説明

室内載置型現像廃液処理装置並びに室内型現像廃液処理方法

【課題】 COD、BOD並びにアンモニア性窒素成分を確実に低減可能であって、且つ大規模な付帯設備を要さず、室内を現像廃液で汚染することがない室内載置型現像廃液処理装置並びに室内型現像廃液処理方法の提供。
【解決手段】 現像処理後の現像廃液を供給する供給口と、該供給口から供給された現像廃液を収容するとともに内部で撹拌する撹拌槽と、前記撹拌槽内に凝集・中和剤を投入する投入装置と、前記撹拌槽底部と連結する第1ポンプと、該第1ポンプの下流側に連結するとともに該第1ポンプから送られた現像廃液を濾過処理する濾過装置からなり、少なくとも前記撹拌槽と前記濾過装置が1つの筐体内に収容されていることを特徴とする室内載置型現像廃液処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真現像に用いられた現像液の廃液を処理するための装置並びに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現像廃液は写真現像処理の各工程から排出された廃液である。現像廃液は、例えば処理中に感光材料から溶出したゼラチンや感光色素などの成分、処理中に生じた反応生成物及び処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品を含有する。
したがって、現像廃液には、現像主薬及びその酸化生成物、アルカリ化合物及び緩衝材、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などから選択される補恒剤、アルカリハライドなどを主体とする。よって現像廃液中には、ケイ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸、鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四錯酸錯塩、臭化アルカリ、臭化アンモニウム、ナトリウム塩、アンモニウム塩、酢酸塩など多岐にわたる化学成分を含むものとなっている。このことは、効果的な廃液処理手段を見出すことを困難にしている。
【0003】
現在において、現像廃液を処理するための方法として、一般的に行われているのが、焼却処理である。即ち、現像廃液回収業者が、現像廃液を回収し、これを焼却施設へ運搬し、焼却施設で焼却処理を行う方法である。
大気環境及び水域環境中に環境有害物質を排出することなく焼却処理を行うためには、焼却温度を極めて高温にする必要がある。小型或いは中型の焼却施設では高温での連続運転による焼却処理が困難であるため、現像廃液を焼却処理するためには、大規模焼却施設を用いなければならない。したがって、処理コストが非常に高くなり、また、焼却時に生ずる酸化鉄等の高融点の無機塩により、配管の閉塞や焼却炉の消耗を回避するために、科学的な脱塩工程の設置が必要とされ、処理工程並びに処理操作が極めて複雑となる問題点を有する。
【0004】
その他の方法として、活性汚泥法によるものが挙げられる。この方法によれば、現像廃液を10〜50倍に希釈したものを処理期間15〜50日で生物化学的酸素要求量(以下、BODと称する)及び化学的酸素要求量(以下、CODと称する)を50〜80%程度分解除去可能とされる。
しかしながら、この方法では、処理時間がかかり、実際の現像廃液処理に適用することは困難である。
【0005】
上記生物処理以外にも、化学的処理も挙げられる。化学的処理としては、オゾン酸化法、過酸化水素−第一鉄塩法(フェントン法)、過硫酸酸化法、ハロゲン酸酸化法、電解酸化法が挙げられる。オゾン酸化法は、無機COD成分の分解除去及び現像主剤たる芳香族化合物のベンゼン環の分解に有効である一方、有機BOD成分を除去する効果はほとんどない。一般に上記のような化学的処理によるCODの除去率は、50%程度である。
【0006】
上記生物処理並びに化学的処理以外の方法として、物理的処理が挙げられる。物理的処理として、高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等の方法が例示できる。このような物理的処理においては、現像廃液中のハロゲン化物イオンに起因する反応装置の腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器の大きさ、残渣、排ガス等の処理の問題を有する。
【0007】
現像廃液においては、CODやBODの低減という課題に加えて、アンモニア性窒素成分の除去という課題も存する。
