説明

多軸車両及びその操舵制御装置

【課題】 6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両において、簡単な構成で小回り性能を向上させる。
【解決手段】 最前車軸22と最後車軸28の間に配置された1以上の中間車軸24、26に設けられた中間駆動輪34L、R、36L、Rを使って旋回を行なう。旋回を行う時、旋回外側の中間駆動輪34L、36Lの速度Voutを車速V0より高く制御し、かつ、旋回内側の中間駆動輪34R、36Rの速度Vinを車速V0より低く制御する。外側と内側の中間駆動輪の速度Vout、Vinは、操舵輪32L、R、34L、Rだけで旋回するときより小さい半径で旋回できるように、車速V0と操舵輪32L、R、34L、Rの操舵角ψとに応じて制御される。旋回時、中間駆動輪34L、R、36L、R以外の駆動輪32L、R、38L、Rへの動力伝達を切って、これらの駆動輪を遊動状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両に関し、特に多軸車両を小半径で旋回させるための操舵制御技術に関する。本発明は、例えば、軸間距離がほぼ均等な4車軸を有する8輪車両に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の旋回半径を小さくするための操舵装置が開発されている。特許文献1には、4輪車両において、進行方向に対する前側旋回内輪に制動をかけることが開示されている。また、特許文献2には、同じく4輪車両において、進行方向に対する後側旋回内輪に制動をかけることが開示されている。
【0003】
ところで、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を持つ多軸車両では、小半径での回転は4輪車より困難である。一例として、4車軸をもつ8輪車両を例に取って説明する。
【0004】
8輪車両では、通常、第1軸と第2軸からなる前2軸に結合された4輪が操舵輪であり、第3軸と第4軸からなる後2軸の4輪は非操舵輪である。前2軸の操舵輪の向きを変えることで、旋回が行なわれる。旋回中心は、最前部の操舵輪である第1軸の内輪の中心軸の延長線と、非操舵輪である第3軸と第4軸間の中線の延長線の交点となるが、両線間のスパンが大きいため、旋回中心は車体からかなり離れ、よって、最小旋回半径が大きい。このような8輪車両に特許文献1,2に開示された技術を応用して、旋回時に前2軸または後2軸の内輪に制動をかけたとしても、4輪車のようには効果的に旋回半径が小さくならない。
【0005】
8輪車に関して、別の原理に基づく操舵装置が、例えば、非特許文献1の第34頁に開示されている。この記事によれば、ドイツで1975年に開発されたダイムラーベンツ社製の8輪車両「ルクス」に採用された操舵装置は、時速30km以下で操舵する時には、前2軸を転舵するだけでなく、後2軸を逆位相に転舵する。このように前2軸と後2軸を逆位相に転舵する操舵装置は、8WS(Eight Wheel Steering System)と呼ばれる。
【0006】
8WSを採用することにより、前2軸だけで操舵する場合と比べて、旋回中心が車体により近づき、最小旋回半径が小さくなる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−49019号公報(例えば、請求項1)
【特許文献2】特開平11−49020号公報(例えば、請求項1)
【非特許文献1】雑誌「PANZER」、2005年7月号、アルゴノート社(例えば、第34頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、8WSでは、前2軸と後2軸を逆位相で転舵するための操舵装置の構造が複雑であり、また、車体の後2軸が配設された場所に操舵機構を収容する空間を設ける必要があるから、車体後部の乗員席や貨物室の容量が低減する虞がある。
【0009】
本発明の目的は、6輪車両や8輪車両のように3軸以上の車軸を有する多軸車両において、効果的に小回り性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの側面に従えば、最前車軸と最後車軸と1以上の中間車軸とを含む3以上の車軸を備えた多軸車両は、前記1以上の中間車軸に設けられた1対以上の中間駆動輪と、少なくとも前記最前車軸又は前記最後車軸に設けられた1対以上の操舵輪と、旋回運動を行うときに、旋回の内側の中間駆動輪と外側の中間駆動輪を異なる速度に制御する操舵制御装置とを備える。
【0011】
この多軸車両によれば、最前車軸と最後車軸との間に配置された1以上の中間車軸に設けられた1対以上の中間駆動輪を使って、前進にも後退時にも旋回運動を行なうことができる。旋回外側の中間駆動輪と内側の中間駆動輪の速度をどのように異ならせるかを制御することで、旋回半径の大きさが制御できる。そのため、操舵輪による舵きりだけで旋回する場合より小さい旋回半径で旋回することが可能である。
【0012】
中間駆動輪以外に、少なくとも最前車軸又は最後車軸に一対以上の駆動輪が設けられている場合には、前記操舵制御装置は、旋回運動を行うときに、前記中間駆動輪以外の駆動輪への駆動力の伝達を断ち、それにより、最前車軸及び最後車軸の双方に設けられた車輪が遊動輪となるように制御することができる。これにより、最前車軸及び最後車軸の双方の車輪が、中間駆動輪による旋回運動の支障を与えることが防止されるので、小半径での旋回がより容易になる。
【0013】
好適な実施形態では、前から順に第1軸、第2軸、第3軸及び第4軸からなる、軸間距離がほぼ均等な、4つの車軸を備えた8輪車両に、本発明が適用される。この8輪車両では、4対の車輪の全部が駆動輪であり、第1軸と第2軸の2対の車輪が操舵輪であり、第2軸と第3軸の2対の車輪が中間駆動輪である。そして、その2対の中間駆動輪を使って小半径の旋回を行なうことができ、かつ、2対の中間駆動輪で旋回を行なっている間、第1軸と第4軸の2対の駆動輪は、そこへの動力伝達が切断されて、遊動状態になる。
【0014】
このような4軸車両だけでなく、3軸車両や、5軸以上の車軸を持つ車両にも、本発明は適用可能である。
【0015】
本発明に従う多軸車両の操舵制御装置は、操舵輪の操舵角を検出する操舵角検出手段と、多軸車両の運転速度を検出する運転速度検出手段と、操舵角検出手段によって検出される操舵角と、運転速度検出手段によって検出される運転速度とに基づき、内側の中間駆動輪の速度と外側の中間駆動輪の速度を制御する中間駆動輪速度制御手段とを有することができる。この構成によれば、前進・後退にかかわらず検出された操舵角度や車速(車両代表点速度)などの現在の運転状態に応じて、内側と外側の中間駆動輪の速度が制御されるので、現在の運転状態に適した旋回半径やヨー角速度などの旋回条件で旋回運動を行なうことが可能であり、よって、旋回時における操作性、操縦性ならびに安定性を得ることができる。
【0016】
上述したように検出された現在の運転条件(操舵角度や運転速度など)に基づいて内側と外側の中間駆動輪の速度を制御する場合、その運転条件の下で操舵輪による舵きりだけで旋回したとした場合の旋回半径(通常旋回半径)より小さい旋回半径で旋回運動が行えるように、左側と右側の中間駆動輪のそれぞれの目標速度を決定し、それぞれの目標速度を使って内側と外側の中間駆動輪のそれぞれの速度を制御するようにすることができる。例えば、好適な実施形態では、検出された運転条件から定まる通常旋回半径に、1.0より小さい係数(例えば、0.8程度)を乗算して目標旋回半径を決定し、その小さい目標旋回半径で旋回できるように左側と右側の中間駆動輪のそれぞれ目標速度が決定される。その結果、操舵輪による舵きりだけで旋回する場合より小さい旋回半径での旋回が自動的に実現される。
