説明

変位検出装置

【課題】光源からの光を回折格子が設けられた領域で反射させて、被測定面の変位を検出する変位検出装置を提供する。
【解決手段】変位検出装置1は、光源2と、対物レンズ3と、分離光学系4と、コリメータレンズ7と、非点収差発生部8と、受光部9と、位置情報生成部10と、絞り部材11とを備えている。そして、対物レンズ3から出射され、被測定面に向けて集光される光の光軸に対する角度をθ、光源2の波長をλ、被測定面101に形成された回折格子のピッチをd、回折格子による回折光の次数をnとした場合に、遮蔽部11は、


を満たす反射光を遮蔽する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光を用いた非接触センサによって被測定面の変位を検出する変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被測定面の変位や形状を測定する装置として変位検出装置が広く利用されている。従来の変位検出装置では、光源から出射した光を対物レンズで被測定面に集光し、被測定面で反射した反射光を非点光学素子で集光して受光素子に入射させて、非点収差法によりフォーカスエラー信号を生成する。そして、フォーカスエラー信号を用いてサーボ機構を駆動させ、対物レンズの焦点位置が被測定面となるように対物レンズを変位させる。このとき、対物レンズに連結部材を介して一体的に取り付けられたリニアスケールの目盛を読み取ることで、被測定面の変位を検出する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
例えば、半導体製造装置や検査装置等に用いられる精密位置決めステージでは、被測定面の変位(被測定面に直交する方向の変位)だけでなく、被測定面に沿った変位(被測定面と平行な方向の変位)を計測する必要がある。この場合は、被測定面に設けた回折格子を利用して被測定面に沿った変位を検出する検出装置と、被測定面の変位を検出する変位検出装置とを用いることがある。このように2つの検出装置を用いることで、2次元や3次元の変位を計測することが可能になる。
【0004】
被測定面の変位を検出する変位検出装置と、被測定面に沿った変位を検出する検出装置とは、光源の波長が異なる。そのため、2つの検出装置を用いる場合の被測定面には、被測定面の変位を検出する変位検出装置の光源からの光を反射する領域と、被測定面に沿った変位を検出する検出装置の光源からの光を反射する領域(回折格子)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−89480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被測定面としては、位置決めステージに取り付けられるリニアスケールが適用されることが多い。しかし、近年、リニアスケールの小型化が望まれており、被測定面の変位を検出する変位検出装置の光源からの光を反射する領域と、被測定面に沿った変位を検出する検出装置の光源からの光を反射する領域(回折格子)とが近接して配置されている。そのため、光源からの光を回折格子が設けられた領域で反射させて、被測定面の変位を検出する変位検出装置が望まれている。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、光源からの光を回折格子が設けられた領域で反射させて、被測定面の変位を検出する変位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の変位検出装置は、光源と、対物レンズと、分離光学系と、集光部と、非点収差発生部と、受光部と、位置情報生成部と、遮蔽部とを備えている。対物レンズは、光源からの出射光を被測定面に向けて集光し、分離光学系は、被測定面からの反射光の光路を光源からの出射光の光路と分離する。
【0009】
集光部は、分離光学系によって出射光の光路と分離された反射光を集光し、非点収差発生部は、集光部によって集光された反射光に非点収差を発生させる。受光部は、非点収差発生部により非点収差が発生した反射光の光量を検出し、位置情報生成部は、受光部により検出された光量から得られるフォーカスエラー信号を用いて被測定面の位置情報を生成する。
【0010】
遮蔽部は、反射光の一部を遮る。対物レンズから出射され、被測定面に向けて集光される光の光軸に対する角度をθ、光源の波長をλ、被測定面に形成された回折格子のピッチをdとした場合に、遮蔽部は、

を満たす反射光を遮蔽する。
【0011】
