説明

寸法測定システム

【課題】環境ノイズなどの影響を受け難い寸法測定システムを提供する。
【解決手段】寸法測定システム1は、白色光源21からの光を被測定物に向かう第1の光束と第2の光束に分岐し、第1の光束と第2の光束の間に被測定物の測定対象寸法に対応する第1の光路差を生じさせる測定装置2と、測定装置2から出射した光束を、参照鏡43に向かう第3の光束と光路に沿って移動可能な移動鏡44に向かう第4の光束に分岐して、第3の光束と第4の光束との間に第2の光路差を生じさせる干渉計4と、第3及び第4の光束を受光して干渉信号を検出する検出器5と、干渉信号が最大値となる移動鏡の位置を求めて被測定物の測定対象寸法を求めるコントローラ6を有する。またコントローラ6は、測定装置2と通信回線7を通じて接続され、被測定物の位置及び白色光源21を遠隔制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法測定システムに関し、特に、白色干渉を用いた寸法測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加工部品の寸法又は表面粗さを、非接触で精密に測定する方法として、白色干渉の原理を用いた方法が提案されている。例えば、白色干渉を用いて、デジタルカメラのフランジバックを測定する測定装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された測定装置では、白色光源から放射された光を、ビームスプリッタで第1の光路と第2の光路に分割する。そして、第1の光路に向かった光は、第1の光路に沿って移動可能な長さ測定用の参照鏡で反射される。一方、第2の光路に向かった光は、カメラのフランジと接触可能な基準面に、固定的に取り付けられたカメラの撮像素子で反射される。参照鏡及び撮像素子で反射された光は、ビームスプリッタで一つに合わせられ、検出器で検出される。ここで、参照鏡を第1の光路に沿って移動させることにより、第1の光路を通った光と第2の光路を通った光の白色干渉縞の最大光量、すなわち、白色干渉がピークとなる参照鏡の位置を検出する。そして、その参照鏡の位置に基づいて、フランジから撮像素子までの長さを検出する。
【0003】
また、被測定物からの弱い反射光を高感度で検出するために、干渉縞を走査する干渉計と計測用の干渉計とを別個に設ける測定方法も開発されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−115149号公報
【特許文献2】特開2000−65530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、製造ラインに近接して設けられた検査工程において、その製造ラインで製造された製品が仕様寸法通り作成されているか否かを検査する場合がある。このような場合、製品の製造ラインの近くでは、様々な機械の動作、作業者の往来による振動が発生する。そのため、上記のような白色干渉の原理を用いた測定装置を、その検査工程で用いると、その振動によるノイズのために、測定精度が低下するおそれがある。一方、測定装置を製造ラインから離れた位置に設けると、検査のためだけに製品を搬送しなければならず、余分な工程が増えるので望ましくない。さらに、大量の製品を製造する製造ラインでは、短時間に多数の製品の検査を行えることが望ましい。
【0006】
上記の問題点に鑑み、本発明の目的は、白色干渉を用いた寸法測定において、振動などの環境ノイズの影響を受け難い寸法測定システムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、多数の被測定物の測定対象寸法を短時間で測定可能な寸法測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施態様によれば、被測定物の寸法を測定する寸法測定システムが提供される。係る寸法測定システムは、白色光源と、被測定物の測定対象寸法に対応する光路差を有する第1の光束と第2の光束を出射する少なくとも一つの測定装置と、位置が固定された参照鏡と、光路に沿って移動可能な移動鏡とを有する干渉計であって、第1の干渉計から出射した光束を、参照鏡に向かう第3の光束と、移動鏡に向かう第4の光束に分岐して、第3の光束と第4の光束との間に第2の光路差を生じさせる干渉計と、第3の光束と第4の光束を受光し、第1の光路差と第2の光路差とが略等しい場合に生じる干渉信号を検出し、干渉信号に対応する信号を出力する検出器と、被測定物の測定対象寸法を求める第2のコントローラを有する。
また少なくとも一つの測定装置は、白色光源から放射された光を、被測定物に向かう第1の光束と第2の光束に分岐し、第1の光束を被測定物で反射させて第2の光束との間に被測定物の測定対象寸法に対応する第1の光路差を生じさせ、第1の光束と第2の光束を一つの光束に合わせて出射させる光束分割手段と、被測定物を載置し、前記光束分割手段に対する前記被測定物の相対的な位置を変更可能なステージと、ステージの駆動を行う第1のコントローラとを有する。また、第2のコントローラは、第1のコントローラと通信回線を通じて接続され、被測定物を第1の位置に配置するよう、第1のコントローラに対して制御信号を送信し、かつ被測定物が第1の位置に配置されると、干渉信号が最大値となる移動鏡の位置を求めて第2の光路差を測定することにより、被測定物の測定対象寸法の第1の測定値を求める。
また、本発明によれば、寸法測定システムは、少なくとも一つの測定装置から出射した第1及び第2の光束を、干渉計に導く光ファイバを有することが好ましい。
係る構成を有することにより、光路差の測定を行う干渉計と、被測定物を設置する測定装置とを遠隔地に配置することができるので、測定装置を製造ラインの近傍に設置しても、干渉計は別途環境ノイズの少ない環境に設置することができる。
【0008】