【0017】
好適な実施形態では、運転速度検出手段は、左側の中間駆動輪の速度と右側の中間駆動輪の速度をそれぞれ検出する。そして、中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、検出された左側と右側の中間駆動輪の速度のうち、外側の中間駆動輪の速度に相当する一方が、上述した左側と右側の中間駆動輪の目標速度のうち、外側の中間駆動輪の目標速度に相当する一方とに基づいて、旋回内側と外側の中間駆動輪のそれぞれの速度を制御する。この構成によれば、特に極低速で旋回する場合、所望精度で車輪速度を検出するための所要時間が長くなって制御応答性が低下しても、左右の駆動輪のうちより高速である方の旋回外側の駆動輪の検出速度に基づいて制御が行なわれるので、制御応答性の低下の問題を緩和することができる。
【0018】
また、好適な実施形態では、上記運転速度検出手段は、多軸車両の代表点の速度を検出する手段を含み、中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、検出された代表点の速度に基づいて、内側の中間駆動輪の速度が代表点の速度より低く且つ外側の中間駆動輪の速度が代表点の速度より高くなるように、内側と外側の中間駆動輪の速度を制御する。この構成により、検出された代表点の速度(現在の車速)に適した旋回半径やヨー角速度などの旋回条件で旋回運動を行なうことが可能であり、旋回時における操作性、操縦性ならびに安定性を得ることができる。
【0019】
本発明に従う多軸車両は、左側の中間駆動輪と右側の中間駆動輪とをそれぞれ独立して制動する制動手段を備え、操舵制御装置は、その制動手段を制御する制動力制御手段を有するように構成されてもよい。制動力制御手段は、旋回運動を行なうとき、左側と右側の中間駆動輪にそれぞれ加えられる制動力を調整することができる。この構成によれば、前進・後退にかかわらず、左右の中間駆動輪への制動力の調整により、旋回運動を、例えば次のように制御することができる。
【0020】
すなわち、好適な実施形態では、内側と外側の中間駆動輪がディファレンシャルギアを介して結合されている。そして、上記制動力制御手段は、旋回運動を行なうとき、内側と外側の中間駆動輪の速度を異ならせるために、内側の中間駆動輪に制動力を与えるよう前記制動手段を制御する。この構成によれば、内側の中間駆動輪に制動力を与えることで、内側の中間駆動輪の速度を落とし、同時に外側の中間駆動輪の速度を上げて、旋回半径を小さくすることができる。
【0021】
さらに、好適な実施形態では、上記制動力制御手段が、内側の中間駆動輪がロックしたことを検出する内輪ロック検出手段と、旋内側の中間駆動輪のロックが検出されたとき、内側の中間駆動輪の制動を緩和するとともに、外側の中間駆動に制動力を与えるよう制動手段を制御する内輪ロック解除手段とを有する。この構成によれば、外側の中間駆動輪に制動力を与えることで、内側の駆動輪に生じた車輪ロックを解除することができる。これにより、旋回中に車輪に無理な横力が働くのを防止するとともに、路面状況に応じて旋回半径が大きくばらつくことを予防できる。
【0022】
このように、本発明にかかる多軸車両の好適な実施形態は、上述した制動力制御手段の働きによって、安定な走行状態を保ちながら旋回半径を小さくすることができる。
【0023】
また、上述した制動力制御手段は、内側と外側の中間駆動輪にそれぞれ加えられる制動力を制御するために、内側と外側の中間駆動輪をそれぞれ制動する時間を制御するように構成されてよい。その場合、制動力制御手段は、パルス幅制御の方法により周期的に制動と非制動を交互に繰り返し、内側と外側の中間駆動輪の速度を制御するために1周期内での制動時間のデューティ比を制御し、また、中間駆動輪のロックを防止するために各周期の長さを制御するように構成されてよい。このようなパルス幅制御の方法を採用し、中間駆動輪の速度制御をデューティ比の調整で行い、ロック防止を周期の調整で行なうことにより、安定した制御を実現することができる。
【0024】
本発明の別の側面に従えば、上述したよう多軸車両における操舵制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、3軸以上の車軸を有する多軸車両において効果的に小回り性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる多軸車両の操舵制御装置について説明する。
【0027】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態にかかる多軸車両における操舵制御の概要を説明する。
【0028】
図1に示すように、この実施形態にかかる多軸車両20は、前から順に第1軸22、第2軸24、第3軸26及び第4軸28からなる4車軸を備えた8輪車両である。4車軸22、24、26、28の軸間距離はほぼ均等であって、第1、2軸22、24間距離が短く、第2、3軸24、26間距離が長く、かつ第3、4軸26、28間距離が近いというような車軸配置ではない。必ずしも、軸間距離がほぼ均等であるという車軸配置でなければ本発明が適用できないわけではないが、この車軸配置は、本発明による小回り性能の向上という効果を得るために好ましいものである。
【0029】
第1軸22と第2軸24からなる前2軸に設けられた2対の車輪32L、32R、34L、34Rは、アッカーマンリンク(図示せず)に結合された方向可変の操舵輪である。他方、第3軸26と第4軸28からなる後2軸に設けられた2対の車輪36L、36R、38L、38Rは、方向不変の非操舵輪である。また、第2軸24と第3軸26とからなる中間2軸に設けられた2対の車輪34L、34R、36L、36Rは、エンジン(図示せず)からの駆動力を受ける駆動輪である。また、最前の第1軸22の左右車輪32L、32Rと、最後の第4軸28の左右車輪38L、38Rは、いずれも、後に説明するクラッチにより、駆動輪と遊動輪とに切り替えることができる。この明細書では、中間2軸24、26の駆動輪34L、34R、36L、36Rを、第1、4軸22、28の駆動輪32L、32R、38L、38Rから区別するために、「中間駆動輪」と呼ぶ。
【0030】
この実施形態にかかる多軸車両20に搭載された、本発明の原理に従がう旋回制御装置は、操舵輪32L、32R、34L、34Rの旋回操舵が行なわれると、左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rの回転速度を異なる速度に制御する。左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rとの間の速度差により、強制的に多軸車両20の進路が変更されるので、操舵輪32L、32R、34L、34Rの舵きりのみで旋回する場合より小さい半径で、多軸車両20が旋回する。
【0031】
一例として、右方向に旋回する場合を想定して、より具体的に説明する。この場合、旋回外側(左側)の中間駆動輪34L、36Lは高い走行速度Voutで走行するように回転速度が制御され、これに対し、旋回内側(右側)の中間駆動輪34R、36Rは低い走行速度Vinで走行するように回転速度が制御される。ここで、旋回外側の2つの中間駆動輪34L、36Lは、まとめて、巨大な1つの中間駆動輪40Lとみなすことができ、同様に、旋回内側の2つの中間駆動輪34R、36Rも、まとめて、巨大な1つの中間駆動輪40Rとみなすことができる。従って、外側と内側の巨大な中間駆動輪40Lと40Rがそれぞれ異なる走行速度VoutとVinで走行するとみなすことができ、旋回外側の中間駆動輪34L、36L(40L)が描く旋回半径は概ね図示のような大半径Routとなり、旋回内側の中間駆動輪34R、36R(40R)が描く旋回半径は概ね図示のような小半径Rinとなる。
