説明

多関節ロボットシステム、多関節ロボット、力測定モジュール、力測定方法およびプログラム

【課題】 多関節ロボットのリンクおよび関節に作用する力やモーメントを測定すること。
【解決手段】 本発明の多関節ロボットは、関節部に設けられ、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク174側の出力軸176それぞれに、軸心から離間した箇所で固定され、該箇所に作用する偶力に応じて弾性的に曲げ歪みを発生する歪み発生部材190と、歪み発生部材190に接して配置され、曲げ歪みを検出する歪みセンサとを含む。測定制御手段は、関節部の軸まわりに発生する負荷トルクを歪みセンサの出力値から算出し、仮想仕事の原理に従って関節部の負荷トルクからリンクに作用する力に換算する演算手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御技術に関し、より詳細には、多関節ロボットのリンクおよび関節に作用する力やモーメントを測定する多関節ロボットシステム、多関節ロボット、力測定モジュール、力測定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボット制御技術は、コンピュータの進歩に伴って進歩し、ロボットに要求される運動はますます複雑化および高度化し、それに伴い位置制御および力制御の高精度化・高速化が要求されている。産業用ロボットでは、アーム先端の位置および姿勢という位置制御のみで充分対応できることが多いが、外部環境との適応が求められる場合には力制御が必要となる。例えば研磨・研削用ロボットにおいては、ワークと工具との接触力を制御し、多足歩行の脚式ロボットにおいては、脚部と地面との支持力を制御する必要がある。また、人を含め外部環境との接触が避けられない医療・介護の分野での応用や、地雷探索等の屋外の不整地、荒地での作業に関連する分野での応用に際しては、ロボットの全身的な環境適応能力を向上させるため、各関節およびリンクに作用する力やモーメントを自在に制御可能とすることが望ましい。
【0003】
また工場、実験室などの整備された特定環境ではなく、人間の生活環境や荒野等の非整備環境下でロボットを動作させる場合には、外部環境に整備したセンサを利用したり、予めすべてを想定してロボットに各種センサを取り付けたりすることが困難であるため、外部環境から作用する力等の内部的な情報として外部環境を把握可能し、ロボットを自律化することが望ましい。
【0004】
上述したような接触力や支持力の力制御を行うために、従来では、ロードセルなどの力センサをロボットアームや脚式移動ロボットの先端リンクに設置し、直接的にロボットの手先に作用する力を測定する手法が知られている(非特許文献1,非特許文献2)。図13(A)は、従来の力制御で用いられるロードセル500の基本構造を示す。図13(A)に示すように、ロードセル500は、表面に歪みゲージ506が貼り付けられたカラム型の起歪体504が、ベース502上に配置され、ベース502、ハウジング508およびダイヤフラム510によって密閉されている。起歪体504の端部の着力点に作用する荷重が、起歪体504の歪みとして歪みゲージにより計測される。このようなロードセルを先端リンクに配置することにより、ロボットの手先や足先に作用する力を検出する。
【0005】
その他、上記力センサを用いたロボット制御に関連して、例えば特開2006−82200号公報(特許文献1)は、基体と、2本の脚部と、そのそれぞれの先端に足関節を介して連結される足部と、足部と脚部の間に配置されて足関節を駆動する電動モータと、足部と脚部の間に配置されて足部が接地する床面から作用する床反力を検出する6軸力センサとを少なくとも備えると共に、足部に床面と接地するときの衝撃を緩衝する緩衝部材を備えてなる脚式移動ロボットを開示している。
【0006】
また、関節に作用する負荷トルクを計測する方法としては、図13(B)に示すように、関節軸522に歪みゲージ524を貼り付け、関節軸の歪みを測定して、負荷トルクに変換する技術を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−82200号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】”6軸力覚センサシステム”、[online]、ニッタ株式会社、製品情報、メカトロ・センサ製品、センサ製品、6軸力覚センサ[2009年8月26日検索]、インターネット<URL;http://www.nitta.co.jp/product/mechasen/sensor/6dof_top.html>
【非特許文献2】”ATIセンサ”、[online]、ビー・エル・オートテック株式会社、FA製品情報、[2009年8月26日検索]、インターネット<URL;https://www.bl-autotec.co.jp/FA/01_02ati/0102top.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したロードセル500は、構造的に大きなサイズとなってしまうため、ロボットの手先にしか配置することができず、上述した全身的な環境適応力を向上させる観点から充分なものではない。さらにロードセルは、力の6軸成分を同時測定することができるものが存在するが、各成分の干渉を補償するために複雑なアルゴリズムによる演算を必要とし、ロードセル自体が高コストであることに加え、制御系の計装コストや処理の演算コストも増大させてしまう。
【0010】
また図13(B)に示すような関節軸522の歪み測定による負荷トルクの測定は、長い弾性軸に対しては有効であるが、ロボット関節軸のような比較的短い剛性軸では、発生するねじり歪みが小さく、測定精度が低下していしまう。
【0011】
