説明

実装構造体とその製造方法

【課題】電子部品の外周まで樹脂を確実に充填し、配線基板と電子部品との接続信頼性を向上できる実装構造体とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも第1の面1Aに電子部品4が実装された配線基板1と、少なくとも電子部品4と配線基板1間に設けられた樹脂3と、配線基板1の電子部品4の実装位置に対応する領域に設けられた貫通孔2と、を備え、電子部品4の実装位置に対応する領域の周辺で、少なくとも電子部品4と重なるように配線基板1に凸部20を設けた構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に半導体チップなどの電子部品が実装された実装構造体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の高機能化、小型化や軽量化が急速に進んでいる。そして、半導体チップなどのパッケージや実装方法においても、小型化や軽量化とともに、薄型化への対応が要求されている。
【0003】
それを実現するために、半導体チップを配線基板に実装する技術として、ワイヤボンディング技術に代わって、半導体チップの表面にはんだや金線を用いて突起状の電極を形成し、配線基板と接続するフリップチップ技術が広く用いられている。フリップチップ技術は、一般に配線パターンを有する配線基板の片側に突起状の電極を介して半導体チップを実装し、半導体チップと配線基板間にアンダーフィルと呼ばれる樹脂を注入して充填することにより、半導体チップと配線基板とを一体化して固定するものである。この樹脂により、半導体チップの機能面を保護するとともに、安定した接続を実現している。
【0004】
従来、図10を用いて説明するようなアンダーフィルである樹脂を注入した実装構造体が一般に知られている。
【0005】
図10は、従来の実装構造体の配線基板と半導体チップ間に樹脂を注入する方法を説明する断面図である。なお、実装構造体は、少なくとも一方の面にパッド106や配線パターン161が形成された配線基板100のパッド106に、はんだ105を介して半導体チップ104が片面に実装された構成を有している。このとき、配線パターン161上およびそれ以外の領域にレジストなどからなる絶縁膜107、171が形成されている。
【0006】
まず、図10(a)に示すように、ディスペンサー108を用いて、配線基板100と半導体チップ104を実装した周辺の1箇所から樹脂103を注入する。このとき、樹脂103は、図10(b)の点線で示すように、ディスペンサー108から同心円状に広がりながら、矢印で示すように半導体チップ104の外周に向かって隙間に注入される。
【0007】
そして、図10(c)に示すように、樹脂103は、配線基板100と半導体チップ104との隙間から内部に広がりながら注入される。
【0008】
その後、図10(d)に示すように、配線基板100と半導体チップ104の隙間全体に樹脂103が注入され、硬化させることにより半導体チップ104と配線基板100が一体的に固着される。
【0009】
上記方法により、配線基板に半導体チップを実装した実装構造体が実現されるものである。
【0010】
しかし、上記実装構造体によれば、例えば配線パターン161と絶縁膜171で構成される段差や、近年生産性を向上させるために用いる無洗浄タイプのはんだフラックスが隙間に残渣として残り、注入される樹脂103の流れを部分的に阻害して不均一にする。そのため、図10(d)に示すように、樹脂103の充填されない空間109やボイドが発生し、固着強度や剥離強度を低減させるという課題がある。
【0011】
また、樹脂103を1箇所から注入するため、図10(d)に示すように、配線基板100と半導体チップ104の周囲全体に樹脂103の充填されない領域110が形成される場合がある。これは、樹脂103が、図10(b)に示すように同心円状に注入されるため、注入する側から反対側の半導体チップ104の端部へ、段差や残渣により到達しないためである。その結果、半導体チップ104の端部や周辺の一部が樹脂103で固着されず、外部からの変形応力や、半導体チップ104と配線基板100との熱膨張係数との差に起因する反りなどにより、半導体チップ104の剥がれや断線などを生じて信頼性を低下させるという課題がある。
【0012】
