説明

多層ポリマー物品およびその製造方法

ポリマー物品は、第1の層およびこの第1の層と直接接触する第2の層を含み得る。第1の層は、低表面エネルギーポリマーを含み得、少なくとも5%の接触指数を有し得る。第2の層は、エラストマーを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、高い剥離強度を有する多層ポリマー物品およびそれを製造するための方法に関し、特に、多層流体導管に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生ホースが、食品加工、化学工業および製薬工業をはじめ、様々な産業において使用される。こうした産業においては、低表面エネルギー内面を有する流体導管が使用される。なぜなら、それらは掃除が容易であり、かつそのような表面には細菌などの生物学的混入物が付着しにくいからである。特に、こうした産業は、フルオロポリマーなどの低表面エネルギーポリマーに頼るようになってきている。しかしながら、そうしたフルオロポリマーは高価であり、多くの場合、柔軟性を欠く。
【0003】
したがって、産業は、そうしたフルオロポリマーを、エラストマー流体導管内側のライナーとして使用する。しかしながら、内面として望ましいフルオロポリマーの低表面エネルギー性はまた、エラストマーへの不良結合をもたらす。各種エラストマーへのフルオロポリマーの結合を増強するために、産業は、中間接着剤層または化学的表面処理技術の使用に頼ってきた。接着剤の使用は、ホース製造にさらなる加工を追加するが、多くの場合、剥離強度の改良をほとんどもたらさず、ポリマー物品に浸出可能な化学種を持ち込む。また、産業は、化学エッチングなどの技術に頼ってきた。しかしながら、そうした技術は、多くの場合、表面の疎水性を低下させ、表面上の表面エネルギーを増大させ、プロセス流体中に浸出し得る望ましくない副生物を生じさせる。
【0004】
特に、浸出可能な化学種は、食品または医薬品などの製品を汚染し得る。さらに、特定の化学種は、反応して製品を損なうかまたは変色させ得、なおさらには、部分的にフッ素化された化学種は、食品または医薬品において見出される場合には、健康上の危険を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そうしたことから、改良された多層ポリマー物品が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態において、ポリマー物品を形成する方法は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する第1のポリマー層を供給する工程を包含する。この方法は、その結合表面と直接接触するように第2のポリマー層を付与する工程をさらに包含する。この第2のポリマー層は、エラストマーまたは熱可塑性物質を含む。
【0007】
特定の実施形態において、ポリマー物品は、第1の層およびこの第1の層と直接接触する第2の層を含む。第1の層は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ、本文で定義されるとおりの、少なくとも5%の接触指数を有する。第2の層はエラストマーを含む。
【0008】
別の例示的な実施形態において、ポリマー物品は、第1および第2の表面を有する第1のポリマー層を含む。この第1のポリマー層は、低表面エネルギーポリマーを含む。第1の表面は、酸素化された化学種を実質的に含まない。このポリマー物品は、第1のポリマー層の第1の表面と直接接触している第2のポリマー層をさらに含む。この第2のポリマー層は、エラストマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0009】
さらなる例示的な実施形態において、ポリマー物品は、第1および第2の表面を有する第1の層を含む。この第1の層は、低表面エネルギーポリマーを含む。第1の表面は、房状形態を有する。このポリマー物品は、その第1の表面と直接接触する第2の層をさらに含む。この第2の層は、エラストマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0010】
さらなる実施形態において、ポリマー物品を形成する方法は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する第1のポリマー層を供給する工程と、その結合表面と直接接触するように第2のポリマー層を付与する工程とを包含する。この第2のポリマー層は、エラストマーを含む。
【0011】
別の例示的な実施形態において、流体導管は、低表面エネルギーポリマーを含みかつ少なくとも5%の接触指数を有する内側層を含む。この流体導管はまた、その第1の層と直接接触しかつその第1の層に半径方向に重なる第2の層を含む。この第2の層は、エラストマーを含む。
【0012】
さらなる例示的な実施形態において、流体導管は、内面および外面を有する内側層を含む。この内側層は、低表面エネルギーポリマーを含む。外面は、酸素化された化学種を実質的に含まない。この流体導管はまた、その内側層の外面と直接接触している第2のポリマー層を含む。この第2のポリマー層は、エラストマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0013】
さらなる実施形態において、流体導管は、内面および外面を有する内側層を含む。この内側層は、低表面エネルギーポリマーを含む。外面は、房状形態を有する。この流体導管は、その内側層の外面と直接接触する第2の層をさらに含む。この第2の層は、エラストマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0014】
別の例示的な実施形態において、流体導管を形成する方法は、内側層を供給する工程を包含する。この内側層は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する。この方法は、その結合表面と直接接触するように第2のポリマー層を付与する工程をさらに包含する。この第2のポリマー層は、エラストマーを含む。
【0015】
特定の実施形態において、ポリマー物品は、第1の層およびこの第1の層と直接接触する第2の層を含む。第1の層は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ少なくとも5の接触指数を有する。第2の層は、熱可塑性ポリマーを含む。
【0016】
別の例示的な実施形態において、ポリマー物品は、第1および第2の表面を有する第1のポリマー層を含む。この第1のポリマー層は、低表面エネルギーポリマーを含む。第1の表面は、酸素化された化学種を実質的に含まない。このポリマー物品は、第1のポリマー層の第1の表面と直接接触している第2のポリマー層をさらに含む。この第2のポリマー層は、熱可塑性ポリマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0017】
さらなる例示的な実施形態において、ポリマー物品は、第1および第2の表面を有する第1の層を含む。この第1の層は、低表面エネルギーポリマーを含む。第1の表面は、房状形態を有する。このポリマー物品は、その第1の表面と直接接触する第2の層をさらに含む。この第2の層は、熱可塑性ポリマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0018】
さらなる実施形態において、ポリマー物品を形成する方法は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する第1のポリマー層を供給する工程と、その結合表面と直接接触するように第2のポリマー層を付与する工程とを包含する。この第2のポリマー層は、熱可塑性ポリマーを含む。
【0019】
別の例示的な実施形態において、流体導管は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ少なくとも5%の接触指数を有する内側層を含む。この流体導管はまた、その第1の層と直接接触しかつその第1の層に半径方向に重なる第2の層を含む。この第2の層は、熱可塑性ポリマーを含む。
【0020】
さらなる例示的な実施形態において、流体導管は、内面および外面を有する内側層を含む。この内側層は、低表面エネルギーポリマーを含む。外面は、酸素化された化学種を実質的に含まない。この流体導管はまた、その内側層の外面と直接接触している第2のポリマー層を含む。この第2のポリマー層は、熱可塑性ポリマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0021】
さらなる実施形態において、流体導管は、内面および外面を有する内側層を含む。この内側層は、低表面エネルギーポリマーを含む。外面は、房状形態を有する。この流体導管は、その内側層の外面と直接接触する第2の層をさらに含む。この第2の層は、熱可塑性ポリマーを含む。このポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する。
【0022】
別の例示的な実施形態において、流体導管を形成する方法は、内側層を供給する工程を包含する。この内側層は、低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する。この方法は、その結合表面と直接接触するように第2のポリマー層を付与する工程をさらに含む。この第2のポリマー層は、熱可塑性ポリマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付図面を参照することにより、本開示がよりよく理解され得、その数多くの特徴および利点が当業者に明らかにされ得る。
【0024】
【図1】例示的なポリマー物品の説明図を含む。
【図2】例示的なホースの説明図を含む。
【図3】別の例示的なホースの説明図を含む。
【図4】表面上の例示的な脱イオン水の液滴の説明図を含む。
【図5】別の表面上の例示的な脱イオン水の液滴の説明図を含む。
【図6】別の表面上の例示的な脱イオン水の液滴の説明図を含む。
【図7】処理された表面についてのFTIRスペクトルの説明図を含む。
【図8】例示的な未処理の表面の説明図を含む。
【図9】別の例示的な処理された表面の説明図を含む。
【図10】別の例示的な処理された表面の説明図を含む。
【図11】別の例示的な処理された表面の説明図を含む。
【図12】別の例示的な処理された表面の説明図を含む。
【図13】処理された表面についてのFTIRスペクトルの説明図を含む。
【図14】別の処理された表面についてのFTIRスペクトルの説明図を含む。
【図15】別の処理された表面についてのFTIRスペクトルの説明図を含む。
【図16】別の処理された表面についてのFTIRスペクトルの説明図を含む。
【図17】UV曝露時間の関数としての剥離強度のグラフを含む。
【図18】UVレーザー処理表面上の例示的な脱イオン水の液滴の説明図を含む。
【図19】例示的なUV処理表面の説明図を含む。
【図20】予め処理表面に結合させたエラストマーの溶解後のその処理表面の説明図を含む。
【図21】別の予め処理表面に結合させたエラストマーの溶解後のその処理表面の説明図を含む。
【図22】処理されたフルオロポリマーから形成されたフィルムの断面の説明図を含む。
【図23】別の処理されたフルオロポリマーから形成されたフィルムの断面の説明図を含む。
【図24】PTFEチューブの処理された表面の説明図を含む。
【0025】
異なる図面における同じ参照符号の使用は、類似または同一の項目を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特定の実施形態において、ポリマー物品は、フルオロポリマーからなる第1の層と、この第1の層と直接接触するエラストマーまたは熱可塑性ポリマーからなる第2の層とを含む。1つの例において、第1の層は、ペルフルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはフッ素化エチレンプロピレン(FEP))などのフルオロポリマーを含む。この第1の層上の結合表面は、指向性エネルギー付与処理で処理される。特に、第2の層は、介在層なしに第1の層に直接結合される。有利には、第1の層と第2の層との間で示される剥離強度は、少なくとも約7ポンド毎インチ(ppi)(例えば、少なくとも10ppi)である。1つの実施形態において、このポリマー物品は、流体導管(例えば、ホース)の形態をとり得る。1つの例において、第1の層は、この流体導管のインナーライナーを構成する。
【0027】
別の例示的な実施形態において、ポリマー物品(例えば、流体導管)を形成する方法は、フルオロポリマーからなる第1の層を供給する工程を包含する。この第1の層は、指向性エネルギー付与処理で処理される。この方法は、第1の層の上に第2の層を付与する工程をさらに包含する。この第2の層は、エラストマーを含み得る。また、この方法は、第1の層の表面を、非反応性イオンビーム処理(例えば、希ガスを用いる非反応性イオンビーム処理)などのイオンビーム処理で処理する工程を包含し得る。1つの例において、希ガスは、アルゴンである。
【0028】
例示的な実施形態において、ポリマー物品は、複数の層(例えば、少なくとも2層)を含み得る。例えば、このポリマー物品は、複数層フィルムまたは複数層流体導管(例えば、チューブまたはホース)であり得る。1つの例において、図1は、少なくとも2つの層を有する例示的なポリマー物品100の説明図を含む。例えば、第1の層102は、第2の層104に結合され得る。特に、第1および第2の層(102、104)は、何らの介在層も(例えば、接着剤層、特に、エポキシベース、シアヌレート、ポリウレタン、もしくはシアノアクリレートベースの接着剤も、堆積させた金属層も)なしに、直接接触している。
【0029】
第1の層102は、第1の表面106および第2の表面108を含み得る。1つの例において、少なくとも第2の表面108は、指向性エネルギー付与処理で処理される。第2の層104は、エラストマーまたは熱可塑性ポリマーを含み、かつ第1の層104の第2の表面108と直接接触する。
