説明

壁板材及び木造軸組構造

【課題】木造軸組構造において、軸組やそれを構成する軸組パネルの組み換えや交換、継ぎ足し等の自由度を高める。
【解決手段】線材21の端面22を接合し得る複数の接合面を有して線材21間に介在し、複数本の線材21をその長さ方向の端面同士を非接触にして突き合わせるように一体化する接合金物31で前記線材21が接合されるとともに、前記線材21に面材41が固定されてパネル化された軸組パネル(桁壁用軸組パネル12,13、妻壁用軸組パネル14,15)を得る。これら軸組パネルを、前記接合金物31を用いて分離可能に接合して軸組を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本格的な木造軸組建築や簡易な木造軸組建築のための木造軸組構造に関し、より詳しくは、たとえばユニットハウス、バンガロ、東屋、物置、倉庫、ガレージ、店舗、仮設住宅、一般住宅、社寺建築、茶室、移動式茶室など様々な建築に利用できる木造軸組構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組構造は、柱材や梁材などの線材で荷重を支える構造である。軸組を構成する柱材や梁材などの線材は、仕口による接合のほか、仕口と補強金物を組み合わせた接合、さらには接合金物のみによる接合と、様々な方法で接合されている。
【0003】
接合の仕方は様々であるが、いずれの接合方法においても、線材同士の接合はあらかじめ定めた組み合わせでしかできなかった。このため、軸組を組み替えたり、交換したり、継ぎ足したりすることは不可能であった。
【0004】
下記特許文献1には、線材で形成された木造軸組部屋ユニットを組み合わせて構成する木造軸組ユニット住宅が開示されている。この木造軸組ユニット住宅は、木造軸組部屋ユニットの線材同士をL形プレートで抱き合わせて束ねるように固定するものである。このため、水平力を受けたときに荷重を支えるべき線材に余計な力がかかって線材に脆性を生じさせたり、壁の形成を困難にしたりする難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2002−13205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来の木造軸組構造においては軸組の組み替えなどの自由度がなく、特許文献1に開示されているように組み合わせて構成する木造軸組ユニット住宅であっても、強度上、施工上の点で難があった。
【0007】
そこで、この発明は、組み換え等の自由度が高く、構造上の強度を確保できような、あらゆる木造軸組建築に適用できる新規な構造を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段は、線材が接合されてなる木造軸組構造であって、前記線材の端面を接合し得る複数の接合面を有して線材間に介在し、複数本の線材をその長さ方向の端面同士を非接触にして突き合わせるように一体化する接合金物で前記線材が接合される木造軸組構造である。
【0009】
特に、前記線材のうち柱材となる垂直材と、土台や梁材となる水平材を接合するすべての前記接合金物に、立方体形状をなして6個の接合面を有する同一形態の接合金物を用いるとよい。同一形態とは基本構造を同じくするものを指す。
【0010】
別の手段は、線材の端面を接合し得る複数の接合面を有して線材間に介在し、複数本の線材をその長さ方向の端面同士を非接触にして突き合わせるように一体化する接合金物で前記線材が接合されるとともに、前記線材に面材が固定されてパネル化された木造軸組構造に用いられる軸組パネルである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、軸組を構成する複数本の線材は、その長さ方向の端面が接合金物の接合面に当接した状態で、端面同士を非接触にして突き合わせるように接合金物によって一体化される構造であり、接合金物で行う線材同士の接合部構造の共通化を図れる。このため、自由な組み合わせで接合部を得ることができる。
【0012】
また、別の軸組の線材や接合金物を接合することも可能であって、施工後に軸組の組み替えや交換、継ぎ足しを行うこともできて、至便である。軸組同士の接合は接合金物部分で行うので、線材同士を束ねるように固定する場合に比して、線材に脆性をもたらすことなく、強度を確保することもできる。
【0013】
さらに、軸組の施工時や軸組パネルの製造時には、施工の順序が大きく制限されることはなく、施工などが簡易迅速に行える。組み立てた軸組を分解することもできる。
【0014】