また、本発明によれば、被測定物は円筒形状を有し、被測定物の測定対象寸法は被測定物の内径であり、かつ、第1の位置は光束分割手段が被測定物の円筒の略中心に配置される位置であり、第2のコントローラは、第1のコントローラに対して、被測定物を第1の位置と同一の円筒断面内の異なる第2の位置へ移動させる制御信号を送信し、かつ被測定物がその第2の位置に配置された状態で、被測定物の測定対象寸法の第2の測定値を求め、第1の測定値と第2の測定値を比較して、大きい方の測定値を被測定物の測定対象寸法とすることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明によれば、第1のコントローラは、被測定物の測定の開始を求めるための測定開始信号を第2のコントローラに送信し、かつ第2のコントローラから、測定を許可する測定許可信号を受信すると、白色光源に光を放射させることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明によれば、測定許可信号は、少なくとも一つの測定装置を他の測定装置と識別するための識別情報を含むことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明によれば、第2のコントローラは、少なくとも一つの測定装置の第1のコントローラに、その測定装置に設置された被測定物の測定対象寸法の測定値を送信することが好ましい。
【0012】
本発明の他の実施態様によれば、被測定物の寸法を測定する寸法測定システムが提供される。係る寸法測定システムは、白色光源と、位置が固定された参照鏡と、光路に沿って移動可能な移動鏡とを有する干渉計であって、白色光源から放射された光を、参照鏡に向かう第1の光束と、移動鏡に向かう第2の光束に分岐して、第1の光束と第2の光束との間に第1の光路差を生じさせる干渉計と、被測定物の測定対象寸法に対応する光路差を有する第1の光束と第2の光束を出射する少なくとも一つの測定装置と、被測定物の測定対象寸法を求める第2のコントローラを有する。
また少なくとも一つの測定装置は、干渉計から出射された第1の光束及び第2の光束を、被測定物に向かう第3の光束と第4の光束に分岐し、第3の光束を被測定物で反射させて第4の光束との間に被測定物の測定対象寸法に対応する第2の光路差を生じさせ、第3の光束と該第4の光束を一つの光束に合わせて出射させる光束分割手段と、被測定物を載置し、光束分割手段に対する被測定物の相対的な位置を変更可能なステージと、ステージの駆動を行う第1のコントローラと、第3の光束と第4の光束を受光し、第1の光路差と第2の光路差とが略等しい場合に生じる干渉信号を検出し、干渉信号に対応する信号を出力する検出器とを有する。また、第2のコントローラは、第1のコントローラと通信回線を通じて接続され、被測定物を第1の位置に配置するよう、第1のコントローラに対して制御信号を送信し、かつ被測定物がその第1の位置に配置されると、干渉信号が最大値となる移動鏡の位置を求めて第1の光路差を測定することにより、被測定物の測定対象寸法の測定値を求める。
【0013】
なお、上記の各実施態様において、白色光源とは、可視光域において広帯域発光する光源に限られず、所定の波長を中心波長とした一定の波長帯域の光を放射する光源をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、白色干渉を用いた寸法測定において、振動などの環境ノイズ影響を受け難い寸法測定システムを提供することが可能となった。
また、多数の被測定物の測定対象寸法を短時間で測定可能な寸法測定システムを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、リングゲージ、シリンダなど、円筒状の被測定物の内径を計測する内径測定システムに適用した実施の形態を、図を参照しつつ説明する。
本発明の第1の実施形態に係る内径測定システムは、白色光源からの光をビームスプリッタに入射させ、ビームスプリッタで、可動ステージ上に載置された被測定物の内径に対応する光路差を有する二つの光束を生成する。その二つの光束を、光ファイバを通じて例えば遠隔地に設置された干渉計に入射して、上記光路差とほぼ等しい光路差を生じる二つの光路に光束を分割して干渉させることにより、白色干渉縞を生じさせる。そして、検出器で白色干渉縞の最大信号値を検出して干渉計の二つの光路間の光路差を測定することにより、被測定物の内径を求める。ここで、本発明の第1の実施形態に係る内径測定システムは、干渉計側に設置されたコントローラから、通信回線を通じて、被測定物が載置された可動ステージの位置調整及び白色光源の点灯制御を行えるようにして、干渉計と被測定物が離れた位置にある場合でも、その被測定物の内径を測定できるようにしたものである。
【0016】
図1は、本発明を適用した内径測定システム1の概略構成を示す図である。内径測定システム1は、被測定物10の内径の2倍に相当する光路差を生じさせる測定装置2と、測定装置2で生じた光路差と同程度の光路差を生じさせて白色干渉縞を発生させる干渉計4と、干渉計4で発生した干渉縞を検出する検出器5と、各部の制御及び検出された干渉縞から被測定物の内径を求めるコントローラ6を有する。さらに、内径測定システム1は、測定装置2から出射した光を干渉計4へ伝える光ファイバ3を有する。また、コントローラ6は、測定装置2が有する、白色光源21及び被測定物10を載置する可動ステージ23を駆動するステージコントローラ24の制御を行うコントローラ25と通信回線7を通じて接続される。
【0017】
図2に、測定装置2の概略構成図を示す。