【0032】
ここで、多軸車両20の代表点30を多軸車両20の車体の長さと幅の中央付近に設けた場合、この代表点30の走行速度V0と旋回半径R0と旋回のヨー角速度ωについて、次の関係式100が近似的に成立する。式100において、記号Hは、左右の中間駆動輪40L、40R間の距離を表し、この距離Hは概略的には車体の幅にほぼ相当する(以下、この距離Hを「車幅」という)。
【0033】
【数1】

ここで、代表点30は車体の中央付近に配置されているから、代表点30の旋回半径R0は、次式102で表される。
【0034】
【数2】

よって、次の関係式104が近似的に成立する。
【0035】
【数3】

この実施形態にかかる多軸車両20では、左側の中間駆動輪34L、36Lと右側の中間駆動輪34R、36Rがそれぞれディファレンシャルギヤで連結され、それらのディファレンシャルギヤの入力軸にトランスミッションの出力軸の回転速度が与えられる。この場合、多軸車両20が直進走行する時の走行速度Vdは下式106で与えられる。
【0036】
【数4】

上記の式104と式106から、V0=Vdであり、代表点30の走行速度V0は、トランスミッションの出力軸の回転速度から読み取ることができる。
【0037】
代表点30の走行速度(以下、「代表速度」という)V0が或る値である時、旋回外側の中間駆動輪34L、36Lの走行速度(以下、「外側中間駆動輪速度」という)Voutを代表速度V0より大きい或る値になるよう制御すれば、旋回内側の中間駆動輪34R、36Rの走行速度(以下、「内側中間駆動輪速度」という)Vinは、上記式2に従って自動的に、代表速度V0より低い或る値に決まる。或いは、旋回内側の中間駆動輪34R、36Rに制動力を加えて、内側中間駆動輪速度Vinを代表速度V0より低い値に制御すれば、自動的に、外側中間駆動輪速度Voutは、上記式104に従って自動的に、代表速度V0より高い値に制御される。
【0038】
このように旋回時に内側中間駆動輪速度Vinと外側中間駆動輪速度Voutを異なる値に制御することにより、式100と式102により導かれる次の式108により決まる旋回半径R0でに近い半径で、多軸車両20が旋回する。
【0039】
【数5】

ところで、上述した内側の中間駆動輪34R、36Rに制動力を加える制御において、中間駆動輪34R、36Rに制動をかけすぎてその車輪速度Vinがその目標値より低下してロックしそうになった場合、ディファレンシャルギアの作用で、外側中間駆動輪速度Voutがその目標値を超過してしまい、適正な半径と角度速度での旋回ができないことになる。この問題を解決するため、この実施形態にかかる多軸車両20の操舵制御装置は、外側中間駆動輪速度Voutがその目標値を大きく超過してしまった場合(或は、内側中間駆動輪速度Vinが車輪ロックが生じそうなほどに低下した場合)には、外側の中間駆動輪34L、36Lに制動力を与えることで、ディファレンシャルギアから内輪側に加速トルクを与え、下がり過ぎた内側中間駆動輪速度Vinを上昇させて目標値へ戻すことができる。
【0040】
このように、この実施形態にかかる多軸車両20の操舵制御装置は、内側の中間駆動輪34R、36Rと外側の中間駆動輪34L、36Lのそれぞれに独立して制動力を加えることにより、所望の旋回半径と角速度での旋回を可能にする。
【0041】
中間駆動輪速度Vin、Voutを検出するための速度センサの構成には、種々のバリエーションが採用できる。この実施形態にかかる多軸車両20では、一例として、各間駆動輪に取り付けた磁性体の歯車の回転を、磁気回路等を用いた電磁ピックアップでパルス信号として取り込み計数するという構成の磁気式の回転数センサを採用する。この磁気式の回転数センサは、光学的なロータリエンコーダを用いた光学式の回転数センサに比べた場合、堅牢であるという利点を持つが、反面、構造的に角度分解能を非常高くすることが難しい。そのため、磁気式の回転数センサによると、車輪の速度が低下するほど、パルス信号の発生間隔が長くなり、十分な精度で速度を検出するために必要な数のパルス信号を計数する所要時間が長くなり、操舵制御装置の応答時間が長くなる。この問題を軽減するため、この実施形態にかかる多軸車両20の操舵制御装置は、左側の中間駆動輪34R、36Rと右側の中間駆動輪34L、36Lの双方にそれぞれ取り付けられた速度検出装置を備え、そして、旋回時には、旋回方向に応じて(例えば、操舵輪の操舵角に基づいて)、左側の中間駆動輪34R、36Rと右側の中間駆動輪34L、36Lのうちから外側の中間駆動輪(つまり、より高速に回転する方の駆動輪)を選択し、その外側の中間駆動輪に設けられた速度検出装置からのパルス信号に基づいて計算される外側の中間駆動輪速度Voutを用いて、上述したような操舵制御を行なう。これにより、低速運転時の制御応答性の低下を軽減することができる。
【0042】
さらに、滑りやすいなどの路面状況下では、内側中間駆動輪に過剰な制動力をかけると内側中間駆動輪がロックしてしまう。そこで、この実施形態にかかる多軸車両20の操舵制御装置は、内側中間駆動輪速度Vinを、内側中間駆動輪のロック状態を検出するために利用する。そして、中間駆動輪のロックが検出された場合には、操舵制御装置は、内側中間駆動輪の制動を一時的に中止するとともに、外側中間駆動輪に一時的に制動力を加えることで、ディファレンシャルギヤからのトルクによって、内側中間駆動輪のロックを解除する。
【0043】
車輪のブレーキの構成には、種々のバリエーションが採用できる。この実施形態にかかる多軸車両20では、一例として、乾式のエアブレーキを使用する。乾式のエアブレーキの場合、ブレーキ内部の摩擦係数がブレーキの発熱によって変化して制動力を線形に制御することが難しく、また、エア配管の圧力伝達に応答遅れが存在する。そのため、制動力そのものをフィードバック制御すると、制御が発散するおそれがある。そこで、この実施形態にかかる多軸車両20の操舵制御装置は、回転数センサからのフィードバックに基づいて、適当なタイミングでブレーキをON-OFF制御するための構成を備える。具体的には、エア圧を増圧するための電磁弁を励磁する時間Ton((つまり、ブレーキをONにする時間であり、以下、「ブレーキオン時間」という)と、励磁を行なわない時間Toff(つまり、ブレーキをOFFにする時間であり、以下、「ブレーキオフ時間」という)との間のデューティ比S=Ton/(Ton+Toff)と、ON-OFF周期T=(Ton+Toff)とが、フィードバック制御により自動調整される。
【0044】
次に、本発明の一実施形態にかかる多軸車両20及び操作制御装置について、より具体的に説明する。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態にかかる多軸車両20の車輪駆動機構の構成を示す平面図である。
【0046】
図2に示すように、エンジン(図示省略)により駆動されるトランスミッション50の出力軸52が分配ギヤ54に接続され、分配ギヤ54の2つの出力軸56、58がそれぞれ第2軸24と第3軸26のディファレンシャルギヤ60、70に接続される。ここで、分配ギヤ54の構成には、ディファレンシャルギヤあるいは単なる等速分配ギヤを用いることができるが、この実施形態では説明を簡単にするため、入力軸52と2つの出力軸56の回転数が等しい等速分配ギヤを用いるものとする。