これらの結果、本格的な木造軸組建築、簡易な木造軸組建築の種類にかかわりなく幅広く使用でき、施工上、強度上の点で多くの利点を得られる。そのうえ、木造軸組建築においてはこれまでになかった新規な貸し出しの建築物としての利用もできる。
【0015】
また、接合金物が線材の端面を接合金物の接合面に当接した状態で固定するので、施工後であっても線材の交換が可能であり、長期間にわたって使用できる木造軸組建築を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ユニットハウスの要部の斜視図。
【図2】ユニットハウスの分解斜視図。
【図3】ユニットハウスの主要部の分解斜視図。
【図4】軸組パネルの分解斜視図。
【図5】接合金物の基本構造を示す斜視図。
【図6】接合金物の基本構造を示す分解斜視図。
【図7】接合金物を柱脚部に用いた場合の例を示す断面図。
【図8】接合金物を柱脚部に用いた場合の例を示す断面図。
【図9】軸組パネルの下端における中間部分の分解斜視図。
【図10】軸組パネル上端角部分の分解斜視図。
【図11】軸組パネルと土台との接合部分を示す分解斜視図。
【図12】軸組パネルの上端部分を示す斜視図。
【図13】ユニットハウスの上端角部分を示す斜視図。
【図14】他の例に係る軸組パネルの斜視図。
【図15】軸組パネル同士、または軸組同士を結合する状態を示す断面図。
【図16】軸組パネル同士、または軸組同士を結合する状態を示す断面図。
【図17】他の例に係る軸組パネルの斜視図。
【図18】木造軸組建築の要部の一例を示す平面図。
【図19】木造軸組建築の要部の一例を示す平面図。
【図20】他の例に係るユニットハウスの斜視図。
【図21】図20に示したユニットハウスの分解状態の概略を示す斜視図。
【図22】図20のユニットハウス要部の斜視図。
【図23】図20の要部の分解斜視図。
【図24】図20のユニットハウスの垂直材間の構造を示す横断面図。
【図25】他の例に係るユニットハウスの壁部分の分解斜視図。
【図26】図25の構成の垂直材間の構造を示す横断面図。
【図27】他の例に係るユニットハウスの屋根部分を分解した状態を示す斜視図。
【図28】図27のユニットハウスの本体部分の分解斜視図。
【図29】図27のユニットハウスの隅部分の横断面図。
【図30】他の例に係る接合金物の基本構造を示す斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、木造軸組建築の一例としての1階建てのユニットハウス11の要部を示す斜視図であり、図2は、図1に示した要部に対して取り付ける屋根パネル等の別の部材の取り付け方を示す斜視図、図3は、図1に示した要部のうちの主要部分の分解斜視図である。
【0018】
これらの図に示すように、ユニットハウス11の軸組の主要部分は、4枚の軸組パネル12,13,14,15を組み合わせて構成される。軸組パネル12,13,14,15は、線材21と接合金物31と面材41と、必要に応じて筋かい51とを備える。前記線材21は、線材21の端面22を接合し得る複数の接合面32(図5参照)を有して線材21間に介在し、複数本の線材21をその長さ方向の端面22同士を非接触にして突き合わせるように一体化する接合金物31で接合され、さらに、前記面材41が固定されてパネル化されている。
【0019】
4枚の軸組パネル12,13,14,15は、2枚の桁壁用軸組パネル12,13と、2枚の妻壁用軸組パネル14,15である。
桁壁用軸組パネル12,13は、平面視長方形をなすユニットハウス11の桁壁を構成する1枚のパネルであり、図3、図4に示したように、前記線材21としての垂直材23(柱材)及び水平材24(土台、梁材)と、これらの端面22間に介在して線材21の接合を行う前記接合金物31と、線材21で囲まれた空間内に収まる面材41と、同じく線材21で囲まれた空間内に収まる筋かい51とで構成されている。
【0020】
垂直材23は、桁壁用軸組パネル12の長さ方向の両端位置と、これらの間の適宜位置に平行に設けられる。水平材24は、桁壁用軸組パネル12の長さ方向に沿って前記垂直材23の下端位置と上端位置に水平に延びるように設けられる。
【0021】
水平材24を図3に示したように継ぎ足す場合には、水平材24間に前記接合金物31が介装され、この接合金物31に前記垂直材23の上端面又は下端面が固定される。
【0022】
これら垂直材23と水平材24には、一般に柱材等として用いられるものと同等の木材が使用され、具体的には、たとえば105mm角の角材などを用いることができる。
【0023】