【0030】
特定の例において、第1の層102は、低表面エネルギー高分子材料を含む。例示的な低表面エネルギーポリマーとしては、フルオロポリマー、シリコーンポリマー、またはそれらの組み合わせが挙げられ得る。例えば、第1の層102は、フルオロポリマーを含み得る。例示的なフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、またはそれらの任意の組み合わせなどのモノマーから形成されるホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、またはポリマーブレンドからなり得る。例示的なフルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、エチレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー(ETFE)、エチレンおよびクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン(THV)を含むターポリマー、ポリフッ化ビニル(PVF、例えば、Tedlar(商標))、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびエチレンのターポリマー、またはそれらの任意のブレンドもしくは任意のアロイが挙げられる。1つの例において、フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、PFA、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF、例えば、Tedlar(商標))、またはそれらの任意の組み合わせを含む。特に、このフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、PFA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。さらなる実施形態において、フルオロポリマーは、ペルフルオロポリマー(例えば、PTFEまたはFEP)であり得る。特定の例において、フルオロポリマーは、PTFE(例えば、スカイブドPTFE、ペースト押出PTFE、ラム押出PTFE、発泡PTFE、キャストPTFE、または熱収縮性PTFE)を含み得る。
【0031】
さらなる実施形態において、第1の層は、ポリマーマトリックスとしての低表面エネルギーポリマーと充填剤とを含む複合材料からなり得る。例えば、この充填剤としては、固体潤滑剤、セラミックもしくは鉱物、ポリマー充填剤、繊維充填剤、金属粒子充填剤、またはそれらの任意の組み合わせなどが挙げられ得る。例示的な固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、グラフェン、膨張黒鉛、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例示的なセラミックもしくは鉱物としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、フッ化カルシウム、窒化ホウ素、雲母、珪灰石、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、カーボンブラック、顔料、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例示的なポリマー充填剤としては、ポリイミド、Ekonol(登録商標)ポリエステル、ポリベンゾイミダゾール、上に列挙された熱可塑性ポリマーのうちのいずれか、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例示的な繊維としては、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、玄武岩繊維、黒鉛繊維、セラミック繊維、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例示的な金属としては、青銅、銅、ステンレス鋼、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0032】
特定の実施形態において、第1の層102は、少なくとも70重量%のフルオロポリマーを含む。例えば、第1の層102は、少なくとも85重量%のフルオロポリマー(例えば、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、またはさらには100重量%のフルオロポリマー)を含み得る。1つの例において、第1の層102はフルオロポリマーから実質的になり得る。
【0033】
1つの例において、フルオロポリマーは、望ましい機械的特性(例えば、望ましい破断点伸び)を有する。改変されたASTM D638 タイプ5試験方法に基づいて測定される場合、第1の層102の破断点伸びは、少なくとも約250%(例えば、少なくとも約300%、またはさらには少なくとも約400%)であり得る。
【0034】
第1の層102の1つ以上の表面が、指向性エネルギー付与処理で処理され得る。この指向性エネルギー付与処理は、光子、電子またはイオンの形態のエネルギーの指向性の流れにより特徴づけられる処理である。例えば、この指向性エネルギー付与処理は、レーザー(例えば、エキシマレーザー)などのエネルギービーム処理を含み得る。1つの例において、エキシマレーザーは、UVパルスArFエキシマレーザーである。別の例において、指向性エネルギー付与処理は、粒子源(例えば、eビーム源またはイオンビーム源)を用いた処理を含む。特に、粒子源は、実質的に同じ方向に実質的に同じエネルギーをもって移動する粒子を与える。例えば、この処理は、反応性イオンビーム処理または非反応性イオンビーム処理などのイオンビーム処理を含み得る。1つの例において、反応性イオンビーム処理は、反応性ガス(例えば、酸素、窒素、水素、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる)を用いた処理を含む。この反応性ガスは、その反応性ガスに加えて希ガスを含んでもよいし、または含まなくてもよい。特定の例において、非反応性イオンビーム処理は、電離した希ガス(例えば、電離アルゴン)を用いた処理を含み得る。それに対し、この指向性エネルギー付与処理は、コロナ処理ではなく、従来のプラズマ処理でもない。特定の例において、表面108は、第2の層104との接触に先立って処理される。
【0035】
第2の層104は、熱可塑性材料またはエラストマー材料などのポリマー材料を含み得る。本願明細書で使用する場合、熱可塑性材料またはエラストマー材料は、エポキシ、ポリウレタン、シアヌレート、またはシアノアクリレート接着剤を包含しない。例示的なポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ジエンエラストマー、シリコーンポリマー、ポリスチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、ポリ塩化ビニル)、熱可塑性フルオロポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、イオノマー、変性ポリオレフィン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、このポリマーは、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、熱可塑性フルオロポリマー、アクリレート、またはそれらの任意の組み合わせなどの熱可塑性ポリマーを含み得る。1つの例において、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンとのコポリマー、プロピレンとα−オレフィンとのコポリマー、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。別の例において、アクリレートは、エチレンメタクリレート、エチレンブチルアクリレート、ポリメタクリル酸メチル、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらなる例において、熱可塑性フルオロポリマーは、PVDFまたは変性PVDF(例えば、商品名Kynar(商標)またはKynarFlex(商標)で入手可能なポリマー)、ETFE、FEP、PFA、THV、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の例において、ポリマー材料は、エラストマーである。1つの例において、エラストマーは、ジエンエラストマー、熱可塑性ウレタン、熱可塑性オレフィンエラストマー、シリコーンエラストマー、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。特に、このエラストマーは、硬化性エラストマーであり得る。こうした熱可塑性ポリマーまたはエラストマーのうちのいずれか1つは、添加剤または変性により粘着性にされ得る。
【0036】
特定の例において、エラストマーは、部分的にまたは完全に水素化され得るジエンエラストマーを含む。別の実施形態において、エラストマー材料は、架橋性弾性ポリマーを含む。例えば、このエラストマー材料は、ジエンエラストマーを含み得る。特定の例において、エラストマー材料は、ジエンエラストマーとポリオレフィンとのブレンドを含み得る。ジエンエラストマーは、少なくとも1種のジエンモノマーから形成されるコポリマーであり得る。例えば、このジエンエラストマーは、エチレン、プロピレンおよびジエンモノマーのコポリマー(EPDM)であり得る。例示的なジエンモノマーとしては、共役ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなど);5個〜約25個の炭素原子を含む非共役ジエン(例えば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエンなど);環状ジエン(例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンなど);ビニル環状エン(例えば、1−ビニル−1−シクロペンテン、1−ビニル−1−シクロヘキセンなど);アルキルビシクロノナジエン(例えば、3−メチルビシクロ−(4,2,1)−ノナ−3,7−ジエンなど);インデン(例えば、メチルテトラヒドロインデンなど);アルケニルノルボルネン(例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、5−(1,5−ヘキサジエニル)−2−ノルボルネン、5−(3,7−オクタジエニル)−2−ノルボルネンなど);トリシクロジエン(例えば、3−メチルトリシクロ(5,2,1,0,6)−デカ−3,8−ジエンなど);またはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。特定の実施形態において、ジエンは、非共役ジエンを含む。別の実施形態において、ジエンエラストマーは、アルケニルノルボルネンを含む。ジエンエラストマーは、そのジエンエラストマーの総重量に基づき、例えば、そのポリマーの約63.0重量%〜約95.0重量%のエチレン、約5.0重量%〜約37.0重量%のプロピレン、および約0.2重量%〜約15.0重量%のジエンモノマーを含み得る。特定の例において、エチレン含量はジエンエラストマーの約70.0重量%〜約90.0重量%であり、プロピレンは約17.0重量%〜約31.0重量%であり、ジエンモノマーは約2.0重量%〜約10.0重量%である。架橋の前には、このジエンエラストマーは、約800psi〜約1,800psi(例えば、約900psi〜約1,600psi)の未処理引張強さを有し得る。この未架橋のジエンエラストマーは、少なくとも約600%の破断点伸びを有し得る。概して、このジエンエラストマーは、少量のジエンモノマー(例えば、ジシクロペンタジエン、エチルノルボルネン、メチルノルボルネン、非共役ヘキサジエンなど)を含み、典型的に、約50,000〜約100,000の数平均分子量を有する。例示的なジエンエラストマーは、Dow Dupontから商品名Nordel(商標)で市販されている。ジエンエラストマーはまた、ジエンのコポリマー(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、もしくは他のジエンコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせ)からなり得る。
【0037】
ジエンエラストマーとのブレンドとして組み込まれる場合、そのブレンドのポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、オクテン、またはそれらの任意の組み合わせなどのモノマーから形成されるホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、アロイ、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例示的なポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンブテンコポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンオクテンコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の例において、このポリオレフィンは、高密度ポリエチレンを含む。別の例において、このポリオレフィンは、ポリプロピレンを含む。さらなる例において、このポリオレフィンは、エチレンオクテンコポリマーを含む。特定の実施形態において、このポリオレフィンは、カルボン酸官能基変性ポリオレフィンなどの変性ポリオレフィンではなく、特にエチレン酢酸ビニルではない。また、このポリオレフィンは、ジエンモノマーから形成されない。特定の例において、このポリオレフィンは、ある程度の結晶化度を有する。例えば、このポリオレフィンは、少なくとも約35%の結晶化度を有し得る。特定の例において、このポリオレフィンは、少なくとも約50%の結晶化度(例えば、少なくとも約60%または少なくとも約70%の結晶化度)を有し得る。あるいは、このポリオレフィンは、35%以下の結晶化度を有する低結晶化度ポリオレフィンであり得る。低結晶化度ポリオレフィンは、特定の用途において透明度を改良し得る。例示的な市販のポリオレフィンとしては、Equistar 8540、エチレンオクテンコポリマー;Equistar GA−502−024、LLDPE;Dow DMDA−8904NT 7、HDPE;Basell Pro−Fax SR275M、ランダムポリプロピレンコポリマー;Dow 7C50、ブロックPPコポリマー;またはかつてDupont Dowにより商品名Engageで販売されていた製品が挙げられる。
