変位センサ
【課題】多様な表面状態を有する計測対象物に対して、高速に精度よく変位を計測する。
【解決手段】対物レンズ6を光軸に沿って移動させる共焦点光学系を備える変位センサにおいて、レーザダイオード1からの投射光を、シリンドリカルレンズ4によってスリットビームとし、光軸と直行するY軸側が計測対象物90表面で集光するように絞られ、光軸と直行するX軸が表面からの反射光成分を平均化するために引き伸ばされた態様で照射する。計測対象物90の表面からの反射光はレーザダイオード1と共役な位置に配置された開口5aを通してフォトダイオード2で受光する。開口5aは、Y軸が短く且つX軸が長い形状のスリットである。受光信号がピークとなる対物レンズ6の位置から表面の変位を計測する。
【解決手段】対物レンズ6を光軸に沿って移動させる共焦点光学系を備える変位センサにおいて、レーザダイオード1からの投射光を、シリンドリカルレンズ4によってスリットビームとし、光軸と直行するY軸側が計測対象物90表面で集光するように絞られ、光軸と直行するX軸が表面からの反射光成分を平均化するために引き伸ばされた態様で照射する。計測対象物90の表面からの反射光はレーザダイオード1と共役な位置に配置された開口5aを通してフォトダイオード2で受光する。開口5aは、Y軸が短く且つX軸が長い形状のスリットである。受光信号がピークとなる対物レンズ6の位置から表面の変位を計測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で対象物の変位を計測する共焦点光学系を用いた変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点光学系を用いた変位センサでは、計測対象物の表面にレーザ光を照射し、その反射光を受光し、受光光量レベルに基づき計測対象物の表面の変位を測定する。ここで、レーザ光は光学系を透過しても可干渉性が高いままで計測対象物の表面に照射されるため、計測対象物の表面状態により計測誤差が発生する。具体的には、レーザ光を計測対象物の表面に照射すると、計測対象物の表面からは、位相の異なる光が反射される。この反射光は、互いに干渉し合うことで強めあったり、打ち消し合い、その結果、受光光量に影響を与える。このような計測対象物の表面状態(凸凹の程度)に対応した斑点状の模様は「スペックル」と呼ばれている。
【0003】
レーザ光を用いた変位センサとして、共焦点光学系が利用される。共焦点光学系では、計測対象物の表面に照射されるレーザ光のスポットサイズが小さいため、計測対象物の表面からの反射光にはコントラストが高く、スペックルサイズの大きいスペックルが含まれる。したがって、受光信号に含まれるスペックル成分がノイズとなり、計測誤差が大きくなる。計測誤差を解消するために、たとえば特許文献1の共焦点光学系を用いた変位計では、計測対象物表面におけるレーザ光の照射位置を変えながら、複数位置における変位量を連続的に測定することにより、スペックルの影響を平均化している。
【0004】
特許文献1の変位計によれば、スペックルの影響による計測誤差を少なくすることは可能ではあるが、測定ポイント(計測対象物表面のレーザ光スポット位置)を変えながら複数位置での変位量を連続的に測定する必要があるため、測定に時間がかかる。
【0005】
この課題を解消するものとして、たとえば特許文献2の共焦点光学系を用いた三次元形状測定光学系がある。特許文献2では、特許文献1のレーザ光スポットの位置を変えることに代替して、ラインビームを対物光学系のレンズ位置を変化させながら測定対象物に照射する。測定対象物表面からの反射光はラインセンサで受光し、その受光レベルに基づき三次元形状測定を行なう。特許文献2によれば、計測対象物表面におけるレーザ光スポットの位置を変える必要はないので、測定に時間がかかるという特許文献1の課題が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−286598号公報
【特許文献2】特開2003−83723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2であっても、測定対象物の表面状態により反射光成分にスペックルが含まれるので高精度な変位測定は困難である。つまり、測定対象物の表面に照射される略長方形状のラインビームの短軸側では、特許文献1のスポットの焦点と同様にその反射光にはスペックルが発生する。また、長軸側ではラインセンサによって受光するため、各画素においてスペックルによる受光光量のばらつきが発生している。このように、特許文献2では、略長方形状のラインビームを測定対象物表面に照射することにより、表面の比較的広いエリアを照射するが、各画素に入射する反射光成分自体がスペックルノイズを含んでいるため、ラインセンサの各画素に対応する変位計測値を平均化しても真の検出値を得ることは困難である。
【0008】
また、ラインセンサから信号を読出す間は、計測対象物表面にラインビームを投影するための対物光学系のレンズ位置を一定に保つ必要があり、高速応答が困難となる。
【0009】
また、特許文献2では、共焦点の効果を得るために、ラインビームを形成するためのスリットとラインセンサを共役に配置する必要がある。このように、精密な位置合せを行なう必要があることから特許文献2の装置の組立および調整は困難である。
【0010】
それゆえに、本発明の目的は、多様な表面状態を有する計測対象物に対して、高速に精度よく変位を計測できる変位センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の変位センサは、光を出射する光源と、光源から出射された光を、計測対象物へ向けて集光して照射するとともに、集光される光の光軸方向に沿って当該光の集光位置を連続的に変化させる投光部と、計測対象物上に照射された光の反射光を、投光部からの照射光の光路に対して逆方向に導く集光部と、集光部によって導かれた反射光の光路を、投光部からの光路から分離する光路分離素子と、第1開口を構成する第1遮光部材を含み、当該第1遮光部材は光路分離素子により投光部の光路から分離された反射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第1開口は反射光の他の部分を通過させる第1開口部と、第1開口部を通過した反射光を受光し、受光した光量に応じた受光信号を出力する受光部と、受光信号に基づき計測対象物までの距離についての情報を取得する処理部と、を備える。
【0012】
投光部は、計測対象物上の集光位置におけるスポットの、光軸と直交する第1軸が延びる方向の径を、光軸と直交する第2軸が延びる方向の径よりも短くして、計測対象物に照射するスポット径変更部、を含む。計測対象物上のスポットは、第1軸が延びる方向において合焦し、第1開口は、略長方形状であって且つ第1軸が延びる方向と共役な位置に配置され、略長方形状の第1軸が延びる方向の辺は、第2軸が延びる方向の辺よりも短い。
【0013】
この態様によれば、略長方形状のスポットを計測対象物表面に照射し、スポットは第1軸が延びる方向において合焦し、スポットからの反射光は、略長方形であって且つ第1軸が延びる方向と共役な位置に配置され、略長方形の第1軸が延びる方向の辺が、第2軸が延びる方向の辺よりも短い第1開口を通過して受光部で受光される。したがって、計測対象表面状態に応じて反射光に発生するスペックルの影響を第2軸が延びる方向において平均化しながら、第1軸が延びる方向において合焦状態を検出できて、合焦状態の受光信号に基づく変位測定を高精度に行うことができる。
【0014】
「集光部が光の集光位置を連続的に変化させ」は、予め定められた変化の態様に従って変化することを言い、一定速度で集光位置が変化する場合のほか、集光位置毎に所定の異なる速度により変化する場合を含む。光を集光する光学部品が一定速度や一定の振動周期で移動する結果、光の集光位置が、その位置毎に所定の速さで変化する場合が含まれる。変化には、所定の範囲で、一方向に変化させる場合や往復するように変化させる場合が含まれ、単発的に変化させる場合や周期的に繰り返して変化させる場合が含まれる。
【0015】
集光部には、複数のレンズやミラー等の光学部品群により構成されて、その全体または一部分を移動させる場合や、単数の移動するレンズやミラーにより構成される場合が含まれる。
【0016】
光路分離素子にはハーフミラーや偏光ビームスプリッタが含まれる。
好ましくは、スポット径変更部は、光軸が通過する光学レンズを有し、光学レンズは、光軸と直交する第1軸が延びる方向の焦点距離と光軸と第1軸と直交する第2軸が延びる方向の焦点距離とが異なる。
【0017】
好ましくは、光学レンズは、光軸が延びる方向に沿って移動可能である。これにより、計測対象の表面状態に従い光学レンズを移動させて、表面に集光するスポットの略長方形形状を可変とすることが可能となるから、必要な面内分解能を保持しつつ上述した高精度測定を速やかに行なうことができる。
【0018】
好ましくは、光学レンズは、シリンドリカルレンズである。
好ましくは、光学レンズは、トーリックレンズである。
【0019】