上記構成の変位検出装置では、回折格子によって反射した不要な回折光が受光部で受光されない。これにより、位置情報生成部は、不用な回折光の影響を受けずに、位置情報を生成することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の変位検出装置によれば、回折格子によって反射した不用な回折光の影響を受けずに、位置情報を生成することができ、被測定面の変位情報を正確に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の変位検出装置に係る対物レンズに不要な回折光が入射しない条件を説明する説明図である。
【図3】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態に係る受光部の照射像の例を示す説明図である。
【図4】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態に係る受光部によって検出された光量から得られるフォーカスエラー信号の特性を示す図である。
【図5】本発明の変位検出装置の第1の実施の形態に係る被測定面上のビーム径と発散光の角度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の変位検出装置の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図7】本発明の変位検出装置の第3の実施の形態を示すブロック図である。
【図8】本発明の変位検出装置の第4の実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の変位検出装置を実施するための形態について、図1〜図8を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0015】
〈1.変位検出装置の第1の実施の形態〉
[変位検出装置の構成]
まず、変位検出装置の第1の実施の形態について、図1を参照して説明する。
図1は、変位検出装置の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、変位検出装置1は、光源2と、対物レンズ3と、分離光学系4と、ミラー5と、2つのコリメータレンズ6,7と、非点収差発生部8と、受光部9と、位置情報生成部10と、絞り部材11と、筐体12とを備えている。光源2、対物レンズ3、分離光学系4、ミラー5、2つのコリメータレンズ6,7、非点収差発生部8、受光部9、位置情報生成部10及び絞り部材11は、それぞれ筐体12に配設されている。
【0017】
光源2は、例えば、半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオードから構成されている。この光源2は、筐体12に着脱可能に取り付けられている。光源2を筐体12に着脱可能に取り付けることにより、筐体12を設置箇所から取り外さなくても、劣化した光源2を新しい光源と交換することができる。これにより、光源2を交換する度に筐体12の設置位置がずれる心配が無く、信頼性を必要とする測定や製造装置に変位検出装置1を使用する場合に有利となる。
【0018】
対物レンズ3は、光源2からの出射光を被測定面101に向けて集光する。被測定面101には、回折格子(不図示)が形成されており、対物レンズ3を通過した光は、回折格子に照射される。
【0019】
対物レンズ3は、レンズ保持部(不図示)に固定されており、レンズ保持部は、アクチュエータ(不図示)によって対物レンズ3の光軸方向に移動可能になっている。レンズ保持部を移動させるアクチュエータとしては、例えば、可動コイルと永久磁石から構成することができる。
【0020】
また、レンズ保持部には、リニアスケール(不図示)が固定されている。このリニアスケールの目盛りは、対物レンズ3の光軸と同軸上に配置されている。このリニアスケールとしては、例えば、光の干渉縞を目盛りとして記録した光学式スケール(ホログラムスケール)や、磁気式スケール等を用いることができる。なお、リニアスケールには、目盛りの略中央位置に原点(基準点)が形成されているとよい。
【0021】
分離光学系4は、偏光ビームスプリッタ15と、位相板16から構成されており、被測定面101からの反射光の光路を光源2から出射光の光路と分離する。偏光ビームスプリッタ15は、光源2からの出射光を反射し、被測定面101によって反射された反射光を透過させる。位相板16は、偏光ビームスプリッタ15とミラー5との間に配置されており、偏光ビームスプリッタ15によって反射された出射光と、被測定面101によって反射された反射光の偏光状態を変える。