【0038】
1つの例において、ジエンエラストマーは、ポリオレフィンとブレンドされ得る。例えば、このブレンドは、約40.0重量%以下のポリオレフィン(例えば、約30.0重量%以下のポリオレフィン)を含み得る。例えば、このブレンドは、約20.0重量%以下(例えば、10.0重量%以下)のポリオレフィンを含み得る。特定の例において、このブレンドは、約5.0重量%〜約30.0重量%(例えば、約10.0重量%〜約30.0重量%、約10.0重量%〜約25.0重量%、または約10.0重量%〜約20.0重量%)のポリオレフィンを含む。あるいは、上で特定されたポリオレフィンは、ブレンドせずに使用され得、第2の層104のポリマー含量の100%を構成し得る。
【0039】
さらなる例において、エラストマーは、EPDMおよびポリオレフィンのコポリマーまたは架橋ブレンドを含む。例えば、例示的な市販のEPDM/ポリオレフィンブレンドとしては、商品名Santoprene(商標)で入手可能(Advanced Elastomer Systemsから入手可能)なポリマーが挙げられる。
【0040】
特定の例において、エラストマー(例えば、上記ブレンド)は粘着性である。粘着性エラストマーについては、化学的に活性な官能基をエラストマー中のポリマー鎖上にグラフトすることか、または別個の化学成分をエラストマーのマトリックス中に組み込むことのいずれかによるエラストマーの変性が、多層物品におけるエラストマーと支持体との間の結合の増強につながる。例えば、このブレンドは、粘着性Santoprene(商標)であり得る。
【0041】
さらなる例において、エラストマーは、スチレンベースのエラストマーを含み得る。例えば、このエラストマーは、ポリスチレンまたはスチレンコポリマー(例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンポリマー(SEBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、またはそのブレンドもしくはコポリマー)を含み得る。特定の例において、このエラストマーは、SEBSとポリプロピレンとのブレンド(例えば、Saint−Gobain Performance Plastics Corporationから入手可能なC−Flex(登録商標))を含む。
【0042】
例示的な実施形態において、エラストマーは、架橋により硬化され得る。特定の例において、このエラストマーは、熱処理により、または放射により(例えば、x線放射、γ放射、紫外電磁放射、可視光放射、電子ビーム(eビーム)放射、またはそれらの任意の組み合わせを使用して)架橋可能であり得る。紫外(UV)放射は、170nm〜400nmの範囲(例えば、170nm〜220nmの範囲)の波長または複数の波長の放射を含み得る。電離放射は、イオンを発生させ得る高エネルギー放射を含み、電子ビーム(eビーム)放射、γ放射、およびx線放射を含む。特定の例において、eビーム電離放射は、バンデグラーフ(Van de Graaff)発電機、電子加速器、またはx線により発生される電子ビームを含む。代替的な実施形態において、エラストマーは、熱的方法により架橋可能であり得る。さらなる例において、エラストマーは、化学反応(例えば、シラン架橋剤と水との間の反応)により架橋可能であり得る。その性質および硬化方法は、架橋剤、触媒、および開始剤の存在により影響され得る。
【0043】
例示的な実施形態において、エラストマー材料は、シリコーン配合物である。このシリコーン配合物は、例えば、非極性シリコーンポリマーを使用して形成され得る。1つの例において、このシリコーンポリマーは、ポリアルキルシロキサン(例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジプロピルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルプロピルシロキサン、またはそれらの組合せなどの前駆体からなるシリコーンポリマー)を含み得る。特定の実施形態において、このポリアルキルシロキサンは、ポリジアルキルシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))を含む。概して、このシリコーンポリマーは非極性であり、ハロゲン化物官能基(例えば、塩素およびフッ素)を含まず、かつフェニル官能基を含まない。あるいは、このシリコーンポリマーは、ハロゲン化物官能基またはフェニル官能基を含み得る。例えば、このシリコーンポリマーは、フルオロシリコーンまたはフェニルシリコーンを含み得る。特定の例において、シリコーンポリマーは、フルオロシリコーンを含み得る。
【0044】
1つの実施形態において、シリコーンポリマーは、白金触媒シリコーン配合物である。あるいは、シリコーンポリマーは、過酸化物触媒シリコーン配合物であり得る。このシリコーンポリマーは、液状シリコーンゴム(LSR)または高粘稠度ゴム状物質(HCR)であり得る。特定の実施形態において、シリコーンポリマーは、白金触媒LSRである。さらなる実施形態において、シリコーンポリマーは、2液型反応系から形成されるLSRである。LSRの特定の実施形態としては、Wacker Silicone(Adrian,MI)によるWacker 3003、およびRhodia Silicones(Ventura,CA)によるRhodia 4360が挙げられる。別の例において、シリコーンポリマーは、GE Plasticsから入手可能なGE 94506 HCRなどのHCRである。
【0045】
1つの実施形態において、粘着性シリコーンポリマーが使用され得る。粘着性シリコーンポリマーは、典型的に、従来のシリコーンと比べて、支持体への改良された接着性を有する。粘着性シリコーンポリマーの特定の実施形態としては、GE Plasticsから入手可能なGE LIMS 8040、および信越化学から入手可能なKE2090−40が挙げられる。粘着性シリコーンにおいて、化学的に活性な官能基をポリシロキサン鎖上にグラフトすることか、または別個の化学成分をシリコーンゴムのマトリックス中に組み込むことのいずれかによるシロキサン網状構造の変性物(modification)が、一般に、加硫プロセスの間に所与の支持体上の表面官能基と反応し、これが多層物品中のシリコーンゴムとこの特定の支持体との間のより良好な結合特性につながる。
【0046】
特定の実施形態において、エラストマーを含む第2の層は、20〜80の範囲(例えば、40〜75の範囲、またはさらには40〜50の範囲)のショアーA押込硬度(Shore A durometer)を有する。第2の層がシリコーン配合物を含む場合、このシリコーンポリマーカバーのショアーA押込硬度(ショアーA)は、約75未満(例えば、約20〜約50、約30〜約50、または約40〜約50)であり得る。
【0047】
別の例において、第2の層の材料は、少なくとも200%(例えば、少なくとも300%、少なくとも350%、またはさらには少なくとも500%)の破断点伸びを有する。この材料は、1000%以下の破断点伸びを有し得る。
【0048】
さらなる例において、第2の層の材料は、ASTM D412に従って測定される場合に、100ポンド毎平方インチ(psi)〜3000psiの範囲(例えば、150psi〜2000psiの範囲、またはさらには500psi〜1000psiの範囲)の引張強さを有し得る。さらなる例において、第2の層の材料は、10psi〜1000psiの範囲(例えば、35psi〜500psiの範囲、またはさらには50psi〜350psiの範囲)の100%引張モジュラスを有し得る。
【0049】
例示的な実施形態において、エラストマーは、架橋剤、光開始剤、充填剤、可塑剤、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。あるいは、エラストマーは、架橋剤も、光開始剤も、充填剤も、可塑剤も含まなくてもよい。特に、エラストマーは、光開始剤も架橋剤も含まなくてもよい。
【0050】
架橋を促進するために、エラストマーは、光開始剤または増感剤(sensibilizer)組成物を含み得る。例えば、照射の形態として紫外放射が企図される場合、または照射の形態としてeビーム放射が企図される場合、この材料は、架橋効率(すなわち、放射の単位線量当たりの架橋度)を増大させるために光開始剤を含み得る。
【0051】
エラストマーの架橋はまた、化学架橋剤(例えば、過酸化物、アミン、シラン、硫黄、またはそれらの任意の組み合わせ)により促進され得る。例示的な実施形態において、このブレンドは、固体状態の形態のポリマーと架橋剤とをドライブレンドすることにより、すなわち粉末形態で、調製され得る。あるいは、この材料は、液体形態で、不活性な粉末担体に吸着させる、またはコーティングされたペレットを調製するなどして調製され得る。この架橋剤は熱的に活性化可能であり得る。
【0052】
図1に戻り、第2の層104は、第1の層102よりも大きい厚さを有し得る。例えば、構築物100の層の全厚さは少なくとも3ミル〜約1000ミル(例えば、約3ミル〜約500ミル、またはさらには約3ミル〜約100ミル)であり得る。1つの実施形態において、第1の層102は、約0.1ミル〜約100ミルの範囲(例えば、約0.5ミル〜約100ミルの範囲、約1ミル〜約100ミルの範囲、約1ミル〜約50ミルの範囲、約1ミル〜約10ミルの範囲、またはさらには約1ミル〜約2ミルの範囲)の厚さを有する。第2の層104および任意選択による他の層が、その差分を構成し得る。1つの例において、第2の層104は、0.1ミル〜100ミルの範囲(例えば、約1ミル〜約100ミルの範囲、約2ミル〜約50ミルの範囲、またはさらには約5ミル〜約50ミルの範囲)の厚さを有し得る。代替的な例において、第2の層は、約0.3ミル〜約1.5ミルの範囲(例えば、約0.3ミル〜約1.0ミルの範囲)の厚さを有し得る。さらなる例において、第2の層104の厚さの第1の層102の厚さに対する比は、少なくとも1.0(例えば、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも5.0、またはさらには少なくとも10.0)である。
【0053】
図1には2層しか図示されていないが、この構築物は、付加的な層(図示せず)をさらに含み得る。例えば、付加的なエラストマー層が、第2の層104の表面110上に配置され得る。あるいは、強化層などの付加的な層が、第2の層104の表面110に近接して配置された付加的な層の内部または間に組み込まれ得る。例示的な強化層は、ポリエステル、接着性改変ポリエステル(adhesion modified polyester)、ポリアミド、ポリアラミド、ガラス、金属またはそれらの組み合わせなどの材料からなる、ワイヤ、繊維、布地(例えば、織布)またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0054】
特定の実施形態において、表面110は、硬質材料(例えば、金属、セラミック、硬質ポリマー、またはそれらの組み合わせ)と接し得る。例えば、処理されたフルオロポリマー層(例えば、処理されたPTFE層)が、熱可塑性フルオロポリマー(例えば、ETFE)に結合され得、この熱可塑性フルオロポリマーが、金属またはセラミックの支持体に溶融結合され得る。別の例において、処理されたフルオロポリマー層が、熱可塑性エラストマー(例えば、アクリレート、アセテート、または熱可塑性ポリウレタン)に結合され得、さらにはこの熱可塑性エラストマーが、支持体(例えば、金属、セラミック、硬質ポリマー、またはそれらの組み合わせ)に結合され得る。
【0055】
図1はほぼ平面のポリマー物品の説明図を含むが、このポリマー物品は、代替的に、フィルム、ワッシャー、または流体導管の形態をとり得る。例えば、ポリマー物品は、ラミネートなどのフィルムの形態、または隔壁(septa)もしくはワッシャーなどの平面物品の形態をとり得る。別の例において、ポリマー物品は、チューブ、パイプ、ホースなど、より具体的には、フレキシブルチューブ、トランスファーチューブ、ポンプチューブ、耐薬品性チューブ、高純度チューブ、滑腔チューブ(smooth bore tubing)、フルオロポリマーラインドパイプ(fluoropolymer lined pipe)もしくは硬質管、またはそれらの任意の組み合わせなどの流体導管の形態をとり得る。図2に図示されるように、流体導管200は、インナーライナー204およびこのインナーライナー204に重なり直接接触する外側層202を含む。特に、インナーライナー204は、低表面エネルギーを有する内面212を構成し得る。また、インナーライナー204は、指向性エネルギー付与処理で処理された処理結合表面208を含み得る。表面208は、エラストマー(例えば、上記されたエラストマー)からなり得る外側層202に直接結合される。特定の例において、インナーライナー204は、フルオロポリマーからなる。
【0056】
さらなる例において、図3は、2層より多くの層を含む流体導管300の説明図を含む。例えば、内側層304は、エラストマーからなる中間層306と直接接触し得る。外側層302は、中間層306を取り囲み得る。特定の例において、内側層304は、低表面エネルギーを有する流体導管の内面312を構成する。中間層306は、内側層304に直接結合され得る。特に、中間層306は、介在層なしに(例えば、接着剤層なしに)内側層304に直接結合される。例えば、中間層306は、介在する接着剤層も結合増強層もなしに内側層304と直接接触する熱可塑性層またはエラストマー層である。中間層306の表面310で、外側層302は、中間層306を取り囲むように結合され得る。