好ましくは、スポット径変更部は、第2開口を構成する第2遮光部材を含み、当該第2遮光部材は照射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第2開口は照射光の他の部分を通過させる第2開口部を有し、第2開口は矩形形状であって、当該矩形の第1軸が延びる方向の辺は、第2軸が延びる方向の辺よりも短い。
【0020】
第1および第2開口は、光を通過させる空間内の領域であり、ピンホールやスリットが含まれる。「開口を形成する」とは、第1および第2遮光部材を配置することによって、光を通過させる空間内の領域を制限することをいう。
【0021】
好ましくは、第2開口の第2軸が延びる方向の辺の長さは可変である。これにより、計測対象の表面状態に従い第2開口の第2軸が延びる方向の辺の長さを変更して、表面に集光するスポットの略長方形形状を可変とすることが可能となるから、第1軸方向において必要な面内分解能を保持しつつ上述した高精度測定を速やかに行なうことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、計測対象物表面からの反射光に発生する表面状態によって発生するスペックルの影響を、第2軸が延びる方向において平均化しながら、第1軸が延びる方向において合焦状態を検出できて、合焦状態の受光信号に基づく変位測定を高精度に行うことができる。また、表面が凸凹である計測対象物の平均的高さ値として高精度に変位を測定することができる。
【0023】
また、計測対象の表面状態に従い表面に集光するスポットの略長方形形状を可変にできるから、必要な面内分解能を保持しつつ高精度測定を速やかに行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】(A)〜(C)は、図1における光の集光状態を説明する図である。
【図3】(A)〜(C)は、図1において計測対象物の表面が鏡面である場合の光の集光状態を説明する図である。
【図4】(A)〜(C)は、図1において計測対象物の表面が光の散乱面である場合の光の集光状態を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るスリットを説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る変位センサの変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図10】(A)〜(C)は、図9における光の集光状態を説明する図である。
【図11】(A)と(B)は、図9においてシリンドリカルレンズを上下させた場合の光の集光状態を説明する図である。
【図12】(A)と(B)は、図9のシリンドリカルレンズを上下動させるための機構を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図14】(A)と(B)は、図13のスリットとそれを用いた光の集光状態を説明する図である。
【図15】(A)と(B)は、図13のスリット幅の拡大を示す図である。
【図16】(A)と(B)は、図13のスリット幅の縮小を説明する図である。
【図17】(A)と(B)は、図13におけるスリット幅の拡大/縮小のための機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の変位センサの各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、同一の構成要素には各図において同一の符号を付し、詳細な説明は繰返さない。
【0026】
各実施の形態に係る変位センサは、共焦点光学系を含んで構成される。共焦点光学系の光軸をZ軸として、Z軸に直交するX軸およびY軸を想定し、X軸が延びる方向を「X方向」と称し、Y軸が延びる方向を「Y方向」と称する。各実施の形態の共焦点光学系はY方向にのみ共焦点となるように設計されている。
【0027】
各実施の形態に係る共焦点光学系では、光源である後述のレーザダイオード1と受光部(後述のフォトダイオード2)に光を導出する開口(後述の開口5a)とを共役に配置する。「共役に配置する」とは、光源から照射された照明光が、計測対象物90の表面上で焦点が合った(合焦した)ときに、同時にその反射光も受光部で焦点が合うように、光源と開口と受光部とが配置されるように設計されることを言う。
【0028】
[実施の形態1]
図1を参照して本実施の形態1に係る共焦点光学系を有する変位センサは、センサヘッド71と、当該センサヘッド71を制御するコントローラ50とを備える。
【0029】
センサヘッド71では、光源であるレーザダイオード1から1点鎖線の光軸が延びる方向に一定の強度の光が照射される。照射された光は、計測対象物90に集光するための集光部の一部を構成するシリンドリカルレンズ4を通過して、対物レンズ6へ導かれる。そして、対物レンズ6を経て計測対象物90の表面上に集光される。対物レンズ6は、振動子7に支持されている。振動子7の近傍位置には振動子7を駆動するための駆動コイル7Aが配備される。また、センサヘッド71には、駆動コイル7Aに通電するための駆動回路7Bが設けられている。駆動コイル7Aに電流を流す期間と電流の供給を停止する期間とを一定の周期で繰返すことにより振動子7が周期的に図中矢印方向に振動する。対物レンズ6は、振動子7の振動に連動して、計測対象物90に接近する方向および遠ざかる方向に移動する。駆動信号出力部30は、駆動回路7Bの駆動コイル7Aへの通電態様を制御する。本実施の形態では、対物レンズ6、ならびに、対物レンズ6をこのように移動させる、振動子7、駆動コイル7Aおよび駆動回路7Bにより、集光部の一部が構成される。さらに、対物レンズ6の位置を検出するために、位置検出部62を備える。位置検出部62の検出信号は、後述の中央処理部51に与えられる。位置検出部62の出力は、対物レンズ6のレンズ位置を示すレンズ位置信号として後述の中央処理部51に与えられる。
【0030】
計測対象物90へ向けて照射されたレーザ光は、当該計測対象物90の表面において反射される。そして、反射光は、対物レンズ6、シリンドリカルレンズ4、ハーフミラー3および絞り板5に予め形成された開口(絞り穴)5aに向けて集光されて、開口(絞り穴)5aを通過した光がフォトダイオード2により受光される。本実施の形態では、ハーフミラー3は偏光ビームスプリッタで代替さえてもよく、これらにより光路分離素子が構成され、フォトダイオード2により受光部が構成される。フォトダイオード2から出力される受光信号は、コントローラ50に出力される。
【0031】
受光信号は、コントローラ50において、増幅回路12で増幅された後、さらにA/D(analog/digital)変換回路13によってデジタル信号に変換され、信号処理部14で適宜処理されて、中央処理部51に与えられる。中央処理部51は、処理を実行するとともにコントローラ50全体の動作を制御する。また、入出力部53を通じて外部から入力される設定値を取得し、記憶部52に記憶させたり、処理結果を入出力部53で表示し、あるいは外部へ出力する。本実施の形態では、中央処理部51が処理部を構成している。
【0032】
中央処理部51は、受光信号と位置検出部62からのレンズ位置信号を用いて、変位を計測する。具体的には、共焦点光学系においては、計測対象物90の表面が対物レンズ6によって集光される光の集光位置に一致すると、計測対象物90上で反射した光は、光学系を通過して、開口5aの位置で集光する。このとき、対物レンズ6の位置に応じて受光信号に極大値(ピーク)が周期的に現れる。本実施の形態では、たとえば、予めセンサヘッド71の端部から計測対象物90へ向けて集光される光の集光位置までの距離と、レンズ位置信号との関係を示す変換テーブルを生成して、記憶部52に格納しておく。動作において、中央処理部51は、受光信号にピークが現れたときの対物レンズ6の位置に基づき、当該変換テーブルを検索して、関連付けされた距離を読出す。これにより、光の集光位置に存在する計測対象物90までの距離を検出する。
【0033】
図1においては、シリンドリカルレンズ4は、X方向とY方向において焦点距離が違うという特徴を有し、図1の共焦点光学系は前述のようにY方向にのみ共焦点となるように設計されている。これらの特徴を踏まえて、図1の光学系の仮想的な平面(以下、仮想面という)63a〜63dの位置(1)〜(5)において観察される光の集光状態を図2〜図4を参照し説明する。
【0034】
図1において、仮想面63aの下方向(計測対象物90の表面が位置する方向)の位置(1)において、レーザダイオード1から照射されてシリンドリカルレンズ4に入射する前の光を観察すると、図2(A)のように光のスポット径はX方向およびY方向についてほぼ等しい。
【0035】
図1における、シリンドリカルレンズ4と対物レンズ6の間に設けられる仮想面63bの位置(2)においてレーザダイオード1から照射されてシリンドリカルレンズ4と通過した直後の光を観察すると、図2(B)のように、シリンドリカルレンズ4の特徴から、光のスポット径はX方向のみが絞られることにより、Y方向にのみ伸張する。この結果、光のスポット形状は、楕円形状となる。
【0036】