白色光源21は、コヒーレンス長が短く、広帯域な波長の光を放射可能な光源と、コントローラ25からの制御信号に基づいて、その光源を点灯または消灯させるための制御回路などで構成される。白色光源21に使用する光源として、例えば、LED、SLD(スーパールミネッセントダイオード)、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)光源、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源などを用いることができる。また、白色光源21から出射される光の中心波長は、例えば750nm、1300nm、1550nmなどに設定することができる。なお、測定装置2から出射した光を光ファイバ3を通じて干渉計4へ導波させるので、白色光源21として、光ファイバ3による減衰が少ない波長を有する光を放射するものを使用することが好ましい。本実施形態では、白色光源21として、中心波長1550nmの赤外LEDを用いた。
【0018】
測定装置2では、可動ステージ23の上に載置された被測定物10の内径の2倍に対応する光路差を有する二つの光束B1、B2を生成する。そのために、測定装置2では、白色光源21から放射された光をコリメータレンズ26で平行光とし、入射した平行光に対して出射する位置を調整する第1のウェッジプリズム27に入射させる。なお、白色光源21の配置の自由度を高めるために、白色光源21から放射された光を光ファイバを用いて導波させ、コリメータレンズ26へ入射させるようにしてもよい。そして、ウェッジプリズム27から出射した光は、被測定物10の内径の略中心に配置された光束分割手段であるビームスプリッタ22に入射する。なお、光束分割手段として、ビームスプリッタ22の代わりにハーフミラーを使用してもよい。
【0019】
ビームスプリッタ22に入射した光は、そのビームスプリッタ22で反射され、被測定物10の内面S1に向かう光束と、ビームスプリッタ22を透過して直進する光束B2に分岐される。被測定物10の内面S1に向かう光束は、被測定物10の内面S1で反射された後、ビームスプリッタ22に戻る。ビームスプリッタ22に戻った光束の一部は、ビームスプリッタ22を透過し、被測定物10の内面S1と反対側の内面S2へ向かう。そして、S2へ向かった光束は、内面S2で反射され、再びビームスプリッタ22に戻る。ビームスプリッタ22に戻った光束の一部は、ビームスプリッタ22で反射される。この光束をB1と呼ぶ。光束B1と光束B2とは、ビームスプリッタ22から出射する際に合わさって出射する。光束B1と光束B2は、ビームスプリッタ22から出射した後、位置調整用の第2のウェッジプリズム28に入射し、集光レンズ29に入射するように位置調整される。そして、光束B1と光束B2は、集光レンズ29を透過して集光されて測定装置2から出射し、光ファイバ3に入射する。
このとき、測定装置2から出射する光束B1は、被測定物10の内面S1とS2の間を往復するので、被測定物10の内径をDとすれば、光束B1と光束B2との間に、2Dの光路差が生じる。
【0020】
可動ステージ23は、被測定物10の軸方向(すなわち、光束B2に平行な方向)、被測定物10の軸方向に直交する円筒断面内で光束B1に平行な方向及び光束B1に垂直な方向の3方向に移動可能であり、かつ、円筒断面内で光束B1に平行な方向に対する傾斜角を変更可能なステージである。また、可動ステージ23は、ステージコントローラ24により駆動される。またステージコントローラ24は、コントローラ6と電気的に接続され、コントローラ25によって制御される。なお、可動ステージ23は、単一のステージで構成してもよく、XYZステージと傾斜ステージを組み合わせて構成してもよい。また、傾斜角を変更するチルティング機構の回転中心は、ビームスプリッタ22と略一致することが好ましい。
【0021】
コントローラ25は、いわゆるPCで構成される。また、コントローラ25は、通信回線7を通じてコントローラ6と接続される。そして、コントローラ6に対して、各種の状態情報(例えば、白色光源21の点灯状態、可動ステージ23の現在位置あるいは停止中か移動中かを示す情報など)及び信号(例えば、測定の開始を求めるための測定開始信号など)を必要に応じて、あるいは、コントローラ6からの要求に応じて送信する。逆に、コントローラ6から、測定を許可する測定許可信号など各種の制御信号、測定結果などを受信する。そして、それらの制御信号に基づいて、白色光源21の点灯制御、ステージコントローラ24を介しての可動ステージ23の位置制御などを行う。
【0022】
なお、測定装置2は、被測定物10の円筒断面の中心を、ビームスプリッタ22、コリメータレンズ26、ウェッジプリズム27、28及び集光レンズ29などからなる測定光学系と位置合わせするための、可視レーザ光源を有してもよい。この可視レーザ光源は、例えば可視光域の波長のレーザ光を照射する半導体レーザとすることができる。そして、可視レーザ光源から照射された光も、白色光源21から照射された光と同一の経路を通ってコリメータレンズ26、ウェッジプリズム27及びビームスプリッタ22に到達するように、白色光源21とコリメータレンズ26の間にビームスプリッタを配置する。測定装置2では、上記の位置合わせを行う際には、白色光源21と切り換えて、可視レーザ光源からレーザ光を照射する。そして、そのレーザ光が被測定物10の内面S1、S2で反射された光を検出器5で観測することにより、位置合わせを行う。
【0023】
図3に、干渉計4の概略構成図を示す。光ファイバ3から出射した光束B1及びB2は、干渉計4のコリメータレンズ41を経て、平行光となる。そして、ビームスプリッタ42に入射する。光束B1及びB2は、ビームスプリッタ42で反射されて第1の光路へ向かう光束B11、B21と、ビームスプリッタ42を透過して第2の光路へ向かう光束B12、B22に分岐する。なお、光束B11は、測定装置2から出射した光束B1のうち、干渉計4の第1の光路へ向かう光束を表し、光束B21は、測定装置2から出射した光束B2のうち、干渉計4の第1の光路へ向かう光束を表す。同様に、光束B12は、測定装置2から出射した光束B1のうち、干渉計4の第2の光路へ向かう光束を表し、光束B22は、測定装置2から出射した光束B2のうち、干渉計4の第2の光路へ向かう光束を表す。
【0024】
