説明

変調回路及びそれを備えた半導体装置

【課題】変調回路の消費電力を低減する。
【解決手段】変調回路は、負荷と、スイッチとして機能するトランジスタとを有し、前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下である。または、変調回路は、負荷と、スイッチとして機能するトランジスタと、ダイオードとを有し、前記負荷、前記トランジスタ、及び前記ダイオードは、アンテナの両端間に直列に接続されており、前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下である。また、前記トランジスタのゲートに入力される信号により、当該トランジスタの導通・非導通が制御される。また、前記負荷は、抵抗、容量、または抵抗及び容量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する発明は、半導体装置に関する。特に、変調回路に関する。また、無線によりデータの交信(送信・受信)が可能な半導体装置(データキャリア)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個別の対象物にID(個体識別番号)を与えることで、その対象物が持っている情報の履歴を明確にし、生産、または管理等に役立てるといった個体認識技術が注目されている。特に、無線通信によりデータの送受信を行うRFID(Radio Frequency Identification)技術が世の中に普及されつつある。RFID技術を用いた無線通信システムは、無線通信装置(質問器)とデータキャリア(応答器)から構成され、無線により両者の間でデータのやりとりを行う通信システムである。無線通信装置は、リーダ/ライタ、携帯電話機、パーソナルコンピュータなど、無線による信号の送受信が可能であるものを指すが、本明細書においては代表的にリーダ/ライタと表記する。また、データキャリアは、一般にRFタグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、無線タグ、電子タグ等と呼ばれているが、本明細書においては代表的にRFタグと表記する。
【0003】
RFタグは、無線によりリーダ/ライタとデータのやりとりを行うために必要とされる様々な回路を有しているが、このような回路の一つとして変調回路がある。変調回路は、論理回路から出力される応答信号に従ってリーダ/ライタから出力されている搬送波を変調し、リーダ/ライタに応答信号を送信する機能を有する。
【0004】
リーダ/ライタに応答信号を送信する方法の一つとしては、RFタグの有するアンテナ両端間の負荷インピーダンスを変化させることによって変調を行う負荷変調方式(ロードスイッチング方式)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−251183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
負荷変調方式の変調回路は、スイッチング素子と負荷を有する。スイッチング素子としては、シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタが用いられている。しかしながら、シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタは、トランジスタがオフ状態のときのオフ電流(漏れ電流ともいう。)が大きく、消費電力の増大を招いていた。また、この結果、RFIDの通信における信頼性の低下を招いていた。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の一態様は、変調回路の消費電力を低減することを課題とする。または、変調回路の消費電力を低減することにより、変調回路を有する半導体装置の消費電力を低減することを課題とする。または、変調回路を有するRFタグの消費電力を低減することにより、RFタグの最大通信距離を拡大することを課題とする。または、RFタグの応答信頼性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記課題の少なくとも一つを解決するため、以下の構成を用いる。すなわち、本発明の一態様においては、酸化物半導体層を有するトランジスタを変調回路に用いることを特徴とする。また、この酸化物半導体層に含まれる水素濃度は、5×1019/cm以下であり、当該酸化物半導体層を有するトランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る変調回路は、負荷と、スイッチとして機能するトランジスタとを有し、前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下である。
【0010】
本発明の一態様に係る変調回路は、負荷と、スイッチとして機能するトランジスタとを有し、前記トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が前記負荷を介してアンテナの一端に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方がアンテナの他端に電気的に接続され、前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る変調回路は、負荷と、スイッチとして機能するトランジスタと、ダイオードとを有し、前記負荷、前記トランジスタ、及び前記ダイオードは、アンテナの両端間に直列に接続されており、前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下である。
【0012】
また、本発明の一態様において、前記ダイオードは、ダイオード接続されたトランジスタである。
【0013】
また、本発明の一態様において、前記トランジスタのゲートに入力される信号により、当該トランジスタの導通・非導通が制御される。
【0014】
また、本発明の一態様において、前記負荷は、抵抗、容量、または抵抗及び容量である。
【0015】
また、本発明の一態様に係る半導体装置は、前記変調回路と、アンテナと、整流回路と、復調回路と、定電圧回路と、論理回路とを有する。また、本発明の一態様に係る半導体装置は、クロック生成回路をさらに有する。
【0016】
また、本発明の一態様に係る半導体装置は、前記変調回路を有する。
【0017】
また、本発明の一態様に係る携帯電話機は、前記変調回路を有する。
【0018】
また、本発明の一態様に係る半導体装置(RFタグ)は、リーダ/ライタと交信する周波数帯に依存性はなく、任意の周波数帯域に用いるRFタグに適用可能である。具体的には、周波数3MHz〜30MHz(例えば13.56MHz)のHF帯、周波数300MHz〜3GHz(例えば433MHz、953MHz、2.45GHz)のUHF帯、周波数135kHzのいずれの場合にも本発明の一態様に係るRFタグは適用可能である。
【0019】
本発明の一態様に係るRFタグは、IDタグ、ICタグ、ICチップ、無線タグ、電子タグ等の無線によりデータの交信が可能なものであれば、全てその範疇に含まれるものとする。
【0020】
また、本発明の一態様に係る変調回路は、RFタグ以外の半導体装置にも利用することができる。例えば、本発明の一態様に係る変調回路を携帯電話機、パーソナルコンピュータ(好ましくは、ノート型のパーソナルコンピュータ)等の半導体装置に搭載することにより、リーダ/ライタとデータのやり取りを行うことができる。
【0021】
なお、トランジスタは、その構造上、ソースとドレインの区別が困難である。さらに、回路の動作によっては、電位の高低が入れ替わる場合もある。したがって、本明細書中では、ソースとドレインは特に特定せず、第1の電極(または第1端子)、第2の電極(または第2端子)と記述することがある。例えば、第1の電極がソースである場合には、第2の電極とはドレインを指し、逆に第1の電極がドレインである場合には、第2の電極とはソースを指すものとする。
【0022】
また、本明細書において、「AとBとが接続されている」と記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟んで接続されている場合)と、AとBとが機能的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、AとBとが直接接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。
【0023】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは自然数)という用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。例えば、「第1のトランジスタ」と本明細書で記載していても、他の構成要素と混同を生じない範囲において「第2のトランジスタ」と読み替えることが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様により、変調回路の消費電力を低減することができる。また、変調回路の消費電力を低減することにより、変調回路を有する半導体装置の消費電力を低減することができる。また、変調回路を有するRFタグの消費電力を低減することにより、RFタグの最大通信距離を拡大することができる。また、変調回路を有する半導体装置の信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】RFタグ全体を示すブロック図である。
【図2】RFタグ全体を示すブロック図である。
【図3】変調回路の一例を示す回路図である。
【図4】変調回路の一例を示す回路図である。
【図5】変調回路の一例を示す回路図である。
【図6】変調回路の一例を示す回路図である。
【図7】変調回路の一例を示す回路図である。
【図8】変調回路の一例を示す回路図である。
【図9】変調回路の一例を示す回路図である。
【図10】RFタグの使用例を示す図である。
【図11】トランジスの一例を示す平面図及び断面図。
【図12】トランジスタの作製方法の一例を示す断面図。
【図13】トランジスタの作製方法の一例を示す断面図。
【図14】トランジスタの作製方法の一例を示す断面図。
【図15】トランジスタの作製方法の一例を示す断面図。
【図16】酸化物半導体を用いたMOSトランジスタのソース−ドレイン間のバンド構造を示す図。
【図17】図16においてドレイン側に正の電圧が印加された状態を示す図。
【図18】酸化物半導体を用いたMOSトランジスタのエネルギーバンド図であり、(A)ゲート電圧を正とした場合、(B)ゲート電圧を負とした場合を示す図。
【図19】シリコンMOSトランジスタのソース−ドレイン間のバンド構造を示す図。
【図20】作製したトランジスタの初期特性を示す図。
【図21】作製したトランジスタを示す上面図。
【図22】作製したトランジスタの電気特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一態様に係る実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態において、同じ物を指し示す符号は異なる図面において共通とする。
【0027】
また、以下に説明する実施の形態それぞれにおいて、特に断りがない限り、本明細書に記載されている他の実施形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一態様として用いるRFタグ全体のブロック図を示すものである。RFタグ100は、受信されたデータに基づいて、応答信号を生成するなどといった機能的処理を行う論理回路101と、リーダ/ライタと信号の送受信(交信)を行うアンテナ回路102と、アンテナ回路102において受信された振幅変調波(搬送波に変調波を重畳して生成されたもの)を復調し、パルス信号を取り出す復調回路103と、論理回路101から出力される応答信号に従ってリーダ/ライタから出力されている搬送波を変調し、リーダ/ライタに応答信号を返信する変調回路104と、アンテナ回路102において受信された搬送波または振幅変調波から直流電圧を生成するための整流回路113と、整流回路113により生成された直流電圧を一定の電源電位とする定電圧回路114と、クロック生成回路117とを有する。
【0029】
このように、RFタグ100は、無線によりリーダ/ライタとデータのやりとりを行うために必要とされる複数の回路を有しているが、このような複数の回路のうち、本発明の一態様は、特に変調回路104に特徴を有するが、変調回路の詳細については、実施の形態2以降で説明する。
【0030】
アンテナ回路102は、アンテナ111及び共振容量112を有する。アンテナ111は、その形状等によってリーダ/ライタからの搬送波の受信能力が異なるものであるが、本発明においては特に限定されるものではない。共振容量112は、アンテナ111との組み合わせによって、アンテナ回路102の共振周波数を、リーダ/ライタからの搬送波の周波数に最適化するために設けられる容量である。なお、本実施の形態では共振容量112を設ける構成としているが、必ずしも設ける必要はなく、この場合はアンテナ111のみでリーダ/ライタからの搬送波の周波数に対して最適化すればよい。
【0031】
整流回路113は、アンテナ回路102で受信した搬送波または振幅変調波を整流し、直流電圧VDCを生成する機能を有する。整流回路113が生成する直流電圧VDCの値は、搬送波の振幅の大きさで変化する電力によって変化する。電力が大きい場合は、直流電圧VDCも高くなり、電力が小さい場合は、直流電圧VDCも低くなる。
【0032】
