説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】塗布環境の変化を抑制すること。
【解決手段】易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体を基板に塗布する塗布部と、前記塗布部によって前記液状体の塗布を行う塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間を囲むチャンバーと、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が閾値を超えたときに前記液状体を前記チャンバー内の雰囲気から隔離させる隔離部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Cu、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ga、In、Ti、Znおよびこれらの組合せなどの金属と、S、Se、Te、およびこれらの組合せなどの元素カルコゲンとを含む半導体材料を用いたCIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、高い変換効率を有する太陽電池として注目されている(例えば特許文献1〜特許文献3参照)。CIGS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として例えば上記、Cu、In、Ga、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。また、CZTS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として、例えばCu、Zn、Sn、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。このような太陽電池の構成として、例えばガラスなどからなる基板上にモリブデンなどからなる裏面電極が設けられ、当該裏面電極の上に上記光吸収層が配置される構成が知られている。
【0003】
CIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、従来型の太陽電池に比べて光吸収層の厚さを薄くすることができるため、曲面への設置や運搬が容易となる。このため、高性能でフレキシブルな太陽電池として、広い分野への応用が期待されている。光吸収層を形成する手法として、従来、例えば蒸着法やスパッタリング法などを用いて形成する手法が知られていた(例えば、特許文献2〜特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−340482号公報
【特許文献2】特開2005−51224号公報
【特許文献3】特表2009−537997号公報
【特許文献4】特開平1−231313号公報
【特許文献5】特開平11−273783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、本発明者は、光吸収層を形成する手法として、上記半導体材料を液状体で基板上に塗布する手法を提案する。光吸収層を液状体の塗布によって形成する場合、以下の課題が挙げられる。
【0006】
液状体を塗布する場合、塗布環境における雰囲気中の溶媒濃度が高くなると、周囲の機器類や周囲の環境などに影響を及ぼす虞がある。この問題点は、CIGS型太陽電池の半導体膜を塗布形成する場合に限られず、一般に易酸化性の金属を含む液状体を塗布する場合において想定されうる。
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明は、塗布環境の変化を抑制することができる塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る塗布装置は、易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体を基板に塗布する塗布部と、前記塗布部によって前記液状体の塗布を行う塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間を囲むチャンバーと、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が第一閾値を超えたときに前記液状体を前記チャンバー内の雰囲気から隔離させる隔離部とを備える。
【0009】
この場合、チャンバー内の雰囲気中における液状体の溶媒の濃度が第一閾値を超えたときに当該液状体をチャンバー内の雰囲気から隔離させる隔離部を備えることとしたので、雰囲気中の溶媒濃度の増加を抑えることができる。これにより、塗布環境の変化を抑制することができる。
【0010】
上記の塗布装置は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度を検出する検出部を更に備える。
この場合、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度を検出する検出部を備えるので、検出部の検出結果を用いて閾値との比較を行うことができる。
【0011】
上記の塗布装置において、前記隔離部は、隔離された前記液状体を回収させる回収部を有する。
この場合、隔離された液状体が回収部によって回収されるため、当該隔離された液状体の無駄を防ぐことができる。
【0012】
上記の塗布装置において、前記回収部は、隔離された前記液状体を前記チャンバー内に戻す循環経路を有する。
この場合、隔離された液状体が回収部の循環経路を経てチャンバー内に戻されるため、回収した液状体を再利用することができる。
【0013】
上記の塗布装置において、前記隔離部は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒を排出する排出部を有する。
【0014】
この場合、排出部によってチャンバー内の雰囲気中における溶媒を排出することができるため、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度を低減させることができる。
【0015】
上記の塗布装置において、前記隔離部は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値を超えた時点で前記塗布部において前記液状体が塗布されている前記基板への処理を完了させるまで、前記液状体の隔離を待機させる制御装置を有する。
この場合、基板への処理が途中の状態で処理停止されるのを回避することができる。これにより、基板の無駄を回避することができる。
【0016】
上記の塗布装置において、前記制御装置は、前記液状体の塗布完了以降の基板について、前記塗布部への搬送を停止させる。
この場合、液状体の塗布完了以降の基板について、塗布部への搬送が停止されるため、塗布環境の変化による影響が基板に及ぶのを防ぐことができる。これにより、歩留まりの低下を回避することができる。更に、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度を低減させることができる。
【0017】
上記の塗布装置において、前記制御装置は、前記基板への処理を完了させてから、前記塗布部をメンテナンス位置に移動させるまで、前記液状体の隔離を待機させる。
この場合、基板への処理を完了させた塗布部がメンテナンス位置に移動してから液状体の隔離が行われるため、例えば処理後の塗布部から液状体が垂れた場合であっても、基板の処理位置に当該液状体が付着するのを防ぐことができ、確実に液状体を回収することができる。
【0018】
上記の塗布装置において、前記制御装置は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときに少なくとも前記液状体の塗布に関する全処理を停止させる。
チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度が第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときには、液状体の隔離よりも装置自体を緊急停止させることを優先的に行った方が良い場合がある。上記構成では、このような場合において、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度が第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときには、液状体の隔離を行う前に装置が停止されることになる。
【0019】
上記の塗布装置において、前記塗布部は、前記液状体を吐出するスリットノズルを有する。
この場合、スリットノズルの周囲の塗布環境の変化を抑制することができる。これにより、スリットノズルの吐出状態の変化を抑制することができ、安定的な吐出を行うことができる。
【0020】
本発明の第二の態様に係る塗布方法は、易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体を基板に塗布する塗布ステップと、前記塗布ステップによって前記液状体の塗布を行う塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間を囲むチャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が第一閾値を超えたときに前記チャンバー内の雰囲気から前記液状体を隔離する隔離ステップとを備える。
【0021】
