説明

大気圧プラズマ処理システム

【課題】実用性の高い大気圧プラズマ処理システムを提供することを課題とする。
【解決手段】大気圧下でプラズマ処理を行うシステムにおいて、(a)一列に並んで配置された複数のチャンバー34と、(b)隣り合う2つのチャンバーを連通する1以上の連通路42,44と、(c)連通路を介しつつ、チャンバー内を通って基板54を搬送する搬送装置50と、(d)各チャンバー内で大気圧下においてプラズマを発生可能な複数のプラズマヘッド38と、(e)各連通路を遮るようにガスを吹出し、その吹出されたガスの流れによって隣り合うチャンバー間を仕切る1以上の仕切装置62,64とを備え、搬送装置によって搬送される被処理物に複数のチャンバー内で順次プラズマ処理を施すように構成する。このような構成により、複数のプラズマ処理に要する時間を短縮するとともに、吹出されるガスの流れによって、各チャンバーで使用される反応ガスの混合を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧下で被処理物に対してプラズマ処理を施す大気圧プラズマ処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、減圧下で発生させたプラズマを利用して、基板等の被処理物に対する表面処理が行われている。具体的には、減圧したチャンバー内で、ガスをプラズマ化させ、そのプラズマ化されたガスによって、被処理物の表面改質,表面洗浄,薄膜成形等の処理が行われている。減圧下でのプラズマ処理においては、チャンバー内を減圧するべく、真空ポンプ等が必要であり、さらに、減圧状態を維持するべく、チャンバーを密閉する必要がある。このため、減圧下でプラズマ処理を行うためのシステムは、大型化するとともに、コスト高になる傾向にある。また、チャンバーの密閉工程,減圧工程等が必要であるため、減圧下でのプラズマ処理に要する時間は、比較的長くなる。このようなことに鑑みて、近年では、大気圧下で被処理物に対してプラズマ処理を施す大気圧プラズマ処理システムの開発が進められている。下記特許文献には、大気圧プラズマ処理システムの一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−140051号公報
【特許文献2】特開2006−331736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ化されたガスによる処理には、表面改質,表面洗浄,薄膜成形等の様々な種類の処理があり、種々のプラズマ処理を連続して行うことがある。具体的には、例えば、反応ガスとして酸素をプラズマ化させて、基板表面の有機物を除去するプラズマ処理を行って、有機物除去後の基板表面に、薄膜成形用の反応ガスのプラズマ化によって、薄膜を形成するプラズマ処理を行う。そして、その形成された薄膜上に、その薄膜とは異なる薄膜を形成するべく、別の薄膜成形用の反応ガスによるプラズマ処理を行うことがある。このような複数のプラズマ処理を、減圧下で行う場合には、処理毎に密閉工程および減圧工程を繰り返し行う必要があり、総処理時間は相当長くなる虞がある。一方で、複数のプラズマ処理を、大気圧プラズマ処理システムによって行う場合には、処理毎の密閉工程および減圧工程を行う必要が無いため、処理時間を相当短縮することが可能となる。
【0005】
大気圧プラズマ処理システムによる複数のプラズマ処理において、処理時間の更なる短縮を図るべく、各処理を行う複数のチャンバーを一列に配置し、隣り合う2つのチャンバーを連通することが考えられる。ただし、隣り合う2つのチャンバーを連通する場合には、各チャンバーで使用される反応ガスが互いに混ざり合わないようにする必要がある。上記特許文献には、システム内への被処理物の搬入口および、システム内からの被処理物の搬出口を、エアカーテンによってシステムの内部と外部とに仕切ることで、チャンバー内からの反応ガスの流出、チャンバー内への外気の流入等を抑制するための技術が記載されている。しかし、上記特許文献では、2つのチャンバーを連通させることは考えられておらず、2つのチャンバー間の反応ガスの混合を防止することまで考慮されていない。