説明

多軸式トランスミッション

【課題】コンパクトな多軸式トランスミッションを提供する。
【解決手段】入力軸3と、入力軸3の動力が伝達される第1中間軸4と、第1中間軸4の動力が伝達される第2中間軸5と、第2中間軸5の動力が伝達される第3中間軸6と、第1中間軸4と同軸上に配される第4中間軸7と、第3中間軸6と同軸上に配される後側出力軸8と、後側出力軸8の動力が伝達される前側出力軸9と、入力軸3からの動力を接断するFLクラッチ13および後進用クラッチ14と、第1中間軸4上に配され、入力軸3からの動力を接断するFHクラッチ18および第1クラッチ19と、第2中間軸5上に配され、入力軸3からの動力を接断する第2クラッチ27および第3クラッチ26と、第3中間軸6上に配され、入力軸3からの動力を接断する第4クラッチ32と、第3中間軸6上の第4クラッチ32と中壁11を挟んで反対側に配されるインターアクスルディファレンシャル35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーティキュレートダンプトラック等の作業車両に用いられる多軸式トランスミッションに関し、より詳しくはインターアクスルディファレンシャルを備えた前進8速後進4速の多軸式トランスミッション関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転室およびエンジンを搭載した前部車体とベッセルを搭載した後部車体とが鉛直軸線を中心に屈折操向できるようにした作業車両としてアーティキュレートダンプトラックが知られている。このアーティキュレートダンプトラックは、旋回半径が小さく、かつ凹凸路における走破性に優れていることから、砕石、鉱山、トンネル工事などにおいて多く使用されている。このアーティキュレートダンプトラックには、多軸式のトランスミッションが搭載されるとともに、エンジンの出力を前輪と後輪とに所定の比率で分配する差動装置であるインターアクスルディファレンシャルが設けられている。このインターアクスルディファレンシャルは、例えば車両の旋回時などに前輪と後輪とで負荷が異なる場合に、前輪と後輪との回転差を吸収するために、タイヤの移動距離に応じて前後輪の回転差をつけることによって、車両の走行をスムーズにする働きをしている。
【0003】
次に、この種従来の多軸式トランスミッションを図2によって説明する。この従来例の多軸式トランスミッション50は、前進6速後進3速(F6R3)のインターアクスルディファレンシャル付きトランスミッションであって、入力軸51と、インターアクスルディファレンシャル52の前側出力軸53および後側出力軸54と、これら入力軸51と出力軸53,54との間に配される第1中間軸55および第2中間軸56とを備えた軸構成とされている。
【0004】
前記入力軸51には、第1ギヤ58が固着されるとともに、FLクラッチ(前進ロークラッチ)59とRクラッチ(後進クラッチ)60とが設けられ、さらにFLクラッチ59の出力側の第2ギヤ61と、Rクラッチ60の出力側の第3ギヤ62とがそれぞれ回転自在に設けられている。
【0005】
前記第1中間軸55には、前記第1ギヤ58と噛み合う第4ギヤ63が回転自在に設けられるとともに、FHクラッチ(前進ハイクラッチ)64と第1速用クラッチ65とが設けられ、これらFHクラッチ64および第1速用クラッチ65用の一体の第5ギヤ66が前記第2ギヤ61と噛み合うように設けられている。さらに、この第1中間軸55には、第6ギヤ67が回転自在に設けられるとともに、第7ギヤ68が固着されている。前記第7ギヤ68は、アイドル軸57に回転自在に設けられた第8ギヤ69を介して前記第3ギヤ62と噛み合うように構成されている。
【0006】
前記第2中間軸56には、第3速用クラッチ70と第2速用クラッチ71とが設けられるとともに、これら第3速用クラッチ70および第2速用クラッチ71用の一体の第9ギヤ72および第10ギヤ73がそれぞれ設けられている。また、前記第2中間軸56には、第3速用クラッチ70の入力用の第11ギヤ74と、第2速用クラッチ71の入力用の第12ギヤ75が回転自在に設けられている。そして、第10ギヤ73が第6ギヤ67と、第11ギヤ74が第5ギヤ66と、第12ギヤ75が第7ギヤ68と、それぞれ噛み合っている。
【0007】
前記出力軸53,54に配されるインターアクスルディファレンシャル52は、第9ギヤ72に噛み合う第13ギヤ76にキャリア77が固定され、このキャリア77に複数個のプラネタリギヤ78が軸支され、これらプラネタリギヤ78に噛み合うリングギヤ79が後側出力軸54に固定される一方、サンギヤ80が前側出力軸53に固定されるとともに、キャリア77と前側出力軸53とのトルク伝達状態を制御するために係合、解放されるクラッチ81が配されて構成されている。
【0008】