特許文献1には、アンモニア性窒素成分をストリッピング処理により、除去する方法が開示されている。この方法は、現像廃液を加熱し、蒸発させ、該蒸発気相からアンモニア性窒素成分を捕捉し、アンモニア性窒素成分を除去する方法である。この方法によれば、上記COD、BODの低減並びにアンモニア性窒素成分の除去が可能である。
しかしながら、このような方法においては、現像廃液を加熱し蒸発させる結果として、化学物質を多く含有するガスが発生する。したがって、このガスから現像廃液処理に携る作業員の安全を担保するため、大規模な保護設備を付帯させる必要がある。
【0008】
現像廃液を加熱することなしに、処理する方法として、特許文献2に開示される方法が提案されている。特許文献2に開示される方法は、凝結剤、アニオン性ポリアクリルアミド化合物を順次添加することで、現像廃液中の特定成分を凝固沈殿させ、沈殿物を濾過するものである。
この方法によれば、現像廃液を加熱処理させる必要がないので、大型の付帯設備を必要としないが、沈殿物を処理の際に沈殿槽から汲み出す必要があり、この沈殿物除去作業において、現像廃液が室内を汚染するという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開2005−21743号公報
【特許文献2】特開平7−136663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、COD、BOD並びにアンモニア性窒素成分を確実に低減可能であって、且つ大規模な付帯設備を要さず、室内を現像廃液で汚染することがない室内載置型現像廃液処理装置並びに室内型現像廃液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、現像処理後の現像廃液を供給する供給口と、該供給口から供給された現像廃液を収容するとともに内部で撹拌する撹拌槽と、前記撹拌槽内に凝集・中和剤を投入する投入装置と、前記撹拌槽底部と連結する第1ポンプと、該第1ポンプの下流側に連結するとともに該第1ポンプから送られた現像廃液を濾過処理する濾過装置からなり、少なくとも前記撹拌槽と前記濾過装置が1つの筐体内に収容されていることを特徴とする室内載置型現像廃液処理装置である。
請求項2記載の発明は、前記濾過装置が並列して配列された複数のフィルタからなり、
前記第1ポンプから送られる現像廃液の流路が、前記複数のフィルタのうちいずれかを選択的に連結可能であることを特徴とする請求項1記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記撹拌槽と連結する第2ポンプを更に備え、該第2ポンプの下流側に現像廃液の光の透過度を計測する透過計が配設され、該透過計が計測する透過度の値に応じて、前記排水口に設けられた排水バルブの開閉が制御されることを特徴とする請求項1又は2記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
請求項4記載の発明は、前記第2ポンプの下流側に切換弁が配設され、前記第2ポンプの下流側管路が、前記透過計へ向かう管路と、活性炭を収容する活性炭収容室へ向かう管路とに分岐し、前記第2ポンプ下流側の切換弁が、現像廃液の流れを、前記透過計へ向かう管路と活性炭を収容する活性炭収容室へ向かう管路に切換可能であることを特徴とする請求項3記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記凝集・中和剤が、現像廃液中の少なくともケイ酸塩及び色素成分を沈殿させることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
請求項6記載の発明は、前記凝集・中和剤が、前記凝集・中和剤が、クエン酸、ポリ塩化アルミ、ポリアクリル酸塩とポリアクリルアミドの共重合物及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項5記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
請求項7記載の発明は、前記撹拌槽が、該撹拌槽内の現像廃液のpHを計測するpHセンサを備え、該pHセンサが計測する現像廃液のpH値に応じて、前記凝集・中和剤の投入量が制御されることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