これを避けるために、半導体チップの実装エリアより大きい枠状樹脂ダムを形成し、ディスペンサーを、その間で半導体チップの一辺に沿って周囲を移動させながら、アンダーフィル樹脂を注入した半導体チップ実装構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
また、基板の表面に、回路素子の外形より小さい凹部を有する枠状の段差部を固定し、回路素子と段差部との対向する周囲に封止樹脂を充填した電子デバイスが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−351559号公報
【特許文献2】特開2003−249603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1の半導体チップ実装構造によれば、ディスペンサーの移動の精度、注入量の安定性などのプロセス条件や複雑な機構の設備が必要で生産性の低下を招くという課題がある。
【0015】
また、特許文献2の電子デバイスによれば、回路素子の機能部に封止樹脂が流れ込まない構造の実現を目的とするものであり、対向する電子部品と配線基板との間を確実にアンダーフィル樹脂を充填して固定する構造、特に注入方法などは何ら開示されていない。
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、電子部品の外周まで樹脂を確実に充填し、配線基板と電子部品との接続信頼性を向上できる実装構造体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述したような目的を達成するために、本発明の実装構造体は、少なくとも第1の面に電子部品が実装された配線基板と、少なくとも電子部品と配線基板間に設けられた樹脂と、配線基板の電子部品の実装位置に対応する領域に設けられた貫通孔と、を備え、電子部品の実装位置に対応する領域の周辺で、少なくとも電子部品と重なるように配線基板に凸部を設けた構成を有する。
【0018】
この構成により、電子部品の外周および配線基板との隙間を確実に樹脂で固着し信頼性に優れた実装構造体を実現できる。
【0019】
さらに、電子部品を第1電子部品とし、凸部を第1凸部として、配線基板の第1の面と対向する第2の面に第2電子部品を実装し、第2電子部品と配線基板間に設けられた樹脂とともに、第2電子部品の実装位置に対応する領域の周辺に設けられ、少なくとも第2電子部品と重なるように配線基板に第2凸部をさらに設けた構成を有する。これにより、配線基板の両面に電子部品が確実に実装された実装構造体を実現できる。
【0020】
さらに、凸部は、配線基板に設けられた周辺導体部と、周辺導体部を被覆する絶縁膜から構成されている。
【0021】
さらに、周辺導体部が、配線基板の電子部品を接続するパッドまたは配線パターンと同時に設けられている。
【0022】
これらにより、製造工程を増やすことなく、接続信頼性に優れた実装構造体を実現できる。
【0023】
さらに、凸部が4角形の枠状である。これにより、樹脂が電子部品の外周に確実に注入され、電子部品と配線基板との固着強度を大幅に向上できる。
【0024】
さらに、4角形の枠状の少なくとも内周側の角部が曲線状に設けられている。
【0025】
さらに、4角形の枠状の少なくとも内周側の角部が平坦化されている。
【0026】
これらにより、電子部品と配線基板の凸部との隙間に沿って、樹脂を容易に流すことができる。
【0027】
さらに、凸部が、階段状の断面形状を有する。これにより、樹脂が電子部品の外周から外部に不均一に広がること防止するとともに、隙間への注入を確実に行うことができる。
【0028】
また、本発明の実装構造体の製造方法は、配線基板の少なくとも第1の面に電子部品の実装位置に対応する領域で電子部品の周辺と重なる枠状の凸部と領域内に貫通孔とを形成するステップと、領域に電子部品を実装するステップと、電子部品と配線基板間に凸部と電子部品の間隙から樹脂を注入するステップと、樹脂を熱処理するステップと、を含む。
【0029】
この方法により、電子部品の外周および配線基板との隙間を確実に樹脂で固着し信頼性に優れた実装構造体を生産性よく作製できる。
【0030】
さらに、電子部品を第1電子部品とし、凸部を第1凸部として、配線基板の第1の面と対向する第2の面に第2電子部品の実装位置に対応する領域で第2電子部品の周辺と重なる枠状の第2凸部と領域内に形成するステップと、領域に第2電子部品を実装するステップと、第2電子部品と配線基板間に第2凸部と第2電子部品の間隙から樹脂を注入するステップと、をさらに含む。これにより、配線基板の両面に電子部品が確実に実装された実装構造体を容易に作製できる。