したがって、ロボットの全身的な環境適応力を向上させるためには、従来技術は、測定精度、計装コスト、力センサのサイズ等の観点から未だ充分なものではなく、各関節に作用する負荷トルクおよびリンクに作用する力やモーメントを高い精度で測定可能とする、簡素かつ低コストな技術の開発が望まれていた。また、ロボットの全身のあらゆる箇所に装着することができ、全身的な高い環境適応力を実現する技術の開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、多関節ロボットにおいて、各関節に作用する負荷トルク、各リンクに作用する力およびモーメントの測定を、高精度に、簡素かつ低コストで実現することを可能とし、ロボットの全身的な環境適応力を向上させることが可能な多関節ロボットシステム、多関節ロボット、力測定モジュール、力測定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、多関節ロボットの各関節において関節座標系の負荷トルクを高い精度で測定可能であれば、この負荷トルクから仮想仕事の原理によってカルテシアン座標系の各リンクの力およびモーメントへ換算することができ、高い精度で測定することが可能である点に着目した。そして、発明者は、この着目点に鑑み鋭意検討した結果、関節部の駆動力入力側と出力側との間に、入力側および出力側から作用する偶力に応じて弾性的に歪みを発生する歪み発生部材、より具体的には十文字形状板バネを採用することで、関節座標系の負荷トルクを充分な高い精度で測定することが可能となり、ひいては、各リンクの力およびモーメントを高精度に測定することが可能となることを見出し、本発明に至ったのである。
【0014】
すなわち本発明によれば、上記課題を解決するために、複数のリンクが1以上の関節部を介して連結される多関節ロボットと、多関節ロボットの力測定を実行する測定制御手段とを含む多関節ロボットシステムが提供される。本発明による多関節ロボットシステムの多関節ロボットは、関節部に設けられ、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定され、これら箇所に作用する偶力に応じて弾性的に曲げ歪みを発生する歪み発生部材と、歪み発生部材に接して配置され、曲げ歪みを検出する歪みセンサとを含む。多関節ロボットシステムの測定制御手段は、関節部の軸まわりに発生する負荷トルクを歪みセンサの出力値から算出し、仮想仕事の原理に従って各関節部の負荷トルクからリンクに作用する力、具体的には力およびモーメントの両方または一方に換算する。
【0015】
本発明では、さらに歪み発生部材および歪みセンサは、関節部のそれぞれに備えることができる。そして、測定制御手段は、1以上の関節部それぞれで発生する1以上の負荷トルクを要素としたトルク・ベクトルから、複数のリンクのうちのひとつについて、仮想変位および関節の仮想角変位を関係付けるヤコビ行列を用いて、そのひとつのリンクに作用する力およびモーメントを要素とするベクトルを算出することができる。
【0016】
さらに本発明では、歪み発生部材は、中央部と、中央部から離間し、それぞれ出力軸または駆動軸に固定される4以上の固定部と、中央部と前記固定部それぞれとを接続する4以上の弾性を有する板状部を含むことができる。また歪み発生部材は、出力軸側に固定される偶数個の固定部の一組と、駆動軸側に固定される偶数個の固定部の一組とを含むことができ、前記関節軸まわりに偶数回の回転対称性を有することが好ましい。さらに本発明では、多関節ロボットシステムは、求められた前記リンクに作用する力を入力として、所与の目標値に前記多関節ロボットを力制御する力制御手段をさらに含むことができる。
【0017】
さらに本発明によれば、上記歪み発生部材と、上記歪みセンサと、測定制御手段とを含む力測定モジュールを提供することができる。さらにまた本発明によれば、複数のリンクが1以上の関節部を介して連結される多関節ロボットの力測定方法および該力測定方法をコンピュータ上に実現するためのプログラムが提供される。本発明の力測定方法では、まず、関節部に設けられ、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定される歪み発生部材で、該箇所に作用する偶力に応じて発生する弾性的な曲げ歪みを検出する。そして、この検出した曲げ歪みから関節部の軸周りに発生する負荷トルクを算出し、さらに仮想仕事の原理に従って関節部の負荷トルクからリンクに作用する力に換算する。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、各関節において出力軸側−駆動軸間に作用する負荷トルクが歪み発生部材の弾性的な曲げ歪みとして計測され、仮想仕事の原理に従って、リンクに作用する力およびモーメントの値を求めることが可能となる。作用する負荷トルクを歪み発生部材により弾性的な曲げ歪みとして計測するため、太く、短くかつ剛性の高い関節軸を有する関節であっても負荷トルクが測定可能となる。関節の負荷トルクの測定が高精度にできるため、リンクに作用する力およびモーメントが実用的な精度で換算し、ロボット制御に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の多関節ロボットシステムの実施形態を示す図。
【図2】6自由度多関節ロボットを示す関節モデル図。
【図3】2自由度多関節ロボットを示す関節モデル図。
【図4】多関節ロボットの関節に設けられるトルクセンサ機構の概略図。
【図5】本発明の多関節ロボットシステムにおいて用いることができる十字板バネの構造を示す平面図。
【図6】固定された十字板バネの構造を示す斜視図(A)および側面図(B)。
【図7】本実施形態の多関節ロボットシステムで用いることができる他のバネ構造を示す平面図。
【図8】本発明の多関節ロボットシステムの力測定および力制御の機能ブロック図。
【図9】本発明の多関節ロボットにおける関節まわりの構造を示す側面図。