この場合、液状体の塗布が行われるチャンバー内の雰囲気中における液状体の溶媒の濃度が第一閾値を超えたときに当該液状体をチャンバー内の雰囲気から隔離させることとしたので、雰囲気中の溶媒濃度の増加を抑えることができる。これにより、塗布環境の変化を抑制することができる。
【0022】
上記の塗布方法は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度を検出する検出ステップを更に有する。
この場合、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度を検出することにより、検出結果を用いて第一閾値との比較を行うことができる。
【0023】
上記の塗布方法において、前記隔離ステップは、隔離された前記液状体を回収する回収ステップを有する。
この場合、隔離された液状体を回収されるため、当該隔離された液状体の無駄を防ぐことができる。
【0024】
上記の塗布方法において、前記回収ステップは、隔離した前記液状体を前記チャンバー内に戻す循環ステップを有する。
この場合、隔離した液状体がチャンバー内に戻されるので、回収した液状体を再利用することができる。
【0025】
上記の塗布方法において、前記隔離ステップは、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒を排出する排出ステップを有する。
この場合、チャンバー内の雰囲気中における溶媒が排出されるため、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度を低減させることができる。
【0026】
上記の塗布方法において、前記隔離ステップは、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値を超えた時点で前記塗布部において前記液状体が塗布されている前記基板への処理を完了させるまで、前記液状体の隔離を待機させる。
この場合、基板への処理が途中の状態で処理停止されるのを回避することができる。これにより、基板の無駄を回避することができる。
【0027】
上記の塗布方法において、前記隔離ステップは、前記液状体が塗布完了以降の基板について、前記塗布部への搬送を停止する。
この場合、液状体が塗布完了以降の基板について、塗布部への搬送が停止されるため、塗布環境の変化による影響が基板に及ぶのを防ぐことができる。これにより、歩留まりの低下を回避することができる。更に、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度を低減させることができる。
【0028】
上記の塗布方法において、前記隔離ステップは、前記基板への前記処理を完了させてから、前記塗布部をメンテナンス位置に移動させるまで、前記液状体の隔離を待機する。
この場合、基板への処理を完了させた塗布部がメンテナンス位置に移動してから隔離ステップが行われるため、例えば処理後の塗布部から液状体が漏れ出した場合であっても、基板の処理位置に当該液状体が付着するのを防ぐことができ、確実に液状体を回収することができる。
【0029】
上記の塗布方法において、前記隔離ステップは、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときに少なくとも前記液状体の塗布に関する全処理を停止させる。
チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度が第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときには、液状体の隔離よりも装置自体を緊急停止させることを優先的に行った方が良い場合がある。上記構成では、このような場合において、チャンバー内の雰囲気中における溶媒の濃度が第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときには、液状体の隔離を行う前に装置が停止されることになる。
【0030】
上記の塗布方法において、前記塗布ステップは、スリットノズルを用いて前記液状体を吐出する。
この場合、スリットノズルの周囲の塗布環境の変化を抑制することができる。これにより、スリットノズルの吐出状態の変化を抑制することができ、安定的な吐出を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、本発明の態様によれば、塗布環境の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布装置の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る塗布装置の全体構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るノズルの構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るノズルの構成を示す図。
【図5】本実施形態に係る塗布部の一部の構成を示す図。
【図6】本実施形態に係る減圧乾燥部の構成を示す図。
【図7】本実施形態に係る焼成部の一部の構成を示す図。
【図8】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図9】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図10】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図11】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図12】本実施形態に係る塗布装置の塗布処理の過程を示す図。
【図13】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図14】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図15】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図16】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図17】本実施形態に係る塗布装置の焼成処理の過程を示す図。
【図18】本実施形態に係る塗布装置の隔離処理の過程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗布装置CTRは、基板Sに液状体を塗布する装置である。塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD、焼成部BK及び制御部CONTを有している。塗布装置CTRは、例えば工場などの床面FLに載置されて用いられる。塗布装置CTRは、一つの部屋に収容される構成であっても構わないし、複数の部屋に分割して収容される構成であっても構わない。塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BKがこの順で一方向に並んで配置されている。なお、装置構成については塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BKがこの順で一方向に並んで配置されることに限られることは無い。例えば、基板供給回収部LUが不図示の基板供給部と不図示の基板回収部に分割されても構わないし、減圧乾燥部VDが省略されても構わない。勿論、一方向に並んで配置されていなくてもよく、不図示のロボットを中心とした上下に積層する配置や、左右に配置する構成でもよい。
【0034】
以下の各図において、本実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するにあたり、表記の簡単のため、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、床面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面において塗布装置CTRの各構成要素(基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BK)が並べられた方向をX方向と表記し、XY平面上でX方向に直交する方向をY方向と表記する。XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0035】
本実施形態では、基板Sとして、例えばガラスや樹脂などからなる板状部材を用いている。本実施形態では更に、基板S上に裏面電極としてスパッタにてモリブデンを形成している。勿論、裏面電極として、他の導電性物質を用いる構成としても構わない。基板Sとして、Z方向視における寸法が330mm×330mmの基板を例に挙げて説明する。なお、基板Sの寸法については、上記のような330mm×330mmの基板に限られることは無い。例えば、基板Sとして、寸法が125mm×125mmの基板を用いても構わないし、寸法が1m×1mの基板を用いても構わない。勿論、上記寸法よりも大きい寸法の基板や小さい寸法の基板を適宜用いることができる。
【0036】
本実施形態では、基板Sに塗布する液状体として、例えばヒドラジンなどの溶媒に、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)または銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、セレン(Se)といった易酸化性の金属材料を含有する液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGSまたはCZTS型太陽電池の光吸収層(光電変換層)を構成する金属材料を含んでいる。ヒドラジンは、空気よりも比重が大きいため、気化して雰囲気中に存在する場合、鉛直方向の下側へ移動しやすい性質を有する。