【0047】
分配ギヤ54の出力軸56は、第2軸24のディファレンシャルギヤ60に接続されてこれを駆動するだけでなく、第2軸24のディファレンシャルギヤ60を貫通して、第1軸駆動クラッチ64の入力軸62に接続され、第1軸駆動クラッチ64の出力軸66は、第1軸22のディファレンシャルギヤ68に接続される。同様に、分配ギヤ54の出力軸58は、第3軸26のディファレンシャルギヤ70に接続されるだけでなく、第3軸26のディファレンシャルギヤ70を貫通して、第4軸駆動クラッチ74の入力軸72に接続され、第4軸駆動クラッチ74の出力軸76は第4軸28のディファレンシャルギヤ78に接続される。
【0048】
従って、第2軸24と第3軸26は常に分配ギヤ54からの動力により駆動されるので、第2軸24と第3軸26に結合された4つの中間駆動輪34L、34R、36L、36Rは常に駆動輪である。これに対し、第1軸24に結合された車輪32L、32Rは、第1軸駆動クラッチ64が接続されているときは駆動輪であるが、第1軸駆動クラッチ64が切り離されているときには遊動輪である。同様に、第4軸28に結合された車輪38L、38Rも、第4軸駆動クラッチ74が接続されているときは駆動輪であるが、第4軸駆動クラッチ74が切り離されているときには遊動輪である。
【0049】
この実施形態にかかる多軸車両20の操舵制御装置は、中間駆動輪34L、34R、36L、36Rを使って上記のように旋回運動を行なっている間、第1軸駆動クラッチ64と第4軸駆動クラッチ74の双方を切り離して、図3に示すように、第1軸22と第4軸28の車輪32L、32R、38L、38Rの全てを遊動状態にする。遊動状態にあるこれらの車輪32L、32R、38L、38Rは、エンジンの回転数に拘束されず、路面から受ける力で自由に回転できるので、中間駆動輪34L、34R、36L、36Rによる旋回運動を妨げない。
【0050】
図4は、この実施形態にかかる多軸車両20に搭載されたエアブレーキの配管システムのうち、本発明の説明に必要な部分だけを示す。
【0051】
図4に示すように、8つの車輪のブレーキシリンダ110L、R〜116L、Rは、1つのブレーキペダル118により操作されるブレーキバルブ120の出力である2系統のブレーキ配管140、150のいずれかに接続されている。運転者がブレーキペダル118を踏めば、エアタンク(図示せず)から供給された元配管160の高圧空気が8つのブレーキシリンダ110L、R〜116L、Rの全てに供給されて、8車輪全てに制動力が加えられ、他方、運転者がブレーキペダル118から足を離せば、8つのブレーキシリンダ110L、R〜116L、R内の高圧空気がブレーキバルブ120を通じて大気へ放出されて(点線矢印参照)、8車輪全ての制動力が消失する。
【0052】
第2軸と第3軸の4つの中間駆動輪用の4つのブレーキシリンダ112L、R、114L、Rへの配管には、自動増圧制御弁122L、R、124L、R、自動増圧チェックバルブ142L、R、144L、R、手動増圧チェックバルブ152L、R、154L、Rならびに減圧絞り162L、R、164L、Rが設けられてある。上述したブレーキペダル118の操作に応答したエア供給とは独立して、自動増圧制御弁122L、R、124L、Rの開閉によっても、元配管160の高圧空気が中間駆動輪用の4つのブレーキシリンダ112L、R、114L、Rへ供給されるようになっている。すなわち、4つの中間駆動輪に対応した自動増圧制御弁122L、R、124L、Rを個別に励磁することにより、ブレーキシリンダ112L、R、114L、Rに個別に高圧空気を供給して、4つの中間駆動輪に個別に制動力を加えることができる。
【0053】
以下、4つの中間駆動輪中の第2軸右側車輪34R用のブレーキ系統を例にとり、図5〜図8を用いて、自動増圧制御弁の働きを説明する。
【0054】
図5と図6は、ブレーキペダル118が踏まれていないときに自動増圧制御弁122Rを開閉した場合の動作を示す。
【0055】
ブレーキペダル118が踏まれていないときに、自動増圧制御弁122Rが励磁されて開くと、図5に示すように、元配管160からの高圧空気が自動増圧制御弁122Rと自動増圧チェックバルブ142Rを通ってブレーキシリンダ112Rに流入する(矢印170)とともに、その一部が減圧絞り162Rとブレーキバルブ120を通って大気に放出される(矢印172)。自動増圧制御弁122Rの配管抵抗は減圧絞りに比べて十分低いので、自動増圧制御弁122Rを励磁し続ければ、ブレーキシリンダ112Rにはエアタンクの高圧空気とほぼ同じ圧力を加えることができる。その後、自動増圧制御弁122Rが遮断されると、図6に示すように、ブレーキシリンダ中112Rの高圧空気が減圧絞り162Rとブレーキバルブ120を通って大気に放出される(矢印172)。
【0056】
図7は、自動増圧制御弁の励磁に伴うブレーキシリンダ内の圧力変化と制動力の時間的な関係を示したものである。
【0057】
図7に示すように、時刻t0で自動増圧弁の励磁がオンされると、配管中の空気の伝播遅れ時間(例えば、約20〜30ミリ秒)後に、ブレーキシリンダ圧力が上昇し始める(時刻t1)。ブレーキシリンダ圧力が所定のオフセット圧よりも高くなると、ブレーキ内部でバネを開放しようとする内蔵バネの力に打ち勝ってブレーキが閉まり、制動力が発生し始める(時刻t2)。
【0058】
その後、時刻t3で自動増圧弁の励磁がオフされると、配管中の空気の伝播遅れ時間後、ブレーキシリンダ圧力が低下し始める(時刻t4)。これは、ブレーキシリンダ中の高圧空気が減圧絞りとブレーキバルブを通って大気に放出されるために圧力が低下するものである。ブレーキシリンダ中の圧力がオフセット圧を下回ったとき(時刻t5)、ブレーキ内部の内蔵バネの力に負けてブレーキが開放され、制動力が消失する。
【0059】
図8は、自動増圧制御弁の励磁のオンとオフを交互に繰り返した場合の制動力の推移を示したものである。
【0060】
図8において、異なる長さのオン時間Ton1とTon2の時の制動力平均値F1とF3を比較すればわかるように、オン時間Tonを延ばせば制動力の平均値は上昇し、制動力の最大値に近づく。また、オン時間Ton1とオフ時間Toff1の時の制動力平均値F1とF2を比較すればわかるように、オフ時間Toff1を延ばせは制動力の平均値は減少し、ゼロに近づく。
【0061】
このように、励磁電流のパルス幅としてのオン時間Tonとオフ時間Toffを調整することにより単位時間あたりの制動力の平均値を制御することができる。すなわち、自動増圧制御弁の励磁タイミングの調節によって、単位時間あたりの制動力の平均値を制御することができる。
【0062】
次に、以上のような構成の車輪駆動機構を備えた多軸車両20に搭載された操舵制御装置について、詳細に説明する。
【0063】
図9は、この多軸車両20に搭載された操舵制御装置180の、本発明の原理に従う操舵制御に直接関わる部分の構成を示す。
【0064】
図9に示すように、操舵制御装置180は、例えばプログラムされたマイクロコンピュータを用いた電子制御ユニット(以下、「ECU」という)192を備える。ECU192は、4つの中間駆動輪34L、R、36L、R、にそれぞれ設けられた回転数センサ182L、R、184L、Rから、4つの中間駆動輪34L、R、36L、Rの速度、すなわち、第2軸左車輪速度V2L、第2軸右車輪速度V2R、第3軸左車輪速度V3L、第3軸右車輪速度V3Rをそれぞれ表す信号を入力する。また、ECU192は、多軸車両20の運転席内の操舵ハンドル(図示せず)又は4つの操舵輪32L、R、34L、Rなどに設けられた操舵角センサ186から、操舵輪32L、R、34L、Rの操舵角度ψを表す信号を入力する。さらに、ECU192は、トランスミッションの出力軸52に設けられた回転数センサ188から、トランスミッション出力軸回転数N0を表す信号を入力する。