【0022】
ミラー5は、偏光ビームスプリッタ15によって反射された出射光と、被測定面101によって反射された反射光の光軸方向を変える。具体的には、偏光ビームスプリッタ15によって反射された出射光の光軸を対物レンズ3に向け、被測定面101によって反射されて対物レンズ3を通過した反射光の光軸を位相板16(偏光ビームスプリッタ15)に向ける。
【0023】
ミラー5の表面には、金属皮膜が施されている。これにより、一般的な誘電体多層膜で生じる湿度の変化による偏光や波長特性の変化を抑えることができ、安定な位置検出が可能になる。
【0024】
コリメータレンズ6は、光源2と偏光ビームスプリッタ15との間に配置されており、光源2からの出射光を平行光にする。コリメータレンズ7は、偏光ビームスプリッタ15と非点収差発生部8との間に配置されている。このコリメータレンズ7は、集光部の一具体例を示すものであり、偏光ビームスプリッタ15を透過した反射光を集光して受光部9へ導く。
【0025】
なお、対物レンズ3及びコリメータレンズ6,7には、光源2の波長変動による焦点距離の変動を受け難くする色消し対策(色収差補正)を施してもよい。このようにすることで、光源2の波長や温度を監視しなくてもよく、被測定面101の変位量を測定した測定値に補正を行う必要が無くなる。
【0026】
また、本実施の形態では、光源2から出射された出射光の光路中にコリメータレンズ6を配置し、被測定面101によって反射された反射光の光路中にコリメータレンズ7を配置した。これにより、出射光の光路長と反射光の光路長を任意に設定することが可能になる。その結果、設計の自由度を向上させることができ、最適な部品配置を実現することができる。さらに、コリメータレンズ6によりカップリング効率の向上を図ることができ、コリメータレンズ7により後述するフォーカスエラー信号の特性を変化させて、例えば、対物レンズ3を変位させるためのサーボ機構が駆動する範囲(サーボ引き込み範囲)を広げることができる。
【0027】
非点収差発生部8は、コリメータレンズ7と受光部9との間に配置されており、コリメータレンズ7によって集光された被測定面101からの反射光に非点収差を発生させる。この非点収差発生部8は、コリメータレンズ7から受光部9までの反射光の光路中に配置されたシリンドリカル面を含む光学部品により構成されている。非点収差発生部としては、一般にシリンドリカルレンズを用いるが、本実施の形態では、球面とシリンドリカル面を複合させたマルチレンズを採用している。これにより、非点収差の発生と出力信号波形の調整をすることが可能となり、部品点数を削減することができる。
【0028】
なお、本実施の形態の非点収差発生部8としては、コリメータレンズ7から受光部9までの反射光の光路中に斜めに配置された透明な基板により構成することもできる。
【0029】
受光部9は、非点収差発生部8により非点収差が発生した反射光の光量を検出する。この受光部9は、反射光の光軸に直交する平面上に並ぶ4つの受光素子21〜24から構成されている(図3参照)。これら4つの受光素子21〜24に入射する反射光の照射像は、反射光に非点収差が発生しているため、対物レンズ3から被測定面101までの距離によって変化する。この照射像(照射スポット)の形状については、後で説明する。
【0030】
位置情報生成部10は、受光部9により得られるフォーカスエラー信号を用いて被測定面101の位置情報を生成する。この位置情報生成部10は、フォーカスエラー信号生成部(不図示)と、サーボ制御回路(不図示)と、前述のアクチュエータと、前述のリニアスケールと、リニアスケールの目盛りを読み取る検出ヘッド(不図示)から構成されている。
【0031】
フォーカスエラー信号の値が「0」のときの対物レンズ3で集光される出射光の焦点位置は、集光部であるコリメータレンズ7と、非点収差発生部8と、受光部9の光軸方向の位置によって決定される。そこで、本実施の形態では、対物レンズ3で集光される出射光の焦点位置が被測定面101の奥側にあるときにフォーカスエラー信号の値が「0」になるように、コリメータレンズ7、非点収差発生部8又は受光部9の光軸上の位置を設定している。
【0032】
絞り部材11は、対物レンズ3とミラー5との間に配置されており、ミラー5(光源2)から対物レンズ3へ向かう光束径を制限する。この絞り部材11は、対物レンズ3へ向かう光束径を制限し、被測定面101の回折格子(不図示)によって回折された不要な回折光が対物レンズ3を通過することを防止する。
【0033】
[対物レンズに不要な回折光が入射しない条件]
次に、対物レンズ3に不要な回折光が入射しない条件について、図2を参照して説明する。