前記接合金物31は、前記の線材21を接合するためのもので、線材21の長さ方向の端面22が接合金物31に当接するように接合される。このため、接合金物31は、図5に示したように、線材21の端面22間に収まる多面体立体形状をなす中空の箱状に形成された外郭部33を有する。この外郭部33は、線材21の端面22を接合可能にする複数の前記接合面32を備える。接合面32には、線材21を結合するための結合具を保持する保持部が形成される。また、接合面32を外郭部33内において相互に連結固定する内部連結部34が形成されている。
【0024】
具体的には、前記接合金物31は、ユニットハウス11の柱脚部分と梁部分に使用され、六方に線材21を接合できるように、6個の接合面32を有する略立方体形状に形成されている。すなわち、上下2枚の接合面32のほかに、側面に4枚の接合面32を備えている。これらの接合面32には、結合具としてのボルト61(図6、図7、図8参照)を保持するための貫通孔35が形成されるとともに、外郭部33内には、隔壁部34aと柱状部34bとからなる前記内部連結部34が形成されている。また、外郭部33の平面視における四隅部分には、平面視円弧状の切欠からなる操作口36が形成される。この操作口36は、前記ボルト61を入れたり、ボルト61を回転したりするときに利用される部分である。さらに、上端の接合面32とこれに連続する側面の4枚の接合面32には、接合金物31を使用するときの向きを合わせるための基準線37が形成されている。
【0025】
このような接合金物31は、たとえば図6に示したような各部材を溶接などにより相互に結合して製造される。図5、図6は、接合金物の基本構造を示すものである。
【0026】
また図示例では、接合面32と隔壁板34aは1枚の平板状の部材を示したが、たとえば板材を折り曲げた部材などを組み合わせることもできる。
【0027】
各部材について説明すると、前記の上端の接合面32(上端接合面32a)と、下端の接合面32(下端接合面32b)、それに2枚の隔壁部34aは、正方形の四隅が円弧状に切り欠かれ、中央にはボルトを通すための前記貫通孔35が形成されている。これらの貫通孔35のうち、上端接合面32aと下端接合面32bの貫通孔35には、ボルト61を螺合する必要がある場合には雌ねじ35aが形成される(図7参照)。雌ねじ35aの形成に代えて、貫通孔35の裏側の位置にナット(図示せず)を保持することもできる。
【0028】
前記の側面の接合面32(側面接合面32c)は、たて長の長方形に形成され、中央に前記貫通孔35が形成されている。また、上記の柱状部34bは、上端接合面32a、下端接合面32b、隔壁部34aの貫通孔35よりも大径のパイプで形成され、上端接合面32aと上側の隔壁部34aとの間と、下端接合面32bと下側の隔壁部34aとの間に介装される。
【0029】
なお、柱脚部に用いる柱脚部用の接合金物31の場合には、図7に示したように設置面Xに置いて使用できるようにするため、接合金物31を設置面Xから浮かせるとともに水平を出すためのアジャスタ71を備える。このアジャスタ71を備えるために、下端接合面32bと下側の隔壁部34aにおける4枚の側面接合面32cに近い部分に等間隔でアジャスタ71の雄ねじ部71aを螺合するねじ孔38が形成される。
【0030】
また、柱脚用の接合金物31では、上端接合面32aと上側の隔壁部34aに、結合具としてのボルト61が下から保持されている。同様に、各側面接合面32cの貫通孔35にも、結合具としてのボルト61が必要に応じて保持される。そして、これらボルト61には、図7に示したように、ボルト61が螺合する雌ねじ62aを有した円柱状のコア材62が固定され、コア材62における長さ方向と直交する方向に形成された貫通孔62bとドリフトピン63を用いて、線材21が固定される。
【0031】
この柱脚部用の接合金物31は、図8に示したように、アンカーボルト81を備えた基礎82の上に固定することもできる。この場合には、上端接合面32aと下端接合面32bと隔壁部34aには、雌ねじ35aがないほうが、施工が容易である。
【0032】
前記面材41は、図4に示したように、複数枚の落とし込み板42を接合してパネル化してなる板倉材で構成されている。このため、前記線材21における面材41を固定する部位には、面材41の縁が入り込む溝25が形成されている。また、面材41における必要部位には開口部43が形成される。
【0033】
前記筋かい51は、図4に仮想線で示したように、前記面材41に固定され一体化している。このとき、筋かい51の端部は、接合される線材21の側面に当接するように端部処理されている。筋かい51は、軸組の角部分に対応する部位に固定するのが好ましい。高強度の耐力壁となるからである。
【0034】