第1の光路には、位置が固定された参照鏡43が設置される。そして、第1の光路へ向かう光束B11、B21は、参照鏡43で反射されてビームスプリッタ42へ戻り、その一部はビームスプリッタ42を透過して検出器5へ向かう。一方、第2の光路には、その光路に沿って移動可能な移動鏡44が設けられる。そして、第2の光路へ向かう光束B12、B22は、移動鏡44で反射されてビームスプリッタ42へ戻り、その一部はビームスプリッタ42で反射されて、B11、B21とともに検出器5へ向かう。
【0025】
移動鏡44は、支持部材45に取り付けられる。そして、移動鏡44及び支持部材45は、移動範囲が狭いものの、移動鏡44の位置の微調整が可能なピエゾ微動ステージ46の上に設置される。また、移動鏡44及び支持部材45は、ピエゾ微動ステージ46とともに、移動範囲が相対的に大きく、移動鏡44の位置を大まかに決定する粗動ステージ47上に設置される。ピエゾ微動ステージ46及び粗動ステージ47は、それぞれピエゾコントローラ51及びステージコントローラ52と電気的に接続される。そして、ピエゾ微動ステージ46及び粗動ステージ47は、ピエゾコントローラ51及びステージコントローラ52からの制御信号に基づいて、移動鏡44を第2の光路に沿って移動させる。
なお、移動鏡44を移動させつつ、その移動の間に連続的に干渉信号を測定する場合には、ピエゾ微動ステージ46及びピエゾコントローラ51を省略してもよい。
【0026】
また、支持部材45の背面には、コーナーキューブ48が取り付けられる。さらに、支持部材45よりも後方(すなわち、支持部材45を中心として、ビームスプリッタ42の反対側)には、移動鏡44の位置計測用干渉計49が設置される。そして、位置計測用干渉計49は、コーナーキューブ48へ向けて照射され、コーナーキューブ48で反射されて位置計測用干渉計49に戻ってきたコヒーレント光と、参照光との間で観測される干渉縞の移動本数を計数することにより、移動鏡44の移動量を計測することができる。
【0027】
検出器5は、検出した光量を電気信号として出力するものである。検出器5として、例えば、フォトダイオード、CCDまたはC−MOSなどの半導体検出素子を使用することができる。本実施形態では、検出器5として、CCD素子を2次元アレイ状に並べたものを用いた。
また、検出器5は、コントローラ6と電気的に接続され、検出した光量に対応する電気信号を、コントローラ6へ送信する。
【0028】
コントローラ6は、いわゆるPCで構成され、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ディスク及びそれらの読取装置等からなる記憶部と、図示していないCPU、ROM、RAM及びその周辺回路と、CPU上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、検出器5からの出力信号及び位置計測用干渉計49から取得した移動鏡44の移動量に基づいて干渉計4の二つの光路間の光路差を計算したり、コントローラ6に接続された機器を制御する制御部とを有する。さらにコントローラ6は、RS232C、イーサネット(登録商標)などの通信規格にしたがって構成された電子回路及びデバイスドライバなどのソフトウェアからなる通信部を有する。そしてコントローラ6は、通信部から通信回線7を介して、測定装置2との間で各種制御信号や情報の送受信を行う。なお、通信回線7は、専用回線、一般の公衆通信回線、構内用LAN、無線LANなど、遠隔地間で信号の送受信を行うために利用可能な何れの回線であってもよい。
【0029】
以下、内径測定システム1による被測定物10の内径を測定する動作について説明する。
白色光源21からの光は、コヒーレンス長が短いため、光路差がほぼ等しい場合にのみ干渉縞を生じる。ここで、干渉計4の第1の光路における、ビームスプリッタ42から参照鏡43までの距離がL1であり、第2の光路における、ビームスプリッタ42から移動鏡44までの距離がL2であるとすると、第3の光束と第4の光束との間に、2(L2−L1)の光路差が生じる(ただし、L2>L1とする)。このとき、(L2−L1)とDが等しければ、測定装置2において、被測定物10の内面S1、S2で反射された光束B1のうち、干渉計4において、第1の光路を通った光束B11と、測定装置2においてビームスプリッタ22を素通りした光束B2のうち、干渉計4において、第2の光路を通った光束B22との光路差が0となる。そのため、最大の干渉信号を観測することができる。そして、(L2−L1)とDとの差が大きくなるにつれて、干渉信号の大きさは急激に低下する。したがって、干渉信号が最大となるとき、すなわち、干渉信号がピークとなるときの(L2−L1)を計測することにより、被測定物10の内径Dを求めることができる。
【0030】
また、移動鏡44をビームスプリッタ42に近づけていくと、第3の光束と第4の光束との間に生じる光路差2(L1−L2)が、被測定物10の内径Dの2倍と等しいところでも干渉縞を観測することができる(ただし、L1>L2である)。この場合、測定装置2において、被測定物10の内面S1、S2で反射された光束B1のうち、干渉計4において、第2の光路を通った光束B12と、測定装置2においてビームスプリッタ33を素通りした光束B2のうち、干渉計4において、第1の光路を通った光束B21との光路差が0となるためである。そこで、光束B11と光束B22との間で生じる干渉信号が最大となる移動鏡44の位置と、光束B12と光束B21との間で生じる干渉信号が最大となる移動鏡44の位置との差を2で割ることにより、被測定物10の内径Dを求めることができる。
【0031】
さらに、測定装置2において、ビームスプリッタ22の位置が、被測定物10の内径の中心に正確に一致していない場合、光束B1は、被測定物10の内径の直径とずれた位置を通るので、測定された値は正確ではない。係る問題を解決するために、ビームスプリッタ22と被測定物10の位置関係を、被測定物10の軸方向に直交する円筒断面内で光束B1と直交する方向にずらしながら内径の測定を繰り返す。そして、得られた測定値が最大となる値を、被測定物10の内径とする。