請求項8記載の発明は、タイマを更に備え、タイマに設定された時間の間、第2ポンプによる撹拌槽周囲での現像廃液の循環が行われ、タイマに設定された時間経過後、前記第1ポンプにより現像廃液が前記濾過装置に送られることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
【0014】
請求項9記載の発明は、前記透過計が所定の値の透過度を検知した後、作動するタイマを更に備え、該タイマに設定された時間の間、前記第2ポンプから送られる現像廃液が前記活性炭収容室を通過することを特徴とする請求項4記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
請求項10記載の発明は、前記撹拌槽が、該撹拌槽内の現像廃液の液位を測定する液位計を備え、前記供給口に設けられた電磁弁が、該液位計の値に応じて開閉することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
請求項11記載の発明は、前記供給口に設けられる電磁弁を更に備え、該電磁弁が水供給源と接続し、前記排出口から排出される処理後の現像廃液が、前記水供給源に供給されることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置である。
【0015】
請求項12記載の発明は、現像処理後の現像廃液を1つの筐体内に配設された撹拌槽に供給する供給工程と、該撹拌槽内に凝集・中和剤を投入し、現像廃液中の少なくともケイ酸塩及び色素成分を沈殿させる沈殿工程と、前記撹拌槽から現像廃液を前記筐体内に配設された濾過装置に供給するとともに、該濾過装置に送られた現像廃液を濾過する濾過工程と、前記濾過工程で濾過処理された現像廃液を排出する排出工程からなり、該排出工程が、前記沈殿工程後の現像廃液の光の透過度の値に応じて開始されることを特徴とする室内型現像廃液処理方法である。
請求項13記載の発明は、前記現像廃液成分を濾過する工程が、一のフィルタの目詰まりを検知する段階と、検知されたフィルタの目詰まりに応じて、他のフィルタに現像廃液の流路を切り替える段階を備えることを特徴とする請求項12記載の室内型現像廃液処理方法である。
【0016】
請求項14記載の発明は、前記濾過工程が、前記透過度の値に応じて停止するとともに、前記撹拌槽から前記濾過装置への流路が、前記撹拌槽底部から該撹拌槽上部への循環回路に切り替えられることを特徴とする請求項12又は13記載の室内型現像廃液処理方法である。
請求項15記載の発明は、前記循環回路に活性炭が配されることを特徴とする請求項14記載の室内型現像廃液処理方法である。
請求項16記載の発明は、前記凝集・中和剤が、クエン酸、ポリ塩化アルミ、ポリアクリル酸塩とポリアクリルアミドの共重合物及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12乃至15いずれかに記載の室内型現像廃液処理方法である。
請求項17記載の発明は、前記投入工程が、前記撹拌槽内のpH値を測定する段階を備え、該pH値に応じて、該投入工程が停止することを特徴とする請求項12乃至16いずれかに記載の室内型現像廃液処理方法である。
請求項18記載の発明は、前記投入工程の後、所定時間、前記循環回路での現像廃液の循環が行われることを特徴とする請求項14記載の室内型現像廃液処理方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、沈殿物が濾過装置により回収されるので、濾過装置から容易に現像廃液中の沈殿物を回収可能となる。したがって、沈殿物回収の際に撹拌槽から沈殿物を汲み出す必要がなく、現像廃液により室内を汚染することなく現像廃液処理を行うことが可能となる。更に、少なくとも撹拌槽と濾過装置が1つの筐体内に配設されるので、コンパクトな現像廃液処理装置を構築可能である。
請求項2記載の発明によれば、一のフィルタが目詰まりをしたとき、他のフィルタを使用可能となり、該他のフィルタ使用中に前記一のフィルタの清掃作業を行うことが可能となり、フィルタの目詰まりにかかわらず連続運転が可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、透過度計測により、色素成分の除去状況が確認可能となり、確実に色素成分が除去された現像廃液を排出することが可能となる。
請求項4及び9記載の発明によれば、活性炭によりフェノール類が除去でき、排出口から排出される現像廃液の品質を一層高めることが可能となる。
請求項5及び6記載の発明によれば、効率よくケイ酸塩並びに色素成分を沈殿可能となる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、排出される現像廃液のpHを調整可能となる。
