説明

多孔質膜の前駆体組成物及びその調製方法、多孔質膜及びその作製方法、並びに半導体装置

【課題】 低誘電率、低屈折率、高機械的強度を有する疎水性多孔質膜及びその作製方法、この多孔質膜を作製するための多孔質膜の前駆体組成物及びその調製方法、並びにこの多孔質膜を利用した半導体装置の提供。
【解決手段】 式:Si(OR)及びR(Si)(OR)4−a(式中、Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、aは1〜3の整数であり、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい)で示される化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物と、250℃以上で熱分解を示す熱分解性有機化合物と、触媒作用をなす元素と、有機溶媒とからなる多孔質膜の前駆体組成物。この前駆体組成物の溶液を用いて疎水性化合物と気相重合反応せしめ、多孔質膜を作製する。この多孔質膜を用いた半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質膜の前駆体組成物及びその調製方法、多孔質膜及びその作製方法、並びに半導体装置に関する。特に、低誘電率及び低屈折率を有し、かつ、機械的強度にも優れた疎水性多孔質膜を作製するための多孔質膜の前駆体組成物及びその調製方法、この前駆体組成物を用いて得られた多孔質膜及びその作製方法、並びにこの多孔質膜を利用した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの分野において、銅配線と共に、2.5以下の低誘電率(k)を特徴とする層間絶縁膜の導入が盛んに研究開発されている。この層間絶縁膜として、低誘電率を持つ酸化物膜を多孔質にすることで誘電率をさらに低くすることが提案されている。しかし、多孔質にすることで、(1)機械的強度の急激な低下、(2)空孔内への空気中の水分の吸着、(3)この水分吸着を防ぐために導入するCH基等の疎水性基による多孔質膜に接する膜との密着性低下等の問題が引き起こされているのが現状である。そのため、多孔質膜の半導体デバイスへの実用化プロセス、特にCuデュアルダマシン配線構造におけるCMP(Chemical Mechanical Polishing)やワイヤボンディングプロセス等で、(1)機械的強度の低下による多孔質膜の破壊、(2)水分吸湿による誘電率の上昇、(3)密着性低下による積層膜/多孔質絶縁膜間の剥離発生等の問題が発生しており、実用上の大きな障害となっている。
【0003】
有機化合物と無機化合物との自己組織化を利用した均一なメソ細孔を持つ酸化物の製造方法として、シリカゲルと界面活性剤等とを用いて、密封した耐熱性容器内で水熱合成することが提案されており(例えば、特許文献1参照)、このような均一なメソ細孔を持つ酸化物を半導体材料等に用いるために、近年、その形態をフィルム状に調製することが報告されている。
【0004】
例えば、アルコキシシラン の縮合物と界面活性剤とからなるゾル液中に基板を浸漬し、その基板表面に多孔質シリカを析出させてフィルム状に形成する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。さらに、アルコキシシラン類の縮合物と界面活性剤とを有機溶媒に混合した溶液を基板に塗布し、次いで有機溶媒を蒸発させて基板上にフィルムを調製する方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
上記非特許文献1における基板表面に多孔質シリカを析出する方法では、調製に長時間を要し、また、粉体として析出する多孔質シリカが多く、歩留まりが悪い等の欠点があるため、非特許文献2における有機溶媒を蒸発させる方法の方が多孔質シリカフィルムの調製には優れている。
【0006】
上記非特許文献2における有機溶媒を蒸発させて基板上にフィルムを調製する方法において用いられる溶媒として、多価アルコールグリコールエーテル溶媒、グリコールアセテートエーテル溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、カルボン酸エステル溶媒等が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、上記従来技術記載の方法で得られる多孔質膜は、空孔内部に親水部を多く含むため、空気中の水蒸気を取り込み易く、これが多孔質膜の比誘電率を上昇させる原因となっている。そのため、層間絶縁膜中に疎水性官能基を導入する方法として、例えば、細孔内のシラノール基をトリメチルシリル化することによって、水分の吸着を防止して絶縁性を保持する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかるに、この方法では、細孔内のシラノール基を完全にトリメチルシリル化できないことが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
また、IA族又はIIA族の元素の添加により、クラック伝搬のない多孔質膜を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この場合の元素の添加濃度範囲は、加水分解縮合物100重量部に対して0.0001〜0.015重量部であり、0.015重量部を越えると溶液の塗布均一性が劣ると記載されている。しかるに、本発明者らによる追試では、このような濃度範囲では、作製された多孔質膜の機械的強度が不十分であると共に、比誘電率はあまり低くない。そのため、作製された多孔質膜の低誘電率と高機械的強度との両立は不可能である。
【0009】
また、疎水性と機械的強度との向上を両立させるために、Si−O結合を主として有する多孔質フィルムと特定の有機ケイ素化合物とを、金属触媒を用いないで加熱下に接触させる多孔質フィルムの改質方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、実用上、機械的強度の点をさらに改良することが求められている。
さらに、触媒としてPtを用いてシロキサンの反応を促進することが知られている(例えば、特許文献6参照)。この場合、対象は、耐熱セラミックスにおける疎水性であり、Naを初めとする含有不純物の有無等、半導体用層間絶縁薄膜としての多孔質膜とは本質的に異なる。
【特許文献1】WO-91/11390パンフレット(クレーム等)
【非特許文献1】Nature誌、1996年、379巻(703頁)
【非特許文献2】Supramolecular Science 誌、1998年、5巻(247頁等)
【特許文献2】特開2000-38509号公報(段落番号0013、0014等)
【特許文献3】米国特許第6,208,014号明細書(クレーム、アブストラクト等)
【非特許文献3】J. Phys. Chem. 誌、B1997巻、101号(6525頁等)
【特許文献4】特開2002-3784号公報(特許請求の範囲、段落番号0004等)
【特許文献5】特開2004-292304号公報(特許請求の範囲、段落番号0020等)