【図10】本発明の十字板バネを適用した関節リンク機構の力学モデル図。
【図11】本発明の多関節ロボットの関節に取り付けることができる十字板バネの外観写真(A)および歪み分布解析結果(B)を示す図。
【図12】本発明の多関節ロボットにおける関節部まわりの外観を示す写真。
【図13】従来技術の(A)ロードセルの基本構造および(B)トルク測定機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体的な実施形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
<セクションA:多関節ロボットシステムの全体構成>
以下、本発明の実施形態による多関節ロボットシステムの全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の多関節ロボットシステムの実施形態を示す図である。本発明の多関節ロボットシステム100は、コンピュータ装置104により制御されており、コンピュータ装置104は、プログラミング言語、例えばアセンブラ、フォートラン、COBOL、C、C++などによるプログラミングの下で、本発明の力測定手法を適用するプログラムを実装している。
【0022】
コンピュータ装置104は、多関節ロボット120の各関節に取り付けられるトルクセンサ機構(図示せず)からの測定データを、バスライン114を介して多関節ロボット120から取得する。バスライン114は、例えばGP−IBなどの汎用インタフェースI/Fおよび駆動要素への指令を行うハードウェア・インタフェースなどのソフトウェア/ハードウェアを含むインタフェース112を介して、多関節ロボット120へと接続されている。本発明の力測定手法により、多関節ロボット120から取得した測定データを用いて関節座標系の負荷トルクが求められ、さらにこの負荷トルクからカルテシアン座標系のリンクに作用する力およびモーメントが求められる。
【0023】
コンピュータ装置104は、さらに測定データから求めた力およびモーメントを用いて、ロボット制御シーケンス、またはマウス110またはキーボード106などからユーザ入力によって与えられた目標値に一致するように、インピーダンス制御、ハイブリッド制御、コンプライアンス制御などの種々の力制御方式に従って、多関節ロボット120の手先等を力制御するための制御データをバスライン114を介して多関節ロボット120に伝送することができる。これにより、多関節ロボット120を駆動するためのステッピング・モータや油圧モータなどの動力発生要素が駆動されて、多関節ロボット120の力およびモーメントが目標値に一致するよう制御される。
【0024】
またコンピュータ装置104は、力制御に移行する前に、ロボット制御シーケンス、またはマウス110またはキーボード106などからユーザ入力によって与えられた目標位置あるいは軌道に追随するように、多関節ロボット120の手先等を位置姿勢制御するための制御データをバスライン114を介して多関節ロボット120に伝送することもできる。
【0025】
なお、本発明では、処理を実行するプログラムは、ハードディスク・ドライブ(HDD)108に格納しておくことができ、プログラム実行時には、不揮発性の記憶手段として、HDD108からプログラムを読み出してコンピュータ装置104が処理を実行する。また、コンピュータ装置104には、EEPROM(図示せず)またはフラッシュメモリなど、外付けまたは内蔵で不揮発性の記憶手段を、HDD108とは別に備えていても良い。
【0026】
本発明で使用するコンピュータ装置104は、汎用のパーソナル・コンピュータ、またはワークステーションとして構成することもできるし、制御のみを目的としたASIC(Application Specific Integrated Circuit)として、ロボットシステムに実装することもできる。
【0027】
<セクションB:多関節ロボット>
以下、本実施形態の多関節ロボットシステムにおける多関節ロボットの構造について、図2および図3を参照しながら説明する。図2および図3は、本発明で使用する多関節ロボットの実施形態を示す。図2は、6自由度多関節ロボットを示した関節モデル150を示す。図2に示す多関節ロボットは、6つの関節J1〜J6と、これら関節を介して連結される7つのリンクL1〜L7とを含んで構成される。基盤部GからはリンクL1が第1関節J1へと延びている。第1関節J1からは、リンクL2が第2関節J2へと延び、第2関節J2からは、リンクL3が第3関節J3まで延びている。第3関節J3から第4関節J4までは、リンクL4が延びている。第2関節J2および第3関節J3は、リンクL2、L3の軸に直交する方向に回転軸を有する曲げ関節とされており、第1関節J1および第4関節J4は、リンクL1,L4の軸を中心とする回転軸を有するねじり関節とされている。なお、リンクL1および第1関節J1は、基盤部Gに固定されたモータなどを用いて実装してもよい。
【0028】
第4関節J4からは、さらにリンクL5が第5関節J5まで延びており、第5関節J5からさらにリンクL6が第6関節J6まで延びている。第5関節J5は、リンクL5の軸に直交する方向に回転軸を有する曲げ関節とされており、第6関節J6は、リンクL6の軸を中心とする回転軸を有するねじり関節とされている。第6関節J6には、リンクL7を介してワークWが固定され、多関節ロボットによる種々の作業を可能としている。本発明では、ワークW(リンクL7先端)に作用する力およびモーメントを測定対象および制御対象とすることができる。ワークW(リンクL7先端)に作用する力およびモーメントは、図2に示すように、カルテシアン座標系の三次元方向の力(f,f,f)およびモーメント(m,m,m)で記述される。なお、図2では、各関節の回転軸まわりの回転角をθ(i=1,...,6)として示している。図2に示した多関節ロボット120は、PUMA型の6自由度多関節ロボットを構成し、位置制御の場合には任意の位置および姿勢に一致するよう制御することができ、力制御の場合には、ワークW(リンクL7先端)に作用する任意の力およびモーメントを目標値に一致するよう制御することができる。