【0037】
本実施形態では、他の液状体として、ヒドラジンなどの溶媒にナトリウム(Na)を分散させた液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGSまたはCZTS太陽電池の光吸収層のグレインサイズを確保するための物質を含んでいる。勿論、液状体として、他の易酸化性の金属を分散させた液状体を用いる構成としても構わない。
【0038】
(基板供給回収部)
基板供給回収部LUは、塗布部CTに対して未処理の基板Sを供給すると共に、塗布部CTからの処理済の基板Sを回収する。基板供給回収部LUは、チャンバー10を有している。チャンバー10は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー10の内部には、基板Sを収容可能な収容室10aが形成されている。チャンバー10は、第一開口部11、第二開口部12及び蓋部14を有している。第一開口部11及び第二開口部12は、収容室10aとチャンバー10の外部とを連通する。
【0039】
第一開口部11は、チャンバー10の+Z側の面に形成されている。第一開口部11は、Z方向視で基板Sの寸法よりも大きく形成されている。チャンバー10の外部に取り出される基板Sや、収容室10aへ収容される基板Sは、第一開口部11を介して基板供給回収部LUに出し入れされる。
【0040】
第二開口部12は、チャンバー10の+X側の面に形成されている。第二開口部12は、X方向視で基板Sの寸法よりも大きく形成されている。塗布部CTへ供給される基板Sや塗布部CTから戻される基板Sは、第二開口部12を介して基板供給回収部LUに出し入れされる。
【0041】
蓋部14は、第一開口部11を開放又は閉塞させる。蓋部14は、矩形の板状に形成されている。蓋部14は、不図示のヒンジ部を介して第一開口部11の+X側の辺に取り付けられている。このため、蓋部14は、第一開口部11の+X側の辺を中心としてY軸周りに回動する。第一開口部11は、蓋部14をY軸周りに回動させることで開閉可能となっている。
【0042】
収容室10aには、基板搬送部15が設けられている。基板搬送部15は、複数のローラー17を有している。ローラー17は、Y方向に一対配置されており、当該一対のローラー17がX方向に複数並んでいる。
【0043】
各ローラー17は、Y軸方向を中心軸方向としてY軸周りに回転可能に設けられている。複数のローラー17は、それぞれ等しい径となるように形成されており、複数のローラー17の+Z側の端部はXY平面に平行な同一平面上に配置されている。このため、複数のローラー17は、基板SがXY平面に平行な姿勢になるように当該基板Sを支持可能である。
【0044】
各ローラー17は、例えば不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板搬送部15は、複数のローラー17が基板Sを支持した状態で各ローラー17をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、基板SをX方向(+X方向又は−X方向)に搬送する。基板搬送部15としては、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0045】
(塗布部)
塗布部CTは、基板Sに対して液状体の塗布処理を行う。塗布部CTは、チャンバー20及び基台BCを有している。塗布部CTは、床面FLに載置された基台BC上にチャンバー20が配置された構成である。
【0046】
チャンバー20は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー20の内部には、処理室20aが形成されている。チャンバー20は、第一開口部21及び第二開口部22を有している。第一開口部21及び第二開口部22は、処理室20aとチャンバー20の外部とを連通する。
【0047】
第一開口部21は、チャンバー20の−X側の面に形成されている。第二開口部22は、チャンバー20の+X側の面に形成されている。第一開口部21及び第二開口部22は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、第一開口部21及び第二開口部22を介してチャンバー20に出し入れされる。
【0048】
処理室20aには、吐出部31、メンテナンス部32、液状体供給部33、洗浄液供給部34、廃液回収部35、気体供給排出部37及び基板搬送部25が設けられている。
【0049】
吐出部31は、ノズルNZ、処理ステージ28及びノズル駆動部NAを有している。
図3は、ノズルNZの構成を示す図である。
図3に示すように、ノズルNZは、長尺状に形成されており、長手方向がX方向に平行になるように配置されている。ノズルNZは、本体部NZa及び突出部NZbを有している。本体部NZaは、内部に液状体を収容可能な筐体である。本体部NZaは、例えばチタン又はチタン合金を含んだ材料を用いて形成されている。突出部NZbは、本体部NZaに対して+X側及び−X側にそれぞれ突出して形成されている。突出部NZbは、ノズル駆動部NAの一部に保持される。
【0050】
図4は、−Z側からノズルNZを見たときの構成を示している。
図4に示すように、ノズルNZは、本体部NZaの−Z側の端部(先端TP)に吐出口OPを有している。吐出口OPは、液状体が吐出される開口部である。吐出口OPは、X方向に長手となるようにスリット状に形成されている。吐出口OPは、例えば長手方向が基板SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成されている。
【0051】
ノズルNZは、例えば上記のCu、In、Ga、Seの4種類の金属が所定の組成比で混合された液状体を吐出する。ノズルNZは、接続配管(不図示)などを介して、それぞれ液状体供給部33に接続されている。ノズルNZは、内部に液状体を保持する保持部を有している。なお、上記保持部に保持された液状体の温度を調整する温調部が配置されていても構わない。
【0052】
図1及び図2に戻って、処理ステージ28は、塗布処理の対象となる基板Sを載置する。処理ステージ28の+Z側の面は、基板Sを載置する基板載置面となっている。当該基板載置面は、XY平面に平行に形成されている。処理ステージ28は、例えばステンレスなどを用いて形成されている。
【0053】
ノズル駆動部NAは、ノズルNZをX方向に移動させる。ノズル駆動部NAは、リニアモータ機構を構成する固定子40及び可動子41を有している。固定子40は、Y方向に延在されている。固定子40は、支持フレーム38に支持されている。支持フレーム38は、第一フレーム38a及び第二フレーム38bを有している。第一フレーム38aは、処理室20aの−Y側端部に配置されている。第二フレーム38bは、処理室20aのうち第一フレーム38aとの間で処理ステージ28を挟む位置に配置されている。
【0054】
可動子41は、固定子40の延在方向(Y方向)に沿って移動可能である。可動子41は、ノズル支持部材42及び昇降部43を有する。ノズル支持部材42は、門型に形成されており、ノズルNZの突出部NZbを保持する保持部42aを有している。ノズル支持部材42は、昇降部43と共に固定子40に沿って第一フレーム38aと第二フレーム38bとの間をY方向に一体的に移動する。このため、ノズル支持部材42に保持されるノズルNZは、処理ステージ28をY方向に跨いで移動する。ノズル支持部材42は、昇降部43の昇降ガイド43aに沿ってZ方向に移動する。可動子41は、ノズル支持部材42をY方向及びZ方向に移動させる不図示の駆動源を有している。
【0055】
メンテナンス部32は、予備吐出部44、ノズル先端洗浄部45及びノズル待機部46を有している。メンテナンス部32は、ノズルNZのメンテナンスを行う部分である。
予備吐出部44は、ノズルNZの吐出口OPから予備的に吐出される液状体を受ける部分である。予備吐出部44は、第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bを有している。第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bは、ノズルNZの移動経路に沿ってY方向に並んでおり、それぞれ吐出口OPに対向する位置に配置されている。
【0056】
第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bには、例えば異なる種類の液状体が吐出されるようになっている。第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bは、吐出口OPから吐出された液状体を受けることができるように、例えばトレイ状に形成されている。なお、本実施形態では、予備吐出部44が第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bの2つの予備吐出部を有する構成として説明するが、当該予備吐出部が1つだけ設けられた構成としても構わない。また、3つ以上予備吐出部が設けられた構成であっても構わない。
【0057】
ノズル先端洗浄部45は、ノズルNZの先端TP及びその近傍を洗浄する。ノズル先端洗浄部45は、払拭部45a及びガイドレール45bを有している。
図5は、ノズルNZ及びノズル先端洗浄部45の断面形状を示す図である。図5に示すように、払拭部45aは、断面視においてノズルNZの先端TP及び先端TP側の斜面の一部を覆う形状に形成されている。