図9は、1本の垂直材23の下端に接合金物31を介して、2本の水平材24を結合する部分の分解斜視図、図10は、接合金物31によって垂直材23と水平材24をL字形に結合する部分の分解斜視図である。これらに示されるように、線材21は接合金物31を介して接合される。また、接合金物31を介しない線材21同士の接合は、ボルトナットなど、適宜の方法で行われる。このようにして、線材21で囲まれる部分に面材41と筋かい51が備えられた桁壁用軸組パネル12,13が構成される。
【0035】
妻壁用軸組パネル14,15は、平面視長方形をなすユニットハウス11の妻壁を構成する1枚のパネルであり、図3に示したように、前記線材21としての垂直材23(柱材)および/または水平材24(土台、梁材)と、線材21で囲まれた空間内に収まる面材41と、同じく線材21で囲まれた空間内に収まる筋かい51とで構成されている。
【0036】
水平材24は、上下両端位置に、妻壁用軸組パネルの長さ方向に沿って水平に延びるように設けられる。また、開口部43を有する一方の妻壁用軸組パネル15には、上下の水平材24間を掛け渡すように垂直材23が固定される。固定は、ボルトナットなど適宜の方法で行われる。
【0037】
これらの垂直材23と水平材24にも、一般に柱材等として用いられるものと同等の木材が使用され、具体的には、たとえば105mm角の角材などを使用することができる。
【0038】
水平材24を継ぎ足す必要がある場合には、前記の桁壁用軸組パネル12,13と同様に、前記接合金物31を介して接合を行う。接合金物31の構造は前記と同様である。
【0039】
前記面材41は、前記の桁壁用軸組パネル12,13の場合と同様に、複数枚の落とし込み板42を結合してパネル化してなる板倉材で構成されている。このため、前記線材21における面材41を固定する部位には、面材41の縁が入り込む溝25が形成されている。
【0040】
妻壁用軸組パネル14,15では、長さ方向の両端に垂直材23が存在しないので、面材41の縁が突出した状態である。突出した縁は、接合される桁壁用軸組パネル12,13の垂直材23の溝25に嵌め込まれる。
【0041】
前記筋かい51も同様で、前記面材41に固定され一体化している。このとき、筋かい51の端部は、接合される線材21の側面に当接するように端部処理されている。筋かい51は、軸組の角部分に対応する部位に固定するのが好ましい。高強度の耐力壁となるからである。
【0042】
図示例の妻壁用軸組パネル14,15では、線材21の接合に前記の接合金物31を用いないが、ボルトナットや釘などの適宜手段で各部材が組み立てられ、線材21で囲まれる部分に面材41と筋かい51が備えられた妻壁用軸組パネル14,15が構成される。
【0043】
このように構成された2枚の桁壁用軸組パネル12,13と2枚の妻壁用軸組パネル14,15を図3に示したように結合し、一つの木造軸組構造を得る。各軸組パネル12,13,14,15の結合に際して、必要か所に図3に示したように梁材16や土台17、それに図1に示したように火打ち材18を接合する。
【0044】
梁材16や土台17の接合は、接合金物31を介して行う。図11は、桁壁用軸組パネル12,13に土台17を固定する部分を示す分解斜視図である。つまり、水平材24と水平材24の間の接合金物31における露出した接合面32に、土台17の端部が接合される。梁材16の場合も同様である。
【0045】
図3に示した梁材16は、上下2本の梁材担体16a,16bと、これらを上下に結合する束部材16cと、これらで囲まれる部分に嵌め込まれた面材16dとからなる。上記のように梁材16の場合も接合金物31の接合面32に固定されるが、下側に位置する梁材担体16dの端面は、各桁壁用軸組パネル12,13の垂直材23の側面に対して前記のコア材とボルトのみで固定できる。
【0046】
また、火打ち材18は、各軸組パネル12,13,14,15の水平材24や梁材16、土台17に対してボルトナット等により固定できる。
【0047】
このようにしてユニットハウス11の要部が形成される。すなわち、ユニットハウス11は、線材21の端面22を接合し得る複数の接合面32を有して線材21間に介在し、複数本の線材21をその長さ方向の端面22同士を非接触にして突き合わせるように一体化する接合金物31で前記線材21が接合された木造軸組構造である。
【0048】
なお、各桁壁用軸組壁パネル12,13の上端に位置する接合金物31には、図12に示すように吊り下げ用の吊りボルト91が固定される。吊りボルト91の雄ねじ91aを接合金物31の上端接合面32aの貫通孔35の雌ねじ35aに螺合すればよい。この吊りボルト91は、施工に際して桁壁用軸組パネル12,13を移動したり支えたりする場合に使用されるほか、完成したユニットハウス11を移動する場合にも便利に使用される。
