある。又、蓄積された堆積膜の除去のため、成膜ステージを或る程度停止する必要が生じる場合がある。
【0065】
本発明の堆積膜形成方法によれば、ドライエッチングを実施後、反応容器を成膜ステージから切り離すことで、前述の様に、接続機構204及び排気配管201の内面への堆積膜の蓄積が抑制されるため、安定して堆積膜処理が実施できる。更に、接続機構204及び排気配管201の内面へ蓄積された堆積膜の除去作業が実質不要のため、装置の稼働率も向上する。
【0066】
更に、本発明の堆積膜形成方法によれば、堆積膜形成処理毎に、ゲートバルブの清浄化を実施する。
【0067】
前述のように、ドライエッチングにより、堆積膜の除去を実施している。しかし、
(3)応容器の構成により、完全に堆積膜の除去が実施されない場合がある。
(4)堆積膜が除去されるが、装置構成或は堆積膜の膜質により、エッチング残渣が生じる場合がある。
【0068】
エッチング残渣とは、(3)のようにエッチングされていない膜残りではなく、エッチングガスと、堆積膜の反応により、新たに生成されて物質を意味する。
【0069】
これら(3),(4)は、堆積膜及びドライエッチングのガス種により、存在割合は変化するものであるが、共にゲートバルブ内に存在した場合、ゲートバルブの駆動により、塵埃となり得るものである。
【0070】
本発明の堆積膜形成方法によれば、堆積膜形成処理毎に、ゲートバルブの清浄化を実施するため、堆積膜の種類及びドライエッチングの条件によらず、常に塵埃の発生を大幅に低減できる。
【0071】
更に、本発明は、反応容器と排気装置が分離し、堆積膜形成を行うため、反応容器を複数用意することで、堆積膜形成処理毎に、ゲートバルブの清浄化を実施しても、高稼働率で、堆積膜形成処理が実施できる。
【0072】
以上、本発明の
(1)減圧可能な反応容器内に、投入ステージにて、前記反応容器の基体搬出入口に設けられたゲートバルブから、被処理基体を設置する工程、
(2)前記反応容器を投入ステージから切り離し、処理ステージに移動させ、被処理基体に堆積膜形成処理を行う工程、
(3)前記堆積膜形成処理が終了後、減圧状態にて、前記ゲートバルブより該被処理基体を前記反応容器から取り出す工程、
(4)その後、処理ステージにて、前記反応容器にクリーニング性のガスを用いたドライエッチングを実施する工程、
(5)反応容器を処理ステージから切り離し、反応容器メンテナンスステージに移動させる工程、
(6)反応容器メンテナンスステージで、少なくとも前記基体搬出入口に設けられたゲートバルブのメンテナンスを実施する工程、
を有する堆積膜形成方法により、基体上への塵埃の付着が大幅に低減し、同時に生産効率が向上する。
【0073】
本発明における、堆積膜形成の手段としては、特に制限はなく、プラズマCVD法、熱CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0074】
本発明におけるドライエッチングの方法としては、特に制限はなく、堆積膜の種類に応じ適宜選択すれば良い。クリーニング性ガスとしては、例えばCF4 、CF4 /O2 、SF6 、ClF3 (三フッ化塩素)等が挙げられる。
【0075】
又、本実施の形態においては、クリーニング性ガスの濃度を調整するためにも、希釈用の不活性ガスを用いて濃度の調整を行うことが有効であり、導入される不活性ガスとして、例えばHe、Ne、Arが挙げられる。
【0076】
又、ドライエッチング時に、例えば、高周波電力を反応容器内に投入し、プラズマを形成しても良い。
【0077】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
図1に示す堆積膜形成装置を用いて、又、稼動反応容器100として、図4に示す装置を用いて前述のような、本発明の堆積膜形成方法で、アルミニウムより成る直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図5に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。尚、図5中の符号501は円筒状基体を示し、符号502は下部阻止層(第1層)、符号503は第1の光導電層(第2層)、504は表面層(第3層)をそれぞれ示す。
【0079】
図4は13.56[ MHz] 帯の高周波を利用したRF(Radio Frequency )−CVD(Chemical
Vapor Deposition )法によって、電子写真用感光体を製造するための堆積膜形成装置100の一例を模式的に示した縦断面図である。
【0080】
堆積膜形成装置100は、プラズマ処理によって円筒状基体412に堆積膜を形成するための円筒状反応容器120と、円筒状基体412を加熱するための加熱用ヒーター413と、円筒状反応容器120内に配置される円筒状基体412を保持する基体ホルダ417と、円筒状反応容器120内に原料ガスを導入するための原料ガス導入管414とを備えている。