【0029】
各関節の回転軸まわりに発生する関節座標系の負荷トルクと、上記力fおよびモーメントmとの関係は、仮想仕事の原理により、下記式(1)で示す一般式を用いて表すことができる。
【0030】
【数1】

【0031】
上記式(1)中、ベクトルτは、各関節に作用する各負荷トルクτを要素とした負荷トルク・ベクトルであり、各関節の負荷トルクτは、後述する本発明のトルクセンサ機構で測定することができる。上記式(1)中、行列Jは、下記式(2)で与えられるヤコビ行列であり、Tは転置を示す記号である。下記式(2)中、変数ΖおよびΘは、リンクの並進位置および座標軸回りの回転角をそれぞれ表し、変数上に示すドットは、一次微分を示す。すなわち、ヤコビ行列は、リンクの移動速度と関節角速度とを関係付ける。また、リンク移動速度および関節角速度は、ある瞬間における無限に小さい変位および角変位と見なすことができるため、上記ヤコビ行列Jは、関節の仮想角変位とリンクの仮想変位とを関係付ける変換行列ともいえる。
【0032】
【数2】

【0033】
図2に示す6自由度の多関節ロボットの関節モデル150において、ワークW(リンクL7先端)に注目した場合には、上記式(1)に示す一般式は、カルテシアン座標系の三次元方向の力(f,f,f)およびモーメント(m,m,m)と、関節座標系の負荷トルクτ(i=1,...,6)とを用いて下記式(3)で表される。
【0034】
【数3】

【0035】
上記式(3)中のヤコビ行列Jは、ワークWの並進位置(x、y、z)および座標軸回りの回転角(θ,θ,θ)と、各関節の回転軸まわりの回転角θ(i=1,...,6)とを用いて表される、下記式(4)で与えられる6×6の正方行列となり、簡易な演算により求めることができる。
【0036】
【数4】

【0037】
上記式(3)および(4)により、本発明のトルクセンサ機構で測定される関節座標系の負荷トルク・ベクトルτ(τ,τ,τ,τ,τ,τ)から、ワークWに作用するカルテシアン座標系の三次元方向の力(f,f,f)およびモーメント(m,m,m)へ換算することが可能となる。なお、上述した説明では、ワークW(リンクL7先端)に作用する力およびモーメントに注目しているが、任意のリンクに注目し、その注目するリンクに作用する力およびモーメントを測定および制御することもできる。
【0038】
なお、本発明で使用することができる多関節ロボットは、図2に示すPUMA型の6自由度多関節ロボットに限定されるものではなく、他の任意の型の6自由度多関節ロボットを使用することができ、さらに6自由度に限定されるものではなく任意のN自由度の多関節ロボットを用いることができる。また、多関節ロボットは、冗長自由度を有していてもよい。その場合には、ヤコビ行列Jが非正方行列となるが、擬似ヤコビ行列Jに変換し、上記式中ヤコビ行列Jを擬似ヤコビ行列Jに置き換えることで対応することができる。なお、擬似ヤコビ行列Jは、下記式(5)で表される。
【0039】
【数5】

【0040】
以下、図3を参照して、他の実施形態の多関節ロボットの場合について説明する。図3は、2自由度多関節ロボットを示した関節モデル160を示す。図3に示すように、2自由度の多関節ロボットは、2つの関節J8,J9と、これら関節を介して連結される3つのリンクL8〜10とを含んで構成される。基盤部GからはリンクL8が第1関節J8へと延び、第1関節J8からは、リンクL9が第2関節J9へと延び、第2関節J9にはリンクL10を介してワークWが配設されている。第1関節J8および第2関節J9は、リンクL8、L9の軸に直交する方向に回転軸を有する曲げ関節とされている。本発明では、ワークW(リンクL10先端)に作用する力を測定対象および制御対象とすることができる。この対象となる力は、図3に示すように、基盤部Gを基準としたカルテシアン座標系の二次元方向の力(f,f)で記述される。
【0041】
図3に示す2自由度の多関節ロボットにおけるワークW(リンクL10先端)に注目した場合には、上記式(1)に示す一般式は、カルテシアン座標系の力(f,f)と、関節座標系の負荷トルクτ(i=8,9)とを用いて、下記式(6)および下記式(7)で表される。
【0042】
【数6】

【0043】
上記ヤコビ行列Jは、ワークWの並進位置(y、z)と、各関節の回転軸まわりの回転角(θ,θ)とを用いた上記式(4)で与えられる、2×2の正方行列となり、簡易な演算により求めることができる。上記式(6)および(7)により、本発明のトルクセンサ機構で測定される関節座標系の負荷トルク・ベクトル(τ,τ)から、ワークWに作用するカルテシアン座標系の三次元方向の力(f,f)へ換算することができる。
【0044】
<セクションC:トルクセンサ機構>
以下、多関節ロボット120の各関節周りに作用する負荷トルクを測定するトルクセンサ機構について、図4〜図7および図11を参照しながら説明する。図4は、多関節ロボット120の関節に設けられるトルクセンサ機構の概略を示す図である。なお、図4は、リンク軸に直交する方向に回転軸を有する曲げ関節にトルクセンサ機構が設けられている場合を例示する。
【0045】
図4に示すトルクセンサ機構170において、リンク172は、モータやアクチュエータなどの駆動力発生装置180が固定される駆動力入力側リンクであり、リンク174は、駆動力発生装置180からの駆動力が入力される出力側リンクである。出力側リンク174の出力軸176と、駆動力発生装置180側の駆動軸とは、本発明の歪み発生部材190を介して接続される。図4では、歪み発生部材190と出力軸176とが出力軸固定部材178により固定され、歪み発生部材190と駆動力発生装置180の駆動軸とが駆動軸固定部材182により固定されている。