【特許文献6】米国特許第5939141号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、低誘電率及び低屈折率を有し、かつ、機械的強度にも優れた疎水性多孔質膜を作製するための多孔質膜の前駆体組成物及びその調製方法、この前駆体組成物を用いて得られた多孔質膜及びその作製方法、並びにこの多孔質膜を利用した半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、低誘電率及び低屈折率を有し、かつ、機械的強度に極めて優れた疎水性多孔質膜を作製すべく鋭意研究開発を進めた結果、多孔質膜に対し、特定の金属の存在下に特定の疎水性化合物を気相重合反応させることにより従来技術の問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の多孔質膜の前駆体組成物は、次の一般式(1):
Si(OR) (1)
で示される化合物(A)、及び次の一般式(2):
(Si)(OR)4−a (2)
で示される化合物(B)(上記式(1)及び(2)中、Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、aは1〜3の整数であり、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)から選ばれた少なくとも1種の化合物と、250℃以上で熱分解を示す熱分解性有機化合物(C)と、電気陰性度が2.5以下である両性元素、イオン半径が1.6Å以上の元素及び原子量が130以上である元素から選ばれた少なくとも1種の元素(D)とを含有することを特徴とする。
【0013】
上記熱分解性有機化合物(C)として、250℃未満の熱分解温度を有する化合物を用いると、上記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシラン類の重合が起きるより早くこの化合物(C)が分解してしまい、設計通りの空孔径を得るのが難しいという問題がある。上記元素(D)については、元素のポーリングの電気陰性度が2.5を超えると、多孔質膜を機械的に強化するための有機ケイ素の反応を促進する非架橋酸素を作るのが困難であるという問題がある。元素のイオン半径が1.6Å以上であれば、その元素がSiO中を移動せず、また、元素の原子量が130以上であれば、その元素の界面にパイルアップしてそれ以上拡散しない。このイオン半径及び原子量については、例えば、SiO等の絶縁膜中の移動度が非常に高いアルカリ金属においても、イオン半径1.6Å以上のRbはSiO中を移動し難いことが知られており(Journal of Applied Physics、第56巻、2218頁)、また、原子量が130以上である元素については、原子量133のCsは界面にパイルアップしてそれ以上拡散しないことが知られている(Applied Physics Letters、第50巻、1200頁)。従って、本発明におけるイオン半径及び原子量の範囲のいずれかを満たせば、SiO膜中を元素(D)は移動せず、あるいは膜外に拡散しない。
【0014】
上記熱分解性有機化合物(C)は、分子量200〜5000の界面活性剤を少なくとも1種含んでいることを特徴とする。界面活性剤の分子量が200未満であると、形成できる空孔径が小さすぎ、5000を超えると、空孔径が大きくなりすぎる。
【0015】
上記前駆体組成物中に含まれる上記元素(D)以外の金属イオン不純物は、10ppb以下であることを特徴とする。ここで、金属イオン不純物が、10ppbを超えると、半導体装置の信頼性に影響する。
【0016】
上記元素(D)は、B、Al、P、Zn、GA、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Rb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、及びランタノイドからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であることを特徴とする。
【0017】
本発明の多孔質膜の前駆体組成物の調製方法は、次の一般式(1):
Si(OR) (1)
で示される化合物(A)、及び次の一般式(2):
(Si)(OR)4−a (2)
で示される化合物(B)(上記式(1)及び(2)中、Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、aは1〜3の整数であり、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)から選ばれた少なくとも1種の化合物と、250℃以上で熱分解を示す熱分解性有機化合物(C)と、電気陰性度が2.5以下である両性元素、イオン半径が1.6Å以上の元素及び原子量が130以上である元素から選ばれた少なくとも1種の元素(D)又はこの元素(D)を含む少なくとも1種の化合物とを有機溶媒中で混合することを特徴とする。
【0018】
上記前駆体組成物の調製方法において、上記一般式(1)で示される化合物(A)及び一般式(2)で示される化合物(B)から選ばれた少なくとも1種の化合物と、上記熱分解性有機化合物(C)とを有機溶媒中で混合し、得られた混合液に、上記少なくとも1種の元素(D)又はこの元素(D)を含む少なくとも1種の化合物を添加し、混合してもよい。
【0019】
この前駆体組成物の調製方法において、熱分解性有機化合物(C)、前駆体組成物中の金属イオン不純物、及び添加元素(D)については、上記した通りである。
【0020】
本発明の多孔質膜の作製方法は、上記多孔質膜の前駆体組成物又は上記調製方法により調製された多孔質膜の前駆体組成物を用いて基板上に成膜し、これを250℃以上で熱処理して、前駆体組成物中の熱分解性有機化合物を熱分解せしめ、多孔質膜を作製することを特徴とする。250℃未満であると、本発明で使用する有機化合物が十分に熱分解できない。
【0021】
本発明の多孔質膜の作製方法はまた、上記のようにして作製された多孔質膜に対し、疎水基及び重合可能性基から選ばれた少なくとも1種の基を持つ疎水性化合物を、100〜600℃の温度範囲で気相反応させ、多孔質膜を改質することを特徴とする。この気相反応の反応温度が100℃未満であると、気相反応が十分に起こらず、また、600℃を超えると、多孔質膜が収縮して比誘電率の上昇を招く。
【0022】
上記疎水性化合物は、炭素数1〜6のアルキル基又はC基からなる疎水性基と、水素原子、OH基又はハロゲン原子からなる重合可能性基とを、それぞれ、少なくとも1種ずつ有する化合物であることを特徴とする。炭素数が7以上であると、分子サイズが大きくなり、空孔内への拡散に影響がでる。
【0023】
上記疎水性化合物はまた、Si−X−Si(Xは酸素原子、NR基、C2n又はCを表し、RはC2m+1又はCを表し、nは1又は2であり、mは1〜6の整数である。)の結合単位を少なくとも1種、かつ、Si−A(Aは水素原子、OH基、OC2b+1又はハロゲン原子を表し、同一分子内のAは同じでも異なっていても良く、bは1〜6の整数である。)の結合単位を少なくとも2種有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする。
【0024】
上記疎水性化合物において、nが3以上であると、疎水基自体が大きくなるため十分な重合が困難であり、mが7以上であり、また、bが7以上であると、分子サイズが大きくなり、空孔内への拡散に影響がでる。また、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