【0031】
さらに、樹脂を配線基板の凸部の1箇所のみから注入する。これにより、単純なプロセス条件や簡単な設備で実装構造体を作製できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電子部品の周辺と重なる配線基板上に設けた凸部により、樹脂を確実に電子部品と配線基板との隙間および電子部品の外周近傍に注入して、固着強度や接続信頼性に優れた実装構造体とその製造方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0034】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1における実装構造体の構成を示す外観斜視図で、図1(b)は図1(a)の1B−1B線断面図である。図2(a)は本発明の実施の形態1における実装構造体を構成する配線基板を説明する外観斜視図で、図2(b)は図2(a)の配線基板の絶縁膜を除いた状態の平面図である。
【0035】
図1に示すように、実装構造体10は、少なくとも配線基板1の第1の面1Aに実装された電子部品4と、電子部品4と配線基板1を電気的に接続するはんだ5と、それらを固着する樹脂3で構成されている。
【0036】
このとき、配線基板1は、図2(b)に示すように、はんだ5を介して接続するパッド6と配線パターン61、貫通孔2と電子部品4の実装位置に対応する領域9(図面中の点線)の周辺で少なくとも電子部品4の外周では重なるように設けた周辺導体部62を有している。なお、周辺導体部62は、電気的な接続に寄与しないダミー電極でも、接地電極として機能させてもよい。また、周辺導体部を部分的に切り欠いて、その間に外部と接続する配線パターンなどを設けてもよい。さらに、周辺導体部を全周に設ける場合、配線基板の内層の配線パターンにより外部と接続してもよい。
【0037】
そして、凸部20は、図1(b)および図2(a)に示すように、周辺導体部62とそれを被覆する、例えばレジストなどの絶縁膜72で、例えば4角形の枠状に構成されている。同様に、配線基板1の配線パターン61も、例えばレジストなどの絶縁膜71で被覆されて形成されている。つまり、凸部20の周辺導体部62は、配線パターン61あるいはパッド6と同じ工程および同じ導電材料で形成される。そのため、以下の製造方法で説明するように、新たに別の工程を必要としない。
【0038】
また、配線基板1に設けられた貫通孔2は、注入された樹脂3で充填されている。このとき、電子部品4と配線基板1との固着強度を高めるために、図1(b)のように、貫通孔2を介して樹脂3を配線基板1の第2の面1B側まで到達させてもよいが、これに限られるものではない。
【0039】
ここで、配線基板1としては、例えば高Tgタイプで低線膨張係数の、単層や多層のガラスエポキシ基板などを用いることができる。また、樹脂3としては、例えば弾性率3GPa、ガラス転移点150℃(動的粘弾性による測定値)で、平均粒径2μm、含有率55%のフィラーを含むエポキシ樹脂が用いられる。また、電子部品4としては、例えば厚さ1mm程度でLGA(Land Grid Array)の半導体パッケージや、QFP(Quad Flat Package)やTCP(Tape Carrier Package)、TSOP(Thin Small Outline Package)などの半導体パッケージや、ベアの半導体チップまたはその他の汎用部品などが用いられる。また、配線パターン61は、配線基板1の第1の面1Aだけでなく、多層に構成された内層に設けてもよく、例えば導電性を有する貫通孔2やビアホール(図示せず)を介して接続される。
【0040】
以下に、本発明の実施の形態1における実装構造体の製造方法について、図面を用いて説明する。
【0041】
図3は、本発明の実施の形態1における実装構造体の製造方法を説明する断面図である。
【0042】
まず、図3(a)に示すように、例えばガラスエポキシ基板からなる配線基板1の第1の面1Aに、例えばパンチング加工やレーザー加工を用いて、少なくとも以降の工程で実装される電子部品の実装位置に対応する領域内に貫通孔2を形成する。そして、例えばフォトリソ法を用いて、パッド6、配線パターン61および、実装される電子部品の少なくとも外周と重なる所定の位置の全周に周辺導体部62を、例えば蒸着法やスパッタ法を用いて、あるいは銅箔などを貼り付けた後、エッチング法などにより形成する。