【0046】
歪み発生部材190は、駆動力発生装置180からの駆動力を出力軸176に伝達するとともに、歪み発生部材190の出力軸側および駆動軸側の間に作用する負荷トルクによって一部で弾性的に曲げ歪みを生じるような構造とされている。駆動力が入力されない場合にも、出力側リンク174に作用する重力や慣性力により、回転軸まわりに負荷トルクが作用する。
【0047】
歪み発生部材190には、金属抵抗、半導体抵抗などの歪みゲージや、光ファイバなどの歪みセンサが貼り付けられており、負荷トルクによって歪み発生部材190の一部に発生した弾性的な曲げ歪みを測定し、この歪み測定値から負荷トルクを求めることができる。歪みセンサは、アクティブ・ダミー法、2アクティブゲージ、4アクティブゲージ法などのこれまで知られた如何なる方式に従って、弾性的な曲げ歪みが発生する箇所の周辺に貼り付けることができる。歪み測定値と負荷トルクとは、一般的には線形的な関係を有しており、特に限定されるものではないが、歪みセンサ出力信号Vから適切な係数kを用いて下記式(8)を用いて表すことができる。なお、図4に示す例では、曲げ関節を用いた場合を図示しているが、ねじり関節を用いる場合についても、当業者であれば、同様に適用できることが理解されるであろう。
【0048】
【数7】

【0049】
歪み発生部材190としては、より具体的には、図5に示す十字板バネを用いることができる。図5は、本発明の多関節ロボットシステムにおいて歪み発生部材として用いることができる十字板バネの構造を示す平面図である。十字板バネ200は、駆動軸および出力軸の軸心Oを中心とする中央部202と、中央部202から離間して設けられる4つの固定部206a〜dと、それぞれの固定部206を中央部202に片持ち梁状に固定する平板部204a〜dとを含んで構成される。
【0050】
軸心Oを中心に180度ずれて配置される2つの固定部206b,206dの組は、紙面上面側(手前)に設けられて、それぞれの固定部206b,206dに設けられた締結穴208b,208dを介して、出力軸側および駆動軸側のいずれか一方に固定される。一方、軸心を中心に180度ずれ、かつ固定部206b,206dの組と90度ずれて配置される2つの固定部206a、206cの組は、紙面下面側(奥)に設けられ、それぞれの固定部206a,206cに設けられた締結穴208a,208cを介して、出力軸側および駆動軸側の他方に固定される。
【0051】
図6は、出力軸176の出力軸固定部材178により固定された十字板バネ200の構造を示す斜視図(A)および側面図(B)である。なお、図6(A)においては、駆動軸固定部材182の図示が省略されていることに留意されたい。出力軸−駆動軸間に負荷トルクが作用すると、固定部206の組のうちの一方を固定とした場合に、他方の組に軸心から離間した箇所で偶力(F,−F)が作用し、中央部202および固定部206を接続する平板部204は、この偶力(F,−F)により、その大きさに応じた弾性的な曲げ歪みを発生させる。
【0052】
中央部202および固定部206は、このような力に対し剛性が高くなる構造を有しており、一方平板部204は、一定範囲の大きさの力に応答して弾性的に曲げ歪みを生じさせると共に、想定される最大トルクに対して平板部204に生じる最大応力が降伏応力を越えないような厚みを有している。平板部204の厚みは、理論計算、有限要素法構造解析、試験片を用いた実験等の結果に従って、十字板バネの材質等を考慮して決定することが好ましい。
【0053】
また図6に示すように、十字板バネ200の適切な箇所に歪みセンサ210a,210bが貼り付けられ、平板部204に生じる弾性的な曲げ歪みが測定される。なお、図6に示す歪みセンサ210の配置は、温度補償効果を有するアクティブ・ダミー法による場合のものである。歪みセンサの取り付け位置も同様に、理論計算、有限要素法構造解析、試験片を用いた実験等の結果に基づき、曲げ歪み量が最も大きくなる箇所とすることが好ましい。
【0054】
図11は、本発明の多関節ロボットの関節に取り付けることができる十字板バネの外観写真(A)および歪み分布解析結果(B)を示す図である。図11(B)は、十字板バネ構造をモデル化し、弾性域において矢印で示す偶力を作用させた場合に、十字板バネに発生する応力および歪みを有限要素法解析により解析した結果である。図11(B)中、暗い領域が応力や歪みの変化が大きな箇所を示している。図11(A)中、円形に囲んだ箇所に歪みセンサが貼り付けられており、これは、図11(B)に示す比較的歪みの大きな円形で囲んだ箇所と対応する。図11に示されるように、図5に示す十字板バネ200では、固定部206が平板部204の片側に付いているため、平板部204に非対称に力が作用する。このため、歪みセンサ210の取り付け位置は、図11(B)に示すような有限要素法等による歪み分布の解析結果を考慮して決定することが好ましい。
【0055】
なお、本発明で使用することができる歪み発生部材190は、図5および図6に示す4つの平板部204を含む十字板バネ200に限定されるものではなく、4以上の平板部および固定部を含んでいてもよい。この場合、歪み発生部材は、軸心まわりに偶数回の回転対称性を有することが好ましい。また、歪み発生部材190は、出力軸側および駆動軸側それぞれに偶数個の固定部の一組を備えることが好ましい。さらに歪み発生部材の材料としては、アルミ合金、ステンレス、りん青銅、炭素鋼など、これまで板バネ材料として好適に用いられることが知られた如何なる金属材料、エンジニアリングプラスチックなどの樹脂材料を用いて作成することができる。歪み発生部材は、同一材料で一体的に形成することが好ましいが、中央部202、平板部204および固定部206を異なる材料製作し、接合してもよい。
【0056】