さらに、図1の計測対象物90の表面にある仮想面63dの下方向の位置(3)においてレーザダイオード1から計測対象物90の表面に照射された光を観察すると、図2(C)のようになる。図2(C)を参照すると、シリンドリカルレンズ4を通過して対物レンズ6によって集光されて計測対象物90の表面に照射される光のスポットは、Y方向には短く且つX方向には長い、略長方形状のビーム(以下、スリットビームという)63となる。
【0037】
次に、計測対象物90の表面で反射された光の集光状態について、表面が鏡面である場合(図3(A)〜(C))と散乱面である場合(図4(A)〜(C))について説明する。仮想面63cの位置(4)において対物レンズ6に入射する直前の反射光を観察すると、その集光形状は図3(A)および図4(A)のように、図2(C)のスリットビーム63が拡散している。この拡散した反射光を、対物レンズ6およびシリンドリカルレンズ4を通過した直後の仮想面63aの位置(5)において観察すると、図3(B)および図4(B)のように、シリンドリカルレンズ4を通過したことにより、Y方向には短く、X方向には長いスリット形状の光のスポットが観察される。このスリット形状の反射光は、その後、ハーフミラー3によって絞り板5上で開口5aを包含するように集光される(図3(C)と図4(C)を参照)。
【0038】
開口5aを構成する絞り板5は遮光部材でる。絞り板5はハーフミラー3によりレーザダイオード1の照射光の光路から分離された計測対象物90表面からの反射光の少なくとも一部分を遮光し、開口5aは当該反射光の他の部分を通過させて、フォトダイオード2側に出射する。図1に示した共焦点光学系は、前述したようにY方向のみ合焦(焦点が合う)ように設計されているので、開口5aは、Y方向の共焦点状態を検出するために、図3(C)と図4(C)に示されるようにY方向の辺はX方向の辺よりも短い矩形のスリット形状を有する。
【0039】
上述したように、シリンドリカルレンズ4は、計測対象物90の表面に照射される、または表面から反射するレーザ光のスポット径を変更するスポット径変更部に相当する。
【0040】
図4(A)〜(C)を参照して、計測対象物90の表面(散乱面)からの反射光には、鏡面からの反射光には観察されない斜線で示すスペックルが含まれる。ここで、X方向である長軸の方向では、スポットサイズを大きくしているので、スペックルサイズを小さくできる。そして、スペックルの影響を小さくしながらも、Y方向である共焦点の方向ではスポットサイズを小さくして、すなわち計測対象物表面における面内分解能を小さくできて計測精度を維持することができる。
【0041】
このように、計測対象物90の表面状態がレーザダイオード1の波長オーダの凸凹の散乱面であっても、スペックルの影響を平均化し、精度よく変位を測定することが可能となる。また、スリットビーム63を用いることにより、計測対象物90の表面が計測分解能を超えるオーダの凸凹であっても、計測対象物表面における平均的な高さ値を精度よく測定できる。また、計測対象物90の表面においてスポット位置を連続的に移動させる必要はなく、また、受光信号を読取るためにフォトダイオードを用いており、信号読取り時間を待つ必要のあるラインセンサを用いないので高速に変位を計測できる。
【0042】
実施の形態1では、スポット径変更部としてシリンドリカルレンズを用いたが、X方向およびY方向の焦点距離が異なるレンズであれば、他のレンズ、たとえばトーリックレンズに代替してもよい。
【0043】
[実施の形態2]
図5には、実施の形態2に係る変位センサの概略構成が示される。図5の変位センサは、図1の変位センサのセンサヘッド71に代替して、センサヘッド72を備える。コントローラ50の構成は、図1に示すものと同じである。
【0044】
図5において、センサヘッド72は、図1に示したセンサヘッド71のシリンドリカルレンズ4に代替して、集光部の一部を構成するスリット板8を備える。スリット板8は、予め開口部であるスリット8aが形成されている。スリット板8は、レーザダイオード1とハーフミラー3との間の投光の光路上において、スリット8aの開口を光軸が通過するように配置されて、レーザダイオード1からのレーザビームが通過する。スリット板8はスリット8aが形成された遮光部材である。当該遮光部材はレーザダイオード1からの照射光の少なくとも一部分を遮光し、スリット8aは照射光の他の部分を通過させる。センサヘッド72の他の構成は、図1に示したセンサヘッド71と同じであり、説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0045】
図6を参照して、スリット板8のスリット8aの開口部は、X方向に長く、かつY方向に短い略長方形状を有する。レーザダイオード1からのレーザ光は、スリット板8上で、スリット8aを包含するように照射される。照射された光の一部は、スリット8aを通過して対物レンズ6へ導かれる。
【0046】
本実施の形態では、レーザダイオード1から照射されて、計測対象物90の表面上における集光位置のスリットビーム63の形状を、X方向に長く、かつY方向に短いものとするためのスポット径変更部として、シリンドリカルレンズ4に代替してスリット8aが形成されたスリット板8を用いている。スリット板8に形成されるスリット8aは、図6に示されるような長方形状に限定されず、X方向に長く、かつY方向に短い形状であればよく、たとえば、楕円形状であってもよい。
【0047】
[実施の形態3]
図7には、実施の形態3に係る変位センサの概略構成が示される。図7の変位センサの構成と、図1のそれとを比較し異なる点は、センサヘッド71に代替して、図7の変位センサはセンサヘッド73を備える点にある。図7のコントローラ50の構成および機能は、図1に示したものと同じであり説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0048】
センサヘッド73では、レーザダイオード1から照射された光が、集光部の一部を構成するコリメートレンズ9により略平行光に変換された後に、集光部の一部を構成するシリンドリカルレンズ4を通して、計測対象物90の表面に向けて集光される。したがって、計測対象物1の表面において検出されるスリットビーム63は、X方向に長く、Y方向に短い略長方形状となる。
【0049】
ここで、シリンドリカルレンズ4は、対物レンズ6と同様に、計測対象物90の表面上に集光させるための機能を有する。したがって、図1の対物レンズ6と同様に、振動子7によって支持されて、駆動コイル7Aによって図中矢印方向(上下方向)に振動する。その振動の位置を指すレンズ位置信号が位置検出部62によって検出されて中央処理部51に出力される。
【0050】
計測対象物90の表面上の集光位置で反射した光は、シリンドリカルレンズ4、コリメートレンズ9およびハーフミラー3を介して絞り板5の開口5aを通過してフォトダイオード2によって受光される。
【0051】
図7では、スリットビーム63がX方向に長いので、反射光量は、すなわちフォトダイオード2の受光量は実施の形態1または2に比較して少なくなる。そこで、反射光量を増加させるために、図8に示すように、図7のシリンドリカルレンズ4を、トーリックレンズ4Aに代替してもよい。図7のシリンドリカルレンズ4の場合には、Y方向の一方方向にしか集光(光を絞る)することができないが、トーリックレンズ4Aは、Y方向のみならずX方向においても集光をすることができる。したがって、シリンドリカルレンズ4に代替してトーリックレンズ4A用いることにより、図8のスリットビーム63は、図7に比較しX方向に短くなり反射光量を増大、すなわちフォトダイオード2の受光量を増加させることができる。
【0052】
[実施の形態4]
図9には、実施の形態4に係る変位センサの構成が示される。図9の変位センサの構成と、図1に示した変位センサとを比較し異なる点は、図1のセンサヘッド71に代替して、センサヘッド74を有する点にある。図9のコントローラ50の構成および機能は、図1に示したものと同様であり、説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0053】
センサヘッド74と図1に示したセンサヘッド71とを比較し異なる点は、シリンドリカルレンズ4を光軸が延びる方向に従って移動(上下動)させるための位置調整部41を追加して備える点にある。センサヘッド74の他の部分は、図1に示したセンサヘッド71と同様であり説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0054】
図9のセンサヘッド74は、シリンドリカルレンズ4の光軸方向に沿った位置(上下方向の位置)を、計測対象物90の表面粗さ(凸凹の状態)や必要な面内分解能に従い、調整するための機能として、位置調整部41を備えている。シリンドリカルレンズ4は、Y方向にのみ集光させることができるので、図9において、仮想面63aの位置(5)において、レーザダイオード1から照射されてシリンドリカルレンズ4に入射する直前の光を観察すると、図10(A)に示されるように、略円形形状の集光状態が観察される。
【0055】