定電圧回路114は、電力の大きさによって変化する直流電圧VDCを一定の電源電位Vdd(高電源電位と呼ぶことができる)にして、論理回路101に供給する機能を有する。論理回路101は、供給される電位が変化してしまうと、動作が不安定になる。このため、論理回路101には一定の電位が供給される必要がある。本実施の形態では、定電圧回路114によって論理回路101に一定の電源電位Vddが供給されている。なお、RFタグ100を構成する各々の回路において、低電源電位(以下、VSS)は共通であり、例えばVSSをGND(=0V)とすることができる。
【0033】
クロック生成回路117は、アンテナ回路102で受信した搬送波または振幅変調波を参照して論理回路101の動作に必要なクロック信号CLKを生成し、論理回路101に供給する機能を有する。このようなクロック生成回路117の一例として、入力された搬送波からアナログ−デジタル変換器によって搬送波と同じ周波数の矩形波を生成し、その矩形波を分周回路によって回路動作に最適な周波数(例えば搬送波の周波数の1/16)に落としたものをクロック信号CLKとして出力する、といった構成の回路などが挙げられるが、この構成に限定されるものではない。
【0034】
クロック生成回路117には、一定の周波数のクロック信号CLKを安定して論理回路101に供給する機能が求められる。このため、先に説明した論理回路101と同様に、クロック生成回路117には一定の電位が供給される必要がある。
【0035】
クロック生成回路117に供給する一定の電位としては、論理回路101と同様に、定電圧回路114で生成された電源電位Vddを用いてもよい。しかしながら、電源電位Vddは他の回路にも供給されるものであり、他の回路の動作によって電源電位Vddが変動するおそれがある場合は、他の回路に供給される電源電位Vddとは別の電源電位Vdd_CLKを定電圧回路114で生成し、その電源電位Vdd_CLKをクロック生成回路117に供給する構成とすることが好ましい。この構成を採用することにより、クロック生成回路117は一定の周波数のクロック信号CLKを安定して論理回路101に供給することが容易となる。
【0036】
図2は、本発明の一態様として用いるRFタグ全体のブロック図を示すものである。図2のクロック生成回路117は図1のクロック生成回路117とは異なり、アンテナ回路が受信した搬送波または振幅変調波を参照せずに、論理回路101の動作に必要なクロック信号CLKを生成し、論理回路101に供給する。このようなクロック生成回路の一例としてリングオシレータなどの発振回路が挙げられるが、この構成に限定されるものではない。なお、図2に示すRFタグ100において、クロック生成回路117以外の回路は図1に示すRFタグ100の有する回路と同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略する。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した変調回路の構成について説明する。
【0038】
図3は、本発明の一態様に係る変調回路の構成の一例を示したものである。変調回路301は、負荷変調方式を用いたものであり、負荷302と、トランジスタ303を有する。トランジスタ303は、ソースまたはドレインの一方が前記負荷302を介してアンテナ304の一端に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方がアンテナ304の他端に電気的に接続されている。また、トランジスタ303のゲートに入力される信号305により、トランジスタ303の導通・非導通が制御される。なお、トランジスタ303のゲートに入力される信号305は、High(H)またはLow(L)の2値信号であり、論理回路から出力される応答信号(副搬送波、サブキャリアと呼ばれることもある)に相当する。
【0039】
このように、負荷変調方式の変調回路301は、論理回路から出力される応答信号に基づいてトランジスタの導通・非導通を制御することによって、アンテナ両端間のインピーダンスを可変とし、リーダ/ライタにデータを送信する機能を有する。
【0040】
なお、本明細書で説明するアンテナは平衡デバイスであるため、アンテナの一端とアンテナの他端とには、それぞれある周波数の正弦波が入力される。アンテナの一端とアンテナの他端の信号は、180°位相がずれた関係にある。しかし、回路の説明を簡単にするために、アンテナの他端の電位を固定の電位(0V)として、以下説明する。また、本実施の形態に限らず、他の実施の形態においても同様とする。
【0041】
また、図3においては、アンテナ回路307がアンテナ304及び共振容量306から構成された例を示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、アンテナ回路307として、アンテナ304のみから構成することも可能である。これは、本実施の形態におけるアンテナの構成に限らず、他の実施の形態におけるアンテナの構成においても同様である。
【0042】
また、負荷302としては、抵抗を用いるか、容量を用いるか、抵抗及び容量を用いて構成することができる。負荷302として抵抗を用いた場合の変調回路の構成の一例を図4に示す。この場合、抵抗311の一端は、アンテナ304の一端に電気的に接続され、抵抗311の他端は、トランジスタ303のソースまたはドレインの一方に電気的に接続される。
【0043】
また、負荷302として容量を用いた場合の変調回路の構成の一例を図5に示す。この場合、容量312の一方の電極は、アンテナ304の一端に電気的に接続され、容量312の他方の電極は、トランジスタ303のソースまたはドレインの一方に電気的に接続される。
【0044】
また、負荷302として抵抗及び容量を用いた場合の変調回路の構成の一例を図6に示す。この場合、抵抗313と容量314は互いに並列に接続される。そして、抵抗313の一端及び容量314の一方の電極は、アンテナ304の一端に電気的に接続され、抵抗313の他端及び容量314の他方の電極は、トランジスタ303のソースまたはドレインの一方に電気的に接続される。
【0045】
ここで、図3乃至図6に示すトランジスタ303は、スイッチとして機能するものである。したがって、変調回路301の動作の安定性向上のためにトランジスタ303に求められる理想的な特性としては、ゲートに入力される信号がHまたはLの一方であるときはトランジスタ303の抵抗成分が限りなく無限大(∞)として機能し、ゲートに入力される信号がHまたはLの他方であるときにはトランジスタ303の抵抗成分が限りなくゼロ(0)として機能することが好ましい。例えば、トランジスタ303がNチャネル型である場合、ゲートに入力される信号がLのときはトランジスタ303の抵抗成分が限りなく無限大(∞)として機能し、ゲートに入力される信号がHのときはトランジスタ303の抵抗成分が限りなくゼロ(0)として機能することが理想的である。なお、トランジスタ303の極性は特に限定されず、nチャネル型でもよいし、pチャネル型でもよい。
【0046】
そこで、本実施の形態におけるトランジスタ303は、変調回路としての理想的な動作に近づけるため、トランジスタ303を構成するチャネル形成領域として、酸化物半導体層を用いる。この酸化物半導体層は、トランジスタの電気特性に悪影響を与える不純物が極めて少ないレベルにまで低減されたものであって、高純度化されたものである。電気特性に悪影響を与える不純物の代表例としては、水素が挙げられる。水素は、酸化物半導体中でキャリアの供与体(ドナー)となり得る不純物であり、酸化物半導体中に水素が多量に含まれていると、酸化物半導体がN型化されてしまう。このように水素が多量に含まれた酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオンとなってしまう。そして、トランジスタのオン・オフ比を十分にとることができない。したがって、本明細書における「高純度の酸化物半導体」は、酸化物半導体における水素が極力低減されているものであって、真性又は実質的に真性な半導体を指す。高純度の酸化物半導体の一例としては、含有する水素濃度が少なくとも5×1019/cm以下であって、好ましくは5×1018/cm以下、さらに好ましくは5×1017/cm以下、または1×1016/cm未満である酸化物半導体である。そして、酸化物半導体層に含まれるキャリア濃度は、1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満、または6.0×1010/cm未満である酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いてトランジスタを構成する。なお、酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で行えばよい。
【0047】
また、酸化物半導体層のエネルギーギャップは、2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。
【0048】
このように、酸化物半導体層に含まれる水素を徹底的に除去することにより得られる高純度の酸化物半導体層をトランジスタ303のチャネル形成領域に用いることで、オフ電流値が極めて小さいトランジスタを提供できる。具体的には、高純度の酸化物半導体層を有するトランジスタのオフ電流を1×10−13A以下、好ましくは1×10−16A以下に低減することができる。すなわち、トランジスタ303がオフ状態の際の抵抗成分を限りなく大きくすることができる。この結果、変調回路における消費電力を抑制することができる。また、トランジスタ303のオン/オフ比を従来に比較して大きくすることができるため、変調回路における変調度を大きくすることができる。
【0049】
例えば、高純度の酸化物半導体層を用いたトランジスタのチャネル長が3μm、チャネル幅が10mmの場合であっても、ドレイン電圧が1V及び10Vの場合において、ゲート電圧が−5Vから−20Vの範囲(オフ状態)において、ドレイン電流は1×10−13A以下となるように作用する。
【0050】
ここで、高純度の酸化物半導体層を用いたトランジスタの特性について、図16乃至図22を用いて説明する。
【0051】
図16は、高純度の酸化物半導体層を用いたトランジスタのソース−ドレイン間のバンド構造を示す図である。高純度化が図られた酸化物半導体のフェルミ準位は、理想的な状態では禁制帯の中央に位置している。水素濃度を減少させた酸化物半導体では少数キャリア(この場合は正孔)がゼロまたは限りなくゼロに近い状態になっている。
【0052】
この場合、金属の仕事関数をφ、酸化物半導体の電子親和力をχ、酸化物半導体の熱平衡状態でのキャリア密度=ドナー密度をNd、酸化物半導体の伝導帯での実効状態密度をNcとすると、金属−酸化物半導体の接合面でバンド構造がフラットになるための条件は、φ=χ−Vln(N/N)のようになる。ここで、Vt=kT/qであり、k:ボルツマン定数、q:素電荷である。
【0053】
φ<χであれば、オーミック接触となる。また、φ=χであれば、接合面において電極メタルのフェルミレベルと酸化物半導体の伝導帯のレベルが一致する。例えば、バンドギャップ3.05eV、電子親和力4.3eV、真性状態(キャリア密度約1×10−7/cm)であると仮定し、ソース電極及びドレイン電極として仕事関数4.3eVのチタン(Ti)を用いたときには、図16で示すように電子に対して障壁は形成されない
【0054】
図17は酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、ゲートに正の電圧を印加し、かつ、ドレイン側に正の電圧が印加された状態を示す図である。酸化物半導体はバンドギャップが大きいため、高純度化され真性または実質的に真性な酸化物半導体の真性キャリア密度はゼロまたは限りなくゼロに近い状態であるが、ゲートに正の電圧を印加し、かつ、ソース−ドレイン間に電圧が印加されれば、ソース側からキャリア(電子)が注入され、ドレイン側に流れ得ることが理解される。
【0055】
図18(A)は、ゲート電圧を正にしたときのMOS構造のエネルギーバンド図であり、酸化物半導体を用いたトランジスタにおけるものを示している。なお、図中において、GEはゲート電極を表し、GIはゲート絶縁膜を表し、OSは酸化物半導体を表す。この場合、高純度化された酸化物半導体には熱励起キャリアがほとんど存在しないことから、ゲート絶縁膜近傍にもキャリアは蓄積されない。しかし、図17で示すように、ソース側から注入されたキャリアが伝搬することはできる。
【0056】
図18(B)は、ゲート電圧を負にしたときのMOS構造のエネルギーバンド図であり、酸化物半導体を用いたトランジスタにおけるものを示している。酸化物半導体中に少数キャリア(正孔)はほとんど存在しないので、ゲート絶縁膜近傍にもキャリアは蓄積されない。このことは、オフ電流が小さいことを意味している。
【0057】
なお、図19にシリコン半導体を用いた場合のトランジスタのバンド図を示す。シリコン半導体の真性キャリア密度は1.45×1010/cm(300K)であり、室温においてもキャリアが存在している。これは、室温においても、熱励起キャリアが存在していることを意味している。実用的にはリンまたはボロンなどの不純物が添加されたシリコンウエハーが使用されるので、実際には1×1014/cm以上のキャリアがシリコン半導体に存在し、これがソース−ドレイン間の伝導に寄与する。さらに、シリコン半導体のバンドギャップは1.12eVであるので、シリコン半導体を用いたトランジスタは温度に依存してオフ電流が大きく変動することとなる。
【0058】
このように、単に、バンドギャップの広い酸化物半導体をトランジスタに適用するのではなく、ドナーを形成する水素等の不純物を極力低減し、キャリア濃度を1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満、または6.0×1010/cm未満となるようにすることで、実用的な動作温度で熱的に励起されるキャリアを排除して、ソース側から注入されるキャリアのみによってトランジスタを動作させることができる。それにより、オフ電流を1×10−13A以下にまで下げると共に、温度変化によってオフ電流がほとんど変化しない極めて安定に動作するトランジスタを得ることができる。