【0049】
図示例では、各桁壁用軸組パネル12,13における垂直材23の上端に固定したすべての接合金物31に吊りボルト91を備えたので、図2に示したように取り付けられる屋根パネル92の対応部位には、貫通孔93を形成しておき、屋根パネル92を固定したときに、図13に示したように吊りボルト91が突出するように構成される。貫通孔93と吊りボルト91との間は、屋根の完成後にコーキング(図示せず)により閉塞すればよい。
【0050】
前記屋根パネル92のほか、図2に示したように、接合された各軸組みパネル12,13,14,15の外側面における接合金物31部分には、露出する接合金物31を隠蔽する目的で、帯状の目隠し材94を固定するとよい。
【0051】
そのほか、開口部43に窓95やドア96などが取り付けられ、必要に応じて庇部材97など適宜の部材が固定される。図中、98は棟押え、99は棟飾りである。
【0052】
また、前記の桁壁用軸組パネル12,13については、桁壁を1枚のパネルで構成するのでは長大すぎるという場合には、図14に示したように、2枚の桁壁用軸組パネル担体12a,13a,12b,13bに分割した構成とすることもできる。この場合、一方の桁壁用軸組パネル担体12aは長さ方向の両端に垂直材23を有し、他方の桁壁用軸組パネル担体12bは、長さ方向の一端のみに垂直材23を有する構造である。結合は、図15に示したように一方の桁壁用軸組パネル担体12の接合金物31によって行える。
【0053】
なお、双方の桁壁用軸組パネル12a,12bとも、両端に垂直材を有するものであっても、図16に示したように接合は可能である。
【0054】
さらに、桁壁用軸組パネル12,13に限らず、妻壁用軸組パネル14,15においても、図17に示したように、たとえば1間の長さなど、小さく構成することもできる。この場合には、移動が容易であるほか、軸組パネルの支持が簡単であるため土台17や梁材19の結合が容易で、作業性がよく、狭い場所での造作も可能であるという利点を有する。
【0055】
以上のように構成されたユニットハウス11によれば、ユニットハウス11自体は垂直材23や水平材24が、その長さ方向の端面22同士を非接触にして突き合わせたような状態で接合金物31によって一体化されているので、接合金物31で行う線材21同士の接合部構造は共通である。このため、接合部分での組み合わせが自由にでき、軸組や軸組パネル12,13,14,15の組み替え、交換、継ぎ足しなどの自由度が高い。一度形成した軸組を分解することもでき、移動にも便利である。
【0056】
たとえば、複数の軸組ユニット11a,11bを、図18に示したようにT字形に組むのも、図19に示したようにL字形に組むのも、同様の部材の組み合わせで自由にできる。軸組ユニット11a,11b同士の接合は、接合金物31部分で行うので、線材21同士を固定する間場合に比して、線材に脆性をもたらすことなく、強度を確保できる。
【0057】
また、軸組の一部の軸組パネル12,13,14,15が損傷したり、開口部のないところに開口部を形成したくなったりしたような場合には、必要に応じて軸組パネル12,13,14,15の交換をすることで、使用を継続させたり必要な変更をしたりすることが可能となる。さらに、軸組パネル12,13,14,15の一部のパネルを取り外して別の軸組を継ぎ足せば、床面積を広げたり間取りを変更したりすることができる。
【0058】
そのうえ、線材21の端面22が接合金物31に当接した状態で接合されるので、ユニットハウス11の組立てに際して施工順序が大きく制限されることはなく、施工が簡易迅速に行える。また、軸組を組み立てた後においても、線材21の交換が可能であり、長期間にわたって使用できるユニットハウス11となる。
【0059】
さらに、各軸組パネル12,13,14,15においては、線材21を前記の接合金物31で接合するので、線材21の接合作業が容易であり、軸組パネル12,13,14,15の製造が簡易迅速に行える。しかも線材21は端面22が当接するように接合されるので強固な固定状態を得ることができ、板倉材からなる面材41と筋かい51も一体化されるので、強度の高いパネルとなる。
【0060】
軸組パネル12,13,14,15はこのような特徴を有し、接合金物31まで一体化されているので、取り扱い性が良好で、施工が容易で、自由に軸組が得られるので、これまでにない貸し出しの建築物を得ることもできる。
【0061】