【0065】
さらに、ECU192には、運転席内に設けられた制御選択スイッチ190が接続される。制御選択スイッチ190は、運転者により操作されて、本発明の原理に従う操舵制御をオンにするかオフにするかの選択信号を、ECU192に与える。ECU192は、制御選択スイッチ190から制御オン指令を受けた場合には、本発明の原理に従って中間駆動輪を使うことにより、操舵輪の舵きりだけに従う旋回半径より小さい旋回半径で旋回を行なう運転モードを選択する(以下、この運転モードを「機動モード」という)が、他方、制御オフ指令を受けた場合には、旋回半径を小さくする制御を実行せず、操舵輪の舵きりに従った旋回半径で旋回する運転モードを選択する(以下、この運転モードを「通常モード」という)。
【0066】
ECU192は、4つの中間駆動輪34L、R、36L、Rに対する制動力を個別にオンオフ制御するための4つの自動増圧制御弁、すなわち、第2軸左自動増圧制御弁122L、第2軸右自動増圧制御弁122R、第3軸左自動増圧制御弁124Lならびに第3軸右自動増圧制御弁124Rへ、個別に励磁信号を出力する。ECU192は、また、第1軸駆動クラッチ64および第4軸駆動クラッチ74に対して、それを接続したり切り離したりするためのクラッチ制御信号を出力する。
【0067】
ECU192は、上述した各種の入力信号に基づいて、旋回運動時における中間駆動輪34L、R、36L、Rのそれぞれの最適速度を計算し、そして、中間駆動輪34L、R、36L、Rの実際の速度がそれぞれの最適速度になるように、上記励磁信号を用いて、中間駆動輪34L、R、36L、Rへの制動を制御する。特に機動モードが選択されている場合、ECU192は、旋回時には、操舵輪32L、R、34L、Rの舵きりだけで旋回するときよりも小さい旋回半径で旋回するように、中間駆動輪34L、R、36L、Rの速度を制御すると共に、その旋回に支障を与えないよう、第1、4軸駆動クラッチ64、74を切り離して第1軸と第4軸の車輪32L、R、38L、Rを遊動状態にする。
【0068】
図10は、ECU192に組み込まれた中間駆動輪の最適速度を演算する部分の機能的な構成を示す。図10に示す演算は、ECU192内でマイクロプロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより行なわれてもよいし、或は、ECU192内に組み込まれる専用ハードウェアロジック回路により行なわれてもよい。
【0069】
図10において、左最適速度VLSは、左側の2つの中間駆動輪34L、36Lに共通に適用される速度目標値としての最適車輪速度を示す。同様に、右最適速度VRSは、右側の2つの中間駆動輪34R、36Rに共通に適用される速度目標値としての最適車輪速度を示す。
【0070】
図10に示すように、運転者がステアリングハンドルを操作することにより生じた操舵角度ψは、操舵輪32L、R、34L、Rのアッカーマンリンクの構造にもとづく変換関数(例えば、変換テーブル)を有する変換計算部200により、旋回半径Rに変換される。変換された旋回半径Rは、操舵輪32L、R、34L、Rの舵きりだけで旋回するときの旋回半径に相当し、以下、これを「通常旋回半径」という。乗算部202により、通常旋回半径Rに所定の縮小係数dが乗算されて、多軸車両20の代表点30の旋回半径の目標値R0Sが算出される。ここで、縮小係数dは、機動モードが選択されているときには1.0より小さい値、例えば0.8であり、通常モードが選択されている時には、1.0である。従って、代表点旋回半径目標値R0Sは、機動モードのときには、通常旋回半径Rよりも小さい半径に設定され、通常モードのときには、通常旋回半径Rと同じ半径に設定される。
【0071】
また、係数部204において、トランスミッション出力軸回転数N0に所定の係数kが乗算されて、代表点30の速度V0が算出される。ここで、係数kの値は、車両が直進しているときのトランスミッション出力軸回転数Nと代表点30の速度V(車速計で測定される速度)との間の比k=V/Nとして、予め求めておくことができる。
【0072】
最適速度計算部206にて、代表点旋回半径目標値R0S、代表点速度V0および車幅Hから、下記の近似演算式110によって、左最適速度VLSと右最適速度VRSが算出される。ここで、左最適速度VLSは、左側の2つの中間駆動輪34L、36Lに共通に適用される速度目標値である。同様に、右最適速度は、右側の2つの中間駆動輪34R、36Rに共通に適用される速度目標値である。下式110は、上述した式108から導かれるものであり、その中で、代表点旋回半径Rは、旋回中心が車体の右側にある(VLS=Vout、VRS=Vin)ときは正の値をとり、左側にある(VLS=Vin、VRS=Vout)ときには負の値をとる。
【0073】
【数6】

ECU192は、以上のようにして左右の最適速度VLS、VRSを決定し、そして、左右の中間駆動輪速度VL、VRが左右の最適速度VLS、VRSにそれぞれなるように、左右の中間駆動輪の制動を制御する。
【0074】
図11は、操舵制御装置180のECU192で実行される、左右の中間駆動輪の制動の制御のための処理の流れを示す。
【0075】
図11において、ステップ300〜304は、既に図10を参照して説明した、左右の最適速度VLS、VRSを決定する処理である。ステップ306では、多軸車両20が行なうべき運動がほぼ直進か、左旋回か、右旋回かが判断され、その結果、左旋回又は右旋回の場合にはステップ308又は310で制動制御が行なわれる。ステップ306、308及び310は、例えば次の(1)〜(3)に述べるようにして行なうことができる。
(1) VLS≒VRSの場合
算出された左車輪速度VLSと右最適速度VRS とが比較される。両速度がほぼ等しければ、概ね直進すべきと判断される。この場合には、中間駆動輪34L、R、36L、Rの自動的な制動は行わない。
(2) VLS>>VRS場合
この場合には、右旋回すべきと判断される。この場合、左側(つまり、旋回外側)の中間駆動輪34L、36Lの平均速度VLが左最適速度(目標値)VLSを下回ったかどうかがチェックされ、下回ったならば、右側(つまり、旋回内側)の自動増圧制御弁122R、124Rを励磁して右側中間駆動輪34R、36Rを制動する。既に説明したように、右側中間駆動輪34R、36Rを制動すれば、ディファレンシャルギヤの作用により、自動的に左側中間駆動輪34L、36Lが加速されて左最適速度VLSに近づく。
(3) VLS<<VRSの場合
この場合には、左旋回すべきと判断される。この場合、右側(つまり、旋回外側)の中間駆動輪34R、36Rの平均速度VRが右最適速度(目標値)VRSを下回ったかどうかがチェックされ、下回ったならば、左側(つまり、旋回内側)の自動増圧制御弁122L、124Lを励磁して左側中間駆動輪34L、36Lを制動する。既に説明したように、左側中間駆動輪34L、36Lを制動すれば、ディファレンシャルギヤの作用により、自動的に右側中間駆動輪34R、36Rが加速されて右最適速度VRSに近づく。
【0076】
図12は、右旋回を例にとり、右側(旋回内側)自動増圧制御弁122R、124Rの励磁に伴う車輪速度の変化例を示す。
【0077】
図12に示す例において、時刻t1以前は制御選択スイッチ190がオフになっており、通常モードが選択されている。このときは、左側中間駆動輪34L、36L及び右側中間駆動輪34R、36Rは、それぞれ、そのときの代表点速度V0と、操舵角度ψに従うアッカーマンリンクの作用で決まる走行速度でそれぞれ回転する。