なお、トランスミッションにインターアクスルディファレンシャルを一体的に設ける構造は、特許文献1に開示されるように広く知られたものであるが、図2に示されるようなインターアクスルディファレンシャル付き前進6速後進3速トランスミッションの具体的構造が開示された特許文献について、発明者は把握していない。
【0009】
【特許文献1】特開2004−197884号公報
【0010】
ところで、図2に示されているような前進6速後進3速(F6R3)のギヤトレーンを、例えば前進8速後進4速(F8R4)に多段化したい場合、通常は、スピードクラッチ(第4速用速度段クラッチ)が装着された軸を第2中間軸56と、前後の出力軸53,54との間に1軸追加した軸構成を採用することが考えられる。しかしながら、このようにスピードクラッチ付きの軸を1軸追加した場合には、入力軸と出力軸との軸間距離が長くなって、トランスミッションが大型化し、最低地上高が下がってしまうという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、トランスミッションを大型化することなく、多段化することのできる多軸式トランスミッションを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明による多軸式トランスミッションは、
インターアクスルディファレンシャルを介して結合される2つの出力軸を有する前進8速後進4速の多軸式トランスミッションであって、
入力軸と、
入力軸よりも下方で、入力軸に並列に配される第1中間軸と、
第1中間軸に並列に配される第2中間軸と、
第2中間軸に並列に配される第3中間軸と、
第1中間軸と同軸上に配される第4中間軸と、
第3中間軸よりも下方で、第3中間軸に並列に配される第1出力軸と、
第3中間軸と同軸上に配される第2出力軸と、
入力軸上に固着される第1ギヤと、
入力軸上に回転自在に配される第2ギヤと、
入力軸と第2ギヤとを接続可能な前進低速用副変速段クラッチと、
入力軸上に回転自在に配される第3ギヤと、
第3ギヤに噛み合うアイドル回転用の第4ギヤと、
入力軸と第3ギヤとを接続可能な後進用クラッチと、
第1中間軸上に回転自在に配され、第1ギヤと噛み合う第5ギヤと、
第1中間軸と第5ギヤとを接続可能な前進高速用副変速段クラッチと、
第1中間軸に固着され、第2ギヤと噛み合う第6ギヤと、
第1中間軸に固着される第7ギヤと、
第1中間軸に固着され、アイドル回転用の第4ギヤと噛み合う第8ギヤと、
第1中間軸と第4中間軸とを接続可能な第1速用変速段クラッチと、
第4中間軸に固着される第9ギヤと、
第2中間軸上に回転自在に配され、第7ギヤと噛み合う第11ギヤと、
第2中間軸上に第11ギヤと一体で回転自在に配される第10ギヤと、
第2中間軸上に回転自在に配され、第8ギヤと噛み合う第12ギヤと、
第2中間軸に固着され、第9ギヤと噛み合う第13ギヤと、
第2中間軸と第12ギヤとを接続可能な第2速用変速段クラッチと、
第2中間軸と第10ギヤおよび第13ギヤとを接続可能な第3速用変速段クラッチと、
第3中間軸上に回転自在に配され第10ギヤと噛み合う第14ギヤと、
第3中間軸と第14ギヤとを接続可能な第4速用変速段クラッチと、
第3中間軸に固着され、第13ギヤと噛み合う第15ギヤと、
第3中間軸と同軸に配置され、第3中間軸の回転を第1出力軸と第2出力軸に伝達するインターアクスルディファレンシャルとを備える
ことを特徴とするものである。
【0013】
本発明において、インターアクスルディファレンシャルは遊星歯車式であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入力軸と出力軸との軸間距離が大きくなるのを防止でき、トランスミッションを小型化することができる。また、本発明では、インターアクスルディファレンシャルを最下段の軸上に配さず、中間軸上に配しているので、オイルパン内のオイルの撹拌ロスが低減されるという効果もある。
【0015】
本発明において、インターアクスルディファレンシャルを遊星歯車式とすることにより、前後のトルク配分を1:1以外の任意の比率に設定することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明による多軸式トランスミッションの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る多軸式トランスミッションのギヤトレーンを示すスケルトン図である。なお、図1(a)では、各軸のギヤの噛み合い関係をわかりやすくするために、断面を展開して示している。このため、図1(a)ではすべての軸が縦に並ぶように表現されているが、ギヤトレーン全体の高さを低くするために、各軸を図1(b)に示すように配置することができる。
【0018】