このように、大気圧プラズマ処理システムには、改良の余地を多分に残すものとなっており、種々の改良を施すことによって、大気圧プラズマ処理システムの実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い大気圧プラズマ処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の大気圧プラズマ処理システムは、一列に並んで配置された複数のチャンバーと、それぞれが、前記複数のチャンバーのうちの隣り合う2つのチャンバーを連通する1以上のチャンバー間連通路と、それら1以上のチャンバー間連通路を介しつつ、前記複数のチャンバー内を通って被処理物を搬送する搬送装置と、前記複数のチャンバーに対応して設けられ、それぞれが、前記複数のチャンバーのうちの自身に対応するものの内部で大気圧下においてプラズマを発生可能な複数の大気圧プラズマ発生装置と、前記1以上のチャンバー間連通路に対応して設けられ、それぞれが、前記1以上のチャンバー間連通路のうちの自身に対応するものを遮るようにガスを吹出し、その吹出されたガスの流れによって隣り合う2つのチャンバーの間を仕切る1以上のチャンバー間仕切装置とを備え、前記搬送装置によって搬送される被処理物に対して、前記複数のチャンバー内で順次プラズマ処理を施すように構成される。
【0007】
また、請求項2に記載の大気圧プラズマ処理システムは、請求項1に記載の大気圧プラズマ処理システムにおいて、前記複数のチャンバー内の気圧が同じとなるように構成される。
【0008】
また、請求項3に記載の大気圧プラズマ処理システムは、請求項1または請求項2に記載の大気圧プラズマ処理システムにおいて、前記複数のチャンバー内の気圧が陽圧となるように構成される。
【0009】
また、請求項4に記載の大気圧プラズマ処理システムは、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の大気圧プラズマ処理システムにおいて、前記複数のチャンバーのうちの両端に配置された2つのチャンバーの各々は、大気に開口し、被処理物を前記搬送装置によって搬出入するための搬出入口を有し、当該大気圧プラズマ処理システムは、前記両端に配置された2つのチャンバーに対応して設けられ、それぞれが、前記搬出入口を遮るようにガスを吹出し、その吹出されたガスの流れによって自身に対応するチャンバーと大気との間を仕切る2つのチャンバー大気間仕切装置を備えるように構成される。
【0010】
また、請求項5に記載の大気圧プラズマ処理システムは、請求項4に記載の大気圧プラズマ処理システムにおいて、前記2つのチャンバー大気間仕切装置の各々の単位時間当たりの吹出し量は、前記1以上のチャンバー間仕切装置の各々の単位時間当たりの吹出し量より多く構成される。
【0011】
また、請求項6に記載の大気圧プラズマ処理システムは、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の大気圧プラズマ処理システムにおいて、被処理物の搬送方向における前記1以上のチャンバー間連通路の長さが、当該大気圧プラズマ処理システムによって処理できる最も大きな被処理物の前記搬送方向における長さより長く構成される。
【0012】
また、請求項7に記載の大気圧プラズマ処理システムは、請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の大気圧プラズマ処理システムにおいて、前記1以上のチャンバー間仕切装置は、それぞれ、被処理物の搬送方向に垂直かつ水平な方向にガスを吹出すように構成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の大気圧プラズマ処理システムでは、各処理を行う複数のチャンバーが一列に配置され、隣り合う2つのチャンバーの間が連通路によって連通されるとともに、被処理物が、複数のチャンバー内を通って搬送装置によって搬送される。これにより、搬送装置によって搬送される被処理物に対して、複数のチャンバー内で順次プラズマ処理を施すことが可能となり、処理時間を短縮することが可能となる。さらに、仕切装置によって吹出されるガスの流れによって、隣り合う2つのチャンバーの間を仕切ることが可能となっており、これにより、各チャンバーで使用される反応ガスの混合を抑制することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の大気圧プラズマ処理システムでは、隣り合う2つのチャンバーの間の気圧差を無くすことが可能となる。これにより、隣り合う2つのチャンバー間での反応ガスの混合をさらに抑制することが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の大気圧プラズマ処理システムでは、各チャンバー内の気圧が大気圧より高くされている。これにより、各チャンバー内への大気の流入を防止することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の大気圧プラズマ処理システムでは、仕切装置によって吹出されるガスの流れによって、端に位置するチャンバーと大気との間を仕切ることが可能となっている。これにより、そのチャンバー内から大気への反応ガスの流出および、そのチャンバー内への大気の流入を抑制することが可能となる。