図2は、対物レンズ3に不要な回折光が入射しない条件を説明するための説明図である。
【0034】
図2に示すように、対物レンズ3を通過する出射光Iaが被測定面101の回折格子(不図示)に照射されると、1次回折光Da1及び−1次回折光Da2が生じる。また、対物レンズ3を通過する出射光Ibが被測定面101の回折格子に照射されると、1次回折光Db1及び−1次回折光Db2が生じ、出射光Icが被測定面101の回折格子に照射されると、1次回折光Dc1及び−1次回折光Dc2が生じる。
なお、本例では、対物レンズ3の光軸Lを含む平面を基準にして、その平面の一側に反射する回折光をプラスの回折光とし、他側に反射する回折光をマイナスの回折光とする。
【0035】
ここで、対物レンズ3から出射される出射光の収束角をθ1、被測定面101に設けられた回折格子による回折角をθ2とすると、回折格子からの回折光が対物レンズ3に入らない条件は、次式で表される。なお、本発明に係る不要な回折光とは、0次回折光以外の回折光のことである。
【数1】

【0036】
そして、回折格子の格子ピッチをd、光源2の波長をλとすると、回折角θ2は、次式で表される。なお、nは、回折光の次数を表す。
【数2】

【0037】
上述の(数1)及び(数2)より、θ1は、次式によって表される。
【数3】

【0038】
(数3)に示されるように、収束角θ1がsin(nλ/d)/2よりも小さければ、不要な回折光が変位検出装置1内に入り込まない。そこで、本実施の形態では、絞り部材11(図1参照)によって対物レンズ3の開口数(NA:Numerical Aperture)を制限して、収束角θ1をsin(nλ/d)/2よりも小さくする。
【0039】
その結果、絞り部材11は、反射光の一部を遮蔽して、不要な回折光が対物レンズ3を通過しないようにする。つまり、対物レンズ3から出射され、被測定面101に向けて集光される光の光軸に対する角度をθとすると、絞り部材11は、次式を満たす反射光を遮蔽する。
【数4】

【0040】
なお、本実施の形態に係る絞り部材11は、対物レンズ3と被測定面101との間に配置しても、(数4)を満たす反射光を遮蔽することができる。
【0041】
[変位検出装置による被測定面の変位量の測定]
次に、変位検出装置1による被測定面101の変位量の測定について、図1、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、変位検出装置1の受光部9に照射される照射像の例を示す説明図である。図4は、受光部9によって検出された光量から得られるフォーカスエラー信号の特性を示す図である。
【0042】
図1に示すように、光源2から出射された出射光は、コリメータレンズ6によって平行光となり、偏光ビームスプリッタ15によって反射される。偏光ビームスプリッタ15によって反射された光源2からの出射光は、位相板16を通過して円偏光となり、ミラー5によって反射され、絞り部材11を通って対物レンズ3に導かれる。このとき、対物レンズ3の開口数(NA)が制限される。
【0043】
その後、出射光は、対物レンズ3によって被測定面101に向けて集光され、被測定面101で反射後に結像される。したがって、被測定面101上の出射光は、所定の径(ビーム径)を有するものになる。なお、本発明に係る出射光は、被測定面101で結像されてもよい。
【0044】
被測定面101で反射した反射光の一部は、対物レンズ3及び絞り部材11を通過するが、上記(数4)を満たす反射光は、絞り部材11によって遮蔽され、対物レンズ3を通過しない。つまり、被測定面101の変位量の測定にとって不要な反射光(回折光)は、変位検出装置1に入り込まないため、受光部9で受光されることはない。
【0045】
対物レンズ3及び絞り部材11を通過した反射光は、ミラー5によって反射されて位相板16に導かれる。そして、位相板16を通過した反射光は、位相板16を通過する前の出射光と直交する直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ15を透過する。その後、反射光は、コリメータレンズ7によって集光され、非点収差発生部8によって非点収差を発生した状態で受光部9に照射される。
【0046】
図3に示すように、受光部9は、反射光の光軸に直交する平面上に並ぶ4つの受光素子21〜24を備えている。これら4つの受光素子21〜24は、反射光の光軸周りに所定の間隔を空けて配置されており、受光素子21と受光素子23は、反射光の光軸を挟んで対向している。そして、受光素子22と受光素子24は、反射光の光軸を挟んで対向している。