【0078】
時刻t1において制御選択スイッチ190がオンになって、機動モードが選択される。機動モードにおいて、VLS>>VRSであれば、右旋回を行うべきと判断され、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左最適速度VLSと比較される。図示の例では、時刻t1において、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左最適速度VLSを下回っているので、内側(右側)の自動増圧制御弁122R、124Rの励磁がオンにされる。それにより、内側(右側)の中間駆動輪速度VRが低下し、同時に、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが上昇する。
【0079】
励磁を開始してから時間がTon1だけ経過した時刻tのとき、外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左目標速度VLSに到達すると、その瞬間に内側(右側)の自動増圧制御弁122R、124Rの励磁がオフにされる。しかし、エアブレーキの動作遅れのため、すぐには内側(右側)の中間駆動輪34R、36Rの制動が解除されず、外側(左側)の中間駆動輪速度VLは目標速度VLSを若干超過することになる。その後、内側(右側)の中間駆動輪34R、36Rの制動が解除されると、トルクが減少した外側(左側)の中間駆動輪速度VLはゆるやかに低下しはじめる。時刻tのとき再び外側(左側)の中間駆動輪速度VLが左目標速度VLSを下回ると、上記と同様にして、それが左目標速度VLSに戻るまで再び内側の内側(右側)の自動増圧制御弁122R、124Rの励磁がオンにされる。
【0080】
このようにして、機動モードにおける旋回時には、より高速である外側中間駆動輪の速度が最適速度であるか否かがチェックされ、その結果に応じて、内側中間駆動輪を制動する合計時間が増減され、その結果、内側と外側の中間駆動輪の速度が、それぞれの最適速度の近傍に制御される。
【0081】
ところで、路面の摩擦係数が低く、制動力を与えた車輪がロックする場合には、操舵制御装置180のECU192は、次のようなロック解除処理を行なう。
【0082】
図13は、操舵制御装置180のECU192で実行される、ロック解除のための処理の流れを示す。
【0083】
図13に示すように、ステップ320では、既に説明したような方法で、内側と外側の中間駆動輪の速度VinとVoutを、それぞれの最適速度VRSとVLSに制御するよう(旋回方向により、VRSとVLSのいずれが内側と外側に対応するかは異なる)、内側の中間駆動輪への制動が制御される。それとともに、ステップ322で、制動がかけられた内側の中間駆動輪がロックしたかどうかがチェックされる。
【0084】
内側の中間駆動輪がロックしたことが検出された場合、ステップ324で、内側中間駆動輪を制動した時間である励磁オン時間Tonが、電磁弁や配管の応答時間で決まる最小時間Tminよりも長かったか短かったかがチェックされる。その結果、励磁オン時間Tonが最小時間Tminよりも短かった場合には、内側の路面の摩擦係数が極めて低いと推定されるため、ロックした内側中間駆動輪をそのままスリップさせたままで、旋回運動を続ける。
【0085】
一方、ステップ324の判断で、励磁オン時間Tonが最小時間Tminよりも長かった場合には、励磁オン時間Ton(制動時間)を短縮すればロックを防止できる可能性がある。従って、この場合には、ステップ326で、内側中間駆動輪の制動を解除するとともに、外側中間駆動輪に短い時間だけ制動を与え、それにより、ディファレンシャルギアを通じてエンジントルクを内側中間駆動輪に供給することで内側中間駆動輪を強制的に駆動し、内側中間駆動輪の回転を加速してロックを解除する。さらに、ステップ328で、次回のロックを防止するため、内側中間駆動輪の制動時間Tonを減らす目的で、外側中間駆動輪の目標速度VoutS(これは当初は、右旋回の場合は左最適速度VLSに、左旋回の場合は右最適速度VRSに等しく設定される)を、その現在値より所定の刻み幅Δvだけより低い値に変更する。
【0086】
他方、ステップ322で、内側中間駆動輪のロックが検出されなかった場合には、ステップ330で、外側中間駆動輪の目標速度VoutSが、右旋回の場合は左最適速度VLSに、左旋回の場合は右最適速度VRSに、等しく設定されているか又は低く設定されているかがチェックされる。その結果、等しく設定されているならば、制御はステップ320に戻る。他方、低く設定されている場合(すなわち、上述のステップ328により低められていた場合)には、最早その低い値にしておく必要がないので、外側中間駆動輪の目標速度VoutSを刻み幅Δvだけ高い値に戻す。
【0087】
以上のようにして、内側中間駆動輪のロックが発生したら、外側中間駆動輪に制動が加えられて内側中間駆動輪のロックが解消されるとともに、内側中間駆動輪の以後の制動の継続時間が減少させられて、次回のロックが予防される。
【0088】
以上説明した、この実施形態の操舵制御装置180における外側中間駆動輪速度の制御方法と内側外側中間駆動輪速度の緩和方法の要点は、次の通りである。
【0089】
(1) 外側中間駆動輪速度の制御方法
外輪側の車輪速度を観測し、
A) 外側中間駆動輪速度が目標速度よりも低下したら、内側中間駆動輪を制動する時間の合計を増加させ、
B) 外側中間駆動輪速度が目標速度よりも増加したら、内側中間駆動輪を制動する時間の合計を減少させ、また、
C) 外側中間駆動輪速度が目標速度の上下の許容範囲にあれば、内側中間駆動輪を制動する時間の合計を今までどおりで維持する。
【0090】
(1) 内側中間駆動輪速度のロックの緩和方法
A) 内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonには基準値があり、これを初期値とし、
B) 内側中間駆動輪にロックが発生したら、内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonを短縮し、また、
C) 内側中間駆動輪にロックが発生しなければ、内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonを、上記基準値を上限として増加させる。
【0091】
以上のような制御を行なうに当り、車輪のひずみ、近似式の影響あるいは路面摩擦係数の複雑な変化によるゲインの変化や、駆動軸のねじれやバックラッシュによる応答の遅れなどが発生するため、システムの制御誤差を抑制しつつ動作を安定化させるためには、積分動作等を含んだ見通しのよい制御則を組み込んだ制御器が必要である。その観点から、この実施形態における操舵制御装置180のECU192に組み込まれた制御システムは、パルス幅変調の方法による自動増圧制御弁の周期的なON-OFF制御を行なう。そして、制御システムは、旋回半径の制御と、内輪ロックの抑制制御とを、独立した別の変数を用いて行う。
【0092】
すなわち、この制御システムは、内側中間駆動輪を制動するための自動増圧制御弁を周期的にON-OFF制御しつつ、そのON-OFFの周期T(=Ton+Toff)の長さは変更せずに、1周期内でのデューティ比S(=Ton/T)を操作することにより、単位時間当たりに内側中間駆動輪を制動する時間の合計を増減させ、それにより、外側中間駆動輪速度を制御する。また、この制御システムは、また、デューティ比Sは変更せずに、ON-OFF周期Tの長さを操作することにより、内側中間駆動輪の制動を継続する時間Tonが増減され、それにより、内側中間駆動輪のロックが緩和される。