【0017】
また、請求項5に記載の大気圧プラズマ処理システムでは、端に位置するチャンバーと大気との間を仕切るガスの流れを、隣り合う2つのチャンバー間を仕切るガスの流れより強くしている。各チャンバー内には、プラズマ処理を行うべく、反応ガスが流されており、チャンバー内の気圧が大気圧より高くなっていることが多くある。一方、反応ガスの流量はチャンバー毎に大きく異なることは少なく、隣り合う2つのチャンバー間の気圧差はさほど大きくない。このため、端に位置するチャンバーと大気との気圧差が、隣り合う2つのチャンバー間の気圧差より大きくなる傾向にある。したがって、請求項5に記載の大気圧プラズマ処理システムによれば、効果的に端に位置するチャンバー内から大気への反応ガスの流出を抑制することが可能となる。
【0018】
また、請求項6に記載の大気圧プラズマ処理システムでは、被処理物の搬送方向における長さが、チャンバー間連通路より短くされている。つまり、被処理物の搬送時に、被処理物が隣り合う2つのチャンバーに渡って位置することは無い。これにより、チャンバー間連通路に吹出されるガスのチャンバー内への流入を抑制することが可能となる。詳しく言えば、例えば、被処理物の搬送方向における長さがチャンバー間連通路より長い場合には、被処理物の搬送時に、被処理物が隣り合う2つのチャンバーに渡って位置することがある。このように、被処理物が2つのチャンバーに渡って位置すると、チャンバー間連通路に吹出されたガスが、被処理物に沿ってチャンバー内に流入し易くなる。つまり、被処理物の搬送方向における長さがチャンバー間連通路より短くされることで、チャンバー間連通路に吹出されるガスのチャンバー内への流入を抑制することが可能となる。
【0019】
また、請求項7に記載の大気圧プラズマ処理システムでは、被処理物の側方からガスが吹出されている。被処理物の多くは、板状のものであり、側方からガスが吹出された場合の流路抵抗が最も小さくなると考えられる。したがって、請求項7に記載の大気圧プラズマ処理システムによれば、チャンバー間連通路に吹出されたガスは、被処理物を挟んで吹出し口の反対側に流れ易くなり、吹出されたガスのチャンバー内への流入を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例である大気圧プラズマ処理システムを示す斜視図である
【図2】図1に示す大気圧プラズマ処理システムを上部カバーを取り外した状態で示す平面図である
【図3】図2のAA線における概略断面図である。
【図4】実施例の大気圧プラズマ処理システムでの窒素ガスの流れを模式的に示す図である。
【図5】変形例の大気圧プラズマ処理システムを示す概略断面図である。
【図6】変形例の大気圧プラズマ処理システムでの窒素ガスの流れを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例および変形例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0022】
<大気圧プラズマ処理システムの構成>
図1〜図3に、本発明の実施例の大気圧プラズマ処理システム(以下、「処理システム」と略す場合がある)10を示す。図1は、処理システム10の斜視図であり、図2は、上部カバーを取り除いた状態での処理システム10を上方からの視点において示した概略平面図であり、図3は、図2のAA線における概略断面図である。処理システム10は、大気圧下でプラズマ処理を施すことが可能な3台の大気圧プラズマ処理装置(以下、「処理装置」と略す場合がある)12,14,16と、4台の連結装置18,20,22,24とによって構成されている。それら3台の処理装置12,14,16と4台の連結装置18,20,22,24とは交互に隣接して並べられており、一列に配置されている。
【0023】
ちなみに、以下の説明において、処理装置12,14,16および連結装置18,20,22,24の並ぶ方向を左右方向と称し、その方向に垂直かつ水平な方向を前後方向と称する。そして、図1における斜め左上方向および、図2,3における左方向を左方と称し、図1における斜め右下方向および、図2,3における右方向を右方と称する。さらに、図1における斜め左下方向および、図2における下方向を前方と称し、図1における斜め右上方向および、図2における上方向を後方と称する。また、3台の処理装置12,14,16を区別する場合には、最も左側に配置されたものから順に、第1処理装置12,第2処理装置14,第3処理装置16と称し、4台の連結装置18,20,22,24を区別する場合には、最も左側に配置されたものから順に、第1連結装置18,第2連結装置20,第3連結装置22,第4連結装置24と称する。