【0025】
本発明の多孔質膜は、上記多孔質膜の作製方法に従って得られたものである。
【0026】
本発明の半導体装置は、上記多孔質膜の作製方法に従って得られた多孔質膜を用いて得られたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の多孔質膜の前駆体組成物を用いれば、低誘電率及び低屈折率を有し、かつ、機械的強度にも優れた疎水性多孔質膜を作製でき、この多孔質膜を用いれば、所望の半導体装置を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態によれば、所望の特性を有する多孔質膜は、次の一般式(1):
Si(OR) (1)
で示される化合物(A)、及び次の一般式(2):
(Si)(OR)4−a (2)
で示される化合物(B)(上記式(1)及び(2)中、Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、aは1〜3の整数であり、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)で示される化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物と、200〜5000の分子量を有し、250℃以上で熱分解を示す界面活性剤を含む熱分解性有機化合物(C)と、特定のポーリングの電気陰性度、イオン半径、原子量を有する元素から選ばれた少なくとも1種の元素(D)と、有機溶媒とを含有する前駆体組成物の溶液から作製される。
【0029】
上記前駆体組成物の溶液は、上記化合物(A)及び化合物(B)から選ばれた少なくとも1種の化合物と、熱分解性有機化合物(C)と、所定の元素(D)又は元素(D)を含んだ化合物とを有機溶媒中で混合して調製される。或いはまた、化合物(A)及び(B)から選ばれた少なくとも1種の化合物と、熱分解性有機化合物(C)とを有機溶媒中で混合して得られた混合液に元素(D)又は元素(D)を含んだ化合物を添加して調製してもよい。
【0030】
上記多孔質膜の前駆体組成物の溶液を調製する方法の一例について、以下具体的に説明する。
【0031】
上記一般式(1)及び(2)で示される化合物の少なくとも1種類の化合物と、水と、有機溶媒との混合物に、一般式(1)及び(2)で示される化合物中のOR、ORを加水分解せしめるための酸性触媒あるいは塩基性触媒を加え、20〜80℃の範囲で30分〜5時間攪拌し、一般式(1)及び(2)で示される化合物を十分加水分解させ、溶液を調製する。次いで、この溶液を攪拌しながら、界面活性剤を1秒間に100万分の1モルから100分の1モルの範囲内で少量ずつ滴下する。この時、界面活性剤は直接滴下しても有機溶媒等で希釈したものを滴下しても良く、界面活性剤の単位時間あたりの滴下量は界面活性剤の分子量に依存するが、多すぎると界面活性剤の分散が不十分となり、最終的に得られる溶液に不均一が生じる。以上の各原料の混合比は目的とする比誘電率によって適宜決定すればよい。
【0032】
次いで、上記の混合溶液に、添加元素(D)を添加し、混合する。この場合、元素(D)単体若しくは元素(D)を含む化合物の何れかを単独で又は任意のものを組み合わせて添加、混合しても良く、添加方法とそのタイミングも特に限定されるものではない。例えば、上記したように、混合液の調製中に各成分を順番に又は全ての成分を一緒に添加して混合してもよい。また、混合濃度はシリル化処理時にシリル化化合物(疎水性化合物)の架橋を促進できる濃度以上で、かつ得られた膜の絶縁性を十分に保てる濃度以下で有れば特に制限されるものではない。例えば、50〜5000ppmの範囲が望ましい。最終的に得られた溶液を20〜50℃の範囲、好ましくは25〜30℃の範囲で30分〜24時間攪拌し、多孔質膜の前駆体組成物溶液を得る。
【0033】
本発明によれば、上記のようにして調製された前駆体組成物の溶液を基板上に塗布した後、この基板を250℃以上の温度で熱処理することにより、前駆体組成物溶液中に含まれている界面活性剤を熱分解せしめる。かくして得られた元素(D)を含有する多孔質膜に対し、疎水基(例えば、炭素数6以下のアルキル基、又はフェニル基)と重合可能基(例えば、水素原子、OH基又はハロゲン原子)とを少なくとも1つ以上持つ疎水性化合物を気相にて重合反応させる。疎水性化合物を気相状態で多孔質シリカ膜中の空孔内へ導入し、空孔内壁に疎水性重合体薄膜を生成させる。このように重合体薄膜を空孔内壁と結合させて多孔質膜を改質する際に、存在する元素(D)が膜の電気的中性を乱し、多孔質膜酸化物膜中の非架橋型酸素を生成する事により気相架橋反応の劇的な促進が得られる。この元素は、いわゆる触媒の様な作用を持つため、従来の方法では不可能であった低誘電率と高機械的強度(空孔構造の補強による弾性率や硬度の向上)とを有し、良好な疎水性が付与された多孔質膜を得ることができる。さらに、気相重合反応の促進が得られることから、プロセス中の全ての熱処理温度を低くすることができる。具体的には、本発明を微細化の著しい半導体装置の層間絶縁膜の形成方法に適用する場合には、一般的に行われている400℃の熱処理を350℃以下の低温焼成処理で行っても十分高い機械的強度を得ることができる。
【0034】
以下、上記前駆体組成物及び多孔質膜の各成分について詳細に説明する。
【0035】
(アルコキシシラン類)
上記一般式(1)及び(2)でそれぞれ示される化合物(A)及び(B)において、R、R及びRの1価の有機基には、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等が含まれる。
【0036】
一般式(1)のRにおける1価の有機基としては、アルキル基又はアリール基を挙げることができる。このアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等を挙げることができる。Rにおける1価の有機基としては、アルキル基及びフェニル基が好ましい。また、一般式(2)のR、Rにおける1価の有機基としては、上記一般式(1)のRの場合と同様な有機基を挙げることができる。
【0037】
本発明において用いることのできる一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシラン類としては、特に限定されるものではなく、具体的には以下のようなものを挙げることができる。
【0038】
例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブチルシラン等の4級アルコキシシラン;トリメトキシフルオロシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリイソプロポキシフルオロシラン、トリブトキシフルオロシラン等の3級アルコキシフルオロシラン;
【0039】
CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSi(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSi(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)CH2CHSiCH(OCH)、CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、CF(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)等のフッ素含有アルコキシシラン;