請求項8記載の発明によれば、撹拌槽内での凝集・中和剤と現像廃液の反応が十分進んだ状態で、濾過装置へ現像廃液が供給されるので、効率のよい現像廃液処理を行うことが可能となる。
【0020】
請求項10記載の発明によれば、第1ポンプ並びに第2ポンプのキャビテーションを防止可能となる。
請求項11記載の発明によれば、処理後の現像廃水を再利用可能となる。
【0021】
請求項12記載の発明によれば、沈殿物が濾過装置により回収されるので、濾過装置から容易に現像廃液中の沈殿物を回収可能となる。したがって、沈殿物回収の際に撹拌槽から沈殿物を汲み出す必要がなく、現像廃液により室内を汚染することなく現像廃液処理を行うことが可能となる。更に、少なくとも撹拌槽と濾過装置が1つの筐体内に配設されるので、コンパクトな現像廃液処理装置を構築可能である。また、透過度に応じて排出工程が開始されるので、自動で現像廃液処理を行うことができる。
請求項13記載の発明によれば、一のフィルタが目詰まりをしたとき、他のフィルタを使用可能となり、該他のフィルタ使用中に前記一のフィルタの清掃作業を行うことが可能となり、フィルタの目詰まりにかかわらず連続運転が可能となる。
【0022】
請求項14記載の発明によれば、処理完了後の現像廃液が沈殿物を捕捉している濾過装置に流れることが防止される。したがって、効率のよい現像廃液処理を行うことが可能となる。
請求項15記載の発明によれば、活性炭によりフェノール類が除去でき、排出される現像廃液の品質を一層高めることが可能となる。
請求項16記載の発明によれば、効率よくケイ酸塩並びに色素成分を沈殿可能となる。
請求項17記載の発明によれば、排出される現像廃液のpHを調整可能となる。
請求項18記載の発明によれば、撹拌槽内での凝集・中和剤と現像廃液の反応が十分進んだ状態で、濾過装置へ現像廃液が供給されるので、効率のよい現像廃液処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る室内載置型現像廃液処理装置並びに室内型現像廃液処理方法について、図を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る現像廃液処理装置のシステム概略図である。
現像処理機(P)の各現像処理工程から排出された現像廃液は、現像廃液貯蔵タンク(T)に一時的に貯蔵される。現像廃液は、ケイ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸、鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四錯酸錯塩、臭化アルカリ、臭化アンモニウム、ナトリウム塩、アンモニウム塩、酢酸塩など多岐にわたる化学成分を含むものである。尚、一般的な現像廃液においては、ケイ酸カリウムが多く含有されている。
【0024】
現像廃液処理装置(1)は、上記現像廃液が供給される供給口(2)と、供給口(2)と接続する撹拌槽(3)と、撹拌槽(3)と接続する濾過装置(4)と、撹拌槽(3)から外部へ処理後の現像廃液を排出するための排出口(5)を備える。
貯蔵タンク(T)に貯蔵された現像廃液は、供給口(2)を介して、撹拌槽(3)へ送られる。供給口(2)から撹拌槽(3)へ繋がる流路途中に電磁弁(21)が配される。電磁弁(21)は、貯蔵タンク(T)と繋がる流路に加えて、水を供給する水供給源(W)とも接続する。電磁弁(21)の開閉動作を現像廃液の化学物質濃度に合わせて操作し、撹拌槽(3)中の現像廃液の化学物質濃度を適宜調整可能となる。
撹拌槽(3)内に供給された現像廃液は、撹拌槽(3)内で撹拌される。
【0025】
撹拌槽(3)には液位計(31)が配設されている。液位計(31)により、撹拌槽(3)内に所定の液位の現像廃液が供給されたことが検知されるまで、供給口(2)から現像廃液が供給される。尚、液位の設定は、後述する現像廃液処理経路に配されるポンプのキャビテーションが起きない程度の液位が設定されることが好ましい。
撹拌槽(3)の上方には、凝集・中和剤を投入するための凝集・中和剤投入装置(6)が配設される。凝集・中和剤投入装置(6)は、撹拌槽(3)内に凝集・中和剤を投入する。凝集・中和剤は、現像廃液のpHを低減させる。この凝集・中和剤の投入により、現像廃液の主成分たるケイ酸カリウムはケイ酸塩となり、凝集・中和剤の凝集反応により凝集され、撹拌槽(3)底部に沈殿する。