【0032】
図4に、被測定物10の内径Dを測定する際の内径測定システム1の動作フローチャートを示す。
測定が開始されると、最初に初期化手順として、移動鏡44の基準位置、すなわち、干渉計4の第1の光路と第2の光路間の光路差が0となる移動鏡44の位置を決定する(ステップS101)。そのために、内径測定システム1の測定装置2に、被測定物10を設置せず、干渉計4で干渉縞の検出される位置を求める。このとき、被測定物10の内面で反射される光束は存在しないから、測定装置2から出射する光束は、全てB2となる。そのため、干渉計4では、第1の光路におけるビームスプリッタ42から参照鏡43までの距離L1と、第2の光路におけるビームスプリッタ42から移動鏡44までの距離L2との差が0のとき、干渉信号は最大となる。そこで、コントローラ6は、ピエゾコントローラ51を通じてピエゾ微動ステージ46を駆動し、移動鏡44を移動させる。そして、コントローラ6は、複数の測定点で検出器5で検出される光量を観測し、検出光量が最大、すなわち、干渉信号が最大値となる位置を見つける。そして、出力信号値の最大値、すなわち干渉信号の最大値を求める。コントローラ6は、干渉信号が最大値となったときの移動鏡44の位置を、位置計測用干渉計49から受信し、L1=L2となる位置X0として、記憶部に記憶する。また、内径Dの測定値の初期値として0を、記憶部に記憶する。
【0033】
次に、内径測定システム1の測定装置2に、被測定物10を設置する。その設置後、測定装置2のコントローラ25は、通信回線7を介してコントローラ6に、測定を行う準備が完了した旨を表し、測定の開始を求める測定開始信号を送信する。なお、測定開始信号の送信は、測定装置2を操作する作業者による手動操作によって行ってもよく、あるいは、図示しない接触センサ、近接センサなどを可動ステージ23に設けて、被測定物10を検知することによる検知信号をコントローラ25が受信すると、自動的に行われるようにしてもよい。
【0034】
上述したように、白色干渉縞は、被測定物10の内径Dと、(L2−L1)がほぼ等しい位置で観測される。そこで、コントローラ6は、測定開始信号を受信すると、ステージコントローラ52を通じて粗動ステージ47を駆動し、干渉計4の移動鏡44を、被測定物10の内径Dとほぼ等しい距離だけ後退させる。そして、コントローラ6は、測定装置2のコントローラ25に、測定装置2が測定を開始することを許可する測定許可信号を送信する。コントローラ25は、測定許可信号を受信すると白色光源21から光を放射させる。一方、コントローラ6は、上記と同様に、ピエゾコントローラ51を通じてピエゾ微動ステージ46を駆動し、移動鏡44を所定のサンプリングピッチずつ移動させ、各サンプリング点において、検出器5で検出された光量に対応する信号値、すなわち干渉信号値を取得する(ステップS102)。なお、サンプリングピッチは、干渉縞が白色光源2から放射される光の中心波長の略1/2の周期となるため、その中心波長の1/4以下に設定する。各サンプリング点での干渉信号値を取得すると、コントローラ6は、それらの干渉信号値から、干渉縞のピークを求め、そのピークに対応する移動鏡44の位置Xpを、位置計測用干渉計49から取得する(ステップS103)。
【0035】
干渉縞のピーク位置Xpを取得すると、コントローラ6は、記憶部からL1=L2のときの移動鏡44の位置X0を読み出してXp−X0の値を計算し、被測定物10の内径Dの測定値を得る(ステップS104)。そして、その測定値を初期値と比較し(ステップS105)、大きい方の値を記憶部に保存する(ステップS106)。上述したように、記憶部には測定値の初期値として0が記憶されているため、必ず最初の測定値の方が大きくなるので、最初の測定値が記憶部に保存される。
【0036】
次に、コントローラ6は、測定装置2のコントローラ25に対して、可動ステージを所定量(例えば、0.1μm)だけ移動させる制御信号を送信する。その制御信号を受信したコントローラ25は、ステージコントローラ24を介して可動ステージ23を駆動し、所定量だけ、被測定物10を光束B1に対して直交する方向に移動させる(ステップS106)。可動ステージ23の移動が終了すると、コントローラ25は、次の測定の開始を求める測定開始信号を通信回線7を介してコントローラ6に送信する。コントローラ6は、コントローラ25から測定開始信号を受信すると、上記のステップS102〜S104を繰り返し、再度内径の測定値を得る。そして、コントローラ6は、得られた測定値と、記憶部に記憶された測定値とを比較する(ステップS105)。そして、新たに得られた測定値の方が、記憶された測定値よりも大きい場合、コントローラ6は、記憶部に記憶された測定値をその新たに得られた測定値で更新する(ステップS106)。その後、コントローラ6は、測定装置2のコントローラ25に対して再度同方向に被測定物10を移動させるよう制御信号を送信する。そしてコントローラ25は、受信した制御信号にしたがって、可動ステージ23を駆動し、被測定物10を所定量だけ移動させる(ステップS107)。以降、記憶部に記憶された測定値よりも新たに測定した測定値の方が大きい場合、ステップS102〜S107の処理を繰り返す。
【0037】
一方、ステップS105において、記憶部に記憶された測定値が、新たに測定された測定値以上となる場合、コントローラ6は、その記憶部に記憶された測定値が、最初に測定された測定値か否か調べる(ステップS108)。記憶部に記憶された測定値が、最初の測定値である場合、コントローラ6は、被測定物10の移動方向を反転させ、最初の測定を行った位置まで戻すよう、コントローラ25に制御信号を送信する(ステップS109)。そして、その反転した移動方向に被測定物10を所定量だけ移動させる(ステップS107)。以後、記憶部に記憶された測定値よりも新たに測定した測定値の方が大きい場合、可動ステージの移動方向をその反転した方向に固定して、ステップS102〜S107の処理を繰り返す。