【0040】
トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリエトキシプロピルシラン等の3級アルコキシアルキルシラン;
【0041】
トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシクロロフェニルシラン、トリエトキシクロロフェニルシラン等の3級アルコキシアリールシラン;
【0042】
トリメトキシフェネチルシラン、トリエトキシフェネチルシラン等の3級アルコキシフェネチルシラン;
【0043】
ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン等の2級アルコキシアルキルシラン等を挙げることができる。
【0044】
本発明では、上記アルコキシシラン類から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
(有機溶媒)
本発明で用いることができる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;
【0046】
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;
【0047】
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;
【0048】
エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;
【0049】
ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;
【0050】
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素系溶媒等を挙げることができる。
【0051】
本発明では、上記有機溶媒から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
(酸性及び塩基性触媒)
本発明において、前駆体組成物溶液中で用いることができる触媒は、少なくとも1種類以上の酸性触媒又は塩基性触媒である。
【0053】
酸性触媒としては、無機酸や有機酸を挙げることができる。
【0054】
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸、及び臭化水素酸等を挙げることができる。
【0055】
有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、及びリンゴ酸等を挙げることができる。
【0056】
塩基性触媒としては、アンモニウム塩及び窒素含有化合物を挙げることができる。
【0057】
アンモニウム塩としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0058】
窒素含有化合物としては、例えば、ピリジン、ピロール、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、ピペラジン、1−メチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、2−ピラゾリン、3−ピロリン、キヌキリジン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びトリブチルアミン等を挙げることができる。
【0059】
さらに、本発明で用いる添加元素(D)を含む酸・塩基性化合物も全て触媒として使用することができる。
【0060】
(界面活性剤)
本発明における前駆体組成物の溶液中で用いることができる界面活性剤は、分子量が小さい場合には、形成される空孔が小さく、空孔形成後の気相反応において対象化合物が十分に空孔内へ浸透しにくく、また、分子量が大きい場合には、形成される空孔が大きくなりすぎるため、例えば、分子量200〜5000の範囲内のものであれば、特に制限されることはない。好ましくは、例えば、以下の界面活性剤を挙げることができる。
【0061】
(I)長鎖アルキル基及び親水基を有する化合物。ここで、長鎖アルキル基としては、好ましくは炭素原子数8〜24のもの、さらに好ましくは炭素原子数12〜18のものが望ましく、また、親水基としては、例えば、4級アンモニウム塩、アミノ基、ニトロソ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられ、なかでも4級アンモニウム塩、又はヒドロキシル基であることが望ましい。そのような界面活性剤として具体的には、次の一般式:
2n+1(N(CH)(CH))(CH)N(CH)2L+1(1+a)
(上記一般式中、aは0〜2の整数であり、bは0〜4の整数であり、nは8〜24の整数であり、mは0〜12の整数であり、Lは1〜24の整数であり、Xはハロゲン化物イオン、HSO又は1価の有機アニオンを表す。)で示されるアルキルアンモニウム塩の使用が好ましい。a、b、n、m、Lがこの範囲内であり、Xがこのようなイオンであれば、形成される空孔が適当な大きさとなり、空孔形成後の気相反応において対象化合物が十分に空孔内へ浸透し、目的とする重合反応が生じる。
【0062】
(II)ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物。ここで、ポリアルキレンオキシド構造としてはポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、ポリテトラメチレンオキシド構造、ポリブチレンオキシド構造等を挙げることができる。そのようなポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物としては、具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル型化合物;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエーテルエステル型化合物等を挙げることができる。
【0063】
本発明においては、上記界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることできる。
【0064】
(添加元素)