【0093】
図14は、この制御システムの構成を示す。
【0094】
図14に示すように、この制御システム340では、既に説明したようにして算出された外側中間駆動輪の最適速度VoutS(右旋回の場合は左最適速度VLS、左旋回の場合は右最適速度VRS)を制御目標値とし、外側中間駆動輪速度Voutをフィードバック信号として速度偏差eが算出される。内部に積分動作の機能を有する制御器(例えばPIDコントローラ)342にて、速度偏差eに基づいて、内側中間駆動輪の制動用の自動増圧制御弁をON-OFF駆動するデューティ比Sを算出する。ここで、速度偏差eの積分値が大きくなると、デューティ比Sinも大きな値に算出され、速度偏差eの積分値が小さくなればデューティ比Sinも小さな値に算出される。
【0095】
また、この動作と並行して、ロック検出器344にて、内側中間駆動輪速度Vinが観測され、その値がゼロであった場合には内側中間駆動輪がロックしたものと判断され、内側中間駆動輪制動用の自動増圧制御弁のON-OFF駆動の周期Tが減少される(励磁オン時間Tonと励磁オフ時間Toffの比率を維持しながら、例えばそれぞれに1以下の係数を掛けてそれらの時間を減少させる)。
【0096】
演算器346にて、制御器342からのデューティ比Sと、ロック検出器344からの周期Tに基づいて、次の周期における励磁オン時間Ton(制動時間)と励磁オフ時間Toff(非制動時間)を算出し、それらの時間Ton、Toffに従って内側中間駆動輪制動用の自動増圧制御弁をON-OFF駆動する。
【0097】
ところで、図14には図示していないが、内側中間駆動輪のロックが生じた場合には、図13を参照して説明したように、外側中間駆動輪制動用の自動増圧制御弁を短時間のパルスで駆動して外側中間駆動輪を制動する。これにより内側中間駆動輪に強制的に駆動トルクを流入させて内側中間駆動輪のロックを解除することができる。ただし、図13で説明したように、励磁オン時間Tonの値が電磁弁や配管の応答で決まる最小時間Tminよりも短かくなった場合には、内側中間駆動輪の路面の摩擦係数が極めて低いとみなし、ロックした内側中間駆動輪をそのままスリップさせた状態で旋回運動を行なう。すなわち、内側中間駆動輪の路面の摩擦係数が極めて低いと、無理に内側中間駆動輪に駆動トルクを与えると空転する可能性があるため、外側中間駆動輪に短時間だけ制動を加える操作は省略する。
【0098】
以上、図10〜図14を参照して説明した、この実施形態における操舵制御装置による中間駆動輪に対する制御では、左側の第2軸の車輪と第3軸の車輪の平均速度を左側中間駆動輪速度VLとし、右側の第2軸の車輪と第3軸の車輪の平均速度を右側中間駆動輪速度VRとし、それらに基づいて左右各側における第2軸と第3軸の2つの車輪を一緒に制御するようにしているが、これは一つの例示にすぎない。第2軸と第3軸のそれぞれについて独立して別個に、上述した制御が行なわれてもよい。
【0099】
上述した実施形態にかかる多軸車両20において、左右の中間駆動輪の速度を目標速度に合致するように調整するための構成、公知文献「ボッシュ 自動車ハンドブック 日本語第2版」(2003年4月22日発行、山海堂)の第606頁に紹介されているような、TCSバルブ(自動増圧制御弁)と公知のアンチロックブレーキングシステム(ABS)用の減圧と保持の機能を有するABSバルブとを組み合わせて、ディファレンシャルギヤの左右の駆動輪の速度を制御して同期させる技術を採用するようにしてもよい。
【0100】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。上述したような4車軸をもつ8輪車両だけでなく、3車軸をもつ6輪車両や、5軸以上の車軸をもつ多軸車両にも、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態にかかる多軸車両における操舵制御の概要を説明するための平面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる多軸車両20の車輪駆動機構の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる多軸車両20において、第1、4軸駆動クラッチ64、74を切った状態を示す平面図。
【図4】本発明の一実施形態にかかる多軸車両20に搭載されたエアブレーキの配管システムのうち、本発明の説明に必要な部分だけを示す配管図。
【図5】ブレーキペダル118が踏まれていないときに自動増圧制御弁122Rが開かれた場合のエアブレーキの動作を示す説明図。
【図6】ブレーキペダル118が踏まれていないときに自動増圧制御弁122Rが閉じられた場合のエアブレーキの動作を示す説明図。
【図7】自動増圧制御弁の励磁に伴うブレーキシリンダ内の圧力変化と制動力の時間的な関係を示した図。
【図8】自動増圧制御弁の励磁のオンオフを交互に繰り返した場合の制動力の推移を示した図。
【図9】本発明の一実施形態にかかる多軸車両20に搭載された操舵制御装置180の、操舵制御に直接関わる部分の構成を示す部分の構成を示すブロック図。
【図10】操舵制御装置180のECU192に組み込まれた中間駆動輪の最適速度を演算する部分の機能的な構成を示すブロック線図。
【図11】操舵制御装置180のECU192で実行される、中間駆動輪の制動の制御のための処理のフローチャート。
【図12】右旋回を例にとり、右側(旋回内側)自動増圧制御弁122R、124Rの励磁に伴う車輪速度の変化例を示すタイムチャート。
【図13】操舵制御装置180のECU192で実行される、ロック解除のための処理のフローチャート。
【図14】操舵制御装置180のECU192に組み込まれた、外側中間駆動輪速度の制御と内側中間駆動輪のロックの緩和のための制御システムの構成を示すブロック線図。
【符号の説明】
【0102】
20 多軸車両
22 第1軸
24 第2軸
26 第3軸
28 第4軸
30 代表点
32L、32R、34L、34R 操舵輪
34L、34R、36L、36R 中間駆動輪
42 旋回中心
0 代表点の旋回半径
0 代表点の速度
Vout 外側の中間駆動輪の速度
Vin 内側の中間駆動輪の速度
60 第2軸ディファレンシャルギア
64 第1軸駆動クラッチ
68 第1軸ディファレンシャルギア
122L、122R,124L、124R 自動増圧制御弁
112L、112R 第2軸ブレーキシリンダ
114L、114R 第3軸ブレーキシリンダ
180 操舵制御装置
182L、182R、184L、184R 中間駆動輪の回転数センサ
186 操舵角センサ
188 トランスミッション出力軸の回転数センサ
192 電子制御ユニット(ECU)
200 変換計算部
202 乗算部
204 係数部
206 最適速度計算部
ψ 操舵角度
0S 旋回半径の目標値
LS 左側の中間駆動輪の最適速度
RS 右側の中間駆動輪の最適速度
RS 右側の中間駆動輪の最適速度
左側の中間駆動輪の速度
右側の中間駆動輪の速度
Vout 外側の中間駆動輪の目標速度
Vin 内側の中間駆動輪の目標速度
340 制御システム
342 制御部
344 ロック検出器
346 演算部
Ton 励磁オン時間(制動時間)
Toff 励磁オフ時間(非制動時間)
T 周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車軸(22)と最後車軸(28)と1以上の中間車軸(24,26)とを含む3以上の車軸を備えた多軸車両(20)において、