【0057】
図1に関して一般に記載された層の厚さが当てはまるが、流体導管300の全厚さは、3ミルと1000ミルの間(例えば、3ミル〜500ミル、またはさらには3ミル〜100ミル)であり得る。インナーライナー302は、0.5ミル〜50ミル(例えば、0.5ミル〜20ミル、1ミル〜10ミル、またはさらには1ミル〜2ミル)の範囲の厚さを有し得、中間層および外側層がその差分を構成し得る。
【0058】
特定の実施形態において、ポリマー物品(例えば、流体導管)は、フルオロポリマーまたは他の低表面エネルギーポリマーを含む第1のポリマー層を供給する工程、および第1のポリマー層の結合表面に直接(例えば、介在する接着剤層も結合増強層もなしに)接触するように第2のポリマー層を付与する工程により形成される。1つの例において、第1のポリマー層の結合表面は、指向性エネルギー付与処理を用いて調製される。第2のポリマー層は、エラストマーまたは熱可塑性ポリマーを含む。
【0059】
1つの実施形態において、指向性エネルギー付与処理は、希ガスなどの非反応性ガスから誘導されるイオンビームを用いてポリマー層の結合表面を調製することを含む。例えば、この希ガスとしては、アルゴン、ネオン、ヘリウム、クリプトン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。特に、非反応性ガスは、反応性ガス(例えば、窒素、酸素、水素、アンモニア、ギ酸、酢酸、エタノール、アセチレン、エチレンまたはそれらの任意の組み合わせ)を含まない。特に、非反応性イオンビーム処理は、0.1mTorr〜100mTorrの範囲(例えば、0.5mTorr〜10mTorr、またはさらには0.5mTorr〜5mTorrの範囲)の真空下で行われる。また、非反応性イオンビーム処理は、330eV〜50keVの範囲(例えば、400eV〜10keVの範囲、667eV〜5000eVの範囲、またはさらには1330eV〜2000eVの範囲、例えば、およそ1667eV)のイオンエネルギー、および20mC/cm〜150mC/cmの範囲(例えば、60mC/cm〜97mC/cmの範囲、70mC/cm〜97mC/cmの範囲、またはさらには80mC/cm〜88mC/cmの範囲)のイオン線量を使用して、5秒〜15分の範囲(例えば、5秒〜10分の範囲、5秒〜1分の範囲、5秒〜30秒の範囲、またはさらにはおよそ20秒)の時間にわたって行われる。結果として生ずる表面は、低い表面エネルギーおよび高い水接触角を有し得、かつ低濃度の酸素または窒素含有表面化学種を有し得る。しかもなお、この表面は、フルオロポリマー層とエラストマーまたは熱可塑性層との間の強固な結合をもたらす。
【0060】
フルオロポリマーまたは低表面エネルギーポリマー層を処理することに加え、この方法は、フルオロポリマーまたは他の低表面エネルギーポリマー層の上にエラストマーまたは熱可塑性物質を押出す工程と、任意選択的に、そのエラストマーを硬化させる工程とをさらに包含し得る。例えば、第1の層の上に第2の層を付与する工程は、フルオロポリマー層の結合表面と直接接触するようにエラストマーまたは熱可塑性物質を押出す工程を含み得る。別の例において、エラストマーまたは熱可塑性物質は、処理された低表面エネルギーポリマー層の上に射出成形され得る。さらなる例において、低表面エネルギーポリマー層は、マンドレル上に形成され、そのマンドレル上で処理され、そしてエラストマーまたは熱可塑性物質層がそのマンドレル上の低表面エネルギーポリマー層の上に押出され得る。さらなる例において、エラストマーまたは熱可塑性物質は、処理されたフィルム層の上に押出され得るか、または処理されたフィルム層に積層され得る。また、エラストマーは、硬化性エラストマーであり得、したがって、様々な化学的技術または照射技術を使用して適所で硬化され得る。
【0061】
例示的な実施形態において、このエラストマーは、その性質およびそのエラストマーに付随する添加剤に依存して、架橋により硬化され得る。1つの例において、エラストマーは、熱処理により、または放射により(例えば、x線放射、γ放射、紫外電磁放射、可視光放射、電子ビーム(eビーム)放射、またはそれらの任意の組み合わせを使用して)架橋可能であり得る。紫外(UV)放射は、170nm〜400nmの範囲(例えば、170nm〜220nmの範囲)の波長または複数の波長の放射を包含し得る。電離放射は、イオンを発生させ得る高エネルギー放射を含み、電子ビーム(eビーム)放射、γ放射、およびx線放射を含む。特定の例において、eビーム電離放射は、バンデグラーフ発電機、電子加速器、またはx線により発生される電子ビームを含む。代替的な実施形態において、ジエンエラストマーは、熱的方法により架橋可能であり得る。さらなる例において、ジエンエラストマーは、化学反応(例えば、シラン架橋剤と水との間の反応)により架橋可能であり得る。
【0062】
結果として生ずるポリマー物品は、低い表面エネルギー、高い水接触角、およびごく少ない酸素または窒素含有表面化学種を示すと同時に、高い剥離強度を有する。例えば、流体導管などのポリマー物品は、望ましい剥離強度を有し得る。剥離強度は、ホースの形成後であって後硬化処理前に測定され得るか、または後硬化処理後(例えば、熱処理またはさらなる照射処理後)に測定され得る。
【0063】
概して、ポリマー物品の剥離強度は、少なくとも2.5ppi(例えば、少なくとも5ppi、少なくとも7ppi、またはさらには少なくとも10ポンド毎インチ(ppi))である。例えば、この剥離強度は、少なくとも14ppi(例えば、少なくとも16ppi、少なくとも20ppi、またはさらには少なくとも22ppi)であり得る。特定の例において、剥離強度は、少なくとも25ppi(例えば、少なくとも28ppi、少なくとも30ppi、またはさらには少なくとも50ppi)である。また、このポリマー物品は、後硬化処理後(例えば、後硬化熱処理または照射処理後)に剥離強度を維持し、特定の例において、増大した剥離強度を示す。1つの例において、後硬化剥離強度は、少なくとも7ppi(例えば、少なくとも10ppi、少なくとも14ppi、少なくとも16ppi、少なくとも20ppi、少なくとも25ppi、またはさらには少なくとも50ppi)である。特定の熱可塑性ポリマーは、未処理表面上に形成される場合には、不良結合および非常に低い剥離強度を示すのであるが、驚くべきことに、そのような熱可塑性ポリマーが、指向性エネルギー付与処理で処理された低表面エネルギーポリマー層には結合する。このような熱可塑性ポリマーは、少なくとも2.5ppi(例えば、少なくとも5ppi)の剥離強度を示す。剥離強度試験の際の凝集破壊は、その結合の剥離強度が、凝集破壊の時点での測定剥離強度よりも高いということを意味する。
【0064】
さらに、ポリマー物品は、UV放射への曝露後に高い剥離強度を示し得る。例えば、このポリマー物品は、50%以下(例えば、30%以下、25%以下、またはさらには20%以下)の耐久性指数(実施例9におけると同様に、UV放射への曝露後の剥離強度の低下百分率として定義される)を示し得る。
【0065】
また、ポリマー物品の低表面エネルギーポリマー層は、望ましくは、未処理の低表面エネルギーポリマーの水接触角よりも大きい、高水接触角を示し得る。例えば、図4は、未処理のスカイブドPTFEシート上での水の液滴の説明図を含む。図示されるように、水接触角は、典型的には115°である。この接触角は、水の液滴と水平面との接触点における、水平面と水の液滴の表面に対して接線方向の線との間に形成される角である。典型的に、接触角は、液滴を通って水平面と接線との間で測定される。一般に、化学エッチ処理方法は水接触角を減少させるが、これはより高い表面エネルギーを意味する。図5は、ナトリウムアンモニアエッチ液で処理されたスカイブドPTFEの説明図を含む。水接触角は、およそ40°である。これに対し、非反応性イオンビーム処理で処理されたPTFE表面は、図6に図示されるように、115°より大きい水接触角を示す。さらなる例において、UVレーザー処理で処理されたPTFE表面は、図18に図示されるように、115°より大きい(例えば、少なくとも145°)水接触角を示す。特に、処理された低表面エネルギーポリマー層の水接触角は、少なくとも120°(例えば、少なくとも125°、少なくとも130°、少なくとも140°、またはさらには150°以上)であり得る。1つの例において、この処理は、低表面エネルギーポリマー層の水接触角を、少なくとも5°(例えば、少なくとも10°、少なくとも15°、少なくとも20°、またはさらには少なくとも25°)増加させる。さらに、接触指数は、未処理の表面を基準とした水静的接触角の変化として定義される。そのようなものとして、この低表面エネルギーポリマー層は、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、またはさらには少なくとも25%)の接触指数を有し得る。高い水接触角は、疎水性を意味する。
【0066】
疎水性は、表面上の親水性化学種の不在により、または表面粗さにより、またはそれらの組み合わせによりもたらされ得る。例えば、処理された表面は、酸素または窒素を含む化学種および副生物を低濃度で含み得る。1つの例において、この表面は、酸素化された化学種を実質的に含み得ない。特に、x線光電子分光法(XPS)によって測定される場合、フルオロポリマー層の表面は、5%以下(原子濃度)の酸素化学種(例えば、3.4%以下、2%以下、またはさらには1.5%以下の酸素化学種)を有し得る。また、フルオロポリマー層の表面は、窒素を組み込んでいる化学種を含み得ない。例えば、フルオロポリマー層の表面は、2%以下(原子濃度)(例えば、1.5%以下、またはさらには1%以下)の窒素化学種含量を有し得る。
【0067】
表面化学種のこのような欠如は、化学エッチ処理PTFE試料および非反応性イオンビーム試料のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)の説明図を含む図7によってさらに図示される。線702は、非反応性イオンビーム処理試料のFTIRスペクトルを表し、線704は、ナトリウムアンモニアでエッチングされた表面のFTIRスペクトルを示す。両方のグラフがC−F結合を示すピーク710を示しているが、ナトリウムアンモニアでエッチングされた試料のみがC=O伸縮および共役C=C伸縮を示すピーク706を示す。また、ナトリウムアンモニアでエッチングされたFTIRスペクトル704は、−OH水素伸縮を示すピーク708を含む。ナトリウムアンモニアでエッチングされた試料のFTIRスペクトル704とは対照的に、FTIRスペクトル702には、顕著に、OH基、C=O基、またはアルケニル基に関連するピークがない。
【0068】
また、指向性エネルギー付与処理で処理された表面は、機械的結合を促進する表面特徴を有する望ましい形態を有する。1つの例において、イオンビーム処理された表面は、未処理のフルオロポリマー表面および化学的にエッチングされたフルオロポリマー表面と比較して独特の表面形態を示す。図8に図示されるように、未処理のスカイブドPTFE表面は、断続的な斑点があるだけの比較的平滑な傷のない表面を示す。図9に図示されるように、化学的にエッチングされたPTFE(例えば、ナトリウムアンモニアエッチ液でエッチングされたスカイブドPTFE)は、痘痕状の窪みを呈する形態を示す。それに対し、図10、図11、および図12は、例示的なイオンビームでエッチングされたスカイブドPTFE表面の説明図を含む。イオンビーム処理された表面は、複数の比較的丈の高いフィラメント様構造物がフルオロポリマー材料の基部から延びる、房状形態を示す。特に、このフィラメント様構造物は、100nm〜10.0μmの範囲(例えば、100nm〜3.0μmの範囲)の長さを有し得る。別の例において、UVレーザー処理された表面は、図19に図示されるように、海綿様構造を有する。
【0069】
1つの実施形態において、処理された表面は、少なくとも4μm(例えば、少なくとも6μm、またはさらには少なくとも8μm)の粗さ(Rz)を有し得る。粗さ(Rz)は、5つの最も高い山頂と5つの最も深い窪みとの間の距離の平均である。その山および谷を見出すために、3×3の区域が考慮される。特定の例において、粗さ(Rz)は少なくとも10μm(例えば、少なくとも20μm、またはさらには少なくとも50μm)であり得る。特に、処理された表面は、最初の材料表面に対して少なくとも2の粗さ指数を有する形態を有し得る。粗さ指数は、処理された表面の粗さ(Rz)と未処理の表面の粗さ(Rz)の比である。1つの例において、処理された表面は、少なくとも3(例えば、少なくとも4、少なくとも10、またはさらには少なくとも20)の粗さ指数を示す。別の例において、処理された表面は、少なくとも4μm(例えば、少なくとも6μm、またはさらには少なくとも8μm)の粗さ(PV)を有し得る。粗さ(PV)は、試験表面上の最低点と最高点との間の距離である。特定の例において、粗さ(PV)は、少なくとも10μm(例えば、少なくとも20μm、またはさらには少なくとも50μm)であり得る。さらなる例において、粗さ(Ra)は、少なくとも0.3μm(例えば、少なくとも0.4μm)である。例えば、粗さ(Ra)は、少なくとも1μm(例えば、少なくとも2μm、またはさらには少なくとも4μm)であり得る。粗さ(Ra)は、その表面の算術平均偏差である。粗さは、Zygo(登録商標)NewView 6200/6300 White Light Interferometerを用いて測定され得る。
【0070】