【0043】
つぎに、少なくとも配線パターン61および周辺導体部62を被覆するように、さらにフォトリソ法を用いて、例えばレジストなどの絶縁膜7、71、72を形成する。
【0044】
これにより、少なくとも電子部品の外周と重なる位置で、かつ対向する間隔(隙間)が均一な、周辺導体部62と絶縁膜72からなる凸部20が、例えば図1(b)に示す高さD1が40μm程度で、形成される。
【0045】
なお、このとき、配線パターン61の絶縁膜71の厚みよりも、周辺導体部62の絶縁膜72の厚みを厚く形成することが好ましい。しかし、電子部品4が実装される領域で、電子部品と配線基板間の間隔が、凸部20以外の領域より凸部20の位置で狭く形成されていればよい。
【0046】
つぎに、例えばスクリーン印刷などを用いて、配線基板1のパッド6上に、例えばSn−3Ag−0.5Cuからなるはんだペーストを塗布し、ボール状のはんだ5を形成する。
【0047】
つぎに、半導体パッケージなどの電子部品4の電極(図示せず)と配線基板1のパッド6の位置合わせをして実装し、リフローすることにより、はんだ5を介して電子部品4を配線基板1に接合する。このとき、配線基板1の凸部20と電子部品4との間隔D2(図1(b))は、例えば60μmで、少なくとも絶縁膜72の厚み(高さ)分だけ、配線基板1と電子部品4の内部の間隔より狭くなる。
【0048】
つぎに、ディスペンサー8を用いて、配線基板1の電子部品4を実装した周辺の凸部20上の1箇所から、例えばエポキシ樹脂などの樹脂3を滴下し、例えば毛細管現象を利用して注入する。このとき、樹脂3は、図3(b)の点線で示すように、電子部品4と凸部20との重なる領域(一点鎖線と内側の実線との間)に沿うように矢印で示す方向に広がりながら、電子部品4と配線基板1との隙間および凸部20と電子部品4との隙間に注入される。これは、凸部と電子部品との間隔が内部の間隔より狭く、かつ電子部品の全周にわたって均一に形成されているため、樹脂が毛細管現象により、電子部品と凸部の重なる領域に沿ってスムーズに注入できることによるものである。
【0049】
そして、図3(c)に示すように、樹脂3は、配線基板1の凸部20と電子部品4との重なる隙間を、まず充填しながら、電子部品4と配線基板1の内部の隙間に広がりながら注入される。なお、図3(c)は図3(b)の3C−3C線断面図で示している。
【0050】
その後、図3(d)に示すように、最終的に、配線基板1と電子部品4の隙間全体に樹脂3が注入され、硬化させることにより電子部品4と配線基板1が一体的に固着される。
【0051】
上記方法により、少なくとも配線基板の第1の面に電子部品を実装した実装構造体10が実現される。
【0052】
本実施の形態によれば、配線基板の凸部と電子部品との隙間に、まず樹脂が流れ込み、それとともに内部の隙間に樹脂が流れ込む。その結果、電子部品の外周の周辺部に確実に樹脂が注入されることにより、電子部品と配線基板との固着強度や剥離強度を向上して接続信頼性に優れた実装構造体を実現できる。
【0053】
なお、本実施の形態では、凸部を4角形状の枠状を例に説明したが、これに限られない。例えば、図4の配線基板の第1の例を説明する斜視図に示すように、4角形状の枠状の内周部の角部を曲線状の曲線部22Aで形成してもよい。曲線部22Aとしては、例えば1/4の円形状などである。また、図5の配線基板の第2の例を説明する斜視図に示すように、4角形状の枠状の内周部の角部を、例えば面取りの逆の形状で平坦化して平坦部22Bを形成してもよい。これにより、図3(b)に示したディスペンサー8を用いて、1箇所から注入された樹脂の角部での流れが、曲線部22Aまたは平坦部22Bによりスムーズになり、電子部品の外周周辺に沿ってより均等に、かつ均一に注入できる。
【0054】
また、本実施の形態では、樹脂の注入を常温で行う例で説明したが、これに限られない。例えば、電子部品と配線基板を接続した状態で、樹脂が硬化しない温度(例えば40℃程度)に加熱して樹脂を注入してもよい。これにより、樹脂の流動性が高まり注入速度を上げることにより生産性を向上できる。
【0055】
また、本実施の形態では、配線基板の凸部と電子部品との間隔D2を、60μmを例に説明したが、これに限られない。例えば、30μmから80μm、好ましくは40μmから70μmであれば任意で、樹脂の粘度や注入温度などに応じて、設定することができる。しかし、間隔D2が広すぎると、間隔に沿った樹脂の流れが遅くなり、電子部品の外周全体に樹脂を注入できない場合が生じるため、上記範囲に設定することが好ましい。