【0024】
処理装置12,14,16は、それぞれ、ベース30と、そのベース30の上面全体を囲う上部カバー32とを備えており、それらベース30と上部カバー32とによって、プラズマ処理が行われる処理室34が区画されている。処理室34の天井、つまり、上部カバー32の内面には、ヘッド保持部36が固定的に設けられており、そのヘッド保持部36によって、プラズマヘッド38が保持されている。プラズマヘッド38は、反応ガスを内部でプラズマ化し、そのプラズマ化されたガスを下端面に形成された開口(図示省略)から下方に向けて吹き出すものであり、大気圧下においてプラズマガスを発生可能とされている。大気圧下でプラズマガスを発生可能なヘッドは、それの構成が公知のものであることから、簡単に説明すると、プラズマヘッド内部に形成されたガス流路に反応ガスを流し、そのガス流路に設けられた1対の電極間において放電させることで、反応ガスをプラズマ化させる構造とされている。
【0025】
また、連結装置18,20,22,24は、隣り合う2台の処理装置12,14,16の処理室34を連通するもの、若しくは、処理室34と処理システム10の外部とを連通するものであり、内部にそれらを連通するための通路が形成されている。詳しく言えば、第1連結装置18の内部には、第1処理装置12の処理室34と処理システム10の外部とを連通する第1連通路40が形成されており、第2連結装置20の内部には、第1処理装置12の処理室34と第2処理装置14の処理室34とを連通する第2連通路42が形成されている。第3連結装置22の内部には、第2処理装置14の処理室34と第3処理装置16の処理室34とを連通する第3連通路44が形成されており、第4連結装置24の内部には、第3処理装置16の処理室34と処理システム10の外部とを連通する第4連通路46が形成されている。
【0026】
処理システム10には、それの内部を左右方向に貫くようにして、搬送装置50が配設されている。搬送装置50は、1対のコンベアベルト52を有しており、それら1対のコンベアベルト52は、各連通路40,42,44,46を通って、左右方向に延びるようにして、各処理装置12,14,16のベース30上面に固定されている。搬送装置50は、1対のコンベアベルト52によって基板54を支持し、それら1対のコンベアベルト52を電磁モータ(図示省略)によって周回させることで、基板54を右方向に向かって搬送する構造とされている。つまり、基板54は、搬送装置50によって、第1連結装置18の第1連通路40から搬入されて、第1処理装置12,第2処理装置14,第3処理装置16の各々の処理室34内を順番に搬送され、第4連結装置24の第4連通路46から搬出される。
【0027】
また、連結装置18,20,22,24の各連通路40,42,44,46には、エアカーテン装置60,62,64,66が設けられており、各連通路によって繋がれる2つの処理室34の間、若しくは、処理室34と処理システム10の外部との間を仕切ることが可能となっている。詳しく言えば、各エアカーテン装置60等は、送風機構68と吸引機構70とから構成されており、送風機構68は連通路40等の後方に配設され、吸引機構70は連通路40等の前方に配設されている。その送風機構68の送風口72と吸引機構70の吸引口74とは、連通路40等に開口しており、その連通路40等を挟んで向かい合っている。それら送風口72と吸引口74とはそれぞれ、連通路40等の上下方向の長さ一杯に開口しており、送風口72および吸引口74の上下方向の長さと連通路40等の上下方向の長さとは、同じとされている。そして、送風機構68は、送風口72から窒素ガスを吹出し、吸引機構70は、その吹出された窒素ガスを吸引口74から吸引する構造とされており、そのガスの流れによって壁を形成し、ガス流の壁によって処理室34の間、若しくは、処理室34と大気との間を仕切るようになっている。
【0028】
<大気圧プラズマ処理システムでのプラズマ処理>
上述のように構成された処理システム10では、3台の処理装置12,14,16の処理室34毎に異なるプラズマ処理を行うことが可能とされており、搬送装置50によって搬送される基板54に対して、3種類のプラズマ処理が順次行われるようになっている。具体的にいえば、まず、第1連通路40を介して基板54が搬入される第1処理装置12の処理室34では、反応ガスとして酸素が利用されており、プラズマ化された酸素ガスによって、基板表面の有機物を除去するためのプラズマ処理が行われる。プラズマ化された酸素ガスが、基板表面に付着した有機汚染物と化学的に結合することで、有機汚染物が分解され、基板表面から除去されるのである。