【0058】
ガイドレール45bは、ノズルNZの吐出口OPをカバーするようにX方向に延びている。払拭部45aは、不図示の駆動源などにより、ガイドレール45bに沿ってX方向に移動可能に設けられている。払拭部45aがノズルNZの先端TPに接触した状態でX方向に移動することで、先端TPが払拭されることになる。
【0059】
ノズル待機部46は、図1に示すように、第一フレーム38aと予備吐出部44との間に設けられている。図1では、ノズルNZがノズル待機部46に配置されている状態が示されている。ノズル待機部46は、待機状態にあるノズルNZに対してメンテナンスを行う部分である。
【0060】
液状体供給部33は、第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bを有している。第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bには、基板Sに塗布する液状体が収容される。また、第一液状体収容部33a及び第二液状体収容部33bは、それぞれ異なる種類の液状体を収容可能である。
【0061】
洗浄液供給部34は、ノズルNZの内部を洗浄する洗浄液が収容されている。洗浄液供給部34は、不図示の配管やポンプなどを介してノズルNZの内部に接続されている。廃液回収部35は、ノズルNZから吐出された液状体を回収する。廃液回収部35は、不図示の配管系やポンプなどを介して予備吐出部44の第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bに接続されている。なお、廃液回収部35がノズルNZの内部に接続される構成であっても構わない。
【0062】
気体供給排出部37は、気体供給部37a及び排気部37bを有している。気体供給部37aは、処理室20aに窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。排気部37bは、処理室20aを吸引し、処理室20aの気体をチャンバー20の外部に排出する。
【0063】
基板搬送部25は、処理室20aにおいて基板Sを搬送する。基板搬送部25は、複数のローラー27を有している。ローラー27は、処理室20aのY方向の中央部をX方向に横切るように二列に配置されている。各列に配置されるローラー27は、それぞれ基板Sの+Y側端辺及び−Y側端辺を支持する。
【0064】
基板Sを支持した状態で各ローラー27をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー27によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0065】
本実施形態では、溶媒濃度センサSR1、SR2及び隔離部100が設けられている。溶媒濃度センサSR1は、周囲の雰囲気中における液状体の溶媒(本実施形態ではヒドラジン)の濃度を検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。溶媒濃度センサSR1及びR2は、一例として、雰囲気中の気体を吸引する吸引ポンプと、吸引された気体のうち溶媒の成分を捕集する乾式試薬テープと、乾式試薬テープの色の変化を光学的に検出する検出部とを有している。乾式試薬テープは、ヒドラジンに曝露されることにより、当該ヒドラジンの濃度に比例して色が変化するようになっている。検出部を用いて当該色の変化を光学的に読み取り、光量の変化に基づいてヒドラジンの濃度を算出する構成となっている。
【0066】
溶媒濃度センサSR1は、処理室20aのうちチャンバー20の底部(−Z側の面)に配置されている。溶媒濃度センサSR2はチャンバー20の外部に配置されている。本実施形態では、空気よりも比重が大きいヒドラジンの濃度を検出するため、溶媒濃度センサSR1及びSR2は、それぞれノズルNZや第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bよりも鉛直方向の下側に配置されている。また、チャンバー20の外部にも溶媒濃度センサSR2を配置することにより、チャンバー20からのヒドラジンの漏出があった場合にも検出可能である。隔離部100は、基板Sに塗布される液状体を処理室20aの雰囲気から隔離させる。隔離部100は、接続部101、回収部102及び循環部103を有している。
【0067】
接続部101は、第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bと、回収部102とを接続する配管である。接続部101には、例えば吸引ポンプなど不図示のポンプ部やバルブなどが設けられており、当該バルブを開状態としてポンプ部を駆動させることで第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bの底部を吸引できるようになっている。
【0068】
回収部102は、接続部101を介して第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bに接続されている。回収部102には、接続部101を経由して第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bの底部から吸引された物質が供給されるようになっている。回収部102は、例えば液状体を外部とは隔離可能に収容するボトルやタンクなどの液状体収容部を有している。回収部102としては、上記に挙げたボトルやタンクに限られず、液状体を隔離可能となるように形成されている容器であれば他の種類の容器を用いても構わない。当該液状体貯留部により、接続部101から排出される液状体を一時的に貯留する。回収された液状体(液状体貯留部内の液状体)は、循環部103に供給されるようになっている。
【0069】
循環部103は、一端が回収部102に接続され、他端がノズルNZに接続された配管である。循環部103は、回収部102によって回収された液状体をノズルNZへ流通させる。循環部103の経路上には、例えば吸引ポンプなどの不図示のポンプ部やバルブなどが設けられており、当該バルブを開状態としてポンプ部を駆動することにより、回収部102からの液状体が循環部103を経由してノズルNZに供給される。
【0070】
また、回収部102には不図示の吸光光度計や粘度計を設置して、液の劣化具合を測定してもよい。これらの吸光光度計や粘度計を用いて回収部102に回収された液状体の劣化具合を測定する場合の態様として、例えば上記第一閾値を超えた液状体については、再調合を行い再生してから循環部103を経由してノズルNZに供給し、第二閾値を超えた液状体については廃棄することが挙げられる。
【0071】
(減圧乾燥部)
減圧乾燥部VDは、基板S上に塗布された液状体を乾燥させる。減圧乾燥部VDは、チャンバー50、基台BV及びゲートバルブV2及びV3を有している。減圧乾燥部VDは、床面FLに載置された基台BV上にチャンバー50が配置された構成である。
【0072】
チャンバー50は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー50の内部には、処理室50aが形成されている。チャンバー50は、第一開口部51及び第二開口部52を有している。第一開口部51及び第二開口部52は、処理室50aとチャンバー50の外部とを連通する。
【0073】
第一開口部51は、チャンバー50の−X側の面に形成されている。第二開口部52は、チャンバー50の+X側の面に形成されている。第一開口部51及び第二開口部52は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、第一開口部51及び第二開口部52を介してチャンバー50に出し入れされる。
【0074】
処理室50aには、基板搬送部55及び気体供給部58、排気部59及び加熱部53が設けられている(図6参照)。
基板搬送部55は、複数のローラー57を有している。ローラー57は、Y方向に一対配置されており、当該一対のローラー57がX方向に複数並んでいる。複数のローラー57は、第一開口部22を介して処理室50aに配置された基板Sを支持する。
【0075】
基板Sを支持した状態で各ローラー57をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー57によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0076】
図6は、減圧乾燥部VDの構成を示す模式図である。
図6に示すように、気体供給部58は、処理室50aに窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。気体供給部58は、第一供給部58a及び第二供給部58bを有している。第一供給部58a及び第二供給部58bは、ガスボンベやガス管などのガス供給源58cに接続されている。処理室50aへのガスの供給は主として第一供給部58aを用いて行われる。第二供給部58bは、第一供給部58aによる気体の供給量を微調整する。
【0077】
排気部59は、処理室50aを吸引し当該処理室50aの気体をチャンバー50の外部に排出して、処理室50aを減圧させる。処理室50aを減圧させることにより、基板Sの液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、液状体を乾燥させる。排気部59は、第一吸引部59a及び第二吸引部59bを有している。第一吸引部59a及び第二吸引部59bは、ポンプなどの吸引源59c及び59dに接続されている。処理室50aからの吸引は主として第一吸引部59aを用いて行われる。第二吸引部59bは、第一吸引部59aによる吸引量を微調整する。