驚くべきことに、上記の方法によって形成される上記のポリマー物品は、先行技術の構築物においてこれまで認められていなかった技術的利点を示すということが見出された。上の記載に従って形成されるポリマー物品の特定の実施形態は、介在する接着剤層も結合増強層もなしに、高い剥離強度を示す。特に、一部の実施形態は、PTFEの表面上の高い水接触角または付加的な化学種の低い測定値を有すると同時に、高い剥離強度を示す。また、一部の実施形態において見出される副生物表面化学種の実質的な不在は、例えば、流体導管を通り抜ける流体の低汚染をもたらす。特に、化学的に反応性の処理によって形成されるそうした表面化学種は、ホースから、流体導管を通り抜ける流体中に浸出し得、その流体を汚染し得る。例えば、万が一、そのようなホースが産業において(例えば、食品加工または医薬品製造のために)使用された場合には、部分的に酸素化およびフッ素化された化学種が、個体に対する健康上の危険を引き起こし得る。
【0071】
こうしたポリマー物品および方法は、危険な表面化学種の形成につながり得るか、または低表面エネルギーポリマーの水接触角を減少させ得る表面化学処理を促す先行技術の教示と対照をなす。それに対し、本発明の実施形態は、接着剤(例えば、接着性エポキシ、シアヌレート、シアノアクリレート、または接着性ポリウレタン)なしでの高い剥離強度により実証されるような望ましい結合を示すと同時に、高い水接触角および少ない親水性表面化学種を有する表面を含む。
【実施例】
【0072】
実施例1
試料を、非反応性イオンビーム表面源を用いて処理されたスカイブドPTFEから調製する。コントロール試料を未処理のままとし、比較試料を液体アンモニア中ナトリウム(Na−NH)エッチ液で処理する。
【0073】
スカイブドPTFE試料の表面処理は、PTFE試料の表面を、0.5mTorr〜50mTorrの真空下で、330eV〜5000eVの範囲のイオンエネルギー、および20mC/cm〜150mC/cmの範囲のイオン線量にて、5秒〜30秒の範囲の時間にわたり、アルゴンイオンビームに曝露することを含む。
【0074】
比較試料を、従来のNa−NHエッチ手順を用いて調製する。エッチ溶液は、液体アンモニア1ガロン当たり40gのナトリウムを含む。
【0075】
この試料、コントロール試料および比較試料を、x線電子分光法(XPS)を用いて分析して、表面化学種の原子濃度を測定する。表1は、コントロール試料および比較試料についての濃度に加えて、試料についての原子濃度の範囲を示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示されるように、イオンビーム処理試料は、未処理コントロール試料よりも、僅かに高い炭素濃度を有し、僅かに低いフッ素濃度を有する。また、酸素濃度は、未処理コントロール試料の酸素濃度よりも僅かに高い。それに対し、比較試料は、はるかに高い炭素濃度を示し、低いフッ素濃度および高い酸素濃度を示す。
【0078】
試料および比較試料を、さらに、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を用いて試験する。図7に図示されるように、試料および比較試料の両方が、C−F結合を示す顕著なピーク710を示す。しかしながら、比較試料のスペクトル704は、C=O結合およびC=C結合を示すおよそ1750cm−1および1500cm−1のピーク706を含み、−OH伸縮を示すおよそ2900cm−1のピーク708を含む。それに対し、試験試料のスペクトル702は、そうした結合の存在を示さない。
【0079】
試料、コントロール試料、および比較試料を、接触角について試験する。脱イオン水の液滴を、試料、コントロール試料、および比較試料の表面に置く。この接触角は、その水の液滴が置かれている水平面と、液滴がその面と接する点で液滴の表面に沿って接線方向に延びる線との間に規定される、その液滴を通して測定される角度である。水接触角の測定を、VCA 2500XE Video Contact Angle System(AST,Inc.)を用いて行った。本研究において示される全ての接触角を測定するために使用された上記の方法は、脱イオン水を使用する静的固着滴法(static sessile drop method)と呼ばれる方法である。図4に図示されるように、コントロール試料は、115°の水接触角を示す。図5に図示されるように、比較試料は40°の水接触角を有し、図6に図示されるように、イオンビーム処理試料は150°の水接触角を有する。表2は、それらの水接触角をまとめたものである。
【0080】
【表2】

【0081】
試料、コントロール試料、および比較試料を、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて試験する。図8に図示されるように、コントロール試料は、概して平滑であり、少しの斑点しか示さない。図9に図示されたNa−NHでエッチングされた比較試料は、痘痕状の窪みを呈する表面を示す。それに対し、イオンビーム処理試料は、図10に図示されるように、複数のフィラメント様表面構造物を含む房状形態を示す。
【0082】
実施例2
試料を、処理スカイブドPTFEおよび粘着性Santoprene(商標)8291−65TBを用いて調製する。スカイブドPTFEを、非反応性イオンビーム処理、Chemlock処理、Na−ナフタレン処理、またはNa−NH処理のうちの1つを用いて調製する。1つの試料を未処理とする。これらの試料を、接着試験を用いて剥離強度について試験する。
【0083】
これらの試料を、インサート成形法により調製する。Santoprene(商標)のスラブを、処理されたPTFE層の上に置き、2mmのスラブ型中で150℃にて3分間圧縮成形する。第2の組の試料を上記のように調製し、成形後さらに、135℃にて75分間の熱処理を用いて後硬化する。
【0084】
1インチ×5インチの試験片を、結果として生ずる試料から切り取る。Santoprene(商標)と処理されたPTFEとの間の結合強度を評価するために、ASTM D−413の手順に従い、180°剥離試験を実施する。この試験を、Instron 4465機で行う。試料の両層を、2つのInstronグリップに固定する。上のグリップが2インチ毎分の速度で垂直方向に横断して、処理PTFE支持体からSantoprene(商標)を180°引き剥がす。表3は、その剥離強度を示す。
【0085】
【表3】

【0086】
2つのイオンビーム処理試料は、およそ20ppiの剥離強度を示す。これは、Na−NH処理試料の剥離強度に匹敵し、その他の試料よりもはるかに高い。
【0087】
実施例3
試料を、イオンビーム処理されたPTFEまたはNa−NH処理されたPTFEから選択される支持体を用いて調製する。この支持体を、C−Flex(登録商標)082、EPDM(Nordel(商標)IP 3702P)、または熱可塑性ポリウレタン(TPU,Estane(登録商標)580−70)から選択されるエラストマーと密着させる。これらの試料を、上記の実施例2における手順の概説に従って、剥離強度について試験する。表4は、これらの試料の剥離強度を示す。
【0088】
【表4】

【0089】
表4に示されるように、イオンビーム処理支持体およびTPUエラストマーを含む試料は、Na−NH処理支持体およびTPUを含む試料と類似の剥離強度を示す。しかしながら、イオンビーム処理支持体を含む試料は、C−Flex(登録商標)またはNordel(商標)EPDMと結合させた場合、Na−NH処理支持体を用いた類似の試料よりもはるかに高い剥離強度を示す。
【0090】
実施例4
試料を、イオンビーム処理PTFE支持体を用い、粘着性LSR(Elastosil(登録商標)LR 3003/50)または粘着性HCR(Sanitech 50)から選択されるシリコーンエラストマーを用いて調製する。これらの試料を、実施例2に関連して記載されたように後硬化する。剥離強度を、実施例2に関連して上記された手順を用いて試験する。表5に示されるように、これらの試料の剥離強度は少なくとも20ppiであり、28.0ppiまたはそれ以上もの高さにさえなる。
【0091】
【表5】

【0092】
実施例5
試料を、イオンビーム処理PTFE支持体を用い、非粘着性LSR、非粘着性HCR、粘着性HCR(Sanitech 50)、非粘着性Santoprene(商標)65MED、粘着性Santoprene(商標)8261−65TB、C−Flex(登録商標)R70−082、Nordel(商標)EPDM、Estane(登録商標)580−70 TPU、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリカーボネート、またはKynarFlex(登録商標)から選択されるエラストマーを用いて調製する。1組の試料を、実施例2に関連して記載されたように後硬化する。剥離強度を、実施例2に関連して上記された手順を用いて試験する。表6は、これらの試料の剥離強度を示す。
【0093】
【表6】

【0094】
示されるように、非反応性イオンビーム処理支持体は、粘着性であろうとなかろうと、シリコーンエラストマー(LSRまたはHCR)と結合させた場合に高い剥離強度を示す。Santoprene(商標)に関しては、粘着性Santoprene(商標)についての剥離強度の方が高い。また、非反応性イオンビーム処理支持体は、EPDMまたはTPUなどの他のエラストマーと結合させた場合に高い剥離強度を示す。他のポリマー化学種については、剥離強度は相対的により低い。特に、ポリプロピレンおよびポリカーボネートなどの熱可塑性化学種についての剥離強度はより低いが、こうした剥離強度は、未処理試料において見られない結合強度に相当する。一般に、こうした熱可塑性物質は、未処理試料に結合することができない、すなわち未処理試料から容易に離層する。PTFE表面に一般に結合しないKynarFlex(登録商標)などの熱可塑性フルオロポリマーでさえも、処理されたPTFE層に結合させた場合には凝集積層構造を示す。
【0095】
実施例6
試料を、イオンビーム処理PTFE支持体またはNa−NH処理PTFE支持体から選択される支持体を用いて調製する。これらの試料は、Nordel(商標)EPDMまたはC−Flex(登録商標)から選択されるオーバーモールドされたエラストマーを含む。成形後、これらの試料を剥離し、PTFE支持体の結合表面をFTIR分光法に供する。
【0096】
図13は、EPDMから剥離された支持体についてのFTIRスペクトルを図示している。Na−NH処理されたPTFE表面は、−OH結合の存在を示すおよそ3400cm−1のピークを示し、C=O結合およびC=C結合を示す1750cm−1および1500cm−1辺りのピークを示す。それに対し、イオンビーム処理されたPTFE表面は、そのようなピークを示さない。両方の表面が、C−F結合を示す1210cm−1および1152cm−1辺りのピークを示す。また、両方の表面が、C−H結合を示す2800cm−1〜2900cm−1の範囲のピークを示し、これは残留EPDMを示し得る。
【0097】
図14は、C−Flex(登録商標)から剥離された試料についてのFTIRスペクトルを図示している。EPDM試料と同様に、Na−NH処理されたPTFE表面は、−OH結合の存在を示すおよそ3400cm−1のピークを示し、C=O結合およびC=C結合を示す1750cm−1および1500cm−1辺りのピークを示す。それに対し、イオンビーム処理されたPTFE表面は、そのようなピークを示さない。両方の表面が、C−F結合を示す1210cm−1および1152cm−1辺りのピークを示す。また、両方の表面が、C−H結合を示す2800cm−1〜2900cm−1の範囲のピークを示し、これは残留C−Flex(登録商標)によってもたらされたものであり得る。
【0098】
実施例7
表面粗さを、実施例1に従って調製された試料について測定する。これらの試料を、Zygo(登録商標)デバイスを用いて測定する。また、これらの試料のSEM画像を撮影する。表7は、未処理、ナトリウム−アンモニア処理、非反応性イオンビーム処理、およびUVレーザー処理試料についての表面粗さを示す。
【0099】
【表7】

【0100】
示されるように、イオンビーム処理試料についての表面粗さ(Rz)は少なくとも8μmであるが、ナトリウム−アンモニア処理試料および未処理試料についての表面粗さ(Rz)は2μm未満である。UV処理試料については、表面粗さは少なくとも50μmである。また、図11および図12に図示されるように、SEM画像は、非反応性イオンビーム処理試料の表面の房状形態を示した。UV処理試料の形態は、図19のSEM画像に示される。
【0101】
実施例8
ポリマー層と処理されたフルオロポリマー表面との間の結合の性質を試験するために、機械的作用なしにフルオロポリマー層の表面からポリマー層を溶解または離層させる実験を行う。溶解または離層後に、表面化学種を探るためにFTIRを用いてフルオロポリマーの表面を走査する。別の試験において、溶解または離層させたポリマー層と類似のポリマー層を用い、その表面への再結合を試みる。
【0102】
特に、イオンビーム処理表面層は、FTIRで試験される場合、溶解または離層させたポリマーに関連する表面化学種をほとんど示さず(図15参照、位置1502にピークがない)、これは、結合強度の主要素がその結合の機械的性質に起因することを示している。それに対し、Na−NH処理表面は、溶解または離層させたポリマーの表面化学種の残存物を示し(図16参照、位置1602は比較的大きいピークを含み、C=O/C=C化学種を示す位置1604は大きいピークを含む)、これはより多くの化学結合を示している。図20(Na−NH)および図21(イオンビーム)のSEM画像により示されるように、それらの表面は、それぞれの形態を維持する。
【0103】
最初のポリマー層の溶解または離層後の処理表面へのポリマー層の結合を試みる場合、イオンビーム処理表面は、後に溶解または離層させるポリマー層への最初の結合に比べて類似の結合強度を示す。したがって、イオンビーム処理表面の結合強度は、ポリマー層への最初の結合前であっても、溶剤洗浄により弱められない。
【0104】
実施例9
PTFE試料をUV放射に曝露し、エラストマーを用いて剥離強度について試験する。イオンビーム処理試料の表面およびNa−NH処理試料の表面を、45℃の温度にて、340nmの波長および0.77W/m/nmの放射照度のUVA放射を用い、異なる時間にわたってUV放射に曝露する。曝露したら、これらの試料を粘着性HCRシリコーンと密着させ、剥離強度について試験する。図17に図示されるように、曝露が増大しても、イオンビーム処理表面は剥離強度を維持するが、Na−NH処理試料は、UV放射への曝露の増大に伴って剥離強度の著しい低下を示す。