【0029】
次に、有機物除去後の基板54が、第2連通路42を介して、第2処理装置14の処理室34に搬送され、その処理室34では、プラズマ化された反応ガスによって基板表面に薄膜が蒸着される。つまり、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)による薄膜形成が行われる。反応ガスとしては、モノシラン,ジクロロシラン等種々のものを採用することが可能であり、形成される薄膜に応じて選択される。
【0030】
続いて、第2処理装置14の処理室34において1層の薄膜が形成された基板54が、第3連通路44を介して、第3処理装置16の処理室34に搬送され、その処理室34で、プラズマCVDによって2層目の薄膜が形成される。この第3処理装置16の処理室34での薄膜形成用の反応ガスは、第2処理装置14の処理室34での薄膜形成用の反応ガスと異なるものが採用されており、基板54に形成される2つの層は異なるものとなっている。
【0031】
そして、上記プラズマ処理が施された基板54が、第4連通路46を介して、処理システム10から搬出される。処理システム10内で上記プラズマ処理が行われている間、各連通路40等には、エアカーテン装置60等によって窒素ガスが吹出されており、窒素ガスによる気流の壁によって、隣り合う2つの処理室34の間、若しくは、端に位置する処理室34と処理システム10の外部との間が仕切られている。この窒素ガスの流れを、搬送方向からの視点において、図4に示す。
【0032】
エアカーテン装置60等の送風機構68は、各連通路40等の後方に設けられており、送風機構68の吹出口72から、前方に向かって窒素ガスが吹出されている。そして、その吹出された窒素ガスが、各連通路40等の前方に設けられた吸引機構70の吸引口に吸引される。このような窒素ガスの流れによって、図に示すように、各連通路40に気流の壁が形成され、その気流の壁によって、隣り合う2つの処理室34の間、若しくは、端に位置する処理室34と処理システム10の外部との間が仕切られるのである。これより、隣り合う2つの処理室34で使用されている異なる種類の反応ガスの混合を防止するとともに、端に位置する処理室34で使用されている反応ガスと大気との混合を防止することが可能となっている。なお、コンベアベルト52は、一本のベルトの両端が連結された環状のベルトであるため、コンベアベルト52の側方から吹出された窒素ガスは、環状のベルト内部を通り抜けるようになっている。
【0033】
また、図から解るように、窒素ガスは、基板54の側方から吹出されている。このため、吹出口72から基板54に吹き付けられた窒素ガスは、基板54の上面および下面に沿って、吸引口74に流れ込んでいる。このように、窒素ガスを薄板状の基板側方から吹出すことで、少ない流路抵抗で窒素ガスを流すことが可能となり、好適に気流の壁を形成することが可能となる。
【0034】
なお、各処理室34ではプラズマ処理を行うべく、反応ガスが流されており、各プラズマ処理で使用される反応ガスの流量は概ね同じとされている。このため、各処理室34の気圧は概ね同じとされている。つまり、処理室間の気圧差は殆ど0とされており、処理室間の反応ガスの混合をより効果的に防止することが可能となっている。また、処理室34では反応ガスが流されていることから、処理室34内の気圧が大気圧より高くなっている。このため、端に位置する処理室34と大気との間では、処理室34への大気の流入が好適に防止されている。
【0035】
また、上述したように、隣り合う処理室34間の気圧差は殆どなく、端に位置する処理室34内の気圧は大気圧より高いため、端に位置する処理室34と大気との気圧差は、隣り合う処理室34間の気圧差より大きい。このため、処理システム10の端に位置する連結装置18,24に設けられたエアカーテン装置60,66の単位時間当たりの吹出し量を、処理装置12等の間に位置する連結装置20,22に設けられたエアカーテン装置62,64の単位時間当たりの吹出し量より多くしている。これにより、端に位置する処理室34から大気への反応ガスの流出を好適に防止することが可能となっている。
【0036】
<変形例>