図7は、本実施形態の多関節ロボットシステムで用いることができる歪み発生部材190の他のバネ構造を示す平面図である。板バネ構造220は、駆動軸および出力軸の軸心Oを中心とする中央部222と、中央部から離間して設けられる8つの固定部226と、それぞれの固定部226を中央部222に片持ち梁状に固定する8つの平板部224とを含んで構成される。
【0057】
軸心を中心に90度ずつずらされて配置される4つの固定部の組226Aは、紙面上面側(手前)に設けられて、締結穴を介して出力軸側および駆動軸側のいずれか一方に固定される。一方、軸心を中心に90度ずつずらされ、かつ固定部の組226Aに対しそれぞれ45度ずらして配置される4つの固定部の組226Bは、紙面下面側(奥)に設けられ、締結穴を介して出力軸側および駆動軸側の他方に固定される。出力軸−駆動軸間に負荷トルクが作用すると、固定部226の組のうちの一方を固定とした場合に、他方の組に軸心から離間した作用点で偶力が作用し、平板部224は、この偶力の大きさに応じて弾性的な曲げ歪みを発生させる。なお、図7には、8つの固定部を含む歪み発生部材を例示したが、取り付け位置、軸の太さ、力伝達率の要求に応じて、6つなどの多数の固定部を含む歪み発生部材にも同様に拡張することができる。
【0058】
<セクションD:力測定およびロボット制御機構>
以下、上述したトルクセンサ機構を用いた多関節ロボットの力測定およびロボット制御について説明する。図8は、本発明の多関節ロボットシステムの力測定およびロボット制御の機能ブロック図である。図8に示すように、コンピュータ装置104は、本発明の処理を実行する制御処理モジュール302を実装しており、制御処理モジュール302は、IDE(International Device Electronics)やSCSI(Small Computer System Interface)などのインタフェース310を介して接続されたHDD108から、制御プログラムをCPU(図示せず)が呼び出し、実行空間を提供するRAM306にプログラムを展開してプログラムを実行させることにより実現される。
【0059】
コンピュータ装置104は、ROM304などを備えており、ROM304には、BIOS(Basic Input Output System)などが格納されており、コンピュータ装置104の初期設定や制御のために使用するデータをCPUに渡している。なお、本発明のコンピュータ装置104をワークステーションまたはサーバとして構成する場合には、カーネル/OS/アプリケーションの構成として記述することができる、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)のアーキテクチャを備えるコンピュータ装置を使用することができる。
【0060】
コンピュータ装置104は、マウス/キーボード/シーケンス制御プログラムの出力などとして与えられる力およびモーメント、位置姿勢の目標値や各種設定値を目標設定部320が受け取り、RAM306に格納して以後の制御処理モジュール302が使用可能としている。制御処理モジュール302は、ロボット制御部312および力測定部314を含んで構成され、力測定部314は、各リンクに作用する力およびモーメントを測定して、ロボット制御御部312へ換算データを渡し、ロボット制御部312は、力測定部314により測定された力およびモーメントを使用して多関節ロボット120を力制御あるいは位置姿勢制御を実行する。
【0061】
多関節ロボット120には、歪みセンサ324、モータ326およびエンコーダ328を含む関節ユニット322が各関節毎に設けられており、各関節のモータ326は、モータドライバ330に接続されている。エンコーダ、モータおよび歪みセンサの各関節への取り付けの様態を図9および図12に示す。図9は、本発明の多関節ロボットにおけるひとつの関節部まわりの構造を示す側面図である。図12は、本発明の多関節ロボットにおけるひとつの関節部まわりの外観を示す写真である。なお、右側にある写真の短形領域を拡大した写真が図の左側に示されている。
【0062】
図9および図12に示すように、駆動力入力側リンク402には、モータ420が設けられ、モータ420の駆動力が、減速機418、プーリ416、ベルト414およびプーリ412を介して十字板バネ410に入力される。一方、十字板バネ410の駆動軸の反対側は出力側リンク404の出力軸に固定され、出力軸にはさらにエンコーダ406が取り付けられている。エンコーダ406は、出力側リンク404の回転角を入力側リンク402を基準として測定する。
【0063】
再び図8を参照すると、力測定部314は、より具体的には、各関節の歪みセンサ324からの出力信号をA/Dコンバータなどを介して測定データとして取得し、各負荷トルクτを演算する、負荷トルク演算部318を含んで構成される。力測定部314は、負荷トルク演算部318が演算した負荷トルクτから、上記ヤコビ行列を用いて、負荷トルクを各リンクに作用する力およびモーメントに換算する力・モーメント演算部316をさらに含んで構成される。
【0064】
ロボット制御部312は、インタフェースI/F112を介して関節ユニット322のエンコーダ328およびモータドライバ330と接続し、力測定部314が測定した各リンクに作用する力およびモーメントを使用して、インピーダンス制御、ハイブリッド制御、コンプライアンス制御などの種々の力制御方式により力制御を行うことができる。力制御の対象は、図2に示す関節モデルにおけるワークW(リンクL7先端)であってもよいし、他の任意のリンクであってもよい。またハイブリッド制御の場合には、所定のリンクについて、力およびモーメントの選択された任意の成分と、位置姿勢の対応する成分とを制御することができる。また、ロボット制御部312は、力制御に移行する前などに、位置姿勢の目標値やその軌道等にそって位置姿勢制御を行うこともできる。
【0065】