【0047】
非点収差が発生した反射光が4つの受光素子21〜24に照射される領域(照射スポット)は、対物レンズ3から被測定面101までの距離によって変化する。本実施の形態では、対物レンズ3によって集光される出射光の焦点位置が被測定面101の奥側であって被測定面101から所定の距離だけ離れているときに、照射スポットが円形になる(図3(b)参照)。したがって、照射スポットが円形になる場合は、対物レンズ3によって集光された出射光が被測定面101で反射後に結像される。
【0048】
ここで、照射スポットが円形になるときの対物レンズ3の位置を基準位置とする。本実施の形態では、対物レンズ3が基準位置よりも被測定面101から遠ざかると、照射スポットは、受光素子21,23側に延びた楕円形になる(図3(a)参照)。また、対物レンズ3が基準位置よりも被測定面101に近づくと、照射スポットは、受光素子22,24側に延びた楕円形になる(図3(c)参照)。
【0049】
各受光素子21〜24は、検出した光を電気エネルギーに変換(光電変換)して出力信号を生成し、位置情報生成部10のフォーカスエラー信号生成部へ出力する。フォーカスエラー信号生成部は、各受光素子21〜24が出力した出力信号からフォーカスエラー信号SFEを生成する。このフォーカスエラー信号SFEは、対物レンズ3の基準位置に対する光軸方向へのずれを表している。
【0050】
各受光素子21,22,23,24の出力信号を出力信号A,B,C,Dとすると、フォーカスエラー信号SFEは、次式により算出される。
【数5】

【0051】
上述の(数5)により算出されたフォーカスエラー信号SFEの特性は、図4に示すようになる。図3に示す特性において、原点Oは対物レンズ3の基準位置を示し、被測定面101上では、所定の出射光の径(ビーム径)が確保されている。したがって、ビーム径よりも小さい面粗度、汚れ、ゴミ等の付着があっても、フォーカスエラー信号SFEの値が「0」となり、被測定面101の変位量の測定に影響しない。
このビーム径の大きさは、面粗度、汚れ、ゴミ等の大きさを考慮して決定され、例えば、直径50μm以上であることが好ましい。
【0052】
位置情報生成部10のフォーカスエラー信号生成部は、生成したフォーカスエラー信号SFEをアナログデジタル変換して、サーボ制御回路へ出力する。サーボ制御回路は、フォーカスエラー信号SFEの値が「0」となるような駆動信号をアクチュエータに出力して、アクチュエータの駆動制御を行う。これにより、レンズ保持部に固定されたリニアスケールが対物レンズ3の光軸方向に移動する。そして、検出ヘッドがリニアスケールの目盛りを読み取ることにより、被測定面101の変位量が測定される。
【0053】
上述したように、受光部9に照射される反射光には、被測定面101の回折格子(不図示)によって回折された不要な回折光が含まれていない。すなわち、不要な回折光は、受光部9で受光されない。その結果、被測定面101に設けた回折格子からの反射光を受光部9で受光しても、出力信号にオフセットが生じないため、被測定面101の変位量を正確に測定することができる。
【0054】
次に、コリメータレンズ7、非点収差発生部8又は受光部9の光軸方向の位置設定について説明する。
本実施の形態では、照射スポットが円形になっている状態の受光部9(受光素子21〜24)を光軸に沿って非点収差発生部8に接近する方向へ移動させると、照射スポットが受光素子21,23側に延びた楕円形になる(図3(a)参照)。
【0055】
そこで、対物レンズ3の基準位置を被測定面101に近づけて焦点位置を被測定面101の奥側に設定する場合は、例えば、受光部9(受光素子21〜24)の設置位置を非点収差発生部8から遠ざける。その結果、設定前の受光部9の位置では円形であった照射スポットが受光素子21,23側に延びた楕円形になる。
【0056】
サーボ制御回路は、設定後の受光部9の位置で照射スポットが円形になる(フォーカスエラー信号SFEの値が「0」になる)ように、アクチュエータを駆動制御する。本実施の形態では、照射スポットが受光素子21,23側に延びた楕円形になると、対物レンズ3が基準位置よりも被測定面101から遠ざかっていると判断するため、アクチュエータは、対物レンズ3を被測定面101に近づけるように駆動制御される。その結果、対物レンズ3と被測定面101との相対距離を変化させることができ、焦点位置を被測定面101の奥側に設定することができる。
【0057】
ここでは、受光部9(受光素子21〜24)の光軸上の位置を調整して、焦点位置を被測定面の奥側に設定する例を説明した。しかしながら、本発明の変位測定装置としては、非点収差発生部又は集光部(コリメータレンズ7)の光軸上の位置を調整して、焦点位置を被測定面の奥側に設定することもできる。