ステップS105において、記憶部に記憶された測定値が、新たに測定された測定値以上となると判定された後、ステップS108において、その記憶部に記憶された測定値が、最初に測定された測定値でないと判定された場合、コントローラ6は、記憶部に記憶された測定値を被測定物10の内径Dとするとともに、測定終了及び内径Dの測定値を測定装置2のコントローラ25へ通知する(ステップS110)。そして測定を終了する。
【0038】
なお、被測定物10の円筒断面が、その内面S1とS2の間を通る光束B1に対して傾斜する可能性のある場合、内径測定システム1は、上記のステップS110の後、可動ステージ23を操作して、被測定物10の円筒断面と光束B1のなす角を変化させつつ、内径Dを測定し、その測定値が最小となるところを探す。この探索も、上記のステップS102〜S110と同様の手順により行うことができる。ただしこの場合には、測定値の最小値を求めるので、ステップS105とは逆に、求めた測定値が記憶部に記憶されている測定値よりも小さいか否かを判定する。そして、最小となる測定値を、被測定物10の内径Dとする。
【0039】
また、ステップS101で移動鏡44の基準位置X0を測定する代わりに、移動鏡44を参照鏡43よりもビームスプリッタ42に近づけて、光束B12と光束B21との間で生じる干渉信号が最大となる移動鏡44の位置Xp'を求めてもよい。そして、(Xp−Xp')/2の値を計算し、その値を、被測定物10の内径の測定値としてもよい。基準位置X0で観測される干渉信号の強度と、位置Xpで観測される干渉信号の強度は、大きく異なる。一方、位置Xpで観測される干渉信号と、位置Xp'で観測される干渉信号とは、ほぼ同程度の強度となる。そのため、位置Xpと位置Xp'の差に基づいて被測定物10の内径の測定値を求める場合、基準位置X0と位置Xpの差に基づいて内径の測定値を求める場合よりも、検出器5の受光量の変化に対する出力信号の変化を大きくすることができるので、干渉信号が最大値となる移動鏡44の位置をより正確に特定することができる。
【0040】
以上説明してきたように、本発明の第1の実施形態に係る内径測定システム1は、干渉計4側に設置されたコントローラ6から、通信回線7を通じて測定装置2を制御して、白色光源21からの測定光の照射開始/停止の制御及び可動ステージ23の駆動を行える。そのため、測定装置2を被測定物10の製造ラインの近くに配置し、一方、干渉計4などを、測定装置2とは別個に、精密測定に適した、振動などの影響を受け難い環境に設置して、寸法測定を行うことができる。
【0041】
また、被測定物10とビームスプリッタ22の位置関係を変化させながら、内径Dの最大測定値を探索することにより、内径測定システム1は、ビームスプリッタ22を正確に被測定物10の中心に配置した状態の内径測定結果を得られるので、高精度で被測定物10の内径を測定することができる。また、測定結果をコントローラ25へ通知することにより、測定装置2側で被測定物10の内径Dが仕様通りの寸法あるいはその許容公差の範囲内になっているか否か、すなわち、被測定物10が良品か否かを知ることができる。そのため、測定装置2側で作業を行っている作業者(あるいはロボット)は、その判定結果に基づいて、被測定物10を適切に選別することができる。
【0042】
以下に、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態に係る内径測定システムは、被測定物の内径に対応する光路差を有する二つの光束を生成する測定装置を複数有し、各測定装置から出射した光束が、一つの干渉計に入射するように構成されたものである。
【0043】
図5に、本発明の第2の実施形態に係る内径測定システム11の概略構成を示す。図5において、図1に示した本発明の第1の実施形態に係る内径測定システム1と同様の構成を有するものには、図1に示した参照番号と同一の参照番号を付した。本発明の第2の実施形態に係る内径測定システム11は、3台の測定装置2−1〜2−3を有し、各測定装置から出射される光束を、それぞれ光ファイバ3−1〜3−3を通じて干渉計4へ導波させるように構成したものである。光ファイバ3−1〜3−3は、光カプラ8で結合され、光ファイバ3−1〜3−3のうちのどの光ファイバを通じて導波されてきた光も、同一のファイバから干渉計4に向けて出射されるように構成される。
なお、各測定装置2−1〜2−3、干渉計4、検出器5及びコントローラ6の構成は、上記の第1の実施形態に係る測定装置2、干渉計4、検出器5及びコントローラ6の構成と同様である。また、個々の測定装置2−1〜2−3の動作も、上記の測定装置2と同様であるため、以下では説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0044】
本発明の第2の実施形態に係る内径測定システム11では、各測定装置2−1〜2−3は、上述した、測定準備ができたことを示す測定開始信号に、どの測定装置から発信された測定開始信号かを判別できるように、測定装置の識別情報を含める。その識別情報は、例えば、各測定装置2−1〜2−3が有するコントローラ25に割り振られたIPアドレス、物理アドレス(MACアドレス)など、通信ネットワーク上で一意に割り振られる番号とすることができる。あるいは、識別情報として、各測定装置2−1〜2−3に、固有の識別番号を予め設定し、その固有の識別番号を用いてもよい。
【0045】
一方コントローラ6は、測定開始信号を受信すると、その測定開始信号に含まれる識別情報を参照して、その測定開始信号を送信した測定装置に測定許可信号を送信する。また、コントローラ6は、測定実行中の測定装置を示すために、その測定開始信号に含まれる識別情報を、測定動作実行装置情報として一時的に記憶する。