本実施形態の多軸式トランスミッション1は、前進8速後進4速(F8R4)のインターアクスルディファレンシャル付きトランスミッションであって、ケース本体とそのケース本体を覆うカバー部とにより形成される段付きボックス型のミッションケース2内に収納された構成とされている。ミッションケース2内には、上部に入力軸3が配され、この入力軸3の下方に、第1中間軸4とその第1中間軸4と同軸上の第4中間軸7とが配され、第1中間軸4および第4中間軸7の側方に、第2中間軸5が配される。第1中間軸4および第2中間軸5の下方には第3中間軸6が配され、第3中間軸6と同軸上に後側出力軸(第2出力軸)8が配されている、第3中間軸6および後側出力軸8の下方には前側出力軸(第1出力軸)9が配されている。また、入力軸3と第1中間軸4との間にはアイドル軸10が配されている。
【0019】
以下の説明においては、図1(a)における左側(入力軸3の入力側、前側出力軸9側)を「前側」と表現し、図1(a)における右側(入力軸3の入力側とは反対側、後側出力軸8側)を「後側」と表現することとする。
ミッションケース2内には、中壁11が設けられ、前記第1中間軸4、第2中間軸5、第3中間軸6および前側出力軸9の中間部がその中壁11に支承されている。また、アイドル軸10はその基端部が中壁11に支承されている。
【0020】
前記入力軸3には、前側に第1ギヤ12が固着されるとともに、この第1ギヤ12に隣接した後側に、前進低速用クラッチパックであるFLクラッチ(前進低速用副変速段クラッチ)13が、このFLクラッチ13の後側に後進用クラッチパックであるRクラッチ14がそれぞれ設けられている。前記入力軸3には第2ギヤ15が回転可能に設けられている。第2ギヤ15はFLクラッチ13を係合することにより入力軸3と一体で回転可能とされている。また、入力軸3には第3ギヤ16が回転可能に設けられている。第3ギヤ16はRクラッチ14を係合することにより入力軸3と一体で回転可能とされている。第3ギヤ16は、前記アイドル軸10に固着された第4ギヤ17に噛み合っている。
【0021】
前記第1中間軸4には、前進高速用クラッチパックであるFHクラッチ(前進高速用副変速段クラッチ)18と、第1速用変速段クラッチである第1クラッチ19がそれぞれ設けられる。第1中間軸4には、第1ギヤ12と噛み合う第5ギヤ20が回転可能に設けられる。第5ギヤ20はFHクラッチ18を係合することにより第1中間軸4と一体で回転可能とされている。また、前記第1中間軸4には第6ギヤ21、第7ギヤ22および第8ギヤ23が、前側から順にそれぞれ固着されている。第6ギヤ21は第2ギヤ15と噛み合い、第8ギヤ23は第4ギヤ17に噛み合っている。前記第1中間軸4の後側には、第1中間軸4と同軸に第4中間軸7が設けられる。この第4中間軸7は、中壁11を貫通して第1中間軸4側まで延長され、第4中間軸7の端部には軸継手24が設けられている。こうして、第1中間軸4は軸継手24により第4中間軸7に回転自在に支承されている。また、第4中間軸7には第9ギヤ25が固着されている。
【0022】
前記第2中間軸5は、中間部が中壁11によって支承されている。この第2中間軸5には、第3速用変速段クラッチである第3クラッチ26と、第2速用変速段クラッチである第2クラッチ27とがそれぞれ設けられる。第2中間軸5には、前側から順に、第10ギヤ28、第11ギヤ29、第12ギヤ30が第2中間軸5に対して回転可能に配される。第10ギヤ28と第11ギヤ29とは互いに結合され、第2中間軸5に対して一体で回転する。また、第2中間軸には第9ギヤと噛み合う第13ギヤ31が固着されている。
【0023】
第3中間軸6は、中間部が中壁11によって支承されており、この第3中間軸6と同軸上に後側出力軸8が配されている。前記第3中間軸6には、第4速用変速段クラッチである第4クラッチ32が設けられる。第3中間軸6には、第10ギヤ28と噛み合う第14ギヤ33が回転可能に配される。第14ギヤ33は第4クラッチ32を係合することにより第3中間軸6と一体で回転可能とされている。また、第4クラッチ32と中壁11を挟んで反対側に、第13ギヤ31と噛み合う第15ギヤ34が固着されている。この第15ギヤ34の後側にはインターアクスルディファレンシャル35が配されている。
【0024】
前記インターアクスルディファレンシャル35は、第1サンギヤ37および第2サンギヤ36と、第1サンギヤ37に噛み合う第1プラネタリギヤ38と、第2サンギヤ36および第1プラネタリギヤ38の各々に噛み合う第2プラネタリギヤ39と、この第2プラネタリギヤ39を支持する軸方向のキャリア40とを備え、前記キャリア40が前記第3中間軸6に結合されるとともに、前記第2サンギヤ36が後側出力軸8に結合されて構成されている。第2サンギヤ36には第16ギヤ41が固着されている。また、第2サンギヤ36とキャリア40との相対回転を不能とするデフロッククラッチ43が設けられている。前側出力軸9は後側出力軸8よりも下方に配置される。前側出力軸9には第16ギヤ41と噛み合う第17ギヤ42が固着されている。キャリア40から入力される駆動力は、インターアクスルディファレンシャル35のギヤ比によって決まる所定のトルク比で前側出力軸9および後側出力軸8に配分される。