【0105】
エラストマー層に結合させた処理PTFE層からなる試料を、UV放射に曝露し、剥離強度について試験する。表8は、初期の剥離強度および54時間にわたるUV放射への曝露後の剥離強度を示す。示されるように、粘着性HCRシリコーンまたはEPDMに結合させたイオンビーム処理PTFEからなる試料は、粘着性HCRシリコーンまたはEPDMに結合させたNa−NH処理PTFEからなる試料よりも小さい剥離強度の低下を示す。
【0106】
【表8】

【0107】
実施例10
各種ポリマー試料のイオンビーム処理は、エラストマーおよび熱可塑性ポリマーに対する望ましい結合強度を示す。スカイブドPTFE、ペースト押出PTFE、FEP、およびPFAの試料を、イオンビーム処理で処理し、非粘着性(NSB)HCRシリコーン、粘着性(SB)HCRシリコーン、粘着性Santoprene(商標)、C−Flex(登録商標)082、およびNordel(商標)EPDMから選択されるポリマーに結合させる。表9に示されるように、これらの試料は、望ましい剥離強度を示す。
【0108】
【表9】

【0109】
実施例11
イオンビーム処理されたPTFE試料を、表面化学種の原子濃度を測定するためにXPS試験に供する。表10は、窒素および酸素表面化学種が相対的に低い濃度であることを示す。
【0110】
【表10】

【0111】
上記の実施例により例証されるように、非反応性イオンビーム処理(すなわち、非反応性ガスを用いるイオンビーム処理)は、隣接するポリマー層、特にエラストマーへの強い接着を可能にする。また、他の表面処理技術と異なり、非反応性イオンビーム処理されたフルオロポリマーの表面は、大きい水接触角、疎水性、および浸出可能な副生物の低いレベルを維持する。
【0112】
実施例12
スカイブドPTFEの試料をUVレーザーで処理し、SB Santoprene(商標)と結合させる。この試料の剥離強度は1.2ppiであるが、未処理のスカイブドPTFEおよびSB Santoprene(商標)から形成された試料は、およそ0.1ppiの剥離強度を示す。
【0113】
実施例13
スカイブドPTFEフィルムを、実施例1に関連して上記されるように、Na−NHまたはイオンビームで処理する。処理されたスカイブドPTFEフィルムを、LSRシリコーンに結合させて試料を形成する。これらの試料を24時間にわたり液体窒素に浸漬し、次いで、スカイブドPTFEとLSRシリコーンの間の界面を横切って手作業で破断する。その断面を、SEM技術を用いて画像化する。
【0114】
図22は、Na−NH処理されたスカイブドPTFEとの間の界面が比較的平滑であることを示している。それに対し、図23は、界面が凸凹で、フィラメント様構造を示すことを示している。
【0115】
実施例14
処理PTFEとHCRシリコーンとの積層物から隔壁を作製する。まずイオンビーム処理されたスカイブドPTFEフィルムの上に冷HCRリボンを押出し、270°Fの2つの熱ロールを用いて2層を一緒に絞り出すことにより、積層物(6インチ幅)を作製する。この積層物を、約2〜3分間熱ロールと接触したままにして硬化する。次いで、この積層物を、様々な大きさの隔壁部分に切る。非後硬化部分の剥離強度は7.1ppiである。2時間の後硬化処理後に、より優れた接着性が予想される。
【0116】
実施例15
金型キャビティ(5インチ×5インチ)にイオンビーム処理されたスカイブドPTFEフィルムまたはNa−NH処理されたスカイブドPTFEフィルムを入れ、350°Fの密閉されたその金型に液体シリコーンゴム(LSR)を注入することにより、積層物を作製する。6立方インチ/秒の注入速度により誘導される剪断速度は20s−1を超える。金型中のこの積層物の滞留時間はおよそ1分であり、作製された試料をさらに後硬化しない。イオンビーム処理およびナトリウムアンモニア処理の場合に得られる剥離強度は、それぞれ24.6ppiおよび24.4ppiである。両方の試料が、支持体の凝集破壊を示す。
【0117】
実施例16
積層物を、実施例2の圧縮成形技術を用い、先述のように調製する。各種エラストマーを支持体として使用する。成形された積層物の厚さは、0.060インチと0.065インチの間、すなわち、内径1/4インチ×外径3/8インチのチューブの厚さである。これらの積層物を、8インチ×1インチの細片に切り、長手方向に半分に折り、Masterflexイージーロードポンプヘッドに設置する。試料に離層が生じ、その離層が細片の折り返し部分から端部に横断的に拡がるまで、ポンプヘッドを600rpmの速度に設定する。ポンピング(pumping)前の試料の剥離強度およびポンプ寿命を記録し、それらを表11に示す。目標とされるポンプ寿命は100時間である。100時間超にわたるポンピング後、作業者が手動で試料を止める。
【0118】
【表11】

【0119】
実施例17
PTFEチューブの外側を、実施例1と同じ条件でイオン源を用いて処理する。チューブを真空室に入れ、その源の前で回転させ、その結果、図24に示されるように、チューブ表面を横切る横断的に並んだ線紋を呈する、筋のある構造を得る。処理に続き、このチューブを、鋼マンドレル上を滑らせ、鋼チューブ型に入れて、キャビティを形成させ、このキャビティに未硬化のシリコーンゴム(HCRまたはLSR)を充填する。次いで、この型を、スラブを調製する際に適用したのと同じ成形方法に従い圧縮する。試料を後硬化し、180°剥離試験を用いて剥離強度について試験した。表12はその剥離強度を示す。
【0120】
【表12】

【0121】
さらなる試料を、スラブ型中のエラストマーの上に平らに伸ばされた処理チューブ(すなわち、長手方向に半分に切られ、平らに伸ばされた)から形成する。この平らに伸ばされたチューブ試料は、匹敵する接着性を備える。これは、イオン源の前でチューブを回転させながらのイオンビーム処理後に得られた表面の構造が望ましい接着をもたらすことの例証となる。
【0122】
実施例18
スラブを上記のように成形して、イオンビーム処理ペースト押出PTFEフィルムと粘着性シリコーンまたはSantoprene(商標)との積層物を作製する。この試料をさらに上記の手順に従って後硬化し、剥離強度を測定する。表13は、優れた接着性が、ペースト押出PTFEフィルムを、非反応性アルゴンイオンビーム、ならびにアルゴンおよび酸素ガスの混合物で処理し、シリコーンまたはSantoprene(商標)ゴムに結合させた場合に得られることを示す。
【0123】
【表13】

【0124】
一般的な記載または実施例において上記された作業の全てが必ずしも必要とされるわけではないということ、特定の作業の一部は必要とされない場合があるということ、および記載された作業に加えて1つ以上のさらなる作業が行われ得るということに留意されたい。さらにつけ加えると、作業が列記された順序は、必ずしもそれらが行われる順序であるとは限らない。
【0125】
既述の明細において、特定の実施形態に関して概念を記載してきた。しかしながら、当業者は、下記の特許請求の範囲に示された発明の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更が加えられ得ることを理解する。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考えられるべきであり、全てのそのような修正は、本発明の範囲の中に含まれることが意図される。
【0126】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらのいかなる他の変形も、非排他的な包含を対象として含むことが意図される。例えば、列挙された特徴を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの特徴だけに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていない他の特徴、またはそのようなプロセス、方法、物品もしくは装置に固有の他の特徴を包含し得る。さらに、そうではないことが明示的に述べられない限り、「または(もしくは)」は、排他的な「または」ではなく、包含的な「または」を指す。例えば、条件AまたはBは、以下のうちのいずれか1つにより満たされる:Aが真(または存在する)かつBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)かつBが真(または存在する)、そして、AおよびBの両方が真(または存在する)。
【0127】
また、「a」または「an」の使用が、本明細書に記載される構成要素および構成要件を記載するために採用される。これは単に、便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためにすぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを包含すると解釈されるべきであり、単数形もまた、別段の意図が明らかでない限り、複数形を包含する。
【0128】
利益、他の利点、および課題の解決策を、特定の実施形態に関して上記してきた。しかしながら、それらの利益、利点、課題の解決策、および任意の利益、利点もしくは解決策を生じさせ得るまたはより顕著にし得るあらゆる特徴が、いずれかのまたは全ての請求項の、重要な、必要な、または不可欠な特徴と解釈されるべきではない。
【0129】
本明細書を読んだ当業者は、特定の特徴が明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されているが、単一の実施形態において組み合わせて提供されることもあり得ることを理解する。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴が、別個にまたは任意の部分的組み合わせ(subcombination)で提供されることもあり得る。さらに、範囲で記載される値への言及は、その範囲内のどの値も全て包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー物品を形成する方法であって、
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する第1のポリマー層を供給する工程と、
第2のポリマー層を前記結合表面と直接接触するように付与する工程であって、前記第2のポリマー層はエラストマーまたは熱可塑性物質を含む、工程と
を包含し、前記ポリマー物品は、少なくとも7ppiの剥離強度を有する、方法。
【請求項2】
供給する工程が、前記第2のポリマー層の付与のために前記第1のポリマー層の位置を定める工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のポリマー層を押出す工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のポリマー層を押出す工程が、前記第1のポリマー層をマンドレルの上に押出す工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のポリマー層を射出成形する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記指向性エネルギー付与処理が、イオンビーム処理を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のポリマー層を付与する工程が、前記第1のポリマー層の前記結合表面と接触するように前記第2のポリマー層を押出す工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のポリマー層が前記エラストマーを含み、付与する工程が前記エラストマーを硬化する工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつイオンビーム処理を用いて調製された結合表面を有する第1のポリマー層を供給する工程と、
第2のポリマー層を前記結合表面と直接接触するように付与する工程であって、前記第2のポリマー層はエラストマーまたは熱可塑性物質を含む、工程と
を包含する、ポリマー物品を形成する方法。
【請求項10】
供給する工程が、前記第2のポリマー層の付与のために前記第1のポリマー層の位置を定める工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のポリマー層を押出す工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のポリマー層を押出す工程が、前記第1のポリマー層をマンドレルの上に押出す工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のポリマー層を射出成形する工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記イオンビーム処理が、非反応性イオンビーム処理である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のポリマー層を付与する工程が、前記第1のポリマー層の前記結合表面と接触するように前記第2のポリマー層を押出す工程を含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のポリマー層を付与する工程が、前記第1のポリマー層の前記結合表面と接触するように前記第2のポリマー層を射出成型する工程を含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のポリマー層が前記エラストマーを含み、付与する工程が前記エラストマーを硬化する工程をさらに含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ少なくとも5%の接触指数を有する第1の層と、
前記第1の層と直接接触し、かつエラストマーまたは熱可塑性物質を含む第2の層と