ここで、コントローラ6は、複数の測定装置から測定開始信号を受信した場合、受信順に優先順位を設定する。そのために、コントローラ6は、例えば、優先順位の高い方から、識別情報を順に並べた優先順位リストを生成し、記憶部に記憶する。そして、コントローラ6は、測定開始信号を受信する度、あるいは、新たな測定が開始される度に、その優先順位リストを更新する。なお、測定開始信号に、優先度設定情報を含め、受信順にかかわらず、最も優先度が高い測定装置が最優先となるように、優先順位を設定するようにしてもよい。優先度設定情報としては、例えば、1〜3の三段階の優先順位を設け、1を最も優先度が高く、3を最も優先度が低いと設定することができる。そして、コントローラ6は、干渉計4が測定動作中(上記のステップS102〜S104の実行中)の場合には、その測定が終了して次の測定の準備ができるまで、測定許可信号を送信しない。
【0046】
干渉計4が測定動作を終了すると、コントローラ6は、その測定動作で求めた測定値に、測定動作実行装置情報として記憶されている識別情報を関連付ける。そして、コントローラ6は、その記憶部に記憶された測定値との比較処理(上記のステップS105)、更新処理(同S106)を、同一の識別情報が関連付けられた測定値との間で実施する。また、測定動作が終了した時点で、コントローラ6は、測定動作実行装置情報を参照して、測定動作を実行した測定装置に、白色光源21からの測定光の照射を停止させる指示を送信する。さらに、必要に応じて、コントローラ6は、ステージの移動(同S107、S109)の指示、測定完了時にはその旨及び測定値の通知(同S110)も測定動作を実行した測定装置に対して送信する。その後、干渉計4が待機状態(すなわち、何れの測定装置からも光を受光していない状態)に入ると、コントローラ6は、最も優先順位の高い測定装置に向けて、測定許可信号を送信する。またコントローラ6は、測定動作実行装置情報を、測定許可信号を送信した測定装置の識別情報に更新し、優先順位リストからその測定装置の識別情報を削除する。
【0047】
以上説明してきたように、本発明の第2の実施形態に係る内径測定システム11は、各測定装置の測定動作を、その測定装置に関連付けられた識別情報を用いてコントローラ6で管理するので、一つの測定装置で被測定物の交換、ステージの移動などを行っている間に、他の測定装置に設置した被測定物の内径を測定することができる。そのため、同時並行的に(あるいは、タイムシェアリング的に)複数の被測定物の測定を行うことができるので、短時間で多数の被測定物の測定を行うことができる。また、複数の遠隔地にあるリングゲージなどの被測定物を、マスタとの比較で較正を行うような場合、一つの測定装置をマスタの測定用としておけば、マスタを持ち運ぶことなく、遠隔地にある被測定物の較正を行うことができる。さらに、精密な動作を要求されることから高価となる干渉計は一つで済むため、システム全体のコストを抑制することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、被測定物は、円筒状のものに限られない。上記の実施形態の測定装置は、被測定物の向かい合った2面間の距離を測定したい場合、そのまま適用することができる。また、上記の実施形態の測定装置において、干渉計をフィゾー型の干渉計としてもよい。また、第2の実施形態に係る内径測定システムが有する測定装置は、3台に限らず、システムに対する要求に応じて適宜増減できる。
【0049】
また、白色光源を、干渉計4側に設置し、コントローラ6で直接制御するようにしてもよい。この場合、白色光源から放射される測定光を測定装置2へ導波させるために、測定装置2から出射する光束B1、B2を導波させるための上記の光ファイバ3とは別個に光ファイバを設置する。あるいは、上記の光ファイバの途中に光カプラを設け、白色光源からの測定光を途中で分波させて、コリメータレンズ26に入射させるようにしてもよい。
さらに、測定装置に含まれる白色光源と、干渉計に設置された検出器を入れ替えてもよい。この場合、干渉計側で予め被測定物の測定対象寸法に相当する光路差を有する二つの光束を発生させ、それらの光束を光ファイバを通じて測定装置側へ送る。そして、測定装置では、受け取った二つの光束を、被測定物の測定対象寸法に相当する二つの光束にさらに分割し、それらを一つに合わせて検出器で検出することにより、白色干渉縞を観察する。この場合も、干渉計側で発生させた光路差を測定することにより、被測定物の測定対象寸法を求めることができる。ただし、白色干渉縞の強度信号と、干渉計側で生じさせた二つの光束の光路差を対応させるために、測定装置のコントローラは、各測定点での干渉信号を、測定時刻と関連付けて測定装置へ送信する。干渉計測に設置されたコントローラでは、送られてきた各測定点の測定時刻を参照して、干渉信号を各測定点の光路差に関連付ける。なお、この処理を行うために、コントローラと測定装置は、ネットワークタイムプロトコル(NTP)などを利用して、時刻合わせを行っておくことが好ましい。さらにまた、干渉計測に設置されたコントローラから、各測定点での光路差を測定時刻と関連付けて送信し、測定装置側で干渉信号と各測定点における光路差を関連付けるようにしてもよい。この場合、測定装置側のコントローラで干渉信号のピークに対応する光路差を求めて、被測定物10の内径Dを求めることができる。
【0050】
以上のように、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内径測定システムの概略構成図である。
【図2】内径測定システムを構成する測定装置の概略構成図である。
【図3】内径測定システムを構成する干渉計の概略構成図である。
【図4】内径測定システムの動作フローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る内径測定システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1、11 内径測定システム(寸法測定システム)
10 被測定物
2、2−1、2−2、2−3 測定装置
21 白色光源
22 ビームスプリッタ
23 可動ステージ