本発明で用いる添加元素(D)については、上記したように、本発明における気相重合反応の促進という観点から、SiO中の非架橋酸素を増加させることが重要である。多孔質膜の基本骨格であるSi−Oにおいて非架橋酸素を増加させ、気相重合反応を促進させる場合に、ポーリングの電気陰性度がSiのもつ1.8よりも大きい元素、例えば酸素は3.5、炭素は2.5をもつため、Si−Oと場合によってはSi−C結合を持つ多孔質膜において、これ以上の電気陰性度を持つものは共有結合を持ちやすいので、Siとイオン結合を作ることにより非架橋酸素を増加させて、金属元素による触媒作用を促進させようという本発明の目的を達成するには適さない。また、この時、多孔質膜中に含有される金属元素には、どのような応力、特に電気的応力が印加されても膜中に安定に存在するといった性質や、あるいはその多孔質膜が適用される対象物において、例えば半導体装置において多孔質膜以外の要素に悪影響を与えないといった性質が求められる。このとき含まれる元素が通常の金属元素の場合、半導体の性能そのものに悪影響を与えてしまうため、適切ではない。しかしながら、半導体に悪影響を与えない元素、例えば金属ではあっても、両性元素であるAl、Zn、Sn、Pb等であれば、既に半導体装置でも使用例があり、この限りではない。また、多孔質膜に多少の電気的応力が加わっても移動しにくいイオン半径1.6Å以上の大きな元素、また、原子量では130以上、具体的には周期律表における第6周期に分類される重い元素(原子番号55以上の元素)であれば、特に金属元素であっても問題ない。
【0065】
上記した性質を満たし、本発明で使用できる代表的な元素(D)としては、例えば、B、Al、P、Zn、Ga、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Rb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、及びランタノイド等を挙げることができる。好ましくは、Cs、Ba、ランタノイド、Hf、P、Pb、Bi、Po、Se、Te、As、Rb、Al、及びSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である。これらの元素は、多孔質膜の前駆体組成物中に少なくとも1種存在していればよい。
【0066】
上記の添加元素を導入する方法については、元素そのものを導入しても、対象の元素を含む化合物として導入してもよく、その添加方法は特に制限されるものではない。この化合物としては、特に制限はなく、例えば、硝酸塩化合物、酸化物化合物、有機金属化合物、塩基性化合物、その他本発明における金属元素を作ることができる公知の化合物であれば良く、これらの化合物を用いて、各元素を導入することができる。この際、これら化合物と水やアルコール等の有機溶媒との混合物として導入することが好ましい。
【0067】
添加元素の濃度は、触媒量であれば良いが、以下の実施例2から明らかなように、前駆体組成物の溶液に対して50〜5000ppmであることが好ましい。
【0068】
(疎水性化合物)
本発明において用いることができる疎水性化合物は、炭素数1〜6のアルキル基又はC基からなる疎水性基と、水素原子、OH基又はハロゲン原子からなる重合可能性基とを、それぞれ、少なくとも1つずつ有する化合物であることが好ましい。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができ、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる。
【0069】
この疎水性化合物としては、例えば、1,2−ビス(テトラメチルジシロキサニル)エタン、1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトライソピルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,4,4−テトラメチルジシルエチレン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサイソプロピルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジエトキシジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルジエトキシトリシロキサン、テトラメチル−1,3−ジメトキシジシロキサン等を挙げることができる。
【0070】
本発明において用いることができる疎水性化合物はまた、Si−X−Si結合単位(Xは酸素原子、NR基、C2n基又はC基を表し、RはC2m+1基又はC基を表し、nは1又は2であり、mは1〜6の整数である。)の少なくとも1つと、Si−A結合単位(Aは水素原子、OH基、OC2b+1基又はハロゲン原子を表し、同一分子内のAは同じであっても異なっていてもよく、bは1〜6の整数である。)の少なくとも2つとを有する有機ケイ素化合物である。例えば、1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,3,5,7−テトラエチル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシラザン、1,2,3−トリエチル−2,4,6−トリエチルシクロトリシラザン等を挙げることができる。
【0071】
また、本発明によれば、疎水性化合物として、環状シロキサンを用いることができる。 この環状シロキサン類は、例えば、次の一般式:
【0072】
【化1】

(式中、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、C基、C2c+1基、CF(CF)(CH)基、ハロゲン原子を表し、cは1〜3の整数であり、dは0〜10の整数であり、eは0〜4の整数であり、nは3〜8の整数である。)で示される環状シロキサン化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0073】
上記式で表される環状シロキサン化合物は、Si−H結合を少なくとも2つ以上有することが好ましく、また、R、Rの少なくともいずれかが水素原子であることも好ましい。このような環状シロキサンを用いても、得られる多孔質シリカ膜の疎水性が増加するため、誘電率は低下する。
【0074】
このような環状シロキサン類としては、具体的に、トリ(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、トリフェニルトリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。本発明において用いられ得る環状シロキサン類は、これらの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記環状シロキサンのうち、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0075】
上記環状シロキサン類はまた、次の一般式:
【0076】
【化2】

(式中、R、R、R、R、R10、R11は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、C基、C2f+1基、CF(CF)(CH)基、ハロゲン原子を表し、fは1〜3の整数であり、gは0〜10の整数であり、hは0〜4の整数であり、Lは0〜8の整数であり、mは0〜8の整数であり、nは0〜8の整数であり、3≦L+m+n≦8であり、Si−H結合が少なくとも2つ以上含まれる。)で示される環状シロキサン化合物の少なくとも1種であってもよい。具体的には、例えば、1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラエチル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,2,3−トリエチル−2,4,6−トリエチルシクロトリシロキサン等を挙げることができる。