【0056】
また、本実施の形態では、凸部を電子部品の外周の全周に沿って、均一な高さ(厚み)で形成した例で説明したが、これに限られない。例えば、凸部の一部に、1箇所以上の高さの低い部分を設けてもよい。これらは、絶縁膜および周辺導体部の少なくとも一方を形成しないことにより設けることができる。これにより、貫通孔2とともに、樹脂の注入時に内部の空気などを容易に押し出して、さらにボイドなどの発生を防止できる。そのため、凸部の高さの低い部分は、樹脂を注入する位置から異なる位置で離れた、例えば注入位置と反対の位置に設けることが、特に好ましい。
【0057】
また、本実施の形態では、凸部の周辺導体部を、配線基板に形成するパッドまたは配線パターンと同時に形成した例で説明したが、これに限られない。例えば、厚みの異なる銅箔などを貼り付け、エッチングなどの方法により、パッドや配線パターンの厚みとは異なる厚み(厚くする)で周辺導体部を設けてもよい。これにより、外部応力などによる変形や反りに対する配線基板の機械的強度を高めることができる。
【0058】
(実施の形態2)
図6(a)は、本発明の実施の形態2における実装構造体の構成を示す外観斜視図で、図6(b)は図6(a)の6B−6B線断面図である。
【0059】
図6に示すように、配線基板の第2の面に、電子部品と凸部をさらに設けた点で、実施の形態1の実装構造体とは異なる。そこで、以下においては、実施の形態1の電子部品4を第1電子部品4、凸部20を第1凸部20とし、実施の形態2の電子部品を第2電子部品40、凸部を第2凸部50と記載して説明する。
【0060】
つまり、図6に示すように、実装構造体30は、配線基板31の第1の面31Aに実装された第1電子部品4と、第2の面31Bに実装された第2電子部品40と、第1電子部品4および第2電子部品40を配線基板31と電気的に接続するはんだ5と、それらを貫通孔2を介して一体的に固着する樹脂3で構成されている。
【0061】
このとき、配線基板31の第1の面31Aと第2の面31Bには、はんだ5を介して接続するパッド6と配線パターン61、貫通孔2と第1電子部品4および第2電子部品40の実装位置に対応する領域(図示せず)の周辺で少なくとも第1電子部品4および第2電子部品40の外周では重なるように設けた第1凸部20と第2凸部50を有している。そして、図6(b)に示すように、第1凸部20は、周辺導体部62とそれを被覆する、例えばレジストなどの絶縁膜72で、例えば4角形の枠状に構成されている。同様に、第2凸部50は、周辺導体部64とそれを被覆する、例えばレジストなどの絶縁膜74で、例えば4角形の枠状に構成されている。さらに、配線基板31の第1の面31Aおよび第2の面31Bに設けられた、配線パターン61も、例えばレジストなどの絶縁膜71で被覆されて形成されている。このとき、実施の形態1と同様に、第1凸部20の周辺導体部62および第2凸部50の周辺導体部64は、配線パターン61と同じ工程および同じ導電材料で形成される。その結果、以下の製造方法で説明するように、新たに別の工程を必要としない。
【0062】
また、配線基板31と第1電子部品4および第2電子部品40との隙間に注入された樹脂3は、配線基板31に設けられた貫通孔2を介して一体化して、固着される。なお、他の構成要素や材料などは、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0063】
以下に、本発明の実施の形態2における実装構造体の製造方法について、図面を用いて説明する。
【0064】
図7は、本発明の実施の形態2における実装構造体の製造方法を説明する断面図である。図8は、本発明の実施の形態2における実装構造体の製造方法を説明するフローチャートである。
【0065】
まず、図7(a)および図8に示すように、例えばガラスエポキシ基板からなる厚み0.4mm程度の配線基板31の第1の面31Aおよび第2の面31Bに、以降の工程で実装される第1電子部品4および第2電子部品40の実装位置に対応する領域内に貫通孔2を形成する。このとき、貫通孔2は、例えばパンチング加工やレーザー加工で、外径0.15mmで形成される。そして、例えばフォトリソ法を用いて、パッド6、配線パターン61および、実装される第1電子部品4および第2電子部品40の少なくとも外周と重なる所定の位置の全周に周辺導体部62、64を、例えば蒸着法やスパッタ法を用いて、あるいは銅箔などを貼り付けた後、エッチング法などにより形成する。