【0059】
次に、評価用素子(TEGとも呼ぶ)でのオフ電流の測定値について以下に説明する。
【0060】
L/W=3μm/50μmのトランジスタを200個並列に接続することで、L/W=3μm/10000μmとなるようにしたトランジスタの初期特性を図20に示す。ここでは、Vgを−20V〜+5Vまでの範囲で示している。また、上面図を図21(A)に示し、その一部を拡大した上面図を図21(B)に示す。図21(B)の点線で囲んだ領域がL/W=3μm/50μm、Lov=1.5μmの1段分のトランジスタである。トランジスタの初期特性を測定するため、基板温度を室温とし、ソース−ドレイン間電圧(以下、ドレイン電圧またはVdという)を10Vとし、ソース−ゲート間電圧(以下、ゲート電圧またはVgという)を−20V〜+20Vまで変化させたときのソース−ドレイン電流(以下、ドレイン電流またはIdという)の変化特性、すなわちVg−Id特性を測定した。
【0061】
図20に示すようにチャネル幅Wが10000μmのトランジスタは、Vdが1V及び10Vにおいてオフ電流は1×10−13[A]以下となっており、測定機(半導体パラメータ・アナライザ、Agilent 4156C;Agilent社製)の分解能(100fA)以下となっている。
【0062】
次に、測定したトランジスタの作製方法について説明する。
【0063】
まず、ガラス基板上に下地層として、CVD法により窒化珪素層を形成し、窒化珪素層上に酸化窒化珪素層を形成した。続いて、酸化窒化珪素層上にゲート電極としてスパッタ法によりタングステン層を形成した後、このタングステン層を選択的にエッチングして、ゲート電極を形成した。
【0064】
次に、ゲート電極上にゲート絶縁層としてCVD法により厚さ100nmの酸化窒化珪素層を形成した。
【0065】
次に、ゲート絶縁層上に、スパッタ法によりIn−Ga−Zn−O系の金属酸化物ターゲット(モル数比で、In:Ga:ZnO=1:1:2)を用いて、厚さ50nmの酸化物半導体層を形成した。そして、酸化物半導体層を選択的にエッチングし、島状の酸化物半導体層を形成した。
【0066】
次に、酸化物半導体層をクリーンオーブンにて窒素雰囲気下、450℃、1時間の第1の熱処理を行った。
【0067】
次に、酸化物半導体層上にソース電極及びドレイン電極としてチタン層(厚さ150nm)をスパッタ法により形成した。ここで、ソース電極及びドレイン電極を選択的にエッチングした。1つのトランジスタのチャネル長Lを3μm、チャネル幅Wを50μmとし、このトランジスタ200個を並列接続とすることで、L/W=3μm/10000μmとなるようにした。
【0068】
次に、酸化物半導体層に接するように保護絶縁層としてリアクティブスパッタ法により酸化珪素層を膜厚300nmで形成した。ここで、保護絶縁層である酸化珪素層を選択的にエッチングし、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極上に開口部を形成した。その後、窒素雰囲気下、250℃で1時間、第2の熱処理を行った。さらに、Vg−Id特性を測定する前に、150℃、10時間の加熱を行った。
【0069】
以上の工程により、ボトムゲート型のトランジスタを作製した。
【0070】
図20に示すように、トランジスタのオフ電流が、1×10−13A程度であるのは、上記作製工程において酸化物半導体層中における水素濃度を十分に低減できたためである。酸化物半導体層中の水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017/cm以下、または1×1016atoms/cm未満とする。なお、酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で行う。
【0071】
なお、本測定にはIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用いたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、In−Sn−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、In−Sn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体材料を用いることもできる。また、酸化物半導体材料として、AlOxを2.5〜10wt%混入したIn−Al−Zn−O系や、SiOxを2.5〜10wt%混入したIn−Zn−O系を用いることもできる。
【0072】
また、酸化物半導体の結晶性については、特に限定されない。すなわち、非晶質(アモルファス)、微結晶(セミアモルファスまたはマイクロクリスタルとも呼ばれる)、多結晶、単結晶のいずれでも用いることができるが、アモルファスを含む酸化物半導体を用いる場合、変調回路のオフ電流を特に低減できるので、好ましい。
【0073】
また、キャリア測定機で測定される酸化物半導体層のキャリア濃度は、1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満、または6.0×1010/cm未満である。即ち、酸化物半導体層のキャリア濃度は、限りなくゼロに近くすることができる。なお、キャリア濃度の測定方法の具体例としては、MOSキャパシタを作製し、前記MOSキャパシタのCV測定の結果(CV特性)を評価することによって求める方法が挙げられる。
【0074】
また、トランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることもできる。この場合、回路の動作速度を高速化でき、オフ電流値が極めて小さいため、さらに低消費電力化も図ることができる。
【0075】
なお、トランジスタのオフ状態において、酸化物半導体層は絶縁体とみなせて回路設計を行うことができる。
【0076】
次に、本実施の形態で作製したトランジスタに対してオフ電流の温度特性を評価した。温度特性は、トランジスタが使われる最終製品の耐環境性や、性能の維持などを考慮する上で重要である。当然ながら、温度に対するオフ電流の変化量が小さいほど好ましい。なぜなら温度に対するオフ電流の変化量が小さいほど製品設計の自由度が増すからである。
【0077】
温度特性は、恒温槽を用い、−30、0、25、40、60、80、100、及び120℃のそれぞれの温度でトランジスタを形成した基板を一定温度とし、ドレイン電圧を6V、ゲート電圧を−20V〜+20Vまで変化させてVg−Id特性を取得した。
【0078】
図22(A)に示すのは、上記それぞれの温度で測定したVg−Id特性を重ね書きしたものであり、図22(A)における点線で囲む領域を拡大したものを図22(B)に示す。図中の矢印で示す右端の曲線が−30℃、左端が120℃で取得した曲線で、その他の温度で取得した曲線は、その間に位置する。オン電流の温度依存性はほとんど見られない。一方、オフ電流は拡大図の図22(B)においても明らかであるように、ゲート電圧が−20V近傍を除いて、全ての温度で測定機の分解能近傍の1×10−12A以下となっており、温度依存性も見えていない。すなわち、120℃の高温においても、オフ電流が1×10−12A以下を維持しており、チャネル幅Wが10000μmであることを考慮すると、1×10−16[A/μm]以下となり、オフ電流が非常に小さいことがわかる。
【0079】
高純度の酸化物半導体(purified Oxide Semiconductor)を用いたトランジスタは、オフ電流の温度依存性がほとんど現れない。これは、酸化物半導体のエネルギーギャップが3eV以上であり、熱励起キャリアが極めて少ないことに起因する。また、ソース領域及びドレイン領域は縮退した状態にあるので、やはり温度依存性が現れない要因となっている。トランジスタの動作は、縮退したソース領域から酸化物半導体に注入されたキャリアによるものがほとんどであり、キャリア密度の温度依存性がないことから上記特性(オフ電流の温度依存性無し)を説明することができる。
【0080】
以上のように、トランジスタのチャネル幅Wが1×10μmであり、チャネル長が3μmの素子であっても、オフ電流が10−13A以下であり、サブスレッショルドスイング値(S値)が0.1V/dec.(ゲート絶縁膜厚100nm)という優れた電気特性が得られる。このように、酸化物半導体中の不純物が極力含まれないように高純度化することにより、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0081】
上述したように、本実施の形態においては、高純度の酸化物半導体層を有するトランジスタをトランジスタ303として用いることにより、オフ電流を1×10−13A以下、好ましくは1×10−16A以下に低減することができる。このため、トランジスタ303がオフ状態の際の抵抗成分を限りなく大きくすることができる。したがって、変調回路の動作の安定性が向上する。さらに、トランジスタ303のオフ電流が小さくなることにより、変調回路における無駄な消費電力を抑制できる。
【0082】
(実施の形態3)
本実施の形態では、変調回路の消費電力を更に抑制する構成について説明する。
【0083】
本実施の形態における変調回路の構成の一例について図7を用いながら説明する。図7と、実施の形態1で説明した図3との違いは、図3における変調回路301は、アンテナ304の両端間に負荷302とトランジスタ303が直列に接続された構成であるのに対し、図7における変調回路701は、アンテナ304の両端間に負荷702とトランジスタ703とダイオード720が直列に接続された構成である点である。すなわち、図7に示す変調回路701は、負荷702と、トランジスタ703と、ダイオード720を有する。そして、負荷702の一端は、アンテナ304の一端に電気的に接続され、負荷702の他端は、ダイオード720のアノード(一端)に電気的に接続される。ダイオード720のカソード(他端)は、トランジスタ703のソースまたはドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ703のソースまたはドレインの他方は、アンテナ304の他端に電気的に接続される。また、トランジスタ703のゲートに入力される信号305により、トランジスタ703の導通・非導通が制御される。
【0084】
ダイオード720の種類は特に限定されず、整流効果を得られるものであれば、PNダイオードや、PINダイオード、ショットキーバリアダイオード、定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)、ダイオード接続したトランジスタ等を用いることができる。例えば、ゲートとソースまたはドレインの一方とをダイオード接続したNチャネル型のトランジスタを用いることができる。また、ゲートとソースまたはドレインの一方とをダイオード接続したPチャネル型のトランジスタを用いることもできる。また、ダイオード接続したトランジスタを複数直列に接続したトランジスタ群(以下、ダイオード接続したトランジスタ群という)を用いることもできる。また、PNダイオードやPINダイオードを用いる場合は、それぞれ横接合型のものとすることが好ましい。ダイオード720として、横接合型のPNダイオードまたは横接合型のPINダイオードを用いる場合、RFタグのような半導体装置を構成する上で必要とされるトランジスタと併せて同一基板上にこれらのダイオードを作製する際に、既存のプロセスを変更することなく作製することが可能となるためである。なお、ダイオード720に限らず、本発明の一態様で用いる全てのダイオードは、これら様々な種類のダイオードを適宜用いることが可能である。
【0085】
なお、ダイオード720は、負荷として機能しうる素子であるが、本実施の形態における負荷702と、ダイオード720は、互いに別の素子として説明する。したがって、本実施の形態における負荷702は、ダイオード以外の素子を用いるものであり、具体的には、実施の形態1で説明した容量、抵抗、または容量及び抵抗を用いることができる。
【0086】
次に、本実施の形態における変調回路の動作について説明する。トランジスタ703は、論理回路からの信号(副搬送波、サブキャリアと呼ばれることもある)305により、オン(導通)・オフ(非導通)のいずれかの状態となる。なお、論理回路からの信号305の変調方式の一例としては、搬送波の振幅を変化させるASK(Amplitude Shift Keying)を用いることができる。
【0087】
なお、上述したように、トランジスタ703の極性は限定されるものではないが、本実施の形態では、チャネル形成領域に高純度の酸化物半導体層を用いたnチャネル型のトランジスタを用いた場合について、以下説明する。また、負荷702に接続されている側を、アンテナの一端とし、トランジスタ703のソースまたはドレインの他方に接続されている側をアンテナの他端として、以下説明する。また、上述したように、本明細書で説明するアンテナは平衡デバイスであるため、アンテナの一端とアンテナの他端とには、それぞれある周波数の正弦波が入力される。アンテナの一端とアンテナの他端の信号は、180°位相がずれた関係にある。しかし、回路の説明を簡単にするために、アンテナの他端の電位を固定の電位(0V)として、以下説明する。
【0088】