撹拌槽(3)には、pHセンサ(32)が配設される。pHセンサ(32)により、撹拌槽(3)内の現像廃液のpHが排出可能なpHレベル(6〜8)となることが検知されるまで、凝集・中和投入装置(6)からの凝集・中和剤の投入が続けられる。
【0026】
凝集・中和剤は、この過程で少なくともケイ酸塩と現像廃液の色素成分を凝集沈殿させる。凝集・中和剤は、クエン酸、ポリ塩化アルミ、ポリアクリル酸塩とポリアクリルアミドの共重合物及びこれらの混合物からなる群から選択して、用いることが可能である。このような材料から構成される凝集・中和剤を用いることにより、現像廃液中のケイ酸塩や色素成分が効率よく凝集される。これら凝集・中和剤の混合率或いは種類は、処理対象たる現像廃液の種類に応じて適宜定めればよい。
【0027】
現像廃液は、撹拌槽(3)内で、撹拌されつつ凝集・中和剤が投入されるので、撹拌槽(3)内で均一に現像廃液が中和される。
撹拌槽(3)の底部は、下方に狭まるようにテーパ形状とされている。したがって、凝集・中和剤による凝集作用により沈殿したケイ酸塩並びに色素成分は、撹拌槽(3)下部中央のテーパ形状先端に集中して沈殿することとなる。
【0028】
撹拌槽(3)の底部から、第1ポンプ(7)によって、濾過装置(4)に現像廃液が送られる。
撹拌槽(3)底部に沈殿した沈殿物並びに現像廃液は、第1ポンプ(7)によって、濾過装置(4)に向かって送られる。
濾過装置(4)は、複数のフィルタ(41)を備える。フィルタ(41)は並列に配列されている。撹拌槽(3)から送られた現像廃液中の沈殿物、即ち、ケイ酸塩や色素成分などは、フィルタ(41)によって除去される。尚、フィルタの目の大きさは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。10μm以下のフィルタの目の大きさであると、目詰まりが頻発し、連続運転が困難となり、50μmを超えると、十分な濾過作用を発揮できないためである。
第1ポンプ(7)と濾過装置(4)との間には切換弁(42)が配設され、使用されるフィルタ(41)を選択可能としている。これにより、濾過装置(4)のフィルタ(41)のうち、使用しているフィルタ(41)が目詰まりを起こしたときに他のフィルタ(41)を使用可能となる。他のフィルタ(41)を使用している間、目詰まりしたフィルタ(41)を清掃可能であり、連続的な運転が可能となる。
濾過装置(4)を通過した現像廃液は撹拌槽(3)上部に戻され、撹拌槽(3)に戻された現像廃液は再び濾過装置(4)に供給され、更なる濾過処理が施される。
【0029】
第1ポンプ(7)による循環濾過処理の間、第2ポンプ(70)が同時に作動する。第2ポンプ(70)は、撹拌槽(3)底部から延出する管路と接続している。第2ポンプ(70)下流側には切換弁(43)が配され、切換弁(43)を分岐点として、管路が分岐し、一方の分岐管路には透過計(8)が配され、他方の分岐管路には活性炭収容室(9)が配設される。透過計(8)の下流側に延出する管路並びに活性炭収容室(9)の下流側に延出する管路はともに撹拌槽(3)上部に接続する。
透過計(8)への現像廃液への流れと活性炭収容室(9)への現像廃液の流れの切換は、切換弁(43)によって適宜行われる。
【0030】
第2ポンプ(70)下流側に配される透過計(8)は、撹拌槽(3)から透過計(8)へ送出された現像廃液に対して照射された光の透過量をモニタする。
透過計(8)は、透明管路と、半導体レーザ並びにレーザ光を受光する受光器からなり、透明管路を透過する受光量によって、現像廃液中のケイ酸塩並びに色素成分の除去率を監視する。
透過計(8)が所定以上の受光量を検知すると、撹拌槽(3)底部と排出口(5)を接続する管路中に設けられた電磁弁(51)が開き、撹拌槽(3)内の現像廃液が排出口(5)から排出される。排出口(5)は、処理済の現像廃液を蓄えるタンク(図示せず)に供給される。したがって、本発明の現像廃液処理装置(1)は、沈殿物が濾過装置(4)に集中するので、撹拌槽(3)から沈殿物を汲み出すことを要せず、簡便に沈殿物を回収可能となる。沈殿物の回収はフィルタ(41)の交換のみで行うことができるので、沈殿物回収時に室内を現像廃液で汚染することがない。
【0031】
図2は、上記現像廃液処理装置(1)を用いた現像廃液処理工程のフローチャートである。
電源(S)から電力が供給され、制御盤(C)並びに上記現像廃液処理装置(1)が立ち上げられる。