を含む、ポリマー物品。
【請求項19】
前記第1の層の前記接触指数が、少なくとも10%である、請求項18に記載のポリマー物品。
【請求項20】
前記第1の層が、少なくとも120°の水接触角を有する、請求項18に記載のポリマー物品。
【請求項21】
前記水接触角が、少なくとも130°である、請求項20に記載のポリマー物品。
【請求項22】
前記水接触角が、少なくとも140°である、請求項21に記載のポリマー物品。
【請求項23】
前記水接触角が、少なくとも150°である、請求項22に記載のポリマー物品。
【請求項24】
前記第1の層が、少なくとも2.0の粗さ指数を有する、請求項18に記載のポリマー物品。
【請求項25】
前記ポリマー物品が、少なくとも7ppiの剥離強度を示す、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項26】
前記ポリマー物品が、少なくとも10ppiの剥離強度を示す、請求項25に記載のポリマー物品。
【請求項27】
前記剥離強度が、少なくとも14ppiである、請求項26に記載のポリマー物品。
【請求項28】
前記剥離強度が、少なくとも16ppiである、請求項27に記載のポリマー物品。
【請求項29】
前記剥離強度が、少なくとも20ppiである、請求項28に記載のポリマー物品。
【請求項30】
前記剥離強度が、少なくとも22ppiである、請求項29に記載のポリマー物品。
【請求項31】
前記剥離強度が、少なくとも25ppiである、請求項30に記載のポリマー物品。
【請求項32】
前記剥離強度が、少なくとも50ppiである、請求項31に記載のポリマー物品。
【請求項33】
後硬化剥離強度が、少なくとも7ppiである、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項34】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも16ppiである、請求項33に記載のポリマー物品。
【請求項35】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも20ppiである、請求項34に記載のポリマー物品。
【請求項36】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも25ppiである、請求項35に記載のポリマー物品。
【請求項37】
前記低表面エネルギーポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、エチレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー(ETFE)、エチレンおよびクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン(THV)を含むターポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびエチレンのターポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択されるフルオロポリマーを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項38】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項37に記載のポリマー物品。
【請求項39】
前記フルオロポリマーが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項37に記載のポリマー物品。
【請求項40】
前記フルオロポリマーが、ペルフルオロアルコキシ(PFA)のコポリマーを含む、請求項37に記載のポリマー物品。
【請求項41】
前記低表面エネルギーポリマーが、ペルフルオロポリマーを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項42】
前記エラストマーが、ジエンエラストマー、熱可塑性ウレタン、熱可塑性オレフィンエラストマー、シリコーンエラストマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項43】
前記エラストマーが、ジエンエラストマーを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項44】
前記エラストマーが、ジエンエラストマーとポリオレフィンとの粘着性ブレンドを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項45】
前記エラストマーが、シリコーンエラストマーを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項46】
前記シリコーンエラストマーが、LSRエラストマーである、請求項45に記載のポリマー物品。
【請求項47】
前記シリコーンエラストマーが、HCRエラストマーである、請求項45に記載のポリマー物品。
【請求項48】
前記エラストマーが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンポリマー(SEBS)とポリプロピレンとのブレンドを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項49】
前記エラストマーが、エチレン酢酸ビニルを含む、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項50】
前記第1の層の結合表面が、酸素化された化学種を実質的に含まない、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項51】
前記結合表面が、5%以下の酸素を有する、請求項50に記載のポリマー物品。
【請求項52】
前記結合表面が、3.4%以下の酸素を有する、請求項51に記載のポリマー物品。
【請求項53】
前記結合表面が、2.0%以下の酸素を有する、請求項52に記載のポリマー物品。
【請求項54】
前記第1の層の結合表面が、窒素を組み込んでいる化学種を実質的に含まない、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項55】
前記結合表面が、2%以下の窒素を有する、請求項54に記載のポリマー物品。
【請求項56】
前記結合表面が、1.5%以下の窒素を有する、請求項55に記載のポリマー物品。
【請求項57】
前記結合表面が、1%以下の窒素を有する、請求項56に記載のポリマー物品。
【請求項58】
前記第1の層の結合表面が、房状形態を有する、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項59】
前記第1の層の結合表面が、海綿様形態を有する、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項60】
前記ポリマー物品が流体導管であり、前記第1の層が前記流体導管の内面を構成する、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項61】
前記ポリマー物品がフィルムである、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項62】
前記ポリマー物品が平面物品である、請求項18〜24のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項63】
第1および第2の表面を有する第1のポリマー層であって、前記第1のポリマー層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記第1の表面は酸素化された化学種を実質的に含まない、第1のポリマー層と、
前記第1のポリマー層の前記第1の表面と直接接触している第2のポリマー層であって、エラストマーまたは熱可塑性物質を含む、第2のポリマー層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有する、ポリマー物品。
【請求項64】
前記第1の表面が、5%以下の酸素を有する、請求項63に記載のポリマー物品。
【請求項65】
前記第1の表面が、3.4%以下の酸素を有する、請求項64に記載のポリマー物品。
【請求項66】
前記第1の表面が、2.0%以下の酸素を有する、請求項65に記載のポリマー物品。
【請求項67】
前記第1の表面が、窒素を組み込んでいる化学種を実質的に含まない、請求項63に記載のポリマー物品。
【請求項68】
前記第1の表面が、2%以下の窒素を有する、請求項67に記載のポリマー物品。
【請求項69】
前記第1の表面が、1.5%以下の窒素を有する、請求項68に記載のポリマー物品。
【請求項70】
前記第1の表面が、1%以下の窒素を有する、請求項69に記載のポリマー物品。
【請求項71】
前記剥離強度が、少なくとも10ppiである、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項72】
前記剥離強度が、少なくとも14ppiである、請求項71に記載のポリマー物品。
【請求項73】
前記剥離強度が、少なくとも16ppiである、請求項72に記載のポリマー物品。
【請求項74】
前記剥離強度が、少なくとも20ppiである、請求項73に記載のポリマー物品。
【請求項75】
前記剥離強度が、少なくとも22ppiである、請求項74に記載のポリマー物品。
【請求項76】
前記剥離強度が、少なくとも25ppiである、請求項75に記載のポリマー物品。
【請求項77】
前記剥離強度が、少なくとも30ppiである、請求項76に記載のポリマー物品。
【請求項78】
後硬化剥離強度が、少なくとも7ppiである、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項79】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも16ppiである、請求項78に記載のポリマー物品。
【請求項80】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも20ppiである、請求項79に記載のポリマー物品。
【請求項81】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも25ppiである、請求項80に記載のポリマー物品。
【請求項82】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも50ppiである、請求項81に記載のポリマー物品。
【請求項83】
前記低表面エネルギーポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、エチレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー(ETFE)、エチレンおよびクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン(THV)を含むターポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびエチレンのターポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択されるフルオロポリマーを含む、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項84】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項83に記載のポリマー物品。
【請求項85】
前記フルオロポリマーが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項83に記載のポリマー物品。
【請求項86】
前記フルオロポリマーが、ペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項83に記載のポリマー物品。
【請求項87】
前記低表面エネルギーポリマーが、ペルフルオロポリマーを含む、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項88】
前記エラストマーが、ジエンエラストマー、熱可塑性ウレタン、熱可塑性オレフィンエラストマー、シリコーンエラストマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項89】
前記エラストマーが、ジエンエラストマーを含む、請求項88に記載のポリマー物品。
【請求項90】
前記エラストマーが、ジエンエラストマーとポリオレフィンとの粘着性ブレンドを含む、請求項88に記載のポリマー物品。
【請求項91】
前記エラストマーが、シリコーンエラストマーを含む、請求項88に記載のポリマー物品。
【請求項92】
前記シリコーンエラストマーが、LSRエラストマーである、請求項91に記載のポリマー物品。
【請求項93】
前記シリコーンエラストマーが、HCRエラストマーである、請求項91に記載のポリマー物品。
【請求項94】
前記エラストマーが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンポリマー(SEBS)とポリプロピレンとのブレンドを含む、請求項88に記載のポリマー物品。
【請求項95】
前記エラストマーが、エチレン酢酸ビニルを含む、請求項88に記載のポリマー物品。
【請求項96】
前記第1の層の結合表面が、房状形態を有する、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項97】
前記第1の層の結合表面が、海綿様形態を有する、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項98】
前記ポリマー物品が流体導管であり、前記第1の層が前記流体導管の内面を構成する、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項99】