まず、アンテナ304の一端の電位が正の期間について説明する。アンテナ304の一端の電位が正の期間においては、アンテナ304の他端に接続された方がトランジスタ703のソースとなり、ダイオード720のカソードに接続された方がトランジスタ703のドレインとなる。したがって、トランジスタ703のソースの電位は0Vとなる。ここで、トランジスタ703のゲートに入力される論理回路からの信号305がLowである場合は、トランジスタ703がオフ状態となる。本実施の形態においては、チャネル形成領域に高純度の酸化物半導体層を用いたnチャネル型のトランジスタを用いており、オフ電流が極めて低いため、アンテナ304の一端から変調回路701を介してアンテナ304の他端に向けて流れる電流を概略ゼロと見なすことができるため、アンテナ304両端間のインピーダンスが概略変化しない。したがって、変調回路701の動作として理想的に振る舞うことができる。一方、トランジスタ703のゲートに入力される論理回路からの信号305がHighである場合は、トランジスタ703がオン状態となり、アンテナ304の一端から変調回路701を介してアンテナ304の他端に向けて順電流が流れる。そして、順電流が流れることにより、アンテナ304の一端の電位が変化し、アンテナ304両端間のインピーダンスが変化する。本実施の形態においては、高純度の酸化物半導体層を有するnチャネル型のトランジスタを用いることにより、変調回路の動作の信頼性を向上させるとともに、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0089】
次に、アンテナ304の一端の電位が負の期間について説明する。アンテナ304の一端の電位が負の期間においては、アンテナ304の他端に接続された方がトランジスタ703のドレインとなり、ダイオード720のカソードに接続された方がトランジスタ703のソースとなる。したがって、ソースの電位は負の値となる。このため、トランジスタ703のゲートに入力される論理回路からの信号305がLowである場合であっても、トランジスタ703のゲートの電位よりもトランジスタ703のソースの電位の方が低くなり、トランジスタ703はオン状態となる。また、トランジスタ703のゲートに入力される論理回路からの信号305がHighである場合も、トランジスタ703はオン状態となる。したがって、アンテナ304の一端の電位が負の期間においては、トランジスタ703のゲートに入力される論理回路からの信号305に関わらず、常にトランジスタ703がオン状態となり、変調回路としての動作が困難である。そこで、本実施の形態においては、負荷702とトランジスタ703との間にダイオード720を設けることにより、アンテナ304の一端の電位が負の期間において逆流電流が発生することを防止し、変調回路における無駄な電力消費を抑制することができる。
【0090】
また、ダイオード720を設けることによって変調回路701の逆流電流が低減した分、従来よりも低消費電力でRFタグを動作させることが可能となり、RFタグの最大通信距離を拡大することができる。この理由は、以下のように説明することができる。
【0091】
実施の形態1において説明した図1に示すとおり、アンテナ回路102は、変調回路104以外に復調回路103や整流回路113にも電気的に接続されている。このため、変調回路104の逆流電流が低減すると、その低減量に応じて復調回路103や整流回路113に供給される電流量が増加することとなる。整流回路113に供給される電流量が増加すると、整流回路113で生成される直流電圧が増加する。したがって、リーダ/ライタからアンテナ回路102を介して供給される電力が従来より少なくてもRFタグ100が動作可能となる。このように、RFタグ100が動作するために必要な電力量を従来よりも少なくすることができるため、RFタグ100の最大通信距離を拡大することができる。
【0092】
なお、本発明の一態様は、図7に示す負荷702、ダイオード720及びトランジスタ703の接続関係に限定されるものではない。すなわち、本発明の一態様は、アンテナの両端間に、負荷、ダイオード、及びスイッチが直列接続されていればよく、負荷、ダイオード、及びスイッチが直列接続される順番は、順不同でよい。例えば、図8に示す変調回路801のように、ダイオード820のアノードは、アンテナ304の一端に電気的に接続され、ダイオード820のカソードは、負荷802を介してトランジスタ803のソースまたはドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ803のソースまたはドレインの他方は、アンテナ304の他端に電気的に接続される構成である場合も、変調回路の動作の信頼性を向上させるとともに、無駄な電力消費を抑制することができる。また、図9に示す変調回路901のように、トランジスタ903のソースまたはドレインの一方は、負荷902を介してアンテナ304の一端に電気的に接続され、トランジスタ903のソースまたはドレインの他方は、ダイオード920のアノードに電気的に接続され、ダイオード920のカソードは、アンテナ304の他端に電気的に接続される構成である場合も、変調回路の動作の信頼性を向上させるとともに、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0093】
(実施の形態4)
本実施の形態では、変調回路に用いるトランジスタの構造の一例、及びその作製方法の一例について説明する。すなわち、高純度の酸化物半導体を用いたトランジスタの構造の一例、及びその作製方法の一例について説明する。
【0094】
まず、図11(A)、図11(B)にトランジスタの平面及び断面構造の一例を示す。図11(A)はトップゲート構造のトランジスタ410の平面図であり、図11(B)は図11(A)の線C1−C2における断面図である。
【0095】
トランジスタ410は、基板400上に、絶縁層407、酸化物半導体層412、第1の電極(ソース電極及びドレイン電極の一方)415a、第2の電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)415b、ゲート絶縁層402、及びゲート電極411を有し、第1の電極415a、第2の電極415bにはそれぞれ第1の配線414a、第2の配線414bが接して設けられ、電気的に接続されている。
【0096】
なお、図11(A)に示すトランジスタ410はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0097】
次に、図12(A)乃至(E)を用いながら、トランジスタ410を作製する工程について説明する。
【0098】
まず、基板400上に下地膜となる絶縁層407を形成する。
【0099】
基板400として使用可能な基板に大きな制限はないが、少なくとも後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いるとよい。基板400の具体例としては、ガラス基板、結晶化ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板、プラスチック基板等が挙げられる。また、ガラス基板の具体的な材料例としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。
【0100】
絶縁層407としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁層を用いると好ましい。絶縁層407の形成方法としては、プラズマCVD法、スパッタリング法等を用いることができるが、絶縁層407中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法で絶縁層407を成膜することが好ましい。本実施の形態においては、絶縁層407としてスパッタリング法により酸化シリコン層を形成する。具体的には、基板400を処理室へ搬送した後、水素及び水分が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し、シリコンまたはシリコン酸化物のターゲットを用いて、基板400上に絶縁層407として酸化シリコン層を成膜する。なお、成膜時の基板400は室温でもよいし、加熱されていてもよい。
【0101】
成膜条件の具体例としては、ターゲットとして石英(好ましくは合成石英)を用い、基板温度108℃、基板400とターゲット間の距離(T−S間距離)を60mm、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は100nmとする。なお、ターゲットとして石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを用いることもできる。また、スパッタガスとして酸素及びアルゴンの混合ガスに代えて酸素ガスを用いてもよい。ここで、絶縁層407を成膜する際に用いるスパッタガスは、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物の濃度がppmレベル、好ましくはppbレベルまで除去された高純度ガスを用いる。
【0102】
また、絶縁層407の成膜時において、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層407を成膜することにより、絶縁層407に水素、水酸基又は水分が含まれないようにすることが好ましい。
【0103】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いればよい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることできる。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、水素原子や、水(HO)等の水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した絶縁層407は、水素原子が極力取り込まれにくく好ましい。
【0104】
スパッタリング法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法と、DCスパッタリング法があり、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタリング法もある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0105】
また、材料の異なるターゲットを複数設置可能な多元スパッタ装置もある。多元スパッタ装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0106】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッタ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタリング法を用いるスパッタ装置を用いることができる。
【0107】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法としては、成膜中にターゲット物質とスパッタガス成分とを化学反応させ、それらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0108】
また、絶縁層407は単層構造に限定されず、積層構造でもよい。例えば、基板400側から窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁層と、上記酸化物絶縁層との積層構造としてもよい。
【0109】
例えば、酸化シリコン層と基板との間に水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入し、シリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。この場合においても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を成膜することが好ましい。また、窒化シリコン層を形成する場合も、成膜時に基板を加熱してもよい。
【0110】
絶縁層407として窒化シリコン層と酸化シリコン層とを積層する場合、窒化シリコン層と酸化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に窒素を含むスパッタガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を形成し、次にスパッタガスを酸素を含むスパッタガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を成膜する。この方法を用いる場合、窒化シリコン層と酸化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、窒化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止できる。
【0111】
次に、絶縁層407上に酸化物半導体層をスパッタリング法により形成する。
【0112】
酸化物半導体層に水素、水酸基及び水分が極力含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁層407が形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。また、この予備加熱は、後に形成するゲート絶縁層402の成膜前の基板400に対して行うことが好ましい。また、後に形成する第1の電極415a及び第2の電極415bまで形成した基板400に対しても同様に行うことが好ましい。ただし、これらの予備加熱の処理は省略してもよい。
【0113】
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、絶縁層407の表面に付着しているゴミを除去することも好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せず、アルゴン雰囲気下で基板側に高周波電源を用いて電圧を印加することによって基板近傍にプラズマを形成し、表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素等を用いてもよい。
【0114】