供給工程において、貯蔵タンク(T)から供給口(2)を介して撹拌槽(3)内に現像廃液が供給される。このとき、現像廃液中の化学物質濃度に応じて、電磁弁(21)が動作され、適宜現像廃液は希釈され、化学物質濃度が調整される。そして、液位計(31)は、撹拌槽(3)内の現像廃液が所定の液位に達したことを検知すると、この検知信号が制御盤(C)に送られ、制御盤(C)は電磁弁(21)を閉じ、貯蔵タンク(T)からの現像廃液の供給を停止させる。そして、制御盤(C)は、例えば撹拌槽(3)内の撹拌羽根を回転させ、撹拌槽(3)内の現像廃液を撹拌させる。
【0032】
供給工程の後、沈殿工程が開始される。
沈殿工程において、凝集・中和剤投入装置(6)から凝集・中和剤が撹拌槽(3)内に投入される。pHセンサ(32)は撹拌槽(3)内の現像廃液のpH値をモニタする。そして、pHセンサ(32)が撹拌槽(3)内の現像廃液のpH値が排出可能なレベル(6〜8)となったことを検知すると、その検知信号を制御盤(C)へ送る。その後、制御盤(C)は、凝集・中和剤投入装置(6)の作動を停止させる。
この間、撹拌槽(3)内の現像廃液は撹拌されているので、凝集・中和剤が局所的に集中することなく、均一に混合されるので、現像廃液のpH値は均一に低減され、pHセンサ(32)が誤作動することが防止される。また、凝集・中和剤による凝集・中和作用が撹拌槽(3)内で均一に生ずることとなる。
【0033】
凝集・中和剤投入装置(6)の作動停止と連動させて、制御盤(C)に組み込まれたタイマを作動させてもよい。タイマ作動の間、第2ポンプ(70)を動作させるとともに、第2ポンプ(70)から送られる現像廃液が透過計(8)を通過するように切換弁(4)を制御盤(C)が動作させる。このようにして、この撹拌槽(3)底部から撹拌槽(3)上部への循環を行うことによって、撹拌槽(3)上部と底部での軸方向における撹拌を強制的に生じせしめることができ、凝集・中和剤の凝集・中和作用を撹拌槽(3)内で、より均一に生じせしめることが可能となる。
【0034】
タイマ停止の後、制御盤(C)は第1ポンプ(7)を作動させ、濾過工程を開始させる。
濾過工程において、濾過装置(4)を構成するフィルタ(41)のいずれかが選択的に用いられることが好ましい。このフィルタ(41)の選択は切換弁(42)によって行うことが可能である。
各フィルタ(41)の下流側に流量計が配され(図示せず)、該流量計が計測する流量値が所定の値未満となったことを検知したとき、流量計からこの検知信号が制御盤(C)に送られ、制御盤(C)が切換弁(42)を作動させ、他のフィルタ(41)に現像廃液が流入するようにする。流量が低下し、目詰まりが検知されたフィルタ(41)は、他のフィルタ(41)が使用されている間、交換若しくは洗浄される。そして、他のフィルタ(41)が目詰まりを生じたときには、交換され或いは洗浄されたフィルタ(41)側に現像廃液の流路が切り替えられる。
このようにして、連続運転が可能となる。
【0035】
第1ポンプ(7)から濾過装置(4)に供給された現像廃液は、撹拌槽(3)に戻される。
このような濾過工程における現像廃液の循環において、透過計(8)は、循環中の現像廃液への透過度を計測する。半導体レーザと該半導体レーザから照射されたレーザ光を受光する受光器との間に、透明な管路が配される。第2ポンプ(70)から送出された現像廃液は透明管路を通過して、濾過装置(4)へ流される。
濾過装置(4)により、ケイ酸塩や色素成分の沈殿物が除去されると、現像廃液を通過するレーザ光の光量が増加する。受光器が受光する光量が所定の値を超えたことを検知すると、受光器は制御盤(C)にその検知信号を送る。この検知信号に基づき、排出工程を行ってもよいが、ここでは濾過最終工程を行う。
【0036】
濾過最終工程を行うために、受光器からの検知信号が制御盤(C)に送られると、制御盤(C)は、第1ポンプ(7)の作動を停止させるとともに、切換弁(43)を作動させ、現像廃液の流路を、第2ポンプ(70)、活性炭収容室(9)そして撹拌槽(3)へ流れる循環経路とする。
第2ポンプ(70)から送られた現像廃液は、活性炭を収容する活性炭収容室(9)で、現像廃液中に存在するフェノール類が除去される。
【0037】
タイマの停止に伴い排出口(5)に繋がる管路の電磁弁(51)が作動し、排出工程が開始される。排出される現像廃液は、上記濾過工程を経た後であるので、ケイ酸塩、色素成分並びにフェノール類が十分に除去された状態である。
尚、濾過最終工程を行わない場合には、受光器からの検知信号により、電磁弁(51)を作動させればよい。
【0038】
上記現像廃液処理装置並びに現像廃液処理方法を用いて、現像廃液を処理したときの試験結果を以下に示す。