前記1以上の中間車軸(24,26)に設けられた1対以上の中間駆動輪(34L、34R、36L、36R)と、
少なくとも前記最前車軸(22)又は前記最後車軸(28)に設けられた1対以上の操舵輪(32L、32R、34L、34R)と、
旋回運動を行うときに、旋回の内側の中間駆動輪(34R、36R)の速度(Vin)と外側の中間駆動輪(34L、36L)の速度(Vout)を異なる速度に制御する操舵制御装置(180)と
を備えた多軸車両。
【請求項2】
請求項1記載の多軸車両(20)において、
前記中間駆動輪(34L、34R、36L、36R)以外に、少なくとも前記最前車軸又は前記最後車軸に設けられた1対以上の駆動輪(32L、32R、38L、38R)を備え、
前記操舵制御装置(180)は、
旋回運動を行うときに、前記最前車軸及び前記最後車軸の双方に設けられた車輪(32L、32R、38L、38R)が遊動輪となるように、前記中間駆動輪以外の駆動輪(32L、32R、38L、38R)への駆動力の伝達を断つ動力伝達制御手段(192、64、74)を有する多軸車両。
【請求項3】
請求項1記載の多軸車両において、
前から順に第1軸(22)、第2軸(24)、第3軸(26)及び第4軸(28)からなる、軸間距離がほぼ均等な、4つの車軸を備え、
前記第2軸(24)と第3軸(26)に設けられた2対の車輪(34L、34R、36L、36R)が前記中間駆動輪に相当し、
少なくとも前記第1軸(22)に設けられた少なくとも1対の車輪(32L、32R、34L、34R)が前記操舵輪に相当する多軸車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の多軸車両において、
前記操舵制御装置(180)は、
前記操舵輪の操舵角(ψ)を検出する操舵角検出手段(186)と、
前記多軸車両の運転速度(V0、VL、VR)を検出する運転速度検出手段(188、204、182L、182R、184L、184R)と、
前記操舵角検出手段によって検出される前記操舵角(ψ)と、前記運転速度検出手段によって検出される前記運転速度(V0、VL、VR)とに基づき、前記内側の中間駆動輪の速度(Vout)と前記外側の中間駆動輪の速度(Vin)を制御する中間駆動輪速度制御手段(200、202、206)と
を有する多軸車両。
【請求項5】
請求項4記載の多軸車両において、
中間駆動輪速度制御手段(200、202、206)は、前記操舵角検出手段によって検出された前記操舵角度(ψ)と、前記運転速度検出手段によって検出された前記運転速度(V0、VL、VR)とに基づき、前記操舵輪による舵きりだけで旋回する場合の旋回半径(R)より小さい旋回半径(R0S)で旋回運動を行えるように、左側の中間駆動輪の目標速度(VLS)と右側の中間駆動輪の目標速度(VRS)を決定し、前記左側と右側の中間駆動輪の目標速度(VLS、VRS)のうちの少なくとも一方に基づいて、前記内側と外側の中間駆動輪のそれぞれの速度(Vout、Vin)を制御する多軸車両。
【請求項6】
請求項5項記載の多軸車両において、
前記運転速度検出手段は、前記左側の中間駆動輪の速度(VL)と前記右側の中間駆動輪の速度(VR)をそれぞれ検出する中間駆動輪速度検出手段(182L、182R、184L、184R)を含み、
中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、前記中間駆動輪速度検出手段により検出された前記左側と右側の中間駆動輪の速度(VL、VR)のうちの前記外側の中間駆動輪の速度(Vout)に相当する一方と、前記左側と右側の中間駆動輪の目標速度(VLS、VRS)のうちの前記外側の中間駆動輪の目標速度(VoutS)に相当する一方とに基づいて、前記内側と外側の中間駆動輪のそれぞれの速度(Vout、Vin)を制御する多軸車両。
【請求項7】
請求項4記載の多軸車両において、
前記運転速度検出手段は、前記多軸車両の代表点(30)の速度(V0)を検出する手段(188、204)を含み、
前記中間駆動輪速度制御手段は、旋回運動を行うとき、前記運転速度検出手段により検出された前記代表点の速度(V0)に基づいて、前記内側の中間駆動輪の速度(Vin)が前記代表点の速度(V0)より低く且つ前記外側の中間駆動輪の速度(Vout)が前記代表点の速度(V0)より高くなるように、前記内側と外側の中間駆動輪の速度(Vout、Vin)を制御する多軸車両。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項記載の多軸車両において、
左側の中間駆動輪(34L、36L)と右側の中間駆動輪(34R、36R)とをそれぞれ独立して制動する制動手段(112L、114L、112R、114R)を更に備え、
前記操舵制御装置(180)が、
旋回運動を行なうとき、前記制動手段を制御して前記左側と右側の中間駆動輪にそれぞれ加えられる制動力を調整する制動力制御手段(192、122L、124L、122R、124R)を有する多軸車両。
【請求項9】
請求項8記載の多軸車両において、
前記内側と外側の中間駆動輪(34L、36L、34R、36R)がディファレンシャルギア(60、70)を介して結合され、
前記制動力制御手段が、旋回運動を行なうとき、前記内側と外側の中間駆動輪の速度を異ならせるために、前記内側の中間駆動輪に制動力を与えるよう前記制動手段を制御する(308、310)多軸車両。
【請求項10】
請求項8記載の多軸車両において、
前記制動力制御手段が、
前記内側の中間駆動輪がロックしたことを検出する内輪ロック検出手段(344)と、
前記内輪ロック検出手段により前記旋内側の中間駆動輪のロックが検出されたとき、前記内側の中間駆動輪の制動を緩和するとともに、前記外側の中間駆動に制動力を与えるよう前記制動手段を制御する内輪ロック解除手段(346)と
を有する多軸車両
【請求項11】
請求項8記載の多軸車両において、
前記制動力制御手段が、
前記内側と外側の中間駆動輪にそれぞれ加えられる制動力を制御するために、前記内側と外側の中間駆動輪をそれぞれ制動する時間を制御する制動時間制御手段(342、344、346)を
有する多軸車両。
【請求項12】
請求項11記載の多軸車両において、
前記制動力制御手段が、
ハルス幅制御の方法により周期的に制動と非制動を交互に繰り返し、前記内側と外側の中間駆動輪の速度を制御するために1周期内での制動時間のデューティ比を制御し、前記内側の中間駆動輪のロックを防止するために各周期の長さを制御するパルス幅制御手段(342、344、346)を
有する多軸車両。
【請求項13】
最前車軸(22)と最後車軸(28)と1以上の中間車軸(24、26)とを含む3以上の車軸を備え、前記1以上の中間車軸(24、26)に設けられた1対以上の中間駆動輪(34L、34R、36L、36R)と、少なくとも前記最前車軸又は前記最後車軸に設けられた1対以上の操舵輪(32L、32R、34L、34R)とを有した多軸車両(20)のための操舵制御装置(180)において、
前記多軸車両が旋回運動を行うときに、旋回の内側の中間駆動輪(34R、36R)の速度(Vin)と外側の中間駆動輪(34L、36L)の速度(Vout)を異なる速度に制御する中間駆動輪速度制御手段
を備えた多軸車両の操舵制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−55478(P2007−55478A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244283(P2005−244283)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】