【0058】
なお、非点収差発生部としてシリンドリカル面を含む光学部品(例えば、シリンドリカルレンズ)を用いる場合は、非点収差発生部の光軸上の位置を調整すると、受光部9の4つの受光素子21〜24に照射される反射光の照射スポットが変化する。したがって、対物レンズ3により集光される出射光の焦点位置を変位させることができる。
【0059】
しかし、非点収差発生部として基板を用いる場合は、非点収差発生部の光軸上の位置を調整しても、受光部9の4つの受光素子21〜24に照射される反射光の照射スポットは変化しない。したがって、非点収差発生部として基板を用いる場合は、受光部又は集光部の光軸上の位置を調整して、対物レンズ3により集光される出射光の焦点位置を変位させる。
【0060】
本実施の形態では、対物レンズ3により集光される出射光の焦点位置を被測定面101の奥側に設定する。そのため、被測定面101で反射して対物レンズ3を通った反射光は、発散光になる。
図5は、被測定面上のビーム径と発散光(収束光)の角度との関係を示すグラフである。
【0061】
図5に示すように、ビーム径と発散光の角度は比例する。なお、図5に示すビーム径と発散光の角度との関係(比例定数)は一例であり、対物レンズの焦点距離、対物レンズの開口数(NA)等によって変化する。
【0062】
被測定面101上のビーム径を大きくすれば被測定面101の面粗度や傷、ゴミ等の影響を受け難くすることができるが、被測定面101により反射して対物レンズ3を通った反射光の発散角度も大きくなる。対物レンズ3を通った反射光の発散角度が大きくなりすぎると、その反射光を受光部9まで導く偏光ビームスプリッタ15やコリメータレンズ7等の光学部品が大型化する可能性がある。そのため、被測定面101上のビーム径は、偏光ビームスプリッタ15やコリメータレンズ7等の光学部品の大きさを考慮して決定することが好ましい。
【0063】
また、本発明に係る変位検出装置としては、対物レンズ3により集光される出射光の焦点位置を被測定面101の手前側に設定してもよい。この場合において、被測定面101で反射して対物レンズ3を通った反射光は、収束光になる。図5に示すように、ビーム径と収束光の角度は比例する。なお、図5に示すビーム径と収束光の角度との関係(比例定数)は一例であり、対物レンズの焦点距離、対物レンズの開口数(NA)等によって変化する。
【0064】
被測定面101上のビーム径を大きくすれば、被測定面101により反射して対物レンズ3を通った反射光の収束角度も大きくなる。対物レンズ3を通った反射光の収束角度が大きくなると、反射光が対物レンズ3と受光部9との間で結像する場合がある。その場合は、反射光が結像する付近に光学部品を配置しないようにする。これは、光学部品にゴミ等が付着していると、受光部9に導かれる反射光に大きく影響してしまうからである。
【0065】
また、反射光の収束角度が大きくなると、反射光を受光部9まで導くコリメータレンズ7や非点収差発生部8等のレンズ部品におけるレンズ曲率が小さくなるため、レンズがずれた際のビーム移動等の摂動感度が高くなる。そのため、被測定面101上のビーム径は、コリメータレンズ7や非点収差発生部8等のレンズ部品におけるレンズ曲率等を考慮して決定することが好ましい。
【0066】
なお、絞り部材11は、開口の大きさを調整可能なものであってもよい。
開口の大きさを調整可能な可変絞り部材は、被測定面に設けられた回折格子の格子ピッチが変わった場合に、その格子ピッチに応じて絞り部材11の開口の大きさを変えて、不要な回折光の遮蔽を行うことができる。したがって、複数種類の回折格子に対応した変位検出装置を提供することができる。
【0067】
〈2.変位検出装置の第2の実施の形態〉
次に、変位検出装置の第2の実施の形態について、図6を参照して説明する。
図6は、変位検出装置の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【0068】
第2の実施の形態の変位検出装置31は、第1の実施の形態の変位検出装置1(図1参照)と同様の構成を有しており、異なるところは、絞り部材11の位置である。そのため、ここでは、絞り部材11の位置について説明し、変位検出装置1と共通する構成部品には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0069】