図9における仮想面63bの位置(2)においてレーザダイオード1から照射されたシリンドリカルレンズ4を通過し、対物レンズ6に入射する直前の光を観察すると、図10(B)のように集光状態が観察される。図10(B)では、シリンドリカルレンズ4を光が通過したことにより、Y方向のサイズが大きくなっている。
【0056】
図9における仮想面63dの位置(3)において計測対象物90の表面上に照射された光の集光状態を観察すると、図10(C)のように、X方向に長く且つY方向に短い(Y方向にのみ絞られた)、略長方形状のレーザスポット63が観察される。
【0057】
図10(C)の集光状態を示すシリンドリカルレンズ4の位置を、位置制御部41によりレーザダイオード1方向に上昇させると、図11(A)に示されるように、位置(3)で観察されるスリットビーム63の径は、Y方向の長さは変わらずX方向に延びた形状に変化し、逆に、シリンドリカルレンズ41の位置を計測対象物90の方向に下降させた場合には、図11(B)に示されるように、位置(3)で観察されるスリットビーム63の径は、Y方向の長さはそのままに、X方向の長さが短くなる。
【0058】
したがって、計測対象物90の表面粗さによるスペックルの影響を平均化しながらより測定精度を得たい場合には、シリンドリカルレンズ4の現在位置を位置調整部41によって上昇させればよく、また、より面内分解能を高める場合には、図11(B)に示されるように、シリンドリカルレンズ4の現在位置を、位置制御部41によって下降させればよい。
【0059】
図12(A)と(B)を参照して位置調整部41の構成を説明する。図12(A)には、図9のY方向から見た位置調整部41の構成が示され、図12(B)には、図12(A)の線XIIB−XIIBにおける断面が示される。位置調整部41は、シリンドリカルレンズ4を光軸に沿って上下に移動させるために、支持部材413によって支持される。支持部材413には、シリンドリカルレンズ4を保持した状態の支持部材413を、光軸に沿って上下動させるための案内となるガイド412が貫通する。支持部材413に一体的に取付けられた凸凹部414と、回転可能に支持されるシャフト411に一体的に取付けられた螺旋状の凸凹部材417とは互いの凸凹が係合している。シャフト411が図中の矢印415の方向に回転すると、シャフト411に一体的に設けられた凸凹部材417が螺旋を描いて回転し、これに連動して凸凹部材417の凸凹に係合している凸凹部414が図中矢印416の方向に移動する。その結果、支持部材413に保持されたシリンドリカルレンズ4は、図中矢印416の方向に上昇する。一方、矢印415とは逆方向にシャフト411を回転させると、この回転に連動して、支持部材413は、矢印416とは逆方向、すなわち計測対象物90の方向に下降し、その結果、支持部材413に保持されたシリンドリカルレンズ4は、下降する。
【0060】
なお、上下動する光学レンズは、シリンドリカルレンズ4に限定されず、トーリックレンズであってもよい。
【0061】
[実施の形態5]
図5に示したスリット板8に予め形成されたスリット8aの開口部は、そのサイズが固定であるが、本実施の形態5のように可変であってもよい。
【0062】
図13には、実施の形態5に係る変位センサの概略構成が示される。図13の変位センサの構成と、図5のそれとを比較し異なる点は、センサヘッド72に代替して、センサヘッド75を備える点にある。図13のコントローラ50の構成および機能は、図1に示したものと同じであり説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0063】
センサヘッド75と図5に示したセンサヘッド72とを比較し異なる点は、スリット8aの開口部のサイズを可変とするためのスリット幅変更部82を追加して備える点にある。センサヘッド75の他の部分は、図5に示したセンサヘッド72と同様であり説明は略す。
【0064】
スリット幅が可変のスリット81aは、図14(A)のサイズであるとき、スリットビーム63は図14(B)の形状を有すると想定する。スリット幅変更部82により図15(A)のようにスリット81aのX方向の幅を拡大すると、スリットビーム63の径は図15(B)のようにX方向に長くなり、逆に、図16(A)のように幅を縮小させると、スリットビーム63の径は図16(B)のようにX方向に短くなる。
【0065】
図17(A)と(B)を参照してスリット幅変更部82の構成を説明する。図17(A)には、図13の対物レンズ側から見たスリット幅変更部82の構成が示され、図17(B)には、図17(A)の線XVIIB−XVIIBにおける断面が示される。スリット幅変更部82は、スリット81aの一部を覆うようにしてX方向に移動可能な2枚のプレート824が、支持部材882によって支持される。支持部材882は、2枚のプレート824をX方向に滑らすように案内するガイドとして機能する。2枚のプレート824のそれぞれに一体的に取付けられた凸凹部823と、回転可能に支持されるシャフト821に一体的に取付けられた螺旋状の凸凹部材827aと827bとは互いの凸凹が係合している。シャフト821が図中の矢印825の方向に回転すると、シャフト821に一体的に設けられた凸凹部材827aと827bとは逆方向の螺旋を描いて回転し、これに連動して凸凹部材827aと827bの凸凹に係合している凸凹部824のそれぞれが図中矢印826の方向に移動する。その結果、支持部材822に保持された2枚のプレート824は図中矢印826の方向に移動し、スリット81aのX方向の幅は縮小される。一方、矢印825とは逆方向にシャフト821を回転させると、この回転に連動して、2枚のプレート824は、矢印826とは逆方向に移動し、スリット81aのX方向の幅は拡大する。
【0066】
このように、計測対象物90の表面粗さによるスペックルの影響を平均化しながらより測定精度を得たい場合には、スリット幅変更部82によってスリット81aのX方向の幅を拡大すればよく、また、より面内分解能を高める場合には、反射光量(フォトダイオード2の受光量)が十分となるように、スリット幅変更部82によってスリット81aのX方向の幅を縮小すればよい。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザダイオード、2 フォトダイオード、3 ハーフミラー、4 シリンドリカルレンズ、4A トーリックレンズ、5 絞り板、5a 開口、6 対物レンズ、8,81 スリット板、8a,81a スリット、50 コントローラ、71,72,73,74,75 センサヘッド、63 スリットビーム、90 計測対象物、41 位置調整部、82 スリット幅変更部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で対象物の変位を計測する共焦点光学系を用いた変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点光学系を用いた変位センサでは、計測対象物の表面にレーザ光を照射し、その反射光を受光し、受光光量レベルに基づき計測対象物の表面の変位を測定する。ここで、レーザ光は光学系を透過しても可干渉性が高いままで計測対象物の表面に照射されるため、計測対象物の表面状態により計測誤差が発生する。具体的には、レーザ光を計測対象物の表面に照射すると、計測対象物の表面からは、位相の異なる光が反射される。この反射光は、互いに干渉し合うことで強めあったり、打ち消し合い、その結果、受光光量に影響を与える。このような計測対象物の表面状態(凸凹の程度)に対応した斑点状の模様は「スペックル」と呼ばれている。
【0003】
レーザ光を用いた変位センサとして、共焦点光学系が利用される。共焦点光学系では、計測対象物の表面に照射されるレーザ光のスポットサイズが小さいため、計測対象物の表面からの反射光にはコントラストが高く、スペックルサイズの大きいスペックルが含まれる。したがって、受光信号に含まれるスペックル成分がノイズとなり、計測誤差が大きくなる。計測誤差を解消するために、たとえば特許文献1の共焦点光学系を用いた変位計では、計測対象物表面におけるレーザ光の照射位置を変えながら、複数位置における変位量を連続的に測定することにより、スペックルの影響を平均化している。
【0004】
特許文献1の変位計によれば、スペックルの影響による計測誤差を少なくすることは可能ではあるが、測定ポイント(計測対象物表面のレーザ光スポット位置)を変えながら複数位置での変位量を連続的に測定する必要があるため、測定に時間がかかる。
【0005】
この課題を解消するものとして、たとえば特許文献2の共焦点光学系を用いた三次元形状測定光学系がある。特許文献2では、特許文献1のレーザ光スポットの位置を変えることに代替して、ラインビームを対物光学系のレンズ位置を変化させながら測定対象物に照射する。測定対象物表面からの反射光はラインセンサで受光し、その受光レベルに基づき三次元形状測定を行なう。特許文献2によれば、計測対象物表面におけるレーザ光スポットの位置を変える必要はないので、測定に時間がかかるという特許文献1の課題が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−286598号公報