【0077】
さらに、上記(化1)で示す環状シロキサン類のうち、R、Rのいずれかが水素原子である環状シロキサン類としては、例えば、次の一般式:
【0078】
【化3】

(式中、Rは、上記定義の通りである。)で示される環状シロキサン化合物の少なくとも1種がある。具体的には、上記したように、例えば、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。これらの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
上記疎水性化合物は、原料多孔質シリカ膜に対して、その空孔内壁に重合体薄膜を形成せしめる得るのに十分な量であれば良く、例えば、ガス中濃度が0.1vol%以上であれば良い。
【0080】
上記基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス、石英、シリコンウエハー、ステンレス等を挙げることができる。その形状も、特に制限されず、板状、皿状等のいずれであっても良い。
【0081】
上記において、基板に多孔質膜の前駆体組成物の溶液を塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップ法等の一般的な方法を挙げることができる。例えば、スピンコート法の場合、スピナー上に基板を載置し、この基板上に塗布液を滴下し、500〜10000rpmで行う。
【0082】
本発明によれば、誘電率及び疎水性等に優れた多孔質シリカ膜を得ることができるので、改質多孔質シリカ膜を製造した後に、さらに疎水化処理を行うことは必要ではない。
【0083】
また、気相反応後の多孔質シリカ膜には疎水性化合物の未重合残基があるため、得られた改質多孔質シリカ膜上に他の金属薄膜や絶縁膜等を積層した場合、この未重合残基によりこれらの膜同士の密着性が向上する。
【0084】
さらに、本発明では、疎水性化合物の蒸気を処理チャンバー内へ導入する前に、チャンバー内を一旦減圧にし、その後に疎水性化合物の蒸気を導入し、この減圧を維持したまま適度の重合反応を行うことができるので、疎水性化合物のチャンバー内への拡散性が良くなり、空孔内における濃度が均一になる。
【0085】
さらにまた、減圧下で行うことができるため、多孔質膜中の空孔内に存在する気体分子や水分子等を予め除去した後に疎水性化合物の気体分子を導入することができるので、この化合物の空孔内への拡散性がよい。その結果、この疎水性化合物を多孔質膜中の空孔内へ短時間で均一に拡散させ、重合反応を起こさせることができるので、大面積の多孔質膜に対しても処理効果の均一性が図れる。
【0086】
上記したように、本発明の改質多孔質シリカ膜は、誘電率と疎水性の両方に優れると共に機械的強度にも優れているため、層間絶縁膜や配線間絶縁膜等の半導体材料;分子記録媒体、透明導電性膜、固体電解質、光導波路、LCD用カラー部材等の光機能材料や電子機能材料として用いることができる。特に、半導体材料の層間絶縁膜や配線間絶縁膜には、低誘電率、疎水性や高機械的強度が求められていることからも、このような誘電率、疎水性、機械的強度に優れる本発明の改質多孔質シリカ膜を用いることが好ましい。
【0087】
以下に、本発明の改質多孔質シリカ膜を配線間絶縁膜として用いた半導体装置について具体的に説明する。
【0088】
まず、上記したようにして、基板表面上に、改質多孔質シリカ膜を形成する。本発明の改質多孔質シリカ膜の製造方法によれば、低誘電率、疎水性に優れると共に高機械的強度を有する配線間絶縁膜を得ることができる。次いで、この改質多孔質シリカ膜上へハードマスクとフォトレジストを形成し、フォトレジストのパターン通りにエッチングする。エッチング後、気相成長法(CVD)によりその多孔質シリカ膜表面に窒化チタン(TiN)や窒化タンタル(TaN)等からなるバリア膜を形成する。
【0089】
本発明の多孔質シリカ膜表面にバリア膜を形成した後、メタルCVD法、スパッタリング法又は電解メッキ法により銅配線を形成し、さらにCMPにより膜を平滑化する。次いで、その膜の表面にキャップ膜を形成する。さらに必要であれば、ハードマスクを形成し、上記の工程を繰り返すことで多層化することができ、本発明の半導体装置を製造することができる。
【0090】
なお、上記では、好適例として、半導体回路素子の絶縁膜材料を挙げて説明したが、本発明の適用はこの用途に制限されるものではなく、例えば、水溶液中での表面加工が必要な防水膜電気材料、触媒材料、フィルター材料等の用途にも適用できる。
【0091】
以下、実施例について説明する。これらの実施例で用いた多孔質膜の前駆体組成物溶液の原料、測定装置等は以下の通りである。
【0092】
アルコキシシラン類:テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(山中セミコンダクター製、電子工業グレード)。
O:脱金属処理された抵抗値18MΩ以上の純水。
有機溶媒:エタノール(和光純薬製、電子工業グレード)。
界面活性剤:ポリ(アルキレンオキサイド)ブロックコポリマー、HO(CHCHO)13(CHCH(CH)O)20(CHCHO)13H(第一工業社製、商品名:エパン)を上記の電子工業用エタノールに溶解した後、脱金属処理を施したもの。
【0093】
添加元素又は元素含有化合物:高純度化学研究所製。
シリル化剤:1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(トリケミカル社製、電子工業グレード)。
膜厚、屈折率:分光エリプソメトリー(SOPRA社製、GES5)を使用して測定。
誘電率:水銀プローブ測定法(SSM社製、SSM2000)を使用して測定。
機械的強度:ナノインデンテイター(MTS Systems Corporation 製、Nano Indenter DCM)を使用して測定。
【実施例1】
【0094】
テトラエトキシシラン(TEOS)0.48モル、HO1.6モル、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)0.0071モル、非イオン性界面活性剤(商品名:P45、平均分子量:2300、OH(CHCHO)13(CH(CH)CHO)20(CHCHO)13H)0.1モルをエタノール中酸性環境下(硝酸:0.06モル)、25℃で24時間攪拌し透明で均一な塗布液を得た。
【0095】
ここで、DMDEOSの量は特に制限されるものではないが、DMDEOSを添加しない場合は、焼成して得られる多孔質膜の空孔が2次元ヘキサゴナル配列することによるX線回折ピークが観測され、ウォームホール(Worm−Hole)状の空孔構造が得られ難い。
【0096】
この塗布液を用いて、半導体Si基板上に1200rpmの条件でスピンコートした後、基板を空気雰囲気下、400℃で1時間焼成処理した。400℃までの昇温時間は15分であった。この温度、昇温時間及び保持時間については、特に制限されるものでは無く、得られた多孔質膜の膜質について、膜の性能を損なわない範囲であれば良い。
【0097】