図10は、本発明の十字板バネを適用した関節リンク機構の力学モデルを示す。図10に示す力学モデルは、多関節ロボットシステムで力制御のために用いることができる。図10に示すように、関節リンク機構では、モータ456の出力トルクτが減速機454を介してリンク452に対し入力されている。リンク452と減速機454との間には、ばね定数kのバネおよび減衰係数Dkのダンパーが挿入されており、これは十字板バネに相当するものである。なお、図10中、リンク452の回転軸周りの回転角をθ11で、減速機454の軸周りの回転角をθで、モータ456の軸周りの回転角をθ12で示している。図10に示す関節リンク機構のモデルに基づくリンクおよびモータの運動方程式は、それぞれ下記式(9)および(10)で表される。
【0066】
【数8】

【0067】
上記式(9)中、Iはリンクの慣性モーメントを表し、Dはリンクの動粘性抵抗係数を表し、Tqflは外力によりリンクに発生するトルクを表し、Mglsinθ11は重力によるトルクを表す。また上記式(10)中、nは伝達比(ギア比やプーリ比)を表し、Iはモータの慣性モーメントを表し、Dはモータの動粘性抵抗係数を表し、Tqfmは、外力によりモータに発生するトルクを表し、τは、モータの出力トルクを表す。また上記式(9)および(10)中のτspringは、十字板バネに作用する負荷トルクを表し、下記式(11)で定式化される。
【0068】
【数9】

【0069】
以上説明した多関節ロボットシステムでは、上記トルクセンサ機構により、各関節において出力軸側−駆動軸間に作用する負荷トルクが十字板バネなどの歪み発生部材の弾性的な曲げ歪みとして計測され、各関節の負荷トルクを要素とする負荷トルク・ベクトルτから、リンクの仮想変位と関節の仮想角変位とを関係付けるヤコビ行列Jの転置行列を用いて、リンクに作用する力およびモーメントの値を求めることが可能となる。作用する負荷トルクを歪み発生部材190により弾性的な曲げ歪みとして計測するため、太く、短くかつ剛性の高い関節軸を有する関節であっても負荷トルクが測定可能であり、さらに直接的に軸のねじり歪みを計測する場合に比べて高精度に測定することが可能となる。関節の負荷トルクの測定が高精度にできるため、リンクに作用する力およびモーメントが実用的な精度で換算し、ロボット制御に適用することが可能となる。
【0070】
また、本発明の力測定手法によれば、多関節ロボットの各関節のトルク、各リンクに作用する力およびモーメントを測定することが可能となる。また、本発明のトルクセンサ機構は、小型かつ簡易な構造で製作することができるため、各関節毎に設けることができ、ひいては、ロボット全身の力を測ることができ,ロボットの全身力制御が可能となる。また、本発明の力測定手法は、演算負荷が小さいため、ロボットシステムの計装コストおよび処理に必要な演算資源等を削減することができ、低コスト化を図ることができる。
【0071】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、多関節ロボットにおいて、各関節に作用する負荷トルク、各リンクに作用する力およびモーメントの測定を、高精度に、簡素かつ低コストで実現することを可能とし、ロボットの全身的な環境適応力を向上させることが可能な多関節ロボットシステムおよび力測定方法が提供される。
【0072】
なお、上述した多関節ロボットシステムを構成する多関節ロボットを個別に提供することができ、また、上記トルクセンサ機構と、制御処理モジュールの機能を実現するコントローラまたはコンピュータとを含む力測定モジュールとして提供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の多関節ロボットシステムは、把持、組み立て、研磨、研削などの作業を行う産業用ロボットの他、多足歩行ロボット、医療介護ロボット、レスキューロボット、農作業ロボットなど、人を含め外部環境との接触が不可避な用途で用いられるロボットに好適に適用することが期待される。本発明の多関節ロボットシステムは、多関節ロボットの関節およびリンクに作用する力やモーメントといったロボットの内部情報を測定して、位置姿勢制御および力制御に活用することができるため、人の生活環境や荒野等の非整備環境下でロボットを動作させる場合に好適に用いることができる。
【0074】
本実施形態の上記機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD−ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROMなどの装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0075】
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
100…多関節ロボットシステム、104…コンピュータ装置、106…キーボード、108…HDD、110…マウス、112…インタフェース、114…バスライン、120…多関節ロボット、150…関節モデル、160…関節モデル、170…トルクセンサ機構、172…入力側リンク、174…出力側リンク、176…出力軸、178…出力軸固定部材、180…駆動力発生装置、182…駆動軸固定部材、190…歪み発生部材、200…十字板バネ、202…中央部、204…平板部、206…固定部、208…締結穴、210…歪みセンサ、220…板バネ構造、222…中央部、224…平板部、226…固定部、302…制御処理モジュール、304…ROM、306…RAM、310…インタフェース、312…ロボット制御部、314…力測定部、316…力・モーメント演算部、318…負荷トルク演算部、320…目標設定部、322…関節ユニット、324…歪みセンサ、326…モータ、328…エンコーダ、330…モータドライバ、402…入力側リンク、404…出力側リンク、406…エンコーダ、410…十字板バネ、412…プーリ、414…ベルト、416…プーリ、418…減速機、420…モータ、452…リンク、454…減速機、456…モータ、G…基盤部、JN…関節、LN…リンク、W…ワーク、500…ロードセル、502…ベース、504…起歪体、506…歪みゲージ、508…ハウジング、510…ダイヤフラム、522…関節軸、524…歪みゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクが1以上の関節部を介して連結される多関節ロボットと、前記多関節ロボットの力測定を実行する測定制御手段とを含む多関節ロボットシステムであって、前記多関節ロボットは、