【0025】
このように構成されている多軸式トランスミッション1は次のように作動する。
【0026】
前進第1速(F1)の速度状態にする際には、第1クラッチ19とFLクラッチ13とを係合させると、入力軸3の動力は、第2ギヤ15、第6ギヤ21、軸継手24、第9ギヤ25、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。前進第1速(F1)から前進第2速(F2)にシフトするには、FLクラッチ13を解放してFHクラッチ18を係合させると、入力軸3の動力は、第1ギヤ12、第5ギヤ20、軸継手24、第9ギヤ25、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。前進第2速(F2)から前進第3速(F3)にシフトするには、第1クラッチ19とFHクラッチ18とを解放して第2クラッチ27とFLクラッチ13とを係合させると、入力軸3の動力は、第2ギヤ15、第6ギヤ21、第8ギヤ23、第12ギヤ30、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。
【0027】
また、前進第3速(F3)から前進第4速(F4)にシフトするには、FLクラッチ13を解放してFHクラッチ18を係合させると、入力軸3の動力は、第1ギヤ12、第5ギヤ20、第8ギヤ23、第12ギヤ30、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。前進第4速(F4)から前進第5速(F5)にシフトするには、第2クラッチ27とFHクラッチ18とを解放して第3クラッチ26とFLクラッチ13とを係合させると、入力軸3の動力は、第2ギヤ15、第6ギヤ21、第7ギヤ22、第11ギヤ29、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。前進第5速(F5)から前進第6速(F6)にシフトするには、FLクラッチ13を解放してFHクラッチ18を係合させると、入力軸3の動力は、第1ギヤ12、第5ギヤ20、第7ギヤ22、第11ギヤ29、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。
【0028】
また、前進第6速(F6)から前進第7速(F7)にシフトするには、第3クラッチ26とFHクラッチ18とを解放して第4クラッチ32とFLクラッチ13とを係合させると、入力軸3の動力は、第2ギヤ15、第6ギヤ21、第7ギヤ22、第11ギヤ29、第10ギヤ28、第14ギヤ33および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。前進第7速(F7)から前進第8速(F8)にシフトするには、FLクラッチ13を解放してFHクラッチ18を係合させると、入力軸3の動力は、第1ギヤ12、第5ギヤ20、第7ギヤ22、第11ギヤ29、第10ギヤ28、第14ギヤ33および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。
【0029】
一方、後進第1速(R1)の速度状態にする際には、第1クラッチ19とRクラッチ14とを係合させると、入力軸3の動力は、第3ギヤ16、第4ギヤ17、第8ギヤ23、軸継手24、第9ギヤ25、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。後進第1速(R1)から後進第2速(R2)にシフトするには、第1クラッチ19を解放して第2クラッチ27を係合させると、入力軸3の動力は、第3ギヤ16、第4ギヤ17、第8ギヤ23、第12ギヤ30、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。後進第2速(R2)から後進第3速(R3)にシフトするには、第2クラッチ27を解放して第3クラッチ26を係合させると、入力軸3の動力は、第3ギヤ16、第4ギヤ17、第8ギヤ23、第7ギヤ22、第11ギヤ29、第13ギヤ31および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。後進第3速(R3)から後進第4速(R4)にシフトするには、第3クラッチ26を解放して第4クラッチ32を係合させると、入力軸3の動力は、第3ギヤ16、第4ギヤ17、第8ギヤ23、第7ギヤ22、第11ギヤ29、第10ギヤ28、第14ギヤ33および第15ギヤ34を介してインターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達される。
【0030】