酸化物半導体層のターゲットとしては、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲット(組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol%]、In:Ga:Zn=1:1:0.5[atom%])を用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体のターゲットとして、In:Ga:Zn=1:1:1[atom%]、又はIn:Ga:Zn=1:1:2[atom%]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。また、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いることもできる。金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層を緻密な膜とすることができる。
【0115】
なお、酸化物半導体層の成膜の際は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下とすればよい。ここで、酸化物半導体層を成膜する際に用いるスパッタガスは、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物の濃度がppmレベル、好ましくはppbレベルまで除去された高純度ガスを用いる。
【0116】
酸化物半導体層は、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板400上に成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体層成膜時に基板を室温状態のままとするか、または400℃未満の温度に加熱してもよい。
【0117】
酸化物半導体層の成膜条件の一例としては、基板温度室温、基板とターゲットの間との距離を110mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm)雰囲気下の条件が挙げられる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体層の膜厚は、膜厚2nm以上200nm以下とすればよく、好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体の材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0118】
以上の方法により形成される酸化物半導体層の具体例としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−Oや、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O、In−Sn−Zn−O、In−Al−Zn−O、Sn−Ga−Zn−O、Al−Ga−Zn−O、Sn−Al−Zn−Oや、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O、Sn−Zn−O、Al−Zn−O、Zn−Mg−O、Sn−Mg−O、In−Mg−Oや、In−O、Sn−O、Zn−Oなどの酸化物半導体層を用いることができる。また、上記酸化物半導体層はSiOを含んでいてもよい。また、これらの酸化物半導体層は、非晶質であってもよいし、結晶質であってもよい。または、非単結晶であってもよいし、単結晶であってもよい。本実施の形態では、In−Ga−Zn−Oをターゲットとして用いたスパッタリング法により、非単結晶のIn−Ga−Zn−O膜を成膜する。
【0119】
また、酸化物半導体層として、InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることもできる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素である。例えば、Mとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoが挙げられる。なお、InMO(ZnO)(m>0)で表記される構造の酸化物半導体膜のうち、MとしてGaを含む構造の酸化物半導体を、上記したIn−Ga−Zn−O酸化物半導体とよぶことができる。
【0120】
次に、酸化物半導体層を第1のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層412に加工する(図12(A)参照。)。なお、島状の酸化物半導体層412を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0121】
なお、酸化物半導体層のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0122】
ドライエッチングを行う場合、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0123】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましいが、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス等を用いることもできる。
【0124】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、アンモニア過水(例えば、体積比で31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2となるように混合した溶液)などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。エッチングの条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)については、酸化物半導体の材料に合わせて適宜調節すればよい。
【0125】
また、ウェットエッチングを行う場合、エッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によって除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれる材料(例えば、インジウム等のレアメタル)を回収して再利用することにより、資源を有効活用することができる。
【0126】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェットエッチング法により、酸化物半導体層を島状の酸化物半導体層412に加工する。
【0127】
次に、酸化物半導体層412に第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層を得る。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層412から水素、水、及び水酸基等を除去することができる。
【0128】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体としては、不活性ガス(代表的には、アルゴン等の希ガス)または窒素ガスを用いることができる。
【0129】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いることにより、短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0130】
第1の加熱処理の際の雰囲気には、水、水素などが含まれないようにすることが好ましい。または、加熱処理装置の装置内に導入する窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0131】
なお、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、第1の加熱処理により島状の酸化物半導体層412が結晶化し、微結晶化または多結晶化する場合もある。例えば、結晶化率が80%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。ただし、第1の加熱処理を行っても島状の酸化物半導体層412が結晶化せず、非晶質の酸化物半導体層となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体層の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる場合もある。
【0132】
また、酸化物半導体層に対する第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体層に行ってもよい。この場合、第1の加熱処理後に、加熱処理装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0133】
第1の加熱処理においては、酸化物半導体層中から水素、水、及び水酸基等の不純物を除去することを主な目的としているが、この加熱処理の際に酸化物半導体層中に酸素欠損が生じてしまうおそれがある。このため、第1の加熱処理の後に、加酸化処理を行うことが好ましい。加酸化処理の具体例としては、第1の加熱処理の後、連続して酸素雰囲気または窒素及び酸素を含む雰囲気(窒素:酸素の体積比=4:1)での加熱処理を行う方法が挙げられる。また、酸素雰囲気下でのプラズマ処理を行う方法を用いることもできる。
【0134】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上にソース電極及びドレイン電極を積層させた後、ソース電極及びドレイン電極上にゲート絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0135】
次に、絶縁層407及び酸化物半導体層412上に、導電膜を形成する。導電膜は、スパッタリング法や真空蒸着法により形成すればよい。導電膜の材料としては、Al、Cu、Cr、Ta、Ti、Mo、W、Yなどの金属材料、該金属材料を成分とする合金材料、導電性を有する金属酸化物等が挙げられる。導電性を有する金属酸化物としては、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)または前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。また、Si、Ti、Ta、W、Mo、Cr、Nd、Sc、YなどAl膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素が添加されたAl材料を用いてもよく、この場合、耐熱性を向上させることができる。
【0136】
また、導電膜は、単層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層した2層構造、Ti膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にTi膜を積層した3層構造が挙げられる。また、Al、Cuなどの金属層と、Cr、Ta、Ti、Mo、Wなどの高融点金属層とが積層された構成としてもよい。
【0137】
次に、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極415a及び第2の電極415bを形成した後、レジストマスクを除去する(図12(B)参照。)。第1の電極415aはソース電極及びドレイン電極の一方として機能し、第2の電極415bはソース電極及びドレイン電極の他方として機能する。ここで、第1の電極415a及び第2の電極415bの端部がテーパ形状となるようにエッチングすると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。なお、第1の電極415a、第2の電極415bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0138】
本実施の形態では第1の電極415a、第2の電極415bとしてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0139】
また、導電膜のエッチングの際には、酸化物半導体層412が除去されてその下の絶縁層407が露出しないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する必要がある。そこで、本実施の形態では、酸化物半導体層412としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用い、導電膜としてチタン膜を用い、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いることにより、酸化物半導体層412の一部がエッチングされないようにしているが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、第2のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層412の一部をエッチングし、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層とすることもできる。
【0140】
第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光を用いればよい。酸化物半導体層412上に設けられる第1の電極415aの下端部と第2の電極415bの下端部との間隔幅によって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。このため、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能である。この場合、トランジスタの動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、トランジスタの低消費電力化を図ることができる。
【0141】
次に、絶縁層407、酸化物半導体層412、第1の電極415a、第2の電極415b上にゲート絶縁層402を形成する(図12(C)参照。)。