【0066】
つぎに、少なくとも配線パターン61および第1の面31Aの周辺導体部62および第2の面31Bの周辺導体部62を被覆するように、さらにフォトリソ法を用いて、例えばレジストなどの絶縁膜7、71、72、74を形成する。
【0067】
これにより、第1電子部品の外周と重なる位置で、かつ対向する間隔(隙間)が均一な、周辺導体部62と絶縁膜72からなる第1凸部20が、例えば図6(b)に示す高さD1が40μm程度で、形成される。同様に、第2電子部品の外周と重なる位置で、かつ対向する間隔(隙間)が均一な、周辺導体部64と絶縁膜74からなる第2凸部50が、高さD1が40μm程度で、形成される。
【0068】
なお、このとき、配線パターン61の絶縁膜71の厚みよりも、周辺導体部62、64の絶縁膜72、74の厚みを厚く形成することが好ましいが、第1電子部品4および第2電子部品40が実装される領域で、第1電子部品4および第2電子部品40と配線基板31間の間隔が、第1凸部20および第2凸部50以外の領域より第1凸部20および第2凸部50の位置で狭く形成されていればよい。
【0069】
つぎに、例えばスクリーン印刷などを用いて、配線基板31の第1の面31Aのパッド6上に、例えばSn−3Ag−0.5Cuからなるはんだペーストを塗布し、ボール状のはんだ5を形成する。
【0070】
つぎに、半導体パッケージなどの第1電子部品4の電極(図示せず)と配線基板31のパッド6の位置合わせをして実装し、リフローすることにより、はんだ5を介して第1電子部品4を配線基板31の第1の面31Aに接合する(ステップS01)。
【0071】
同様に、配線基板31の第2の面31Bのパッド6上に、ボール状のはんだ5を形成し、第2電子部品40の電極(図示せず)と配線基板31のパッド6の位置合わせをして実装し、リフローすることにより、はんだ5を介して第2電子部品40を配線基板31の第2の面31Bに接合する(ステップS02)。
【0072】
つぎに、図7(b)と図8に示すように、ディスペンサー8を用いて、配線基板31の第1の面31Aに実装した第1電子部品4の周辺の第1凸部20上の1箇所から、例えばエポキシ樹脂などの樹脂3を滴下し、注入する。このとき、樹脂3は、実施の形態1で図3(b)から図3(d)を用いて説明したように、第1電子部品4と第1凸部20との重なる領域に沿うように矢印で示す方向に広がりながら、第1電子部品4と配線基板31の第1の面31Aとの隙間を埋めるように充填される(ステップS03)。このとき、充填された樹脂3の一部は貫通孔2に流れ込み、条件によって第2の面31Bに到達する場合もある。
【0073】
つぎに、図7(c)と図8に示すように、第1電子部品4および第2電子部品40が実装され接合した配線基板31を裏返して、第2の面31Bを上にする。そして、図7(b)で説明したように、ディスペンサー8を用いて、配線基板31の第2の面31Bに実装した第2電子部品40の周辺の第2凸部50上の1箇所から、例えばエポキシ樹脂などの樹脂3を滴下し、注入する。このとき、樹脂3は、第2電子部品40と第2凸部50との重なる領域に広がりながら、第2電子部品40と配線基板31の第2の面31Bとの隙間を埋めるように充填される(ステップS04)。このとき、内部の空気などは、樹脂の注入側から開放側に向かって押し出される。
【0074】
なお、図7(b)と図7(c)は、実施の形態1で説明したように、第1凸部および第2凸部と第1電子部品および第2電子部品との間隔が、それらが対向する内部の間隔より狭く、かつ第1電子部品および第2電子部品の全周にわたって均一な高さで形成されている。その結果、第1電子部品と第1凸部および第2電子部品と第2凸部の重なる領域に沿って、樹脂を毛細管現象により、スムーズに注入できる。
【0075】
つぎに、図7(d)と図8に示すように、樹脂3が硬化する所定の温度(例えば80℃程度)で熱処理し、樹脂3を一括で硬化する(ステップS05)。これにより、配線基板31の第1の面31Aおよび第2の面31Bに第1電子部品4および第2電子部品40が実装された実装構造体30が作製される。
【0076】