【0081】
円筒状基体412は、使用目的に応じた材質を有するものであれば良い。円筒状基体412の材質としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレス等が、電気伝導率が良好であるため、好適であるが、加工性や製造コストを考慮して、アルミニウムが最適である。又、円筒状基体412を形成するアルミニウムとしては、例えばAl−Mg系合金、A−Mn系合金の何れかを用いることが好ましい。
【0082】
加熱用ヒーター413は、基体ホルダ417の内部に設けられている。加熱用ヒーター413は、真空中で使用可能である発熱体であれば良く、具体的にはシース状ヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター、カーボンヒーター等の電気抵抗発熱体や、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体や、液体、気体等を熱媒とした熱交換手段による発熱体等が対象として挙げられる。加熱用ヒーター413の表面材料としては、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類やセラミック、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。
【0083】
円筒状反応容器120には、高周波マッチングボックス415を介して高周波電源416が電気的に接続されている。これらは、稼動反応容器100が成膜ステージに移動してきたときに、円筒状反応容器120に接続される。
【0084】
円筒状反応容器120は、アース面である円筒状反応容器120の下プレート418、基体搬出入用ゲートバルブ124とは、セラミックスから成る絶縁体419により絶縁されている。又、全体をアース電位である金属シールド壁411で被っている。
【0085】
更に、円筒状反応容器120の下部には、円筒状基体412を保持する基体ホルダー417を回転可能に支持する回転支持機構420が設けられている。この回転支持機構420は、基体ホルダー417が載置された回転台421と、この回転台を支持する支軸422と、回転台421を回転させるためのモータ423とを有している。
【0086】
そして、円筒状基体412は、基体ホルダー417上に装着されて、回転台421と共に支軸422の軸回りに回転される。
【0087】
以上のように構成された堆積膜形成装置100を用いて堆積膜を形成する方法の手順について以下説明する。
【0088】
処理ステージまで搬送された堆積膜形成装置100は、処理ステージの接続機構204と排気用ゲートバルブ123が接続させる。プリ排気バルブ252を開し、排気用ゲートバルブ123とメイン排気バルブ202間を減圧にし、内圧測定器203が所定の値に達したら、プリ排気バルブ252を閉じ、メイン排気バルブ202、排気用ゲートバルブ123を開ける。
【0089】
続いて円筒状反応容器120内にガス供給及び流量制御手段260及び原料ガス導入管414を介して円筒状基体412の加熱に必要な原料ガス、例えばAr,He等のガスを導入し、排気手段250を用いて、円筒状反応容器120内を所定の圧力になるように内圧測定器203を見ながら調整する。本実施例では、表1の条件で実施した。
【0090】
次に、所定の圧力になった後、加熱用ヒーター413により円筒状基体412の温度を200[℃]〜450[℃]程度、より好ましくは250[℃]〜350[℃]程度の所望の温度に制御する。本実施例では、260[℃]とした。
【0091】
以上の手順によって堆積膜を形成する準備が完了した後、円筒状基体412上に光導電層の形成を行う。
【0092】
即ち、加熱用の原料ガスと堆積膜形成用の原料ガスとをガス供給及び流量制御手段260を介して混合して導入させて、原料ガスが表1の流量になるように調整する。その際、円筒状反応容器120内が表1の圧力になるように、内圧測定器203を確認しながら排気手段250のメカニカルブースターポンプ(図示せず)の回転周波数を調整する。
【0093】
円筒状反応容器120内の圧力が安定した後、高周波電源416を所望の電力に設定して、例えば、10[MHz]〜45[MHz]程度、本実施例では、周波数13.56[MHz]のRF電源を用いて、高周波電力を高周波マッチングボックス415を介して円筒状反応容器120に供給することで、高周波グロー放電を生起させる。
【0094】
この放電エネルギーによって、円筒状反応容器120内に導入された原料ガスが分解され、円筒状基体412上に所望のシリコン原子を主成分とする堆積膜が形成される。
【0095】