【0142】
ゲート絶縁層402は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層又は積層して形成することができる。
【0143】
ゲート絶縁層402を形成する際は、水素が含まれないようにすることが好ましい。このため、成膜時の雰囲気に水素を極力減らすことが可能なスパッタリング法でゲート絶縁層402を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素、または酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0144】
また、ゲート絶縁層402は、第1の電極415a、第2の電極415b側から順に酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiO(x>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiN(y>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層としてもよい。本実施の形態では、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成する。
【0145】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート絶縁層402の一部を除去することにより、第1の電極415a、第2の電極415bに達する開口421a、421bを形成する(図12(D)参照。)。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成する場合、フォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0146】
次に、ゲート絶縁層402、及び開口421a、421b上に導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極411、第1の配線414a、第2の配線414bを形成する。
【0147】
ゲート電極411、第1の配線414a、第2の配線414bの材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料、又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層又は積層して形成することができる。ゲート電極411、第1の配線414a、及び第2の配線414bの2層構造の具体例としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された構造、銅層上にモリブデン層が積層された構造、銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタル層が積層された構造、または窒化チタン層上にモリブデン層が積層された構造が挙げられる。また、3層構造の具体例としては、タングステン層または窒化タングステンと、アルミニウム及びシリコンの合金またはアルミニウム及びチタンの合金と、窒化チタンまたはチタン層とが積層された構造が挙げられる。なお、透光性を有する導電膜を用いてゲート電極層を形成することもできる。透光性を有する導電膜の具体例としては、透光性を有する導電性酸化物が挙げられる。
【0148】
本実施の形態ではゲート電極411、第1の配線414a、第2の配線414bとしてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0149】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。本実施の形態では、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。なお、第2の加熱処理は、トランジスタ410上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0150】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を更に行ってもよい。この加熱処理は、一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回繰り返して行ってもよい。また、この加熱処理を酸化物絶縁層の形成前に減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができるので好ましい。
【0151】
以上の工程により、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された、高純度の酸化物半導体層412を有するトランジスタ410を形成することができる(図12(E)参照。)。トランジスタ410は、実施の形態2で説明したトランジスタ303等として適用することができる。
【0152】
また、トランジスタ410上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。保護絶縁層としては、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層又は積層して形成することができる。また、平坦化絶縁層としては、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることもできる。また、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで平坦化絶縁層を形成してもよい。
【0153】
ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
【0154】
平坦化絶縁層の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0155】
上述したように、酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、酸化物半導体層中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。
【0156】
本実施の形態で説明した高純度の酸化物半導体層を有するトランジスタを変調回路に用いることにより、オフ電流を低減することができる。これにより、変調回路の動作の安定性を向上させるとともに、変調回路における消費電力を抑制することができる。
【0157】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4で説明したトランジスタとは別の構造を有するトランジスタの構造、及びその作製方法について図13を用いながら説明する。
【0158】
図13(A)乃至(E)にトランジスタの断面構造の一例を示す。図13(E)に示すトランジスタ390は、ボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型のトランジスタともいう。このトランジスタ390を、実施の形態2で説明したトランジスタ303等に用いることができる。なお、トランジスタ390はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0159】
以下、図13(A)乃至(E)を用い、基板394上にトランジスタ390を作製する方法について説明する。
【0160】
まず、基板394上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極391を形成する。形成されたゲート電極の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0161】
ここで、基板394の材料については、実施の形態2で説明した基板400と同様のものを採用することができる。また、ゲート電極391の材料や成膜方法等は、実施の形態2で説明したゲート電極411と同様のものを採用することができる。
【0162】
なお、基板394とゲート電極391との間に、下地膜となる絶縁膜を設けてもよい。下地膜は、基板394からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜から選ばれた一からなる単層構造、またはこれらから選ばれた複数の膜による積層構造により形成すればよい。
【0163】
次に、ゲート電極391上にゲート絶縁層397を形成する。
【0164】
ゲート絶縁層397は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、または酸化アルミニウム層を単層または積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層397中に水素が多量に含まれないようにするために、スパッタリング法でゲート絶縁層397を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲットまたは石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素または、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0165】
ゲート絶縁層397は、ゲート電極391側から順に窒化シリコン層と酸化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiN(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiO(x>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層とすればよい。
【0166】
次に、ゲート絶縁層397上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体層393を形成する(図13(A)参照。)。
【0167】
ここで、酸化物半導体層393の材料や成膜方法等は、実施の形態2で説明した酸化物半導体層(島状の酸化物半導体層412)と同様のものを採用することができる。
【0168】
例えば、酸化物半導体層393をスパッタリング法により形成する際の成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が挙げられる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体層393の膜厚は、膜厚2nm以上200nm以下とすればよく、好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体の材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0169】
なお、酸化物半導体層393を成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層397の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。
【0170】
また、ゲート絶縁層397、酸化物半導体層393に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極391が形成された基板394、またはゲート絶縁層397までが形成された基板394を予備加熱し、基板394に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下とすればよい。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。また、この予備加熱は、保護絶縁層396の成膜前に、第1の電極395a及び第2の電極395bまで形成した基板394に対して同様に行ってもよい。
【0171】
次に、酸化物半導体層を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層399に加工する(図13(B)参照。)。なお、島状の酸化物半導体層399の加工方法については、実施の形態2で説明した島状の酸化物半導体層412を形成する際の加工方法と同様のものを採用することができる。
【0172】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層399及びゲート絶縁層397の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0173】
次に、ゲート絶縁層397及び酸化物半導体層399上に導電膜を形成する。導電膜の成膜方法は、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いればよい。また、導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金、またはこれらの元素を複数組み合わせた合金等を用いることができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、トリウムのいずれか一または複数から選択された材料を用いてもよい。また、透光性を有する導電膜を用いてもよい。透光性を有する導電膜の具体例としては、透光性を有する導電性酸化物が挙げられる。
【0174】
また、導電膜は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、Ti膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にTi膜を成膜する3層構造などが挙げられる。