変位検出装置31では、絞り部材11がコリメータレンズ7と非点収差発生部8との間に配置されている。この絞り部材11は、コリメータレンズ7を通過して非点収差発生部8へ向かう反射光の光束径を制限する。つまり、絞り部材11は、上記(数4)を満たす反射光を遮蔽して、被測定面101の回折格子(不図示)によって回折された不要な回折光が受光部9で受光されないようにする。その結果、被測定面101に設けた回折格子からの反射光を受光部9で受光しても、出力信号にオフセットが生じないため、被測定面101の変位量を正確に測定することができる。
【0070】
なお、本実施の形態に係る絞り部材11は、被測定面101から受光部9までの光路中に配置されていればよい。例えば、非点収差発生部8と受光部9との間に絞り部材11を配置しても、上記(数4)を満たす反射光を遮蔽して、不要な回折光が受光部9で受光されないようにすることができる。また、本実施形態に係る絞り部材11としては、開口の大きさを調整可能なものであってもよい。
【0071】
〈3.変位検出装置の第3の実施の形態〉
次に、変位検出装置の第3の実施の形態について、図7を参照して説明する。
図7は、変位検出装置の第3の実施の形態を示すブロック図である。
【0072】
第3の実施の形態の変位検出装置41は、第1の実施の形態の変位検出装置1(図1参照)と同様の構成を有しており、異なるところは、対物レンズ3Aである。そのため、ここでは、対物レンズ3Aについて説明し、変位検出装置1と共通する構成部品には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0073】
変位検出装置41では、絞り部材11が削除され、対物レンズ3Aが遮蔽部を兼ねている。つまり、対物レンズ3Aは、収束角θ1が上記(数3)を満たす開口数に設定されている。したがって、上記(数4)を満たす反射光が対物レンズ3Aには入射しないため、実質的に上記(数4)を満たす反射光を遮蔽する。
【0074】
これにより、被測定面101の回折格子(不図示)によって回折された不要な回折光が受光部9で受光されない。その結果、被測定面101に設けた回折格子からの反射光を受光部9で受光しても、出力信号にオフセットが生じないため、被測定面101の変位量を正確に測定することができる。
【0075】
〈4.変位検出装置の第4の実施の形態〉
次に、変位検出装置の第4の実施の形態について、図8を参照して説明する。
図8は、変位検出装置の第3の実施の形態を示すブロック図である。
【0076】
第4の実施の形態の変位検出装置51は、第1の実施の形態の変位検出装置1(図1参照)と同様の構成を有しており、異なるところは、光源52と、ハーフミラー53を設けた点である。そのため、ここでは、光源52と、ハーフミラー53について説明し、変位検出装置1と共通する構成部品には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0077】
光源52は、光源2と同様に、半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオード等から構成されている。この光源52は、筐体12に着脱可能に取り付けられている。また、光源52は、光源2と略等しい波長の光を出射する。
【0078】
ハーフミラー53は、光源2から出射された出射光を透過させてコリメータレンズ6に入射させる。また、光源52から出社された出射光を反射してコリメータレンズ6に入射させる。
【0079】
変位検出装置51では、2つの光源2,52を設けることにより、一方の光源が寿命等で光を出射できなくなった場合に、使用する光源を他方の光源に切り換えることができる。その結果、変位検出装置51を長期間使用することが可能になる。
【0080】
〈5.変形例〉
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態では、光源2,52から出射された出射光をコリメータレンズ6により平行光にしたが、コリメータレンズ6を通った光源2からの出射光は、発散光或いは収束光であってもよい。
【0081】
また、上述した実施の形態では、対物レンズ3を被測定面101に追従して光軸方向に移動させる構成としたが、対物レンズ3を筐体12に固定することにより、フォーカスエラー信号を用いて絶対位置情報を生成することもできる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、光源2,52を筐体12に着脱可能に取り付ける構造とした。しかしながら、本発明の変位検出装置としては、光源2,52を筐体12内に配設せずに筐体12から離れた位置に配設し、光ファイバを介して筐体12内に光を供給するようにしてもよい。