均一な堆積膜を形成するために、堆積膜を形成するのと同時期、或は円筒状基体412を加熱する段階で、円筒状基体412を回転させる。モータ423を回転させ、1[rpm]〜10[rpm]程度、本実施例では、1[rpm]の回転速度で回転させる。こうすることで、円筒状基体412の周方向に均一な堆積膜が形成される。
【0096】
又、表1のように多層構成の電子写真感光体を作製する場合は、各層毎に内圧測定器203の値を、表1の値になるように、メカニカルブースターポンプの回転周波数を随時調整する。
【0097】
このようにして円筒状基体412の外周面上に堆積膜が形成される。
【0098】
次に、堆積膜が形成された後、原料ガス及び高周波電力の供給を停止し、円筒状反応容器120内を排気する。その後、円筒状反応容器120及び原料ガス導入管414内をパージガス、例えばAr等の不活性ガス及びN2
の少なくとも一方を用いてパージ処理を行う。本実施例では、N2 を用いた。パージ処理完了後、前述のように、基体搬出用容器400を用いて、減圧状況で、処理済の円筒状基体412を円筒状反応容器120から取り出し、次にダミー搬入容器500を用い円筒状反応容器120内に、ダミー(図示せず)を設置した。
【0099】
その後に、堆積したポリシラン等の副生成物をクリーニング処理を行う。
【0100】
排気手段250により円筒状反応容器120内を排気する。続いて円筒状反応容器120内にガス供給及び流量制御手段260及び原料ガス導入管414を介してクリーニング処理に必要な原料ガス、本実施例では、表1のように、ArとClF3 の混合ガス等を導入し、排気手段250を用いて、円筒状反応容器120内を表1の圧力になるように内圧測定器203を見ながら調整する。
【0101】
円筒状反応容器120内の圧力が安定した後、高周波電源416を表1の電力に設定して、例えば、10[MHz]〜45[MHz]程度、本実施例では、周波数13.56[MHz]のRF電源を用いて、高周波電力を高周波マッチングボックス415を介して円筒状反応容器120に供給することで、高周波グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって、円筒状反応容器120内に導入されたクリーニング用の原料ガスが分解され、円筒状反応容器120内がクリーニング処理される。
【0102】
次に、クリーニング処理後に高周波電力の供給を停止し、円筒状反応容器120内を排気する。その後、円筒状反応容器120及び原料ガス導入管414内をパージガス、例えばAr等の不活性ガス及びN2 の少なくとも一方を用いてパージ処理を行う。本実施例では、N2 を用いた。パージ処理完了後、前述のように、稼動反応容器部100を、成膜ステージから切り離した。
【0103】
本実施例においては、ゲートバルブのメンテナンスは、前述のように、清浄化済のゲートバルブに交換する方法で実施した。
【0104】
上記のように、電子写真感光体を10ロット連続して作製し、作製した電子写真感光体に関して「球状突起数」の評価を以下のように実施した。
「球状突起数」
作製した電子写真感光体の表面を光学顕微鏡で観察し、10cm2 当たりでの15μm以上の球状突起の個数を調べた。値が小さいほど画像欠陥が少なく画質に優れていることを示す。
【0105】
「球状突起数」に対し、以下の比較例1の結果に対し相対評価を行った。
【0106】
その結果を表2に示す。
【0107】
表2においては、比較例1の1 ロット目に得られた値を100としている。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【実施例2】
【0110】
実施例1と同様に、アルミニウムよりなる直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図5に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。
【0111】
但し、本実施例においては、ゲートバルブのメンテナンスは、前述のゲートバルブの稼動部にクリーンエアーを吹き付ける方法で実施した。
【0112】
これ以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0113】
得られた結果を表2に示す。
【実施例3】
【0114】
実施例1と同様に、アルミニウムより成る直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図5に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。
【0115】
但し、本実施例においては、円筒状反応容器120
内の、ガス導入管413 の清浄化を併せて行った。ガス導入管413の清浄化は、一度ガス導入管413を円筒状反応容器120から取り外し、表面をアルコールで洗浄し、その後ガス導入管413の表面及び内面をクリーンエアーでそれぞれ1分間ブローした。
【0116】