上記のようにして得られた多孔質膜に対して、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)の蒸気中で、90kPaの圧力下、400℃で30分間焼成処理し、疎水性が高くかつ低誘電率を持つ多孔質シリカ膜を形成した。この場合、TMCTSの蒸気は、キャリアガスとしての不活性ガスであるNと共に導入し、焼成中常に流した。かくして得られた多孔質シリカ膜の空孔内は疎水性の重合薄膜であるポリメチルシロキサンで覆われていた。このときの比誘電率kは2.147で、屈折率は1.1844、弾性率は3.988GPa、硬度は0.45GPaであった。
【実施例2】
【0098】
実施例1で使用した塗布液に、Cs(NO)/HOの混合物をセシウム元素が0.01〜5000ppmの範囲になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でCs含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。
【0099】
本実施例において得られた膜の物性値を表1に示す。
(表1)

【0100】
表1から、金属元素の含有量増加に伴い、屈折率、弾性率及び硬度は単調に上昇するが、比誘電率は、一旦減少した後、金属の濃度が5000ppmを超えると、TMCTSの付着量が多すぎるために上昇している。このことから、金属元素を添加する場合においては、その濃度は5000ppm以下である必要がある。濃度が0.01ppmであると、比誘電率は低いが、弾性率も硬度も低いので、弾性率及び硬度の点からは、金属元素の濃度は一般には0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上5000ppm以下であればよい。
【0101】
実施例2から、TMCTS処理において添加元素によるTMCTSの架橋促進効果として、屈折率、弾性率及び硬度が大きな指針であり、比誘電率は架橋促進の正確な指針となり得ないことが分かる。そのため、実施例3以降の結果については、屈折率、弾性率、硬度を主体として評価する。各実施例では、何れも元素の添加によりTMCTSの架橋促進に伴う屈折率、弾性率及び硬度の向上が見られた。
【実施例3】
【0102】
実施例1で使用した塗布液に、P/EtOHの混合物をリン元素が1000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でリン含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.2680、比誘電率は3.00、弾性率は9.37GPa、硬度は0.97GPaであった。
【実施例4】
【0103】
実施例1で使用した塗布液に、Ba(NO)/HOの混合物をBa元素が1000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でBa含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.2215、比誘電率は2.05、弾性率は4.72GPa、、硬度は0.57GPaであった。
【実施例5】
【0104】
実施例1で使用した塗布液に、La/HOの混合物をLa元素が1000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でLa含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.2774、比誘電率は3.48、弾性率は9.80GPa、硬度は1.08GPaであった。
【実施例6】
【0105】
実施例1で使用した塗布液に、Tl(NO)/HOの混合物をTl元素が1000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でTl含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.2100、比誘電率は2.15、弾性率は6.36GPaで、硬度は0.73GPaあった。
【実施例7】
【0106】
実施例1で使用した塗布液に、Pb(NO)/HOの混合物をPb元素が1000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でPb含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.2388、比誘電率は2.44、弾性率は7.38GPa、硬度は0.84GPaであった。
【実施例8】
【0107】
実施例1で使用した塗布液に、Inを1000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でSn含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.2188、比誘電率は2.65、弾性率は6.72GPa、硬度は0.69GPaであった。
【実施例9】
【0108】
実施例1で使用した塗布液に、Bi(NO)/HOの混合物をBi元素が1000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でBi含有多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.1962、比誘電率は2.23、弾性率は5.15GPa、硬度は0.57GPaであった。
【0109】
上記実施例3〜9に示した物性値を表2に纏めて示す。
(表2)

【実施例10】
【0110】
実施例1で使用した塗布液に、Al(NO)/Cs(NO)/HOの混合物をAl/Csが1:1でありかつ全体に対して0.1〜5000ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用いた以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件で多孔質膜を得、この多孔質膜に対して、実施例1と同様のTMCTS処理をして多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率、比誘電率、弾性率、及び硬度は実施例2の場合とほぼ同じ傾向を示した。すなわち、金属元素の含有量増加に伴い、屈折率、弾性率及び硬度は単調に上昇するが、比誘電率は、一旦減少した後、金属の濃度が5000ppmを超えると、TMCTSの付着量が多すぎるために上昇している。このことから、金属元素を添加する場合においては、その濃度は5000ppm以下である必要がある。濃度が0.01ppmであると、比誘電率は低いが、弾性率も硬度も低いので、弾性率及び硬度の点からは、金属元素の濃度は一般には0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上5000ppm以下であればよい。
【実施例11】
【0111】
実施例1で使用した塗布液に、Cs(NO)/HOの混合物をCs元素が全体に対して10ppmの濃度になるように調整して添加して得た溶液を用い、全ての熱処理における温度を350℃とした以外は、実施例1と同様の塗布・焼成条件でCs含有多孔質膜を得た。この多孔質膜に対して、実施例1におけるTMCTS処理の温度も350℃で行い多孔質シリカ膜を得た。このときの、屈折率は1.2234、比誘電率は2.15、弾性率は4.77GPa、硬度は0.66GPaであった。Csを含有した多孔質シリカ膜では、実施例1のCsを含有しない膜と比較して400℃から350℃への低温化にも拘わらずTMCTS処理と組み合わせることにより、屈折率と機械的強度の向上が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、低誘電率及び低屈折率を有し、かつ、機械的強度にも優れた疎水性多孔質膜を提供できるので、この多孔質膜を、半導体分野における低比誘電率絶縁膜、ディスプレイ分野等で、低屈折率膜として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1):