【0078】
加熱部53は、処理室50aに配置された基板S上の液状体を加熱する。加熱部53としては、例えば赤外線装置やホットプレートなどが用いられる。加熱部53の温度は、例えば室温〜100℃程度に調整可能である。加熱部53を用いることにより、基板S上の液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、減圧下での乾燥処理をサポートする。
【0079】
(焼成部)
焼成部BKは、基板S上に塗布された塗布膜を焼成する。焼成部BKは、チャンバー60及び基台BBを有している。焼成部BKは、床面FLに載置された基台BB上にチャンバー60が配置された構成である。
【0080】
チャンバー60は、直方体の箱状に形成されている。チャンバー60の内部には、処理室60aが形成されている。チャンバー60は、開口部61を有している。開口部61は、処理室60aとチャンバー60の外部とを連通する。開口部61は、チャンバー60の−X側の面に形成されている。開口部61は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。基板Sは、開口部61を介してチャンバー60に出し入れされる。
【0081】
処理室60aには、基板搬送部65及び加熱部70が設けられている。基板搬送部65は、複数のローラー67と、アーム部71とを有している。ローラー67は、Y方向に一対配置されており、当該一対のローラー67がX方向に複数並んでいる。複数のローラー67は、開口部61を介して処理室60aに配置された基板Sを支持する。
【0082】
基板Sを支持した状態で各ローラー67をY軸周りに時計回り又は反時計回りに回転させることにより、各ローラー67によって支持される基板SがX方向(+X方向又は−X方向)に搬送される。なお、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送部を用いても構わない。
【0083】
アーム部71は、架台74上に配置されており、複数のローラー67と加熱部70との間で基板Sの受け渡しを行う。アーム部71は、搬送アーム72及びアーム駆動部73を有している。搬送アーム72は、基板支持部72a及び移動部72bを有している。基板支持部72aは、基板Sの+Y側及び−Y側の辺を支持する。移動部72bは、基板支持部72aに連結されており、X方向に移動可能であり、かつθZ方向に回動可能である。
【0084】
アーム駆動部73は、移動部72bをX方向又はθZ方向に駆動する。アーム駆動部73によって移動部72bを+X方向に移動させた場合には、基板支持部72aが加熱部70内に挿入されると共に、基板Sが加熱部70のZ方向視中央部に配置されるようになっている。
【0085】
図7は、加熱部70の構成を示す断面図である。
図7に示すように、加熱部70は、架台74上に配置されており、第一収容部81、第二収容部82、第一加熱板83、第二加熱板84、リフト部85、封止部86、気体供給部87及び排気部88を有している。
第一収容部81は、Z方向視において矩形の枡状に形成されており、開口部が+Z側を向くようにチャンバー60の底部に載置されている。第二収容部82は、Z方向視において矩形の枡状に形成されており、開口部が第一収容部81に対向するように配置されている。第二収容部82は、不図示の昇降機構を用いてZ方向に移動可能である。第二収容部82の縁部82aを第一収容部81の縁部81aに重ねることにより、当該第一収容部81及び第二収容部82の内部が密閉される。
【0086】
第一加熱板83は、第一収容部81に収容されている。第一加熱板83は、基板Sを載置させた状態で当該基板Sを加熱する。第一加熱板83は、例えば石英などを用いて形成されており、内部には赤外線装置やホットプレートなどの加熱装置が設けられている。第一加熱板83の温度は、例えば200℃〜800℃程度に調整可能である。第一加熱板83には複数の貫通孔83aが形成されている。貫通孔83aは、リフト部85の一部を貫通させる。
【0087】
第二加熱板84は、第二収容部82に収容されている。第二加熱板84は、例えば金属材料を用いて形成されており、内部には赤外線装置やホットプレートなどの加熱装置が設けられている。第二加熱板84の温度は、例えば200℃〜800℃程度に調整可能である。第二加熱板84は、不図示の昇降機構によって第二収容部82とは別個にZ方向への移動が可能に設けられている。第二加熱板84をZ方向へ移動させることにより、第二加熱板84と基板Sとの間隔を調整できるようになっている。
【0088】
リフト部85は、アーム部71と第一加熱板83との間で基板Sを移動させる。リフト部85は、複数の支持ピン85aと、当該支持ピン85aを保持してZ方向に移動可能な移動部85bとを有している。図示を判別しやすくするため、図7では支持ピン85aが2つ設けられた構成が示されているが、実際には例えば16個(図7参照)配置させることができる。第一加熱板83に設けられる複数の貫通孔83aは、Z方向視で複数の支持ピン85aに対応する位置に配置されている。
【0089】
封止部86は、第一収容部81の縁部81aに形成されている。封止部86としては、例えば樹脂材料などを用いて形成されたOリングを用いることができる。封止部86は、第二収容部82の縁部82aが第一収容部81の縁部81aに重ねられた状態で、当該第一収容部81と第二収容部82との間を封止する。このため、第一収容部81及び第二収容部82の内部を密閉することができる。
【0090】
気体供給部87は、処理室60aに窒素ガスなどを供給する。気体供給部87は、チャンバー60の+Z側の面に接続されている。気体供給部87は、ガスボンベやガス管などの気体供給源87aと、当該気体供給源87aとチャンバー60とを接続する接続管87bとを有している。
【0091】
排気部88は、処理室60aを吸引し、処理室60aの気体をチャンバー60の外部に排出する。排気部88は、チャンバー60の−Z側の面に接続されている。排気部88は、ポンプなどの吸引源88aと、当該吸引源88aとチャンバー60とを接続する接続管88bとを有している。
【0092】
また、本実施形態では、溶媒濃度センサSR3及びSR4が設けられている。溶媒濃度センサSR3及びSR4は、上記の溶媒濃度センサSR1及びSR2と同様に、周囲の雰囲気中における液状体の溶媒(本実施形態ではヒドラジン)の濃度を検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。溶媒濃度センサSR3は、処理室60aのうち架台74上の加熱部70の+Y側に配置されている。溶媒濃度センサSR3は、加熱部70から外れた位置に配置されている。溶媒濃度センサSR4はチャンバー60の外部に配置されている。本実施形態では、空気よりも比重が大きいヒドラジンの濃度を検出するため、溶媒濃度センサSR3及びSR4は、上記溶媒濃度センサSR1及びSR2と同様に、それぞれ基板Sの搬送経路よりも鉛直方向の下側に配置されている。また、チャンバー60の外部にも溶媒濃度センサSR4を配置することにより、チャンバー60からのヒドラジンの漏出があった場合にも検出可能である。
【0093】
(基板搬送経路)
基板供給回収部LUの第二開口部12、塗布部CTの第一開口部21並びに第二開口部22、減圧乾燥部VDの第一開口部51並びに第二開口部52、焼成部BKの開口部61は、X方向に平行な直線上に並んで設けられている。このため、基板Sは、X方向に直線上に移動する。また、基板供給回収部LUから焼成部BKの加熱部70に収容されるまでの経路においては、Z方向の位置が保持されている。このため、基板Sによる周囲の気体の攪拌が抑制される。
【0094】
(アンチチャンバー)
図1に示すように、チャンバー20には、アンチチャンバーAL1〜AL3が接続されている。
アンチチャンバーAL1〜AL3は、チャンバー20の内外を連通して設けられている。アンチチャンバーAL1〜AL3は、それぞれ処理室20aの構成要素をチャンバー20の外部へ取り出したり、チャンバー20の外部から処理室20aに当該構成要素を入れ込んだりするための経路である。
【0095】
アンチチャンバーAL1は、吐出部31に接続されている。吐出部31に設けられるノズルNZは、アンチチャンバーAL1を介して処理室20aへの出し入れが可能となっている。アンチチャンバーAL2は、液状体供給部33に接続されている。液状体供給部33は、アンチチャンバーAL2を介して処理室20aへの出し入れが可能となっている。
【0096】
アンチチャンバーAL3は、不図示の液状体調合部に接続されている。液状体調合部では、アンチチャンバーAL3を介して液体を処理室20aに出し入れ可能となっている。また、アンチチャンバーAL3は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。このため、例えば塗布部CTにおいて液状体の試し塗りを行う場合、アンチチャンバーAL3から未処理の基板Sを処理室20aに供給することが可能である。また、試し塗りを行った後の基板SをアンチチャンバーAL3から取り出すことが可能である。また、緊急時などにアンチチャンバーAL3から臨時に基板Sを取り出すことも可能である。
【0097】
また、チャンバー60には、アンチチャンバーAL4が接続されている。
アンチチャンバーAL4は、加熱部70に接続されている。アンチチャンバーAL4は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。このため、例えば加熱部70において基板Sの加熱を行う場合、アンチチャンバーAL4から基板Sを処理室60aに供給することが可能である。また、加熱処理を行った後の基板SをアンチチャンバーAL4から取り出すことが可能である。