この試験に用いられた透過計は、波長650nmの光を照射する半導体レーザを備え、上記濾過工程を現像廃液の透過度が浄水と同等となるまで行った。尚、本試験において、供給工程から排出工程に至るまでの時間は180分であり、処理された現像廃液量は0.5Lである。
【0039】
(表1)
(ppm)

【0040】
表1に示す如く、処理前に存在したフェノール類はほとんど除去され、処理後においては、検出されなかった。また、BOD並びにCODはともに低減されている。また窒素総量・リン総量も低減している。また沃素消費量も1000分の1以下まで低減している。
表1に示す如く、処理後の現像廃液は、そのまま環境に排出されても、何ら環境を害するものではなくなっている。
【0041】
尚、処理後の現像廃液を、水供給源(W)に供給し、現像廃液希釈用の水として用いることも可能であるし、またフィルタ(41)の洗浄に用いることも可能である。洗浄に用いられ、排出された現像廃液を再び現像廃液処理工程に戻してもよい。
このように、処理後の現像廃液を更なる現像廃液処理工程に用いることが可能である。
【0042】
図1に示される点線枠(10)は、現像廃液処理装置(1)の筐体を表している。筐体内に撹拌槽(3)、凝集・中和剤投入装置(6)、濾過装置(4)、透過計(8)並びに活性炭収容室(9)などが収容されている。このように筐体(10)内に、上記本発明を構成する部品を収容することにより、コンパクトな現像廃液処理装置(1)を構築可能となり、例えば、事務所などの小さな空間において、現像廃液処理工程を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、写真の現像処理工程から排出される現像廃液を室内で清浄化するための現像廃液処理装置並びに現像廃液処理方法に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る現像廃液処理装置の概略図である。
【図2】本発明に係る現像廃液処理方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1・・・現像廃液処理装置
2・・・供給口
21・・電磁弁
3・・・撹拌槽
31・・液位計
32・・pHセンサ
4・・・濾過装置
41・・フィルタ
42・・切換弁
43・・切換弁
5・・・排出口
51・・電磁弁
6・・・凝集・中和剤投入装置
7・・・第1ポンプ
70・・第2ポンプ
8・・・透過計
9・・・活性炭収容室
10・・筐体
W・・・水供給源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像処理後の現像廃液を供給する供給口と、
該供給口から供給された現像廃液を収容するとともに内部で撹拌する撹拌槽と、
前記撹拌槽内に凝集・中和剤を投入する投入装置と、
前記撹拌槽底部と連結する第1ポンプと、
該第1ポンプの下流側に連結するとともに該第1ポンプから送られた現像廃液を濾過処理する濾過装置からなり、
少なくとも前記撹拌槽と前記濾過装置が1つの筐体内に収容されていることを特徴とする室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項2】
前記濾過装置が並列して配列された複数のフィルタからなり、
前記第1ポンプから送られる現像廃液の流路が、前記複数のフィルタのうちいずれかを選択的に連結可能であることを特徴とする請求項1記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項3】
前記撹拌槽と連結する第2ポンプを更に備え、
該第2ポンプの下流側に現像廃液の光の透過度を計測する透過計が配設され、
該透過計が計測する透過度の値に応じて、前記排水口に設けられた排水バルブの開閉が制御されることを特徴とする請求項1又は2記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項4】
前記第2ポンプの下流側に切換弁が配設され、
前記第2ポンプの下流側管路が、前記透過計へ向かう管路と、活性炭を収容する活性炭収容室へ向かう管路とに分岐し、
前記第2ポンプ下流側の切換弁が、現像廃液の流れを、前記透過計へ向かう管路と活性炭を収容する活性炭収容室へ向かう管路に切換可能であることを特徴とする請求項3記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項5】
前記凝集・中和剤が、現像廃液中の少なくともケイ酸塩及び色素成分を沈殿させることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項6】