【特許文献2】特開2003−83723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2であっても、測定対象物の表面状態により反射光成分にスペックルが含まれるので高精度な変位測定は困難である。つまり、測定対象物の表面に照射される略長方形状のラインビームの短軸側では、特許文献1のスポットの焦点と同様にその反射光にはスペックルが発生する。また、長軸側ではラインセンサによって受光するため、各画素においてスペックルによる受光光量のばらつきが発生している。このように、特許文献2では、略長方形状のラインビームを測定対象物表面に照射することにより、表面の比較的広いエリアを照射するが、各画素に入射する反射光成分自体がスペックルノイズを含んでいるため、ラインセンサの各画素に対応する変位計測値を平均化しても真の検出値を得ることは困難である。
【0008】
また、ラインセンサから信号を読出す間は、計測対象物表面にラインビームを投影するための対物光学系のレンズ位置を一定に保つ必要があり、高速応答が困難となる。
【0009】
また、特許文献2では、共焦点の効果を得るために、ラインビームを形成するためのスリットとラインセンサを共役に配置する必要がある。このように、精密な位置合せを行なう必要があることから特許文献2の装置の組立および調整は困難である。
【0010】
それゆえに、本発明の目的は、多様な表面状態を有する計測対象物に対して、高速に精度よく変位を計測できる変位センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の変位センサは、光を出射する光源と、光源から出射された光を、計測対象物へ向けて集光して照射するとともに、集光される光の光軸方向に沿って当該光の集光位置を連続的に変化させる投光部と、計測対象物上に照射された光の反射光を、投光部からの照射光の光路に対して逆方向に導く集光部と、集光部によって導かれた反射光の光路を、投光部からの光路から分離する光路分離素子と、第1開口を構成する第1遮光部材を含み、当該第1遮光部材は光路分離素子により投光部の光路から分離された反射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第1開口は反射光の他の部分を通過させる第1開口部と、第1開口部を通過した反射光を受光し、受光した光量に応じた受光信号を出力する受光部と、受光信号に基づき計測対象物までの距離についての情報を取得する処理部と、を備える。
【0012】
投光部は、計測対象物上の集光位置におけるスポットの、光軸と直交する第1軸が延びる方向の径を、光軸と直交する第2軸が延びる方向の径よりも短くして、計測対象物に照射するスポット径変更部、を含む。計測対象物上のスポットは、第1軸が延びる方向において合焦し、第1開口は、略長方形状であって且つ第1軸が延びる方向と共役な位置に配置され、略長方形状の第1軸が延びる方向の辺は、第2軸が延びる方向の辺よりも短い。
【0013】
この態様によれば、略長方形状のスポットを計測対象物表面に照射し、スポットは第1軸が延びる方向において合焦し、スポットからの反射光は、略長方形であって且つ第1軸が延びる方向と共役な位置に配置され、略長方形の第1軸が延びる方向の辺が、第2軸が延びる方向の辺よりも短い第1開口を通過して受光部で受光される。したがって、計測対象表面状態に応じて反射光に発生するスペックルの影響を第2軸が延びる方向において平均化しながら、第1軸が延びる方向において合焦状態を検出できて、合焦状態の受光信号に基づく変位測定を高精度に行うことができる。
【0014】
「集光部が光の集光位置を連続的に変化させ」は、予め定められた変化の態様に従って変化することを言い、一定速度で集光位置が変化する場合のほか、集光位置毎に所定の異なる速度により変化する場合を含む。光を集光する光学部品が一定速度や一定の振動周期で移動する結果、光の集光位置が、その位置毎に所定の速さで変化する場合が含まれる。変化には、所定の範囲で、一方向に変化させる場合や往復するように変化させる場合が含まれ、単発的に変化させる場合や周期的に繰り返して変化させる場合が含まれる。
【0015】
集光部には、複数のレンズやミラー等の光学部品群により構成されて、その全体または一部分を移動させる場合や、単数の移動するレンズやミラーにより構成される場合が含まれる。
【0016】
光路分離素子にはハーフミラーや偏光ビームスプリッタが含まれる。
好ましくは、スポット径変更部は、光軸が通過する光学レンズを有し、光学レンズは、光軸と直交する第1軸が延びる方向の焦点距離と光軸と第1軸と直交する第2軸が延びる方向の焦点距離とが異なる。
【0017】
好ましくは、光学レンズは、光軸が延びる方向に沿って移動可能である。これにより、計測対象の表面状態に従い光学レンズを移動させて、表面に集光するスポットの略長方形形状を可変とすることが可能となるから、必要な面内分解能を保持しつつ上述した高精度測定を速やかに行なうことができる。
【0018】
好ましくは、光学レンズは、シリンドリカルレンズである。
好ましくは、光学レンズは、トーリックレンズである。
【0019】
好ましくは、スポット径変更部は、第2開口を構成する第2遮光部材を含み、当該第2遮光部材は照射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第2開口は照射光の他の部分を通過させる第2開口部を有し、第2開口は矩形形状であって、当該矩形の第1軸が延びる方向の辺は、第2軸が延びる方向の辺よりも短い。
【0020】
第1および第2開口は、光を通過させる空間内の領域であり、ピンホールやスリットが含まれる。「開口を形成する」とは、第1および第2遮光部材を配置することによって、光を通過させる空間内の領域を制限することをいう。
【0021】
好ましくは、第2開口の第2軸が延びる方向の辺の長さは可変である。これにより、計測対象の表面状態に従い第2開口の第2軸が延びる方向の辺の長さを変更して、表面に集光するスポットの略長方形形状を可変とすることが可能となるから、第1軸方向において必要な面内分解能を保持しつつ上述した高精度測定を速やかに行なうことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、計測対象物表面からの反射光に発生する表面状態によって発生するスペックルの影響を、第2軸が延びる方向において平均化しながら、第1軸が延びる方向において合焦状態を検出できて、合焦状態の受光信号に基づく変位測定を高精度に行うことができる。また、表面が凸凹である計測対象物の平均的高さ値として高精度に変位を測定することができる。
【0023】
また、計測対象の表面状態に従い表面に集光するスポットの略長方形形状を可変にできるから、必要な面内分解能を保持しつつ高精度測定を速やかに行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】(A)〜(C)は、図1における光の集光状態を説明する図である。
【図3】(A)〜(C)は、図1において計測対象物の表面が鏡面である場合の光の集光状態を説明する図である。
【図4】(A)〜(C)は、図1において計測対象物の表面が光の散乱面である場合の光の集光状態を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るスリットを説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る変位センサの変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図10】(A)〜(C)は、図9における光の集光状態を説明する図である。
【図11】(A)と(B)は、図9においてシリンドリカルレンズを上下させた場合の光の集光状態を説明する図である。
【図12】(A)と(B)は、図9のシリンドリカルレンズを上下動させるための機構を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図14】(A)と(B)は、図13のスリットとそれを用いた光の集光状態を説明する図である。
【図15】(A)と(B)は、図13のスリット幅の拡大を示す図である。
【図16】(A)と(B)は、図13のスリット幅の縮小を説明する図である。
【図17】(A)と(B)は、図13におけるスリット幅の拡大/縮小のための機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の変位センサの各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、同一の構成要素には各図において同一の符号を付し、詳細な説明は繰返さない。
【0026】
各実施の形態に係る変位センサは、共焦点光学系を含んで構成される。共焦点光学系の光軸をZ軸として、Z軸に直交するX軸およびY軸を想定し、X軸が延びる方向を「X方向」と称し、Y軸が延びる方向を「Y方向」と称する。各実施の形態の共焦点光学系はY方向にのみ共焦点となるように設計されている。
【0027】