【0098】
(グローブ部)
図1に示すように、チャンバー20には、グローブ部GX1が接続されている。また、チャンバー60には、グローブ部GX2が接続されている。
グローブ部GX1及びGX2は、作業者がチャンバー20及び60内にアクセスするための部分である。作業者がグローブ部GX1及びGX2内に手を挿入することにより、チャンバー20及び60内のメンテナンス動作などを行うことができるようになっている。グローブ部GX1及びGX2は、袋状に形成されている。グローブ部GX1及びGX2は、それぞれチャンバー20及び60の複数個所に配置されている。グローブ部GX1及びGX2内に作業者が手を入れたか否かを検出するセンサなどがチャンバー20及び60内に配置されていても構わない。
【0099】
(ゲートバルブ)
基板供給回収部LUの第二開口部12と塗布部CTの第一開口部21との間には、ゲートバルブV1が設けられている。ゲートバルブV1は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV1をZ方向に移動させることで、基板供給回収部LUの第二開口部12と塗布部CTの第一開口部21とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部12及び第一開口部21が同時に開放されると、これら第二開口部12と第一開口部21との間で基板Sの移動が可能となる。
【0100】
塗布部CTの第二開口部22と減圧乾燥部VDの第一開口部51との間には、ゲートバルブV2が設けられている。ゲートバルブV2は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV2をZ方向に移動させることで、塗布部CTの第二開口部22と減圧乾燥部VDの第一開口部51とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部22及び第一開口部51が同時に開放されると、これら第二開口部22と第一開口部51との間で基板Sの移動が可能となる。
【0101】
減圧乾燥部VDの第二開口部52と焼成部BKの開口部61との間には、ゲートバルブV3が設けられている。ゲートバルブV3は、不図示の駆動部によってZ方向に移動可能に設けられている。ゲートバルブV3をZ方向に移動させることで、減圧乾燥部VDの第二開口部52と焼成部BKの開口部61とが同時に開放又は閉塞される。第二開口部52及び開口部61が同時に開放されると、これら第二開口部52と開口部61との間で基板Sの移動が可能となる。
【0102】
(制御装置)
制御部CONTは、塗布装置CTRを統括的に制御する部分である。具体的には、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD、焼成部BKにおける動作、隔離部100の動作、ゲートバルブV1〜V3の動作などを制御する。調整動作の一例として、制御部CONTは、溶媒濃度センサSR1〜SR4による検出結果に基づいて、気体供給部37aの供給量を調整したり、回収部102において回収動作を行わせたりする。制御部CONTは、処理時間の計測等に用いる不図示のタイマーなどを有している。
【0103】
(塗布方法)
次に、本実施形態に係る塗布方法を説明する。本実施形態では、上記のように構成された塗布装置CTRを用いて基板S上に塗布膜を形成する。塗布装置CTRの各部で行われる動作は、制御部CONTによって制御される。
【0104】
制御部CONTは、まず、外部から基板供給回収部LUに基板Sを搬入させる。この場合、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞された状態として、蓋部14を開けて基板Sをチャンバー10の収容室10aに収容させる。基板Sが収容室10aに収容された後、制御部CONTは、蓋部14を閉じさせる。
【0105】
蓋部14が閉じられた後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を開放させ、チャンバー10の収容室10aと塗布部CTのチャンバー20の処理室20aとを連通させる。ゲートバルブV1を開放させた後、制御部CONTは、基板搬送部15を用いて基板SをX方向へ搬送する。
【0106】
塗布部CTの処理室20aに基板Sの一部が挿入された後、制御部CONTは、基板搬送部25を用いて基板Sを処理室20aに完全に搬入させる。基板Sが搬入された後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させる。制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させた後、基板Sを処理ステージ28へと搬送する。
【0107】
図8は、塗布部CTの構成を簡略化し一部の構成を省略して示す図である。以下、図9〜図12においても同様である。図8に示すように、基板Sが処理ステージ28上に載置されると、塗布部CTにおいて塗布処理が行われる。当該塗布処理に先立って、制御部CONTは、ゲートバルブV1及びV2が閉塞された状態とし、気体供給部37a及び排気部37bを用いて不活性ガスの供給及び吸引を行わる。この動作により、処理室20aの雰囲気及び圧力が調整される。処理室20aの雰囲気及び圧力の調整後、制御部CONTは、ノズル駆動部NA(図8では不図示)を用いてノズルNZをノズル待機部46から+Y方向へ移動させる。制御部CONTは、以後塗布処理の間、処理室20aの雰囲気及び圧力の調整動作を継続して行わせる。
【0108】
制御部CONTは、ノズルNZが予備吐出部44に到達した後、図9に示すように、第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bのうち少なくとも一方において、予備吐出動作を行わせる。ここでは、例えば第二予備吐出部44bにおいて予備吐出動作を行わせた場合を例に挙げて説明する。予備吐出動作では、吐出口OPを第二予備吐出部44bに対向させた状態で、当該吐出口OPから液状体Q(図10参照)を吐出させる。第二予備吐出部44bでは、吐出された液状体が収容される。
【0109】
予備吐出動作の後、制御部CONTは、ノズルNZをノズル先端洗浄部45へと移動させる。ノズルNZがノズル先端洗浄部45に到達した後、制御部CONTは、図10に示すように、払拭部45aをガイドレール45bに沿ってX方向に移動させ、ノズルNZの先端TP及びその近傍の傾斜部を払拭させる。
【0110】
ノズルNZの先端TPを払拭させた後、制御部CONTは、ノズルNZを処理ステージ28へ移動させる。ノズルNZの吐出口OPが基板Sの−Y側端部に到達した後、制御部CONTは、図11に示すように、ノズルNZを+Y方向に所定速度で移動させつつ、吐出口OPから基板Sへ向けて液状体Qを吐出させる。この動作により、基板S上には液状体Qの塗布膜が形成される。
【0111】
基板Sの所定領域に液状体Qの塗布膜を形成した後、制御部CONTは、基板搬送部25を用いて基板Sを処理ステージ28から+X方向に移動させる。また、制御部CONTは、ノズルNZを−Y方向へ移動させ、ノズル待機部46へと戻す。
【0112】
基板Sがチャンバー20の第二開口部22に到達した後、制御部CONTは、ゲートバルブV2を開放させ、基板Sを塗布部CTから減圧乾燥部VDへと搬送させる。基板Sが減圧乾燥部VDに設けられるチャンバー50の処理室50aに収容された後、制御部CONTは、ゲートバルブV2を閉塞させ、処理室50aにおいて基板Sの減圧乾燥処理を行わせる。減圧乾燥処理において、制御部CONTは、気体供給部58を用いて処理室50aの雰囲気を調整させると共に、排気部59を用いて処理室50aを減圧させる。この動作により処理室50aが減圧すると、基板Sに形成された液状体Qの塗布膜に含まれる溶媒の蒸発が促進され、塗布膜が乾燥する。なお、制御部CONTは、加熱部53を用いることにより、基板S上の液状体に含まれる溶媒の蒸発を促進させ、減圧下での乾燥処理をサポートさせても構わない。この処理により、基板S上に塗布膜F(図13参照)が形成される。
【0113】
減圧乾燥処理が行われた後、制御部CONTは、ゲートバルブV3を開放させ、基板Sを減圧乾燥部VDから焼成部BKへと搬送させる。基板Sが焼成部BKに設けられるチャンバー60の処理室60aに収容された後、制御部CONTはゲートバルブV3を閉塞させる。
【0114】
基板支持部72aの移動により基板Sが第一加熱板83上の中央部に配置された後、制御部CONTは、リフト部85を+Z方向に移動させる。この動作により、基板Sは搬送アーム72の基板支持部72aから離れ、リフト部85の複数の支持ピン85aに支持される。このようにして基板Sが基板支持部72aからリフト部85へと渡される。基板Sがリフト部85の支持ピン85aによって支持された後、制御部CONTは、基板支持部72aを加熱部70の外部へ−X方向に退避させる。
【0115】
基板支持部72aを退避させた後、制御部CONTは、図15に示すように、リフト部85を−Z方向に移動させると共に、第二収容部82を−Z方向に移動させる。この動作により、第二収容部82の縁部82aが第一収容部81の縁部81aに重なり、縁部82aと縁部81aとの間で封止部86が挟まれた状態となる。このため、第一収容部81、第二収容部82及び封止部86によって密閉された焼成室80が形成される。
【0116】
焼成室80を形成した後、制御部CONTは、図16に示すように、リフト部85を−Z方向へ移動させて基板Sを第一加熱板83上に載置させる。基板Sが第一加熱板83上に載置された後、制御部CONTは、第二加熱板84を−Z方向に移動させ、第二加熱板84と基板Sとを近づける。制御部CONTは、適宜第二加熱板84のZ方向の位置を調整させる。