前記関節部に設けられ、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定され、該箇所に作用する偶力に応じて弾性的に曲げ歪みを発生する歪み発生部材と、
前記歪み発生部材に接して配置され、前記曲げ歪みを検出する歪みセンサと
を含み、前記測定制御手段は、
前記関節部の軸まわりに発生する負荷トルクを前記歪みセンサの出力値から算出し、仮想仕事の原理に従って前記関節部の前記負荷トルクから前記リンクに作用する力に換算する演算手段
を含む、多関節ロボットシステム。
【請求項2】
前記歪み発生部材および前記歪みセンサは、前記関節部のそれぞれに備えられ、前記測定制御手段は、前記複数のリンクのうちのひとつについて、前記1以上の関節部それぞれで発生する1以上の負荷トルクを要素としたトルク・ベクトルから、該リンクの仮想変位および関節の仮想角変位を関係付けるヤコビ行列を用いて、該リンクに作用する力およびモーメントを要素とするベクトルを算出する、請求項1に記載の多関節ロボットシステム。
【請求項3】
前記歪み発生部材は、中央部と、前記中央部から離間し、それぞれ前記出力軸または前記駆動軸に固定される4以上の固定部と、前記中央部と前記固定部それぞれとを接続する4以上の弾性板状部とを含む、請求項1または2に記載の多関節ロボットシステム。
【請求項4】
前記歪み発生部材は、前記出力軸側に固定される偶数個の前記固定部の一組と、前記駆動軸側に固定される偶数個の前記固定部の一組とを含む、請求項3に記載の多関節ロボットシステム。
【請求項5】
前記歪み発生部材は、前記関節部の軸まわりに偶数回の回転対称性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多関節ロボットシステム。
【請求項6】
求められた前記リンクに作用する力を入力として、所与の目標値に前記多関節ロボットを力制御する力制御手段をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多関節ロボットシステム。
【請求項7】
複数のリンクが1以上の関節部を介して連結される多関節ロボットであって、前記多関節ロボットは、
前記関節部に設けられ、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定され、該箇所に作用する偶力に応じて弾性的に曲げ歪みを発生する歪み発生部材と、
前記歪み発生部材に接して配置され、前記曲げ歪みを検出する歪みセンサと、
前記関節部の軸まわりに発生する負荷トルクを前記歪みセンサの出力値から算出し、仮想仕事の原理に従って前記関節部の前記負荷トルクから前記リンクに作用する力に換算するために、検出した前記曲げ歪みを外部出力する出力端子と
を含む、多関節ロボット。
【請求項8】
複数のリンクが1以上の関節部を介して連結される多関節ロボットの関節部に取り付けられる力測定モジュールであって、
前記関節部に設けられ、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定され、該箇所に作用する偶力に応じて弾性的に曲げ歪みを発生する歪み発生部材と、
前記歪み発生部材に接して配置され、前記曲げ歪みを検出する歪みセンサと、
前記関節部の軸まわりに発生する負荷トルクを前記歪みセンサの出力値から算出し、仮想仕事の原理に従って前記関節部の前記負荷トルクから前記リンクに作用する力に換算する測定制御手段と
を含む、力測定モジュール。
【請求項9】
複数のリンクが1以上の関節部を介して連結される多関節ロボットの力測定方法であって、
前記関節部に設けられ、駆動力発生側の駆動軸および駆動力出力先のリンク側の出力軸それぞれに、軸心から離間した箇所で固定される歪み発生部材で、該箇所に作用する偶力に応じて発生する弾性的な曲げ歪みを検出するステップと、
検出した前記曲げ歪みから前記関節部の軸周りに発生する負荷トルクを算出するステップと、
仮想仕事の原理に従って前記関節部の前記負荷トルクから前記リンクに作用する力に換算するステップと
を含む、力測定方法。
【請求項10】
前記換算するステップは、前記複数のリンクのうちのひとつについて、前記1以上の関節部それぞれで発生する1以上の負荷トルクを要素としたトルク・ベクトルを生成するサブステップと、該リンクの仮想変位および関節の仮想角変位を関係付けるヤコビ行列を用いて、該リンクに作用する力およびモーメントを要素とするベクトルを算出するサブステップとを含む、請求項9に記載の力測定方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の力測定方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ実行可読なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−56601(P2011−56601A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206803(P2009−206803)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】