上記処理システム10では、窒素ガスが基板54の側方から吹出されるように構成されていたが、窒素ガスが基板54の上方から吹出されるように構成されてもよい。このように構成されたシステムを、変形例の処理システム80として図5に示す。この図は、上記処理システム10を示す図3に相当する図であり、変形例の処理システム80を前方からの視点において示す概略断面図である。なお、変形例の処理システム80は、エアカーテン装置82を除き、上記処理システム10と略同様の構成であるため、上記処理システム10と同様の機能の構成要素については、同じ符号を用いて説明を省略あるいは簡略に行うものとする。
【0037】
処理システム80に装備されているエアカーテン装置82は、各連通路40等の上方に配設された送風機構84と、各連通路40等の下方に配設された吸引機構86とから構成されており、送風機構84の送風口88と吸引機構86の吸引口90とが、各連通路40等を挟んで向かい合っている。それら送風口88と吸引口90とはそれぞれ、各連通路40等の前後方向の長さ一杯に開口しており、送風口88および吸引口90の前後方向の長さと各連通路40等の前後方向の長さとは、同じとされている。そして、送風機構84は、送風口88から窒素ガスを吹出し、吸引機構86は、その吹出された窒素ガスを吸引口90から吸引する構造とされている。このような構造により、変形例の処理システム80においても、上記処理システム10と同様に、窒素ガスの流れによって壁を形成し、ガス流の壁によって処理室34の間、若しくは、処理室34と大気との間を仕切るようになっている。
【0038】
また、変形例の処理システム80では、上記処理システム10と異なり、窒素ガスが基板54の上面に向かって吹きつけられており、比較的大きな流路抵抗で窒素ガスが流れるようになっている。この窒素ガスの流れを、前方からの視点において、図6(a)に示す。図6(a)は、基板54が連通路40等内を搬送されている状態を示しており、この図における基板54は、処理システム80で処理できる最も大きなものとされている。図から解るように、連通路40等の搬送方向における長さは、基板54の搬送方向における長さより長くされており、送風機構84の送風口88から基板54の上面に向かって吹きつけられた窒素ガスは、処理室34に流れ込む前に、吸引機構86の吸引口90に吸引されるようになっている。
【0039】
一方で、連通路の搬送方向における長さが、基板54の搬送方向における長さより短い場合での窒素ガスの流れを説明する。具体的には、図6(b)に示すように、基板54の搬送方向における長さより短い連通路92によって、2つの処理室34を連通した場合における窒素ガスの流れを説明する。この場合には、基板54が2つの処理室34に渡って位置しており、送風口88から基板54の上面に向かって吹きつけられた窒素ガスは、吸引口90に吸引される前に、各処理室34に流れ込んでしまう。このように、流路抵抗が大きい状態で窒素ガスが流され、基板54が2つの処理室34に渡って位置すると、窒素ガスが処理室内に流れ込み易くなるのである。
【0040】
変形例の処理システム80では、上述したように、比較的大きな流路抵抗で窒素ガスが流れているが、連通路40等の搬送方向における長さが、基板54の搬送方向における長さより長くされている。したがって、変形例の処理システム80によれば、窒素ガスの処理室34内への流入を好適に抑制することが可能となっている。
【0041】
ちなみに、上記実施例および変形例において、処理システム10,80は、大気圧プラズマ処理システムの一例であり、搬送装置50は、搬送装置の一例である。また、各処理装置12,14,16内の処理室34は、チャンバーの一例であり、各処理室34に設けられたプラズマヘッド38は、大気圧プラズマ発生装置の一例である。各処理室34を連通する第2連通路42および、第3連通路44は、チャンバー間連通路の一例であり、処理室34と大気とを連通する第1連通路40および、第4連通路46は、搬出入口の一例である。それら第2連通路42および、第3連通路44に設けられたエアカーテン装置62,64,82は、チャンバー間仕切装置の一例であり、第1連通路40および、第4連通路46に設けられたエアカーテン装置60,66,82は、チャンバー大気間仕切装置の一例である。そして、基板54は、被処理物の一例である。
【0042】
なお、本発明は、上記実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例および変形例では、大気圧プラズマ発生装置として、プラズマ化されたガスを被処理物に吹き付ける構造のプラズマヘッド38、所謂、リモート方式のプラズマ発生装置が採用されているが、ダイレクト方式のプラズマ発生装置を採用してもよい。具体的には、1対の電極の間に被処理物を配置し、その間に反応ガスを流した状態で1対の電極間で放電させることで、プラズマ処理を行う方式のプラズマ発生装置を採用することが可能である。さらに言えば、リモート方式のプラズマ発生装置とダイレクト方式のプラズマ発生装置との両方の方式を採用してもよい。つまり、1台目の処理装置と3台目の処理装置にリモート方式のプラズマ発生装置を設け、2台目の処理装置にダイレクト方式のプラズマ発生装置を設けてもよい。