これ以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0117】
得られた結果を表2に示す。
<比較例1>
実施例1と同様に、アルミニウムより成る直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図3に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。
【0118】
但し、本比較例においては、ゲートバルブのメンテナンスは行わず、連続して作製した。
【0119】
これ以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0120】
得られた結果を表2に示す。
【0121】
表2から明らかなように、本発明の堆積膜形成方法によれば、被処理基体表面に付着する塵埃を大幅に低減することができ、安定して高品位の堆積膜を形成することが可能であることが分かった。更に、ゲートバルブの清浄化と同時に、反応容器内の部品の清浄化を実施することで、更に効果的であることが分かった。
【実施例4】
【0122】
実施例2と同様に、アルミニウムより成る直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図5に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。
【0123】
本実施例においては、ゲートバルブのメンテナンスは、実施例2と同様に、前述のゲートバルブの稼動部にクリーンエアーを吹き付ける方法で実施した。
【0124】
そして、実施例2と同様に電子写真感光体を作製し、「球状突起数」に関しては、実施例2と同様の評価を行った。
【0125】
更に、「清浄化時間」に関し以下のように評価を行った。
「清浄化時間」
ゲートバルブのメンテナンス時、弁板304の近傍にダストカウンター(図示せず)を設置しておき、クリーンエアーを吹き付けてから、計測値がISO清浄度規格で、クラス3以上の清浄度が得られる時間を測定した。
【0126】
「球状突起数」に関し、実施例2と同様に、比較例1の結果に対し相対評価を行った。つまり、比較例1の1 ロット目に得られた値を100としている。
【0127】
「清浄化時間」に関し、以下の比較例2の結果に対し相対評価を行った。つまり、比較例2の1ロット目に得られた値を100としている。
【0128】
その結果を表3に示す。
<比較例2>
実施例2と同様に、アルミニウムより成る直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図3に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。
【0129】
但し、本比較例においては、堆積膜形成処理済の円筒状基体412を、反応容器120を大気圧力に戻し、基体搬出入用ゲートバルブ124を開け、取り出し、その後、ダミーを反応容器120に設置した。そして、基体搬出入用ゲートバルブ124を閉じ、プリ排気バルブ252及びメイン排気バルブ202を用い、反応容器120内を減圧状態にし、ドライエッチィングを実施した。
【0130】
これ以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製し、実施例2と同様の評価を行った。
【0131】
得られた結果を表3に示す。
【0132】
【表3】

表3から明らかなように、本発明の堆積膜形成方法によれば、短い清浄化時間で、被処理基体表面に付着する塵埃を大幅に低減することができ、安定して高品位の堆積膜を形成することが可能であることが分った。
【実施例5】
【0133】
実施例1と同様に、アルミニウムよりなる直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図5に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。
【0134】
そして、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、「帯電能」に関し以下のように評価を行った
「帯電能」
プロセススピード265mm/sec、前露光(波長680nmのLED)光量4lx・sとし、帯電器の電流値を一定に設定する。電子写真感光体の中位置の表面電位を、帯電器位置にセットした表面電位計(TREK社Model344)を用い測定する。このとき得られた値を帯電能とする。
【0135】
「帯電能」に対し、以下の比較例3の結果に対し相対評価を行った。その結果を表4に示す。
【0136】
表4においては、比較例3の1ロット目に得られた値を100としている。
<比較例3>