これにより、熱源となる光源2,52を筐体12から切り離すことができ、筐体12内の温度上昇を防止することができる。また、光源2,52を光ファイバに着脱可能に取り付ける構造にすることにより、筐体12から離れた場所で光源2,52の交換を行うことができるようになり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0083】
また、本発明の変位検出装置としては、光源2,52を筐体12から離れた位置に配設し、光源2,52からの出射光を気体、液体又は真空の空間を介して筐体12内に供給するようにしてもよい。
これにより、熱源となる光源,52を筐体12から切り離すことができると共に、光ファイバ等の筐体12に接続される部材が削除され、筐体12に振動が伝わらないようにすることができる。
【0084】
また、上述した実施の形態では、非点収差発生部8によって非点収差を発生させた反射光を受光部9が直接検出するようにした。しかしながら、本発明の変位検出装置としては、非点収差が発生した反射光を光ファイバによって受光部9に導くようにしてもよい。
これにより、受光部9の設置位置を自由に設定することができるため、受光部9と位置情報生成部10(フォーカスエラー信号生成部)に近接して配置することができる。その結果、受光部9と位置情報生成部10との間の通信距離を短縮化することができ、応答速度を向上させることができる。
【0085】
また、本発明の変位検出装置としては、偏光ビームスプリッタ15と受光部9との間の光路上に、例えばくもりガラス等の光散乱体を配置してもよい。
これにより、受光部9に入射する反射光の光軸方向に垂直な断面内において均一な光強度分布が得られ、被測定面101の面粗度の影響をより低減することができる。
また、こうした光散乱体を例えば1KHz以上で振動させ、散乱方向を様々に変化させると、受光素子21〜24上でのスペックルが平均化され、スペックルコントラストが低減される。
【0086】
また、被測定面における回折格子の表面に、光源2,52からの出射光を反射させる反射膜を形成してもよい。また、反射膜は、回折格子の下地側に形成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1,31,41,51…変位検出装置、2,52…光源、3,3A…対物レンズ、4…分離光学系、5…ミラー、6,7…コリメータレンズ、8…非点収差発生部、9…受光部
、10…位置情報生成部、11…絞り部材、12…筐体、15…偏光ビームスプリッタ、16…位相板、21,22,23,24…受光素子、53…ハーフミラー、101…被測定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの出射光を被測定面に向けて集光する対物レンズと、
前記被測定面からの反射光の光路を前記光源からの出射光の光路と分離する分離光学系と、
前記分離光学系によって前記出射光の光路と分離された前記反射光を集光する集光部と、
前記集光部によって集光された前記反射光に非点収差を発生させる非点収差発生部と、
前記非点収差発生部により非点収差が発生した前記反射光の光量を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光量から得られるフォーカスエラー信号を用いて前記被測定面の位置情報を生成する位置情報生成部と、
前記反射光の一部を遮る遮蔽部と、を備え、
前記対物レンズから出射され、被測定面に向けて集光される光の光軸に対する角度をθ、前記光源の波長をλ、前記被測定面に形成された回折格子のピッチをd、前記回折格子による回折光の次数をnとした場合に、前記遮蔽部は、

を満たす反射光を遮蔽する変位検出装置。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記被測定面から前記受光部までの光路に配置される絞り部材である請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記対物レンズは、収束角θ1が

に設定され、開口数を制限することにより前記遮蔽部を兼ねる請求項1に記載の変位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220292(P2012−220292A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85071(P2011−85071)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】