つぎに、他の形態について説明する説明する。この説明において、先の構成と同一又は同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0062】
図20は、移動式の小空間、特に屋内で使用する茶室、商品の展示又は販売のための空間、物産展用の作業空間等として好適に使用できるユニットハウス11の正面側角から見た斜視図である。
【0063】
このユニットハウス11は、平らな床面等の設置面や、図20に示したような台座部材101の上に設置して使用されるもので、軸組の主要部分は、線材21と接合金物31で構成される。線材21は、柱材の役割を果たす垂直材23と、土台又は梁材の役割を果たす水平材24である。接合金物31は、前述と同様である。
【0064】
すなわち、垂直材23は、四隅に配設され、これら垂直材23の間に掛け渡すように上下に4本ずつ水平材24が配設され、これら垂直材23と水平材24が接合金物31で接合される。
【0065】
図21は、ユニットハウス11の分解状態の概略を示す斜視図、図22は、ユニットハウス11の要部を斜め上から見た状態の斜視図である。
【0066】
すなわち、土台となる下の水平部材24を接合金物31で接合するとともに、この接合時に、水平部材24で囲まれる面空間に、格子状に組まれた角材からなる大引部材102が取り付けられ、この大引部材102の上には、あとで、合板等からなる下地材103が敷設される。下地材103の上には、図20、22に示したように畳104が敷き込まれる。同様に、梁材となる上の水平部材24を接合金物31で接合するときには、水平部材24で囲まれる面空間に、格子状に組まれた角材からなる天井部材105が取り付けられる。この例のユニットハウス11は、屋内で使用するものであるので、屋根は不要であるが、必要であれば所望の屋根を装着してもよい。
【0067】
また、上下の水平部材24を接合する接合金物31は、前述の接合金物31と構造は同一であるものの具体的な寸法は異なる。つまり、接合時に外側に接合金物31が露出するのを避けるため、図23に示したように、接合金物31の平面視の大きさを垂直材23の端面22よりも若干小さくして、接合金物31を垂直材23及び水平材24の内側にあわせて固定したときに接合金物31の外側に適宜の空間ができるように設定されている。この空間に、アングル状に形成された木製の隠蔽部材106が固定される。隠蔽部材106は、両端に嵌合凸部106aが形成され、この嵌合凸部106aが水平部材24の端面22に形成された嵌合凹部22aに嵌合される。また、隠蔽部材106は、取り付けたときにその外面が水平部材24及び垂直部材23の外面と面一になるように厚さが設定されている。
【0068】
このような構成の主要部分に対して、外側の空間との間を仕切るための壁面等を形成すると、ユニットハウス11は完成する。
【0069】
垂直材23と水平材21で囲まれた4個の開口部は、図20、図22に示したように、にじり口107と出入口108を残して、封鎖される。封鎖は、角材からなる格子状に組まれた桟部材109と、この桟部材109の内外両面に貼り付けられる方形をなすタイル状の壁材110で行われる。
【0070】
桟部材109は、前記にじり口107と出入口108部分を除いて格子状をなし、図24にも示したように、前記壁材110を貼り付けたときに壁材110間にあらわれて垂直材23及び水平材24の外面と面一になる突条109aが形成されている。突条109aは、意匠上の効果のためのものである。また、桟部材109の壁内部位置には、前記壁材110を固定するための段部109bが、角材の固定によって適宜形成されている。
【0071】
前記壁材110には、適宜の板材を使用することができるが、たとえば藺草をバインダーで固めて形成した藺草ボードを用いると茶室空間としての雰囲気を醸し出せてよい。また、この例においては、壁材を縦横に4枚ずつ固定できるように前記桟部材109を構成しているので、壁材の色を適宜変えることによって、たとえば市松模様など、適宜の模様を表現できる。前記藺草ボードを用いた場合には、青みを帯びたものから黄色く焼けたものまで、適宜の色のものを使用することで、落ち着いた雰囲気を表現できる。このような壁材110は、図24に示したように、垂直材23、水平材24及び桟部材109との間に嵌め込まれ、前記段部109bに適宜の手段で固定される。
【0072】
前記壁材110は、桟部材109を両側から挟むように固定され、壁材110間には空間が形成されるので、この空間に照明(図示せず)を収容すれば、光透過性を有する前記藺草ボードからなる壁材110を通して光が漏れる、幻想的な雰囲気を演出できる。
【0073】
壁材110には、ガラスなど、透視を可能とする材質のものを用いて窓や採光等の機能を持たせるもよい。