実施例5と同様に、アルミニウムよりなる直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体412上に、表1に示す条件で図3に示す層構成のアモルファスシリコン電子写真感光体の形成を行った。
【0137】
但し、本比較例においては、ダミーが反応容器120に設置後、排気用ゲートバルブ123、メイン排気バルブ202を閉じ、排気用ゲートバルブ123とメイン排気バルブ202間を大気圧力に戻し、可動反応容器100を接続機構104から切り離した。そして、可動反応容器100を別の排気手段に接続し、その場所で、ドライエッチィングを実施した。つまり、堆積膜形成処理とドライエッチィング処理を別の場所で実施した。
【0138】
これ以外は、実施例5と同様に電子写真感光体を作製し、実施例5と同様の評価を行った。
【0139】
得られた結果を表4に示す。
【0140】
表4から明らかなように、本発明の堆積膜形成方法によれば、安定して高品位の堆積膜を形成することが可能であることが分かった。
【0141】
比較例3の5ロット目に帯電能の低下が見られた。このとき、光導電層形成時の後半に、放電の乱れが観察された。可動反応容器100を接続機構104から切り離した後、接続機構204、排気配管101の内面を観察すると、内壁に膜剥れが観測され、膜剥れ個所から離れたところに、多量の膜片が飛散しているのが確認された。この膜剥れが放電を乱し、その結果、帯電能が低下したと考えられる。
【0142】
更に、接続機構204、排気配管101の内面の膜を除去するため、成膜ステージを一時使用できない状況であった。
【0143】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の堆積膜形成方法に係る堆積膜形成装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の堆積膜形成方法のゲートバルブの清浄化の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の堆積膜形成方法のゲートバルブの清浄化の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の堆積膜形成方法に係る堆積膜形成装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】アモルファスシリコン電子写真用感光体の層構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0145】
100 可動反応容器部
101,201 排気配管
102,202 メイン排気バルブ
105 スロー排気バルブ
106 スロー排気ライン
110 クリーンルーム
111 ドア
112,601 クリーンブース
120 反応容器
123 排気用ゲートバルブ
124,124A 基体搬出入用ゲートバルブ
150,250 排気手段
412 円筒状基体
413 加熱ヒーター
414 ガス導入管
415 高周波マッチングボックス
416 高周波電源
417 基体ホルダー
418 下プレート
419 碍子
420 回転機構
400 基体搬出用容器
500 ダミー搬入容器
600 通常雰囲気エリア
601 クリーンブースエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)減圧可能な反応容器内に、投入ステージにて、前記反応容器の基体搬出入口に設けられたゲートバルブから被処理基体を設置する工程、
(2)前記反応容器を投入ステージから切り離し、処理ステージに移動させ、被処理基体に堆積膜形成処理を行う工程、
(3)前記堆積膜形成処理が終了後、減圧状態にて、前記ゲートバルブより該被処理基体を前記反応容器から取り出す工程、
(4)その後、処理ステージにて、前記反応容器にクリーニング性のガスを用いたドライエッチングを実施する工程、
(5)反応容器を処理ステージから切り離し、反応容器メンテナンスステージに移動させる工程、
(6)反応容器メンテナンスステージで、少なくとも前記基体搬出入口に設けられたゲートバルブのメンテナンスを実施する工程、
を有することを特徴とする堆積膜形成方法。
【請求項2】
前記ゲートバルブのメンテナンスは、清浄化済のゲートバルブに取り替えることを特徴とする請求項1記載の堆積膜形成方法。
【請求項3】
前記ゲートバルブのメンテナンスは、ゲートバルブの稼動部に気体を吹き付けることを特徴とする請求項1記載の堆積膜形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−70299(P2006−70299A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252550(P2004−252550)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】