各実施の形態に係る共焦点光学系では、光源である後述のレーザダイオード1と受光部(後述のフォトダイオード2)に光を導出する開口(後述の開口5a)とを共役に配置する。「共役に配置する」とは、光源から照射された照明光が、計測対象物90の表面上で焦点が合った(合焦した)ときに、同時にその反射光も受光部で焦点が合うように、光源と開口と受光部とが配置されるように設計されることを言う。
【0028】
[実施の形態1]
図1を参照して本実施の形態1に係る共焦点光学系を有する変位センサは、センサヘッド71と、当該センサヘッド71を制御するコントローラ50とを備える。
【0029】
センサヘッド71では、光源であるレーザダイオード1から1点鎖線の光軸が延びる方向に一定の強度の光が照射される。照射された光は、計測対象物90に集光するための集光部の一部を構成するシリンドリカルレンズ4を通過して、対物レンズ6へ導かれる。そして、対物レンズ6を経て計測対象物90の表面上に集光される。対物レンズ6は、振動子7に支持されている。振動子7の近傍位置には振動子7を駆動するための駆動コイル7Aが配備される。また、センサヘッド71には、駆動コイル7Aに通電するための駆動回路7Bが設けられている。駆動コイル7Aに電流を流す期間と電流の供給を停止する期間とを一定の周期で繰返すことにより振動子7が周期的に図中矢印方向に振動する。対物レンズ6は、振動子7の振動に連動して、計測対象物90に接近する方向および遠ざかる方向に移動する。駆動信号出力部30は、駆動回路7Bの駆動コイル7Aへの通電態様を制御する。本実施の形態では、対物レンズ6、ならびに、対物レンズ6をこのように移動させる、振動子7、駆動コイル7Aおよび駆動回路7Bにより、集光部の一部が構成される。さらに、対物レンズ6の位置を検出するために、位置検出部62を備える。位置検出部62の検出信号は、後述の中央処理部51に与えられる。位置検出部62の出力は、対物レンズ6のレンズ位置を示すレンズ位置信号として後述の中央処理部51に与えられる。
【0030】
計測対象物90へ向けて照射されたレーザ光は、当該計測対象物90の表面において反射される。そして、反射光は、対物レンズ6、シリンドリカルレンズ4、ハーフミラー3および絞り板5に予め形成された開口(絞り穴)5aに向けて集光されて、開口(絞り穴)5aを通過した光がフォトダイオード2により受光される。本実施の形態では、ハーフミラー3は偏光ビームスプリッタで代替さえてもよく、これらにより光路分離素子が構成され、フォトダイオード2により受光部が構成される。フォトダイオード2から出力される受光信号は、コントローラ50に出力される。
【0031】
受光信号は、コントローラ50において、増幅回路12で増幅された後、さらにA/D(analog/digital)変換回路13によってデジタル信号に変換され、信号処理部14で適宜処理されて、中央処理部51に与えられる。中央処理部51は、処理を実行するとともにコントローラ50全体の動作を制御する。また、入出力部53を通じて外部から入力される設定値を取得し、記憶部52に記憶させたり、処理結果を入出力部53で表示し、あるいは外部へ出力する。本実施の形態では、中央処理部51が処理部を構成している。
【0032】
中央処理部51は、受光信号と位置検出部62からのレンズ位置信号を用いて、変位を計測する。具体的には、共焦点光学系においては、計測対象物90の表面が対物レンズ6によって集光される光の集光位置に一致すると、計測対象物90上で反射した光は、光学系を通過して、開口5aの位置で集光する。このとき、対物レンズ6の位置に応じて受光信号に極大値(ピーク)が周期的に現れる。本実施の形態では、たとえば、予めセンサヘッド71の端部から計測対象物90へ向けて集光される光の集光位置までの距離と、レンズ位置信号との関係を示す変換テーブルを生成して、記憶部52に格納しておく。動作において、中央処理部51は、受光信号にピークが現れたときの対物レンズ6の位置に基づき、当該変換テーブルを検索して、関連付けされた距離を読出す。これにより、光の集光位置に存在する計測対象物90までの距離を検出する。
【0033】
図1においては、シリンドリカルレンズ4は、X方向とY方向において焦点距離が違うという特徴を有し、図1の共焦点光学系は前述のようにY方向にのみ共焦点となるように設計されている。これらの特徴を踏まえて、図1の光学系の仮想的な平面(以下、仮想面という)63a〜63dの位置(1)〜(5)において観察される光の集光状態を図2〜図4を参照し説明する。
【0034】
図1において、仮想面63aの下方向(計測対象物90の表面が位置する方向)の位置(1)において、レーザダイオード1から照射されてシリンドリカルレンズ4に入射する前の光を観察すると、図2(A)のように光のスポット径はX方向およびY方向についてほぼ等しい。
【0035】
図1における、シリンドリカルレンズ4と対物レンズ6の間に設けられる仮想面63bの位置(2)においてレーザダイオード1から照射されてシリンドリカルレンズ4と通過した直後の光を観察すると、図2(B)のように、シリンドリカルレンズ4の特徴から、光のスポット径はX方向のみが絞られることにより、Y方向にのみ伸張する。この結果、光のスポット形状は、楕円形状となる。
【0036】
さらに、図1の計測対象物90の表面にある仮想面63dの下方向の位置(3)においてレーザダイオード1から計測対象物90の表面に照射された光を観察すると、図2(C)のようになる。図2(C)を参照すると、シリンドリカルレンズ4を通過して対物レンズ6によって集光されて計測対象物90の表面に照射される光のスポットは、Y方向には短く且つX方向には長い、略長方形状のビーム(以下、スリットビームという)63となる。
【0037】
次に、計測対象物90の表面で反射された光の集光状態について、表面が鏡面である場合(図3(A)〜(C))と散乱面である場合(図4(A)〜(C))について説明する。仮想面63cの位置(4)において対物レンズ6に入射する直前の反射光を観察すると、その集光形状は図3(A)および図4(A)のように、図2(C)のスリットビーム63が拡散している。この拡散した反射光を、対物レンズ6およびシリンドリカルレンズ4を通過した直後の仮想面63aの位置(5)において観察すると、図3(B)および図4(B)のように、シリンドリカルレンズ4を通過したことにより、Y方向には短く、X方向には長いスリット形状の光のスポットが観察される。このスリット形状の反射光は、その後、ハーフミラー3によって絞り板5上で開口5aを包含するように集光される(図3(C)と図4(C)を参照)。
【0038】
開口5aを構成する絞り板5は遮光部材でる。絞り板5はハーフミラー3によりレーザダイオード1の照射光の光路から分離された計測対象物90表面からの反射光の少なくとも一部分を遮光し、開口5aは当該反射光の他の部分を通過させて、フォトダイオード2側に出射する。図1に示した共焦点光学系は、前述したようにY方向のみ合焦(焦点が合う)ように設計されているので、開口5aは、Y方向の共焦点状態を検出するために、図3(C)と図4(C)に示されるようにY方向の辺はX方向の辺よりも短い矩形のスリット形状を有する。
【0039】
上述したように、シリンドリカルレンズ4は、計測対象物90の表面に照射される、または表面から反射するレーザ光のスポット径を変更するスポット径変更部に相当する。
【0040】
図4(A)〜(C)を参照して、計測対象物90の表面(散乱面)からの反射光には、鏡面からの反射光には観察されない斜線で示すスペックルが含まれる。ここで、X方向である長軸の方向では、スポットサイズを大きくしているので、スペックルサイズを小さくできる。そして、スペックルの影響を小さくしながらも、Y方向である共焦点の方向ではスポットサイズを小さくして、すなわち計測対象物表面における面内分解能を小さくできて計測精度を維持することができる。
【0041】
このように、計測対象物90の表面状態がレーザダイオード1の波長オーダの凸凹の散乱面であっても、スペックルの影響を平均化し、精度よく変位を測定することが可能となる。また、スリットビーム63を用いることにより、計測対象物90の表面が計測分解能を超えるオーダの凸凹であっても、計測対象物表面における平均的な高さ値を精度よく測定できる。また、計測対象物90の表面においてスポット位置を連続的に移動させる必要はなく、また、受光信号を読取るためにフォトダイオードを用いており、信号読取り時間を待つ必要のあるラインセンサを用いないので高速に変位を計測できる。
【0042】
実施の形態1では、スポット径変更部としてシリンドリカルレンズを用いたが、X方向およびY方向の焦点距離が異なるレンズであれば、他のレンズ、たとえばトーリックレンズに代替してもよい。
【0043】
[実施の形態2]
図5には、実施の形態2に係る変位センサの概略構成が示される。図5の変位センサは、図1の変位センサのセンサヘッド71に代替して、センサヘッド72を備える。コントローラ50の構成は、図1に示すものと同じである。
【0044】