【0074】
前記封鎖は、図25に示したようなパネル材111を開口部に嵌め込んで行うこともできる。パネル材111は、外周を囲む枠材112と、この枠材112の厚さ方向の中間位置に外周縁が食い込んだ状態で前記枠材112内に嵌め込まれる板材113と、この板材113の両面において枠材112内に固定される桟材114とで構成される。枠材112及び桟材114には、前記突条109aと同様の突条112a,114aが形成されている。
【0075】
前記枠材112と桟材114には、図26に示したように、前記壁材110が内外両面側から貼り付けられる。
【0076】
前記パネル材111が、枠材112と板材113と桟材114を有する構成であるので、前記開口部に取り付けたときには、開口部を閉鎖するほか、軸組の形態を積極的に安定させる機能も有する。
【0077】
なお、前記突条109a,112a,114aを省略することもできる。
【0078】
また、前記開口部の閉鎖は、たとえば格子やすだれ、巻取り式の日除けなどで行うこともできる。開口部は開口状態のままであるもよい。開口部を閉鎖する壁材が、形状、模様、色彩等の意匠、前記のように内部に照明を収容したか積極的に開口部を補強するパネル材11を用いるか等の構造、にじり口107や出入り口108、あるいは窓(図示せず)などの開口位置が様式化されたものを備えて、これらを適宜使用するようにすれば、様々な形態のユニットハウス11を容易に得ることができる。
【0079】
さらに、茶室として必要であるなら、にじり口107等に引き戸をつけてもよい。
【0080】
さらにまた、床の間や水屋が必要であるならば、図18、図19に示したようにして、一部分を突出させてそれらを形成することもできる。
【0081】
このように構成されたユニットハウス11は、茶室等として簡便に利用できる。組立てや分解も容易で、吊りボルトを利用すれば移動も難なく行える。したがって、たとえばクラブ活動や商品の展示等に有効に使用できる。
【0082】
また、たとえば商品を展示したり販売したりする空間や、地方の物産展などを百貨店等で行う場合に職人が入る空間などとして利用する場合には、容易に雰囲気を作り出すことができ、十分な情報伝達が可能で、販売促進にも貢献する。
【0083】
図27は、屋外でも使用できる屋根つきのユニットハウス11の例を示し、この図では、屋根部分を分解した状態を示している。このユニットハウス11は、軸組の主要部分が線材21と接合金物31で構成され、この主要部分に、図27、図28に示したような1枚の床板材121と、4枚の壁板材131と、4枚の屋根板材141を固定して構成される。
【0084】
これら床板材121、壁板材131および屋根板材141は、前記図4等に示したように、複数枚の落とし込み板42を接合してパネル化してなるものである。そして、前記壁板材131については、前記と同様に、図28に示したように線材21に設けた溝25に入り込む縁131aが形成されている。このため、前記と同様に、板倉材として作用するものであるため、施工が容易であり、高強度の耐力壁となるなどの前記の効果を有する。
【0085】
また、この例の壁板材131では特に、表裏両面における四隅部分に、規制板が固定されている。規制板132は、直角をなす角部132aを有する適宜厚の板で構成され、前記角部132a以外の形状は、外観美麗になるように適宜形成される。そして固定は、壁板材131における前記縁131aを除いた部分の角に、規制板132の角部132aが合致するように固定される。固定はネジ(図示せず)など適宜の手段で行われ、ネジを用いた場合には頭部に化粧が施される。
【0086】
壁板材131がこのような規制板132を有するので、壁板材131を線材21に固定したときには、図29に示したように、規制板132の端面132bが線材21に面接触して相互間の位置関係を規制するので、前記のように板倉材として作用することによる効果に加えて、線材21の建ちを出しやすいという効果が得られる。このため、より強度の高いユニットハウス11を簡単に得られる。
【0087】
前記壁板材のうち、必要か所には扉や窓を取り付けるための開口133,134が形成される。また、前記4枚の屋根板材141は下面に断熱材(図示せず)を有するなど、必要に応じて適宜形成されている。たとえば屋根板材141に透明材からなる天窓を形成すれば、流星観測など自然観察用の移動可能な簡易なユニットハウス11とすることができる。なお、屋根板材141は4枚でなくともよい。
【0088】