Si(OR) (1)
で示される化合物(A)、及び次の一般式(2):
(Si)(OR)4−a (2)
で示される化合物(B)
(上記式(1)及び(2)中、Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、aは1〜3の整数であり、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
から選ばれた少なくとも1種の化合物と、250℃以上で熱分解を示す熱分解性有機化合物(C)と、電気陰性度が2.5以下である両性元素、イオン半径が1.6Å以上の元素及び原子量が130以上である元素から選ばれた少なくとも1種の元素(D)とを含有することを特徴とする多孔質膜の前駆体組成物。
【請求項2】
前記熱分解性有機化合物が、分子量200〜5000の界面活性剤を少なくとも1種含んでいることを特徴とする請求項1記載の多孔質膜の前駆体組成物。
【請求項3】
前記前駆体組成物中に含まれる前記元素(D)以外の金属イオン不純物が、10ppb以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質膜の前駆体組成物。
【請求項4】
前記元素(D)が、B、Al、P、Zn、GA、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Rb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、及びランタノイドからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質膜の前駆体組成物。
【請求項5】
次の一般式(1):
Si(OR) (1)
で示される化合物(A)、及び次の一般式(2):
(Si)(OR)4−a (2)
で示される化合物(B)
(上記式(1)及び(2)中、Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、aは1〜3の整数であり、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
から選ばれた少なくとも1種の化合物と、250℃以上で熱分解を示す熱分解性有機化合物(C)と、電気陰性度が2.5以下である両性元素、イオン半径が1.6Å以上の元素及び原子量が130以上である元素から選ばれた少なくとも1種の元素(D)又はこの元素(C)を含む少なくとも1種の化合物とを有機溶媒中で混合することを特徴とする多孔質膜の前駆体組成物の調製方法。
【請求項6】
次の一般式(1):
Si(OR) (1)
で示される化合物(A)、及び次の一般式(2):
(Si)(OR)4−a (2)
で示される化合物(B)
(上記式(1)及び(2)中、Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、aは1〜3の整数であり、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
から選ばれた少なくとも1種の化合物と、250℃以上で熱分解を示す熱分解性有機化合物(C)とを有機溶媒中で混合し、得られた混合液に、電気陰性度が2.5以下である両性元素、イオン半径が1.6Å以上の元素及び原子量が130以上である元素から選ばれた少なくとも1種の元素(D)又はこの元素(D)を含む少なくとも1種の化合物を添加し、混合することを特徴とする多孔質膜の前駆体組成物の調製方法。
【請求項7】
前記熱分解性有機化合物が、分子量200〜5000の界面活性剤を少なくとも1種含んでいることを特徴とする請求項5又は6記載の多孔質膜の前駆体組成物の調製方法。
【請求項8】
前記前駆体組成物中に含まれる前記元素(D)以外の金属イオン不純物が、10ppb以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の多孔質膜の前駆体組成物の調製方法。
【請求項9】
前記元素(D)が、B、Al、P、Zn、GA、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Rb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、及びランタノイドからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項5〜3のいずれかに記載の多孔質膜の前駆体組成物の調製方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質膜の前駆体組成物又は請求項5〜9のいずれかに記載の調製方法により調製された多孔質膜の前駆体組成物を用いて基板上に成膜し、これを250℃以上で熱処理して、前駆体組成物中の熱分解性有機化合物を熱分解せしめ、多孔質膜を作製することを特徴とする多孔質膜の作製方法。
【請求項11】
請求項10記載の作製方法により作製された多孔質膜に対し、疎水基及び重合可能性基から選ばれた少なくとも1種の基を持つ疎水性化合物を、100〜600℃の温度範囲で気相反応させ、多孔質膜を改質することを特徴とする多孔質膜の作製方法。
【請求項12】
前記疎水性化合物が、炭素数1〜6のアルキル基又はC基からなる疎水性基と、水素原子、OH基又はハロゲン原子からなる重合可能性基とを、それぞれ、少なくとも1種ずつ有する化合物であることを特徴とする請求項11記載の多孔質膜の作製方法。
【請求項13】
前記疎水性化合物が、Si−X−Si(Xは酸素原子、NR基、C2n又はCを表し、RはC2m+1又はCを表し、nは1又は2であり、mは1〜6の整数である。)の結合単位を少なくとも1種、かつ、Si−A(Aは水素原子、OH基、OC2b+1又はハロゲン原子を表し、同一分子内のAは同じでも異なっていても良く、bは1〜6の整数である。)の結合単位を少なくとも2種有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項11記載の多孔質膜の作製方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載の多孔質膜の作製方法に従って得られた多孔質膜。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれかに記載の多孔質膜の作製方法に従って得られた多孔質膜を用いて得られた半導体装置。

【公開番号】特開2006−265350(P2006−265350A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84206(P2005−84206)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】