【0175】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極395a、第2の電極395bを形成した後、レジストマスクを除去する(図13(C)参照。)。ここで、導電膜のエッチングの際には、酸化物半導体層399が除去されてその下のゲート絶縁層397が露出しないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する必要がある。そこで、本実施の形態では、酸化物半導体層399としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用い、導電膜としてチタン膜を用い、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いることにより、酸化物半導体層399の一部がエッチングされないようにしているが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、第3のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層399の一部をエッチングし、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層とすることもできる。
【0176】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光を用いればよい。酸化物半導体層399上に設けられるソース電極395aの下端部とドレイン電極395bの下端部との間隔幅によって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。このため、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、トランジスタの低消費電力化を図ることができる。
【0177】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0178】
また、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層399の表面に付着した水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。本実施の形態では、上記いずれかのプラズマ処理を行う。
【0179】
次に、プラズマ処理を行った後、大気に触れることなく、露出されている酸化物半導体層399、第1の電極395a、及び第2の電極395bに接する保護絶縁膜396を形成する(図13(D)参照。)。このとき、酸化物半導体層399及び保護絶縁層396に水素、水酸基または水分が含まれないようにするため、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層396を成膜することが好ましい。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した保護絶縁層396に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0180】
本実施の形態では、保護絶縁層396として酸化物絶縁層を形成する。保護絶縁層396の形成方法として、島状の酸化物半導体層399、第1の電極395a、及び第2の電極395bが形成された基板394を室温状態のまま、または100℃未満の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し、シリコン半導体のターゲットを用いて、酸化シリコン層を成膜する。なお、酸化物絶縁層として、酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0181】
例えば、純度が6Nであり、ボロンがドープされたシリコンターゲット(抵抗値0.01Ωcm)を用い、基板とターゲット間の距離(T−S間距離)を89mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパルスDCスパッタリング法により、酸化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層の膜厚は300nmとする。なお、シリコンターゲットに代えて石英(好ましくは合成石英)を用いることもできる。スパッタガスは、酸素、または酸素及びアルゴンの混合ガスを用いればよい。
【0182】
さらに、保護絶縁層396と酸化物半導体層399とが接した状態で100℃乃至400℃で加熱処理を行うことが好ましい。本実施の形態における保護絶縁層396は欠陥を多く含むため、この加熱処理によって酸化物半導体層399中に含まれる水素、水分、水酸基または水素化物などの不純物を保護絶縁層396に拡散させ、酸化物半導体層399中に含まれる該不純物をより低減させることができる。
【0183】
以上の工程により、水素、水分、水酸基または水素化物の濃度が低減された酸化物半導体層392を有するトランジスタ390を形成することができる(図13(E)参照。)。本実施の形態で説明したように、酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することにより、該酸化物半導体層中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。この結果、真性又は実質的に真性な半導体層が得られる。
【0184】
なお、保護絶縁層396上に絶縁層をさらに設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層396上に絶縁層398を形成する。絶縁層398としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などを用いればよい。
【0185】
絶縁層398の形成方法としては、保護絶縁層396まで形成された基板394を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入し、シリコン半導体のターゲットを用いて窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、保護絶縁層396と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層398を成膜することが好ましい。絶縁層398の成膜時に100℃〜400℃に基板394を加熱することにより、酸化物半導体層399中に含まれる水素または水分を絶縁層398に拡散させることができる。この場合、保護絶縁層396の形成直後に加熱処理を行わなくてもよい。
【0186】
また、保護絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、絶縁層398として窒化シリコン層を形成する場合、酸化シリコン層と窒化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に酸素を含むスパッタガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を形成し、次にスパッタガスを窒素を含むスパッタガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層と窒化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、酸化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止できる。なお、保護絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、絶縁層398として窒化シリコン層を積層した後、酸化物半導体層中に含まれる水素若しくは水分を酸化物絶縁層に拡散させるための加熱処理(温度100℃乃至400℃)を行うことがさらに好ましい。
【0187】
保護絶縁層396の形成後、さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0188】
上記の工程は、400℃以下の温度で行われるため、厚さが1mm以下で、一辺が1mを超えるガラス基板を用いる製造工程にも適用することができる。また、400℃以下の処理温度で全ての工程を行うことができるので、半導体装置を製造するためのエネルギー消費を低減することができる。
【0189】
本実施の形態で説明した高純度の酸化物半導体層を有するトランジスタを変調回路に用いることにより、オフ電流を低減することができる。これにより、変調回路の動作の安定性を向上させるとともに、変調回路における消費電力を抑制することができる。
【0190】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態4、5で説明したトランジスタとは別の構造を有するトランジスタの構造、及びその作製方法について図14を用いながら説明する。
【0191】
図14(A)乃至(D)にトランジスタの断面構造の一例を示す。図14(D)に示すトランジスタ360は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型のトランジスタともいう。このトランジスタ360を、実施の形態2で説明したトランジスタ303として用いることができる。なお、トランジスタ360はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0192】
以下、図14(A)乃至(D)を用い、基板320上にトランジスタ360を作製する方法について説明する。
【0193】
まず、基板320上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極361を形成する。基板320の材料については、実施の形態3で説明した基板394と同様のものを採用することができる。また、ゲート電極361の材料や成膜方法等は、実施の形態3で説明したゲート電極391と同様のものを採用することができる。
【0194】
次に、ゲート電極361上にゲート絶縁層322を形成する。ゲート絶縁層322の材料については、実施の形態2で説明したゲート絶縁層397と同様のものを採用することができる。本実施の形態では、ゲート絶縁層322としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0195】
次に、ゲート絶縁層322上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体層を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。島状の酸化物半導体層の材料や成膜方法、加工方法等は、実施の形態3で説明した島状の酸化物半導体層399と同様のものを採用することができる。本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn−O系の金属酸化物ターゲットを用いてスパッタ法により成膜する。
【0196】
次に、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行う。脱水化または脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層332を得る(図14(A)参照。)。
【0197】
次に、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した水などを除去する。または、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0198】
次に、ゲート絶縁層322、及び酸化物半導体層332上に、酸化物絶縁層を形成した後、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って酸化物絶縁層366を形成した後、レジストマスクを除去する。
【0199】
本実施の形態では、酸化物絶縁層366として膜厚200nmの酸化珪素膜をスパッタ法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素及び窒素雰囲気下でスパッタ法により酸化珪素膜を形成することができる。低抵抗化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層366は、水分や、水素イオンや、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを用いることができる。
【0200】
このとき、酸化物半導体層332及び酸化物絶縁層366に水素、水酸基または水分が含まれないようにするため、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層366を成膜することが好ましい。なお、処理室内の残留水分の除去方法については、他の実施の形態で説明した方法を用いることができる。
【0201】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行うことが好ましい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層366と接した状態で加熱される。
【0202】
本実施の形態では、さらに酸化物絶縁層366が設けられ一部が露出している酸化物半導体層332を、窒素、不活性ガス雰囲気下、または減圧下で加熱処理を行う。酸化物絶縁層366によって覆われていない露出された酸化物半導体層332の領域は、窒素、不活性ガス雰囲気下、または減圧下で加熱処理を行うと、低抵抗化することができる。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行うとよい。
【0203】
酸化物絶縁層366が設けられた酸化物半導体層332に対する窒素雰囲気下の加熱処理によって、酸化物半導体層332の露出領域は低抵抗化し、抵抗の異なる領域(図14(B)においては斜線領域及び白地領域で示す)を有する酸化物半導体層362となる。
【0204】