図30は、前記接合金物31の他の例の基本構造を示している。すなわち、線材21の端面22を接合可能にする接合面32に、線材21を結合するための結合具を保持する前記貫通孔35に代えて、差込板39が溶接等により形成される。差込板39は、線材21の端部に形成された縦スリット26に差し込まれるもので、縦方向に延びており、下端には受け片39aが形成されている。また、差込板は線材21の結合に必要な切欠部39bと貫通孔39cを有する。
【0089】
差込板39は、すべての接合面32に形成されるのではなく、使用される箇所に応じて必要な接合面32に形成される。
【0090】
この発明の構成と、上記の一形態の構成との対応において、
この発明の軸組パネルは、上記の桁壁用軸組パネル12,13、妻壁用軸組パネル14,15に対応し、
同様に、
線材は、線材21、垂直材23、水平材24、梁材16,19、土台17に対応し、
接合金物の上端の接合面は、上端接合面32aに対応し、
壁部材は、面材41、桟部材109及び壁材110、パネル材111に対応するも、
この発明は上記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
【0091】
たとえば、軸組パネルは、間仕切りとして機能させることもできる。すなわち、図3における梁材16と土台17に代えて、妻壁用軸組パネル14,15と同様の軸組パネルを固定することもできる。
【0092】
また、軸組パネルの面材には、板倉材のほか、合板などの面材を用いることもでき、さらに面材の取り付け方は、線材の側面に張り付けるようにするもよい。
【0093】
接合金物31の構造も、その他の構造であるもよい。
【符号の説明】
【0094】
11…ユニットハウス
12,13…桁壁用軸組パネル
14,15…妻壁用軸組パネル
16,19…梁材
17…土台
21…線材
22…端面
23…垂直材
24…水平材
31…接合金物
32…接合面
32a…上端接合面
41…面材
91…吊りボルト
112…枠材
113…板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が接合されてなる木造軸組構造であって、
前記線材の端面を接合し得る複数の接合面を有して線材間に介在し、複数本の線材をその長さ方向の端面同士を非接触にして突き合わせるように一体化する接合金物で前記線材が接合される
木造軸組構造。
【請求項2】
前記接合金物が、上下両面と側面に前記接合面を有するものである
請求項1に記載の木造軸組構造。
【請求項3】
前記線材のうち上下方向に延びる垂直材の上端に固定された接合金物の上端の接合面に、吊り下げのための吊りボルトが固定された
請求項1または請求項2に記載の木造軸組構造。
【請求項4】
前記接合金物で接合された線材に面材が固定された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。
【請求項5】
前記線材のうち垂直材と水平材を接合するすべての前記接合金物に、立方体形状をなして6個の接合面を有する同一形態の接合金物を用いた
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。
【請求項6】
前記線材で形成される開口部に、外側の空間との間を仕切るための壁部材が嵌め込まれた
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。
【請求項7】
前記壁部材が、意匠、構造又は開口位置が様式化されたものである
請求項6に記載の木造軸組構造。
【請求項8】
前記壁部材が、前記開口部の内側に嵌め込まれる枠材と、該枠材の厚さ方向の中間位置に外周縁が食い込んだ状態で前記枠材内に嵌め込まれる板材を有するパネル材である
請求項6または請求項7に記載の木造軸組構造。
【請求項9】
線材の端面を接合し得る複数の接合面を有して線材間に介在し、複数本の線材をその長さ方向の端面同士を非接触にして突き合わせるように一体化する接合金物で前記線材が接合されるとともに、
前記線材に面材が固定されてパネル化された
木造軸組構造に用いられる軸組パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−247081(P2011−247081A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112237(P2011−112237)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2010−541980(P2010−541980)の分割
【原出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(591000757)株式会社アクト (20)
【Fターム(参考)】