24 ステージコントローラ
25 コントローラ
26 コリメータレンズ
27、28 ウェッジプリズム
29 集光レンズ
3、3−1、3−2、3−3 光ファイバ
4 干渉計
41 コリメータレンズ
42 ビームスプリッタ
43 参照鏡
44 移動鏡
45 支持部材
46 ピエゾ微動ステージ
47 粗動ステージ
48 コーナーキューブ
49 位置計測用干渉計
51 ピエゾコントローラ
52 ステージコントローラ
5 検出器
6 コントローラ
7 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の寸法を測定する寸法測定システムであって、
白色光源と、
測定装置であって、
前記白色光源から放射された光を、前記被測定物に向かう第1の光束と第2の光束に分岐し、該第1の光束を前記被測定物で反射させて該第2の光束との間に前記被測定物の測定対象寸法に対応する第1の光路差を生じさせ、該第1の光束と該第2の光束を一つの光束に合わせて出射させる光束分割手段と、
前記被測定物を載置し、前記光束分割手段に対する前記被測定物の相対的な位置を変更可能なステージと、
前記ステージの駆動を行う第1のコントローラと、
を有する少なくとも一つの測定装置と、
位置が固定された参照鏡と、光路に沿って移動可能な移動鏡とを有する干渉計であって、前記少なくとも一つの測定装置から出射した光束を、該参照鏡に向かう第3の光束と、該移動鏡に向かう第4の光束に分岐して、該第3の光束と該第4の光束との間に第2の光路差を生じさせる干渉計と、
前記第3の光束と前記第4の光束を受光し、前記第1の光路差と前記第2の光路差とが略等しい場合に生じる干渉信号を検出し、該干渉信号に対応する信号を出力する検出器と、
前記第1のコントローラと通信回線を通じて接続され、前記被測定物を第1の位置に配置するよう、前記第1のコントローラに対して制御信号を送信し、かつ前記被測定物が該第1の位置に配置されると、前記干渉信号が最大値となる前記移動鏡の位置を求めて第2の光路差を測定することにより、前記被測定物の測定対象寸法の第1の測定値を求める第2のコントローラと、
を有することを特徴とする寸法測定システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの測定装置から出射した前記第1及び第2の光束を、前記干渉計に導く光ファイバをさらに有する、請求項1に記載の寸法測定システム。
【請求項3】
前記被測定物は円筒形状を有し、前記被測定物の測定対象寸法は前記被測定物の内径であり、かつ、前記第1の位置は前記光束分割手段が前記被測定物の円筒の略中心に配置される位置であり、
前記第2のコントローラは、前記第1のコントローラに対して、前記被測定物を前記第1の位置と同一の円筒断面内の異なる第2の位置へ移動させる制御信号を送信し、かつ前記被測定物が該第2の位置に配置された状態で、前記被測定物の測定対象寸法の第2の測定値を求め、
前記第1の測定値と前記第2の測定値を比較して、大きい方の測定値を前記被測定物の測定対象寸法とする、請求項1または2に記載の寸法測定システム。
【請求項4】
前記第1のコントローラは、前記被測定物の測定の開始を求めるための測定開始信号を前記第2のコントローラに送信し、かつ前記第2のコントローラから、測定を許可する測定許可信号を受信すると、前記白色光源に光を放射させる、請求項1〜3の何れか一項に記載の寸法測定システム。
【請求項5】
前記測定許可信号は、前記少なくとも一つの測定装置を他の測定装置と識別するための識別情報を含む、請求項4に記載の寸法測定システム。
【請求項6】
前記第2のコントローラは、前記少なくとも一つの測定装置の前記第1のコントローラに、該測定装置に設置された被測定物の測定対象寸法の測定値を送信する、請求項1〜5の何れか一項に記載の寸法測定システム。
【請求項7】
被測定物の寸法を測定する寸法測定システムであって、
白色光源と、
位置が固定された参照鏡と、光路に沿って移動可能な移動鏡とを有する干渉計であって、前記白色光源から放射された光を、該参照鏡に向かう第1の光束と、該移動鏡に向かう第2の光束に分岐して、該第1の光束と該第2の光束との間に第1の光路差を生じさせる干渉計と、
少なくとも一つの測定装置であって、
前記干渉計から出射された前記第1の光束及び第2の光束を、前記被測定物に向かう第3の光束と第4の光束に分岐し、該第3の光束を前記被測定物で反射させて該第4の光束との間に前記被測定物の測定対象寸法に対応する第2の光路差を生じさせ、該第3の光束と該第4の光束を一つの光束に合わせて出射させる光束分割手段と、
前記被測定物を載置し、前記光束分割手段に対する前記被測定物の相対的な位置を変更可能なステージと、
前記ステージの駆動を行う第1のコントローラと、
前記第3の光束と前記第4の光束を受光し、前記第1の光路差と前記第2の光路差とが略等しい場合に生じる干渉信号を検出し、該干渉信号に対応する信号を出力する検出器と、を有する測定装置と、
前記第1のコントローラと通信回線を通じて接続され、前記被測定物を第1の位置に配置するよう、前記第1のコントローラに対して制御信号を送信し、かつ前記被測定物が該第1の位置に配置されると、前記干渉信号が最大値となる前記移動鏡の位置を求めて第1の光路差を測定することにより、前記被測定物の測定対象寸法の測定値を求める第2のコントローラと、
を有することを特徴とする寸法測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−309654(P2008−309654A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157952(P2007−157952)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「計量器校正情報システムの研究開発」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】