次に、ゲート絶縁層322、酸化物半導体層362、及び酸化物絶縁層366上に、導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極365a、第2の電極365bを形成した後、レジストマスクを除去する(図14(C)参照。)。
【0205】
第1の電極365a、第2の電極365bの材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、金属導電膜は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。
【0206】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体層に対して脱水化または脱水素化のための加熱処理を行って酸素欠乏状態となることで低抵抗化した後、酸化物半導体層の一部を選択的に酸素過剰な状態とする。その結果、ゲート電極361と重なるチャネル形成領域363は、I型となり、第1の電極365aに重なる低抵抗ソース領域364aと、第2の電極365bに重なる低抵抗ドレイン領域364bとが自己整合的に形成される。以上の工程により、トランジスタ360が形成される。
【0207】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0208】
なお、第2の電極365b(及び第1の電極365a)と重畳した酸化物半導体層において低抵抗ドレイン領域364b(または低抵抗ソース領域364a)を形成することにより、トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、低抵抗ドレイン領域364bを形成することで、ドレイン電極から低抵抗ドレイン領域364b、チャネル形成領域363にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、第2の電極365bに高電源電位VDDを供給する配線に接続して動作させる場合、ゲート電極361と第2の電極365bとの間に高電界が印加されても高抵抗ドレイン領域がバッファとなり局所的な高電界が印加されず、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0209】
次に、第1の電極365a、第2の電極365b、酸化物絶縁層366上に保護絶縁層323を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層323を、窒化珪素膜を用いて形成する(図14(D)参照。)。
【0210】
本実施の形態で説明した高純度の酸化物半導体層を有するトランジスタを変調回路に用いることにより、オフ電流を低減することができる。これにより、変調回路の動作の安定性を向上させるとともに、変調回路における消費電力を抑制することができる。
【0211】
(実施の形態7)
本実施の形態は、変調回路に適用可能なトランジスタの他の例について説明する。以下、図15(A)乃至(D)を用いて、基板340上にトランジスタ350を作製する工程を説明する。
【0212】
まず、基板340上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極351を形成する。本実施の形態では、ゲート電極351として、膜厚150nmのタングステン膜を、スパッタ法を用いて形成する。
【0213】
次に、ゲート電極351上にゲート絶縁層342を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁層342としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素膜を形成する。
【0214】
次に、ゲート絶縁層342に導電膜を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極355a、ドレイン電極355bを形成した後、レジストマスクを除去する(図15(A)参照。)。
【0215】
次に酸化物半導体層345を形成する(図15(B)参照。)。本実施の形態では、酸化物半導体層345としてIn−Ga−Zn−O系の金属酸化物ターゲットを用いてスパッタ法により成膜する。続いて、酸化物半導体層345を第3のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。
【0216】
酸化物半導体層345を成膜する工程においては、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体層345を成膜することにより、酸化物半導体層345に水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。処理室内の残留水分の除去方法については、他の実施の形態で説明した方法を用いることができる。
【0217】
次に、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うために、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層346を得る(図15(C)参照。)。
【0218】
また、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0219】
次に、酸化物半導体層346に接する保護絶縁膜356を形成する。保護絶縁膜356は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、保護絶縁膜356に水、水素等の不純物を混入させない方法(例えば、スパッタ法)を適宜用いて形成することができる。保護絶縁膜356に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、または水素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜きが生じ、酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。このため、保護絶縁膜356はできるだけ水素を含まない膜になるような成膜方法を用いることが重要である。
【0220】
なお、保護絶縁膜356の材料や成膜方法等については、実施の形態3における保護絶縁層396と同様のものを採用することができる。
【0221】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が保護絶縁膜356と接した状態で加熱される。
【0222】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体層に対して脱水化または脱水素化のための加熱処理を行って低抵抗化した後、酸化物半導体層を酸素過剰な状態とする。その結果、I型の酸化物半導体層352が形成される。以上の工程により、トランジスタ350が形成される。
【0223】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、保護絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層から保護絶縁膜中に水素がとりこまれ、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。
【0224】
なお、保護絶縁層356上に絶縁層をさらに設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層356上に絶縁層343を形成する(図15(D)参照。)。絶縁層343の材料や成膜方法等については、実施の形態3における保護絶縁層398と同様のものを採用することができる。また、絶縁層343上に平坦な表面を形成する目的で、平坦化絶縁層(例えば、樹脂層)を設けてもよい。
【0225】
なお、図15(D)に示すトランジスタ350はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0226】
本実施の形態で説明した高純度の酸化物半導体層を有するトランジスタを変調回路に用いることにより、オフ電流を低減することができる。これにより、変調回路の動作の安定性を向上させるとともに、変調回路における消費電力を抑制することができる。
【0227】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る変調回路を備えたRFタグの使用例について図10を用いながら説明する。RFタグの用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図10(A)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図10(C)参照)、記録媒体(DVDソフトやビデオテープ等、図10(B)参照)、乗り物類(自転車等、図10(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、または電子機器(液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、または携帯電話機)等の物品、若しくは各物品に取り付ける荷札(図10(E)、図10(F)参照)等に設けて使用することができる。
【0228】
本発明の一態様に係るRFタグ4000は、プリント基板に実装、表面に貼る、または埋め込むことにより、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込み、有機樹脂からなるパッケージであれば当該有機樹脂の内部に埋め込み、各物品に固定される。本発明の一態様に係るRFタグ4000は、小型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデザイン性を損なうことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証書類等に本発明の一態様に係るRFタグ4000を設けることにより、認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。また、乗り物類であっても、本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、盗難などに対するセキュリティ性を高めることができる。
【0229】
以上のように、本発明の一態様に係る変調回路を搭載したRFタグを本実施の形態に挙げた各物品に用いると、その物品の認証は従来よりも信頼性に優れ、かつ最大通信距離に優れたものになる。
【符号の説明】
【0230】
100 RFタグ
101 論理回路
102 アンテナ回路
103 復調回路
104 変調回路
111 アンテナ
112 共振容量
113 整流回路
114 定電圧回路
117 クロック生成回路
301 変調回路
302 負荷
303 トランジスタ
304 アンテナ
305 信号
306 共振容量
307 アンテナ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷と、スイッチとして機能するトランジスタとを有し、
前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、
前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下であることを特徴とする変調回路。
【請求項2】
負荷と、スイッチとして機能するトランジスタとを有し、
前記トランジスタは、ソースまたはドレインの一方が前記負荷を介してアンテナの一端に電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方がアンテナの他端に電気的に接続され、
前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、
前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下であることを特徴とする変調回路。
【請求項3】
負荷と、スイッチとして機能するトランジスタと、ダイオードとを有し、
前記負荷、前記トランジスタ、及び前記ダイオードは、アンテナの両端間に直列に接続されており、
前記トランジスタは、水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体層を有し、
前記トランジスタのオフ電流は、1×10−13A以下であることを特徴とする変調回路。
【請求項4】
請求項3において、前記ダイオードは、ダイオード接続されたトランジスタであることを特徴とする変調回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記トランジスタのゲートに入力される信号により、当該トランジスタの導通・非導通が制御されることを特徴とする変調回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記負荷は、抵抗、容量、または抵抗及び容量であることを特徴とする変調回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の変調回路と、アンテナと、整流回路と、復調回路と、定電圧回路と、論理回路とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の変調回路を有する半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の変調回路を有する携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−130424(P2011−130424A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255066(P2010−255066)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】