【0117】
第二加熱板84のZ方向の位置を調整させた後、図17に示すように、気体供給部87を用いて焼成室80に硫化水素ガスを供給すると共に、排気部88を用いて焼成室80を吸引させる。この動作により、焼成室80の雰囲気及び圧力が調整されると共に、第二収容部82から第一収容部81にかけて硫化水素ガスの気流が形成される。硫化水素ガスの気流が形成された状態で、制御部CONTは、第一加熱板83及び第二加熱板84を作動させ、基板Sの焼成動作を行わせる。この動作により、基板Sの塗布膜Fから蒸発する溶媒成分などが気流によって押し流され、排気部88から吸引される。
【0118】
焼成動作が完了した後、制御部CONTは、基板Sを−X方向へ搬送させる。具体的には、加熱部70からアーム部71、基板搬送部65を経て焼成部BKから搬出され、減圧乾燥部VD、塗布部CTを経て基板供給回収部LUへ戻される。基板Sが基板供給回収部LUへ戻された後、制御部CONTは、ゲートバルブV1を閉塞させた状態で蓋部14を開放させる。その後、作業者は、チャンバー10内の基板Sを回収し、新たな基板Sをチャンバー10の収容室10aに収容させる。
【0119】
なお、基板Sが基板供給回収部LUへ戻された後、基板Sに形成された塗布膜F上に更に別の塗布膜を重ねて形成する場合、制御部CONTは、再度基板Sを塗布部CTへ搬送させ、塗布処理、減圧乾燥処理及び焼成処理を繰り返して行わせる。このようにして基板S上に塗布膜Fが形成される。
【0120】
このような一連の動作において、塗布環境における雰囲気中の溶媒(ヒドラジン)の濃度が高くなると、周囲の機器類や周囲の環境などに影響を及ぼす虞がある。そこで、本実施形態においては、第一の態様として、制御部CONTは、気体供給排出部37を用いてチャンバー20内の雰囲気中のヒドラジンの濃度を調整させるようにしている。具体的には、制御部CONTは、気体供給部37aを用いることにより、チャンバー20内に不活性ガスを供給する(不活性ガス供給ステップ)。
【0121】
不活性ガス供給ステップでは、制御部CONTは、まず溶媒濃度センサSR1〜SR4によって塗布装置CTRの各部における雰囲気中のヒドラジン濃度を検出させる(検出ステップ)。制御部CONTは、検出ステップでの検出結果に基づき、気体供給部37aから供給される不活性ガスの供給量を調整させつつ、チャンバー20内に不活性ガスを供給させる。例えば、検出されたヒドラジン濃度が予め設定された閾値を超えた場合にチャンバー20内に不活性ガスを供給させることができる。当該閾値については、予め実験やシミュレーションなどによって求めておき、制御部CONTに記憶させておくことができる。また、例えば、塗布動作、減圧乾燥動作及び焼成動作の間、常時一定量の不活性ガスをチャンバー20内に供給させた状態にしておき、溶媒濃度センサSR1〜SR4の検出結果に基づいて、供給量を多くしたり少なくしたりさせることもできる。
【0122】
また、チャンバー20の外部に配置された溶媒濃度センサSR2や、チャンバー60の外部に配置された溶媒濃度センサSR4による検出結果が予め設定された閾値を超えた場合には、ヒドラジンがチャンバー20の外部又はチャンバー60の外部に漏出していることになる。したがって、このような場合には、漏出したヒドラジンによって周囲の環境が変化している旨を音や光などで警告する動作を行わせることができる。これにより、例えば周辺の作業員等に速やかに環境の変化を知らせることが可能となる。
【0123】
また、本実施形態における第二の態様として、制御部CONTは、塗布装置CTRのうち塗布部CT及び焼成部BKにおける雰囲気中のヒドラジン濃度が所定の閾値を超える場合に、隔離部100を用いてチャンバー20内の液状体を周囲の雰囲気から隔離するようにしている(隔離ステップ)。隔離ステップでは、所定の閾値として、第1閾値及び第2閾値の二段階の閾値を設けておく。第1閾値は塗布部CT及び焼成部BKでの雰囲気中のヒドラジン濃度の軽度の超過であり、第2閾値は上記雰囲気中のヒドラジン濃度の重度の超過である。
【0124】
制御部CONTは、まず溶媒濃度センサSR1〜SR4によって塗布部CT及び焼成部BKの雰囲気中のヒドラジン濃度を検出させる。制御部CONTは、ヒドラジン濃度が第1閾値を超えた場合(第1閾値<ヒドラジン濃度<第2閾値の場合)、基板Sをチャンバー20の外部に搬送し、チャンバー20内に基板Sが配置されていない状態とする。
【0125】
上記雰囲気中のヒドラジン濃度が第1閾値を超えたときにノズルNZによって基板Sに塗布動作が行われている場合には、その基板Sの塗布動作を終えた後にチャンバー20の外部に搬送する。この場合、チャンバー20の外部としては、例えば基板供給回収部LUや減圧乾燥部VDなどが挙げられる。また、アンチチャンバーAL3を介して塗布装置CTRの外部に基板Sを搬送させる態様であっても構わない。この動作により、基板Sに対する塗布動作が途中のまま基板Sがチャンバー20の外部に搬送されるのが回避されることになり、基板Sの無駄の無い処理が可能となる。当該基板Sをチャンバー20の外部に搬送した後、新たな基板Sを搬入しないようにする。
【0126】
チャンバー20内に基板Sが配置されていない状態となったら、制御部CONTは、ノズルNZ内の液状体を予備吐出部44に排出させる。この動作において、まず制御部CONTは、ノズルNZを第一予備吐出部44a及び第二予備吐出部44bの一方(本実施形態では、第二予備吐出部44bを例に挙げて説明する)に移動させる。ノズルNZを移動させた後、制御部CONTは、図18に示すように、ノズルNZから第二予備吐出部44b液状体Qを吐出させる。この場合、制御部CONTは、例えばノズルNZに新たな液状体が供給されないように供給経路を閉状態とし、ノズルNZ内に不活性ガスを供給して、ノズルNZ内の液状体Qを全て吐出させる。
【0127】
ノズルNZから液状体を吐出させる際、制御部CONTは、隔離部100を用いて液状体を排出させる。具体的には、制御部CONTは、接続部101に設けられるバルブ(不図示)を開状態としてポンプ機構(不図示)を駆動させ、第二予備吐出部44bに収容された液状体を接続部101へ排出する。なお、第二予備吐出部44bに気泡センサを設けておき、当該気泡センサや制御部CONT内のタイマーを用いて当該第二予備吐出部44bの液状体Qが全て排出されたか否かを確認するようにしても構わない。これらの動作により、チャンバー20内に配置される液状体Qが隔離されることになる。第二予備吐出部44bの全ての液状体Qが隔離された後、制御部CONTは接続部101におけるポンプ機構の駆動を停止させ、不図示のバルブを閉状態とする。
【0128】
この隔離ステップにおいて、制御部CONTは、所定の閾値を超える検出結果が得られた溶媒濃度センサSR1〜SR4に応じて、上記雰囲気中のヒドラジンを排出する動作を行わせる(排出ステップ)。例えば、溶媒濃度センサSR1及びSR2のうち少なくとも一方において所定の閾値を超える検出結果が得られた場合、チャンバー20内のヒドラジンを排出させる。また、溶媒濃度センサSR3及びSR4のうち少なくとも一方において所定の閾値を超える検出結果が得られた場合、チャンバー60内のヒドラジンを排出させる。排出ステップでは、制御部CONTは、上記の不活性ガス供給ステップと同様の動作によってチャンバー20又はチャンバー60内のヒドラジンを排出させる。制御部CONTは、排出ステップを隔離ステップと同時に行わせるようにしても構わないし、隔離ステップの後に行わせるようにしても構わない。
【0129】
本実施形態では接続部101に回収部102が接続されているため、隔離ステップにおいて隔離された液状体は、回収部102によって回収される(回収ステップ)。制御部CONTは、例えば排出ステップにおいてチャンバー20内のヒドラジンを排出させた後、溶媒濃度センサSR1〜SR4の検出結果が第1閾値を下回った場合(雰囲気中のヒドラジン濃度<第1閾値となった場合)、循環部103に設けられた不図示のポンプ機構を駆動させることで回収部102内の液状体を循環部103に供給させる。具体的には、制御部CONTは、循環部103を介してノズルNZ内に再度液状体を戻す動作を行わせる(循環ステップ)。この動作により、隔離された液状体がノズルNZ内に戻るため、新たな液状体を用いずに済むことになる。このため、液状体の使用量が抑えられることになる。
【0130】
一方、制御部CONTは、例えばチャンバー20内の雰囲気中のヒドラジン濃度が第2閾値を超えた場合(第2閾値<雰囲気中のヒドラジン濃度の場合)、塗布装置CTRの全動作を停止させる。雰囲気中のヒドラジン濃度が大きくなった場合においては、液状体の隔離よりも塗布装置CTR自体を緊急停止させることを優先的に行った方が良い場合がある。この場合、例えば基板Sに塗布動作が行われている途中であっても、また、例えば基板Sが搬送されている途中であっても、当該動作が停止される。
【0131】
以上のように、本実施形態によれば、チャンバー20内の雰囲気中における液状体Qの溶媒(ヒドラジン)の濃度が所定の閾値を超えたときに当該液状体Qをチャンバー20内の雰囲気から隔離させる隔離部100を備えることとしたので、雰囲気中のヒドラジン濃度の増加を抑えることができる。これにより、塗布環境の変化を抑制することができる。
【0132】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、溶媒濃度センサSR1〜SR4の値が第2閾値を超えた場合には、制御部CONTが塗布装置CTRの全動作を停止させる構成としたが、これに限られることは無い。例えば制御部CONTが全動作を停止させた後、上記の不活性ガス供給ステップのみを行わせるようにし、チャンバー20内のヒドラジンを排出させる構成としても構わない。ヒドラジンの排出によってチャンバー20内の酸素濃度が第2閾値を下回った場合、例えば制御部CONTは、上記実施形態と同様の隔離ステップを行わせるようにしても構わない。