本実施の形態によれば、配線基板の第1凸部と第1電子部品との隙間および第2凸部と第2電子部品との隙間に、まず樹脂が流れ込み、それとともにそれらの対向する内部の隙間に樹脂が流れ込む。その結果、第1電子部品および第2電子部品の外周の周辺部に確実に樹脂が注入され、第1電子部品および第2電子部品と配線基板との固着強度や剥離強度が向上して接続信頼性に優れた実装構造体を実現できる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、配線基板の第1の面および第2の面の両面に第1電子部品および第2電子部品を実装し、貫通孔を介して樹脂を一体化して硬化できる。その結果、樹脂の硬化収縮が、第1電子部品と第2電子部品を一体化する方向に作用し、固着強度がさらに向上した信頼性に優れた実装構造体が作製される。また、実装される構成要素の熱膨張係数の差に起因する配線基板の反りが、構成部品を対称に配置することにより大幅に抑制され、薄型の実装構造体を実現できる。
【0078】
なお、実施の形態1で説明した各種例を、本実施の形態に適用できることは、いうまでもない。
【0079】
(実施の形態3)
図9(a)は、本発明の実施の形態3における実装構造体の構成を示す外観斜視図で、図9(b)は図9(a)の9B−9B線断面図である。
【0080】
図9に示すように、第1凸部および第2凸部において、断面形状が、階段状である点で、実施の形態2の実装構造体とは異なる。
【0081】
すなわち、図9に示すように、実施の形態1の第1凸部20の絶縁膜72および第2凸部50の絶縁膜74の上に、さらに第1電子部品4および第2電子部品40の外形より大きい4角形状の枠状の絶縁膜73および絶縁膜75を形成し、断面形状が階段状の第1凸部20Aおよび第2凸部50Aを設けて、実装構造体80を構成している。このとき、絶縁膜73、75は、例えばフォトリソ法を用いて、絶縁膜72、74の上に、例えば30μm程度の高さで形成される。
【0082】
なお、他の構成、材料や製造方法は、実施の形態2と同様であるので、説明を省略する。
【0083】
本実施の形態によれば、第1凸部20Aおよび第2凸部50Aの絶縁膜73、75により、樹脂3が第1電子部品4および第2電子部品40の外周から外部に広がることを未然に防止できる。特に樹脂3の硬化時において、樹脂3の粘度が低下した場合にその効果が大きいものである。
【0084】
また、本実施の形態によれば、第1電子部品4および第2電子部品40の外周側面に沿って、樹脂3を良好なフィレット形状に形成できる。この結果、さらに固着強度や剥離強度に優れた実装構造体を実現できる。
【0085】
なお、絶縁膜73および絶縁膜75で形成される枠の大きさは、第1電子部品4および第2電子部品40の外周より大きければ任意である。このとき、少なくとも樹脂3を注入する位置においては、例えばディスペンサーの樹脂の排出口の大きさより大きくすることが好ましい。
【0086】
また、本実施の形態を、実施の形態1や実施の形態2の実装構造体に適用してもよく、同様の効果が得られる。
【0087】
また、実施の形態1で説明した各種例を、本実施の形態に適用できることは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の実装構造体およびその製造方法は、小型・薄型化で多機能化が進む携帯電話、携帯型デジタル機器やデジタル家電機器などの技術分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における実装構造体の構成を示す外観斜視図、(b)図1(a)の1B−1B線断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における実装構造体を構成する配線基板を説明する外観斜視図、(b)図2(a)の配線基板の絶縁膜を除いた状態の平面図
【図3】本発明の実施の形態1における実装構造体の製造方法を説明する断面図
【図4】本発明の実施の形態1における実装構造体の配線基板の第1の例を説明する斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における実装構造体の配線基板の第2の例を説明する斜視図
【図6】(a)は、本発明の実施の形態2における実装構造体の構成を示す外観斜視図、(b)図6(a)の6B−6B線断面図
【図7】本発明の実施の形態2における実装構造体の製造方法を説明する断面図
【図8】本発明の実施の形態2における実装構造体の製造方法を説明するフローチャート
【図9】(a)本発明の実施の形態3における実装構造体の構成を示す外観斜視図、(b)図9(a)の9B−9B線断面図