前記ポリマー物品がフィルムである、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項100】
前記ポリマー物品が平面物品である、請求項63〜70のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項101】
第1および第2の表面を有する第1の層であって、前記第1の層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記第1の表面は房状または海綿様の形態を有する、第1の層と、
前記第1の表面と直接接触する第2の層であって、エラストマーを含む、第2の層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有する、ポリマー物品。
【請求項102】
前記第1の表面が、少なくとも2の粗さ指数を有する、請求項101に記載のポリマー物品。
【請求項103】
前記粗さ指数が、少なくとも3である、請求項102に記載のポリマー物品。
【請求項104】
前記粗さ指数が、少なくとも4である、請求項103に記載のポリマー物品。
【請求項105】
前記粗さ指数が、少なくとも10である、請求項104に記載のポリマー物品。
【請求項106】
前記剥離強度が、少なくとも14ppiである、請求項101に記載のポリマー物品。
【請求項107】
前記剥離強度が、少なくとも16ppiである、請求項106に記載のポリマー物品。
【請求項108】
前記剥離強度が、少なくとも20ppiである、請求項107に記載のポリマー物品。
【請求項109】
前記剥離強度が、少なくとも22ppiである、請求項108に記載のポリマー物品。
【請求項110】
前記剥離強度が、少なくとも25ppiである、請求項109に記載のポリマー物品。
【請求項111】
前記ポリマー物品が、少なくとも7ppiの後硬化剥離強度を有する、請求項101〜110のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項112】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも16ppiである、請求項111に記載のポリマー物品。
【請求項113】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも20ppiである、請求項112に記載のポリマー物品。
【請求項114】
前記後硬化剥離強度が、少なくとも25ppiである、請求項113に記載のポリマー物品。
【請求項115】
前記低表面エネルギーポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、エチレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー(ETFE)、エチレンおよびクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン(THV)を含むターポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびエチレンのターポリマー、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択されるフルオロポリマーを含む、請求項101〜110のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項116】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項115に記載のポリマー物品。
【請求項117】
前記フルオロポリマーが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項116に記載のポリマー物品。
【請求項118】
前記フルオロポリマーが、ペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項116に記載のポリマー物品。
【請求項119】
前記低表面エネルギーポリマーが、ペルフルオロポリマーを含む、請求項101〜110のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項120】
前記エラストマーが、ジエンエラストマー、熱可塑性ウレタン、熱可塑性オレフィンエラストマー、シリコーンエラストマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項101〜110のいずれか1項に記載のポリマー物品。
【請求項121】
前記エラストマーが、ジエンエラストマーを含む、請求項120に記載のポリマー物品。
【請求項122】
前記エラストマーが、ジエンエラストマーとポリオレフィンとの粘着性ブレンドを含む、請求項120に記載のポリマー物品。
【請求項123】
前記エラストマーが、シリコーンエラストマーを含む、請求項120に記載のポリマー物品。
【請求項124】
前記シリコーンエラストマーが、LSRエラストマーである、請求項123に記載のポリマー物品。
【請求項125】
前記シリコーンエラストマーが、HCRエラストマーである、請求項123に記載のポリマー物品。
【請求項126】
前記エラストマーが、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンポリマー(SEBS)とポリオレフィンとのブレンドを含む、請求項120に記載のポリマー物品。
【請求項127】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する第1のポリマー層を供給する工程と、
第2のポリマー層を前記結合表面と直接接触するように付与する工程であって、前記第2のポリマー層はエラストマーを含む、工程と
を包含する、ポリマー物品を形成する方法。
【請求項128】
供給する工程が、前記第2のポリマー層の付与のために前記第1のポリマー層の位置を定める工程を含む、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記第1のポリマー層を押出す工程をさらに包含する、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
前記第1のポリマー層を押出す工程が、前記第1のポリマー層をマンドレルの上に押出す工程を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記第1のポリマー層を射出成形する工程をさらに包含する、請求項127に記載の方法。
【請求項132】
前記第1のポリマー層を指向性エネルギー付与処理で処理する工程をさらに包含する、請求項127〜131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項133】
前記指向性エネルギー付与処理で処理する工程が、非反応性イオンビーム処理で処理する工程を含む、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記非反応性イオンビーム処理で処理する工程が、希ガスイオンビームで処理する工程を含む、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記第2のポリマー層を付与する工程が、前記第1のポリマー層の前記結合表面と接触するように前記第2のポリマー層を押出す工程を含む、請求項127〜131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
付与する工程が、前記エラストマーを硬化する工程をさらに含む、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ少なくとも5%の水静的接触指数を有する内側層と、
前記第1の層と直接接触しかつ前記第1の層に半径方向に重なる第2の層であって、エラストマーを含む、第2の層と
を含む、流体導管。
【請求項138】
内面および外面を有する内側層であって、前記内側層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記外面は酸素化された化学種を実質的に含まない、内側層と、
前記内側層の前記外面と直接接触している第2のポリマー層であって、エラストマーを含む、第2のポリマー層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有するポリマー物品である、流体導管。
【請求項139】
内面および外面を有する内側層であって、前記内側層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記外面は房状または海綿様の形態を有する、内側層と、
前記内側層の前記外面と直接接触する第2の層であって、エラストマーを含む、第2の層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有するポリマー物品である、流体導管。
【請求項140】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する内側層を供給する工程と、
第2のポリマー層を前記結合表面と直接接触するように付与する工程であって、前記第2のポリマー層はエラストマーを含む、工程と
を包含する、流体導管を形成する方法。
【請求項141】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する内側層を供給する工程と、
第2のポリマー層を前記結合表面と直接接触するように付与する工程であって、前記第2のポリマー層は熱可塑性ポリマーを含む、工程と
を包含する、流体導管を形成する方法。
【請求項142】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ少なくとも5%の水静的接触指数を有する第1の層と、
前記第1の層と直接接触し、かつ熱可塑性ポリマーを含む第2の層と
を含む、ポリマー物品。
【請求項143】
前記熱可塑性物質が、ポリオレフィン、PC、ポリエステル、PVC、PA、ETFE、FEP、PFA、PVDF、THV、アクリレート、熱可塑性ポリウレタン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項142に記載のポリマー物品。
【請求項144】
前記熱可塑性物質が、アクリレートを含む、請求項143に記載のポリマー物品。
【請求項145】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項143に記載のポリマー物品。
【請求項146】
第1および第2の表面を有する第1のポリマー層であって、前記第1のポリマー層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記第1の表面は酸素化された化学種を実質的に含まない、第1のポリマー層と、
前記第1のポリマー層の前記第1の表面と直接接触している第2のポリマー層であって、熱可塑性ポリマーを含む、第2のポリマー層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有する、ポリマー物品。
【請求項147】
第1および第2の表面を有する第1の層であって、前記第1の層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記第1の表面は房状または海綿様の形態を有する、第1の層と、
前記第1の表面と直接接触する第2の層であって、熱可塑性ポリマーを含む、第2の層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有する、ポリマー物品。
【請求項148】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ指向性エネルギー付与処理を用いて調製された結合表面を有する第1のポリマー層を供給する工程と、
第2のポリマー層を前記結合表面と直接接触するように付与する工程であって、前記第2のポリマー層は熱可塑性ポリマーを含む、工程と
を包含する、ポリマー物品を形成する方法。
【請求項149】
低表面エネルギーポリマーを含み、かつ少なくとも5%の水静的接触指数を有する内側層と、
前記第1の層と直接接触しかつ前記第1の層に半径方向に重なる第2の層であって、熱可塑性ポリマーを含む、第2の層と
を含む、流体導管。
【請求項150】
内面および外面を有する内側層であって、前記内側層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記外面は酸素化された化学種を実質的に含まない、内側層と、
前記内側層の前記外面と直接接触している第2のポリマー層であって、熱可塑性ポリマーを含む、第2のポリマー層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有するポリマー物品である、流体導管。
【請求項151】
内面および外面を有する内側層であって、前記内側層は低表面エネルギーポリマーを含み、前記外面は房状または海綿様の形態を有する、内側層と、
前記内側層の前記外面と直接接触する第2の層であって、熱可塑性ポリマーを含む、第2の層と
を含み、少なくとも7ppiの剥離強度を有するポリマー物品である、流体導管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2012−514547(P2012−514547A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544633(P2011−544633)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/069968
【国際公開番号】WO2010/078527
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】