【0133】
上記実施形態においては、塗布部CTの構成として、スリット型のノズルNZを用いた構成としたが、これに限られることは無く、例えば中央滴下型の塗布部を用いても構わないし、インクジェット型の塗布部を用いても構わない。また、例えば基板S上に配置される液状体をスキージなどを用いて拡散させて塗布する構成であっても構わない。
【0134】
また、上記実施形態において、塗布装置CTRが一つの部屋に収容される構成である場合、当該部屋の雰囲気を調整する気体供給排出部が設けられた構成であっても構わない。この場合、当該気体供給排出部を用いて部屋の雰囲気中のヒドラジンを排出することができるため、より確実に塗布環境の変化を抑制することができる。
【0135】
また、溶媒濃度センサの配置について、上記実施形態に記載の溶媒濃度センサSR1〜SR4に限られず、例えば、図1及び図2に破線で示した位置に溶媒濃度センサ(SR5〜SR12)を配置させても構わない。
【0136】
具体的には、溶媒濃度センサSR5及び溶媒濃度センサSR6は、処理室20aに配置されている。溶媒濃度センサSR5は、液状体供給部33と廃液回収部35との間に配置されている。溶媒濃度センサSR6は、ノズル待機位置46及び予備吐出部44の+X側に配置されている。
【0137】
溶媒濃度センサSR7及び溶媒濃度センサSR8は、処理室20aの外側に配置されている。溶媒濃度センサSR7は、基台BCの−X側の面のうち+Y側の角部に配置されている。溶媒濃度センサSR8は、基台BCの−Y側の面のうち+X側の角部に配置されている。
【0138】
また、溶媒濃度センサSR9及び溶媒濃度センサSR10は、処理室60aに配置されている。溶媒濃度センサSR9は、架台74上のうち−X側及び−Y側の角部に配置されている。溶媒濃度センサSR10は、架台74上のうち+X側及び+Y側の角部に配置されている。
【0139】
溶媒濃度センサSR11及び溶媒濃度センサSR12は、処理室60aの外側であって例えば床面FL上に配置されている。溶媒濃度センサSR11は、基台BBの+Y側の壁部のうちX方向の中央部に配置されている。溶媒濃度センサSR12は、基台BBの−Y側の壁部のうちX方向の中央部に配置されている。なお、溶媒濃度センサSR5〜SR12についても一例であり、他の位置に溶媒濃度センサを配置させても構わない。
【0140】
また、上記実施形態においては、基板Sを搬送する手段としてローラーが設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、ロボットを用いて搬送するロボット搬送部が設けられた構成であっても構わない。当該ロボット搬送部は、基板供給回収部LU、塗布部CT、減圧乾燥部VD及び焼成部BKの各部に適宜配置させることができる。
【0141】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0142】
CTR…塗布装置 S、S2…基板 CT…塗布部 CONT…制御部 NZ…ノズル TP…先端 SR1〜SR4…溶媒濃度センサ Q…液状体 20…チャンバー 20a…処理室 28…処理ステージ 31…吐出部 32…メンテナンス部 33…液状体供給部 37…気体供給排出部 37a…気体供給部 37b…排気部 44…予備吐出部 44a…第一予備吐出部 44b…第二予備吐出部 45…ノズル先端洗浄部 60…チャンバー 100…隔離部 101…接続部 102…回収部 103…循環部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体を基板に塗布する塗布部と、
前記塗布部によって前記液状体の塗布を行う塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間を囲むチャンバーと、
前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が第一閾値を超えたときに前記液状体を前記チャンバー内の雰囲気から隔離させる隔離部と
を備える塗布装置。
【請求項2】
前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度を検出する検出部を更に備える
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記隔離部は、隔離された前記液状体を回収させる回収部を有する
請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記回収部は、隔離された前記液状体を前記チャンバー内に戻す循環経路を有する
請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記隔離部は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒を排出する排出部を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記隔離部は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値を超えた時点で前記塗布部において前記液状体が塗布されている前記基板への処理を完了させるまで、前記液状体の隔離を待機させる制御装置を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記液状体の塗布完了以降の基板について、前記塗布部への搬送を停止させる
請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記基板への処理を完了させてから、前記塗布部をメンテナンス位置に移動させるまで、前記液状体の隔離を待機させる
請求項6又は請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときに少なくとも前記液状体の塗布に関する全処理を停止させる
請求項6から請求項8のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記塗布部は、前記液状体を吐出するスリットノズルを有する
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項11】
易酸化性の金属及び溶媒を含む液状体を基板に塗布する塗布ステップと、
前記塗布ステップによって前記液状体の塗布を行う塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間を囲むチャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が第一閾値を超えたときに前記チャンバー内の雰囲気から前記液状体を隔離する隔離ステップと
を備える塗布方法。
【請求項12】
前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度を検出する検出ステップを更に有する
請求項11に記載の塗布方法。
【請求項13】
前記隔離ステップは、隔離された前記液状体を回収する回収ステップを有する
請求項11又は請求項12に記載の塗布方法。
【請求項14】
前記回収ステップは、隔離した前記液状体を前記チャンバー内に戻す循環ステップを有する
請求項13に記載の塗布方法。
【請求項15】
前記隔離ステップは、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒を排出する排出ステップを有する
請求項11から請求項14のうちいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項16】
前記隔離ステップは、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値を超えた時点で前記塗布部において前記液状体が塗布されている前記基板への処理を完了させるまで、前記液状体の隔離を待機させる
請求項11から請求項15のうちいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項17】
前記隔離ステップは、前記液状体が塗布完了以降の基板について、前記塗布部への搬送を停止する
請求項16に記載の塗布方法。
【請求項18】
前記隔離ステップは、前記基板への前記処理を完了させてから、前記塗布部をメンテナンス位置に移動させるまで、前記液状体の隔離を待機する
請求項16又は請求項17に記載の塗布方法。
【請求項19】
前記隔離ステップは、前記チャンバー内の雰囲気中における前記溶媒の濃度が前記第一閾値よりも大きい値である第二閾値を超えたときに少なくとも前記液状体の塗布に関する全処理を停止させる
請求項11から請求項18のうちいずれか一項に記載の塗布方法。
【請求項20】
前記塗布ステップは、スリットノズルを用いて前記液状体を吐出する
請求項11から請求項19のうちいずれか一項に記載の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−191214(P2012−191214A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53292(P2012−53292)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】