【図10】従来の実装構造体の配線基板と半導体チップ間に樹脂を注入する方法を説明する断面図
【符号の説明】
【0090】
1,31,100 配線基板
1A,31A 第1の面
1B,31B 第2の面
2 貫通孔
3,103 樹脂
4 電子部品(第1電子部品)
5,105 はんだ
6,106 パッド
7,71,72,73,74,75,107,171 絶縁膜
8,108 ディスペンサー
9 領域
10,30,80 実装構造体
20,20A 凸部(第1凸部)
22A 曲線部
22B 平坦部
40 第2電子部品
50,50A 第2凸部
61,161 配線パターン
62,64 周辺導体部
104 半導体チップ
109 充填されない空間
110 充填されない領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の面に電子部品が実装された配線基板と、
少なくとも前記電子部品と前記配線基板間に設けられた樹脂と、
前記配線基板の前記電子部品の実装位置に対応する領域に設けられた貫通孔と、を備え、
前記電子部品の実装位置に対応する領域の周辺で、少なくとも前記電子部品と重なるように前記配線基板に凸部が設けられていることを特徴とする実装構造体。
【請求項2】
前記電子部品を第1電子部品とし、前記凸部を第1凸部として、
前記配線基板の前記第1の面と対向する第2の面に第2電子部品を実装し、前記第2電子部品と前記配線基板間に設けられた樹脂とともに、前記第2電子部品の実装位置に対応する領域の周辺に設けられ、少なくとも前記第2電子部品と重なるように前記配線基板に第2凸部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の実装構造体。
【請求項3】
前記凸部は、前記配線基板に設けられた周辺導体部と、前記周辺導体部を被覆する絶縁膜から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の実装構造体。
【請求項4】
前記周辺導体部が、前記配線基板の前記電子部品を接続するパッドまたは配線パターンと同時に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の実装構造体。
【請求項5】
前記凸部が4角形の枠状であることを特徴とする請求項1に記載の実装構造体。
【請求項6】
前記4角形の枠状の少なくとも内周側の角部が曲線状に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の実装構造体。
【請求項7】
前記4角形の枠状の少なくとも内周側の角部が平坦化されていることを特徴とする請求項5に記載の実装構造体。
【請求項8】
前記凸部が、階段状の断面形状を有することを特徴とする請求項1に記載の実装構造体。
【請求項9】
配線基板の少なくとも第1の面に電子部品の実装位置に対応する領域で前記電子部品の周辺と重なる枠状の凸部と前記領域内に貫通孔とを形成するステップと、
前記領域に前記電子部品を実装するステップと、
前記電子部品と前記配線基板間に前記凸部と前記電子部品の間隙から樹脂を注入するステップと、
前記樹脂を熱処理するステップと、
を含むことを特徴とする実装構造体の製造方法。
【請求項10】
前記電子部品を第1電子部品とし、前記凸部を第1凸部として、
配線基板の第1の面と対向する第2の面に第2電子部品の実装位置に対応する領域で前記第2電子部品の周辺と重なる枠状の第2凸部を前記領域内に形成するステップと、
前記領域に前記第2電子部品を実装するステップと、
前記第2電子部品と前記配線基板間に前記第2凸部と前記第2電子部品の間隙から樹脂を注入するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の実装構造体の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂を前記配線基板の前記凸部の1箇所のみから注入することを特徴とする請求項9に記載の実装構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−135428(P2009−135428A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245816(P2008−245816)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】