【0043】
また、上記実施例および変形例では、エアカーテン装置から吹出されるガスとして窒素ガスが採用されているが、ヘリウムガス,アルゴンガス等種々のガスを採用することが可能である。ただし、反応性の乏しいガス、所謂、イナートガスであることが望ましい。
【符号の説明】
【0044】
10:大気圧プラズマ処理システム 34:処理室(チャンバー) 38:プラズマヘッド(大気圧プラズマ発生装置) 40:第1連通路(搬出入口) 42:第2連通路(チャンバー間連通路) 44:第3連通路(チャンバー間連通路) 46:第4連通路(搬出入口) 50:搬送装置 60:エアカーテン装置(チャンバー大気間仕切装置) 62:エアカーテン装置(チャンバー間仕切装置) 64:エアカーテン装置(チャンバー間仕切装置) 66:エアカーテン装置(チャンバー大気間仕切装置) 80:大気圧プラズマ処理システム 82:エアカーテン装置(チャンバー間仕切装置)(チャンバー大気間仕切装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に並んで配置された複数のチャンバーと、
それぞれが、前記複数のチャンバーのうちの隣り合う2つのチャンバーを連通する1以上のチャンバー間連通路と、
それら1以上のチャンバー間連通路を介しつつ、前記複数のチャンバー内を通って被処理物を搬送する搬送装置と、
前記複数のチャンバーに対応して設けられ、それぞれが、前記複数のチャンバーのうちの自身に対応するものの内部で大気圧下においてプラズマを発生可能な複数の大気圧プラズマ発生装置と、
前記1以上のチャンバー間連通路に対応して設けられ、それぞれが、前記1以上のチャンバー間連通路のうちの自身に対応するものを遮るようにガスを吹出し、その吹出されたガスの流れによって隣り合う2つのチャンバーの間を仕切る1以上のチャンバー間仕切装置と
を備え、前記搬送装置によって搬送される被処理物に対して、前記複数のチャンバー内で順次プラズマ処理を施す大気圧プラズマ処理システム。
【請求項2】
前記複数のチャンバー内の気圧が同じとされた請求項1に記載の大気圧プラズマ処理システム。
【請求項3】
前記複数のチャンバー内の気圧が陽圧とされた請求項1または請求項2に記載の大気圧プラズマ処理システム。
【請求項4】
前記複数のチャンバーのうちの両端に配置された2つのチャンバーの各々は、
大気に開口し、被処理物を前記搬送装置によって搬出入するための搬出入口を有し、
当該大気圧プラズマ処理システムは、
前記両端に配置された2つのチャンバーに対応して設けられ、それぞれが、前記搬出入口を遮るようにガスを吹出し、その吹出されたガスの流れによって自身に対応するチャンバーと大気との間を仕切る2つのチャンバー大気間仕切装置を備えた請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の大気圧プラズマ処理システム。
【請求項5】
前記2つのチャンバー大気間仕切装置の各々の単位時間当たりの吹出し量は、前記1以上のチャンバー間仕切装置の各々の単位時間当たりの吹出し量より多い請求項4に記載の大気圧プラズマ処理システム。
【請求項6】
被処理物の搬送方向における前記1以上のチャンバー間連通路の長さが、当該大気圧プラズマ処理システムによって処理できる最も大きな被処理物の前記搬送方向における長さより長い請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の大気圧プラズマ処理システム。
【請求項7】
前記1以上のチャンバー間仕切装置は、それぞれ、被処理物の搬送方向に垂直かつ水平な方向にガスを吹出す構造とされた請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の大気圧プラズマ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−20836(P2013−20836A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153751(P2011−153751)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】