図5において、センサヘッド72は、図1に示したセンサヘッド71のシリンドリカルレンズ4に代替して、集光部の一部を構成するスリット板8を備える。スリット板8は、予め開口部であるスリット8aが形成されている。スリット板8は、レーザダイオード1とハーフミラー3との間の投光の光路上において、スリット8aの開口を光軸が通過するように配置されて、レーザダイオード1からのレーザビームが通過する。スリット板8はスリット8aが形成された遮光部材である。当該遮光部材はレーザダイオード1からの照射光の少なくとも一部分を遮光し、スリット8aは照射光の他の部分を通過させる。センサヘッド72の他の構成は、図1に示したセンサヘッド71と同じであり、説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0045】
図6を参照して、スリット板8のスリット8aの開口部は、X方向に長く、かつY方向に短い略長方形状を有する。レーザダイオード1からのレーザ光は、スリット板8上で、スリット8aを包含するように照射される。照射された光の一部は、スリット8aを通過して対物レンズ6へ導かれる。
【0046】
本実施の形態では、レーザダイオード1から照射されて、計測対象物90の表面上における集光位置のスリットビーム63の形状を、X方向に長く、かつY方向に短いものとするためのスポット径変更部として、シリンドリカルレンズ4に代替してスリット8aが形成されたスリット板8を用いている。スリット板8に形成されるスリット8aは、図6に示されるような長方形状に限定されず、X方向に長く、かつY方向に短い形状であればよく、たとえば、楕円形状であってもよい。
【0047】
[実施の形態3]
図7には、実施の形態3に係る変位センサの概略構成が示される。図7の変位センサの構成と、図1のそれとを比較し異なる点は、センサヘッド71に代替して、図7の変位センサはセンサヘッド73を備える点にある。図7のコントローラ50の構成および機能は、図1に示したものと同じであり説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0048】
センサヘッド73では、レーザダイオード1から照射された光が、集光部の一部を構成するコリメートレンズ9により略平行光に変換された後に、集光部の一部を構成するシリンドリカルレンズ4を通して、計測対象物90の表面に向けて集光される。したがって、計測対象物1の表面において検出されるスリットビーム63は、X方向に長く、Y方向に短い略長方形状となる。
【0049】
ここで、シリンドリカルレンズ4は、対物レンズ6と同様に、計測対象物90の表面上に集光させるための機能を有する。したがって、図1の対物レンズ6と同様に、振動子7によって支持されて、駆動コイル7Aによって図中矢印方向(上下方向)に振動する。その振動の位置を指すレンズ位置信号が位置検出部62によって検出されて中央処理部51に出力される。
【0050】
計測対象物90の表面上の集光位置で反射した光は、シリンドリカルレンズ4、コリメートレンズ9およびハーフミラー3を介して絞り板5の開口5aを通過してフォトダイオード2によって受光される。
【0051】
図7では、スリットビーム63がX方向に長いので、反射光量は、すなわちフォトダイオード2の受光量は実施の形態1または2に比較して少なくなる。そこで、反射光量を増加させるために、図8に示すように、図7のシリンドリカルレンズ4を、トーリックレンズ4Aに代替してもよい。図7のシリンドリカルレンズ4の場合には、Y方向の一方方向にしか集光(光を絞る)することができないが、トーリックレンズ4Aは、Y方向のみならずX方向においても集光をすることができる。したがって、シリンドリカルレンズ4に代替してトーリックレンズ4A用いることにより、図8のスリットビーム63は、図7に比較しX方向に短くなり反射光量を増大、すなわちフォトダイオード2の受光量を増加させることができる。
【0052】
[実施の形態4]
図9には、実施の形態4に係る変位センサの構成が示される。図9の変位センサの構成と、図1に示した変位センサとを比較し異なる点は、図1のセンサヘッド71に代替して、センサヘッド74を有する点にある。図9のコントローラ50の構成および機能は、図1に示したものと同様であり、説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0053】
センサヘッド74と図1に示したセンサヘッド71とを比較し異なる点は、シリンドリカルレンズ4を光軸が延びる方向に従って移動(上下動)させるための位置調整部41を追加して備える点にある。センサヘッド74の他の部分は、図1に示したセンサヘッド71と同様であり説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0054】
図9のセンサヘッド74は、シリンドリカルレンズ4の光軸方向に沿った位置(上下方向の位置)を、計測対象物90の表面粗さ(凸凹の状態)や必要な面内分解能に従い、調整するための機能として、位置調整部41を備えている。シリンドリカルレンズ4は、Y方向にのみ集光させることができるので、図9において、仮想面63aの位置(5)において、レーザダイオード1から照射されてシリンドリカルレンズ4に入射する直前の光を観察すると、図10(A)に示されるように、略円形形状の集光状態が観察される。
【0055】
図9における仮想面63bの位置(2)においてレーザダイオード1から照射されたシリンドリカルレンズ4を通過し、対物レンズ6に入射する直前の光を観察すると、図10(B)のように集光状態が観察される。図10(B)では、シリンドリカルレンズ4を光が通過したことにより、Y方向のサイズが大きくなっている。
【0056】
図9における仮想面63dの位置(3)において計測対象物90の表面上に照射された光の集光状態を観察すると、図10(C)のように、X方向に長く且つY方向に短い(Y方向にのみ絞られた)、略長方形状のレーザスポット63が観察される。
【0057】
図10(C)の集光状態を示すシリンドリカルレンズ4の位置を、位置制御部41によりレーザダイオード1方向に上昇させると、図11(A)に示されるように、位置(3)で観察されるスリットビーム63の径は、Y方向の長さは変わらずX方向に延びた形状に変化し、逆に、シリンドリカルレンズ41の位置を計測対象物90の方向に下降させた場合には、図11(B)に示されるように、位置(3)で観察されるスリットビーム63の径は、Y方向の長さはそのままに、X方向の長さが短くなる。
【0058】
したがって、計測対象物90の表面粗さによるスペックルの影響を平均化しながらより測定精度を得たい場合には、シリンドリカルレンズ4の現在位置を位置調整部41によって上昇させればよく、また、より面内分解能を高める場合には、図11(B)に示されるように、シリンドリカルレンズ4の現在位置を、位置制御部41によって下降させればよい。
【0059】
図12(A)と(B)を参照して位置調整部41の構成を説明する。図12(A)には、図9のY方向から見た位置調整部41の構成が示され、図12(B)には、図12(A)の線XIIB−XIIBにおける断面が示される。位置調整部41は、シリンドリカルレンズ4を光軸に沿って上下に移動させるために、支持部材413によって支持される。支持部材413には、シリンドリカルレンズ4を保持した状態の支持部材413を、光軸に沿って上下動させるための案内となるガイド412が貫通する。支持部材413に一体的に取付けられた凸凹部414と、回転可能に支持されるシャフト411に一体的に取付けられた螺旋状の凸凹部材417とは互いの凸凹が係合している。シャフト411が図中の矢印415の方向に回転すると、シャフト411に一体的に設けられた凸凹部材417が螺旋を描いて回転し、これに連動して凸凹部材417の凸凹に係合している凸凹部414が図中矢印416の方向に移動する。その結果、支持部材413に保持されたシリンドリカルレンズ4は、図中矢印416の方向に上昇する。一方、矢印415とは逆方向にシャフト411を回転させると、この回転に連動して、支持部材413は、矢印416とは逆方向、すなわち計測対象物90の方向に下降し、その結果、支持部材413に保持されたシリンドリカルレンズ4は、下降する。
【0060】
なお、上下動する光学レンズは、シリンドリカルレンズ4に限定されず、トーリックレンズであってもよい。
【0061】
[実施の形態5]
図5に示したスリット板8に予め形成されたスリット8aの開口部は、そのサイズが固定であるが、本実施の形態5のように可変であってもよい。
【0062】
図13には、実施の形態5に係る変位センサの概略構成が示される。図13の変位センサの構成と、図5のそれとを比較し異なる点は、センサヘッド72に代替して、センサヘッド75を備える点にある。図13のコントローラ50の構成および機能は、図1に示したものと同じであり説明は略す。本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0063】
センサヘッド75と図5に示したセンサヘッド72とを比較し異なる点は、スリット8aの開口部のサイズを可変とするためのスリット幅変更部82を追加して備える点にある。センサヘッド75の他の部分は、図5に示したセンサヘッド72と同様であり説明は略す。
【0064】