前記凝集・中和剤が、前記凝集・中和剤が、クエン酸、ポリ塩化アルミ、ポリアクリル酸塩とポリアクリルアミドの共重合物及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項5記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項7】
前記撹拌槽が、該撹拌槽内の現像廃液のpHを計測するpHセンサを備え、
該pHセンサが計測する現像廃液のpH値に応じて、前記凝集・中和剤の投入量が制御されることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項8】
タイマを更に備え、
タイマに設定された時間の間、第2ポンプによる撹拌槽周囲での現像廃液の循環が行われ、
タイマに設定された時間経過後、前記第1ポンプにより現像廃液が前記濾過装置に送られることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項9】
前記透過計が所定の値の透過度を検知した後、作動するタイマを更に備え、
該タイマに設定された時間の間、前記第2ポンプから送られる現像廃液が前記活性炭収容室を通過することを特徴とする請求項4記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項10】
前記撹拌槽が、該撹拌槽内の現像廃液の液位を測定する液位計を備え、
前記供給口に設けられた電磁弁が、該液位計の値に応じて開閉することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項11】
前記供給口に設けられる電磁弁を更に備え、
該電磁弁が水供給源と接続し、
前記排出口から排出される処理後の現像廃液が、前記水供給源に供給されることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の室内載置型現像廃液処理装置。
【請求項12】
現像処理後の現像廃液を1つの筐体内に配設された撹拌槽に供給する供給工程と、
該撹拌槽内に凝集・中和剤を投入し、現像廃液中の少なくともケイ酸塩及び色素成分を沈殿させる沈殿工程と、
前記撹拌槽から現像廃液を前記筐体内に配設された濾過装置に供給するとともに、該濾過装置に送られた現像廃液を濾過する濾過工程と、
前記濾過工程で濾過処理された現像廃液を排出する排出工程からなり、
該排出工程が、前記沈殿工程後の現像廃液の光の透過度の値に応じて開始されることを特徴とする室内型現像廃液処理方法。
【請求項13】
前記現像廃液成分を濾過する工程が、
一のフィルタの目詰まりを検知する段階と、
検知されたフィルタの目詰まりに応じて、他のフィルタに現像廃液の流路を切り替える段階を備えることを特徴とする請求項12記載の室内型現像廃液処理方法。
【請求項14】
前記濾過工程が、前記透過度の値に応じて停止するとともに、前記撹拌槽から前記濾過装置への流路が、前記撹拌槽底部から該撹拌槽上部への循環回路に切り替えられることを特徴とする請求項12又は13記載の室内型現像廃液処理方法。
【請求項15】
前記循環回路に活性炭が配されることを特徴とする請求項14記載の室内型現像廃液処理方法。
【請求項16】
前記凝集・中和剤が、クエン酸、ポリ塩化アルミ、ポリアクリル酸塩とポリアクリルアミドの共重合物及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12乃至15いずれかに記載の室内型現像廃液処理方法。
【請求項17】
前記投入工程が、前記撹拌槽内のpH値を測定する段階を備え、
該pH値に応じて、該投入工程が停止することを特徴とする請求項12乃至16いずれかに記載の室内型現像廃液処理方法。
【請求項18】
前記投入工程の後、所定時間、前記循環回路での現像廃液の循環が行われることを特徴とする請求項14記載の室内型現像廃液処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−218419(P2006−218419A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35113(P2005−35113)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505052711)成ワ薬品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】