こうして、各速度段において、インターアクスルディファレンシャル35のキャリア40に伝達された駆動力は、所定のトルク比で第2サンギヤ36および第1サンギヤ37に配分され、第2サンギヤ36から後側出力軸8へ伝達されるとともに、第1サンギヤ37から第16ギヤ41および第17ギヤ42を介して前側出力軸9へ伝達される。なお、本実施形態において、前側出力軸9および後側出力軸8へのトルク配分比は2:3に設定されている。
【0031】
本実施形態によれば、入力軸と出力軸との軸間距離の小さな小型の前進8速後進6速の多軸式トランスミッションを得ることができる。また、インターアクスルディファレンシャル35が中壁11の外側に配置されているので、大トルクによる軸の撓みを抑えることができる。さらに、インターアクスルディファレンシャル35が最下段の前側出力軸9上ではなく、最下段より1段上の第3中間軸6上に配されているので、オイルパン内のオイル撹拌ロスを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の多軸式トランスミッションは、アーティキュレートダンプトラックのトランスミッションに適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る多軸式トランスミッションのギヤトレーンを示すスケルトン図で、(a)は断面図、(b)は(a)の側面方向から見た模式図
【図2】従来の多軸式トランスミッションのギヤトレーンを示すスケルトン図
【符号の説明】
【0034】
1 多軸式トランスミッション
2 ミッションケース
3 入力軸
4 第1中間軸
7 第4中間軸
5 第2中間軸
6 第3中間軸
8 後側出力軸(第2出力軸)
9 前側出力軸(第1出力軸)
11 中壁
13 FLクラッチ(前進低速用副変速段クラッチ)
14 Rクラッチ(後進用クラッチ)
18 FHクラッチ(前進高速用副変速段クラッチ)
19 第1クラッチ(第1速用速度段クラッチ)
26 第3クラッチ(第3速用速度段クラッチ)
27 第2クラッチ(第2速用速度段クラッチ)
35 インターアクスルディファレンシャル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターアクスルディファレンシャルを介して結合される2つの出力軸を有する前進8速後進4速の多軸式トランスミッションであって、
入力軸と、
入力軸よりも下方で、入力軸に並列に配される第1中間軸と、
第1中間軸に並列に配される第2中間軸と、
第2中間軸に並列に配される第3中間軸と、
第1中間軸と同軸上に配される第4中間軸と、
第3中間軸よりも下方で、第3中間軸に並列に配される第1出力軸と、
第3中間軸と同軸上に配される第2出力軸と、
入力軸上に固着される第1ギヤと、
入力軸上に回転自在に配される第2ギヤと、
入力軸と第2ギヤとを接続可能な前進低速用副変速段クラッチと、
入力軸上に回転自在に配される第3ギヤと、
第3ギヤに噛み合うアイドル回転用の第4ギヤと、
入力軸と第3ギヤとを接続可能な後進用クラッチと、
第1中間軸上に回転自在に配され、第1ギヤと噛み合う第5ギヤと、
第1中間軸と第5ギヤとを接続可能な前進高速用副変速段クラッチと、
第1中間軸に固着され、第2ギヤと噛み合う第6ギヤと、
第1中間軸に固着される第7ギヤと、
第1中間軸に固着され、アイドル回転用の第4ギヤと噛み合う第8ギヤと、
第1中間軸と第4中間軸とを接続可能な第1速用変速段クラッチと、
第4中間軸に固着される第9ギヤと、
第2中間軸上に回転自在に配され、第7ギヤと噛み合う第11ギヤと、
第2中間軸上に第11ギヤと一体で回転自在に配される第10ギヤと、
第2中間軸上に回転自在に配され、第8ギヤと噛み合う第12ギヤと、
第2中間軸に固着され、第9ギヤと噛み合う第13ギヤと、
第2中間軸と第12ギヤとを接続可能な第2速用変速段クラッチと、
第2中間軸と第10ギヤおよび第13ギヤとを接続可能な第3速用変速段クラッチと、
第3中間軸上に回転自在に配され第10ギヤと噛み合う第14ギヤと、
第3中間軸と第14ギヤとを接続可能な第4速用変速段クラッチと、
第3中間軸に固着され、第13ギヤと噛み合う第15ギヤと、
第3中間軸と同軸に配置され、第3中間軸の回転を第1出力軸と第2出力軸に伝達するインターアクスルディファレンシャルとを備える
ことを特徴とする多軸式トランスミッション。
【請求項2】
インターアクスルディファレンシャルは遊星歯車式であることを特徴とする請求項1に記載の多軸式トランスミッション。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−281512(P2009−281512A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134564(P2008−134564)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】