スリット幅が可変のスリット81aは、図14(A)のサイズであるとき、スリットビーム63は図14(B)の形状を有すると想定する。スリット幅変更部82により図15(A)のようにスリット81aのX方向の幅を拡大すると、スリットビーム63の径は図15(B)のようにX方向に長くなり、逆に、図16(A)のように幅を縮小させると、スリットビーム63の径は図16(B)のようにX方向に短くなる。
【0065】
図17(A)と(B)を参照してスリット幅変更部82の構成を説明する。図17(A)には、図13の対物レンズ側から見たスリット幅変更部82の構成が示され、図17(B)には、図17(A)の線XVIIB−XVIIBにおける断面が示される。スリット幅変更部82は、スリット81aの一部を覆うようにしてX方向に移動可能な2枚のプレート824が、支持部材882によって支持される。支持部材882は、2枚のプレート824をX方向に滑らすように案内するガイドとして機能する。2枚のプレート824のそれぞれに一体的に取付けられた凸凹部823と、回転可能に支持されるシャフト821に一体的に取付けられた螺旋状の凸凹部材827aと827bとは互いの凸凹が係合している。シャフト821が図中の矢印825の方向に回転すると、シャフト821に一体的に設けられた凸凹部材827aと827bとは逆方向の螺旋を描いて回転し、これに連動して凸凹部材827aと827bの凸凹に係合している凸凹部824のそれぞれが図中矢印826の方向に移動する。その結果、支持部材822に保持された2枚のプレート824は図中矢印826の方向に移動し、スリット81aのX方向の幅は縮小される。一方、矢印825とは逆方向にシャフト821を回転させると、この回転に連動して、2枚のプレート824は、矢印826とは逆方向に移動し、スリット81aのX方向の幅は拡大する。
【0066】
このように、計測対象物90の表面粗さによるスペックルの影響を平均化しながらより測定精度を得たい場合には、スリット幅変更部82によってスリット81aのX方向の幅を拡大すればよく、また、より面内分解能を高める場合には、反射光量(フォトダイオード2の受光量)が十分となるように、スリット幅変更部82によってスリット81aのX方向の幅を縮小すればよい。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザダイオード、2 フォトダイオード、3 ハーフミラー、4 シリンドリカルレンズ、4A トーリックレンズ、5 絞り板、5a 開口、6 対物レンズ、8,81 スリット板、8a,81a スリット、50 コントローラ、71,72,73,74,75 センサヘッド、63 スリットビーム、90 計測対象物、41 位置調整部、82 スリット幅変更部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を、計測対象物へ向けて集光して照射するとともに、集光される光の光軸方向に沿って当該光の集光位置を連続的に変化させる投光部と、
前記計測対象物上に照射された光の反射光を、前記投光部からの照射光の光路に対して逆方向に導く集光部と、
前記集光部における前記反射光の光路を、前記投光部の光路から分離する光路分離素子と、
第1開口を構成する第1遮光部材を含み、当該第1遮光部材は前記光路分離素子により前記投光部の光路から分離された前記反射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第1開口は前記反射光の他の部分を通過させる第1開口部と、
前記第1開口部を通過した前記反射光を受光し、受光した光量に応じた受光信号を出力する受光部と、
前記受光信号に基づき前記計測対象物までの距離についての情報を取得する処理部と、を備え、
前記投光部は、
前記計測対象物上の前記集光位置におけるスポットの、前記光軸と直交する第1軸が延びる方向の径を、前記光軸と直交する第2軸が延びる方向の径よりも短くして、前記計測対象物に出射するスポット径変更部、を含み、
前記計測対象物上の前記スポットは、前記第1軸が延びる方向において合焦し、
前記第1開口は、略長方形状であって且つ前記第1軸が延びる方向において、前記光源と共役な位置に配置され、
前記略長方形状の前記第1軸が延びる方向の辺は、前記第2軸が延びる方向の辺よりも短い、変位センサ。
【請求項2】
前記スポット径変更部は、
前記光軸が主軸と一致する光学レンズを有し、
前記光学レンズは、前記第1軸が延びる方向の焦点距離と前記第2軸が延びる方向の焦点距離とが異なる、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記光学レンズは、前記光軸の方向に沿って移動可能である、請求項2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記光学レンズは、シリンドリカルレンズである、請求項2または3に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記光学レンズは、トーリックレンズである、請求項2または3に記載の変位センサ。
【請求項6】
前記スポット径変更部は、
第2開口を構成する第2遮光部材を含み、当該第2遮光部材は前記照射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第2開口は前記照射光の他の部分を通過させる第2開口部を有し、
前記第2開口は矩形形状であって、当該矩形の前記第1軸が延びる方向の辺は、前記第2軸が延びる方向の辺よりも短い、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項7】
前記第2開口の前記第2軸が延びる方向の辺の長さは可変である、請求項2に記載の変位センサ。
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を、計測対象物へ向けて集光して照射するとともに、集光される光の光軸方向に沿って当該光の集光位置を連続的に変化させる投光部と、
前記計測対象物上に照射された光の反射光を、前記投光部からの照射光の光路に対して逆方向に導く集光部と、
前記集光部における前記反射光の光路を、前記投光部の光路から分離する光路分離素子と、
第1開口を構成する第1遮光部材を含み、当該第1遮光部材は前記光路分離素子により前記投光部の光路から分離された前記反射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第1開口は前記反射光の他の部分を通過させる第1開口部と、
前記第1開口部を通過した前記反射光を受光し、受光した光量に応じた受光信号を出力する受光部と、
前記受光信号に基づき前記計測対象物までの距離についての情報を取得する処理部と、を備え、
前記投光部は、
前記計測対象物上の前記集光位置におけるスポットの、前記光軸と直交する第1軸が延びる方向の径を、前記光軸と直交する第2軸が延びる方向の径よりも短くして、前記計測対象物に出射するスポット径変更部、を含み、
前記計測対象物上の前記スポットは、前記第1軸が延びる方向において合焦し、
前記第1開口は、略長方形状であって且つ前記第1軸が延びる方向において、前記光源と共役な位置に配置され、
前記略長方形状の前記第1軸が延びる方向の辺は、前記第2軸が延びる方向の辺よりも短い、変位センサ。
【請求項2】
前記スポット径変更部は、
前記光軸が主軸と一致する光学レンズを有し、
前記光学レンズは、前記第1軸が延びる方向の焦点距離と前記第2軸が延びる方向の焦点距離とが異なる、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記光学レンズは、前記光軸の方向に沿って移動可能である、請求項2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記光学レンズは、シリンドリカルレンズである、請求項2または3に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記光学レンズは、トーリックレンズである、請求項2または3に記載の変位センサ。
【請求項6】
前記スポット径変更部は、
第2開口を構成する第2遮光部材を含み、当該第2遮光部材は前記照射光の少なくとも一部分を遮光し、当該第2開口は前記照射光の他の部分を通過させる第2開口部を有し、
前記第2開口は矩形形状であって、当該矩形の前記第1軸が延びる方向の辺は、前記第2軸が延びる方向の辺よりも短い、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項7】
前記第2開口の前記第2軸が延びる方向の辺の長さは可変である、請求項2に記載の変位センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−216880(P2010−216880A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61740(P2009−61740)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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